有価証券報告書-第126期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)
(1)経営成績等の状況の概要
① 経営成績
当連結会計年度における当社グループの経営成績は次のとおりであります。
当社グループでは、中期経営計画『SAKAINNOVATION 2023』に基づき、当連結会計年度(2021年3月期)は注力分野である電子材料および化粧品材料に積極的な投資を行いましたが、両事業とも販売が投資計画に比べ乖離が生じ、7,041百万円の減損処理を実施した結果、当期純損失を計上することとなりました。
年度前半は新型コロナにより化学事業では自動車関連向け製品、医療事業ではバリウム造影剤などの主力製品の低迷が大きく、一部の製品では在庫調整のため操業休止を実施する厳しい状況にありました。一方、年度を通して堅調に推移した有機化学品や衛生材料などが業績の下支えをするとともに、年度後半からは化粧品材料を除く製品が回復基調で推移しました。
この結果、売上高は前連結会計年度比2.6%減の84,918百万円となりましたが、製造コスト低減や全社にわたる経費節減に努め、また新型コロナの影響で休止した操業休止費用を営業外で計上した結果、営業利益は前連結会計年度比7.2%増の4,304百万円、経常利益は前連結会計年度比4.7%減の4,012百万円となりました。しかし、上記減損損失を含めて7,573百万円の特別損失を計上した結果、親会社株主に帰属する当期純損失が2,803百万円となりました。
セグメントごとの経営成績は、以下のとおりです。
なお、各セグメントの営業利益は全社費用等調整前の金額であります。
(化学事業)
売上高は前連結会計年度比2.2%減の76,821百万円となりましたが、営業利益は前連結会計年度比2.1%増の5,731百万円となりました。
電子材料
誘電体材料(高純度炭酸バリウム)は、5G基地局やパソコン等通信機器向けが堅調に推移するとともに、上期に低調であった車載向けが10月以降回復しました。誘電体(チタン酸バリウム)についても、下期から自動車向けも回復した結果、売上高は増加しました。しかし、増強した設備に対する販売計画を大きく下回り、減価償却負担が増加し、利益は減少しました。
酸化チタン・亜鉛製品
酸化チタンは、巣ごもり需要により食品包装用グラビアインキ向けが伸びたものの、その他工業用途は全般にわたって販売が振るわず、売上高は減少しました。在庫調整のため2ヵ月間工場を休止したことから、操業休止費用を営業外費用に計上しました。
亜鉛製品は、10月以降の自動車生産回復によりタイヤ向けが増加したものの、上期の落ち込みをカバーできず、売上高は減少しました。しかし、8月以降は亜鉛地金建値が上昇に転じたこともあり、利益は前連結会計年度並みまで回復しました。
化粧品材料の超微粒子酸化チタン・酸化亜鉛は、世界的な外出自粛やインバウンド需要の消滅により化粧品や日焼け止めの需要が減少し、売上高・利益とも大幅に減少しました。
樹脂添加剤
国内においては、下期からパイプ・継手、IT関連設備用PVC工業板が回復したものの、上期の大きな落ち込みをカバーするには至らず、売上高・利益ともに減少しました。
一方、海外においては、新型コロナで落ち込んだ自動車ワイヤーハーネス向けが下期に回復するとともに、ベトナム、タイの現地法人では灌漑設備への投資が増加したことでパイプ・継手向けが好調に推移し、売上高・利益ともに増加しました。
衛生材料
新型コロナでマスク関連製品の需要が拡大したほか、インドネシア現地法人で生産する通気性フィルム等が、紙おむつ向けの堅調さと医療関連向けの特需に支えられて販売が好調に推移した結果、売上高・利益ともに増加しました。
有機化学品
チオ製品は主用途のプラスチックレンズ向けなどが新型コロナの影響により、一時的な調整がありましたが、比較的回復の早かった輸出向けの拡販でカバーしました。リン製品は自動車や各種部品製造に使用する潤滑油・工作油添加剤向けが低調に推移した結果、チオおよびリン製品のトータルでは売上高・利益ともに前連結会計年度並みとなりました。
医薬品原薬・中間体の生産受託は、主力中間体が堅調に推移したことに加え、複数原薬の伸びと開発品のスポット生産・販売が業績に寄与し、売上高・利益ともに伸ばしました。
触 媒
ニッケル触媒は、将来の需要拡大を見据え水添石油樹脂メーカー各社において設備投資が進められている中、予定していた主要顧客の新工場立ち上げの遅れにより、計画通りに生産と販売が進まず、売上高・利益ともに減少しました。
脱硝触媒は、国内取替需要や韓国向け新規受注を獲得できましたが、納入物件が少なかった上期の減少を補うことはできず、売上高・利益ともに減少しました。
受託加工
加工顔料については、入浴剤製品は新規製品への採用と巣ごもり需要もあり好調に推移しましたが、自動車・食品包装用の着色剤製品における上期の低調が響き、売上高・利益ともに減少しました。
焼成、混合、乾燥等の工程受託については、新型コロナの影響で計画を下回る案件もありましたが、売上高・利益ともに前連結会計年度並みとなりました。
(医療事業)
売上高は前連結会計年度比6.1%減の8,096百万円となり、営業利益は前連結会計年度比23.8%減の452百万円となりました。
医療用医薬品
バリウム造影剤は、2016年度厚生労働省発出の「がん検診実施のためのガイドライン」による受診間隔の延長および受診年齢の引き上げ、胃内視鏡検査への移行等厳しい環境のもと、大口検診機関のニーズ対応を強化し市場シェア拡大に努め、国内販売の縮小を最小限にとどめるとともに、韓国・台湾への輸出を強化してきました。しかしながら、国内外ともに新型コロナで受診者が減少した結果、売上高・利益ともに減少しました。
消化性潰瘍用剤「アルロイドG」も、後発品メーカーの撤退により当社品の需要回復はあったものの、薬価引き下げによる影響が大きく、売上高・利益ともに減少しました。
医療機器
新型コロナで営業活動が制約される中、内視鏡洗浄消毒器は、コロナ支援キャンペーンを打つなど積極的な販売促進活動を進め、機器本体の販売台数およびメンテナンス契約数を伸ばしましたが、施術数の停滞により関連する消耗品の販売が低調に推移したため、売上高・利益ともに減少しました。
また、一昨年度からリリースした内視鏡治療用粘膜下注入材「リフタルK」および注入材用穿刺針「リフテインニードル」は計画未達ながらも、新規採用に努め一定の売上増に寄与しました。
一般用医薬品・その他
かぜ薬「改源」等一般用医薬品は、新型コロナでうがい薬等の売上が伸びましたが、風邪の罹患者減少により主力のかぜ薬が低調に推移したことから、売上高・利益ともに減少しました。
新規事業として位置付けている美容医療機関向けのサプリ事業は拡大基調であり、紫外線対策サプリメント「ソルプロ」シリーズが新型コロナにおいても好調に推移し、売上高・利益ともに伸ばしました。
大手発毛剤メーカー向けのミノキシジル製剤(OEM商品)については、女性向け低濃度製剤を新たに発売し、売上に一部寄与しました。
② 財政状態
当連結会計年度における当社グループの財政状態は次のとおりであります。
(資産)
当連結会計年度末における総資産は123,007百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,358百万円増加いたしました。
主な増減項目として、流動資産においては、現金及び預金が1,983百万円、受取手形及び売掛金が1,679百万円それぞれ増加し、商品及び製品が970百万円、原材料及び貯蔵品が1,279百万円それぞれ減少いたしました。また、固定資産においては繰延税金資産が699百万円増加したものの、有形固定資産が824百万円減少しました。
・現金及び預金の増加は、大型設備投資の支払いに備えるため、長期借入による資金調達によるものです。
・たな卸資産の減少は、前連結会計年度に新型コロナの拡大を見据えた在庫調整を行ってまいりましたが、現在の社会情勢を見ながら適正な在庫水準に調整していることによります。
・有形固定資産の減少は、減損損失を計上したことによるものです。
・繰延税金資産の増加は、当連結会計年度に償却資産の減損損失を計上したことにより、将来減算一時差異が増加したことによるものです。
(負債)
当連結会計年度末における負債合計は43,742百万円となり、前連結会計年度末に比べ3,585百万円増加いたしました。
主な増減項目は長期及び短期借入金の純増額2,282百万円となっております。
・純増額の主要因としては、長期借入金の新規借入4,900百万円及び約定弁済を含む返済2,605百万円の差額2,295百万円です。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産合計は79,264百万円となり、前連結会計年度末に比べ2,227百万円減少いたしました。この結果、自己資本比率は61.6%(前連結会計年度末は64.4%)となりました。
主な増減項目として、利益剰余金が3,392百万円減少し、その他有価証券評価差額金が870百万円増加いたしました。
・利益剰余金の減少の要因は、親会社株主に帰属する当期純損失2,803百万円及び剰余金の配当588百万円です。
・その他投資有価証券評価差額金の増加の主要因は、保有している投資有価証券の期末時価が上昇したことによるものであります。
③ キャッシュ・フロー
当連結会計年度における当社グループのキャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において、営業活動によるキャッシュ・フローの収入は7,826百万円となり、前連結会計年度に比べ1,372百万円増加いたしました。これは、主に税金等調整前当期純利益が6,037百万円減少したことのほか、売上債権の増減額が3,958百万円減少したものの、減損損失が7,023百万円増加したこと、たな卸資産の増減額が4,592百万円増加したことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において、投資活動によるキャッシュ・フローの支出は7,422百万円となり、前連結会計年度に比べ1,002百万円減少いたしました。これは、主に有形固定資産取得による支出が1,164百万円増加したものの、投資有価証券の売却による収入が2,000百万円増加したことのほか、投資有価証券の取得による支出が100百万円減少したことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において、財務活動によるキャッシュ・フローの収入は1,667百万円(前連結会計年度は68百万円の支出)となりました。これは、主に長期借入金の新規借入れによる収入が3,400百万円増加したものの、長期借入金の返済による支出が1,630百万円増加したことのほか、短期借入金の純増減額が116百万円減少したことによるものです。
以上の結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は11,153百万円となりました。
④ 生産、受注及び販売の実績
(生産実績)
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)1 金額は、販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。
2 セグメント別の生産高を正確に把握することは困難なため、概算値で表示しております。
3 上記金額には、消費税等は含まれておりません。
(受注実績)
当社グループの主要製品については主に見込み生産を行っております。
(販売実績)
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)1 セグメント間の取引については相殺消去しております。
2 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、いずれの相手先についても当該割合が100分の10未満のため記載を省略しております。
3 上記金額には、消費税等は含まれておりません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 経営成績の分析
経営成績の分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ①経営成績」に記載しています。
② 財政状態の分析
財政状態の分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ②財政状態」に記載しています。
③ キャッシュ・フローの状況分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
キャッシュ・フローの状況については、「(1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フロー」に記載しています。
グループの資金調達については堺商事及び一部の借り入れを除き、当社にて一括調達し、グループファイナンスにて関係会社へ必要な資金を供与しています。
調達方法は取引金融機関が組成するシンジケート団によるコミットメントラインからの短期運転資金と個別取引金融機関からの長期設備資金融資の2種類であります。近時は旺盛な設備投資によるキャッシュ・フロー不足分を補うための長期借り入れを増やしており、当面この傾向は続くものと考えます。現時点では、安定的な財務基盤を背景に取引金融機関の当社に対する融資姿勢に変化なく、スムーズな資金調達を実施しております。
一方、堺商事及び海外子会社を除く国内関係会社を結んだキャッシュ・マネジメント・システムを導入し、グループ各社の流動預金を当社に集中、グループとしての資金効率アップに取り組んでおります。
また、当連結会計年度末における短期借入金の残高は8,651百万円、長期借入金の残高は11,787百万円、現金及び現金同等物の残高は11,153百万円となっております。
④ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)に記載のとおりであります。
1.たな卸資産の評価
当社グループでは棚卸資産の評価に関して、取得原価を基礎としながら、期末における正味売却価額が取得原価よりも下落している場合には、正味売却価額をもって貸借対照表価額としております。正味売却価額は、直近の販売実績による単価が当面継続すると仮定し、販売単価から販売に要する経費を控除した金額として見積もっております。
また、営業循環過程から外れた滞留たな卸資産については、滞留品の処分・販売状況がこれまでと大きく変わらないと仮定し、過去の処分・販売実績をもとに見込まれる損失額を見積もっております。
新型コロナの影響が想定よりも深刻であった場合でも、随時販売状況を見ながら生産調整を行っておりますので、滞留棚卸資産が急激に増加することはないと考えております。販売単価の下落に関しても、当社グループは多岐にわたる製品を製造販売しており、影響は限定的であると考えております。
2.退職給付引当金
当社では退職給付引当金は、退職金制度ごとに退職給付債務の期末残高から年金資産の期末残高を控除して計算しております。退職給付債務及び費用は、割引率、退職率、予想昇給率などの計算基礎を見積り、年金数理計算により計算しております。割引率は、期末における優良社債の利回りに基づき決定しております。割引率が低下した場合、退職給付債務が増加しますが、数理計算上の差異として発生の翌連結会計年度から一定の年数(5年)による定額法で費用処理されます。また、退職率、予想昇給率は当社の過去の実績をもとに、今後も同様の推移が継続すると仮定して決定しております。
年金資産は期待運用収益率を見積り、退職給付費用の計算に反映させております。期待運用収益率は、金融市場が比較的安定しており、過去の運用実績が今後も継続すると仮定して決定しております。実際の運用実績が期待運用収益率を下回った場合、割引率の低下と同様、数理計算上の差異が発生しますが、発生の翌連結会計年度から一定の年数(5年)による定額法で費用処理されます。
(3)経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当連結会計年度における中期経営計画『SAKAINNOVATION 2023』の達成状況は次のとおりであります。
① 経営成績
当連結会計年度における当社グループの経営成績は次のとおりであります。
2021年3月期 | 前期比 | |
売上高(百万円) | 84,918 | △2.6% |
営業利益(百万円) | 4,304 | 7.2% |
経常利益(百万円) | 4,012 | △4.7% |
親会社株主に帰属する当期純損失(△)(百万円) | △2,803 | - |
当社グループでは、中期経営計画『SAKAINNOVATION 2023』に基づき、当連結会計年度(2021年3月期)は注力分野である電子材料および化粧品材料に積極的な投資を行いましたが、両事業とも販売が投資計画に比べ乖離が生じ、7,041百万円の減損処理を実施した結果、当期純損失を計上することとなりました。
年度前半は新型コロナにより化学事業では自動車関連向け製品、医療事業ではバリウム造影剤などの主力製品の低迷が大きく、一部の製品では在庫調整のため操業休止を実施する厳しい状況にありました。一方、年度を通して堅調に推移した有機化学品や衛生材料などが業績の下支えをするとともに、年度後半からは化粧品材料を除く製品が回復基調で推移しました。
この結果、売上高は前連結会計年度比2.6%減の84,918百万円となりましたが、製造コスト低減や全社にわたる経費節減に努め、また新型コロナの影響で休止した操業休止費用を営業外で計上した結果、営業利益は前連結会計年度比7.2%増の4,304百万円、経常利益は前連結会計年度比4.7%減の4,012百万円となりました。しかし、上記減損損失を含めて7,573百万円の特別損失を計上した結果、親会社株主に帰属する当期純損失が2,803百万円となりました。
セグメントごとの経営成績は、以下のとおりです。
なお、各セグメントの営業利益は全社費用等調整前の金額であります。
(化学事業)
売上高は前連結会計年度比2.2%減の76,821百万円となりましたが、営業利益は前連結会計年度比2.1%増の5,731百万円となりました。
電子材料
誘電体材料(高純度炭酸バリウム)は、5G基地局やパソコン等通信機器向けが堅調に推移するとともに、上期に低調であった車載向けが10月以降回復しました。誘電体(チタン酸バリウム)についても、下期から自動車向けも回復した結果、売上高は増加しました。しかし、増強した設備に対する販売計画を大きく下回り、減価償却負担が増加し、利益は減少しました。
酸化チタン・亜鉛製品
酸化チタンは、巣ごもり需要により食品包装用グラビアインキ向けが伸びたものの、その他工業用途は全般にわたって販売が振るわず、売上高は減少しました。在庫調整のため2ヵ月間工場を休止したことから、操業休止費用を営業外費用に計上しました。
亜鉛製品は、10月以降の自動車生産回復によりタイヤ向けが増加したものの、上期の落ち込みをカバーできず、売上高は減少しました。しかし、8月以降は亜鉛地金建値が上昇に転じたこともあり、利益は前連結会計年度並みまで回復しました。
化粧品材料の超微粒子酸化チタン・酸化亜鉛は、世界的な外出自粛やインバウンド需要の消滅により化粧品や日焼け止めの需要が減少し、売上高・利益とも大幅に減少しました。
樹脂添加剤
国内においては、下期からパイプ・継手、IT関連設備用PVC工業板が回復したものの、上期の大きな落ち込みをカバーするには至らず、売上高・利益ともに減少しました。
一方、海外においては、新型コロナで落ち込んだ自動車ワイヤーハーネス向けが下期に回復するとともに、ベトナム、タイの現地法人では灌漑設備への投資が増加したことでパイプ・継手向けが好調に推移し、売上高・利益ともに増加しました。
衛生材料
新型コロナでマスク関連製品の需要が拡大したほか、インドネシア現地法人で生産する通気性フィルム等が、紙おむつ向けの堅調さと医療関連向けの特需に支えられて販売が好調に推移した結果、売上高・利益ともに増加しました。
有機化学品
チオ製品は主用途のプラスチックレンズ向けなどが新型コロナの影響により、一時的な調整がありましたが、比較的回復の早かった輸出向けの拡販でカバーしました。リン製品は自動車や各種部品製造に使用する潤滑油・工作油添加剤向けが低調に推移した結果、チオおよびリン製品のトータルでは売上高・利益ともに前連結会計年度並みとなりました。
医薬品原薬・中間体の生産受託は、主力中間体が堅調に推移したことに加え、複数原薬の伸びと開発品のスポット生産・販売が業績に寄与し、売上高・利益ともに伸ばしました。
触 媒
ニッケル触媒は、将来の需要拡大を見据え水添石油樹脂メーカー各社において設備投資が進められている中、予定していた主要顧客の新工場立ち上げの遅れにより、計画通りに生産と販売が進まず、売上高・利益ともに減少しました。
脱硝触媒は、国内取替需要や韓国向け新規受注を獲得できましたが、納入物件が少なかった上期の減少を補うことはできず、売上高・利益ともに減少しました。
受託加工
加工顔料については、入浴剤製品は新規製品への採用と巣ごもり需要もあり好調に推移しましたが、自動車・食品包装用の着色剤製品における上期の低調が響き、売上高・利益ともに減少しました。
焼成、混合、乾燥等の工程受託については、新型コロナの影響で計画を下回る案件もありましたが、売上高・利益ともに前連結会計年度並みとなりました。
(医療事業)
売上高は前連結会計年度比6.1%減の8,096百万円となり、営業利益は前連結会計年度比23.8%減の452百万円となりました。
医療用医薬品
バリウム造影剤は、2016年度厚生労働省発出の「がん検診実施のためのガイドライン」による受診間隔の延長および受診年齢の引き上げ、胃内視鏡検査への移行等厳しい環境のもと、大口検診機関のニーズ対応を強化し市場シェア拡大に努め、国内販売の縮小を最小限にとどめるとともに、韓国・台湾への輸出を強化してきました。しかしながら、国内外ともに新型コロナで受診者が減少した結果、売上高・利益ともに減少しました。
消化性潰瘍用剤「アルロイドG」も、後発品メーカーの撤退により当社品の需要回復はあったものの、薬価引き下げによる影響が大きく、売上高・利益ともに減少しました。
医療機器
新型コロナで営業活動が制約される中、内視鏡洗浄消毒器は、コロナ支援キャンペーンを打つなど積極的な販売促進活動を進め、機器本体の販売台数およびメンテナンス契約数を伸ばしましたが、施術数の停滞により関連する消耗品の販売が低調に推移したため、売上高・利益ともに減少しました。
また、一昨年度からリリースした内視鏡治療用粘膜下注入材「リフタルK」および注入材用穿刺針「リフテインニードル」は計画未達ながらも、新規採用に努め一定の売上増に寄与しました。
一般用医薬品・その他
かぜ薬「改源」等一般用医薬品は、新型コロナでうがい薬等の売上が伸びましたが、風邪の罹患者減少により主力のかぜ薬が低調に推移したことから、売上高・利益ともに減少しました。
新規事業として位置付けている美容医療機関向けのサプリ事業は拡大基調であり、紫外線対策サプリメント「ソルプロ」シリーズが新型コロナにおいても好調に推移し、売上高・利益ともに伸ばしました。
大手発毛剤メーカー向けのミノキシジル製剤(OEM商品)については、女性向け低濃度製剤を新たに発売し、売上に一部寄与しました。
② 財政状態
当連結会計年度における当社グループの財政状態は次のとおりであります。
当連結会計年度末 2021年3月末 | 前連結会計年度末 増減 | |
総資産(百万円) | 123,007 | 1,358 |
負債合計(百万円) | 43,742 | 3,585 |
純資産合計(百万円) | 79,264 | △2,227 |
自己資本比率 | 61.6% | △2.8ポイント |
(資産)
当連結会計年度末における総資産は123,007百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,358百万円増加いたしました。
主な増減項目として、流動資産においては、現金及び預金が1,983百万円、受取手形及び売掛金が1,679百万円それぞれ増加し、商品及び製品が970百万円、原材料及び貯蔵品が1,279百万円それぞれ減少いたしました。また、固定資産においては繰延税金資産が699百万円増加したものの、有形固定資産が824百万円減少しました。
・現金及び預金の増加は、大型設備投資の支払いに備えるため、長期借入による資金調達によるものです。
・たな卸資産の減少は、前連結会計年度に新型コロナの拡大を見据えた在庫調整を行ってまいりましたが、現在の社会情勢を見ながら適正な在庫水準に調整していることによります。
・有形固定資産の減少は、減損損失を計上したことによるものです。
・繰延税金資産の増加は、当連結会計年度に償却資産の減損損失を計上したことにより、将来減算一時差異が増加したことによるものです。
(負債)
当連結会計年度末における負債合計は43,742百万円となり、前連結会計年度末に比べ3,585百万円増加いたしました。
主な増減項目は長期及び短期借入金の純増額2,282百万円となっております。
・純増額の主要因としては、長期借入金の新規借入4,900百万円及び約定弁済を含む返済2,605百万円の差額2,295百万円です。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産合計は79,264百万円となり、前連結会計年度末に比べ2,227百万円減少いたしました。この結果、自己資本比率は61.6%(前連結会計年度末は64.4%)となりました。
主な増減項目として、利益剰余金が3,392百万円減少し、その他有価証券評価差額金が870百万円増加いたしました。
・利益剰余金の減少の要因は、親会社株主に帰属する当期純損失2,803百万円及び剰余金の配当588百万円です。
・その他投資有価証券評価差額金の増加の主要因は、保有している投資有価証券の期末時価が上昇したことによるものであります。
③ キャッシュ・フロー
当連結会計年度における当社グループのキャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。
2021年3月期 | 前期増減 | |
営業活動によるキャッシュ・フロー(百万円) | 7,826 | 1,372 |
投資活動によるキャッシュ・フロー(百万円) | △7,422 | 1,002 |
財務活動によるキャッシュ・フロー(百万円) | 1,667 | 1,735 |
現金及び現金同等物の増減額(百万円) | 2,004 | 4,031 |
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において、営業活動によるキャッシュ・フローの収入は7,826百万円となり、前連結会計年度に比べ1,372百万円増加いたしました。これは、主に税金等調整前当期純利益が6,037百万円減少したことのほか、売上債権の増減額が3,958百万円減少したものの、減損損失が7,023百万円増加したこと、たな卸資産の増減額が4,592百万円増加したことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において、投資活動によるキャッシュ・フローの支出は7,422百万円となり、前連結会計年度に比べ1,002百万円減少いたしました。これは、主に有形固定資産取得による支出が1,164百万円増加したものの、投資有価証券の売却による収入が2,000百万円増加したことのほか、投資有価証券の取得による支出が100百万円減少したことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において、財務活動によるキャッシュ・フローの収入は1,667百万円(前連結会計年度は68百万円の支出)となりました。これは、主に長期借入金の新規借入れによる収入が3,400百万円増加したものの、長期借入金の返済による支出が1,630百万円増加したことのほか、短期借入金の純増減額が116百万円減少したことによるものです。
以上の結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は11,153百万円となりました。
④ 生産、受注及び販売の実績
(生産実績)
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 金額(百万円) | 前連結会計年度比(%) |
化学 | 51,129 | 0.8 |
医療 | 4,813 | 33.3 |
合計 | 55,942 | 2.9 |
(注)1 金額は、販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。
2 セグメント別の生産高を正確に把握することは困難なため、概算値で表示しております。
3 上記金額には、消費税等は含まれておりません。
(受注実績)
当社グループの主要製品については主に見込み生産を行っております。
(販売実績)
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 金額(百万円) | 前連結会計年度比(%) |
化学 | 76,821 | △2.2 |
医療 | 8,096 | △6.1 |
合計 | 84,918 | △2.6 |
(注)1 セグメント間の取引については相殺消去しております。
2 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、いずれの相手先についても当該割合が100分の10未満のため記載を省略しております。
3 上記金額には、消費税等は含まれておりません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 経営成績の分析
経営成績の分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ①経営成績」に記載しています。
② 財政状態の分析
財政状態の分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ②財政状態」に記載しています。
③ キャッシュ・フローの状況分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
キャッシュ・フローの状況については、「(1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フロー」に記載しています。
グループの資金調達については堺商事及び一部の借り入れを除き、当社にて一括調達し、グループファイナンスにて関係会社へ必要な資金を供与しています。
調達方法は取引金融機関が組成するシンジケート団によるコミットメントラインからの短期運転資金と個別取引金融機関からの長期設備資金融資の2種類であります。近時は旺盛な設備投資によるキャッシュ・フロー不足分を補うための長期借り入れを増やしており、当面この傾向は続くものと考えます。現時点では、安定的な財務基盤を背景に取引金融機関の当社に対する融資姿勢に変化なく、スムーズな資金調達を実施しております。
一方、堺商事及び海外子会社を除く国内関係会社を結んだキャッシュ・マネジメント・システムを導入し、グループ各社の流動預金を当社に集中、グループとしての資金効率アップに取り組んでおります。
また、当連結会計年度末における短期借入金の残高は8,651百万円、長期借入金の残高は11,787百万円、現金及び現金同等物の残高は11,153百万円となっております。
④ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)に記載のとおりであります。
1.たな卸資産の評価
当社グループでは棚卸資産の評価に関して、取得原価を基礎としながら、期末における正味売却価額が取得原価よりも下落している場合には、正味売却価額をもって貸借対照表価額としております。正味売却価額は、直近の販売実績による単価が当面継続すると仮定し、販売単価から販売に要する経費を控除した金額として見積もっております。
また、営業循環過程から外れた滞留たな卸資産については、滞留品の処分・販売状況がこれまでと大きく変わらないと仮定し、過去の処分・販売実績をもとに見込まれる損失額を見積もっております。
新型コロナの影響が想定よりも深刻であった場合でも、随時販売状況を見ながら生産調整を行っておりますので、滞留棚卸資産が急激に増加することはないと考えております。販売単価の下落に関しても、当社グループは多岐にわたる製品を製造販売しており、影響は限定的であると考えております。
2.退職給付引当金
当社では退職給付引当金は、退職金制度ごとに退職給付債務の期末残高から年金資産の期末残高を控除して計算しております。退職給付債務及び費用は、割引率、退職率、予想昇給率などの計算基礎を見積り、年金数理計算により計算しております。割引率は、期末における優良社債の利回りに基づき決定しております。割引率が低下した場合、退職給付債務が増加しますが、数理計算上の差異として発生の翌連結会計年度から一定の年数(5年)による定額法で費用処理されます。また、退職率、予想昇給率は当社の過去の実績をもとに、今後も同様の推移が継続すると仮定して決定しております。
年金資産は期待運用収益率を見積り、退職給付費用の計算に反映させております。期待運用収益率は、金融市場が比較的安定しており、過去の運用実績が今後も継続すると仮定して決定しております。実際の運用実績が期待運用収益率を下回った場合、割引率の低下と同様、数理計算上の差異が発生しますが、発生の翌連結会計年度から一定の年数(5年)による定額法で費用処理されます。
(3)経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当連結会計年度における中期経営計画『SAKAINNOVATION 2023』の達成状況は次のとおりであります。
2017年3月期 | 2018年3月期 | 2019年3月期 | 2020年3月期 | 2021年3月期 | |
営業利益(百万円) | 4,551 | 4,690 | 4,404 | 4,015 | 4,304 |
ROE(%) | 2.6 | 3.0 | 4.6 | 3.3 | △3.6 |