有価証券報告書-第130期(2024/04/01-2025/03/31)

【提出】
2025/06/25 10:25
【資料】
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【項目】
173項目
(1)経営成績等の状況の概要
① 経営成績
当連結会計年度における当社グループの経営成績は次のとおりであります。
2025年3月期前連結会計年度比 増減
売上高(百万円)84,4092.8%
営業利益(百万円)6,093107.1%
経常利益(百万円)6,279104.7%
親会社株主に帰属する当期純利益(百万円)5,013-

当社グループは新中期経営計画『変革・BEYOND2030』の数値目標達成と持続的成長を目指して取り組んでおります。初年度となる当連結会計年度は販売価格是正による売上高増加により利益が好調に推移しました。
電子材料事業では中国経済の不透明感が残る中でコンデンサ市場の回復を受け、特に誘電体材料の販売数量が前年から伸びました。中期経営計画において効率化検討事業に位置付けている事業では販売数量は減少したものの、価格是正により収益が改善しました。
一方、化粧品材料事業では中国経済低迷の影響を受け販売数量が伸び悩みました。加えて有機化学品事業では景気後退の影響を受けにくいものの顧客の在庫調整の影響もあり売上高が伸び悩みました。医療事業では品質問題による販売への影響は最小限にとどまったものの、薬価改定の影響を受け昨年同様の厳しい業績となりました。
この結果、売上高は前連結会計年度比2.8%増の84,409百万円、営業利益は前連結会計年度比107.1%増の6,093百万円、経常利益は前連結会計年度比104.7%増の6,279百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は5,013百万円となりました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。
なお、当連結会計年度より、報告セグメントの区分を変更しており、以下の前年同期比較については前年同期の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較分析しております。
また、各セグメントの営業利益は全社費用等調整前の金額であります。
電子材料(成長事業)
売上高は前連結会計年度比27.4%増の10,014百万円となり、営業利益は前連結会計年度比142.2%増の1,493百万円となりました。
誘電体は、車載関連の荷動きが鈍化した影響を受け、売上高は減少しましたが、価格改定による収益改善の効果が徐々にあらわれました。誘電体材料は、市況の回復による販売数量の増加に価格改定の効果も加わり、売上高・利益ともに増加しました。
化粧品材料(成長事業)
売上高は前連結会計年度比7.2%増の2,676百万円となり、営業利益は前連結会計年度比144.5%増の293百万円となりました。
UVケア化粧品材料の超微粒子酸化亜鉛・酸化チタンは、中国の景気後退の影響により一部の主要顧客向けの販売は伸び悩みましたが、一方、中国の現地メーカー向けの出荷については増加しました。併せて、前連結会計年度においては、操業度低下に伴う工程休止費用や評価損等の一時的な費用を計上していたこともあり、売上高・利益ともに増加しました。
有機化学品(成長事業)
売上高は前連結会計年度比14.9%減の6,638百万円となり、営業利益は前連結会計年度比40.4%減の770百万円となりました。
有機イオウ製品は、主力のレンズ向けや中国・欧州のセメント添加剤向けの販売数量が減少し、売上高・利益ともに減少しました。
医薬品原薬・中間体の生産受託は、受託数量の減少、片山製薬所の新本社および新研究所の稼働に伴う一時的な費用の増加により、売上高・利益ともに減少しました。
衛生材料(安定事業)
売上高は前連結会計年度比5.3%増の5,623百万円となり、営業利益は前連結会計年度比4.7%減の427百万円となりました。
輸入商材の販売は円安による低迷が継続し苦戦しましたが、同じく円安による海外売上高の円換算額は伸長しましたため、売上高は増加しました。一方で、上記輸入商材の低迷と利益率の低下およびインドネシア紙おむつ市場のコモディティ化による伸び悩みやインフレによる経費の高騰により営業利益は減少しました。
受託加工(安定事業)
売上高は前連結会計年度比3.7%増の6,422百万円となり、営業利益は前連結会計年度比10.2%増の620百万円となりました。
加工顔料は、国内の住宅着工件数の低下により建材用途の需要は減少しましたが、その他の分野は総じて堅調に推移し、新規提案や採算是正を進めたことにより、売上高・利益ともに増加しました。
工程受託においても、主要顧客向けの安定した生産および販売、新規案件の獲得や継続案件の成長により、売上高・利益ともに増加しました。
酸化チタン・亜鉛製品(効率化検討事業)
売上高は前連結会計年度比5.8%減の13,118百万円となり、営業利益は1,479百万円となりました。
酸化チタンは、販売数量の減少により売上高は減少しましたが、価格是正や生産能力の縮小による省力化および稼働率の向上、前連結会計年度に減損損失を計上したことに伴う償却負担の軽減もあり、利益は増加しました。
亜鉛製品についても、販売数量の減少により売上高は減少しましたが、価格是正および安定操業により、利益は増加しました。
樹脂添加剤(効率化検討事業)
売上高は前連結会計年度比2.1%減の13,061百万円となり、営業利益は前連結会計年度比82.9%増の1,393百万円となりました。
国内向けは、塩化ビニール樹脂の需要低迷により塩ビ安定剤の売上高は減少しましたが、原材料高騰に対応する価格改定により、利益は増加しました。
海外市場においては、中国向けは住宅関連市場の低迷により売上高は減少しましたが、東南アジア向けは、新規拡販により販売数量が増加し、価格改定の効果もあり、売上高・利益ともに増加しました。
触 媒(効率化検討事業)
売上高は、一部試作品の寄与もあり、前連結会計年度比0.8%増の3,186百万円となりましたが、営業利益は前連結会計年度比94.6%減の18百万円となりました。
ニッケル触媒は、主要顧客の定期修理の影響もあり売上高・利益ともに減少しました。
脱硝触媒は、海外のごみ焼却施設向けの販売数量が減少し、設備更新に伴う生産停止による一部製品の一時的な原価高もあり、売上高・利益ともに減少しました。
無機材料(効率化検討事業)
売上高は前連結会計年度比4.2%増の5,175百万円となり、営業利益は前連結会計年度比364.9%増の826百万円となりました。
価格是正、稼働率の向上、前連結会計年度に減損損失を計上したことに伴う償却負担の軽減に加え、高付加価値製品である酸化ジルコニウム分散液も寄与し、売上高・利益ともに増加しました。
医療事業
売上高は前連結会計年度比3.3%増の8,321百万円となり、営業損失は24百万円となりました。
医療用医薬品については、バリウム造影剤は、海外向けは販売数量は減少したものの、一部品目の薬価改定による値上げがあり売上高は増加しましたが、原材料高騰等の影響により利益は減少しました。また、消化性潰瘍治療薬「アルロイドG 内用液5%」は、薬価引き下げの影響や販売数量の減少、加えて原材料高騰の影響を受け、売上高・利益ともに減少しました。
医療機器については、内視鏡治療用粘膜下注入材「リフタルK」は販売数量が減少しましたが、内視鏡洗浄消毒器「KD-1」の販売数量の増加や消耗品・検査食の値上げ、骨充填材「レボシス」の受託生産数量の増加等により、売上高・利益ともに増加しました。
一般用医薬品は、オーバードーズ(過剰摂取)対策の影響を受けて風邪薬「改源」や咳止め薬の販売数量が落ち込み、売上高・利益ともに減少しました。その他、美容製品は、美容医療機関向けのサプリメント等の値上げや販売数量の増加により、売上高・利益ともに増加しました。また、受託品は、中高年の方の記憶力、注意力を維持する機能性表示食品素材「タモギ茸エキス(機能性関与成分:エルゴチオネイン)」の売上高が増加しました。
② 財政状態
当連結会計年度における当社グループの財政状態は次のとおりであります。
当連結会計年度末
2025年3月末
前連結会計年度末 増減
総資産(百万円)123,319△2,125
負債合計(百万円)43,933△6,045
純資産合計(百万円)79,3863,919
自己資本比率63.5%4.2ポイント

(資産)
当連結会計年度末における総資産は123,319百万円となり、前連結会計年度末に比べ2,125百万円減少いたしました。
主な増減項目として、流動資産においては、受取手形及び売掛金が2,696百万円、原材料及び貯蔵品が1,292百万円それぞれ減少いたしました。また、固定資産においては建設仮勘定2,306百万円増加した一方で、投資有価証券が1,085百万円減少いたしました。
・売上債権及び棚卸資産の減少は、中期経営計画の目標でもあるCCC改善に向けた取り組みによるものです。
・建設仮勘定の増加は当社の触媒工場の建設に関するものです。
・投資有価証券の減少は政策保有株式の売却によるものです。
(負債)
当連結会計年度末における負債合計は43,933百万円となり、前連結会計年度末に比べ6,045百万円減少いたしました。
主な増減項目として、支払手形及び買掛金が505百万円、短期借入金が3,595百万円、長期借入金が1,523百万円、繰延税金負債が494百万円それぞれ減少いたしました。
・支払手形および買掛金の減少はSC有機化学株式会社を吸収合併したことによる支払いサイトの短期化によるものです。
・短期借入金の減少は、運転資金の返済によるものです。
・繰延税金負債の減少は、その他有価証券評価差額金に係る法人税等及び税効果額が減少したことによるものです。
・長期借入金の減少は、新規借入を3,100百万円行ったことおよび、3,745百万円の返済および短期借入金へ892百万円振替を行ったことによるものです。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産合計は79,386百万円となり、前連結会計年度末に比べ3,919百万円増加いたしました。この結果、自己資本比率は63.5%(前連結会計年度末は59.3%)となりました。
主な増減項目として、利益剰余金が3,432百万円増加し、その他有価証券評価差額金が116百万円減少いたしました。
・利益剰余金の主な増加は、親会社株主に帰属する当期純利益5,013百万円および剰余金の配当1,580百万円によるものです。
・その他有価証券評価差額金の減少は、投資有価証券売却によるものです。
③ キャッシュ・フロー
当連結会計年度における当社グループのキャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。
2025年3月期前連結会計年度
増減
営業活動によるキャッシュ・フロー(百万円)12,0055,139
投資活動によるキャッシュ・フロー(百万円)△5,714△1,751
財務活動によるキャッシュ・フロー(百万円)△6,879△8,139
現金及び現金同等物の増減額(百万円)△322△4,609

(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において、営業活動によるキャッシュ・フローの収入は12,005百万円となり、前連結会計年度に比べ5,139百万円増加いたしました。これは、主に減損損失が6,198百万円、仕入債務の増減額が1,036百万円減少したことのほか、税金等調整前当期純利益が9,676百万円、売上債権の増減額が4,468百万円増加したことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において、投資活動によるキャッシュ・フローの支出は5,714百万円となり、前連結会計年度に比べ支出額は1,751百万円増加いたしました。これは、主に投資有価証券売却による収入が1,211百万円増加したことと、有形固定資産取得による支出が2,924百万円増加したことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において、財務活動によるキャッシュ・フローの支出は6,879百万円(前連結会計年度は1,259百万円の収入)となりました。これは、主に短期借入金純増減額が5,488百万円、新株予約権付社債の発行による収入が3,000百万円減少したことによるものです。
以上の結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は16,153百万円となりました。
④ 生産、受注及び販売の実績
(生産実績)
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称金額(百万円)前連結会計年度比増減(%)
電子材料7,23121.6
化粧品材料2,6697.0
有機化学品6,665△11.6
衛生材料3,0629.8
受託加工6,1843.1
酸化チタン・亜鉛製品11,198△1.3
樹脂添加剤10,299△1.1
触媒3,082△9.7
無機材料4,079△11.9
医療事業6,3375.4
その他4,96017.7
合計65,7715.8

(注)1 金額は、販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。
2 セグメント別の生産高を正確に把握することは困難なため、概算値で表示しております。
3 当連結会計年度より報告セグメントの区分を変更しており、前連結会計年度との比較は、変更後の報告セグメントの区分に基づき作成しております。
(受注実績)
当社グループの主要製品については主に見込み生産を行っております。
(販売実績)
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称金額(百万円)前連結会計年度比増減(%)
電子材料10,01427.4
化粧品材料2,6767.2
有機化学品6,638△14.9
衛生材料5,6235.3
受託加工6,4223.7
酸化チタン・亜鉛製品13,118△5.8
樹脂添加剤13,061△2.1
触媒3,1860.8
無機材料5,1754.2
医療事業8,3213.3
その他10,16913.5
合計84,4092.8

(注)1 セグメント間の取引については相殺消去しております。
2 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、いずれの相手先についても当該割合が100分の10未満のため記載を省略しております。
3 当連結会計年度より報告セグメントの区分を変更しており、前連結会計年度との比較は、変更後の報告セグメントの区分に基づき作成しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 経営成績の分析
経営成績の分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ①経営成績」に記載しています。
② 財政状態の分析
財政状態の分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ②財政状態」に記載しています。
③ キャッシュ・フローの状況分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
キャッシュ・フローの状況については、「(1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フロー」に記載しています。
グループの資金調達については堺商事及び一部の借り入れを除き、当社にて一括調達し、グループファイナンスにて関係会社へ必要な資金を供与しています。
調達方法は取引金融機関が組成するシンジケート団によるコミットメントラインからの短期運転資金と個別取引金融機関からの長期設備資金融資の2種類であります。近時は旺盛な設備投資によるキャッシュ・フロー不足分を補うための長期借り入れを増やしており、当面この傾向は続くものと考えます。現時点では、安定的な財務基盤を背景に取引金融機関の当社に対する融資姿勢に変化なく、スムーズな資金調達を実施しております。
一方、堺商事及び海外子会社を除く国内関係会社を結んだキャッシュ・マネジメント・システムを導入し、グループ各社の流動預金を当社に集中、グループとしての資金効率アップに取り組んでおります。
また、当連結会計年度末における短期借入金の残高は11,512百万円、長期借入金の残高は7,406百万円、現金及び現金同等物の残高は16,153百万円となっております。
④ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)に記載のとおりであります。
1.棚卸資産の評価
当社グループでは棚卸資産の評価に関して、取得原価を基礎としながら、期末における正味売却価額が取得原価よりも下落している場合には、正味売却価額をもって貸借対照表価額としております。正味売却価額は、直近の販売実績による単価が当面継続すると仮定し、販売単価から販売に要する経費を控除した金額として見積もっております。
また、営業循環過程から外れた滞留棚卸資産については、滞留品の処分・販売状況がこれまでと大きく変わらないと仮定し、過去の処分・販売実績をもとに見込まれる損失額を見積もっております。
随時販売状況を見ながら生産調整を行っておりますので、滞留棚卸資産が急激に増加することはないと考えております。販売単価の下落に関しても、当社グループは多岐にわたる製品を製造販売しており、影響は限定的であると考えております。
2.固定資産の減損会計
当社グループでは資産又は資産グループの収益性が低下し、帳簿価額が回収不能となるような兆候がある場合に、当該資産又は資産グループの回収可能価額(正味売却価額と使用価値のいずれか高い方)を見積り、回収可能価額が帳簿価額を下回っていた場合は、減損損失を計上しております。
回収可能価額は、事業計画や市場環境の変化により、その見積り金額の前提とした条件や仮定に変更が生じ減少した場合、追加の減損処理が必要になる可能性があります。
3.繰延税金資産の回収可能性
当社グループは、繰延税金資産の回収可能性を判断するに際して、翌事業年度予算及び中期事業計画に基づいて将来獲得しうる課税所得の時期及びその金額を見積り算定しております。従って、将来獲得しうる課税所得の見積額や時期が変更された場合は、繰延税金資産が増額又は減額される可能性があります。
4.退職給付引当金
当社では退職給付引当金は、退職金制度ごとに退職給付債務の期末残高から年金資産の期末残高を控除して計算しております。退職給付債務及び費用は、割引率、退職率などの計算基礎を見積り、年金数理計算により計算しております。割引率は、期末における優良社債の利回りに基づき決定しております。割引率が低下した場合、退職給付債務が増加しますが、数理計算上の差異として発生の翌連結会計年度から一定の年数(5年)による定額法で費用処理されます。また、退職率、予想昇給率は当社の過去の実績をもとに、今後も同様の推移が継続すると仮定して決定しております。
年金資産は期待運用収益率を見積り、退職給付費用の計算に反映させております。期待運用収益率は、金融市場が比較的安定しており、過去の運用実績が今後も継続すると仮定して決定しております。実際の運用実績が期待運用収益率を下回った場合、割引率の低下と同様、数理計算上の差異が発生しますが、発生の翌連結会計年度から一定の年数(5年)による定額法で費用処理されます。
(3)経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当連結会計年度における中期経営計画『変革・BEYOND2030』の達成状況は次のとおりであります。
2027年3月期目標2025年3月期実績目標との差額
営業利益(百万円)9,0006,093△2,906
ROE(%)8.06.6△1.4