有価証券報告書-第159期(令和2年1月1日-令和2年12月31日)

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2021/03/30 15:00
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当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」をいう。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
(1) 経営成績等の状況の概要
① 経営成績
当連結会計年度(2020年1月1日から2020年12月31日まで)の世界経済は、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、第2四半期を中心に大きな落ち込みを示しました。新型コロナウイルスの抑え込みに成功しいち早く経済活動を再開させた中国を含め、各国とも感染拡大防止に配慮しつつ経済活動の維持・拡大を図っており、12月以降、ワクチン接種も順次開始されておりますが、本邦を含め年末にかけ感染が再び拡大する国・地域も多く、コロナ禍の収束と世界経済の本格的回復は見通しにくい状況にあります。
当社グループにおいては、昨年2月に公表した中期経営計画「T-2022」の基本方針(①収益基盤の強化、②成長機会の拡大、③連結ガバナンス体制構築)に則り事業活動を展開し、フランスの炭素黒鉛製品メーカーであるCarbone Savoie International SAS(現:Tokai Carbon Savoie International SAS)の買収等、戦略分野への投資も実行しました。2019年から取り組んできたESG経営基盤構築に加え、在庫削減、生産性改善と経費削減等にも取り組んでまいりましたが、上記経営環境の下、主力事業の黒鉛電極事業とカーボンブラック事業の対面業界である鉄鋼産業、タイヤ産業の需要が、一時、大幅に減少したこと等が、業績の下振れ要因となりました。
この結果、当連結会計年度の売上高は前期比23.1%減の2,015億4千2百万円となりました。営業利益は前期比85.5%減の78億5千8百万円となりました。経常利益は前期比88.2%減の62億6千2百万円となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は前期比96.8%減の10億1千9百万円となりました。
セグメント別の経営成績は下記のとおりです。
[黒鉛電極事業]
2020年の鉄鋼生産は新型コロナウイルス感染拡大等により上半期に落ち込みが見られたものの、景気刺激策を打った中国での大幅な回復もあり、年間では概ね前年並みとなりました。一方で、顧客の黒鉛電極在庫調整により、当社黒鉛電極販売量は前期比で減少しました。また黒鉛電極市況の悪化に伴い第4四半期にて棚卸資産の評価損失(簿価切り下げ)36億6千6百万円を計上したため営業利益についても前期比で減少しました。
この結果、当事業の売上高は前期比58.5%減の378億7千9百万円となり、営業損益は57億6千6百万円の損失(前期は393億8千8百万円の営業利益)となりました。
[カーボンブラック事業]
新型コロナウイルス感染拡大を受け、対面業界であるタイヤメーカーや自動車部品メーカーの生産活動が上半期に大きく停滞しました。下半期からは総じて回復基調にあるものの、前期比では当社販売数量は減少となりました。また、販売価格の下落と生産調整による原価率上昇等により、営業利益は前期比で減少しました。
この結果、当事業の売上高は前期比30.5%減の707億5千4百万円となり、営業利益は前期比62.5%減の31億9千2百万円となりました。
[ファインカーボン事業]
半導体、太陽光発電市場向けの出荷は堅調に推移しましたが、一般産業用途向けは新型コロナウイルス感染拡大に伴う顧客の生産調整により減少しました。一方で、高付加価値商品であるソリッドSiC(シリコンカーバイド)製品は世界的に旺盛な需要を取り込み出荷が伸びました。
この結果、当事業の売上高は前期比4.6%増の317億7千5百万円となり、営業利益は前期比8.8%増の66億4千7百万円となりました。
[精錬ライニング事業]
当社は2019年7月26日にドイツの炭素黒鉛製品メーカーTokai COBEX HoldCo GmbH(旧商号COBEX HoldCo GmbH)及びそのグループ会社を連結子会社化し、これを「精錬ライニング事業」として報告セグメントに追加しております。さらに2020年7月17日にフランスの炭素黒鉛製品メーカーTokai Carbon Savoie International SAS(旧商号Carbone Savoie International SAS)及びそのグループ会社を連結子会社化し本セグメントに加えました。本セグメント事業の主な取扱製品は、アルミ精錬用カソード、高炉用ブロック、炭素電極となります。
主力のアルミ精錬用カソードは、世界的な景気後退を受けアルミ市場価格が低位に推移したものの、年度後半には中国経済や自動車生産の回復によりアルミ市場価格が上昇し、一部顧客向けの出荷が伸びました。高炉の内張り用ライニング材となる高炉用ブロックは、中国の旺盛な巻き替え需要により高水準の出荷となりました。
この結果、当事業の売上高は前期比148.4%増の364億2千1百万円となり、取得原価配分に伴う評価差額に係る償却費及びのれん償却費等の96億9千6百万円を差し引いた営業利益は11億6千1百万円(前期は16億円の営業損失)となりました。
[工業炉及び関連製品事業]
工業炉の売上高は、主要需要先である情報技術関連業界向けの設備投資が引き続き堅調に進み、前期比増となりました。発熱体その他製品の売上高は、新型コロナウイルス感染拡大に伴う世界経済の減速により、電子部品業界向け及び中国のガラス業界向けの需要が減少したため、前期比減となりました。
この結果、当事業の売上高は前期比9.8%増の138億7千3百万円となり、営業利益は前期比16.6%増の37億6千5百万円となりました。
[その他事業]
摩擦材
四輪市販向け市場からの撤退による売り上げ減少に加え、新型コロナウイルス感染拡大が建設用機械、農業用機械、二輪向け市場に影響しました。一方、中国においては中国政府による新型コロナウイルス感染抑制と経済対策が奏功し建機向けを中心に増販となりました。
この結果、摩擦材の売上高は前期比13.0%減の65億1千万円となりました。
負極材
負極材市場における新興勢の台頭等により競争が激化しましたが、欧州を中心に環境車需要が増加し前期比で販売数量が増加しました。
この結果、負極材の売上高は前期比14.3%増の41億8千6百万円となりました。
その他
不動産賃貸等その他の売上高は、前期比2.6%減の1億4千1百万円となりました。
以上により、当事業の売上高は前期比4.0%減の108億3千7百万円となり、営業利益は2億9千8百万円(前期は2千1百万円の営業損失)となりました。
② 財政状態
(資産の部)
当連結会計年度末における資産合計は、前連結会計年度末比31億6千2百万円減の4,597億9百万円となりました。
流動資産は、棚卸資産や売掛金等の減少により、前連結会計年度末比187億6千8百万円減の1,776億7千8百万円となりました。固定資産は、のれん、投資有価証券等が減少したものの、有形固定資産等の増加により、前連結会計年度末比156億5百万円増の2,820億3千1百万円となりました。
(負債の部)
当連結会計年度末における負債合計は、前連結会計年度末比49億9千7百万円増の2,348億9千4百万円となりました。
流動負債は、短期借入金等の減少により、前連結会計年度末比248億8千4百万円減の926億5千6百万円となりました。固定負債は、社債、長期借入金等が増加したことにより、前連結会計年度末比298億8千2百万円増の1,422億3千7百万円となりました。
(純資産の部)
当連結会計年度末における純資産合計は、利益剰余金等の減少により、前連結会計年度末比81億6千万円減の2,248億1千5百万円となりました。
この結果、自己資本比率は43.8%で、前連結会計年度末に比べ2.0ポイント低下いたしました。
③ キャッシュ・フロー
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末比112億8千4百万円増の577億2千7百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動による資金は、税金等調整前当期純利益の減少等により収入が減少したものの、棚卸資産の減少等により収入が増加し、前連結会計年度比133億5千8百万円収入増の、550億2千2百万円の収入となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動による資金は、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出の減少等により、前連結会計年度比548億5千8百万円支出減の、443億1百万円の支出となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動による資金は、短期借入金の減少等により、前連結会計年度比636億4千1百万円収入減の、9億2千7百万円の収入となりました。
④ 生産、受注及び販売の状況
a. 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称金額(百万円)前期比(%)
黒鉛電極事業39,044△60.7
カーボンブラック事業72,710△27.5
ファインカーボン事業32,238+0.5
精錬ライニング事業31,852+138.0
工業炉及び関連製品事業13,061△3.2
報告セグメント計188,908△26.9
その他事業10,743△4.0
合計199,651△26.0

(注) 1.セグメント間取引については、相殺消去しております。
2.金額は、販売価格によっております。
3.上記金額には、消費税等は含まれておりません。
4.黒鉛電極事業の減少の主な要因は、顧客の黒鉛電極在庫調整によるものであります。
5.精錬ライニング事業の増加の主な要因は、前連結会計年度の第3四半期にTokai COBEX HoldCo GmbH等を連結子会社化したこと、当連結会計年度にTokai Carbon Savoie International SAS等を連結子会社化したことによるものであります。
b. 受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
なお、工業炉及び関連製品については、受注生産を行っております。
セグメントの名称受注高(百万円)前期比(%)受注残高(百万円)前期比(%)
工業炉及び関連製品事業12,823△24.916,303△6.3
12,823△24.916,303△6.3

(注) 1.セグメント間取引については、相殺消去しております。
2.上記金額には、消費税等は含まれておりません。
c. 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称金額(百万円)前期比(%)
黒鉛電極事業37,879△58.5
カーボンブラック事業70,754△30.5
ファインカーボン事業31,775+4.6
精錬ライニング事業36,421+148.4
工業炉及び関連製品事業13,873+9.8
報告セグメント計190,704△23.9
その他事業10,837△4.0
合計201,542△23.1

(注) 1.セグメント間取引については、相殺消去しております。
2.上記金額には、消費税等は含まれておりません。
3.黒鉛電極事業の減少の主な要因は、顧客の黒鉛電極在庫調整によるものであります。
4.精錬ライニング事業の増加の主な要因は、前連結会計年度の第3四半期にTokai COBEX HoldCo GmbH等を連結子会社化したこと、当連結会計年度にTokai Carbon Savoie International SAS等を連結子会社化したことによるものであります。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況による分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
① 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度の売上高は、黒鉛電極事業、カーボンブラック事業における販売数量減少及び売価下落等により、前期比23.1%減の2,015億4千2百万円となりました。売上原価率は、主に黒鉛電極事業において、売価下落や生産数量減による固定費負担増及び収益性低下に伴う棚卸資産評価損を計上したこと等により、10.8%ポイントアップの75.4%となりました。
販売費及び一般管理費は取得原価配分に伴う評価差額の償却費及びのれんの償却費等が増加したことから、前期比8.3%増の416億9千6百万円となりました。これにより、営業利益は前期比85.5%減の78億5千8百万円となりました。
営業外収益については、受取利息及び受取配当金が減少したこと等により、前期比6.1%減の16億3千6百万円となりました。営業外費用については、社債利息が増加したこと等により、前期比4.3%増の32億3千2百万円となりました。
特別利益については、田ノ浦工場の令和2年7月豪雨災害に伴う受取保険金10億6千7百万円の入金及び固定資産売却益7億6千9百万円を計上しております。特別損失については、田ノ浦工場の令和2年7月豪雨災害に伴う災害による損失13億3千7百万円及び遊休不動産(社宅)にかかる減損損失を6億4千3百万円計上しております。この結果、税金等調整前当期純利益は前期比88.1%減の61億1千6百万円となりました。
法人税、住民税及び事業税と法人税等調整額の合計は、前期比86.7%減の22億8千3百万円となり、また、非支配株主に帰属する当期純利益に28億1千3百万円を計上しました。この結果、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比96.8%減の10億1千9百万円となりました。
また、当連結会計年度末の総資産については、流動資産はグループをあげた在庫削減策による棚卸資産の減少等により、前期比187億6千8百万円減の1,776億7千8百万円となり、固定資産は子会社取得による有形固定資産の増加等により、前期比156億5百万円増の2,820億3千1百万円となりました。
以上の結果、当連結会計年度のROA(総資産経常利益率)は、1.4ポイントで、前連結会計年度末に比べ12.0ポイント低下いたしました。
② 資本の財源及び資金の流動性についての分析
a. キャッシュ・フロー
キャッシュ・フローの状況については、 (1) ③ キャッシュ・フローに記載のとおりであります。
b. 財務政策
当社グループは、中長期的な成長を維持するために必要な運転資金及び設備投資資金を、財務体質とのバランスを勘案しつつ、金融機関からの借入に加えて、社債やコマーシャル・ペーパーの直接金融手段を活用し、金利コストの抑制やリスク分散を図っております。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。重要な会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。連結財務諸表の作成に当たり、見積りが必要な事項につきましては、合理的な基準に基づき会計上の見積りを行っておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性により、これらの見積りと異なる場合があります。連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。
なお、新型コロナウイルス感染症の影響に関する仮定の情報については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (追加情報)」に記載しております。
(固定資産の減損損失)
当社グループは、固定資産のうち減損の兆候がある資産又は資産グループについて、当該資産又は資産グループの回収可能価額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。減損の兆候、減損損失の認識及び回収可能価額の見積りに関する評価は合理的であると判断しておりますが、見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じた場合は、減損損失を計上する可能性があります。
(繰延税金資産の回収可能性)
当社グループは、繰延税金資産の計上に当たり、将来の課税所得を合理的に見積り、回収可能性を検討し、回収可能見込額を計上しております。繰延税金資産の回収可能性は、将来の課税所得の見積りによるものであるため、課税所得の見積りに影響を与える要因が発生した場合は、将来の税金費用に影響を与える可能性があります。