有価証券報告書-第125期(平成30年4月1日-平成31年3月31日)

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2019/06/26 14:32
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(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」といいます。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における我が国経済は、雇用情勢の改善や個人消費の持ち直しなどにより緩やかに回復しましたが、輸出や生産の一部に弱さがみられました。また海外の景気は、米国で回復が続く一方、ユーロ圏の一部で減速傾向を示したほか、中国では緩やかに減速しました。
こうした中、当社グループでは、事業ビジョン「8KとAIoTで世界を変える」の実現に努めました。また、事業環境を勘案し、今後のさらなる成長のため「量から質へ」の転換に取り組み、収益力の強化と財務体質の改善を進めました。
世界初となる8Kチューナー内蔵液晶テレビ「AQUOS 8K※1」や、水なし自動調理鍋「ヘルシオ ホットクック※2」、「プラズマクラスター冷蔵庫※3」、「プラズマクラスター洗濯乾燥機※4」などAIoTクラウドサービスに対応した製品を順次発売したほか、動画撮影中にAIが自動で静止画の撮影を行う「AQUOS R2※5」を商品化するなど、独自商品・特長デバイスの創出に努めました。加えて「COCORO KITCHEN」「COCORO VISION」「COCORO WASH」などのクラウドサービスの拡充に取り組みました。さらに、Dynabook㈱を連結子会社化するなど、グローバル市場で競争力のあるAIoTソリューション提案力の一層の強化を図りました。このほか、4年振りに米国の家電見本市「CES2019」に本格出展し※6、8KとAIoTの取り組みを訴求しました。また、資本の質を向上させ、普通株式の価値を高めるという観点から、希薄化リスクや優先配当などを有するA種種類株式20万株のうち、9万2千株を取得・消却しました。
当連結会計年度の業績は、アドバンスディスプレイシステムの売上が減少し、売上高が2,400,072百万円(前年度比1.1%減)となりました。営業利益は、アドバンスディスプレイシステムが減少し、84,140百万円(前年度比6.6%減)となりました。経常利益は69,011百万円(前年度比22.7%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は74,226百万円(前年度比5.7%増)となりました。
※1 世界初の8Kチューナーを内蔵した液晶テレビ。詳細につきましては、2018年10月15日公表の「8K液晶テレビ『AQUOS 8K』3機種を発売」をご覧ください。
https://corporate.jp.sharp/corporate/news/181015-d.html
※2 材料と作り方を画面と音声でお知らせする水なし自動調理鍋。詳細につきましては、2018年7月5日公表の「水なし自動調理鍋「ヘルシオ ホットクック」2機種を発売」をご覧ください。
https://corporate.jp.sharp/corporate/news/180705-a.html
※3 業界で初めて「ウォーターオーブン ヘルシオ」「ヘルシオ ホットクック」といった調理家電と連携し、献立提案から調理までをサポートするプラズマクラスター冷蔵庫。詳細につきましては、2018年8月6日公表の「プラズマクラスター冷蔵庫 メガフリーザーシリーズ4機種を発売」をご覧ください。
https://corporate.jp.sharp/corporate/news/180806-a.html
※4 天気情報や季節、洗濯履歴に応じた洗濯方法を音声やスマートフォンのアプリでお知らせするプラズマクラスター洗濯乾燥機。詳細につきましては、2018年10月5日公表の「プラズマクラスター洗濯乾燥機を発売」をご覧ください。
https://corporate.jp.sharp/corporate/news/181005-a.html
※5 世界で初めて「動画用」と「静止画用」の2つのアウトカメラを搭載し、動画と静止画を同時に撮影できるスマートフォン。詳細につきましては、2018年5月8日公表の「スマートフォン AQUOS R2を商品化」をご覧ください。
https://corporate.jp.sharp/corporate/news/180508-b.html
※6 詳細につきましては、2018年12月18日公表の「4年振りに米国の家電見本市「CES2019」に本格出展」をご覧ください。
https://corporate.jp.sharp/corporate/news/181218-a.html
セグメントの業績は、概ね次のとおりであります。
なお、第2四半期連結会計期間より、組織変更に伴い、従来「スマートビジネスソリューション」セグメントに含めておりました先進設備開発事業を「IoTエレクトロデバイス」セグメントに含めて表示しております。以下の前連結会計年度との比較については、前連結会計年度の数値を変更後のセグメント区分に組替えた数値で比較しております。
スマートホーム
エアコンが大きく伸長したほか、洗濯機や冷蔵庫の販売が増加したこと、また2018年10月にDynabook㈱を連結子会社化した効果もあり、売上高は696,936百万円(前年度比 114.6%)となりました。利益面では、白物家電を中心に販売が増加したことに加え、コストダウンが進んだことなどから、セグメント利益は48,018百万円(前年度比 109.8%)となりました。
スマートビジネスソリューション
複合機などの販売が増加したことから、売上高は320,403百万円(前年度比 100.7%)となりました。利益面では、価格下落の影響はあったものの、販売が増加したことなどから、セグメント利益はほぼ横ばいの21,699百万円(前年度比 98.8%)となりました。
IoTエレクトロデバイス
スマートフォン向けカメラモジュールのほか、半導体などが伸長した一方、センサモジュールなどの販売が減少したことから、売上高は499,094百万円(前年度比 98.9%)となりました。利益面では、コストダウンに取り組んだものの、大手顧客の需要変動の影響や、成長投資に伴う償却費の増加などにより、セグメント利益は2,894百万円(前年度比 86.9%)となりました。
アドバンスディスプレイシステム
アジア地域における液晶テレビの販売が増加したほか、PC・タブレット向けをはじめとした中型液晶パネルの売上が増加しました。一方、「量から質へ」の転換に向けた取り組みの一環として、流通在庫を勘案し、中国で液晶テレビの販売を抑制したことや、スマートフォン用液晶パネルの販売減により、売上高は959,689百万円(前年度比 88.3%)となりました。利益面では、コストダウンを推進したものの、米中貿易摩擦の影響などによる市況の悪化や、競争環境の激化に加え、有機ELディスプレイの立ち上げ費用などもあり、セグメント利益は27,066百万円(前年度比 73.1%)となりました。
当連結会計年度末の財政状態は、資産合計が、前連結会計年度末に比べ42,112百万円減の1,866,349百万円となりました。これは、受取手形及び売掛金が増加する一方、現金及び預金が減少したことなどによるものです。
負債合計は、支払手形及び買掛金や未払費用が減少したことなどから、前連結会計年度末に比べ12,870百万円減の1,493,877百万円となりました。また、純資産合計は、親会社株主に帰属する当期純利益を計上する一方、A種種類株式の取得及び消却などにより資本剰余金が減少したことから、前連結会計年度末に比べ29,241百万円減少し、372,471百万円となりました。
なお、「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正」(企業会計基準第28号 平成30年2月16日)等を当連結会計年度の期首から適用しており、繰延税金資産は投資その他の資産の区分に表示し、繰延税金負債は固定負債の区分に表示しております。前連結会計年度の連結貸借対照表についても、当該会計基準等を遡って適用し表示しております。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下、「資金」といいます。)は、前連結会計年度末に比べ175,203百万円減少し、当連結会計年度末には228,798百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において営業活動による資金の収入は、79,043百万円であり、前連結会計年度に比べ26,227百万円減少しました。これは、前連結会計年度に比べて、税金等調整前当期純利益が13,828百万円減少したほか、仕入債務の増減額が増加から減少に転じたことや、未払費用の減少額が10,423百万円増加したことなどによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において投資活動による資金の支出は、167,587百万円であり、前連結会計年度に比べ41,580百万円増加しました。これは、前連結会計年度に比べて、定期預金の払戻による収入が11,212百万円増加したものの、定期預金の預入による支出が40,417百万円増加したほか、有形固定資産の取得による支出が24,196百万円増加したことなどによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において財務活動による資金の支出は、88,517百万円であり、前連結会計年度に比べ59,383百万円増加しました。これは、前連結会計年度に比べて、短期借入金の純増減額が減少から増加に転じたものの、自己株式の取得による支出が85,132百万円増加したほか、配当金の支払が21,076百万円あったこととなどによるものであります。
(注)消費税等の会計処理は税抜方式によっております。以下「第2 事業の状況」及び「第3 設備の状況」に記載されている金額も同様であります。
③ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称金額(百万円)前期比(%)
スマートホーム688,744+16.1
スマートビジネスソリューション318,452△1.0
IoTエレクトロデバイス414,820△11.3
アドバンスディスプレイシステム957,731△8.2
合計2,379,750△1.9

(注)1 金額は、販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。
2 上記の金額には、外注製品仕入高等を含んでおります。
3 組織変更に伴い、第2四半期連結会計期間より、従来「スマートビジネスソリューション」セグメントに含めておりました先進設備開発事業を「IoTエレクトロデバイス」セグメントに含めており、前連結会計年度との比較は、変更後の報告セグメントの区分に基づき作成しております。
b.受注実績
当社グループは原則として見込生産を行っております。
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称金額(百万円)前期比(%)
スマートホーム681,330+14.5
スマートビジネスソリューション319,215+0.4
IoTエレクトロデバイス441,231△4.6
アドバンスディスプレイシステム958,295△8.9
合計2,400,072△1.1

(注)1 セグメント間の取引については相殺消去しております。
2 組織変更に伴い、第2四半期連結会計期間より、従来「スマートビジネスソリューション」セグメントに含めておりました先進設備開発事業を「IoTエレクトロデバイス」セグメントに含めており、前連結会計年度との比較は、変更後の報告セグメントの区分に基づき作成しております。
3 主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
相手先前連結会計年度当連結会計年度
金額(百万円)割合(%)金額(百万円)割合(%)
APPLE INC.575,83623.7563,33623.5

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づいて作成されております。この連結財務諸表の作成にあたり、必要と思われる見積りについては、過去の実績等を勘案し合理的な基準に基づいて実施しております。
なお、当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度の経営成績等は次のとおりであります。
a.経営成績等の状況
当社グループは、「8KとAIoTで世界を変える」という事業ビジョンを掲げ、2017年5月26日に発表した「2017~2019年度 中期経営計画」及び、2019年1月30日公表の通期連結業績予想(売上高2,500,000百万円、営業利益107,000百万円、経常利益96,000百万円、親会社株主に帰属する当期純利益90,000百万円)の達成に向け、「人に寄り添うIoT」「8Kエコシステム」をキーワードに事業拡大に取り組んでまいりました。しかしながら、当連結会計年度においては、米中貿易摩擦や大手顧客の需要変動の影響等が強まり、年度末にかけて想定以上に厳しい市場環境となりました。一方、当社は、環境変化に先んじ、第2四半期連結会計期間以降、「量から質へ」の転換を進めてまいりました。
当連結会計年度の連結業績については、スマートホームセグメントは堅調に事業拡大し、スマートビジネスソリューションセグメントも底堅く推移しました。一方、デバイスの顧客需要に変動があったこと、また中国においてテレビの販売抑制を行ったことから、IoTエレクトロデバイスセグメント及びアドバンスディスプレイシステムセグメントの売上高が減少し、全社の売上高は2,400,072百万円と、上記の通期連結業績予想に達しませんでした。利益についても上記要因により、営業利益84,140百万円、経常利益69,011百万円、親会社株主に帰属する当期純利益74,226百万円と、いずれも上記の通期連結業績予想に達しませんでしたが、環境変化に先んじて収益力の強化を進めた結果、親会社株主に帰属する当期純利益については、売上高比3.1%、前年度比5.7%増と、金額及び利益率ともに、前年度(70,225百万円、売上高比2.9%)を上回ることができました。
なお、上述の環境変化を踏まえ、2019年5月9日に、2020年3月期連結業績予想(売上高2,650,000百万円、営業利益100,000百万円、経常利益95,000百万円、親会社株主に帰属する当期純利益80,000百万円)を公表いたしました。2020年3月期は、上記業績予想の達成に向け、「グローバル事業拡大」「新規事業の創出」「M&A/協業」「競争力強化」を進め、事業拡大を図るとともに、更なる収益力の強化や資本の質的向上に取り組んでまいります。
当連結会計年度末の財政状態については、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要」に記載のとおりでありますが、「資本の質の向上」を図るため、2019年1月30日にA種種類株式92,000株を総額85,107百万円で取得し、同日その全数を消却したことから、純資産合計は372,471百万円、自己資本比率は18.8%と、いずれも前連結会計年度末(純資産合計401,713百万円、自己資本比率19.8%)から減少しました。ただし上記のA種種類株式の取得及び消却の影響を除くと、親会社株主に帰属する当期純利益の計上などにより、純資産合計及び自己資本比率いずれも前連結会計年度末より改善しております。
なお、セグメントごとの経営成績の状況およびキャッシュ・フローに関する認識及び分析・検討内容は、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要」に記載のとおりであります。
b.資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社グループは、資金の支出効果の見極めを十分行いながら、事業運営上必要な資金の流動性と資金の源泉の安定的確保を図る趣旨の下、短期運転資金は自己資金及び短期借入で、設備投資や長期運転資金の調達につきましては長期借入及び社債発行で賄うことを基本原則としております。連結会計年度においては、利益計上を主な要因として、営業活動による資金の増加が79,043百万円となりました。一方、持続的成長や経営効率化を具現化するための有形固定資産取得や、新規事業領域への足がかりや既存事業の競争力強化を目的とした投資有価証券の取得などの投資支出を行いました。また、財務活動面では、A種種類株式92,000株の取得のための支出85,107百万円や、配当金の支払21,076百万円を行いました。
その結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は228,798百万円となっております。また、当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債残高は、前連結会計年度末に比べ29,424百万円増加し、667,208百万円となっております。
今後、在庫の適正化を始めとした運転資本の改善や、効率的な投資の実施に努め、キャッシュ・フローの改善を図ってまいります。
なお、当社は、2019年1月30日に、A種種類株式200,000株のうち92,000株を総額85,107百万円で取得し、同日その全数を消却しましたが、2019年6月11日の取締役会において、残るA種種類株式108,000株の全数の取得および消却について決議し、同日、A種種類株式を保有する㈱みずほ銀行及び㈱三菱UFJ銀行と、「自己株式取得に関する契約書」を締結いたしました。また、これに基づき、2019年6月21日、A種種類株式108,000株を総額97,072百万円で取得し、同日、その全数を消却いたしました。(詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な後発事象)」に記載のとおりであります。)これにより、A種種類株式が有していた高配当率での優先配当権や普通株式や金銭を対価とする取得請求権に起因する、企図せぬ希薄化や多額の金銭支出可能性が排除され、「資本の質的向上」が達せられたと考えております。引き続き、業績の向上、財務体質の強化により、普通株式の価値向上を図ってまいります。
c.経営成績に重要な影響を与える要因について
「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。