有価証券報告書-第126期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

【提出】
2020/06/30 16:47
【資料】
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【項目】
161項目
(1) 経営成績等の状況及び経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は、次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
(経営成績)
当連結会計年度における世界経済は、新型コロナウイルス感染症の世界的な流行により、年度末にかけて、非常に厳しい状況となりました。しかしながら、着実にトランスフォーメーションを推進していることもあり、こうした状況下でも、親会社株主に帰属する当期純利益を確保することができました。
売上高は2,271,248百万円(前年度比 94.6%)となりました。利益につきましては、営業利益が52,773百万円(前年度比 62.7%)、経常利益が55,541百万円(前年度比 80.5%)、親会社株主に帰属する当期純利益は20,958百万円(前年度比 28.2%)となりました。
新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響は、売上高で約1,780億円、営業利益で約360億円の押し下げ要因となりました。
0102010_005.png0102010_006.png2019年度は、上記の新型コロナウイルス感染症の感染拡大による影響のほか、従業員の平均残存勤務期間の見直しによる退職給付費用の増加など、想定外の特殊要因がありました。これらの特殊要因を除くと、「売価ダウン」による収益の減少が約882億円、「コストダウン・モデルミックス」による収益の改善が約706億円、「販売増減」による利益の増加が約280億円、「経費」の削減による約22億円の収支影響などがありました。
(新型コロナウイルス感染症の流行による影響と当社グループの対応)
全社に共通する影響としては、世界的な物流の混乱や、在宅勤務の拡大に伴う複写機等のオフィス機器設置の延期によるものなどがありました。商品事業においては、国内では、中国やASEANの工場の稼働率が低下したことに伴い商材が確保できなかったこと、3月後半に一部の量販店が営業を取りやめたことなどにより、通信や白物家電のほか、テレビ、パソコン事業などに影響がありました。中国では、販売店の営業停止や外出規制に加え、工場の稼働が停止した影響などにより、テレビや白物家電の販売が減少しました。ASEANでは、マレーシアやフィリピン、インドネシアなどで、外出制限や経済活動制限が実施されたことなどにより、テレビや白物家電のほか、ビジネスソリューションなどに影響がありました。欧州や米州では、ビジネスソリューションでコピーボリュームやサービスの売上が減少したほか、欧州でテレビなど、米州では白物家電などで影響がありました。一方、デバイス事業においては、自社工場や納入先工場の稼働が停止あるいは稼働率が低下したことなどから、2月以降、車載向けやスマートフォン向け製品の販売に大きな影響が出るなどしました。
当社グループの対応の詳細は、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)経営環境と優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」に記載のとおりであります。
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(セグメント業績)
セグメントの業績は、概ね次のとおりであります。
なお、当連結会計年度より報告セグメントの区分を変更しております。以下の前連結会計年度との比較については、前連結会計年度の数値を変更後の区分に組替えた数値で比較しております。報告セグメントの変更については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (セグメント情報等)」に詳細を記載しております。
スマートライフ
エアコンや冷蔵庫、洗濯機の販売が増加したものの、デバイスの販売が減少したことから、売上高は856,291百万円(前年度比 95.3%)となりました。利益面では、コストダウンの効果などにより、セグメント利益は39,719百万円(前年度比 126.3%)となりました。
8Kエコシステム
液晶テレビやスマートフォン用パネルの販売が減少したことから、売上高は1,157,278百万円(前年度比 88.1%)となりました。利益面では、コストダウンに取り組んだものの、販売が減少したことから、セグメント利益は14,945百万円(前年度比 31.5%)となりました。
ICT
通信事業の売上は減少しましたが、Dynabook㈱を連結子会社化した効果があり、売上高は357,507百万円(前年度比 127.3%)となりました。利益面では、通信事業の販売が減少したことから、セグメント利益は20,240百万円(前年度比 97.0%)となりました。
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生産、受注及び販売の実績は以下のとおりです。
a.生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称金額(百万円)前期比(%)
スマートライフ791,277△4.2
8Kエコシステム1,128,802△12.2
ICT335,712+27.1
合計2,255,792△5.1

(注)1 金額は、販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。
2 上記の金額には、外注製品仕入高等を含んでおります。
3 組織変更に伴い、当連結会計年度より報告セグメントの区分を変更しており、前連結会計年度との比較は、変更後の報告セグメントの区分に基づき作成しております。
b.受注実績
当社グループは原則として見込生産を行っております。
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称金額(百万円)前期比(%)
スマートライフ801,254△5.6
8Kエコシステム1,131,375△12.1
ICT338,619+28.3
合計2,271,248△5.4

(注)1 セグメント間の取引については相殺消去しております。
2 組織変更に伴い、当連結会計年度より報告セグメントの区分を変更しており、前連結会計年度との比較は、変更後の報告セグメントの区分に基づき作成しております。
3 主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
相手先前連結会計年度当連結会計年度
金額(百万円)割合(%)金額(百万円)割合(%)
APPLE INC.563,33623.5522,25423.0

(財政状態)
当連結会計年度末の財政状態は、資産合計が、前連結会計年度末に比べ33,999百万円減の1,832,349百万円となりました。これは、たな卸資産が増加する一方、受取手形及び売掛金が減少したことなどによるものです。負債合計は、短期借入金が増加したことなどから、前連結会計年度末に比べ43,333百万円増の1,537,211百万円となりました。また、純資産合計は、配当金の支払いを行った一方で親会社株主に帰属する当期純利益を計上したことにより利益剰余金が増加したものの、自己株式(A種種類株式)の取得及び消却により資本剰余金が減少したことで、前連結会計年度末に比べ77,333百万円減少し、295,138百万円となりました。
(たな卸資産)
2020年3月期たな卸資産残高は294,788百万円、月商比で1.56ヶ月分の水準となりました。新型コロナウイルス感染症の影響で、売上高が減少し、たな卸資産が213億円増加したため、月商比でのたな卸資産水準は上昇しております。
当社グループは、主に日本・中国・タイなどのアジア圏で製造された製品を全世界へ輸出しているため、部品の調達や製品の製造・輸送・保管に、売上水準に応じた一定水準のたな卸資産の保有は不可欠ですが、製品の安定生産・供給を図りつつ、たな卸資産の月商比の圧縮に取り組んでまいります。
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② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
a. キャッシュ・フローの状況
(単位:百万円)
前連結会計年度
(自 2018年4月1日
至 2019年3月31日)
当連結会計年度
(自 2019年4月1日
至 2020年3月31日)
増減
営業活動によるキャッシュ・フロー79,04368,086△10,957
投資活動によるキャッシュ・フロー△167,587△127,88239,704
財務活動によるキャッシュ・フロー△88,5174,56093,077
現金及び現金同等物の期末残高228,798170,323△58,474

当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下、「資金」といいます。)は、前連結会計年度末に比べ58,474百万円減少し、当連結会計年度末には170,323百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において営業活動による資金の収入は、68,086百万円であり、前連結会計年度に比べ10,957百万円減少しました。これは、前連結会計年度に比べて、売上債権の増減額で139,201百万円増加したものの、税金等調整前当期純利益が37,253百万円減少したほか、未収入金の増減額で49,553百万円、たな卸資産の増減額で57,984百万円それぞれ減少したことなどによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において投資活動による資金の支出は、127,882百万円であり、前連結会計年度に比べ39,704百万円減少しました。これは、前連結会計年度に比べて、有形固定資産の取得による支出が53,182百万円減少したことなどによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において財務活動による資金の収入は、4,560百万円であり、前連結会計年度に比べ93,077百万円増加しました。これは、前連結会計年度に比べて、自己株式の取得による支出が11,913百万円、社債の償還による支出が20,000百万円それぞれ増加したものの、短期借入金による収入が純額で136,808百万円増加したことなどによるものであります。
b. 資本の財源及び資金の流動性についての分析
(財務・資本政策)
当社グループは、たな卸資産の適正化や会社業績の向上による営業キャッシュ・フローの積み上げ、効率を重視した投資による投資キャッシュ・フローの管理により、フリー・キャッシュ・フローの改善に努めております。また、有利子負債から現金及び預金を差し引いた「純有利子負債」の圧縮を目標とし、成長に向けた財務基盤の強化、資金の流動性の向上を図ってまいります。なお、2020年3月期の純有利子負債は568,155百円となっております。
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(資金調達)
当社グループは、資金の支出効果の見極めを十分行いながら、事業運営上必要な資金の流動性と資金の源泉の安定的確保を図る趣旨の下、短期運転資金を自己資金及び短期借入で、設備投資や長期運転資金の調達については長期借入で賄うことを基本原則としております。総資産に対する借入金の割合は当連結会計年度末現在42.4%となっており、このうち当該借入金に対する短期借入金の占める割合は30.6%となりました。
主要な取引先金融機関とは良好な関係を維持しており、流動性確保のため、200,000百万円のコミットメントライン契約を締結しております。さらに子会社への貸付などグループファイナンスを通じて、グループ内資金を有効に活用しております。
安定的な外部資金調達は、重要な経営課題と認識しており、格付の早期回復による直接金融の実現に向け、財務内容の改善を図ってまいります。
(株主還元)
当社は株主各位に対する利益還元を経営上の最重要課題の一つと考え、安定配当の維持を基本としながら、連結業績と財務状況並びに今後の事業展開等を総合的に勘案し、長期的な視点に立って利益還元に取り組んでおります。かかる観点から、連結業績の動向、投資や財務体質改善の必要性を勘案し、2020年3月31日を基準日とした普通株式の期末配当は、一株当たり18円の配当を実施しました。
さらにA種種類株式200,000株のうち92,000株を2019年1月30日に取得、また、残る108,000株を2019年6月21日に取得し、その全数を消却しております。これにより、A種種類株式が有していた高配当率での優先配当権や普通株式や金銭を対価とする取得請求権に起因する、企図せぬ希薄化や多額の金銭支出可能性が排除され、「資本の質的向上」が達せられたと考えております。今後も株式の価値向上を図ってまいります。
(2) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づいて作成されております。連結財務諸表の作成にあたり必要となる見積りについては、過去の実績や第三者による評価等を勘案し合理的に判断しておりますが、見積り特有の不確実性のため、実際の結果は見積りと異なる場合があります。
当社の連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しておりますが、連結財務諸表の作成に当たって用いた特に重要な会計上の見積り及び仮定については、下記のとおりであります。
① たな卸資産の評価
当社グループは、たな卸資産について正味売却価額が簿価を下回った場合に簿価の切下げを行っております。また、一定期間以上滞留が認められるたな卸資産については、販売の実現可能性が低下しつつあると仮定し、期間の経過に応じ規則的に簿価を切下げる方法で早期に償却を行っております。さらに、販売が困難と認められる場合などには、個別に簿価の切下げも実施しております。
しかしながら、将来の予測不能な環境変化等により、価格下落など当社グループに不利な状況が生じた場合、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において簿価の切下げが追加的に必要となる可能性があります。
② 固定資産の減損
当社は、営業活動から生ずる損益またはキャッシュ・フローが継続してマイナスとなるなど減損の兆候が見られる場合に資産又は資産グループについて減損の判定を行い、使用価値と正味売却価額のいずれか高い方が帳簿価額を下回っていると判断される場合には、その差額を減損損失として認識します。使用価値算定の基礎となる将来の事業計画は、外部情報調査会社による市場価格、需要の見通しなど決算時点で入手可能な情報も考慮して作成しております。また、正味売却価額は、第三者による資産評価など合理的な方法をもって決定しております。
しかしながら、将来、事業計画の前提となった市場環境などに変化があった場合、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において減損損失を追加的に計上する可能性があります。