有価証券報告書-第117期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)
第1四半期連結累計期間より、従来の米国会計基準に替えてIFRSを適用しており、前連結会計年度の数値もIFRSベースに組み替えて比較・分析を行っています。
(1) 経営成績等の状況の概要
①経営成績の状況
当連結会計年度の世界経済は、前連結会計年度から続く新型コロナウイルスの影響により、4月から6月にかけて急激に減速しました。7月以降は各国の経済活動再開や景気対策により緩やかに回復したものの、年度を通じてはマイナス成長となりました。
自動車市場においても、世界的な工場の稼働停止や販売店の営業停止などの影響もあり、中国などの感染影響が限定的だった一部地域を除き、多くの地域で大幅な前年実績割れとなりました。
このような経営環境の中、トヨタは、現場での改善活動を中心に、今やるべきことに取り組みました。生産現場では、生産ラインが停止した時間を使い、モノづくりの力やTPS (トヨタ生産方式) を活かして、マスクやフェイスシールド、足踏み式消毒スタンドなどを生産しました。販売現場では、オンライン販売として、非接触でのお客様との関係づくりを、全世界で推進しました。オンライン環境で、世界中の関係者と経営トップのコミュニケーションが可能となり、各地の状況のタイムリーな情報共有、迅速な意思決定に繋がりました。
また、当たり前のことを当たり前にやろう、という考えの下、当連結会計年度は予定通り多数のモデルを発売しました。新時代のSUVを目指した新型「ハリアー」は、実用性や数値一辺倒ではない、見て乗って走り出した瞬間に心が動く感性品質を重視しました。新型「MIRAI」はゼロエミッションでありながら、感性に訴えるデザイン、唯一無二の走り、一歩先を行くあふれる先進性、安心の航続距離を備えるコンセプトで、将来の水素社会実現に向けた、新たな出発点となるクルマです。レクサスブランドでは、レクサスの電気自動車(BEV) ならではの上質な走りと静粛性、ハイブリッドで培った電動化技術の高い信頼性と利便性、「UX」譲りの個性的なデザインや高い機能性を実現した「UX300e」を発売しました。また、「GRヤリス」はモータースポーツ用の車両を市販化するという逆転の発想で開発したトヨタ初のモデルです。モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくりとして、開発初期からドライバーモリゾウと社外プロドライバーが評価し、東京オートサロン2020で披露した後も、サーキットで何度も評価と改善のサイクルを繰り返し、発売に至りました。
当連結会計年度における日本、海外を合わせた自動車の連結販売台数は、764万6千台と、前連結会計年度に比べて130万9千台(14.6%) の減少となりました。日本での販売台数については、212万5千台と、前連結会計年度に比べて11万5千台(5.1%) 減少しました。一方、海外においては、全ての地域で販売台数が減少したことにより、552万1千台と、前連結会計年度に比べて119万4千台(17.8%) の減少となりました。
当連結会計年度の業績については、次のとおりです。
なお、営業利益の主な増減要因は、次のとおりです。
事業別セグメントの業績は、次のとおりです。
a.自動車事業
営業収益は24兆6,515億円と、前連結会計年度に比べて2兆1,481億円(8.0%) の減収となり、営業利益は1兆6,071億円と、前連結会計年度に比べて4,059億円(20.2%) の減益となりました。営業利益の減益は、生産および販売台数の減少などによるものです。
b.金融事業
営業収益は2兆1,622億円と、前連結会計年度に比べて309億円(1.4%) の減収となりましたが、営業利益は4,955億円と、前連結会計年度に比べて2,118億円(74.7%) の増益となりました。営業利益の増益は、販売金融子会社において貸倒関連費用および残価損失関連費用が減少したことならびに金利スワップ取引などの時価評価による評価益が計上されたことなどによるものです。
c.その他の事業
営業収益は1兆523億円と、前連結会計年度に比べて4,525億円(30.1%) の減収となり、営業利益は853億円と、前連結会計年度に比べて180億円(17.4%) の減益となりました。
所在地別の業績は、次のとおりです。
a.日本
営業収益は14兆9,489億円と、前連結会計年度に比べて1兆4,929億円(9.1%) の減収となり、営業利益は1兆1,492億円と、前連結会計年度に比べて4,360億円(27.5%) の減益となりました。営業利益の減益は、生産および販売台数の減少などによるものです。
b.北米
営業収益は9兆4,918億円と、前連結会計年度に比べて1兆1,502億円(10.8%) の減収となりましたが、営業利益は4,013億円と、前連結会計年度に比べて1,481億円(58.5%) の増益となりました。営業利益の増益は、営業面の努力などによるものです。
c.欧州
営業収益は3兆1,344億円と、前連結会計年度に比べて2,208億円(6.6%) の減収となり、営業利益は1,079億円と、前連結会計年度に比べて358億円(24.9%) の減益となりました。営業利益の減益は、為替変動の影響などによるものです。
d.アジア
営業収益は5兆452億円と、前連結会計年度に比べて2,479億円(4.7%) の減収となりましたが、営業利益は4,359億円と、前連結会計年度に比べて723億円(19.9%) の増益となりました。営業利益の増益は、原価改善の努力および営業面の努力などによるものです。
e.その他の地域 (中南米、オセアニア、アフリカ、中近東)
営業収益は1兆8,728億円と、前連結会計年度に比べて2,412億円(11.4%) の減収となり、営業利益は598億円と、前連結会計年度に比べて241億円(28.8%) の減益となりました。
②財政状態の状況
当連結会計年度末における財政状態については、次のとおりです。
資産合計は62兆2,671億円と、前連結会計年度末に比べて8兆2,947億円 (15.4%) の増加となりました。負債合計は37兆9,788億円と、前連結会計年度末に比べて5兆3,454億円 (16.4%) の増加となりました。資本合計は24兆2,883億円と、前連結会計年度末に比べて2兆9,493億円 (13.8%) の増加となりました。
③キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は5兆1,008億円と、前連結会計年度末に比べて1兆24億円 (24.5%) の増加となりました。
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況と、前連結会計年度に対するキャッシュ・フローの増減は、次のとおりです。
営業活動によるキャッシュ・フロー
当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、2兆7,271億円の資金の増加となり、前連結会計年度が2兆3,984億円の増加であったことに比べて、3,286億円の増加となりました。
投資活動によるキャッシュ・フロー
当連結会計年度の投資活動によるキャッシュ・フローは、4兆6,841億円の資金の減少となり、前連結会計年度が2兆1,246億円の減少であったことに比べて、2兆5,595億円の減少となりました。
財務活動によるキャッシュ・フロー
当連結会計年度の財務活動によるキャッシュ・フローは、2兆7,391億円の資金の増加となり、前連結会計年度が3,628億円の増加であったことに比べて、2兆3,763億円の増加となりました。
④生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度における生産実績を事業別セグメントごとに示すと、次のとおりです。
b.受注実績
当社および連結製造子会社は、国内販売店、海外販売店等からの受注状況、最近の販売実績および販売見込等の情報を基礎として、見込生産を行っています。
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績を事業別セグメントごとに示すと、次のとおりです。
前述の当連結会計年度における「自動車事業」の販売数量を、仕向先別に示すと、次のとおりです。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
本項においては、将来に関する事項が含まれていますが、当該事項は有価証券報告書提出日 (2021年6月24日)
現在において判断したものです。
①概観
トヨタの事業セグメントは、自動車事業、金融事業およびその他の事業で構成されています。自動車事業は最も重要な事業セグメントで、当連結会計年度においてトヨタの営業収益合計 (セグメント間の営業収益控除前) の88%を占めています。当連結会計年度における車両販売台数ベースによるトヨタの主要な市場は、日本 (27.8%) 、北米 (30.3%) 、欧州 (12.5%) およびアジア (16.0%) となっています。
a.自動車市場環境
世界の自動車市場は、非常に競争が激しく、また予測が困難な状況にあります。さらに、自動車業界の需要は、社会、政治および経済の状況、新車および新技術の導入ならびにお客様が自動車を購入または利用される際に負担いただく費用といった様々な要素の影響を受けます。これらの要素により、各市場および各タイプの自動車に対するお客様の需要は、大きく変化します。
当連結会計年度の自動車市場は、新型コロナウイルスによる世界的な工場の稼働停止や販売店の営業停止などの影響もあり、中国などの感染影響が限定的だった一部地域を除き、多くの地域で大幅な前年実績割れとなりました。
次の表は、過去2連結会計年度における各仕向地域別の連結販売台数を示しています。
(注) 「その他」は、中南米、オセアニア、アフリカ、中近東ほかからなります。
トヨタの日本における当連結会計年度の連結販売台数は、市場が前連結会計年度を下回る状況のもと、減少しました。トヨタの海外における連結販売台数は、自動車市場の大幅な縮小により、北米、アジア、その他の地域を中心に販売台数が大きく減少しました。
各市場における全車両販売台数に占めるトヨタのシェアは、製品の品質、安全性、信頼性、価格、デザイン、性能、経済性および実用性についての他社との比較により左右されます。また、時機を得た新車の導入やモデルチェンジの実施も、お客様のニーズを満たす重要な要因です。変化し続けるお客様の嗜好を満たす能力も、売上および利益に大きな影響をもたらします。
自動車事業の収益性は様々な要因により左右されます。これらには次のような要因が含まれます。
車両販売台数
販売された車両モデルとオプションの組み合わせ
部品・サービス売上
価格割引およびその他のインセンティブのレベルならびにマーケティング費用
顧客からの製品保証に関する請求およびその他の顧客満足のための修理等にかかる費用
研究開発費等の固定費
原材料価格
コストの管理能力
生産資源の効率的な利用
特定の仕入先への部品供給の依存による生産への影響
自然災害および感染症の発生・蔓延や社会インフラの障害による市場・販売・生産への影響
日本円およびトヨタが事業を行っている地域におけるその他通貨の為替相場の変動
法律、規制、政策の変更およびその他の政府による措置も自動車事業の収益性に著しい影響を及ぼすことがあります。これらの法律、規制および政策には、車両の製造コストを大幅に増加させる環境問題、車両の安全性、燃費および排ガスに影響を及ぼすものが含まれます。
多くの国の政府が、現地調達率を規定し、関税およびその他の貿易障壁を課し、あるいは自動車メーカーの事業を制限したり本国への利益の移転を困難にするような価格管理あるいは為替管理を行っています。このような法律、規制、政策その他の行政措置における変更は、製品の生産、ライセンス、流通もしくは販売、原価、あるいは適用される税率に影響を及ぼすことがあります。トヨタは、トヨタ車の安全性について潜在的問題がある場合に適宜リコール等の市場処置 (セーフティ・キャンペーンを含む) を発表しています。前述のリコール等の市場処置をめぐり、トヨタに対する申し立ておよび訴訟が提起されています。これらの申し立ておよび訴訟に関しては、連結財務諸表注記25を参照ください。
世界の自動車産業は、グローバルな競争の時期にあり、この傾向は予見可能な将来まで続く可能性があります。また、トヨタが事業を展開する競争的な環境は、さらに激化する様相を呈しています。トヨタは一独立企業として自動車産業で効率的に競争するための資源、戦略および技術を予見可能な将来において有していると考えています。
b.金融事業
自動車金融の市場は、大変競争が激しくなっています。自動車金融の競争激化は、利益率の減少を引き起こす可能性があり、また、顧客がトヨタ車を購入する際にトヨタ以外の金融サービスを利用するようになる場合、マーケット・シェアが低下することも考えられます。
トヨタの金融サービス事業は、主として、顧客および販売店に対する融資プログラムおよびリース・プログラムの提供を行っています。トヨタは、顧客に対して資金を提供する能力は、顧客に対しての重要な付加価値サービスであると考え、金融子会社のネットワークを各国へ展開しています。
小売融資およびリースにおけるトヨタの主な競争相手には、商業銀行、消費者信用組合、その他のファイナンス会社が含まれます。一方、卸売融資における主な競争相手には、商業銀行および自動車メーカー系のファイナンス会社が含まれます。
トヨタの金融事業に係る債権は、主に為替変動の影響により、当連結会計年度において増加しました。また、賃貸用車両及び器具は、主に為替変動の影響により、当連結会計年度において増加しました。
金融事業に係る債権および賃貸用車両及び器具の詳細については、連結財務諸表注記9および13を参照ください。
トヨタの金融債権は、回収可能性リスクを負っています。これは顧客もしくは販売店の支払不能や、担保価値 (売却費用控除後) が債権の帳簿価額を下回った場合に発生する可能性があります。詳細については、連結財務諸表注記4および20を参照ください。
トヨタは、車両リースを継続的に提供してきました。当該リース事業によりトヨタは残存価額のリスクを負っています。これは車両リース契約の借手が、リース終了時に車両を購入するオプションを行使しない場合に発生する可能性があります。詳細については、連結財務諸表注記3 (8) を参照ください。
トヨタは、主に固定金利借入債務を機能通貨建ての変動金利借入債務へ転換するために、金利スワップおよび金利通貨スワップ契約を結んでいます。特定のデリバティブ金融商品は、経済的企業行動の見地からは金利リスクをヘッジするために契約されていますが、トヨタの連結財政状態計算書における特定の資産および負債をヘッジするものとしては指定されていないため、それらの指定されなかったデリバティブから生じる未実現評価損益は、その期間の損益として計上されます。詳細については、連結財務諸表注記21および22を参照ください。
資金調達コストの変動は、金融事業の収益性に影響を及ぼす可能性があります。資金調達コストは、数多くの要因の影響を受けますが、その中にはトヨタがコントロールできないものもあります。これには、全般的な景気、金利およびトヨタの財務力などが含まれます。当連結会計年度の資金調達コストは主に市場金利の低下により減少しました。
トヨタは、2001年4月に日本でクレジットカード事業を立上げました。カード会員数は、2021年3月31日現在16.4百万人と、2020年3月31日から0.5百万人の増加となりました。カード債権は、2021年3月31日現在4,841億円と、2020年3月31日から24億円の増加となりました。
c.その他の事業
トヨタのその他の事業には、情報通信事業・ガズー事業等の情報技術関連事業、プレハブ等住宅の製造・販売を手掛ける住宅事業等が含まれます。なお、当社は、前連結会計年度において、パナソニック株式会社 (以下、パナソニックという。) と街づくり事業に関する新しい合弁会社であるプライム ライフ テクノロジーズ株式会社 (以下、プライム ライフ テクノロジーズという。) を設立し、同社はトヨタの持分法適用会社となりました。また、当社の連結子会社であったトヨタホーム株式会社 (以下、トヨタホームという。) およびミサワホーム株式会社 (以下、ミサワホームという。) はプライム ライフ テクノロジーズの完全子会社となったことにより、トヨタの連結子会社ではなくなりました。詳細については、連結財務諸表注記6を参照ください。
トヨタは、その他の事業は連結業績に大きな影響を及ぼすものではないと考えています。
d.為替の変動
トヨタは、為替変動による影響を受けやすいといえます。トヨタは日本円の他に主に米ドルおよびユーロの価格変動の影響を受けており、また、米ドルやユーロに加え、豪ドル、ロシア・ルーブル、加ドルおよび英国ポンドなどについても影響を受けることがあります。日本円で表示されたトヨタの連結財務諸表は、換算リスクおよび取引リスクによる為替変動の影響を受けています。
換算リスクとは、特定期間もしくは特定日の財務諸表が、事業を展開する国々の通貨の日本円に対する為替の変動による影響を受けるリスクです。たとえ日本円に対する通貨の変動が大きく、前連結会計年度との比較において、また地域ごとの比較においてかなりの影響を及ぼすとしても、換算リスクは報告上の考慮事項に過ぎず、その基礎となる業績を左右するものではありません。トヨタは換算リスクに対してヘッジを行っていません。
取引リスクとは、収益と費用および資産と負債の通貨が異なることによるリスクです。取引リスクは主にトヨタの日本製車両の海外売上に関係しています。
トヨタは、生産施設が世界中に所在しているため、取引リスクは大幅に軽減されていると考えています。グローバル化戦略の一環として、車両販売を行う主要市場において生産施設を建設することにより、生産を現地化してきました。前連結会計年度および当連結会計年度において、トヨタの海外における車両販売台数のそれぞれ69.0%および69.7%が海外で生産されています。北米では前連結会計年度および当連結会計年度の車両販売台数のそれぞれ67.6%および65.3%が現地で生産されています。欧州では前連結会計年度および当連結会計年度の車両販売台数のそれぞれ74.4%および71.9%が現地で生産されています。生産の現地化により、トヨタは生産過程に使用される供給品および原材料の多くを現地調達することができ、現地での収益と費用の通貨のマッチングをはかることが可能です。
トヨタは、取引リスクの一部に対処するために為替の取引およびヘッジを行っています。これにより為替変動による影響は軽減されますが、すべて排除されるまでには至っておらず、年によってその影響が大きい場合もあり得ます。為替変動リスクをヘッジするためにトヨタで利用されるデリバティブ金融商品に関する追加的な情報については、連結財務諸表注記21および22を参照ください。
一般的に、円安は営業収益、営業利益および親会社の所有者に帰属する当期利益に好影響を及ぼし、円高は悪影響を及ぼします。日本円の米ドルに対する期中平均相場は、前会計年度に比べて円高に推移しました。また、日本円の米ドルに対する決算日の為替相場は、前会計年度末に比べて円安となりました。日本円のユーロに対する期中平均および決算日の為替相場は、前連結会計年度に比べて円安に推移しました。
e.セグメンテーション
トヨタの最も重要な事業セグメントは、自動車事業セグメントです。トヨタは、世界の自動車市場においてグローバル・コンペティターとして自動車事業を展開しています。マネジメントは世界全体の自動車事業を一つの事業セグメントとして資源の配分やその実績の評価を行っており、自動車事業セグメント内で資源を配分するために、販売台数、生産台数、マーケット・シェア、車両モデルの計画および工場のコストといった財務およびそれ以外に関するデータの評価を行っています。トヨタは国内・海外または部品等のような自動車事業の一分野を個別のセグメントとして管理していません。
②地域別内訳
次の表は、過去2連結会計年度のトヨタの地域別外部顧客向け営業収益を示しており、当社または連結子会社の所在国の位置を基礎として集計しています。
(注) 「その他」 は、中南米、オセアニア、アフリカ、中近東からなります。
③業績―当連結会計年度と前連結会計年度の比較
(注) 「その他」は、中南米、オセアニア、アフリカ、中近東からなります。
a.営業収益
当連結会計年度の営業収益は27兆2,145億円と、前連結会計年度に比べて2兆6,519億円 (8.9%) の減収となりました。この減収は、主に車両販売台数および販売構成の変化による影響2兆800億円や、為替変動の影響5,600億円によるものです。
トヨタの事業別外部顧客向け営業収益の商品別内訳は次のとおりです。
営業収益は自動車事業およびその他の事業の合計である商品・製品売上収益ならびに金融事業に係る金融収益で構成されており、当連結会計年度の商品・製品売上収益は25兆773億円と、前連結会計年度に比べて9.4%の減収となり、金融事業に係る金融収益は2兆1,371億円と、前連結会計年度に比べて1.6%の減収となりました。商品・製品売上収益の減収は、主にトヨタの販売台数が1,309千台減少したことによるものです。前連結会計年度末および当連結会計年度末の各地域における融資件数 (残高) の状況は次のとおりです。
・金融事業における融資件数残高
(注) 「その他」は、中南米、オセアニア、アフリカからなります。
当連結会計年度の営業収益 (セグメント間の営業収益控除前) は前連結会計年度に比べて、日本では9.1%、北米では10.8%、欧州では6.6%、アジアでは4.7%、その他の地域では11.4%の減収となりました。為替変動の影響5,600億円を除いた場合、当連結会計年度の営業収益は前連結会計年度に比べて、日本では9.1%、北米では8.5%、欧州では5.5%、アジアでは3.5%の減収、その他の地域では0.1%の増収であったと考えられます。
各地域における営業収益 (セグメント間の営業収益控除前) の状況は次のとおりです。
・日本
日本においては、輸出台数を含むトヨタの販売台数は前連結会計年度に比べて431千台減少し、減収となりました。前連結会計年度および当連結会計年度における輸出台数はそれぞれ2,044千台および1,728千台となりました。
・北米
北米においては、トヨタの販売台数は前連結会計年度に比べて400千台減少し、減収となりました。
・欧州
欧州においては、トヨタの販売台数は前連結会計年度に比べて70千台減少し、減収となりました。
・アジア
アジアにおいては、トヨタの販売台数は前連結会計年度に比べて378千台減少し、減収となりました。
・その他の地域
その他の地域においては、トヨタの販売台数は前連結会計年度に比べて345千台減少し、減収となりました。
b.営業費用
当連結会計年度における営業費用は25兆168億円と、前連結会計年度に比べて2兆4,504億円 (8.9%) の減少となりました。
・原価改善の努力
当連結会計年度は、仕入先と一体となった原価改善活動に引き続き精力的に取り組んだ結果、VE (Value Engineering)活動を中心とした設計面での原価改善など800億円および工場・物流部門などにおける原価改善700億円により営業費用を1,500億円減少することができました。
原価改善の努力は、継続的に実施されているVE・VA (Value Analysis) 活動、部品の種類の絞込みにつながる部品共通化、ならびに車両生産コストの低減を目的としたその他の製造活動に関連しています。なお、原価改善の努力には、鉄鋼、貴金属、非鉄金属 (アルミ等) 、樹脂関連部品などの資材・部品価格の変動による影響が含まれています。
・売上原価
当連結会計年度における売上原価は21兆1,998億円と、前連結会計年度に比べて1兆9,037億円 (8.2%) の減少となりました。この減少は、主に車両販売台数および販売構成の変化による影響、連結子会社の減少の影響、為替換算レート変動の影響ならびに原価改善の努力によるものです。
・金融事業に係る金融費用
当連結会計年度における金融事業に係る金融費用は1兆1,823億円と、前連結会計年度に比べて1,994億円 (14.4%) の減少となりました。この減少は、主に残価損失関連費用が減少したことおよび市場金利の低下等により資金調達コストが減少したことによるものです。
・販売費及び一般管理費
当連結会計年度の販売費及び一般管理費は2兆6,346億円と、前連結会計年度に比べて3,473億円 (11.6%) の減少となりました。この減少は、主に連結子会社の減少の影響、広告宣伝費の減少および為替換算レート変動の影響によるものです。
c.営業利益
当連結会計年度における営業利益は2兆1,977億円と、前連結会計年度に比べて2,014億円 (8.4%) の減益となりました。この減益は、為替変動の影響2,550億円および販売面での影響2,100億円によるものですが、原価改善の努力1,500億円および諸経費の増減・低減努力700億円などにより一部相殺されています。
上記の営業面の努力および販売面での影響は、車両販売台数および販売構成の変化ならびに販売諸費用などを含んでいます。その他は、金利スワップ取引などの時価評価による評価損益などを含んでいます。
また、為替変動の影響の減益要因は、主に輸出入等の外貨取引による影響2,100億円によるものです。
当連結会計年度における営業利益 (セグメント間の利益控除前) は前連結会計年度に比べて、日本では4,360億円 (27.5%) 、欧州では358億円 (24.9%) 、その他の地域では241億円 (28.8%) の減益となり、北米では1,481億円 (58.5%)、アジアでは723億円 (19.9%) の増益となりました。
各地域における営業利益の状況は次のとおりです。
・日本
・北米
・欧州
・アジア
・その他
d.その他の収益・費用
当連結会計年度における持分法による投資損益は3,510億円と、前連結会計年度に比べて407億円 (13.1%) の増益となりました。この増益は、主に持分法適用会社の親会社の所有者に帰属する当期利益の増益によるものです。
当連結会計年度におけるその他の金融収益は4,352億円と、前連結会計年度に比べて1,293億円 (42.3%) の増益となりました。この増益は、主に有価証券評価益によるものです。
当連結会計年度におけるその他の金融費用は475億円と、前連結会計年度に比べて3億円 (0.8%) の増加となりました。
当連結会計年度における為替差損益<純額>は151億円と、前連結会計年度に比べて1,097億円の増益となりました。為替差損益は、外国通貨建て取引によって生じた外貨建ての資産および負債を、取引時の為替相場で換算した価額と、先物為替契約を利用して行う決済を含め、同会計年度における決済金額または決算時の為替相場で換算した価額との差額を示すものです。為替差損益<純額>の増益1,097億円は、主に前連結会計年度の貸付金において貸付時の為替相場に比べて満期時の為替相場が円高に推移したことにより、為替差損を計上したことによるものです。
当連結会計年度におけるその他<純額>は192億円の損失と、前連結会計年度に比べて613億円の増益となりました。
e.法人所得税費用
当連結会計年度における法人所得税費用は6,499億円と、前連結会計年度に比べて318億円 (4.7%) の減少となりました。これは、主に税引前利益に占める、法定税率が低い海外子会社の割合が大きくなったことによるもので、当連結会計年度における平均実際負担税率は22.2%となりました。
f.非支配持分に帰属する当期利益
当連結会計年度における非支配持分に帰属する当期利益は371億円と、前連結会計年度に比べて378億円 (50.5%)の減益となりました。この減益は、主に連結子会社の当期利益の減益によるものです。
g.親会社の所有者に帰属する当期利益
当連結会計年度の親会社の所有者に帰属する当期利益は2兆2,452億円と、前連結会計年度に比べて2,091億円 (10.3%) の増益となりました。
h.その他の包括利益 (税効果考慮後)
当連結会計年度におけるその他の包括利益 (税効果考慮後) は1兆124億円と、前連結会計年度に比べて1兆5,211億円利益が増加しました。これは、主に米ドルやユーロに対する為替レートが円安に進んだことにより、在外営業活動体の為替換算差額が前連結会計年度の3,620億円の損失に対し、当連結会計年度は4,036億円の利益となったこと、および主に株価が変動したことにより、その他の包括利益を通じて公正価値で測定する金融資産の公正価値変動が前連結会計年度の1,304億円の損失に対し、当連結会計年度は3,039億円の利益となったこと、ならびに主に制度資産の公正価値が変動したことにより、確定給付制度の再測定が前連結会計年度の433億円の損失から当連結会計年度は2,162億円の利益となったことによるものです。
i.事業別セグメントの状況
以下は、トヨタの事業別セグメントの状況に関する説明です。記載された数値は、セグメント間の営業収益控除前です。
・自動車事業セグメント
自動車事業の営業収益は、トヨタの営業収益のうち最も高い割合を占めます。当連結会計年度における自動車事業セグメントの営業収益は24兆6,515億円と、前連結会計年度に比べて2兆1,481億円 (8.0%) の減収となりました。この減収は、主に車両販売台数および販売構成の変化による影響2兆800億円や、為替変動の影響5,600億円によるものです。
当連結会計年度における自動車事業セグメントの営業利益は1兆6,071億円と、前連結会計年度に比べて4,059億円 (20.2%)の減益となりました。この営業利益の減益は、主に販売面での影響3,750億円および為替変動の影響2,550億円によるものですが、原価改善の努力1,500億円および諸経費の増減・低減努力700億円などにより一部相殺されています。
・金融事業セグメント
当連結会計年度における金融事業セグメントの営業収益は2兆1,622億円と、前連結会計年度に比べて309億円 (1.4%) の減収となりました。この減収は、主に為替変動の影響によるものです。
当連結会計年度における金融事業セグメントの営業利益は4,955億円と、前連結会計年度に比べて2,118億円(74.7%)の増益となりました。この営業利益の増益は、販売金融子会社において、貸倒関連費用および残価損失関連費用が減少したことならびに金利スワップ取引などの時価評価による評価益が計上されたことなどによるものです。
・その他の事業セグメント
当連結会計年度におけるその他の事業セグメントの営業収益は1兆523億円と、前連結会計年度に比べて4,525億円 (30.1%) の減収となりました。これは主に、2020年1月にトヨタホームおよびミサワホームが当社の連結子会社ではなくなったことによるものです。
当連結会計年度におけるその他の事業セグメントの営業利益は853億円と、前連結会計年度に比べて180億円 (17.4%)の減益となりました。なお、トヨタホームおよびミサワホームが当社の連結子会社ではなくなったことによる影響が含まれています。
④流動性と資金の源泉
トヨタは従来、設備投資および研究開発活動のための資金を、主に営業活動から得た現金により調達してきました。
2022年3月31日に終了する連結会計年度については、トヨタは設備投資および研究開発活動のための十分な資金を、主に手元の現金及び現金同等物、営業活動から得た現金、および社債・借入金等の資金調達で充当する予定です。トヨタはこれらの資金を、従来の設備の維持更新・新製品導入へ効率的に投資しつつ、新たなモビリティ社会の実現に向け、競争力強化・将来の成長に資する分野に重点を置いて投資する予定です。2019年4月1日から2021年3月31日までに行われた重要な設備投資および処分に関する情報ならびに現在進行中の重要な設備投資および処分に関する情報は、「第3 設備の状況」を参照ください。
顧客や販売店に対する融資プログラムおよびリース・プログラムで必要となる資金について、トヨタは営業活動から得た現金と販売金融子会社の借入債務によりまかなっています。トヨタは、金融子会社のネットワークを拡大することにより、世界中の現地市場で資金を調達する能力を向上させるよう努めています。
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度の2兆3,984億円の資金の増加に対し、2兆7,271億円の資金の増加となり、3,286億円増加しました。
この増加は、主に未払いの営業債務が、当第4四半期連結会計期間 (2021年3月31日に終了した3ヶ月間) における仕入増加の影響により増加した結果、資金が5,131億円増加したことなどによるものですが、未収の営業債権が、当第4四半期連結会計期間 (2021年3月31日に終了した3ヶ月間) における売上増加の影響などにより増加した結果、資金が2,525億円減少したことにより、一部相殺されています。
当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度の2兆1,246億円の資金の減少に対し、4兆6,841億円の資金の減少となり、2兆5,595億円減少しました。この減少は、主に新型コロナウイルスの影響長期化リスクを見据えた借入の実施により定期預金が1兆9,883億円増加したことによるものです。
当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度の3,628億円の資金の増加に対し、2兆7,391億円の資金の増加となり、2兆3,763億円増加しました。この増加は、主に長期有利子負債による資金調達が3兆9,656億円増加したことによるものです。
当連結会計年度における資本的支出 (賃貸資産を含む) は、前連結会計年度の3兆5,824億円から3兆6,096億円と前年度並みになりました。
2022年3月31日に終了する連結会計年度において、賃貸および賃借資産を除く設備投資額は約1兆3,500億円となる予定です。
現金及び現金同等物は、2021年3月31日現在で5兆1,008億円でした。現金及び現金同等物の大部分は円建てまたは米ドル建てです。
トヨタは、現金及び現金同等物、定期預金、公社債および信託ファンドへの投資を総資金量と定義しており、当連結会計年度において総資金量は、3兆5,837億円 (33.7%) 増加し、14兆2,122億円となりました。
当連結会計年度における営業債権及びその他の債権は、3,103億円 (11.7%) 増加し、 2兆9,587億円となりました。これは主に、当第4四半期連結会計期間 (2021年3月31日に終了した3ヶ月間) における売上増加の影響によるものです。
当連結会計年度における棚卸資産は、3,541億円 (14.0%) 増加し、2兆8,880億円となりました。これは主に、貴金属の市況上昇に伴う単価上昇によるものです。
当連結会計年度における金融事業に係る債権合計は、2兆1,663億円 (12.7%) 増加し、19兆2,057億円となりました。これは主に、為替変動の影響によるものです。2021年3月31日現在における金融債権の地域別内訳は、北米54.6%、アジア13.5%、欧州13.2%、日本8.3%、その他の地域10.4%でした。
当連結会計年度におけるその他の金融資産合計は、3兆2,542億円 (32.4%) 増加しました。これは主に、定期預金等の増加によるものです。
当連結会計年度における有形固定資産は、8,771億円 (8.3%) 増加しました。これは主に、設備投資によるものです。
当連結会計年度における営業債務及びその他の債務は、5,479億円 (15.7%) 増加しました。これは主に、当第4四半期連結会計期間 (2021年3月31日に終了した3ヶ月間) における生産台数増加によるものです。
当連結会計年度における未払法人所得税は、1,386億円 (65.3%) 増加しました。これは主に、昨年度の米国税制改正に伴う法人所得税費用の減少などによるものです。
当連結会計年度における有利子負債合計は、4兆3,186億円 (20.2%) 増加しました。トヨタの短期借入債務は、加重平均利率1.37%の借入金と、加重平均利率0.16%のコマーシャル・ペーパーにより構成されています。当連結会計年度における短期借入債務は、前連結会計年度に比べて9,555億円 (18.0%) 減少し、4兆3,398億円となりました。トヨタの長期借入債務は、加重平均利率が1.25%から6.34%、返済期限が2021年から2048年の無担保の借入金、担保付きの借入金、ミディアム・ターム・ノート、無担保普通社債、担保付普通社債などにより構成されています。当連結会計年度の1年以内に返済予定の長期借入債務は3兆161億円 (66.0%) 増加し、7兆5,843億円となり、返済期限が1年超の長期借入債務は2兆4,642億円 (23.1%) 増加し、13兆1,338億円となりました。借入債務合計の増加は、主に新型コロナウイルスの影響長期化リスクを見据えた借入の実施によるものです。2021年3月31日現在で、長期借入債務の約49%は米ドル建て、約16%は円建て、約12%はユーロ建て、約6%は豪ドル建て、約3%は加ドル建て、約14%はその他の通貨によるものです。トヨタは、金利スワップを利用することにより固定金利のエクスポージャーをヘッジしています。トヨタの借入必要額に重要な季節的変動はありません。
2020年3月31日現在におけるトヨタの親会社の所有者に帰属する持分合計に対する有利子負債比率は、103.5%でしたが、2021年3月31日現在では109.6%となりました。
トヨタの短期および長期借入債務は、2021年5月31日現在、スタンダード・アンド・プアーズ (S&P) 、ムーディーズ (Moody's) および格付投資情報センター (R&I) により、次のとおり格付けされています。なお、信用格付けは株式の購入、売却もしくは保有を推奨するものではなく、何時においても撤回もしくは修正され得ます。各格付けはその他の格付けとは個別に評価されるべきです。
当連結会計年度における確定給付負債(資産)の純額は、国内および海外で、それぞれ2,829億円および3,403億円と、前連結会計年度に比べて、国内は2,566億円 (47.6%)減少し、海外は14億円(0.4%)の増加となりました。確定給付負債(資産)の純額は、トヨタによる将来の現金拠出または対象従業員に対するそれぞれの退職日における支払いにより解消されます。国内においては、主に株価の上昇に伴う制度資産の増加により、確定給付負債(資産)の純額は減少しました。詳細については、連結財務諸表注記24を参照ください。
トヨタの財務方針は、すべてのエクスポージャーの管理体制を維持し、相手先に対する厳格な信用基準を厳守し、市場のエクスポージャーを積極的にモニターすることです。トヨタは、トヨタファイナンシャルサービス㈱に金融ビジネスを集中させ、同社を通じて金融ビジネスのグローバルな効率化を目指しています。
財務戦略の主要な要素は、短期的な収益の変動に左右されず効率的に研究開発活動、設備投資および金融事業に投資できるような、安定した財務基盤を維持することです。トヨタは、現在必要とされる資金水準を十分満たす流動性を保持していると考えており、また、高い信用格付けを維持することにより、引き続き多額の資金を比較的安いコストで外部から調達することができると考えています。高い格付けを維持する能力は、数多くの要因に左右され、その中にはトヨタがコントロールできないものも含まれています。これらの要因には、日本およびトヨタが事業を行うその他の主要な市場の全体的な景気ならびにトヨタの事業戦略を成功させることができるかなどが含まれています。
⑤オフバランス化される取引
トヨタは金融事業のための資金調達の一つの方法として特別目的事業体を通じた証券化プログラムを利用しています。これらの証券化取引は、トヨタが第一受益者であるものとして連結しており、当連結会計年度におけるオフバランス化される取引に重要なものはありません。
⑥貸出コミットメント
a.クレジットカード会員に対する貸出コミットメント
トヨタは金融事業の一環としてクレジットカードを発行しています。トヨタは、クレジットカード事業の慣習に従い、カード会員に対する貸付の制度を有しています。貸出はお客様ごとに信用状態の調査を実施した結果設定した限度額の範囲内で、お客様の要求により実行されます。カード会員に対する貸付金には保証は付されませんが、貸倒損失の発生を最小にするため、また適切な貸出限度額を設定するために、トヨタは、提携関係にある金融機関からの財務情報の分析を含むリスク管理方針により与信管理を実施するとともに、定期的に貸出限度額の見直しを行っています。2021年3月31日現在のカード会員に対する貸出未実行残高は1,868億円です。
b.販売店に対する貸出コミットメント
トヨタは金融事業の一環として販売店に対する融資の制度を有しています。貸付は買収、設備の改装、不動産の購入、運転資金の確保のために行われます。これらの貸付金については、通常担保権が設定されており、販売店の不動産、車両在庫、その他販売店の資産等、場合に応じて適切と考えられる物件に対して設定しています。さらに慎重な対応が必要な場合には販売店が指名した個人による保証または販売店グループが指名した法人による保証を付しています。貸付金は通常担保または保証が付されていますが、担保または保証の価値がトヨタのエクスポージャーを十分に補うことができていない可能性があります。トヨタは融資制度契約を締結することによって生じるリスクに従って融資制度を評価しています。トヨタの金融事業は、販売店グループと呼ばれる複数のフランチャイズ系列に対しても融資を行っており、しばしば貸出組合に参加することでも融資を行っています。こうした融資は、融資先の卸売車両の購入、買収、設備の改装、不動産の購入、運転資金の確保等を目的とするものです。2021年3月31日現在の販売店に対する貸出未実行残高は3兆6,554億円です。
⑦保証
トヨタは、トヨタの製品販売にあたり、販売店と顧客が締結した割賦契約について、販売店の要請に応じ顧客の割賦債務の支払いに関し保証を行っています。保証期間は2021年3月31日現在において1ヶ月から8年に亘っており、これは割賦債務の弁済期間と一致するよう設定されていますが、一般的に、製品の利用可能期間よりも短い期間となっています。顧客が必要な支払いを行わない場合には、トヨタに保証債務を履行する責任が発生します。
将来の潜在的保証支払額は、2021年3月31日現在、最大で3兆7,103億円です。トヨタは、保証債務の履行による損失の発生に備え未払費用を計上しており、2021年3月31日現在の残高は、184億円です。保証債務を履行した場合、トヨタは、保証の対象となった主たる債務を負っている顧客から保証支払額を回収する権利を有します。
⑧契約上の債務および義務
トヨタの非デリバティブ金融負債およびデリバティブ金融負債の残存契約満期期間ごとの金額に関しては、連結財務諸表注記20を参照ください。また、トヨタはその通常業務の一環として、一定の原材料、部品およびサービスの購入に関して、仕入先と長期契約を結ぶ場合があります。これらの契約は、一定数量または最低数量の購入を規定している場合があります。トヨタはかかる原材料またはサービスの安定供給を確保するためにこれらの契約を締結しています。
次の表は、2021年3月31日現在のトヨタの契約上の債務および商業上の契約債務を要約したものです。
* 長期借入債務の金額は、将来の支払元本を表しています。
また、トヨタは2022年3月31日に終了する連結会計年度において、退職後給付制度に対し、国内および海外で、それぞれ39,392百万円および16,604百万円を拠出する予定です。
⑨関連当事者との取引
詳細については、連結財務諸表注記33を参照ください。
⑩会計基準の選択に関する基本的な考え方
当社は、資本市場における財務情報の国際的な比較可能性の向上等を目的として、2021年3月期第1四半期よりIFRSを任意適用しています。
⑪重要な会計上の見積り
IFRSに準拠した連結財務諸表を作成するにあたり、会計方針の適用、資産・負債およびトヨタの連結財務諸表に重要な影響を与える可能性のある会計上の見積りおよび仮定に関する情報は、次のとおりです。
・品質保証に係る負債
・金融事業に係る金融損失引当金
・非金融資産の減損
・退職給付に係る負債
・公正価値測定
・繰延税金資産の回収可能性
詳細については、連結財務諸表注記4を参照ください。
(1) 経営成績等の状況の概要
①経営成績の状況
当連結会計年度の世界経済は、前連結会計年度から続く新型コロナウイルスの影響により、4月から6月にかけて急激に減速しました。7月以降は各国の経済活動再開や景気対策により緩やかに回復したものの、年度を通じてはマイナス成長となりました。
自動車市場においても、世界的な工場の稼働停止や販売店の営業停止などの影響もあり、中国などの感染影響が限定的だった一部地域を除き、多くの地域で大幅な前年実績割れとなりました。
このような経営環境の中、トヨタは、現場での改善活動を中心に、今やるべきことに取り組みました。生産現場では、生産ラインが停止した時間を使い、モノづくりの力やTPS (トヨタ生産方式) を活かして、マスクやフェイスシールド、足踏み式消毒スタンドなどを生産しました。販売現場では、オンライン販売として、非接触でのお客様との関係づくりを、全世界で推進しました。オンライン環境で、世界中の関係者と経営トップのコミュニケーションが可能となり、各地の状況のタイムリーな情報共有、迅速な意思決定に繋がりました。
また、当たり前のことを当たり前にやろう、という考えの下、当連結会計年度は予定通り多数のモデルを発売しました。新時代のSUVを目指した新型「ハリアー」は、実用性や数値一辺倒ではない、見て乗って走り出した瞬間に心が動く感性品質を重視しました。新型「MIRAI」はゼロエミッションでありながら、感性に訴えるデザイン、唯一無二の走り、一歩先を行くあふれる先進性、安心の航続距離を備えるコンセプトで、将来の水素社会実現に向けた、新たな出発点となるクルマです。レクサスブランドでは、レクサスの電気自動車(BEV) ならではの上質な走りと静粛性、ハイブリッドで培った電動化技術の高い信頼性と利便性、「UX」譲りの個性的なデザインや高い機能性を実現した「UX300e」を発売しました。また、「GRヤリス」はモータースポーツ用の車両を市販化するという逆転の発想で開発したトヨタ初のモデルです。モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくりとして、開発初期からドライバーモリゾウと社外プロドライバーが評価し、東京オートサロン2020で披露した後も、サーキットで何度も評価と改善のサイクルを繰り返し、発売に至りました。
当連結会計年度における日本、海外を合わせた自動車の連結販売台数は、764万6千台と、前連結会計年度に比べて130万9千台(14.6%) の減少となりました。日本での販売台数については、212万5千台と、前連結会計年度に比べて11万5千台(5.1%) 減少しました。一方、海外においては、全ての地域で販売台数が減少したことにより、552万1千台と、前連結会計年度に比べて119万4千台(17.8%) の減少となりました。
当連結会計年度の業績については、次のとおりです。
営業収益 | 27兆2,145億円 | ( | 前期比増減 | △2兆6,519億円 | ( △8.9%) | ) |
営業利益 | 2兆1,977億円 | ( | 前期比増減 | △2,014億円 | ( △8.4%) | ) |
税引前利益 | 2兆9,323億円 | ( | 前期比増減 | 1,394億円 | ( 5.0%) | ) |
親会社の所有者に帰属する 当期利益 | 2兆2,452億円 | ( | 前期比増減 | 2,091億円 | ( 10.3%) | ) |
なお、営業利益の主な増減要因は、次のとおりです。
販売面での影響 | △2,100億円 |
為替変動の影響 | △2,550億円 |
原価改善の努力 | 1,500億円 |
諸経費の増減・低減努力 | 700億円 |
その他 | 436億円 |
事業別セグメントの業績は、次のとおりです。
a.自動車事業
営業収益は24兆6,515億円と、前連結会計年度に比べて2兆1,481億円(8.0%) の減収となり、営業利益は1兆6,071億円と、前連結会計年度に比べて4,059億円(20.2%) の減益となりました。営業利益の減益は、生産および販売台数の減少などによるものです。
b.金融事業
営業収益は2兆1,622億円と、前連結会計年度に比べて309億円(1.4%) の減収となりましたが、営業利益は4,955億円と、前連結会計年度に比べて2,118億円(74.7%) の増益となりました。営業利益の増益は、販売金融子会社において貸倒関連費用および残価損失関連費用が減少したことならびに金利スワップ取引などの時価評価による評価益が計上されたことなどによるものです。
c.その他の事業
営業収益は1兆523億円と、前連結会計年度に比べて4,525億円(30.1%) の減収となり、営業利益は853億円と、前連結会計年度に比べて180億円(17.4%) の減益となりました。
所在地別の業績は、次のとおりです。
a.日本
営業収益は14兆9,489億円と、前連結会計年度に比べて1兆4,929億円(9.1%) の減収となり、営業利益は1兆1,492億円と、前連結会計年度に比べて4,360億円(27.5%) の減益となりました。営業利益の減益は、生産および販売台数の減少などによるものです。
b.北米
営業収益は9兆4,918億円と、前連結会計年度に比べて1兆1,502億円(10.8%) の減収となりましたが、営業利益は4,013億円と、前連結会計年度に比べて1,481億円(58.5%) の増益となりました。営業利益の増益は、営業面の努力などによるものです。
c.欧州
営業収益は3兆1,344億円と、前連結会計年度に比べて2,208億円(6.6%) の減収となり、営業利益は1,079億円と、前連結会計年度に比べて358億円(24.9%) の減益となりました。営業利益の減益は、為替変動の影響などによるものです。
d.アジア
営業収益は5兆452億円と、前連結会計年度に比べて2,479億円(4.7%) の減収となりましたが、営業利益は4,359億円と、前連結会計年度に比べて723億円(19.9%) の増益となりました。営業利益の増益は、原価改善の努力および営業面の努力などによるものです。
e.その他の地域 (中南米、オセアニア、アフリカ、中近東)
営業収益は1兆8,728億円と、前連結会計年度に比べて2,412億円(11.4%) の減収となり、営業利益は598億円と、前連結会計年度に比べて241億円(28.8%) の減益となりました。
②財政状態の状況
当連結会計年度末における財政状態については、次のとおりです。
資産合計は62兆2,671億円と、前連結会計年度末に比べて8兆2,947億円 (15.4%) の増加となりました。負債合計は37兆9,788億円と、前連結会計年度末に比べて5兆3,454億円 (16.4%) の増加となりました。資本合計は24兆2,883億円と、前連結会計年度末に比べて2兆9,493億円 (13.8%) の増加となりました。
③キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は5兆1,008億円と、前連結会計年度末に比べて1兆24億円 (24.5%) の増加となりました。
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況と、前連結会計年度に対するキャッシュ・フローの増減は、次のとおりです。
営業活動によるキャッシュ・フロー
当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、2兆7,271億円の資金の増加となり、前連結会計年度が2兆3,984億円の増加であったことに比べて、3,286億円の増加となりました。
投資活動によるキャッシュ・フロー
当連結会計年度の投資活動によるキャッシュ・フローは、4兆6,841億円の資金の減少となり、前連結会計年度が2兆1,246億円の減少であったことに比べて、2兆5,595億円の減少となりました。
財務活動によるキャッシュ・フロー
当連結会計年度の財務活動によるキャッシュ・フローは、2兆7,391億円の資金の増加となり、前連結会計年度が3,628億円の増加であったことに比べて、2兆3,763億円の増加となりました。
④生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度における生産実績を事業別セグメントごとに示すと、次のとおりです。
事業別セグメントの名称 | 当連結会計年度 (2021年3月31日に 終了した1年間) | 前期比(%) | |
自動車事業 | 日本 | 3,948,385 台 | △10.5 |
北米 | 1,641,830 | △9.2 | |
欧州 | 641,830 | △4.8 | |
アジア | 1,014,968 | △33.3 | |
その他 | 305,883 | △24.2 | |
計 | 7,552,896 | △14.4 |
(注) 1 | 「自動車事業」における生産実績は、車両 (新車) 生産台数を示しています。 | |
2 | 「自動車事業」における「その他」は、中南米、アフリカからなります。 |
b.受注実績
当社および連結製造子会社は、国内販売店、海外販売店等からの受注状況、最近の販売実績および販売見込等の情報を基礎として、見込生産を行っています。
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績を事業別セグメントごとに示すと、次のとおりです。
事業別セグメントの名称 | 当連結会計年度 (2021年3月31日に 終了した1年間) | 前期比(%) | |||
数量 | 金額(百万円) | 数量 | 金額 | ||
自動車事業 | 車両 | 7,646,105 台 | 20,509,606 | △14.6 | △9.4 |
生産用部品 | ― | 1,287,053 | ― | +7.5 | |
部品 | ― | 2,049,187 | ― | △5.6 | |
その他 | ― | 752,000 | ― | △0.4 | |
計 | ― | 24,597,846 | ― | △8.1 | |
金融事業 | ――――――― | ― | 2,137,195 | ― | △1.6 |
その他の事業 | ――――――― | ― | 479,553 | ― | △48.1 |
合計 | ― | 27,214,594 | ― | △8.9 |
(注) 1 | 主要な相手先別の販売実績については、当該販売実績の総販売実績に対する割合が100分の10未満であるため、主要な相手先別の販売実績および当該販売実績の総販売実績に対する割合の記載を省略しています。 | |
2 | 上記の金額には、消費税等は含まれていません。 | |
3 | 「自動車事業」における「車両」の数量は、車両 (新車) 販売台数を示しています。 | |
4 | 金額は外部顧客への営業収益を示しています。 |
前述の当連結会計年度における「自動車事業」の販売数量を、仕向先別に示すと、次のとおりです。
事業別セグメントの名称 | 当連結会計年度 (2021年3月31日に 終了した1年間) | 前期比(%) | |
自動車事業 | 日本 | 2,125,121 台 | △5.1 |
北米 | 2,312,799 | △14.8 | |
欧州 | 959,363 | △6.8 | |
アジア | 1,222,073 | △23.6 | |
その他 | 1,026,749 | △25.2 | |
計 | 7,646,105 | △14.6 |
(注) 1 | 上記仕向先別販売数量は、車両 (新車) 販売台数を示しています。 | |
2 | 「自動車事業」における「その他」は、中南米、オセアニア、アフリカ、中近東ほかからなります。 |
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
本項においては、将来に関する事項が含まれていますが、当該事項は有価証券報告書提出日 (2021年6月24日)
現在において判断したものです。
①概観
トヨタの事業セグメントは、自動車事業、金融事業およびその他の事業で構成されています。自動車事業は最も重要な事業セグメントで、当連結会計年度においてトヨタの営業収益合計 (セグメント間の営業収益控除前) の88%を占めています。当連結会計年度における車両販売台数ベースによるトヨタの主要な市場は、日本 (27.8%) 、北米 (30.3%) 、欧州 (12.5%) およびアジア (16.0%) となっています。
a.自動車市場環境
世界の自動車市場は、非常に競争が激しく、また予測が困難な状況にあります。さらに、自動車業界の需要は、社会、政治および経済の状況、新車および新技術の導入ならびにお客様が自動車を購入または利用される際に負担いただく費用といった様々な要素の影響を受けます。これらの要素により、各市場および各タイプの自動車に対するお客様の需要は、大きく変化します。
当連結会計年度の自動車市場は、新型コロナウイルスによる世界的な工場の稼働停止や販売店の営業停止などの影響もあり、中国などの感染影響が限定的だった一部地域を除き、多くの地域で大幅な前年実績割れとなりました。
次の表は、過去2連結会計年度における各仕向地域別の連結販売台数を示しています。
千台 | |||||
3月31日に終了した1年間 | |||||
2020年 | 2021年 | ||||
日本 | 2,240 | 2,125 | |||
北米 | 2,713 | 2,313 | |||
欧州 | 1,029 | 959 | |||
アジア | 1,600 | 1,222 | |||
その他 | 1,372 | 1,027 | |||
海外計 | 6,715 | 5,521 | |||
合計 | 8,955 | 7,646 |
(注) 「その他」は、中南米、オセアニア、アフリカ、中近東ほかからなります。
トヨタの日本における当連結会計年度の連結販売台数は、市場が前連結会計年度を下回る状況のもと、減少しました。トヨタの海外における連結販売台数は、自動車市場の大幅な縮小により、北米、アジア、その他の地域を中心に販売台数が大きく減少しました。
各市場における全車両販売台数に占めるトヨタのシェアは、製品の品質、安全性、信頼性、価格、デザイン、性能、経済性および実用性についての他社との比較により左右されます。また、時機を得た新車の導入やモデルチェンジの実施も、お客様のニーズを満たす重要な要因です。変化し続けるお客様の嗜好を満たす能力も、売上および利益に大きな影響をもたらします。
自動車事業の収益性は様々な要因により左右されます。これらには次のような要因が含まれます。
車両販売台数
販売された車両モデルとオプションの組み合わせ
部品・サービス売上
価格割引およびその他のインセンティブのレベルならびにマーケティング費用
顧客からの製品保証に関する請求およびその他の顧客満足のための修理等にかかる費用
研究開発費等の固定費
原材料価格
コストの管理能力
生産資源の効率的な利用
特定の仕入先への部品供給の依存による生産への影響
自然災害および感染症の発生・蔓延や社会インフラの障害による市場・販売・生産への影響
日本円およびトヨタが事業を行っている地域におけるその他通貨の為替相場の変動
法律、規制、政策の変更およびその他の政府による措置も自動車事業の収益性に著しい影響を及ぼすことがあります。これらの法律、規制および政策には、車両の製造コストを大幅に増加させる環境問題、車両の安全性、燃費および排ガスに影響を及ぼすものが含まれます。
多くの国の政府が、現地調達率を規定し、関税およびその他の貿易障壁を課し、あるいは自動車メーカーの事業を制限したり本国への利益の移転を困難にするような価格管理あるいは為替管理を行っています。このような法律、規制、政策その他の行政措置における変更は、製品の生産、ライセンス、流通もしくは販売、原価、あるいは適用される税率に影響を及ぼすことがあります。トヨタは、トヨタ車の安全性について潜在的問題がある場合に適宜リコール等の市場処置 (セーフティ・キャンペーンを含む) を発表しています。前述のリコール等の市場処置をめぐり、トヨタに対する申し立ておよび訴訟が提起されています。これらの申し立ておよび訴訟に関しては、連結財務諸表注記25を参照ください。
世界の自動車産業は、グローバルな競争の時期にあり、この傾向は予見可能な将来まで続く可能性があります。また、トヨタが事業を展開する競争的な環境は、さらに激化する様相を呈しています。トヨタは一独立企業として自動車産業で効率的に競争するための資源、戦略および技術を予見可能な将来において有していると考えています。
b.金融事業
自動車金融の市場は、大変競争が激しくなっています。自動車金融の競争激化は、利益率の減少を引き起こす可能性があり、また、顧客がトヨタ車を購入する際にトヨタ以外の金融サービスを利用するようになる場合、マーケット・シェアが低下することも考えられます。
トヨタの金融サービス事業は、主として、顧客および販売店に対する融資プログラムおよびリース・プログラムの提供を行っています。トヨタは、顧客に対して資金を提供する能力は、顧客に対しての重要な付加価値サービスであると考え、金融子会社のネットワークを各国へ展開しています。
小売融資およびリースにおけるトヨタの主な競争相手には、商業銀行、消費者信用組合、その他のファイナンス会社が含まれます。一方、卸売融資における主な競争相手には、商業銀行および自動車メーカー系のファイナンス会社が含まれます。
トヨタの金融事業に係る債権は、主に為替変動の影響により、当連結会計年度において増加しました。また、賃貸用車両及び器具は、主に為替変動の影響により、当連結会計年度において増加しました。
金融事業に係る債権および賃貸用車両及び器具の詳細については、連結財務諸表注記9および13を参照ください。
トヨタの金融債権は、回収可能性リスクを負っています。これは顧客もしくは販売店の支払不能や、担保価値 (売却費用控除後) が債権の帳簿価額を下回った場合に発生する可能性があります。詳細については、連結財務諸表注記4および20を参照ください。
トヨタは、車両リースを継続的に提供してきました。当該リース事業によりトヨタは残存価額のリスクを負っています。これは車両リース契約の借手が、リース終了時に車両を購入するオプションを行使しない場合に発生する可能性があります。詳細については、連結財務諸表注記3 (8) を参照ください。
トヨタは、主に固定金利借入債務を機能通貨建ての変動金利借入債務へ転換するために、金利スワップおよび金利通貨スワップ契約を結んでいます。特定のデリバティブ金融商品は、経済的企業行動の見地からは金利リスクをヘッジするために契約されていますが、トヨタの連結財政状態計算書における特定の資産および負債をヘッジするものとしては指定されていないため、それらの指定されなかったデリバティブから生じる未実現評価損益は、その期間の損益として計上されます。詳細については、連結財務諸表注記21および22を参照ください。
資金調達コストの変動は、金融事業の収益性に影響を及ぼす可能性があります。資金調達コストは、数多くの要因の影響を受けますが、その中にはトヨタがコントロールできないものもあります。これには、全般的な景気、金利およびトヨタの財務力などが含まれます。当連結会計年度の資金調達コストは主に市場金利の低下により減少しました。
トヨタは、2001年4月に日本でクレジットカード事業を立上げました。カード会員数は、2021年3月31日現在16.4百万人と、2020年3月31日から0.5百万人の増加となりました。カード債権は、2021年3月31日現在4,841億円と、2020年3月31日から24億円の増加となりました。
c.その他の事業
トヨタのその他の事業には、情報通信事業・ガズー事業等の情報技術関連事業、プレハブ等住宅の製造・販売を手掛ける住宅事業等が含まれます。なお、当社は、前連結会計年度において、パナソニック株式会社 (以下、パナソニックという。) と街づくり事業に関する新しい合弁会社であるプライム ライフ テクノロジーズ株式会社 (以下、プライム ライフ テクノロジーズという。) を設立し、同社はトヨタの持分法適用会社となりました。また、当社の連結子会社であったトヨタホーム株式会社 (以下、トヨタホームという。) およびミサワホーム株式会社 (以下、ミサワホームという。) はプライム ライフ テクノロジーズの完全子会社となったことにより、トヨタの連結子会社ではなくなりました。詳細については、連結財務諸表注記6を参照ください。
トヨタは、その他の事業は連結業績に大きな影響を及ぼすものではないと考えています。
d.為替の変動
トヨタは、為替変動による影響を受けやすいといえます。トヨタは日本円の他に主に米ドルおよびユーロの価格変動の影響を受けており、また、米ドルやユーロに加え、豪ドル、ロシア・ルーブル、加ドルおよび英国ポンドなどについても影響を受けることがあります。日本円で表示されたトヨタの連結財務諸表は、換算リスクおよび取引リスクによる為替変動の影響を受けています。
換算リスクとは、特定期間もしくは特定日の財務諸表が、事業を展開する国々の通貨の日本円に対する為替の変動による影響を受けるリスクです。たとえ日本円に対する通貨の変動が大きく、前連結会計年度との比較において、また地域ごとの比較においてかなりの影響を及ぼすとしても、換算リスクは報告上の考慮事項に過ぎず、その基礎となる業績を左右するものではありません。トヨタは換算リスクに対してヘッジを行っていません。
取引リスクとは、収益と費用および資産と負債の通貨が異なることによるリスクです。取引リスクは主にトヨタの日本製車両の海外売上に関係しています。
トヨタは、生産施設が世界中に所在しているため、取引リスクは大幅に軽減されていると考えています。グローバル化戦略の一環として、車両販売を行う主要市場において生産施設を建設することにより、生産を現地化してきました。前連結会計年度および当連結会計年度において、トヨタの海外における車両販売台数のそれぞれ69.0%および69.7%が海外で生産されています。北米では前連結会計年度および当連結会計年度の車両販売台数のそれぞれ67.6%および65.3%が現地で生産されています。欧州では前連結会計年度および当連結会計年度の車両販売台数のそれぞれ74.4%および71.9%が現地で生産されています。生産の現地化により、トヨタは生産過程に使用される供給品および原材料の多くを現地調達することができ、現地での収益と費用の通貨のマッチングをはかることが可能です。
トヨタは、取引リスクの一部に対処するために為替の取引およびヘッジを行っています。これにより為替変動による影響は軽減されますが、すべて排除されるまでには至っておらず、年によってその影響が大きい場合もあり得ます。為替変動リスクをヘッジするためにトヨタで利用されるデリバティブ金融商品に関する追加的な情報については、連結財務諸表注記21および22を参照ください。
一般的に、円安は営業収益、営業利益および親会社の所有者に帰属する当期利益に好影響を及ぼし、円高は悪影響を及ぼします。日本円の米ドルに対する期中平均相場は、前会計年度に比べて円高に推移しました。また、日本円の米ドルに対する決算日の為替相場は、前会計年度末に比べて円安となりました。日本円のユーロに対する期中平均および決算日の為替相場は、前連結会計年度に比べて円安に推移しました。
e.セグメンテーション
トヨタの最も重要な事業セグメントは、自動車事業セグメントです。トヨタは、世界の自動車市場においてグローバル・コンペティターとして自動車事業を展開しています。マネジメントは世界全体の自動車事業を一つの事業セグメントとして資源の配分やその実績の評価を行っており、自動車事業セグメント内で資源を配分するために、販売台数、生産台数、マーケット・シェア、車両モデルの計画および工場のコストといった財務およびそれ以外に関するデータの評価を行っています。トヨタは国内・海外または部品等のような自動車事業の一分野を個別のセグメントとして管理していません。
②地域別内訳
次の表は、過去2連結会計年度のトヨタの地域別外部顧客向け営業収益を示しており、当社または連結子会社の所在国の位置を基礎として集計しています。
金額:百万円 | |||||
3月31日に終了した1年間 | |||||
2020年 | 2021年 | ||||
日本 | 9,503,238 | 8,587,193 | |||
北米 | 10,419,869 | 9,325,950 | |||
欧州 | 3,133,227 | 2,968,289 | |||
アジア | 4,785,489 | 4,555,897 | |||
その他 | 2,024,724 | 1,777,266 |
(注) 「その他」 は、中南米、オセアニア、アフリカ、中近東からなります。
③業績―当連結会計年度と前連結会計年度の比較
金額:百万円 | ||||||||
3月31日に終了した1年間 | 増減および増減率 | |||||||
2020年 | 2021年 | 増減 | 増減率 | |||||
営業収益 | ||||||||
日本 | 16,441,852 | 14,948,931 | △1,492,921 | △9.1% | ||||
北米 | 10,642,034 | 9,491,803 | △1,150,231 | △10.8% | ||||
欧州 | 3,355,357 | 3,134,489 | △220,868 | △6.6% | ||||
アジア | 5,293,231 | 5,045,295 | △247,936 | △4.7% | ||||
その他 | 2,114,111 | 1,872,895 | △241,216 | △11.4% | ||||
消去又は全社 | △7,980,038 | △7,278,820 | 701,218 | - | ||||
計 | 29,866,547 | 27,214,594 | △2,651,954 | △8.9% | ||||
営業利益 | ||||||||
日本 | 1,585,276 | 1,149,217 | △436,059 | △27.5% | ||||
北米 | 253,205 | 401,361 | 148,156 | 58.5% | ||||
欧州 | 143,817 | 107,971 | △35,846 | △24.9% | ||||
アジア | 363,547 | 435,940 | 72,393 | 19.9% | ||||
その他 | 84,001 | 59,847 | △24,154 | △28.8% | ||||
消去又は全社 | △30,613 | 43,413 | 74,026 | - | ||||
計 | 2,399,232 | 2,197,748 | △201,484 | △8.4% | ||||
営業利益率 | 8.0% | 8.1% | 0.1% | |||||
税引前利益 | 2,792,942 | 2,932,354 | 139,412 | 5.0% | ||||
税引前利益率 | 9.4% | 10.8% | 1.4% | |||||
親会社の所有者に帰属する 当期利益 | 2,036,140 | 2,245,261 | 209,121 | 10.3% | ||||
親会社の所有者に帰属する 当期利益率 | 6.8% | 8.3% | 1.5% |
(注) 「その他」は、中南米、オセアニア、アフリカ、中近東からなります。
a.営業収益
当連結会計年度の営業収益は27兆2,145億円と、前連結会計年度に比べて2兆6,519億円 (8.9%) の減収となりました。この減収は、主に車両販売台数および販売構成の変化による影響2兆800億円や、為替変動の影響5,600億円によるものです。
トヨタの事業別外部顧客向け営業収益の商品別内訳は次のとおりです。
金額:百万円 | ||||||||
3月31日に終了した1年間 | 増減および増減率 | |||||||
2020年 | 2021年 | 増減 | 増減率 | |||||
車両 | 22,647,701 | 20,509,606 | △2,138,095 | △9.4% | ||||
生産用部品 | 1,197,089 | 1,287,053 | 89,964 | 7.5% | ||||
部品 | 2,170,448 | 2,049,187 | △121,261 | △5.6% | ||||
その他 | 755,141 | 752,000 | △3,141 | △0.4% | ||||
自動車事業合計 | 26,770,379 | 24,597,846 | △2,172,533 | △8.1% | ||||
その他の事業 | 923,314 | 479,553 | △443,761 | △48.1% | ||||
商品・製品売上収益合計 | 27,693,693 | 25,077,398 | △2,616,295 | △9.4% | ||||
金融事業に係る金融収益 | 2,172,854 | 2,137,195 | △35,659 | △1.6% | ||||
営業収益合計 | 29,866,547 | 27,214,594 | △2,651,954 | △8.9% |
営業収益は自動車事業およびその他の事業の合計である商品・製品売上収益ならびに金融事業に係る金融収益で構成されており、当連結会計年度の商品・製品売上収益は25兆773億円と、前連結会計年度に比べて9.4%の減収となり、金融事業に係る金融収益は2兆1,371億円と、前連結会計年度に比べて1.6%の減収となりました。商品・製品売上収益の減収は、主にトヨタの販売台数が1,309千台減少したことによるものです。前連結会計年度末および当連結会計年度末の各地域における融資件数 (残高) の状況は次のとおりです。
・金融事業における融資件数残高
千件 | ||||||||
3月31日 | 増減および増減率 | |||||||
2020年 | 2021年 | 増減 | 増減率 | |||||
日本 | 2,414 | 2,660 | 246 | 10.2% | ||||
北米 | 5,394 | 5,553 | 159 | 2.9% | ||||
欧州 | 1,318 | 1,412 | 94 | 7.1% | ||||
アジア | 1,864 | 1,992 | 128 | 6.9% | ||||
その他 | 926 | 881 | △45 | △4.9% | ||||
合計 | 11,916 | 12,498 | 582 | 4.9% |
(注) 「その他」は、中南米、オセアニア、アフリカからなります。
当連結会計年度の営業収益 (セグメント間の営業収益控除前) は前連結会計年度に比べて、日本では9.1%、北米では10.8%、欧州では6.6%、アジアでは4.7%、その他の地域では11.4%の減収となりました。為替変動の影響5,600億円を除いた場合、当連結会計年度の営業収益は前連結会計年度に比べて、日本では9.1%、北米では8.5%、欧州では5.5%、アジアでは3.5%の減収、その他の地域では0.1%の増収であったと考えられます。
各地域における営業収益 (セグメント間の営業収益控除前) の状況は次のとおりです。
・日本
千台 | ||||||||
3月31日に終了した1年間 | 増減および増減率 | |||||||
2020年 | 2021年 | 増減 | 増減率 | |||||
連結販売台数 | 4,284 | 3,853 | △431 | △10.0% | ||||
(日本は輸出台数を含む) | ||||||||
金額:百万円 | ||||||||
3月31日に終了した1年間 | 増減および増減率 | |||||||
2020年 | 2021年 | 増減 | 増減率 | |||||
営業収益 | ||||||||
商品・製品売上収益 | 16,197,556 | 14,674,496 | △1,523,060 | △9.4% | ||||
金融事業に係る金融収益 | 244,296 | 274,435 | 30,139 | 12.3% | ||||
営業収益計 | 16,441,852 | 14,948,931 | △1,492,921 | △9.1% |
日本においては、輸出台数を含むトヨタの販売台数は前連結会計年度に比べて431千台減少し、減収となりました。前連結会計年度および当連結会計年度における輸出台数はそれぞれ2,044千台および1,728千台となりました。
・北米
千台 | ||||||||
3月31日に終了した1年間 | 増減および増減率 | |||||||
2020年 | 2021年 | 増減 | 増減率 | |||||
連結販売台数 | 2,713 | 2,313 | △400 | △14.8% | ||||
金額:百万円 | ||||||||
3月31日に終了した1年間 | 増減および増減率 | |||||||
2020年 | 2021年 | 増減 | 増減率 | |||||
営業収益 | ||||||||
商品・製品売上収益 | 9,089,289 | 7,995,051 | △1,094,238 | △12.0% | ||||
金融事業に係る金融収益 | 1,552,745 | 1,496,752 | △55,993 | △3.6% | ||||
営業収益計 | 10,642,034 | 9,491,803 | △1,150,231 | △10.8% |
北米においては、トヨタの販売台数は前連結会計年度に比べて400千台減少し、減収となりました。
・欧州
千台 | ||||||||
3月31日に終了した1年間 | 増減および増減率 | |||||||
2020年 | 2021年 | 増減 | 増減率 | |||||
連結販売台数 | 1,029 | 959 | △70 | △6.8% | ||||
金額:百万円 | ||||||||
3月31日に終了した1年間 | 増減および増減率 | |||||||
2020年 | 2021年 | 増減 | 増減率 | |||||
営業収益 | ||||||||
商品・製品売上収益 | 3,206,943 | 2,976,259 | △230,683 | △7.2% | ||||
金融事業に係る金融収益 | 148,414 | 158,229 | 9,815 | 6.6% | ||||
営業収益計 | 3,355,357 | 3,134,489 | △220,868 | △6.6% |
欧州においては、トヨタの販売台数は前連結会計年度に比べて70千台減少し、減収となりました。
・アジア
千台 | ||||||||
3月31日に終了した1年間 | 増減および増減率 | |||||||
2020年 | 2021年 | 増減 | 増減率 | |||||
連結販売台数 | 1,600 | 1,222 | △378 | △23.6% | ||||
金額:百万円 | ||||||||
3月31日に終了した1年間 | 増減および増減率 | |||||||
2020年 | 2021年 | 増減 | 増減率 | |||||
営業収益 | ||||||||
商品・製品売上収益 | 5,120,384 | 4,874,746 | △245,638 | △4.8% | ||||
金融事業に係る金融収益 | 172,847 | 170,549 | △2,298 | △1.3% | ||||
営業収益計 | 5,293,231 | 5,045,295 | △247,936 | △4.7% |
アジアにおいては、トヨタの販売台数は前連結会計年度に比べて378千台減少し、減収となりました。
・その他の地域
千台 | ||||||||
3月31日に終了した1年間 | 増減および増減率 | |||||||
2020年 | 2021年 | 増減 | 増減率 | |||||
連結販売台数 | 1,372 | 1,027 | △345 | △25.2% | ||||
金額:百万円 | ||||||||
3月31日に終了した1年間 | 増減および増減率 | |||||||
2020年 | 2021年 | 増減 | 増減率 | |||||
営業収益 | ||||||||
商品・製品売上収益 | 1,941,859 | 1,719,132 | △222,728 | △11.5% | ||||
金融事業に係る金融収益 | 172,252 | 153,764 | △18,488 | △10.7% | ||||
営業収益計 | 2,114,111 | 1,872,895 | △241,216 | △11.4% |
その他の地域においては、トヨタの販売台数は前連結会計年度に比べて345千台減少し、減収となりました。
b.営業費用
金額:百万円 | ||||||||
3月31日に終了した1年間 | 増減および増減率 | |||||||
2020年 | 2021年 | 増減 | 増減率 | |||||
営業費用 | ||||||||
売上原価 | 23,103,596 | 21,199,890 | △1,903,706 | △8.2% | ||||
金融事業に係る金融費用 | 1,381,755 | 1,182,330 | △199,424 | △14.4% | ||||
販売費及び一般管理費 | 2,981,965 | 2,634,625 | △347,339 | △11.6% | ||||
営業費用合計 | 27,467,315 | 25,016,845 | △2,450,470 | △8.9% |
金額:百万円 | |
営業費用の 対前期比増減 | |
車両販売台数および販売構成の変化による影響 | △1,330,000 |
為替変動の影響 | △305,000 |
金融事業に係る金融費用の減少 | △175,500 |
原価改善の努力 | △150,000 |
諸経費の増減・低減努力 | △70,000 |
その他 | △419,970 |
合計 | △2,450,470 |
当連結会計年度における営業費用は25兆168億円と、前連結会計年度に比べて2兆4,504億円 (8.9%) の減少となりました。
・原価改善の努力
当連結会計年度は、仕入先と一体となった原価改善活動に引き続き精力的に取り組んだ結果、VE (Value Engineering)活動を中心とした設計面での原価改善など800億円および工場・物流部門などにおける原価改善700億円により営業費用を1,500億円減少することができました。
原価改善の努力は、継続的に実施されているVE・VA (Value Analysis) 活動、部品の種類の絞込みにつながる部品共通化、ならびに車両生産コストの低減を目的としたその他の製造活動に関連しています。なお、原価改善の努力には、鉄鋼、貴金属、非鉄金属 (アルミ等) 、樹脂関連部品などの資材・部品価格の変動による影響が含まれています。
・売上原価
当連結会計年度における売上原価は21兆1,998億円と、前連結会計年度に比べて1兆9,037億円 (8.2%) の減少となりました。この減少は、主に車両販売台数および販売構成の変化による影響、連結子会社の減少の影響、為替換算レート変動の影響ならびに原価改善の努力によるものです。
・金融事業に係る金融費用
当連結会計年度における金融事業に係る金融費用は1兆1,823億円と、前連結会計年度に比べて1,994億円 (14.4%) の減少となりました。この減少は、主に残価損失関連費用が減少したことおよび市場金利の低下等により資金調達コストが減少したことによるものです。
・販売費及び一般管理費
当連結会計年度の販売費及び一般管理費は2兆6,346億円と、前連結会計年度に比べて3,473億円 (11.6%) の減少となりました。この減少は、主に連結子会社の減少の影響、広告宣伝費の減少および為替換算レート変動の影響によるものです。
c.営業利益
金額:百万円 | |
営業利益の 対前期比増減 | |
販売面での影響 | △210,000 |
原価改善の努力 | 150,000 |
為替変動の影響 | △255,000 |
諸経費の増減・低減努力 | 70,000 |
その他 | 43,516 |
合計 | △201,484 |
当連結会計年度における営業利益は2兆1,977億円と、前連結会計年度に比べて2,014億円 (8.4%) の減益となりました。この減益は、為替変動の影響2,550億円および販売面での影響2,100億円によるものですが、原価改善の努力1,500億円および諸経費の増減・低減努力700億円などにより一部相殺されています。
上記の営業面の努力および販売面での影響は、車両販売台数および販売構成の変化ならびに販売諸費用などを含んでいます。その他は、金利スワップ取引などの時価評価による評価損益などを含んでいます。
また、為替変動の影響の減益要因は、主に輸出入等の外貨取引による影響2,100億円によるものです。
当連結会計年度における営業利益 (セグメント間の利益控除前) は前連結会計年度に比べて、日本では4,360億円 (27.5%) 、欧州では358億円 (24.9%) 、その他の地域では241億円 (28.8%) の減益となり、北米では1,481億円 (58.5%)、アジアでは723億円 (19.9%) の増益となりました。
各地域における営業利益の状況は次のとおりです。
・日本
金額:百万円 | |
営業利益の 対前期比増減 | |
販売面での影響 | △475,000 |
原価改善の努力 | 125,000 |
為替変動の影響 | △170,000 |
諸経費の増減・低減努力 | 65,000 |
その他 | 18,941 |
合計 | △436,059 |
・北米
金額:百万円 | |
営業利益の 対前期比増減 | |
営業面の努力 | 150,000 |
原価改善の努力 | 10,000 |
為替変動の影響 | △20,000 |
諸経費の増減・低減努力 | △50,000 |
その他 | 58,156 |
合計 | 148,156 |
・欧州
金額:百万円 | |
営業利益の 対前期比増減 | |
営業面の努力 | 15,000 |
原価改善の努力 | 0 |
為替変動の影響 | △50,000 |
諸経費の増減・低減努力 | 15,000 |
その他 | △15,846 |
合計 | △35,846 |
・アジア
金額:百万円 | |
営業利益の 対前期比増減 | |
営業面の努力 | 20,000 |
原価改善の努力 | 20,000 |
為替変動の影響 | 10,000 |
諸経費の増減・低減努力 | 10,000 |
その他 | 12,393 |
合計 | 72,393 |
・その他
金額:百万円 | |
営業利益の 対前期比増減 | |
営業面の努力 | 80,000 |
原価改善の努力 | △5,000 |
為替変動の影響 | △25,000 |
諸経費の増減・低減努力 | △40,000 |
その他 | △34,154 |
合計 | △24,154 |
d.その他の収益・費用
当連結会計年度における持分法による投資損益は3,510億円と、前連結会計年度に比べて407億円 (13.1%) の増益となりました。この増益は、主に持分法適用会社の親会社の所有者に帰属する当期利益の増益によるものです。
当連結会計年度におけるその他の金融収益は4,352億円と、前連結会計年度に比べて1,293億円 (42.3%) の増益となりました。この増益は、主に有価証券評価益によるものです。
当連結会計年度におけるその他の金融費用は475億円と、前連結会計年度に比べて3億円 (0.8%) の増加となりました。
当連結会計年度における為替差損益<純額>は151億円と、前連結会計年度に比べて1,097億円の増益となりました。為替差損益は、外国通貨建て取引によって生じた外貨建ての資産および負債を、取引時の為替相場で換算した価額と、先物為替契約を利用して行う決済を含め、同会計年度における決済金額または決算時の為替相場で換算した価額との差額を示すものです。為替差損益<純額>の増益1,097億円は、主に前連結会計年度の貸付金において貸付時の為替相場に比べて満期時の為替相場が円高に推移したことにより、為替差損を計上したことによるものです。
当連結会計年度におけるその他<純額>は192億円の損失と、前連結会計年度に比べて613億円の増益となりました。
e.法人所得税費用
当連結会計年度における法人所得税費用は6,499億円と、前連結会計年度に比べて318億円 (4.7%) の減少となりました。これは、主に税引前利益に占める、法定税率が低い海外子会社の割合が大きくなったことによるもので、当連結会計年度における平均実際負担税率は22.2%となりました。
f.非支配持分に帰属する当期利益
当連結会計年度における非支配持分に帰属する当期利益は371億円と、前連結会計年度に比べて378億円 (50.5%)の減益となりました。この減益は、主に連結子会社の当期利益の減益によるものです。
g.親会社の所有者に帰属する当期利益
当連結会計年度の親会社の所有者に帰属する当期利益は2兆2,452億円と、前連結会計年度に比べて2,091億円 (10.3%) の増益となりました。
h.その他の包括利益 (税効果考慮後)
当連結会計年度におけるその他の包括利益 (税効果考慮後) は1兆124億円と、前連結会計年度に比べて1兆5,211億円利益が増加しました。これは、主に米ドルやユーロに対する為替レートが円安に進んだことにより、在外営業活動体の為替換算差額が前連結会計年度の3,620億円の損失に対し、当連結会計年度は4,036億円の利益となったこと、および主に株価が変動したことにより、その他の包括利益を通じて公正価値で測定する金融資産の公正価値変動が前連結会計年度の1,304億円の損失に対し、当連結会計年度は3,039億円の利益となったこと、ならびに主に制度資産の公正価値が変動したことにより、確定給付制度の再測定が前連結会計年度の433億円の損失から当連結会計年度は2,162億円の利益となったことによるものです。
i.事業別セグメントの状況
以下は、トヨタの事業別セグメントの状況に関する説明です。記載された数値は、セグメント間の営業収益控除前です。
金額:百万円 | ||||||||||
3月31日に終了した1年間 | 増減および増減率 | |||||||||
2020年 | 2021年 | 増減 | 増減率 | |||||||
自動車 | 営業収益 | 26,799,743 | 24,651,552 | △2,148,191 | △8.0% | |||||
営業利益 | 2,013,134 | 1,607,161 | △405,973 | △20.2% | ||||||
金融 | 営業収益 | 2,193,170 | 2,162,237 | △30,933 | △1.4% | |||||
営業利益 | 283,742 | 495,593 | 211,851 | 74.7% | ||||||
その他 | 営業収益 | 1,504,920 | 1,052,365 | △452,555 | △30.1% | |||||
営業利益 | 103,356 | 85,350 | △18,006 | △17.4% | ||||||
消去又は全社 | 営業収益 | △631,286 | △651,560 | △20,274 | ― | |||||
営業利益 | △999 | 9,645 | 10,645 | ― |
・自動車事業セグメント
自動車事業の営業収益は、トヨタの営業収益のうち最も高い割合を占めます。当連結会計年度における自動車事業セグメントの営業収益は24兆6,515億円と、前連結会計年度に比べて2兆1,481億円 (8.0%) の減収となりました。この減収は、主に車両販売台数および販売構成の変化による影響2兆800億円や、為替変動の影響5,600億円によるものです。
当連結会計年度における自動車事業セグメントの営業利益は1兆6,071億円と、前連結会計年度に比べて4,059億円 (20.2%)の減益となりました。この営業利益の減益は、主に販売面での影響3,750億円および為替変動の影響2,550億円によるものですが、原価改善の努力1,500億円および諸経費の増減・低減努力700億円などにより一部相殺されています。
・金融事業セグメント
当連結会計年度における金融事業セグメントの営業収益は2兆1,622億円と、前連結会計年度に比べて309億円 (1.4%) の減収となりました。この減収は、主に為替変動の影響によるものです。
当連結会計年度における金融事業セグメントの営業利益は4,955億円と、前連結会計年度に比べて2,118億円(74.7%)の増益となりました。この営業利益の増益は、販売金融子会社において、貸倒関連費用および残価損失関連費用が減少したことならびに金利スワップ取引などの時価評価による評価益が計上されたことなどによるものです。
・その他の事業セグメント
当連結会計年度におけるその他の事業セグメントの営業収益は1兆523億円と、前連結会計年度に比べて4,525億円 (30.1%) の減収となりました。これは主に、2020年1月にトヨタホームおよびミサワホームが当社の連結子会社ではなくなったことによるものです。
当連結会計年度におけるその他の事業セグメントの営業利益は853億円と、前連結会計年度に比べて180億円 (17.4%)の減益となりました。なお、トヨタホームおよびミサワホームが当社の連結子会社ではなくなったことによる影響が含まれています。
④流動性と資金の源泉
トヨタは従来、設備投資および研究開発活動のための資金を、主に営業活動から得た現金により調達してきました。
2022年3月31日に終了する連結会計年度については、トヨタは設備投資および研究開発活動のための十分な資金を、主に手元の現金及び現金同等物、営業活動から得た現金、および社債・借入金等の資金調達で充当する予定です。トヨタはこれらの資金を、従来の設備の維持更新・新製品導入へ効率的に投資しつつ、新たなモビリティ社会の実現に向け、競争力強化・将来の成長に資する分野に重点を置いて投資する予定です。2019年4月1日から2021年3月31日までに行われた重要な設備投資および処分に関する情報ならびに現在進行中の重要な設備投資および処分に関する情報は、「第3 設備の状況」を参照ください。
顧客や販売店に対する融資プログラムおよびリース・プログラムで必要となる資金について、トヨタは営業活動から得た現金と販売金融子会社の借入債務によりまかなっています。トヨタは、金融子会社のネットワークを拡大することにより、世界中の現地市場で資金を調達する能力を向上させるよう努めています。
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度の2兆3,984億円の資金の増加に対し、2兆7,271億円の資金の増加となり、3,286億円増加しました。
この増加は、主に未払いの営業債務が、当第4四半期連結会計期間 (2021年3月31日に終了した3ヶ月間) における仕入増加の影響により増加した結果、資金が5,131億円増加したことなどによるものですが、未収の営業債権が、当第4四半期連結会計期間 (2021年3月31日に終了した3ヶ月間) における売上増加の影響などにより増加した結果、資金が2,525億円減少したことにより、一部相殺されています。
当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度の2兆1,246億円の資金の減少に対し、4兆6,841億円の資金の減少となり、2兆5,595億円減少しました。この減少は、主に新型コロナウイルスの影響長期化リスクを見据えた借入の実施により定期預金が1兆9,883億円増加したことによるものです。
当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度の3,628億円の資金の増加に対し、2兆7,391億円の資金の増加となり、2兆3,763億円増加しました。この増加は、主に長期有利子負債による資金調達が3兆9,656億円増加したことによるものです。
当連結会計年度における資本的支出 (賃貸資産を含む) は、前連結会計年度の3兆5,824億円から3兆6,096億円と前年度並みになりました。
2022年3月31日に終了する連結会計年度において、賃貸および賃借資産を除く設備投資額は約1兆3,500億円となる予定です。
現金及び現金同等物は、2021年3月31日現在で5兆1,008億円でした。現金及び現金同等物の大部分は円建てまたは米ドル建てです。
トヨタは、現金及び現金同等物、定期預金、公社債および信託ファンドへの投資を総資金量と定義しており、当連結会計年度において総資金量は、3兆5,837億円 (33.7%) 増加し、14兆2,122億円となりました。
当連結会計年度における営業債権及びその他の債権は、3,103億円 (11.7%) 増加し、 2兆9,587億円となりました。これは主に、当第4四半期連結会計期間 (2021年3月31日に終了した3ヶ月間) における売上増加の影響によるものです。
当連結会計年度における棚卸資産は、3,541億円 (14.0%) 増加し、2兆8,880億円となりました。これは主に、貴金属の市況上昇に伴う単価上昇によるものです。
当連結会計年度における金融事業に係る債権合計は、2兆1,663億円 (12.7%) 増加し、19兆2,057億円となりました。これは主に、為替変動の影響によるものです。2021年3月31日現在における金融債権の地域別内訳は、北米54.6%、アジア13.5%、欧州13.2%、日本8.3%、その他の地域10.4%でした。
当連結会計年度におけるその他の金融資産合計は、3兆2,542億円 (32.4%) 増加しました。これは主に、定期預金等の増加によるものです。
当連結会計年度における有形固定資産は、8,771億円 (8.3%) 増加しました。これは主に、設備投資によるものです。
当連結会計年度における営業債務及びその他の債務は、5,479億円 (15.7%) 増加しました。これは主に、当第4四半期連結会計期間 (2021年3月31日に終了した3ヶ月間) における生産台数増加によるものです。
当連結会計年度における未払法人所得税は、1,386億円 (65.3%) 増加しました。これは主に、昨年度の米国税制改正に伴う法人所得税費用の減少などによるものです。
当連結会計年度における有利子負債合計は、4兆3,186億円 (20.2%) 増加しました。トヨタの短期借入債務は、加重平均利率1.37%の借入金と、加重平均利率0.16%のコマーシャル・ペーパーにより構成されています。当連結会計年度における短期借入債務は、前連結会計年度に比べて9,555億円 (18.0%) 減少し、4兆3,398億円となりました。トヨタの長期借入債務は、加重平均利率が1.25%から6.34%、返済期限が2021年から2048年の無担保の借入金、担保付きの借入金、ミディアム・ターム・ノート、無担保普通社債、担保付普通社債などにより構成されています。当連結会計年度の1年以内に返済予定の長期借入債務は3兆161億円 (66.0%) 増加し、7兆5,843億円となり、返済期限が1年超の長期借入債務は2兆4,642億円 (23.1%) 増加し、13兆1,338億円となりました。借入債務合計の増加は、主に新型コロナウイルスの影響長期化リスクを見据えた借入の実施によるものです。2021年3月31日現在で、長期借入債務の約49%は米ドル建て、約16%は円建て、約12%はユーロ建て、約6%は豪ドル建て、約3%は加ドル建て、約14%はその他の通貨によるものです。トヨタは、金利スワップを利用することにより固定金利のエクスポージャーをヘッジしています。トヨタの借入必要額に重要な季節的変動はありません。
2020年3月31日現在におけるトヨタの親会社の所有者に帰属する持分合計に対する有利子負債比率は、103.5%でしたが、2021年3月31日現在では109.6%となりました。
トヨタの短期および長期借入債務は、2021年5月31日現在、スタンダード・アンド・プアーズ (S&P) 、ムーディーズ (Moody's) および格付投資情報センター (R&I) により、次のとおり格付けされています。なお、信用格付けは株式の購入、売却もしくは保有を推奨するものではなく、何時においても撤回もしくは修正され得ます。各格付けはその他の格付けとは個別に評価されるべきです。
S&P | Moody's | R&I | ||||
短期借入債務 | A-1+ | P-1 | ― | |||
長期借入債務 | A+ | A1 | AAA |
当連結会計年度における確定給付負債(資産)の純額は、国内および海外で、それぞれ2,829億円および3,403億円と、前連結会計年度に比べて、国内は2,566億円 (47.6%)減少し、海外は14億円(0.4%)の増加となりました。確定給付負債(資産)の純額は、トヨタによる将来の現金拠出または対象従業員に対するそれぞれの退職日における支払いにより解消されます。国内においては、主に株価の上昇に伴う制度資産の増加により、確定給付負債(資産)の純額は減少しました。詳細については、連結財務諸表注記24を参照ください。
トヨタの財務方針は、すべてのエクスポージャーの管理体制を維持し、相手先に対する厳格な信用基準を厳守し、市場のエクスポージャーを積極的にモニターすることです。トヨタは、トヨタファイナンシャルサービス㈱に金融ビジネスを集中させ、同社を通じて金融ビジネスのグローバルな効率化を目指しています。
財務戦略の主要な要素は、短期的な収益の変動に左右されず効率的に研究開発活動、設備投資および金融事業に投資できるような、安定した財務基盤を維持することです。トヨタは、現在必要とされる資金水準を十分満たす流動性を保持していると考えており、また、高い信用格付けを維持することにより、引き続き多額の資金を比較的安いコストで外部から調達することができると考えています。高い格付けを維持する能力は、数多くの要因に左右され、その中にはトヨタがコントロールできないものも含まれています。これらの要因には、日本およびトヨタが事業を行うその他の主要な市場の全体的な景気ならびにトヨタの事業戦略を成功させることができるかなどが含まれています。
⑤オフバランス化される取引
トヨタは金融事業のための資金調達の一つの方法として特別目的事業体を通じた証券化プログラムを利用しています。これらの証券化取引は、トヨタが第一受益者であるものとして連結しており、当連結会計年度におけるオフバランス化される取引に重要なものはありません。
⑥貸出コミットメント
a.クレジットカード会員に対する貸出コミットメント
トヨタは金融事業の一環としてクレジットカードを発行しています。トヨタは、クレジットカード事業の慣習に従い、カード会員に対する貸付の制度を有しています。貸出はお客様ごとに信用状態の調査を実施した結果設定した限度額の範囲内で、お客様の要求により実行されます。カード会員に対する貸付金には保証は付されませんが、貸倒損失の発生を最小にするため、また適切な貸出限度額を設定するために、トヨタは、提携関係にある金融機関からの財務情報の分析を含むリスク管理方針により与信管理を実施するとともに、定期的に貸出限度額の見直しを行っています。2021年3月31日現在のカード会員に対する貸出未実行残高は1,868億円です。
b.販売店に対する貸出コミットメント
トヨタは金融事業の一環として販売店に対する融資の制度を有しています。貸付は買収、設備の改装、不動産の購入、運転資金の確保のために行われます。これらの貸付金については、通常担保権が設定されており、販売店の不動産、車両在庫、その他販売店の資産等、場合に応じて適切と考えられる物件に対して設定しています。さらに慎重な対応が必要な場合には販売店が指名した個人による保証または販売店グループが指名した法人による保証を付しています。貸付金は通常担保または保証が付されていますが、担保または保証の価値がトヨタのエクスポージャーを十分に補うことができていない可能性があります。トヨタは融資制度契約を締結することによって生じるリスクに従って融資制度を評価しています。トヨタの金融事業は、販売店グループと呼ばれる複数のフランチャイズ系列に対しても融資を行っており、しばしば貸出組合に参加することでも融資を行っています。こうした融資は、融資先の卸売車両の購入、買収、設備の改装、不動産の購入、運転資金の確保等を目的とするものです。2021年3月31日現在の販売店に対する貸出未実行残高は3兆6,554億円です。
⑦保証
トヨタは、トヨタの製品販売にあたり、販売店と顧客が締結した割賦契約について、販売店の要請に応じ顧客の割賦債務の支払いに関し保証を行っています。保証期間は2021年3月31日現在において1ヶ月から8年に亘っており、これは割賦債務の弁済期間と一致するよう設定されていますが、一般的に、製品の利用可能期間よりも短い期間となっています。顧客が必要な支払いを行わない場合には、トヨタに保証債務を履行する責任が発生します。
将来の潜在的保証支払額は、2021年3月31日現在、最大で3兆7,103億円です。トヨタは、保証債務の履行による損失の発生に備え未払費用を計上しており、2021年3月31日現在の残高は、184億円です。保証債務を履行した場合、トヨタは、保証の対象となった主たる債務を負っている顧客から保証支払額を回収する権利を有します。
⑧契約上の債務および義務
トヨタの非デリバティブ金融負債およびデリバティブ金融負債の残存契約満期期間ごとの金額に関しては、連結財務諸表注記20を参照ください。また、トヨタはその通常業務の一環として、一定の原材料、部品およびサービスの購入に関して、仕入先と長期契約を結ぶ場合があります。これらの契約は、一定数量または最低数量の購入を規定している場合があります。トヨタはかかる原材料またはサービスの安定供給を確保するためにこれらの契約を締結しています。
次の表は、2021年3月31日現在のトヨタの契約上の債務および商業上の契約債務を要約したものです。
金額:百万円 | |||||||||
返済期限 | |||||||||
合計 | 1年未満 | 1年以上 3年未満 | 3年以上 5年未満 | 5年以上 | |||||
契約上の債務: | |||||||||
短期借入債務 | 4,339,890 | 4,339,890 | - | - | - | ||||
長期借入債務 | 21,079,033 | 7,631,457 | 7,894,787 | 3,826,167 | 1,726,622 | ||||
種類株式 | 240,712 | 240,712 | - | - | - | ||||
有形固定資産およびその他の資産ならびにサービスの購入に係る契約上のコミットメント (注記31) | 359,214 | 217,371 | 99,201 | 26,505 | 16,137 | ||||
合計 | 26,018,849 | 12,429,430 | 7,993,988 | 3,852,672 | 1,742,759 | ||||
商業上の契約債務: | |||||||||
通常の事業から生じる 最大見込保証債務 (注記31): | 3,710,352 | 915,515 | 1,613,630 | 1,012,040 | 169,168 | ||||
合計 | 3,710,352 | 915,515 | 1,613,630 | 1,012,040 | 169,168 |
* 長期借入債務の金額は、将来の支払元本を表しています。
また、トヨタは2022年3月31日に終了する連結会計年度において、退職後給付制度に対し、国内および海外で、それぞれ39,392百万円および16,604百万円を拠出する予定です。
⑨関連当事者との取引
詳細については、連結財務諸表注記33を参照ください。
⑩会計基準の選択に関する基本的な考え方
当社は、資本市場における財務情報の国際的な比較可能性の向上等を目的として、2021年3月期第1四半期よりIFRSを任意適用しています。
⑪重要な会計上の見積り
IFRSに準拠した連結財務諸表を作成するにあたり、会計方針の適用、資産・負債およびトヨタの連結財務諸表に重要な影響を与える可能性のある会計上の見積りおよび仮定に関する情報は、次のとおりです。
・品質保証に係る負債
・金融事業に係る金融損失引当金
・非金融資産の減損
・退職給付に係る負債
・公正価値測定
・繰延税金資産の回収可能性
詳細については、連結財務諸表注記4を参照ください。