有価証券報告書-第84期(平成30年1月1日-平成30年12月31日)

【提出】
2019/03/28 14:44
【資料】
PDFをみる
【項目】
116項目
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1) 経営成績の概要及び分析
当連結会計年度における世界経済環境は、総じて回復傾向となりましたが、貿易摩擦や米国の金利引き上げに伴う新興国通貨下落などの影響が、年の後半に顕在化しました。先進国では、米国は雇用者数の増加や企業収益の改善などにより経済成長が拡大しました。日本は緩やかに景気が回復し、欧州は景気が減速しました。新興国では、ベトナムやインドは経済成長が続き、ブラジルは緩やかに景気が回復しました。インドネシアは内需堅調により景気が拡大しましたが、通貨下落や天災により経済は不安定な状態となりました。
このような経営環境のもと、当連結会計年度の売上高は1兆6,731億円(前期比30億円・0.2%増加)、営業利益は1,408億円(同90億円・6.0%減少)、経常利益は1,380億円(同169億円・10.9%減少)、親会社株主に帰属する当期純利益は934億円(同82億円・8.1%減少)となりました。なお、年間の為替換算レートは米ドル110円(前期比2円の円高)、ユーロ130円(同3円の円安)でした。
売上高は、マリン事業、特機事業、産業用機械・ロボット事業、その他事業で増収となりましたが、二輪車事業で減収となった結果、前年並みとなりました。
営業利益は、マリン事業、産業用機械・ロボット事業の増収効果に加え、二輪車事業でのプラットフォームモデル・グローバルモデルの開発・製造手法による収益性改善が進みましたが、先進国二輪車の売上高減少や、新興国を中心とした為替差損、原材料高騰による損失を吸収しきれず減益となりました。
財務体質については、親会社株主に帰属する当期純利益率は5.6%(前期比0.5ポイント減少)、総資産回転率は一時的な運転資金の増加により1.17回(同0.05回減少)、自己資本は6,575億円(前期末比347億円増加)、自己資本比率は45.9%(同1.9ポイント増加)となりました。これらの結果、ROEは14.6%(前期比3.0ポイント減少)となりました。また、フリー・キャッシュ・フロー(販売金融含む)は106億円のプラス(同626億円減少)となりました。
セグメント別の概況
[二輪車]
売上高1兆222億円(前期比230億円・2.2%減少)、営業利益545億円(同143億円・20.8%減少)となりました。
販売台数は、フィリピン・インドネシア・ブラジルなどで増加しましたが、先進国・ベトナム・台湾などで減少しました。その結果、事業全体では537万台(前期比0.3%減少)となり、減収・減益となりました。
アセアンでは高価格商品、インドではスポーツモデルの販売強化により収益性を高めます。先進国においては、製造販売機能の構造改革を進めています。
[マリン]
売上高3,447億円(前期比208億円・6.4%増加)、営業利益637億円(同42億円・7.1%増加)となりました。
販売台数は、船外機・ウォータービークル・スポーツボートで増加しました。更に、北米での大型船外機の販売台数増加による商品ミックスの改善もあり、増収・増益となりました。
船外機の需要の伸びに柔軟に対応できるようグローバル生産レイアウトの見直しなどを含む生産能力の向上を進めています。
[特機]
売上高1,538億円(前期比22億円・1.4%増加)、営業利益2億円(前期:営業損失15億円)となりました。
ゴルフカーや汎用エンジンの販売台数増加やレクリエーショナル・オフハイウェイ・ビークル(ROV)の経費削減により、増収・増益となりました。
ROVでは、マーケティング機能の強化に取り組み、市場のニーズに合った新しいプラットフォームモデルの投入準備を進めています。
[産業用機械・ロボット]
売上高699億円(前期比23億円・3.4%増加)、営業利益164億円(同8億円・5.4%増加)となりました。
車載向けのサーフェスマウンターの販売好調により、増収・増益となりました。
工場全体を最適化する新商品や新サービスのソリューション提案を強化してお客様への提供価値を高めていきます。
[その他]
売上高826億円(前期比8億円・1.0%増加)、営業利益59億円(同14億円・19.3%減少)となりました。
電動アシスト自転車では、欧州向けE-kit(電動アシスト自転車用ドライブユニット)の輸出が増加しましたが、日本での完成車の販売台数減少や商品ミックスの悪化により、増収・減益となりました。
電動アシスト自転車の欧州向けE-kitや日本での販売強化と、米国での新市場開拓を進めています。
なお、各セグメントの主要な製品は以下のとおりです。
セグメント主要な製品
二輪車二輪車、中間部品、海外生産用部品
マリン船外機、ウォータービークル、ボート、プール、漁船・和船
特機四輪バギー、レクリエーショナル・オフハイウェイ・ビークル、ゴルフカー、スノーモビル、発電機、除雪機、汎用エンジン
産業用機械
・ロボット
サーフェスマウンター、産業用ロボット
その他電動アシスト自転車、自動車用エンジン、自動車用コンポーネント、
産業用無人ヘリコプター、電動車いす


(2) 生産、受注及び販売の実績
① 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称製品台数(台)前期比(%)
二輪車二輪車5,454,621100.4
マリン船外機326,467106.4
ウォータービークル51,076108.9
ボート、漁船・和船11,748111.2
特機四輪バギー、レクリエーショナル・オフハイウェイ・ビークル53,30096.6
スノーモビル3,914114.0
産業用機械・ロボットサーフェスマウンター、産業用ロボット40,36186.1
その他電動アシスト自転車583,351117.2

(注) マリン、特機、及びその他は、主要製品について記載しています。
② 受注実績
当社グループは主に見込み生産をしています。
③ 販売実績
(イ)当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称金額(百万円)前期比(%)
二輪車1,022,17497.8
マリン344,658106.4
特機153,778101.4
産業用機械・ロボット69,891103.4
報告セグメント計1,590,502100.1
その他82,634101.0
合計1,673,137100.2

(注) 1 セグメント間取引については相殺消去しています。
2 上記の金額には、消費税等は含まれていません。
(ロ)主要セグメントである二輪車の当連結会計年度における当社グループの販売実績は、次のとおりです。
地域台数(台)前期比(%)
日本92,80890.2
海外5,281,65899.9




北米67,00496.3
欧州176,47388.7
アジア4,575,590100.4
その他462,591100.4
合計5,374,46699.7

(3) 財政状態の概要及び分析
総資産は、前期末比176億円増加し1兆4,335億円となりました。流動資産は、たな卸資産、短期販売金融債権の増加などにより同192億円増加し、固定資産は、長期販売金融債権が増加する一方で有形及び無形固定資産が減少し、同16億円減少しました。
負債合計は、電子記録債務や支払手形及び買掛金の減少などにより同129億円減少し、7,377億円となりました。
純資産合計は、親会社株主に帰属する当期純利益934億円、配当金の支払328億円などにより同305億円増加し6,957億円となりました。これらの結果、当期末の自己資本比率は45.9%(前期末比1.9ポイント増加)、D/Eレシオ(ネット)は0.3倍(前期末:0.3倍)となりました。
(4) キャッシュ・フローの状況
[営業活動によるキャッシュ・フロー]
税金等調整前当期純利益1,369億円(前期:1,523億円)や減価償却費464億円(同:455億円)などの収入に対して、たな卸資産の増加366億円(同:112億円の増加)、売上債権及び販売金融債権の増加額合わせて350億円(同:503億円の増加)、仕入債務の減少83億円(同:104億円の増加)などの支出により、589億円の収入(同:1,263億円の収入)となりました。
[投資活動によるキャッシュ・フロー]
固定資産の取得による支出540億円(前期:644億円)などにより、483億円の支出(同:532億円の支出)となりました。
[財務活動によるキャッシュ・フロー]
配当金の支払328億円(前期:241億円)、借入金の増加197億円(同:146億円の減少)などにより、264億円のマイナス(同:528億円のマイナス)となりました。
これらの結果、当期のフリー・キャッシュ・フローは106億円のプラス(前期:731億円のプラス)、当期末の有利子負債は3,567億円(前期末比:32億円の増加)、現金及び現金同等物は1,382億円(同:175億円の減少)となりました。なお、有利子負債には販売金融に係る借入金が2,628億円(同:141億円の増加)含まれています。
(5) 資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社グループにおける主な資金需要は、製品製造のための材料・部品等の購入費、製造費用、製品・商品の仕入、販売費及び一般管理費、運転資金及び設備投資資金です。
運転資金については返済期限が一年以内の短期借入金で、通常各々の会社が運転資金として使用する現地の通貨で調達しています。設備投資資金については原則として資本金、内部留保といった自己資金でまかなうこととしています。
資金の流動性管理にあたっては、適時に資金繰り計画を作成・更新するとともに、手元流動性を適度に維持することで、必要な流動性を確保しています。
(6) 重要な会計方針及び見積り
当社の連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成しています。その作成には経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者はこれらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断していますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果は、これらの見積りと異なる場合があります。
当社の連結財務諸表で採用している重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載していますが、特に次の重要な会計方針が連結財務諸表作成における重要な見積りの判断に大きな影響を及ぼすと考えています。
① たな卸資産
当社グループは、たな卸資産の、推定される将来需要及び市場状況に基づく時価の見積額と総平均法による原価法(貸借対照表価額は、収益性の低下に基づく簿価切下げの方法により算定しています。)による評価額との差額に相当する陳腐化の見積額について、評価減を計上しています。実際の将来需要又は市場状況が、当社グループ経営者による見積りより悪化した場合、追加の評価減が必要となる可能性があります。
② 貸倒引当金
当社グループは、売掛金、販売金融債権及び貸付金その他これらに準ずる債権を適正に評価するため、一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権等特定の債権については、個別に回収可能性を検討し、回収不能見込額を計上しています。将来、債権の相手先の財務状況がさらに悪化して支払能力が低下した場合には、引当金の追加計上又は貸倒損失が発生する可能性があります。
③ 投資有価証券
当社グループは、販売又は仕入に係る取引先や金融機関等の株式を保有しています。これらの株式には価格変動性が高い公開会社の株式と時価を把握することが困難である非公開会社の株式が含まれます。当社グループは、投資価値の下落が一時的ではないと判断した場合、合理的な基準に基づいて投資有価証券の減損損失を計上しています。時価のある有価証券についての減損処理に係る合理的な基準は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 有価証券関係」に記載しています。なお、将来の市況悪化又は投資先の業績不振など、現在の簿価に反映されていない損失又は簿価の回収が不能となる状況が発生した場合、減損損失の追加計上が必要となる可能性があります。
④ 製品保証引当金
当社グループは、販売済製品の保証期間中のアフターサービス費用、その他販売済製品の品質問題に対処する費用の見積額を計上しています。当該見積りは、過去の実績若しくは個別の発生予想額に基づいていますが、実際の製品不良率又は修理コストが見積りと異なる場合、アフターサービス費用の見積額の修正が必要となる可能性があります。
⑤ 退職給付に係る負債
従業員の退職給付費用及び退職給付債務は、数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出されています。これらの前提条件には、割引率、長期期待運用収益率、将来の給与水準、退職率、直近の統計数値に基づいて算出される死亡率などが含まれます。当社及び一部の国内連結子会社が加入する年金制度においては、割引率は優良社債を基礎とした複数の割引率を退職給付の支払見込期間ごとに設定しています。長期期待運用収益率は、年金資産が投資されている資産の種類毎の期待収益率の加重平均に基づいて計算されます。実際の結果が前提条件と異なる場合、又は前提条件が変更された場合、その影響は累積され、将来にわたって規則的に計上されるため、一般的には将来期間において認識される収益・費用、計上される資産・負債及び純資産に影響を及ぼします。数理計算上の差異等の償却は退職給付費用の一部を構成していますが、前提条件の変化による影響や前提条件と実際との結果の違いの影響を規則的に費用認識したものです。また、前述の前提条件の変化により償却額は変動する可能性があります。