訂正有価証券報告書-第85期(平成31年1月1日-令和1年12月31日)

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2021/03/25 9:57
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当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
以下の分析については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (表示方法の変更)」及び「同(セグメント情報等) セグメント情報 1.報告セグメントの概要」に記載のとおり、遡及・組替後の前連結会計年度の連結財務諸表等の数値を用いて説明しています。
また、「同(企業結合等関係)」に記載のとおり、ヤマハモーターロボティクスホールディングス株式会社(以下「YMRH」という。)及びその子会社を連結の範囲に含めたことに伴い総資産が増加し、当連結会計年度に係る連結損益計算書には、同社の第2、第3四半期連結会計期間(2019年7月から12月)の業績を含んでいます。
(1) 経営成績の概要及び分析
当連結会計年度における世界経済は、米中貿易摩擦による投資の抑制や英国のEU離脱問題など不安定な環境の中、成長率が低下しました。先進国では、日本は緩やかな景気回復が続き、米国と欧州では成長が鈍化しました。新興国では、ベトナムやフィリピンでは経済成長が拡大しましたが、インドネシア、タイ、インドでは景気が減速しました。
このような経営環境のもと、当連結会計年度の売上高は1兆6,648億円(前期比84億円・0.5%減少)、営業利益は1,154億円(同254億円・18.1%減少)、経常利益は1,195億円(同185億円・13.4%減少)、親会社株主に帰属する当期純利益は757億円(同176億円・18.9%減少)となりました。なお、年間の為替換算レートは米ドル109円(前期比1円の円高)、ユーロ122円(同8円の円高)でした。
売上高は、マリン事業、金融サービス事業で増収となった一方で、ランドモビリティ事業と、YMRH及びその子会社の事業統合影響を除いたロボティクス事業では減少し、全体では減収となりました。営業利益は、先進国二輪車での欧州・本社生産の稼働率上昇や構造改革、インドネシア二輪車での高価格商品増加による収益性改善が進みましたが、ロボティクス事業などの売上高の減少、成長戦略経費の増加、為替影響などにより、全体では減益となりました。
財務体質については、親会社株主に帰属する当期純利益率は4.5%(前期比1.0ポイント低下)、総資産回転率は一時的な運転資金の増加により1.13回(同0.05回減少)、自己資本は7,052億円(前期末比478億円増加)、自己資本比率は46.0%(同0.3ポイント低下)となりました。これらの結果、ROEは11.1%(前期比3.5ポイント低下)となりました。また、フリー・キャッシュ・フロー(販売金融含む)は195億円のプラス(同89億円増加)となりました。
セグメント別の概況
[ランドモビリティ]
売上高1兆1,004億円(前期比173億円・1.6%減少)、営業利益418億円(同69億円・14.1%減少)となりました。
部門別の経営成績の概要は、次の通りです。
先進国二輪車では、売上高2,231億円(前期比52億円・2.3%減少)、営業利益率△6.4%(前期比1.6ポイント改善)となりました。総需要は、欧州で増加し、北米は前年並み、日本は微減となりました。当社は、欧州での新規制対応モデルを中心とした販売台数の増加や構造改革の進捗により、赤字幅が縮小しました。新興国二輪車では、売上高7,557億円(前期比194億円・2.5%減少)、営業利益率6.9%(前期比1.7ポイント低下)となりました。総需要は、ブラジル・フィリピン・台湾で増加しました。台湾では政府の補助金政策により電動スクーターの需要が大幅に増加しましたが、ガソリン車の需要は減少しました。その他の地域では、インド・インドネシア・ベトナム・タイで総需要が減少しました。当社は、フィリピン・ブラジルなどでの販売台数増加に加え、インドネシアでの高価格商品の販売台数が増加ましたが、ベトナム・インド・台湾などで減少し、減収・減益となりました。二輪車全体の販売台数は、506万台(前期比5.9%減少)となりました。先進国においては、引き続き新規制対応モデルの積極的な投入と構造改革を進めます。新興国においては、高付加価値商品の販売を主軸とし、ベトナムではブランド力強化、インドでは新規制対応モデルの投入、台湾では電動二輪車の拡販など、各市場での販売台数増加と収益性改善を目指します。
RV(四輪バギー、レクリエーショナル・オフハイウェイ・ビークル(ROV)、スノーモビル)では、売上高775億円(前期比13億円・1.7%増加)、営業利益率△3.3%(前期比4.0ポイント改善)となりました。北米での四輪バギーやスノーモビルの販売台数増加により増収となり、赤字幅が縮小しました。
電動アシスト自転車では、売上高441億円(前期比61億円・15.9%増加)、営業利益率14.6%(前期比0.7ポイント低下)となりました。欧州向けE-kitや日本での販売台数増加により、増収・増益となりました。引き続き、新開発のアシスト制御搭載モデルの投入や販売力強化により、拡大を続ける市場に対し事業成長に努めます。
[マリン]
売上高3,451億円(前期比69億円・2.0%増加)、営業利益584億円(同24億円・3.9%減少)となりました。マリン事業の売上高の半数以上を占める船外機の全世界の総需要は減少しましたが、当社船外機の主要市場である北米・欧州では、大型船外機への移行傾向は継続しています。
当社の販売台数は、船外機は、北米・欧州で200馬力を超えるハイエンドモデルは増加しましたが、上期の天候不順の影響により淡水域での中・小型馬力が減少したため、全体では減少しました。一方、ウォータービークル・スポーツボートの販売台数は増加しました。また、為替影響を大きく受けて、事業全体では増収・減益となりました。
市場の変化に迅速かつ柔軟に対応しながらボートビルダーとの関係を強化し、システムサプライヤー戦略を推進していきます。
[ロボティクス]
売上高756億円(前期比8億円・1.1%増加)、営業利益77億円(同90億円・53.9%減少)となりました。なお、当期の業績には、YMRH及びその子会社の第2、第3四半期連結会計期間(2019年7月から12月)の業績、売上高120億円、営業損失28億円を含んでいます。
YMRH子会社化の影響を除くと、米中貿易摩擦の影響によりサーフェスマウンターと産業用ロボットの販売台数が減少し、減収・減益となりました。YMRH子会社化後の構造改革は予定通り進捗しています。
需要動向を注視し、新機種投入や事業統合によるシナジー効果を活かした商品の一括提案や相互販路活用を加速させていきます。
[金融サービス]
売上高409億円(前期比19億円・4.8%増加)、営業利益80億円(同42億円・34.2%減少)となりました。
フランスで事業展開を始めるなど、全地域で債権残高は順調に拡大しました。前年はブラジルでの一時収益があったことなどにより、増収・減益となりました。
顧客層と地域を広げ、当社ならではの利便性の高いサービスを提供していきます。
[その他]
売上高1,027億円(前期比6億円・0.6%減少)、営業損失6億円(前期:営業利益24億円)となりました。
ゴルフカーで高価格帯商品の販売が増加し増収となりましたが、ゴルフカー・発電機の市場対策費用や米国での追加関税の影響などにより、全体では減収・減益となりました。
なお、各セグメントの主要な製品及びサービスは以下のとおりです。
セグメント主要な製品及びサービス
ランドモビリティ二輪車、中間部品、海外生産用部品、四輪バギー、レクリエーショナル・オフハイウェイ・ビークル、スノーモビル、電動アシスト自転車
マリン船外機、ウォータービークル、ボート、プール、漁船・和船
ロボティクスサーフェスマウンター、半導体製造装置、産業用ロボット、産業用無人ヘリコプター
金融サービス当社製品に関わる販売金融及びリース
その他ゴルフカー、発電機、汎用エンジン、除雪機、自動車用エンジン、自動車用コンポーネント、電動車いす

2019年8月8日公表の業績予想に対して、全体では減収・減益となりました。セグメント別の要因は以下のとおりです。
セグメント業績予想との比較
ランドモビリティ先進国二輪車・RV(四輪バギー・ROV・スノーモビル)・電動アシスト自転車では販売好調により増収となりましたが、新興国二輪車のベトナム・フィリピン・インド・台湾で販売計画を下回ったことや、コストダウンが進まなかったこと、インドネシア・ブラジルにおける仕入れにおける為替の影響などにより、事業全体では増収・減益となりました。
マリン大型船外機の需要増加という市場構造の変化によるモデルミックス改善により増収となりましたが、為替影響により減益となりました。
ロボティクス中国向けサーフェスマウンターでの販売が計画を下回り減収となりましたが、経費抑制効果により増益となりました。
金融サービス金融債権の買取り費用発生などにより減収・減益となりました。
その他ゴルフカー・発電機の市場対策費用などにより減収・減益となりました。


(2) 生産、受注及び販売の実績
① 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称製品台数(台)前期比(%)
ランドモビリティ二輪車5,033,99492.3
四輪バギー、レクリエーショナル・オフハイウェイ・ビークル55,880104.8
スノーモビル2,58666.1
電動アシスト自転車637,568109.0
マリン船外機317,46497.2
ウォータービークル47,70093.4
ボート、漁船・和船11,08394.3
ロボティクスサーフェスマウンター、産業用ロボット33,02481.8
その他ゴルフカー68,19899.9

(注) 主要製品について記載しています。
② 受注実績
当社グループは主に見込み生産をしています。
③ 販売実績
(a)当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称金額(百万円)前期比(%)
ランドモビリティ1,100,43098.4
マリン345,058102.0
ロボティクス75,644101.1
金融サービス40,928104.8
報告セグメント計1,562,06199.5
その他102,70399.4
合計1,664,76499.5

(注) 1 セグメント間取引については相殺消去しています。
2 上記の金額には、消費税等は含まれていません。
(b)ランドモビリティの主要製品である二輪車の当連結会計年度における当社グループの販売実績は、次のとおりです。
地域台数(台)前期比(%)
日本88,26595.1
海外4,967,42294.1




北米62,69993.6
欧州185,612105.2
アジア4,260,93293.1
その他458,17999.0
合計5,055,68794.1

(3) 財政状態の概要及び分析
総資産は、前期末比1,120億円増加し1兆5,328億円となりました。流動資産は、棚卸資産の増加やYMRH及びその子会社を連結したことによる増加などにより、同250億円増加し、固定資産は、YMRH及びその子会社を連結したことによる増加、IFRS第16号「リース」の適用に伴う有形固定資産の増加、投資有価証券の取得、及び米国財務会計基準審議会会計基準アップデート(ASU)第2014-09号「顧客との契約から生じる収益」の適用による投資その他の資産の増加などにより、同870億円増加しました。
負債合計は、YMRH及びその子会社を連結したことによる増加、IFRS第16号及びASU第2014-09号の適用に伴う流動負債の「その他」及び固定負債の「その他」の増加などにより、同559億円増加し、7,810億円となりました。
純資産合計は、親会社株主に帰属する当期純利益757億円、配当金の支払314億円などにより同561億円増加し7,518億円となりました。これらの結果、当期末の自己資本比率は46.0%(前期末比0.3ポイント低下)、D/Eレシオ(ネット)は0.3倍(前期末:0.3倍)となりました。
(4) キャッシュ・フローの状況
[営業活動によるキャッシュ・フロー]
税金等調整前当期純利益1,206億円(前期:1,369億円)や減価償却費497億円(同:464億円)などの収入に対して、売上債権及び販売金融債権の増減額合わせて295億円の増加(同:350億円の増加)、たな卸資産の増加174億円(同:366億円の増加)、仕入債務の減少71億円(同:83億円の減少)などの支出により、991億円の収入(同:589億円の収入)となりました。
[投資活動によるキャッシュ・フロー]
固定資産の取得による支出587億円(前期:540億円)、投資有価証券の取得による支出234億円(同:29億円)などにより、797億円の支出(同:483億円の支出)となりました。
[財務活動によるキャッシュ・フロー]
配当金の支払などにより、368億円の支出(前期:264億円の支出)となりました。
これらの結果、当期のフリー・キャッシュ・フローは195億円のプラス(前期:106億円のプラス)、当期末の有利子負債は3,650億円(前期末比:83億円の増加)、現金及び現金同等物は1,227億円(同:154億円の減少)となりました。なお、有利子負債には販売金融に係る借入金及び社債が2,902億円(同:273億円の増加)含まれています。
(5) 資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社グループにおける主な資金需要は、製品製造のための材料・部品等の購入費、製造費用、製品・商品の仕入、販売費及び一般管理費、運転資金及び設備投資資金です。
運転資金については返済期限が一年以内の短期借入金で、通常各々の会社が運転資金として使用する現地の通貨で調達しています。設備投資資金については原則として資本金、内部留保といった自己資金でまかなうこととしています。
資金の流動性管理にあたっては、適時に資金繰り計画を作成・更新するとともに、手元流動性を適度に維持することで、必要な流動性を確保しています。
当社は「稼ぐ力を維持しながら、キャッシュ・フローの範囲内で成長投資と株主還元のバランスを取る」ことを財務戦略として掲げています。次期のキャッシュ・フローの計画において、株主配当については期末配当1株当たり45円(2020年3月25日開催の第85期定時株主総会にて決議)と中間配当1株当たり45円を予定しており、設備投資740億円、成長戦略費用含む研究開発費1,273億円を計画しています。また、YMRH株式(証券コード6274)に対する公開買付けに136億円の支出を見込んでいます。

(6) 重要な会計方針及び見積り
当社の連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成しています。その作成には経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者はこれらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断していますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果は、これらの見積りと異なる場合があります。
当社の連結財務諸表で採用している重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載していますが、特に次の重要な会計方針が連結財務諸表作成における重要な見積りの判断に大きな影響を及ぼすと考えています。
① たな卸資産
当社グループは、たな卸資産の、推定される将来需要及び市場状況に基づく時価の見積額と総平均法による原価法(貸借対照表価額は、収益性の低下に基づく簿価切下げの方法により算定しています。)による評価額との差額に相当する陳腐化の見積額について、評価減を計上しています。実際の将来需要又は市場状況が、当社グループ経営者による見積りより悪化した場合、追加の評価減が必要となる可能性があります。
② 貸倒引当金
当社グループは、売掛金、販売金融債権及び貸付金その他これらに準ずる債権を適正に評価するため、一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権等特定の債権については、個別に回収可能性を検討し、回収不能見込額を計上しています。将来、債権の相手先の財務状況がさらに悪化して支払能力が低下した場合には、引当金の追加計上又は貸倒損失が発生する可能性があります。
③ 投資有価証券
当社グループは、販売又は仕入に係る取引先や金融機関等の株式を保有しています。これらの株式には価格変動性が高い公開会社の株式と時価を把握することが困難である非公開会社の株式が含まれます。当社グループは、投資価値の下落が一時的ではないと判断した場合、合理的な基準に基づいて投資有価証券の減損損失を計上しています。時価のある有価証券についての減損処理に係る合理的な基準は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (有価証券関係)」に記載しています。なお、将来の市況悪化又は投資先の業績不振など、現在の簿価に反映されていない損失又は簿価の回収が不能となる状況が発生した場合、減損損失の追加計上が必要となる可能性があります。
④ 製品保証引当金
当社グループは、販売済製品の保証期間中のアフターサービス費用、その他販売済製品の品質問題に対処する費用の見積額を計上しています。当該見積りは、過去の実績若しくは個別の発生予想額に基づいていますが、実際の製品不良率又は修理コストが見積りと異なる場合、アフターサービス費用の見積額の修正が必要となる可能性があります。
⑤ 退職給付に係る負債
従業員の退職給付費用及び退職給付債務は、数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出されています。これらの前提条件には、割引率、長期期待運用収益率、将来の給与水準、退職率、直近の統計数値に基づいて算出される死亡率などが含まれます。当社及び一部の国内連結子会社が加入する年金制度においては、割引率は優良社債を基礎とした複数の割引率を退職給付の支払見込期間ごとに設定しています。長期期待運用収益率は、年金資産が投資されている資産の種類毎の期待収益率の加重平均に基づいて計算されます。実際の結果が前提条件と異なる場合、又は前提条件が変更された場合、その影響は累積され、将来にわたって規則的に計上されるため、一般的には将来期間において認識される収益・費用、計上される資産・負債及び純資産に影響を及ぼします。数理計算上の差異等の償却は退職給付費用の一部を構成していますが、前提条件の変化による影響や前提条件と実際との結果の違いの影響を規則的に費用認識したものです。また、前述の前提条件の変化により償却額は変動する可能性があります。