有価証券報告書-第76期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)

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2021/06/29 17:03
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(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①経営成績
当連結会計年度における世界経済は、新型コロナウイルスの感染拡大が長期化する中、米国では経済活動の再開により持ち直しの動きも見られましたが、依然として感染者数が増加しており予断を許さない状況が続きました。中国では感染症の抑制により経済活動がいち早く再開され、米国政権交代後も米中貿易摩擦の懸念は依然残るものの景気は回復基調となりました。しかしながら、その他新興国では感染者数が増加し続けるなど、経済活動の制限緩和や経済対策による需要回復には地域差があり、依然景気低迷が懸念される状況が続きました。
一方、日本経済は、年明けから再び緊急事態宣言が発出され、渡航規制、営業活動の自粛等により企業活動に影響を及ぼし、景気は低調に推移しました。
当社グループの関連する自動車産業においては、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、各地域とも生産・販売台数は前年を下回りました。新興国では前年比半減となる国がある一方、中国では微減にとどまるなど、地域によって市場の回復に大きな差が見られました。新車需要は回復傾向にありますが、直近では半導体供給不足等により得意先での生産調整が相次いでおります。
このような状況下において当社グループの売上は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う得意先の稼働停止や減産の影響を受け、前期比24.6%減の118,863百万円となりました。利益面では、上期においては大幅な営業損失でしたが、下期以降の生産回復傾向に加え、量に合わせた生産体制の迅速な見直しや前年度下期から継続している緊急収益改善活動の成果などにより、最終的には大幅な改善となる377百万円の利益を計上することができました。更に経常利益は雇用調整助成金や為替差益の計上もあり前期比88.1%増の1,449百万円となりました。親会社株主に帰属する当期純損益は、得意先生産台数の大幅減少等によるタイ2拠点、米国第一拠点及び日本の山形拠点における有形固定資産の減損損失の計上に加え、米国における繰延税金資産の取り崩しによる税金費用の増加もあり、6,195百万円の損失となりました。
なお、連結決算における海外子会社損益の円換算には、各子会社決算期の平均レートを使用しており、当連結会計年度の米ドルレート(1~12月)は、106.76円/ドル(前連結会計年度は109.03円/ドル)であります。
セグメントの状況は、以下のとおりであります。
ⅰ) 日本
売上高は、各得意先の大幅な減産などにより、前期比20.4%減の39,798百万円、営業利益は、売上の減少影響に加え海外からのロイヤルティの減少もあり、前期比35.3%減の1,136百万円となりました。
ⅱ)米州
売上高は、米国、メキシコ、ブラジルでの上期における約2か月間の休業を含む各得意先の大幅な減産により、前期比33.7%減の44,829百万円、営業損益は、売上の減少影響により2,502百万円の損失となりました。
ⅲ)アジア
売上高は、タイ、インド、インドネシアにおける各得意先の大幅な減産により、前期比15.8%減の44,240百万円、営業利益は、売上の減少影響により前期比35.6%減の1,407百万円となりました。
生産、受注及び販売の実績は、次のとおりであります。
a. 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称生産高(百万円)前年度比(%)
日本32,721△25.2
米州43,374△35.5
アジア42,583△17.9
合計118,679△27.1

(注) 1.セグメント間取引については、相殺消去しております。
2.金額は、販売価格によっております。
3.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
b. 受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称受注高(百万円)前年度比(%)受注残高(百万円)前年度比(%)
日本31,803△10.714,1695.6
米州42,580△35.812,868△18.1
アジア44,162△13.511,2485.7
合計118,546△22.538,286△3.7

(注) 1.セグメント間取引については、相殺消去しております。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
c. 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称販売高(百万円)前年度比(%)
日本31,050△19.1
米州44,524△33.7
アジア43,288△16.9
合計118,863△24.6

(注) 1.セグメント間取引については、相殺消去しております。
2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合
相手先前連結会計年度当連結会計年度
販売高(百万円)割合(%)販売高(百万円)割合(%)
東風汽車有限公司25,56716.222,22318.7
北米日産会社26,23416.614,81112.5
日産自動車株式会社19,28212.214,47712.2
メキシコ日産自動車会社15,3739.811,93710.0

3.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
②財政状態
(資産の部)
流動資産は、前連結会計年度末と比べ5,335百万円増加の63,721百万円となりました。これは、「製品」が1,510百万円、「仕掛品」が1,294百万円、「未収入金」が785百万円,「その他」が774百万円減少したものの、「現金及び預金」が10,240百万円増加したことなどによります。
固定資産は、前連結会計年度末と比べ10,311百万円減少の71,001百万円となりました。これは、「有形固定資産」の「建物及び構築物」が2,153百万円、「機械装置及び運搬具」が8,257百万円減少したことなどによります。
この結果、総資産は前連結会計年度末と比べ4,976百万円減少の134,723百万円となりました。
(負債の部)
流動負債は、前連結会計年度末と比べ1,780百万円増加の39,331百万円となりました。これは、「短期借入金」が2,936百万円、「未払費用」が1,124百万円減少したものの、「1年内返済予定の長期借入金」が5,185百万円増加したことなどによります。
固定負債は、前連結会計年度末と比べ2,054百万円増加の29,653百万円となりました。これは、「その他」が551百万円減少したものの、「長期借入金」が2,740百万円増加したことなどによります。
この結果、負債合計は前連結会計年度末と比べ3,835百万円増加の68,984百万円となりました。
(純資産の部)
純資産合計は、前連結会計年度末と比べ8,811百万円減少の65,738百万円となりました。これは、「株主資本合計」のうち「利益剰余金」が6,504百万円、「非支配株主持分」が2,466百万円減少したことなどによります。
③キャッシュ・フロー
当連結会計年度末の現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前連結会計年度末に比べ10,240百万円(+53.8%)増加し、29,259百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の営業活動により増加した資金は13,218百万円であり、前連結会計年度と比べ2,393百万円の収入増加となりました。営業活動によるキャッシュ・フローの前年度比における主な増減は次のとおりであります。
「税金等調整前当期純損失」に伴う損失減少 6,634百万円
「仕入債務の増減額」に伴う支出減少 3,667百万円
「たな卸資産の増減額」に伴う収入増加 2,072百万円
「法人税等の支払額」に伴う支出減少 1,412百万円
「減損損失」に伴う収入減少 6,297百万円
「売上債権の増減額」に伴う収入減少 2,752百万円
「減価償却費」に伴う収入減少 2,275百万円
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の投資活動により減少した資金は7,048百万円であり、前連結会計年度と比べ2,535百万円の支出減少となりました。投資活動によるキャッシュ・フローの前年度比における主な増減は次のとおりであります。
「有形固定資産の取得による支出」の支出減少 3,318百万円
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の財務活動により増加した資金は3,775百万円であり、前連結会計年度と比べ11,493百万円の収入増加となりました。財務活動によるキャッシュ・フローの前年度比における主な増減は次のとおりであります。
「長期借入れによる収入」の収入増加 14,396百万円
「短期借入金の返済による支出」の支出減少 4,370百万円
「長期借入金の返済による支出」の支出増加 5,515百万円
「短期借入れによる収入」の収入減少 2,772百万円

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において判断したものです。
①重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。
ⅰ)固定資産の減損
当社グループは、固定資産のうち減損の兆候がある資産又は資産グループについて当該資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。当該見積りの前提とした条件や仮定については、当社グループ各社の中期経営計画に基づいているため、計画の基礎となる完成車メーカーの生産台数や当社グループが事業を展開する各国の景況の変化により、適宜修正し見積もっております。具体的な算出方法としては、5年間の事業計画をベースに6年目以降は成長率を考慮した上で不確実性も勘案し5年目の売上計画を上限値として見積もっております。また、割引前将来キャッシュ・フローの算出に用いた主要な仮定は、売上高を算定する上で基礎となる受注車種の生産台数であり、客先からの内示や外部機関の自動車台数情報をベースとし、過去の実績と計画との乖離率を考慮して計算しております。なお、新型コロナウイルス感染の拡大に伴う影響について、短期的には客先からの内示や外部機関の情報に織り込まれていると想定し計算しており、中長期的には回復するという仮定で計算しております。
当連結会計年度においては、減損損失として4,973百万円を計上しております。 これは、当連結会計年度・連結貸借対照表に計上されている固定資産71,001百万円のうち、6,846百万円(減損損失計上後簿価、連結総資産の5.1%)を占める米州セグメントに属するヨロズオートモーティブテネシー社と2,775百万円(減損損失計上後簿価、連結総資産の2.1%)を占めるアジアセグメントに属するヨロズタイランド社、ワイ・オグラオートモーティブタイランド社及び514百万円(連結総資産の0.4%)を占める日本セグメントに属する㈱庄内ヨロズが保有する資産グループについて減損の兆候が認められたことから、減損損失を認識するかどうかの判定を行いました。減損損失の認識の判定において、ヨロズタイランド社、ワイ・オグラオートモーティブタイランド社、ヨロズオートモーティブテネシー社、㈱庄内ヨロズが保有する資産グループの中期経営計画等に基づく割引前将来キャッシュ・フローが当該資産グループの帳簿価額を下回ったことから、当該資産グループの減損損失の認識は必要と判断しました。 また、当連結会計年度・連結貸借対照表に計上されている固定資産71,001百万円のうち、9,948百万円(連結総資産の7.4%)を占める米州セグメントに属する3拠点と1,219百万円(連結総資産の0.9%)を占めるアジアセグメントに属する1拠点が保有する資産グループについて前連結会計年度において減損損失を計上しましたが、当連結会計年度においても減損の兆候が認められたことから、減損損失を認識するかどうかの判定を行っております。減損損失の認識の判定において、同社の中期経営計画等に基づく割引前将来キャッシュ・フローの合計が当該資産グループの帳簿価額を上回っていることから、当該資産グループの減損損失の認識は不要と判断しております。
②経営成績の分析
当連結会計年度の売上高は前期比24.6%減の118,863百万円、営業利益は82.9%減の377百万円、経常利益は88.1%増
の1,449百万円となり、親会社株主に帰属する当期純利益は前期に比べ6,738百万円増の6,195百万の損失となりまし
た。以下、連結損益計算書に重要な影響を与えた要因について分析します。
ⅰ)売上高
当連結会計年度の売上高は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う得意先の稼動停止や減産の影響を受け、前期比24.6%減の118,863百万円となりました。当連結会計年度の売上高を得意先別に見ると、日産グループ向けは、新型コロナウイルスの感染拡大影響に加え、販売不振の影響もあり、前期比27.2%減の75,994百万円となりました。ホンダグループ向けは、19.5%減の20,070百万円となりました。トヨタグループ向けは、12.1%減の7,191百万円となりました。
ⅱ)売上原価、販売費及び一般管理費
売上原価は、前期比24.6%減の106,626百万円となりましたが、売上高に対する割合は89.6%から89.7%に上昇しました。
販売費及び一般管理費は、人件費等の減少などにより、前期比16.1%減の11,859百万円となりましたが、売上高に対する割合は新型コロナウイルスの感染拡大に伴う減産影響を受けて9.0%から10.0%に上昇しました。
ⅲ)営業外収益、営業外費用
営業外収益は、日本での雇用調整助成金の計上と前期での為替差損から主にメキシコ・ブラジル・タイの新興国通貨の為替が差益に転じたことなどにより前期比188.6%増の1,715百万円となりました。
営業外費用は、前期での為替差損が差益に転じたことにより前期に比べ1,386百万円減少の643百万円となりました。
ⅳ)特別利益、特別損失
特別利益は、固定資産売却益の増加等により前期比281.9%増の279百万となりました。
特別損失は、有形固定資産の減損損失計上額の減少等により前期に比べ5,749百万円減少の6,011百万円となりました。
ⅴ)法人税等
法人税等は、前期比7.2%減の2,571百万円となりました。
③資本の財源及び資金の流動性
当社グループの資本の財源及び資金の流動性につきましては、次のとおりであります。
運転資金需要の主なものは、素材や部分品などの原材料の他製造労務費・経費、販売費及び一般管理費などの営業費用であります。投資資金需要の主なものは、製造のための基本設備、汎用及び専用設備などの設備投資であります。国ごとに異なる事業運営を、必要な資金の流動性と源泉を安定的に確保することを基本方針としております。
短期運転資金は、グループ内余資の有効活用を前提とした自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としております。設備投資や長期運転資金の調達につきましては、調達環境、資本コスト、負債・資本バランスを考慮した長期性資金の調達を基本としております。現時点での長期性資金は、金融機関からの長期借入により調達しております。
なお、当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は44,769百万円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は29,259百万円となっております。
④経営成績に重要な影響を与える要因
経営成績に重要な影響を与える要因については、「2 事業等のリスク」に記載のとおりです。
当社グループは、従業員の雇用の維持を前提に、新型コロナウイルス感染症に係る事業への影響に対応をしつつ、常に中長期的な視点から環境に左右されない体質の強化に取り組んでまいります。