有価証券報告書-第75期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

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2020/06/29 14:07
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(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①経営成績
当連結会計年度における世界経済は、米国では秋の米大統領選を控え、米中貿易摩擦については部分合意がなされるなど、短期的には沈静化に向かいましたが、最近の雇用環境は急変し、経済は急激に悪化しております。一方中国経済は依然として減速傾向が続いており、その他新興国でも中国の不振の影響を受け市場の減速感が強まっております。更に年明けの1月以降は、中国武漢地区に端を発した新型コロナウイルス感染症が世界的に広がりつつあり、世界経済にも多大なる影響を及ぼしております。
一方、日本経済は、堅調な雇用環境を背景に緩やかな回復基調が続いているものの、米中貿易摩擦の影響で外需が減少し、内需でも消費税増税に対する心理的影響やインバウンド需要の落ち込み懸念など不透明感があることから、新型コロナウイルス感染症の状況と合わせて、今後の経済動向にさらに留意する必要があります。
当社グループが関連する自動車産業におきましては、北米ではピックアップトラック、SUVなど「ライトトラック」の販売が堅調を維持する一方、乗用車需要の低迷が継続しております。
中国においては、生産販売台数ともに、米中貿易摩擦の影響などによる国内経済の減速で、2年連続で前年比マイナスとなりました。そのほかのアジアの地域においても、景気減速により、新車販売が冷え込んでおります。日本においては、前半は新モデル投入の効果により、前年を上回る水準で販売台数が推移していたものの、10月以降は自然災害、消費増税の影響で需要が落ち込みました。1月以降は新型コロナウイルス感染症の影響もあり、年間では、生産販売ともに前年割れとなりました。
このような状況下におきまして、当社グループの売上高は前期比6.8%減の157,680百万円となりました。利益面では、米国では生産が減少する中、テネシー拠点での収益改善はあったものの、日本、中国、タイでの生産の減少などにより、営業利益は前期比58.3%減の2,206百万円となりました。経常利益は、メキシコペソやブラジルレアルなど主に新興国通貨の急激な下落に伴う為替差損の計上などにより、前期比85.2%減の770百万円となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、得意先生産台数の大幅減少等によるメキシコ第二拠点を始め、米国第二拠点、インドネシア拠点、ブラジル拠点及び日本の山形拠点における有形固定資産の減損損失の計上や投資有価証券評価損の計上に加え、繰延税金資産の取り崩しによる税金費用の増加もあり、前期に比べ13,336百万円減の12,933百万円の損失となりました。
なお、連結決算における海外子会社損益の円換算には、各子会社決算期の平均レートを使用しており、当連結会計年度の米ドルレート(1~12月)は、109.03円/ドル(前連結会計年度は110.44円/ドル)であります。
セグメントの状況は、以下のとおりであります。
ⅰ) 日本
日本における当社グループの売上は、新規受注部品の量産開始があったものの、主要得意先の減産及び新型コロナウイルス感染症に起因する得意先工場の休業や海外からのロイヤルティ収入の減少に加え、金型・設備売上の減少などにより、売上高は前期比11.6%減の49,977百万円となりました。
損益面では、売上減少による影響に加え償却費などの増加により、営業利益は前期比55.1%減の1,755百万円となりました。
ⅱ)米州
米州における当社グループの売上は、米国の昨年より続いている乗用車からライトトラックへの需要シフト及び主要得意先の販売不振による減産影響により、前期比4.4%減の67,571百万円となりました。
損益面では、米国テネシー拠点での収益改善やアラバマ拠点の立上げ費用が一巡したことなどにより、前期に比べ187百万円改善したものの黒字化には至らず1,900百万円の営業損失となりました。 ⅲ)アジア
アジアにおける当社グループの売上は、インド拠点の新車立上りに伴う金型・設備売上の増加があるものの、中国、タイでの主要得意先の大幅な生産販売台数減少などにより、前期比11.5%減の52,563百万円となりました。
損益面では、特に稼ぎ頭である中国での大幅な売上減少の影響は大きく、営業利益は前期比40.4%減の2,186百万円となりました。
生産、受注及び販売の実績は、次のとおりであります。
a. 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称生産高(百万円)前年度比(%)
日本43,734△11.7
米州67,286△4.1
アジア51,845△13.5
合計162,866△9.3

(注) 1.セグメント間取引については、相殺消去しております。
2.金額は、販売価格によっております。
3.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
b. 受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称受注高(百万円)前年度比(%)受注残高(百万円)前年度比(%)
日本35,607△15.013,416△17.0
米州66,281△7.515,713△7.3
アジア51,072△21.910,645△11.8
合計152,961△14.539,775△12.0

(注) 1.セグメント間取引については、相殺消去しております。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
c. 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称販売高(百万円)前年度比(%)
日本38,360△4.9
米州67,198△4.4
アジア52,120△10.9
合計157,680△6.8

(注) 1.セグメント間取引については、相殺消去しております。
2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合

相手先前連結会計年度当連結会計年度
販売高(百万円)割合(%)販売高(百万円)割合(%)
北米日産会社29,78217.626,23416.6
東風汽車有限公司28,09216.625,56716.2
日産自動車株式会社20,92712.419,28212.2
メキシコ日産自動車会社16,4159.715,3739.8

3.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
②財政状態
(資産の部)
流動資産は、前連結会計年度末と比べ9,035百万円減少の58,386百万円となりました。これは、「現金及び預金」が5,950百万円、「受取手形及び売掛金」が2,224百万円それぞれ減少したことなどによります。
固定資産は、前連結会計年度末と比べ19,362百万円減少の81,313百万円となりました。これは、「有形固定資産」のうち「機械装置及び運搬具」が11,555百万円、「建物及び構築物」が3,541百万円それぞれ減少したこと、「投資その他の資産」のうち「投資有価証券」が2,929百万円、「繰延税金資産」が1,366百万円それぞれ減少したことなどによります。
この結果、総資産は前連結会計年度末と比べ28,397百万円減少の139,700百万円となりました。
(負債の部)
流動負債は、前連結会計年度末と比べ2,722百万円減少の37,550百万円となりました。これは、「1年内返済予定の長期借入金」が6,647百万円増加しましたが、「短期借入金」が4,556百万円、「電子記録債務」が1,625百万円、「支払手形及び買掛金」が1,508百万円、「未払法人税等」が829百万円、「未払金」が419百万円それぞれ減少したことなどによります。
固定負債は、前連結会計年度末と比べ7,915百万円減少の27,598百万円となりました。これは、「長期借入金」が7,459百万円減少したことなどによります。
この結果、負債合計は前連結会計年度末と比べ10,637百万円減少の65,149百万円となりました。
(純資産の部)
純資産合計は、前連結会計年度末と比べ17,760百万円減少の74,550百万円となりました。これは、「利益剰余金」が13,765百万円減少したこと、「その他の包括利益累計額」のうち「その他有価証券評価差額金」が1,720百万円減少したこと、「非支配株主持分」が1,803百万円それぞれ減少したことなどによります。
③キャッシュ・フロー
当連結会計年度末の現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前連結会計年度末に比べ5,950百万円(△23.8%)減少し、19,019百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の営業活動により増加した資金は10,824百万円であり、前連結会計年度と比べ6,778百万円の収入減少となりました。営業活動によるキャッシュ・フローの前年度比における主な増減は次のとおりであります。
「税金等調整前当期純利益又は税金等調整前当期純損失」に伴う収入減少 13,778百万円
「減損損失」に伴う収入増加 8,787百万円
「その他の資産の増減額」に伴う収入減少 1,937百万円
「仕入債務の増減額」に伴う収入増加 1,713百万円
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の投資活動により減少した資金は9,584百万円であり、前連結会計年度と比べ4,223百万円の支出減少となりました。投資活動によるキャッシュ・フローの前年度比における主な増減は次のとおりであります。
「有形固定資産の取得による支出」の支出減少 3,829百万円
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の財務活動により減少した資金は7,718百万円であり、前連結会計年度と比べ8,821百万円の収入減少となりました。財務活動によるキャッシュ・フローの前年度比における主な増減は次のとおりであります。
「長期借入れによる収入」の収入減少 3,755百万円
「短期借入れによる収入」の収入減少 3,596百万円
「長期借入金の返済による支出」の支出増加 2,346百万円
「短期借入金の返済による支出」の支出減少 951百万円

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において判断したものです。
①重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。
なお、新型コロナウイルスの影響については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記
事項(追加情報)」に記載のとおりであります。
ⅰ)固定資産の減損
当社グループは、固定資産のうち減損の兆候がある資産又は資産グループについて当該資産又は資産グループから
得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。当該見積りの前提とした条件や仮定については、当社グループ各社
の中期経営計画に基づいているため、計画の基礎となる完成車メーカーの生産台数や当社グループが事業を展開する
各国の景況の変化により、減損損失が計上される可能性があります。
ⅱ)繰延税金資産の回収可能性
当社グループは、将来の利益計画に基づいた課税所得が十分に確保できることや、回収可能性があると判断した将
来減算一時差異について繰延税金資産を計上しております。当該見積りの前提とした条件や仮定については、当社グ
ループ各社の中期経営計画に基づいているため、計画の基礎となる完成車メーカーの生産台数や当社グループが事業
を展開する各国の景況の変化により、繰延税金資産を取崩し税金費用が計上される可能性があります。
②経営成績の分析
当連結会計年度の売上高は前期比6.8%減の157,680百万円、営業利益は58.3%減の2,206百万円、経常利益は85.2%減
の770百万円となり、親会社株主に帰属する当期純利益は前期に比べ13,336百万円減の12,933百万の損失となりまし
た。以下、連結損益計算書に重要な影響を与えた要因について分析します。
ⅰ)売上高
当連結会計年度の売上高は、日本・米国・中国・タイでの主要得意先の生産減少により、前期比6.8%減の157,680百万円となりました。当連結会計年度の売上高を得意先別に見ると、日産グループ向けは、販売不振に加え、米中貿易摩擦の影響もあり、前期比10.7%減の104,453百万円となりました。ホンダグループ向けは、3.5%減の24,935百万円となりました。トヨタグループ向けは、日本でのダイハツ向け新車効果により17.8%増の8,185百万円となりました。
ⅱ)売上原価、販売費及び一般管理費
売上原価は、前期比5.3%減の141,331百万円となりましたが、売上高に対する割合は88.3%から89.6%に上昇しました。これは、減価償却費等が増加したことなどによります。
販売費及び一般管理費は、研究開発費等の減少などにより、前期比2.6%減の14,142百万円となりましたが、売上高に対する割合は8.6%から9.0%に上昇しました。
ⅲ)営業外収益、営業外費用
営業外収益は、補助金収入の減少等により前期比25.4%減の594百万円となりました。
営業外費用は、メキシコペソやブラジルレアルなど新興国通過の急激な下落に伴う為替差損の計上により前期に比べ1,165百万円増加の2,030百万円となりました。
ⅳ)特別利益、特別損失
特別利益は、受取和解金の減少等により前期比74.7%減の73百万となりました。
特別損失は、前期に比べ9,110百万円増加の11,760百万円となりました。これは得意先生産台数の大幅な減少等によりメキシコ第二拠点を始め、米国第二拠点、インドネシア拠点、ブラジル拠点及び日本の山形拠点における有形固定資産の減損損失の計上や投資有価証券評価損の計上により増加したことなどによります。
ⅴ)法人税等
法人税等は、前期比75.9%増の2,771百万円となりました。これは繰延税金資産の取り崩しにより税金費用が増加したことなどによります。
③資本の財源及び資金の流動性
当社グループの資本の財源及び資金の流動性につきましては、次のとおりであります。
運転資金需要の主なものは、素材や部分品などの原材料の他製造労務費・経費、販売費及び一般管理費などの営業費用であります。投資資金需要の主なものは、製造のための基本設備、汎用及び専用設備などの設備投資であります。国ごとに異なる事業運営を、必要な資金の流動性と源泉を安定的に確保することを基本方針としております。
短期運転資金は、グループ内余資の有効活用を前提とした自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としております。設備投資や長期運転資金の調達につきましては、調達環境、資本コスト、負債・資本バランスを考慮した長期性資金の調達を基本としております。現時点での長期性資金は、金融機関からの長期借入により調達しております。
なお、当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は40,389百万円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は19,019百万円となっております。
④経営成績に重要な影響を与える要因
経営成績に重要な影響を与える要因については、「2 事業等のリスク」に記載のとおりです。
新型コロナウィルス感染症拡大における2020年3月期の各セグメントにおける業績に与える影響につきましては、米国・メキシコ・タイ・中国は12月決算会社であり、業績への影響はございません。また、日本・ブラジル・インド・インドネシアは3月決算会社ですが、当該期間における業績への影響は限定的でありました。
世界的な新型コロナウィルス感染症拡大が業績に与える影響は、中長期的には回復するものと判断しておりますが、2021年3月期につきましては、未だ世界的な新型コロナウィルス感染症鎮静化の目途が立っておらず、各国政府の要請や得意先の稼働状況等が不透明であり、現時点で合理的な算出が困難な状況であります。
当社グループは、従業員の雇用の維持を前提に、新型コロナウイルス感染症に係る事業への影響に対応をしつつ、常に中長期的な視点から環境に左右されない体質の強化に取り組んでまいります。