有価証券報告書-第151期(平成30年4月1日-平成31年3月31日)
(1)業績等の概要
① 企業環境
当期の世界経済は、概ね堅調に推移しました。米国では個人消費や設備投資の増加により経済が拡大しました。欧州では景気回復の動きが緩慢なものとなりました。また、中国では安定成長が維持され、その影響を受けた中国以外のアジア各国でも経済の持ち直しの動きが続きました。国際商品市況では、原油の減産効果が薄れたため、下半期に原油価格が下落しました。また、通商問題の拡大及び長期化リスクが意識されたため、ニッケル、アルミ、銅などの商品価格の低迷が続きました。
国内経済は、低失業率にも支えられ個人消費が堅調に推移し、設備投資も引き続き回復に向かいました。また、輸出が概ね安定した一方で、上半期におけるエネルギー価格の上昇により輸入額が増加し、貿易赤字に転化しました。
② 事業の経過
中期経営計画「中期経営計画2020」の概要と成果については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 中期経営計画」を参照願います。
③ 事業部門別の事業活動
金属事業部門
鋼材分野では、鋼材事業の一部を住友商事グローバルメタルズ及び住商メタレックスに移管しました。これにより、今まで以上に機動的にかつ多様な人材を生かして事業を遂行していきます。鋼管分野では、国内鋼管市場における事業環境の変化に対応し、持続的成長を図るため、メタルワンと国内鋼管事業の統合に合意しました。また、油井・ガス井用の機器システムを開発しているノルウェーの新興企業に出資しました。同社の開発した革新的な機器システムにより、油井・ガス井の生産性を高め、より安全かつ安定的な操業を可能にするソリューションを提供していきます。軽金属分野では、アルミ製錬事業の収益安定・強化を図るため、当社が出資するマレーシアのアルミ製錬事業会社を通じて、オーストラリアのアルミ原料生産事業に参画しました。
輸送機・建機事業部門
リース・船舶・航空宇宙分野では、三井住友フィナンシャルグループとの共同リース事業(一般リース、オートリース及び航空機リース事業)の再編が完了しました。また、革新的な物流・移動サービスの実現を目指し、エアモビリティによる輸送サービス(注1)を展開する米国の有力企業と業務提携しました。自動車分野では、住友三井オートサービスが、顧客の多様なニーズや課題に対応する商用車のファイナンス・リース事業に参画したほか、乗用車を毎月定額で利用し、一定期間後に別の新車に乗換えることができるサービスを展開する新会社を設立しました。建設機械分野では、顧客の幅広いニーズに応えながら、販売・レンタル事業を拡大したほか、車両・機械の運行管理の効率化や省力化を目的として、テレマティクス(注2)やIT精密農業(注3)を推進する事業に参画しました。
(注1)垂直離着陸できる電動小型航空機などを用いて、都市部における移動時間の短縮、山間部などにおける移動の利便性の向上、輸送の迅速化などを実現するサービス。
(注2)車両などの移動体に通信機器を搭載し、遠隔で運行状況等の情報を送受信する仕組み。
(注3)ICT等の先端技術を活用し、農作業の自動化・効率化や生産性の向上が可能となる農業。
インフラ事業部門
各国の社会・産業のニーズに応じたインフラ整備・拡充を通じて、地球環境との共生及び地域と産業の発展に貢献する取組みを推進しております。先進国では、環境配慮型インフラ整備を重点分野とし、再生可能エネルギー発電事業を推進しました。ベルギーやフランスにおいて洋上風力発電事業に参画したほか、国内では、山形県酒田市におけるバイオマス発電所や福島県南相馬市における太陽光発電所の第二期工事が竣工し、運転を開始しました。新興国では、モザンビークのガス焚き複合火力発電所の完工やベトナムの第三タンロン工業団地の操業開始など、増大するインフラ需要に応える取組みを着実に実行しました。また、新たな分野での取組みとして、サブサハラの分散型電源事業やミャンマーの港湾ターミナル運営事業に参画しました。
メディア・デジタル事業部門
ジュピターテレコム(ケーブルテレビ事業)、ジュピターショップチャンネル(テレビ通販事業)、SCSK(ITサービス事業)、ティーガイア(携帯電話販売事業)、ミャンマーでの通信事業等、既存事業の強化に注力するとともに、さまざまな新規事業に取組みました。メディア分野では、米国の有力パートナーと提携し、動画クリエイターの育成や動画広告の制作・配信等を行う新会社を設立しました。デジタルビジネス分野では、全社的なデジタルトランスフォーメーション(注1)の推進組織(DXセンター)を設置し、デジタル技術の活用による既存事業のバリューアップや新規事業の創出に取組みました。スマートプラットフォーム分野では、東南アジア最大級の通信事業会社と提携し、その傘下のデジタル広告事業(注2)会社に出資しました。
(注1)IoT、ビッグデータ、AIといった革新的なデジタル技術の進化を背景に、さまざまなビジネス領域で最先端のICT技術を活用した既存事業の高度化・新規事業開発。
(注2)携帯電話の顧客情報やモバイル・インターネット上での個人の行動パターン等を解析し、その人に合った電子広告を配信する事業。
生活・不動産事業部門
ライフスタイル・リテイル分野では、サミット(食品スーパー事業)やトモズ(ドラッグストア事業)などの既存事業のバリューアップに注力したほか、今後成長が見込まれるヘルスケア事業への取組みとして、マレーシアのマネージドケア事業者(注1)に出資しました。また、サミットと住商フーズが精肉・惣菜部門の強化・サービス向上を図るべく、神奈川県川崎市に食肉加工センターを共同で開設しました。不動産分野では、国内においては当社が用地取得から設計、建設、テナント誘致までを行う中規模オフィスビル「PREX」シリーズを展開したほか、都市型物流施設「SOSiLA」の開発や顧客のニーズに合わせた商業施設の開発(BTS事業(注2))などを推進しました。海外においては、米国不動産を投資対象とした私募ファンド第2号を組成し、運用を開始しました。
(注1)民間の医療保険会社・医療機関と連携して、より良質で安価な医療の推進と個人の健康管理の向上を目指す仕組みづくりを行う医療関連サービス提供会社。
(注2)Build-To-Suitの略。テナントの要望に応じて商業施設等を開発するオーダーメイド型事業。
資源・化学品事業部門
資源・エネルギー及び化学品・エレクトロニクス製品の安定供給並びに地域の経済・産業の発展に貢献する取組みを、地球環境の保全に配慮しながら推進しました。資源・エネルギー分野では、ペルーの金・銅鉱山事業及びチリの銅鉱山事業に参画したほか、米国テキサス州におけるタイトオイル(注)の生産・開発権益を取得しました。また、米国メリーランド州で当社が参画しているLNGプロジェクトが商業運転を開始しました。ライフサイエンス分野では、インドやウクライナにおいて農薬・農業関連事業に参画するなど、同事業の海外展開を推進しました。また、国内においては、AIやドローン技術等の先端農業技術を活用した事業にも取組みました。農業人口減少等の社会課題の解決に貢献していきます。
(注)水平掘削・水圧破砕技術を用いてシェール(頁岩)層などから抽出した原油。
④ 業績
当期の収益は、前期に比べ5,119億円増加し、5兆3,392億円となりました。売上総利益は、電力EPC案件の建設進捗があったことに加え、資源価格の上昇により豪州石炭事業などで増益となった一方、米国タイヤ事業の再編に伴う減少があったことなどから、合計で前期に比べ333億円減少し、9,232億円となりました。販売費及び一般管理費は、前期に比べ841億円減少し、6,476億円となりました。有価証券損益は、前期に保有有価証券のIPO評価益やクオカードの売却益を計上したことによる反動などから、前期に比べ256億円減少し、22億円の利益となりました。持分法による投資損益は、ミャンマー通信事業が堅調に推移したことに加え、アジアバナナ事業が販売価格回復に伴い増益となった一方、マダガスカルニッケル事業における減損損失を計上したことなどにより、前期に比べ226億円減少し、1,271億円の利益となりました。これらの結果、親会社の所有者に帰属する当期利益は3,205億円となり、前期に比べ120億円の増益となりました。また、基礎収益(除く、減損損失)(注)は3,312億円となり、前期に比べ75億円の増益となりました。
(注)基礎収益=(売上総利益+販売費及び一般管理費(除く貸倒引当金繰入額)+利息収支+受取配当金)×(1-税率)
+持分法による投資損益
除く、減損損失(前期: インドネシア商業銀行 △151億円、 当期: マダガスカルニッケル事業 △104億円)
事業セグメント別の業績については、「(2) 財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」を参照願います。
⑤ 仕入、成約及び販売の実績
当期において、特記事項はありません。
なお、販売の状況については上記「④業績」及び「第5 経理の状況 連結財務諸表注記 4 セグメント情報」を
ご参照ください。
(2)財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析
① 概観
当社は、総合商社として、長年培ってきた「信用」、10万社に及ぶ取引先との関係である「グローバルリレーション」と全世界の店舗網と事業会社群から構成される「グローバルネットワーク」、また「知的資産」といった「ビジネス基盤」を活用し、「ビジネス創出力」、「ロジスティクス構築力」、「金融サービス提供力」、「IT活用力」、「リスク管理力」、「情報収集・分析力」といった機能を統合することにより、顧客の多様なニーズに応え、多角的な事業活動をグローバル連結ベースで展開しております。これらのビジネス基盤と機能を活用し、当社は多岐にわたる商品・製品の商取引全般に従事しております。当社は、これらの取引において、契約当事者もしくは代理人として活動しております。また、当社は、販売先及び仕入先に対するファイナンスの提供、都市及び産業インフラ整備プロジェクトの企画立案・調整及び管理運営、システムインテグレーションや技術開発におけるコンサルティング、輸送・物流など様々なサービスを提供しております。加えて、当社は、太陽光発電から情報通信産業まで幅広い産業分野への投資、資源開発、鉄鋼製品や繊維製品等の製造・加工、不動産の開発・管理、小売店舗運営など、多角的な事業活動を行っております。
当社は、2018年4月1日付で、事業部門の括りを事業分野や機能の面から戦略的に見直し、従来の5事業部門から6事業部門に再編するとともに、従来の「海外現地法人・海外支店」セグメントを各事業セグメントに含めることとしております。業種に基づくセグメントは次のとおりであります。
金属事業部門 メディア・デジタル事業部門
輸送機・建機事業部門 生活・不動産事業部門
インフラ事業部門 資源・化学品事業部門
それぞれの事業部門は、戦略目標の設定、経営管理、及びその結果に対する説明責任に関して、各々が自主性を発揮し、事業活動を行っております。また、各事業部門にはそれぞれ戦略策定・支援機能を担う業務部を置き、事業部門のマネジメントをサポートしております。ビジネス環境がますますグローバル化する今日、当社は、世界各地に存在する拠点、関係会社、顧客、サプライヤー、パートナー等のネットワークにより、世界各国で事業活動を営み、事業基盤を拡大しております。また、当社は、全ての事業部門と海外拠点に関する情報を収集・連結するためのインフラを構築し、これによりリスクを一元的に管理しております。
② 中期経営計画
中期経営計画「中期経営計画2020」の詳細は、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 中期経営計画」を参照願います。
③ 連結包括利益計算書における主要な項目
以下は、連結包括利益計算書における主要な項目についての説明であります。
収益
当社では、収益を、商品販売に係る収益とサービス及びその他の販売に係る収益に区分して表示しております。
商品販売に係る収益としては、以下の取引に関連して発生する収益が含まれております。
・卸売、小売、製造・加工を通じた商品の販売
・不動産の開発販売
・長期請負工事契約に係る収益
サービス及びその他の販売に係る収益としては、以下の取引に関連して発生する収益が含まれております。
・ソフトウェアの開発に関連するサービス
・賃貸用不動産、船舶などの貸付金、ファイナンス・リース及びオペレーティング・リース
売上総利益
売上総利益は、以下により構成されております。
・当社が主たる契約当事者として関与する取引における総利益
・当社が代理人等として関与する取引における手数料
収益が総額で計上される場合、販売に直接寄与する第三者への費用または手数料は、商品販売に係る原価として計上され、売上総利益は、収益の総額から販売に係る原価を差引いた金額となります。当社はサービス及びその他の販売に係る収益の一部として手数料を計上しますが、この手数料は純額表示されるため、結果としてサービス及びその他の販売が売上総利益に占める比率は、収益合計に占める比率よりも大きくなっております。当期、サービス及びその他の販売が収益合計に占める比率は7.8%ですが、売上総利益に占める比率は16.6%となっております。
固定資産評価損
棚卸資産、繰延税金資産及び生物資産を除く当社の非金融資産の帳簿価額については、期末日ごとに減損の兆候の有無を判断しております。減損の兆候が存在する場合は、当該資産の回収可能価額を見積り、のれん及び耐用年数を確定できない、または未だ使用可能ではない無形資産については、回収可能価額を毎年同じ時期に見積った上で、資産または資金生成単位の帳簿価額が回収可能価額を超過する場合には、減損損失を認識しております。また、減損損失の戻し入れを行った場合は当該戻し入れ金額も含めております。
固定資産売却損益
当社は、資産のポートフォリオの戦略的かつ積極的な入替えを図っております。その結果、不動産の含み益を実現するために売却する場合や、価格の下落した不動産を売却する場合、売却損益を計上することになります。
受取配当金
受取配当金には、当社の子会社及び持分法適用会社以外で、当社が株式を保有している会社からの配当金が計上されております。
有価証券損益
当社は事業活動の一環として相応の規模の投資を行っております。これらの投資対象のうち、公正価値で測定し、その変動を当期利益で認識する金融資産(以下、FVTPLの金融資産)は公正価値で当初認識しております。当初認識後は公正価値の変動を当期利益で認識しております。また、償却原価で測定される金融資産は、公正価値(直接帰属する取引費用も含む)で当初認識しております。当初認識後、償却原価で測定される金融資産の帳簿価額については実効金利法を用いて算定し、帳簿価額の変動について、必要な場合には減損損失を認識しております。償却原価で測定される金融資産並びに子会社及び持分法適用会社への投資等を売却する際に、売却損益を認識しております。
持分法による投資損益
投資戦略やビジネスチャンスの拡大に関連して、当社は、各セグメントで状況に応じ、新規または既存の会社の買収や出資、他の企業とのジョイント・ベンチャーの結成、または同業他社とのビジネス・アライアンスの組成を行っております。一般的に、当社は、出資比率が20%以上50%以下である会社の投資に対し、その持分利益や損失を計上しております。
FVTOCIの金融資産
公正価値で測定し、その変動をその他の包括利益で認識する金融資産(以下、FVTOCIの金融資産)は、公正価値(直接帰属する取引費用も含む)で当初認識しております。当初認識後は公正価値で測定し、公正価値の変動をその他の包括利益で認識しております。
確定給付制度の再測定
当社は、確定給付負債(資産)の純額の再測定を、その他の包括利益で認識しております。
在外営業活動体の換算差額
在外営業活動体の資産・負債(取得により発生したのれん及び公正価値の調整を含む)については期末日の為替レート、収益及び費用については期中平均レートを用いて日本円に換算しており、在外営業活動体の財務諸表の換算から生じる為替換算差額はその他の包括利益で認識しております。当社のIFRS移行日以降、当該差額はその他の資本の構成要素である「在外営業活動体の換算差額」として表示しております。
キャッシュ・フロー・ヘッジ
デリバティブを、認識済み資産・負債、または当期利益に影響を与え得る発生可能性の非常に高い予定取引に関連する特定のリスクに起因するキャッシュ・フローの変動をヘッジするためのヘッジ手段として指定した場合、デリバティブの公正価値の変動のうちヘッジ有効部分は、その他の包括利益で認識しております。
④ 重要な会計方針
IFRSに基づく連結財務諸表の作成にあたり、期末時点の資産・負債の計上や偶発資産及び偶発債務の開示、並びに期中の収益費用の適正な計上を行うため、マネジメントによる見積りや前提が必要とされます。当社は、過去の実績、または、各状況下で最も合理的と判断される前提に基づき、一貫した見積りを実施しております。資産・負債及び収益費用を計上する上で客観的な判断材料が十分でない場合は、このような見積りが当社における判断の基礎となっております。従って、異なる前提条件の下においては、結果が異なる場合があります。以下、当社の財政状態や経営成績にとって重要であり、かつ相当程度の経営判断や見積りを必要とする重要な会計方針につき説明します。なお、当社の主な会計方針は、「第5 経理の状況 連結財務諸表注記 3 重要な会計方針」を参照願います。
収益の認識基準
当社の収益の大部分は、(1)所有権の移転、引渡し、出荷、または顧客の検収に基づき収益を認識する、卸売、小売、製造・加工業に関連する商品販売に係る収益と、(2)役務の提供が完了した時点で収益を認識する、サービス及びその他の販売に係る収益とで構成されております。これらの個別の取引における収益の認識にあたっては、特に複雑な判断は必要ではなく、客観的に収益の認識時点を判断することができます。
当社が技術提供、資材調達、建設工事を請負う電力発電所の建設事業や、顧客仕様のソフトウェアの開発請負事業などの長期請負工事契約については、一定の条件を満たす場合、収益と原価を一定期間にわたり履行義務が充足されることによって認識しております。履行義務が充足される進捗度は、工事契約等に必要な見積総原価に対する、現在までにかかった工事原価の割合に基づいて算定しております。当初の収益の見積り、完成までの進捗状況に変更が生じる可能性がある場合、見積りの見直しを行っております。
収益の本人代理人の判定
当社は、通常の商取引において、仲介業者または代理人としての機能を果たす場合があります。このような取引における収益を報告するにあたり、収益を顧客から受け取る対価の総額(グロス)で認識するか、または顧客から受け取る対価の総額から第三者に対する手数料その他の支払額を差し引いた純額(ネット)で認識するかを判断しております。ただし、グロスまたはネット、いずれの方法で認識した場合でも、売上総利益及び当期利益に影響はありません。
ある取引において当社が本人に該当し、その結果、当該取引に係る収益をグロスで認識するための判断要素として、次の指標を考慮しております。
・当社が、特定された財又はサービスを提供する約束の履行に対する主たる責任を有している。
・特定された財又はサービスが顧客に移転される前、又は顧客への支配の移転の後に、当社が在庫リスクを有している。
・特定された財又はサービスの価格の設定において当社に裁量権がある。
金融資産の減損
当社は、償却原価で測定する金融資産、リース債権、契約資産及びその他の包括利益を通じて公正価値で測定する負債性金融資産に係る減損については、当該金融資産に係る予想信用損失に対して損失評価引当金を認識しております。
当社は、信用リスクの変動及び予想信用損失の算定にあたっては、主に当社独自の信用格付けであるSumisho Credit Rating(SCR)を用いております。これには、債務者の過去の貸倒実績、現在の財務状態及び合理的に利用可能な将来予測情報等が含まれております。
公正価値で測定する金融資産
当社は、有価証券やその他の投資等の金融資産を保有しており、FVTOCIの金融資産と、FVTPLの金融資産とに分類しております。当社は、投資先企業との取引関係の維持・強化による中長期的な収益の拡大などを目的として保有しており、公正価値の変動を業績評価指標としていない金融資産をFVTOCIの金融資産として分類し、公正価値の変動を獲得するために保有し、業績評価指標としている金融資産をFVTPLの金融資産として分類しております。当該金融資産の公正価値は、市場価格、割引将来キャッシュ・フローや純資産に基づく評価モデル等の評価方法により算定しております。
非流動資産の回収可能性
当社では様々な非流動資産を保有しております。当社では、不動産や償却対象の無形資産などの非流動資産について、帳簿価額の回収可能性を損なうと考えられる企業環境の変化や経済事象が発生した場合には、減損テストを行っております。実際に減損の兆候があるかどうかの判定に際しては、様々な見積りや前提が必要となります。例えば、キャッシュ・フローが直接的に減損の懸念がある資産に関係して発生しているのかどうか、資産の残存耐用年数がキャッシュ・フローを生み出す期間として適切かどうか、生み出すキャッシュ・フローの額が適切かどうか、及び、残存価額が適切かどうか、などを考慮しなければなりません。また、のれん及び耐用年数を確定できない無形資産について、少なくとも年1回、更に減損の発生が予測される場合は、その都度、減損テストを実施しております。減損テスト時には、資産の回収可能価額を見積っております。資産または資金生成単位の回収可能価額は使用価値と売却費用控除後の公正価値のうち、いずれか高い金額としております。使用価値の算定において、見積将来キャッシュ・フローは、貨幣の時間的価値及び当該資産の固有のリスクを反映した税引前の割引率を用いて現在価値に割引いております。当社では、過去の経験や社内の事業計画、及び適切な割引率を基礎として将来キャッシュ・フローを見積っております。これらの見積りは、事業戦略の変更や、市場環境の変化により、重要な影響を受ける可能性があります。
繰延税金資産の回収可能性
当社では、繰延税金資産の全部または一部について、回収が不確実となった場合に、マネジメントの判断により、減額しております。繰延税金資産の回収可能性の評価にあたっては、繰延税金資産計上の根拠となっている将来の一時差異の解消が見込まれる期間内、または、繰越欠損金の繰越可能期間内に、納税地において将来十分な課税所得を生み出せるかどうかを評価しなければなりません。当社では、有利・不利に関わらず、入手可能なすべての根拠・確証を用いてこの評価を実施しております。繰延税金資産の評価は、見積りと判断に基づいております。納税地での将来の課税所得に影響を与える当社の収益力に変化があった場合、現状の繰延税金資産の回収可能性の評価も変わる場合があります。
⑤ 営業活動の成果
当期の親会社の所有者に帰属する当期利益は3,205億円となり、前期に比べ120億円の増益となりました。一過性損益については、マダガスカルニッケル事業で減損損失を計上したことなどから約80億円の損失となったことに加え、前期に米国税制改正の影響などによる約230億円の利益を計上したことの反動減から、前期に比べ約310億円の減益となりました。
一過性を除く業績は約3,290億円となり、前期に比べ約440億円の増益となりました。そのうち、資源ビジネス(注1)は、主に資源価格の上昇により豪州石炭事業などで増益となりました。非資源ビジネス(注2)は、北米鋼管事業が市況回復に伴い増益となったことに加え、電力EPC案件に係る建設工事が進捗したことや、不動産事業が堅調に推移したことなどにより増益となりました。
(注1)資源ビジネスとは、「資源第一本部」「資源第二本部」「エネルギー本部」が行っているビジネスを指します。
(注2)非資源ビジネスとは、全社で行っているビジネスのうち、資源ビジネス以外のビジネスを指します。
当期末の資産合計は、米国タイヤ事業の再編等に伴う減少があった一方で、円安に伴う増加や営業債権及び棚卸資産の増加があったことなどから、前期末に比べ1,459億円増加し7兆9,165億円となりました。
資本のうち親会社の所有者に帰属する持分は、親会社の所有者に帰属する当期利益の積上げにより、前期末に比べ2,133億円増加し2兆7,715億円となりました。
現預金ネット後の有利子負債は、前期末に比べ944億円減少し2兆4,271億円となりました。
この結果、ネットのデット・エクイティ・レシオ(有利子負債(ネット)/親会社の所有者に帰属する持分合計)は、0.9倍となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、ビジネスの伸長に伴い運転資金が増加した一方で、コアビジネスが着実に資金を創出したことにより基礎収益キャッシュ・フロー(注3)が2,900億円のキャッシュ・インとなったことなどから、合計で2,689億円のキャッシュ・インとなりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、米国タイヤ事業の再編やインドネシア商業銀行の売却など資産入替えによる回収が約2,400億円あった一方で、インド特殊鋼事業への参画やチリ銅鉱山事業(ケブラダ・ブランカ)の権益取得など、約3,000億円の投融資を行ったことなどから、513億円のキャッシュ・アウトとなりました。
これらの結果、営業活動によるキャッシュ・フローに投資活動によるキャッシュ・フローを加えたフリーキャッシュ・フローは、2,176億円のキャッシュ・インとなりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払などにより、2,332億円のキャッシュ・アウトとなりました。
以上の結果、現金及び現金同等物の当期末残高は、前期末に比べ68億円減少し6,604億円となりました。
(注3)基礎収益キャッシュ・フロー=基礎収益-持分法による投資損益+持分法投資先からの配当
⑥ 事業セグメント
当社は、2018年4月1日付で、事業部門の括りを事業分野や機能の面から戦略的に見直し、従来の5事業部門から
6事業部門に再編するとともに、従来の「海外現地法人・海外支店」セグメントを各事業セグメントに含めることとしております。これに伴い、前期のセグメント情報は組替えております。
前期及び当期の売上総利益、当期利益(親会社の所有者に帰属)の事業セグメント別実績は以下のとおりであります。
事業セグメント別売上総利益の内訳
事業セグメント別当期利益(親会社の所有者に帰属)の内訳
金属事業部門
当期の売上総利益は1,452億円となり、前期の1,260億円から192億円(15.3%)増加しました。当期利益(親会社の所有者に帰属)は、405億円となり、前期の354億円から50億円(14.2%)増加しました。これは、前期に米国税制改正に伴う一過性利益を計上したことによる反動減があったものの、北米鋼管事業が市況回復に伴い増益となったことに加え、海外スチールサービスセンター事業が堅調に推移したことなどによるものです。
輸送機・建機事業部門
当期の売上総利益は1,581億円となり、前期の2,800億円から1,220億円(43.5%)減少しました。これは、米国タイヤ事業の再編に伴う減少があったことなどによるものです。当期利益(親会社の所有者に帰属)は、520億円となり、前期の708億円から188億円(26.6%)減少しました。これは、建機販売及び建機レンタル事業が堅調に推移した一方、前期に米国税制改正に伴う一過性利益を計上したことによる反動減などによるものです。
インフラ事業部門
当期の売上総利益は1,143億円となり、前期の815億円から329億円(40.3%)増加しました。当期利益(親会社の所有者に帰属)は、644億円となり、前期の357億円から287億円(80.3%)増加しました。これは、大型EPC案件の建設進捗に加え、発電事業が堅調に推移したことなどによるものです。
メディア・デジタル事業部門
当期の売上総利益は929億円となり、前期の846億円から82億円(9.7%)増加しました。当期利益(親会社の所有者に帰属)は、475億円となり、前期の590億円から115億円(19.6%)減少しました。これは、国内主要事業会社やミャンマー通信事業などが堅調に推移した一方、前期に保有有価証券のIPO評価益やクオカードの売却益を計上したことによる反動などによるものです。
生活・不動産事業部門
当期の売上総利益は2,107億円となり、前期の1,963億円から144億円(7.3%)増加しました。当期利益(親会社の所有者に帰属)は、421億円となり、前期の345億円から76億円(21.9%)増加しました。これは、欧米州青果物生産・卸売事業の業績が低迷したものの、不動産事業が堅調に推移したことに加え、アジアバナナ事業が販売価格回復に伴い増益となったことなどによるものです。
資源・化学品事業部門
当期の売上総利益は1,903億円となり、前期の1,813億円から90億円(5.0%)増加しました。当期利益(親会社の所有者に帰属)は、685億円となり、前期の785億円から101億円(12.8%)減少しました。これは、資源価格の上昇により豪州石炭事業などで増益となった一方、マダガスカルニッケル事業における減損損失を計上したことなどによるものです。
⑦ 資金調達と流動性
当社の財務運営は財務健全性の維持・向上を基本方針とし、低利かつ中長期にわたり、安定的な資金調達を行うこと、及び十分な流動性の保持を図ることとしております。当社グループ内での資金管理については、グループファイナンスを整備し、資金調達を当社及び金融子会社、海外現地法人に集中した上で、キャッシュ・マネジメント・システムを通じて、当社グループ内で資金を効率的に活用する体制を整えております。
当社は総額3兆980億円の社債及び借入金を有しており、このうち短期の借入金は、前期比390億円増加の2,365億円で、内訳は短期借入金(主として銀行借入金)2,172億円、コマーシャルペーパー193億円となっております。
一年以内に期限の到来する社債及び長期借入金4,459億円を含めた当期の社債及び長期借入金は、前期比1,449億円減少の2兆8,615億円となっております。このうち、銀行及び保険会社からの長期借入残高は、前期比1,727億円減少の2兆4,300億円、社債残高は前期比278億円増加の4,315億円となっております。
当社の銀行からの借入の多くは、日本の商慣行上の規定に基づいております。当社は、このような規定が当社の営業活動や財務活動の柔軟性を制限しないと確信しておりますが、いくつかの借入契約においては、財務比率や純資産の最低比率の維持が求められております。さらに、主に政府系金融機関との契約においては、当社が増資や社債の発行等により資金を調達した際に、当該金融機関から、当該借入金の期限前返済を求められる可能性があり、また、一部の契約では当社の剰余金の配当等について当該金融機関の事前承認を請求される可能性があります。当社は、このような請求を受けたことはなく、今後も受けることはないと判断しております。
詳細は、「2 事業等のリスク(13) 資金の流動性に係るリスク」を参照願います。
資金調達については、各金融機関との良好な関係に基づく銀行借入等の間接金融を中心に、コマーシャルペーパーや社債等の直接金融との適切なバランスに留意し、調達期間の長期化を通じた償還期日の分散等による安定的な調達構造を構築しております。また、外貨建ての資金調達については、従来の銀行借入や通貨スワップ、金融子会社、海外現地法人におけるコマーシャルペーパー、ユーロMTN等に加え、2017年9月に米ドル建て無担保普通社債を発行し、資金調達ソースの多様化に取り組んでおります。
なお、当社は、資本市場での直接調達を目的として、以下の資金調達プログラムを設定しており、当期末時点での当社の長期及び短期の信用格付は、ムーディーズでBaa1/P-2(見通し安定的)、スタンダード&プアーズでA-/A-2(見通し安定的)、格付投資情報センターでA+/a-1(見通し安定的)となっております。
・2,000億円の国内公募普通社債発行登録枠
・国内における1兆円のコマーシャルペーパー発行枠
・米州住友商事により設定された、1,500百万米ドルのコマーシャルペーパープログラム
・当社、英国のSumitomo Corporation Capital Europe(以下、「SCCE」という。)、米州住友商事及びシンガポールのSumitomo Corporation Capital Asiaが共同で設定した3,000百万米ドルのユーロMTNプログラム
・SCCEが設定した1,500百万米ドルのユーロコマーシャルペーパープログラム
保有流動性については、金融市場の混乱等、複数の有事シナリオを想定し、当期末時点で現預金と国内外の主要な金融機関との総額1,260百万米ドル、及び4,250億円を上限とする以下の長期コミットメントラインを中心に、当社及び当社子会社における資金需要や1年内に期日が到来する借入や社債の償還資金等を補完する十分な流動性を確保しております。なお、当有価証券報告書の提出日までに、これらのコミットメントラインに基づく借入はありません。また、これらのコミットメントラインには、借入の実行を制限する重大なコベナンツ、格付トリガー条項などは付されておりません。なお、これらのコミットメントラインのほかに、当社は、コミットメントベースでない借入枠を有しております。
・米国及び欧州の大手銀行によるシンジケート団との間で締結した、1,060百万米ドルのマルチ・カレンシー(円・米ドル・ユーロ建)/マルチ・ボロワー(住友商事及び英国、米国、シンガポールにおける当社子会社への融資)型長期コミットメントライン
・大手米銀との間に締結した、米州住友商事への100百万米ドルの長期コミットメントライン
・大手欧銀との間に締結した、SCCEへの100百万米ドルのマルチ・カレンシー(円・米ドル・ユーロ・ポンド建)型長期コミットメントライン
・大手邦銀のシンジケート団による3,100億円の長期コミットメントライン(内、1,000億円はマルチ・カレンシー型)
・有力地方銀行のシンジケート団による1,150億円の長期コミットメントライン
資金調達の内訳
当期末時点での当社の期限別の支払債務は、以下のとおりです。
期限別内訳
当社は、資金供与に関する契約(貸付契約、出資契約)及び設備使用契約等を締結しており、当期末における契約残高は、1兆1,110億円です。
当期末時点では、資本的支出に対する重要な契約はありません。
上述の契約に加えて、当社のビジネスに関連して、当社は、顧客の債務に対する保証などの様々な偶発債務を負っています。また、当社は、訴訟による偶発債務の影響を受ける可能性があります。これらの偶発債務に関する詳細は、「⑧ 偶発債務」及び「⑨ 訴訟等」を参照願います。当社は、現状においては、それらの偶発債務がもたらす資金需要が重大なものとはならないと判断しておりますが、仮に予想に反して、当社が保証を行っている債務に重大な不履行が生じた場合、また、訴訟の結果が、当社に大きく不利なものであった場合には、新たに、大きな資金調達が必要となる可能性があります。
当社は、主に、ワーキング・キャピタル、新規や既存ビジネスへの投資や債務の返済のために、将来にわたり継続的な資金調達を行う必要があります。当社は、成長戦略として買収、株式取得または貸付による投資を行っており、当期は、有形固定資産及び投資不動産の取得に1,363億円、また、その他の投資の取得に1,706億円の投資を行いました。当社は、現在、全てのセグメントにおいて、既存のコア・ビジネス及び周辺分野を中心に追加投資を検討しております。
しかしながら、これらの投資は、現在、予備調査段階のものや、今後の様々な条件により、その実施が左右されるものであり、結果的に実現されない可能性もあります。また当社は、手許の現金、現在の借入枠や営業活動によるキャッシュ・インで当面必要とされる資金需要を十分に満たせると考えておりますが、それは保証されている訳ではありません。当社の営業活動によるキャッシュ・インが想定より少なかった場合、当社は、追加借入の実施、他の資金調達手段の検討、または投資計画の修正を行う可能性があります。
⑧ 偶発債務
当社の取引に関連して、顧客の債務に対する保証履行のような偶発債務を負うことがあります。当社は、世界各国のサプライヤーや顧客と多種多様な営業活動を行うことにより、営業債権及び保証等に係る信用リスクを分散させており、これらに関し重大な追加損失は発生しないものと見込んでおります。
当社の当期末における保証に対する偶発債務の残高(最長期限2044年)は1,280億円で、このうち関連会社の債務に対する保証が805億円、第三者の債務に対する保証が475億円です。これらの保証は主に関連会社、サプライヤー、及び顧客の信用を補完するために行っているものであります。
⑨ 訴訟等
当社は、事業遂行上偶発的に発生する訴訟や訴訟に至らない請求等を受けておりますが、当社の経営上、重要な影響を及ぼすものはありません。
⑩ 未適用の新たな基準書及び解釈指針
連結財務諸表の承認日までに公表されている主な基準書及び解釈指針の新設または改訂は次のとおりであり、2019年3月31日現在において当社はこれらを適用しておりません。
当社は、IFRS第16号「リース」の経過措置に従って、本基準の適用開始の累積的影響を適用開始日に認識する方法(修正遡及アプローチ)を採用する予定です。
この結果、2020年3月期の期首時点で、総資産がおよそ4,000億円増加し、利益剰余金がおよそ200億円減少する予定です。
IAS第28号「関連会社及び共同支配企業に対する投資」の改訂により、主にチリ銅・モリブデン鉱山事業における長期持分の会計処理に影響がでる見込みです。この結果、2020年3月期の期首時点で、営業債権及びその他の債権及び利益剰余金の残高がおよそ300億円減少する予定です。
⑪ 市場リスクに関する定量的・定性的情報
当社のビジネスは、金利、外国為替レート、商品価格、株価の変動リスクを伴い、これらのリスクマネジメントを行うため、為替予約取引、通貨スワップ・オプション取引、金利スワップ・先物・オプション取引、商品先物・先渡・スワップ・オプション取引等のデリバティブを利用しております。また、後述のリスク管理体制の下、予め決められたポジション限度・損失限度枠内で、トレーディング目的のデリバティブ取引も限定的に実施しております。
金利変動リスク
当社は、事業活動の中で様々な金利変動リスクに晒されております。コーポレート部門の財務・経理・リスクマネジメント担当役員が管掌する部署では、当社のビジネスに伴う金利変動リスクをモニタリングしております。特に、金利の変動は借入コストに影響を与えます。これは、当社の借入の大部分が変動金利であり、また、都度借換えを行う短期借入金があるためです。
しかしながら、金利変動が借入コストに与える影響は、金利変動の影響を受ける資産からの収益により相殺されます。また、当社は、金利変動リスクをミニマイズするために資産・負債の金利を調整・マッチングさせるよう、金利スワップ等のデリバティブ取引を利用しております。
為替変動リスク
当社は、グローバルなビジネス活動を行っており、各拠点の外貨建による売買取引、ファイナンス及び投資によって、為替変動リスクに晒されている場合があります。これらのうち、永続性の高い投資等を除いた取引については、為替変動リスクを軽減するために、各拠点において外貨借入・外貨預金等に加えて、第三者との間で、為替予約取引・通貨スワップ取引・通貨オプション取引等のデリバティブ取引を必要に応じ行っております。
商品市況変動リスク
当社は、貴金属、非鉄金属、燃料、及び農産物等の現物取引、並びに鉱物、石油、及びガス開発プロジェクトへの投資を行っており、関連する商品価格の変動リスクに晒されております。当社は、商品の売り繋ぎや売り買い数量・時期等のマッチング、デリバティブ等の活用によって、商品価格の変動によるリスクを減少させるよう努めております。また、予め決められたポジション限度・損失限度枠内で、トレーディング目的のデリバティブ取引も限定的に実施しております。
株価変動リスク
当社は、戦略的な目的で金融機関や顧客・サプライヤーが発行する株式等への投資を行っておりますが、これらの株式投資には株価変動リスクが伴います。これらの株式投資に関しては、継続的なヘッジ手段を講じておりません。当社が保有する市場性のある株式の当期末における公正価値は、3,091億円であります。
リスク管理体制
デリバティブや市場リスクを伴う取引を行う営業部は、取引規模に応じてマネジメントの承認を事前に取得しなければなりません。マネジメントは、場合によってはデリバティブについて専門的知識を有するスタッフのサポートを得て、案件の要否を判断し、当該申請における、取引の目的、利用市場、取引相手先、与信限度、取引限度、損失限度を明確にします。
財務・経理・リスクマネジメント担当役員が管掌する部署は、取引の実施・モニタリングに際して、以下の機能を提供しております。
・金融商品及び市況商品のデリバティブに関する口座開設、取引確認、代金決済と引渡し、帳簿記録の保管等のバックオフィス業務
・ポジション残高の照合
・ポジションのモニタリングと全社ベースでの関連取引のリスク分析・計測、シニアマネジメントへの定期的な報告
当社の子会社が市況商品取引を行う際には、上記のリスク管理体制に沿うことを要求しております。
① 企業環境
当期の世界経済は、概ね堅調に推移しました。米国では個人消費や設備投資の増加により経済が拡大しました。欧州では景気回復の動きが緩慢なものとなりました。また、中国では安定成長が維持され、その影響を受けた中国以外のアジア各国でも経済の持ち直しの動きが続きました。国際商品市況では、原油の減産効果が薄れたため、下半期に原油価格が下落しました。また、通商問題の拡大及び長期化リスクが意識されたため、ニッケル、アルミ、銅などの商品価格の低迷が続きました。
国内経済は、低失業率にも支えられ個人消費が堅調に推移し、設備投資も引き続き回復に向かいました。また、輸出が概ね安定した一方で、上半期におけるエネルギー価格の上昇により輸入額が増加し、貿易赤字に転化しました。
② 事業の経過
中期経営計画「中期経営計画2020」の概要と成果については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 中期経営計画」を参照願います。
③ 事業部門別の事業活動
金属事業部門
鋼材分野では、鋼材事業の一部を住友商事グローバルメタルズ及び住商メタレックスに移管しました。これにより、今まで以上に機動的にかつ多様な人材を生かして事業を遂行していきます。鋼管分野では、国内鋼管市場における事業環境の変化に対応し、持続的成長を図るため、メタルワンと国内鋼管事業の統合に合意しました。また、油井・ガス井用の機器システムを開発しているノルウェーの新興企業に出資しました。同社の開発した革新的な機器システムにより、油井・ガス井の生産性を高め、より安全かつ安定的な操業を可能にするソリューションを提供していきます。軽金属分野では、アルミ製錬事業の収益安定・強化を図るため、当社が出資するマレーシアのアルミ製錬事業会社を通じて、オーストラリアのアルミ原料生産事業に参画しました。
輸送機・建機事業部門
リース・船舶・航空宇宙分野では、三井住友フィナンシャルグループとの共同リース事業(一般リース、オートリース及び航空機リース事業)の再編が完了しました。また、革新的な物流・移動サービスの実現を目指し、エアモビリティによる輸送サービス(注1)を展開する米国の有力企業と業務提携しました。自動車分野では、住友三井オートサービスが、顧客の多様なニーズや課題に対応する商用車のファイナンス・リース事業に参画したほか、乗用車を毎月定額で利用し、一定期間後に別の新車に乗換えることができるサービスを展開する新会社を設立しました。建設機械分野では、顧客の幅広いニーズに応えながら、販売・レンタル事業を拡大したほか、車両・機械の運行管理の効率化や省力化を目的として、テレマティクス(注2)やIT精密農業(注3)を推進する事業に参画しました。
(注1)垂直離着陸できる電動小型航空機などを用いて、都市部における移動時間の短縮、山間部などにおける移動の利便性の向上、輸送の迅速化などを実現するサービス。
(注2)車両などの移動体に通信機器を搭載し、遠隔で運行状況等の情報を送受信する仕組み。
(注3)ICT等の先端技術を活用し、農作業の自動化・効率化や生産性の向上が可能となる農業。
インフラ事業部門
各国の社会・産業のニーズに応じたインフラ整備・拡充を通じて、地球環境との共生及び地域と産業の発展に貢献する取組みを推進しております。先進国では、環境配慮型インフラ整備を重点分野とし、再生可能エネルギー発電事業を推進しました。ベルギーやフランスにおいて洋上風力発電事業に参画したほか、国内では、山形県酒田市におけるバイオマス発電所や福島県南相馬市における太陽光発電所の第二期工事が竣工し、運転を開始しました。新興国では、モザンビークのガス焚き複合火力発電所の完工やベトナムの第三タンロン工業団地の操業開始など、増大するインフラ需要に応える取組みを着実に実行しました。また、新たな分野での取組みとして、サブサハラの分散型電源事業やミャンマーの港湾ターミナル運営事業に参画しました。
メディア・デジタル事業部門
ジュピターテレコム(ケーブルテレビ事業)、ジュピターショップチャンネル(テレビ通販事業)、SCSK(ITサービス事業)、ティーガイア(携帯電話販売事業)、ミャンマーでの通信事業等、既存事業の強化に注力するとともに、さまざまな新規事業に取組みました。メディア分野では、米国の有力パートナーと提携し、動画クリエイターの育成や動画広告の制作・配信等を行う新会社を設立しました。デジタルビジネス分野では、全社的なデジタルトランスフォーメーション(注1)の推進組織(DXセンター)を設置し、デジタル技術の活用による既存事業のバリューアップや新規事業の創出に取組みました。スマートプラットフォーム分野では、東南アジア最大級の通信事業会社と提携し、その傘下のデジタル広告事業(注2)会社に出資しました。
(注1)IoT、ビッグデータ、AIといった革新的なデジタル技術の進化を背景に、さまざまなビジネス領域で最先端のICT技術を活用した既存事業の高度化・新規事業開発。
(注2)携帯電話の顧客情報やモバイル・インターネット上での個人の行動パターン等を解析し、その人に合った電子広告を配信する事業。
生活・不動産事業部門
ライフスタイル・リテイル分野では、サミット(食品スーパー事業)やトモズ(ドラッグストア事業)などの既存事業のバリューアップに注力したほか、今後成長が見込まれるヘルスケア事業への取組みとして、マレーシアのマネージドケア事業者(注1)に出資しました。また、サミットと住商フーズが精肉・惣菜部門の強化・サービス向上を図るべく、神奈川県川崎市に食肉加工センターを共同で開設しました。不動産分野では、国内においては当社が用地取得から設計、建設、テナント誘致までを行う中規模オフィスビル「PREX」シリーズを展開したほか、都市型物流施設「SOSiLA」の開発や顧客のニーズに合わせた商業施設の開発(BTS事業(注2))などを推進しました。海外においては、米国不動産を投資対象とした私募ファンド第2号を組成し、運用を開始しました。
(注1)民間の医療保険会社・医療機関と連携して、より良質で安価な医療の推進と個人の健康管理の向上を目指す仕組みづくりを行う医療関連サービス提供会社。
(注2)Build-To-Suitの略。テナントの要望に応じて商業施設等を開発するオーダーメイド型事業。
資源・化学品事業部門
資源・エネルギー及び化学品・エレクトロニクス製品の安定供給並びに地域の経済・産業の発展に貢献する取組みを、地球環境の保全に配慮しながら推進しました。資源・エネルギー分野では、ペルーの金・銅鉱山事業及びチリの銅鉱山事業に参画したほか、米国テキサス州におけるタイトオイル(注)の生産・開発権益を取得しました。また、米国メリーランド州で当社が参画しているLNGプロジェクトが商業運転を開始しました。ライフサイエンス分野では、インドやウクライナにおいて農薬・農業関連事業に参画するなど、同事業の海外展開を推進しました。また、国内においては、AIやドローン技術等の先端農業技術を活用した事業にも取組みました。農業人口減少等の社会課題の解決に貢献していきます。
(注)水平掘削・水圧破砕技術を用いてシェール(頁岩)層などから抽出した原油。
④ 業績
当期の収益は、前期に比べ5,119億円増加し、5兆3,392億円となりました。売上総利益は、電力EPC案件の建設進捗があったことに加え、資源価格の上昇により豪州石炭事業などで増益となった一方、米国タイヤ事業の再編に伴う減少があったことなどから、合計で前期に比べ333億円減少し、9,232億円となりました。販売費及び一般管理費は、前期に比べ841億円減少し、6,476億円となりました。有価証券損益は、前期に保有有価証券のIPO評価益やクオカードの売却益を計上したことによる反動などから、前期に比べ256億円減少し、22億円の利益となりました。持分法による投資損益は、ミャンマー通信事業が堅調に推移したことに加え、アジアバナナ事業が販売価格回復に伴い増益となった一方、マダガスカルニッケル事業における減損損失を計上したことなどにより、前期に比べ226億円減少し、1,271億円の利益となりました。これらの結果、親会社の所有者に帰属する当期利益は3,205億円となり、前期に比べ120億円の増益となりました。また、基礎収益(除く、減損損失)(注)は3,312億円となり、前期に比べ75億円の増益となりました。
(注)基礎収益=(売上総利益+販売費及び一般管理費(除く貸倒引当金繰入額)+利息収支+受取配当金)×(1-税率)
+持分法による投資損益
除く、減損損失(前期: インドネシア商業銀行 △151億円、 当期: マダガスカルニッケル事業 △104億円)
事業セグメント別の業績については、「(2) 財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」を参照願います。
⑤ 仕入、成約及び販売の実績
当期において、特記事項はありません。
なお、販売の状況については上記「④業績」及び「第5 経理の状況 連結財務諸表注記 4 セグメント情報」を
ご参照ください。
(2)財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析
① 概観
当社は、総合商社として、長年培ってきた「信用」、10万社に及ぶ取引先との関係である「グローバルリレーション」と全世界の店舗網と事業会社群から構成される「グローバルネットワーク」、また「知的資産」といった「ビジネス基盤」を活用し、「ビジネス創出力」、「ロジスティクス構築力」、「金融サービス提供力」、「IT活用力」、「リスク管理力」、「情報収集・分析力」といった機能を統合することにより、顧客の多様なニーズに応え、多角的な事業活動をグローバル連結ベースで展開しております。これらのビジネス基盤と機能を活用し、当社は多岐にわたる商品・製品の商取引全般に従事しております。当社は、これらの取引において、契約当事者もしくは代理人として活動しております。また、当社は、販売先及び仕入先に対するファイナンスの提供、都市及び産業インフラ整備プロジェクトの企画立案・調整及び管理運営、システムインテグレーションや技術開発におけるコンサルティング、輸送・物流など様々なサービスを提供しております。加えて、当社は、太陽光発電から情報通信産業まで幅広い産業分野への投資、資源開発、鉄鋼製品や繊維製品等の製造・加工、不動産の開発・管理、小売店舗運営など、多角的な事業活動を行っております。
当社は、2018年4月1日付で、事業部門の括りを事業分野や機能の面から戦略的に見直し、従来の5事業部門から6事業部門に再編するとともに、従来の「海外現地法人・海外支店」セグメントを各事業セグメントに含めることとしております。業種に基づくセグメントは次のとおりであります。
金属事業部門 メディア・デジタル事業部門
輸送機・建機事業部門 生活・不動産事業部門
インフラ事業部門 資源・化学品事業部門
それぞれの事業部門は、戦略目標の設定、経営管理、及びその結果に対する説明責任に関して、各々が自主性を発揮し、事業活動を行っております。また、各事業部門にはそれぞれ戦略策定・支援機能を担う業務部を置き、事業部門のマネジメントをサポートしております。ビジネス環境がますますグローバル化する今日、当社は、世界各地に存在する拠点、関係会社、顧客、サプライヤー、パートナー等のネットワークにより、世界各国で事業活動を営み、事業基盤を拡大しております。また、当社は、全ての事業部門と海外拠点に関する情報を収集・連結するためのインフラを構築し、これによりリスクを一元的に管理しております。
② 中期経営計画
中期経営計画「中期経営計画2020」の詳細は、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 中期経営計画」を参照願います。
③ 連結包括利益計算書における主要な項目
以下は、連結包括利益計算書における主要な項目についての説明であります。
収益
当社では、収益を、商品販売に係る収益とサービス及びその他の販売に係る収益に区分して表示しております。
商品販売に係る収益としては、以下の取引に関連して発生する収益が含まれております。
・卸売、小売、製造・加工を通じた商品の販売
・不動産の開発販売
・長期請負工事契約に係る収益
サービス及びその他の販売に係る収益としては、以下の取引に関連して発生する収益が含まれております。
・ソフトウェアの開発に関連するサービス
・賃貸用不動産、船舶などの貸付金、ファイナンス・リース及びオペレーティング・リース
売上総利益
売上総利益は、以下により構成されております。
・当社が主たる契約当事者として関与する取引における総利益
・当社が代理人等として関与する取引における手数料
収益が総額で計上される場合、販売に直接寄与する第三者への費用または手数料は、商品販売に係る原価として計上され、売上総利益は、収益の総額から販売に係る原価を差引いた金額となります。当社はサービス及びその他の販売に係る収益の一部として手数料を計上しますが、この手数料は純額表示されるため、結果としてサービス及びその他の販売が売上総利益に占める比率は、収益合計に占める比率よりも大きくなっております。当期、サービス及びその他の販売が収益合計に占める比率は7.8%ですが、売上総利益に占める比率は16.6%となっております。
固定資産評価損
棚卸資産、繰延税金資産及び生物資産を除く当社の非金融資産の帳簿価額については、期末日ごとに減損の兆候の有無を判断しております。減損の兆候が存在する場合は、当該資産の回収可能価額を見積り、のれん及び耐用年数を確定できない、または未だ使用可能ではない無形資産については、回収可能価額を毎年同じ時期に見積った上で、資産または資金生成単位の帳簿価額が回収可能価額を超過する場合には、減損損失を認識しております。また、減損損失の戻し入れを行った場合は当該戻し入れ金額も含めております。
固定資産売却損益
当社は、資産のポートフォリオの戦略的かつ積極的な入替えを図っております。その結果、不動産の含み益を実現するために売却する場合や、価格の下落した不動産を売却する場合、売却損益を計上することになります。
受取配当金
受取配当金には、当社の子会社及び持分法適用会社以外で、当社が株式を保有している会社からの配当金が計上されております。
有価証券損益
当社は事業活動の一環として相応の規模の投資を行っております。これらの投資対象のうち、公正価値で測定し、その変動を当期利益で認識する金融資産(以下、FVTPLの金融資産)は公正価値で当初認識しております。当初認識後は公正価値の変動を当期利益で認識しております。また、償却原価で測定される金融資産は、公正価値(直接帰属する取引費用も含む)で当初認識しております。当初認識後、償却原価で測定される金融資産の帳簿価額については実効金利法を用いて算定し、帳簿価額の変動について、必要な場合には減損損失を認識しております。償却原価で測定される金融資産並びに子会社及び持分法適用会社への投資等を売却する際に、売却損益を認識しております。
持分法による投資損益
投資戦略やビジネスチャンスの拡大に関連して、当社は、各セグメントで状況に応じ、新規または既存の会社の買収や出資、他の企業とのジョイント・ベンチャーの結成、または同業他社とのビジネス・アライアンスの組成を行っております。一般的に、当社は、出資比率が20%以上50%以下である会社の投資に対し、その持分利益や損失を計上しております。
FVTOCIの金融資産
公正価値で測定し、その変動をその他の包括利益で認識する金融資産(以下、FVTOCIの金融資産)は、公正価値(直接帰属する取引費用も含む)で当初認識しております。当初認識後は公正価値で測定し、公正価値の変動をその他の包括利益で認識しております。
確定給付制度の再測定
当社は、確定給付負債(資産)の純額の再測定を、その他の包括利益で認識しております。
在外営業活動体の換算差額
在外営業活動体の資産・負債(取得により発生したのれん及び公正価値の調整を含む)については期末日の為替レート、収益及び費用については期中平均レートを用いて日本円に換算しており、在外営業活動体の財務諸表の換算から生じる為替換算差額はその他の包括利益で認識しております。当社のIFRS移行日以降、当該差額はその他の資本の構成要素である「在外営業活動体の換算差額」として表示しております。
キャッシュ・フロー・ヘッジ
デリバティブを、認識済み資産・負債、または当期利益に影響を与え得る発生可能性の非常に高い予定取引に関連する特定のリスクに起因するキャッシュ・フローの変動をヘッジするためのヘッジ手段として指定した場合、デリバティブの公正価値の変動のうちヘッジ有効部分は、その他の包括利益で認識しております。
④ 重要な会計方針
IFRSに基づく連結財務諸表の作成にあたり、期末時点の資産・負債の計上や偶発資産及び偶発債務の開示、並びに期中の収益費用の適正な計上を行うため、マネジメントによる見積りや前提が必要とされます。当社は、過去の実績、または、各状況下で最も合理的と判断される前提に基づき、一貫した見積りを実施しております。資産・負債及び収益費用を計上する上で客観的な判断材料が十分でない場合は、このような見積りが当社における判断の基礎となっております。従って、異なる前提条件の下においては、結果が異なる場合があります。以下、当社の財政状態や経営成績にとって重要であり、かつ相当程度の経営判断や見積りを必要とする重要な会計方針につき説明します。なお、当社の主な会計方針は、「第5 経理の状況 連結財務諸表注記 3 重要な会計方針」を参照願います。
収益の認識基準
当社の収益の大部分は、(1)所有権の移転、引渡し、出荷、または顧客の検収に基づき収益を認識する、卸売、小売、製造・加工業に関連する商品販売に係る収益と、(2)役務の提供が完了した時点で収益を認識する、サービス及びその他の販売に係る収益とで構成されております。これらの個別の取引における収益の認識にあたっては、特に複雑な判断は必要ではなく、客観的に収益の認識時点を判断することができます。
当社が技術提供、資材調達、建設工事を請負う電力発電所の建設事業や、顧客仕様のソフトウェアの開発請負事業などの長期請負工事契約については、一定の条件を満たす場合、収益と原価を一定期間にわたり履行義務が充足されることによって認識しております。履行義務が充足される進捗度は、工事契約等に必要な見積総原価に対する、現在までにかかった工事原価の割合に基づいて算定しております。当初の収益の見積り、完成までの進捗状況に変更が生じる可能性がある場合、見積りの見直しを行っております。
収益の本人代理人の判定
当社は、通常の商取引において、仲介業者または代理人としての機能を果たす場合があります。このような取引における収益を報告するにあたり、収益を顧客から受け取る対価の総額(グロス)で認識するか、または顧客から受け取る対価の総額から第三者に対する手数料その他の支払額を差し引いた純額(ネット)で認識するかを判断しております。ただし、グロスまたはネット、いずれの方法で認識した場合でも、売上総利益及び当期利益に影響はありません。
ある取引において当社が本人に該当し、その結果、当該取引に係る収益をグロスで認識するための判断要素として、次の指標を考慮しております。
・当社が、特定された財又はサービスを提供する約束の履行に対する主たる責任を有している。
・特定された財又はサービスが顧客に移転される前、又は顧客への支配の移転の後に、当社が在庫リスクを有している。
・特定された財又はサービスの価格の設定において当社に裁量権がある。
金融資産の減損
当社は、償却原価で測定する金融資産、リース債権、契約資産及びその他の包括利益を通じて公正価値で測定する負債性金融資産に係る減損については、当該金融資産に係る予想信用損失に対して損失評価引当金を認識しております。
当社は、信用リスクの変動及び予想信用損失の算定にあたっては、主に当社独自の信用格付けであるSumisho Credit Rating(SCR)を用いております。これには、債務者の過去の貸倒実績、現在の財務状態及び合理的に利用可能な将来予測情報等が含まれております。
公正価値で測定する金融資産
当社は、有価証券やその他の投資等の金融資産を保有しており、FVTOCIの金融資産と、FVTPLの金融資産とに分類しております。当社は、投資先企業との取引関係の維持・強化による中長期的な収益の拡大などを目的として保有しており、公正価値の変動を業績評価指標としていない金融資産をFVTOCIの金融資産として分類し、公正価値の変動を獲得するために保有し、業績評価指標としている金融資産をFVTPLの金融資産として分類しております。当該金融資産の公正価値は、市場価格、割引将来キャッシュ・フローや純資産に基づく評価モデル等の評価方法により算定しております。
非流動資産の回収可能性
当社では様々な非流動資産を保有しております。当社では、不動産や償却対象の無形資産などの非流動資産について、帳簿価額の回収可能性を損なうと考えられる企業環境の変化や経済事象が発生した場合には、減損テストを行っております。実際に減損の兆候があるかどうかの判定に際しては、様々な見積りや前提が必要となります。例えば、キャッシュ・フローが直接的に減損の懸念がある資産に関係して発生しているのかどうか、資産の残存耐用年数がキャッシュ・フローを生み出す期間として適切かどうか、生み出すキャッシュ・フローの額が適切かどうか、及び、残存価額が適切かどうか、などを考慮しなければなりません。また、のれん及び耐用年数を確定できない無形資産について、少なくとも年1回、更に減損の発生が予測される場合は、その都度、減損テストを実施しております。減損テスト時には、資産の回収可能価額を見積っております。資産または資金生成単位の回収可能価額は使用価値と売却費用控除後の公正価値のうち、いずれか高い金額としております。使用価値の算定において、見積将来キャッシュ・フローは、貨幣の時間的価値及び当該資産の固有のリスクを反映した税引前の割引率を用いて現在価値に割引いております。当社では、過去の経験や社内の事業計画、及び適切な割引率を基礎として将来キャッシュ・フローを見積っております。これらの見積りは、事業戦略の変更や、市場環境の変化により、重要な影響を受ける可能性があります。
繰延税金資産の回収可能性
当社では、繰延税金資産の全部または一部について、回収が不確実となった場合に、マネジメントの判断により、減額しております。繰延税金資産の回収可能性の評価にあたっては、繰延税金資産計上の根拠となっている将来の一時差異の解消が見込まれる期間内、または、繰越欠損金の繰越可能期間内に、納税地において将来十分な課税所得を生み出せるかどうかを評価しなければなりません。当社では、有利・不利に関わらず、入手可能なすべての根拠・確証を用いてこの評価を実施しております。繰延税金資産の評価は、見積りと判断に基づいております。納税地での将来の課税所得に影響を与える当社の収益力に変化があった場合、現状の繰延税金資産の回収可能性の評価も変わる場合があります。
⑤ 営業活動の成果
当期の親会社の所有者に帰属する当期利益は3,205億円となり、前期に比べ120億円の増益となりました。一過性損益については、マダガスカルニッケル事業で減損損失を計上したことなどから約80億円の損失となったことに加え、前期に米国税制改正の影響などによる約230億円の利益を計上したことの反動減から、前期に比べ約310億円の減益となりました。
一過性を除く業績は約3,290億円となり、前期に比べ約440億円の増益となりました。そのうち、資源ビジネス(注1)は、主に資源価格の上昇により豪州石炭事業などで増益となりました。非資源ビジネス(注2)は、北米鋼管事業が市況回復に伴い増益となったことに加え、電力EPC案件に係る建設工事が進捗したことや、不動産事業が堅調に推移したことなどにより増益となりました。
(注1)資源ビジネスとは、「資源第一本部」「資源第二本部」「エネルギー本部」が行っているビジネスを指します。
(注2)非資源ビジネスとは、全社で行っているビジネスのうち、資源ビジネス以外のビジネスを指します。
当期末の資産合計は、米国タイヤ事業の再編等に伴う減少があった一方で、円安に伴う増加や営業債権及び棚卸資産の増加があったことなどから、前期末に比べ1,459億円増加し7兆9,165億円となりました。
資本のうち親会社の所有者に帰属する持分は、親会社の所有者に帰属する当期利益の積上げにより、前期末に比べ2,133億円増加し2兆7,715億円となりました。
現預金ネット後の有利子負債は、前期末に比べ944億円減少し2兆4,271億円となりました。
この結果、ネットのデット・エクイティ・レシオ(有利子負債(ネット)/親会社の所有者に帰属する持分合計)は、0.9倍となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、ビジネスの伸長に伴い運転資金が増加した一方で、コアビジネスが着実に資金を創出したことにより基礎収益キャッシュ・フロー(注3)が2,900億円のキャッシュ・インとなったことなどから、合計で2,689億円のキャッシュ・インとなりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、米国タイヤ事業の再編やインドネシア商業銀行の売却など資産入替えによる回収が約2,400億円あった一方で、インド特殊鋼事業への参画やチリ銅鉱山事業(ケブラダ・ブランカ)の権益取得など、約3,000億円の投融資を行ったことなどから、513億円のキャッシュ・アウトとなりました。
これらの結果、営業活動によるキャッシュ・フローに投資活動によるキャッシュ・フローを加えたフリーキャッシュ・フローは、2,176億円のキャッシュ・インとなりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払などにより、2,332億円のキャッシュ・アウトとなりました。
以上の結果、現金及び現金同等物の当期末残高は、前期末に比べ68億円減少し6,604億円となりました。
(注3)基礎収益キャッシュ・フロー=基礎収益-持分法による投資損益+持分法投資先からの配当
⑥ 事業セグメント
当社は、2018年4月1日付で、事業部門の括りを事業分野や機能の面から戦略的に見直し、従来の5事業部門から
6事業部門に再編するとともに、従来の「海外現地法人・海外支店」セグメントを各事業セグメントに含めることとしております。これに伴い、前期のセグメント情報は組替えております。
前期及び当期の売上総利益、当期利益(親会社の所有者に帰属)の事業セグメント別実績は以下のとおりであります。
事業セグメント別売上総利益の内訳
前期 (自2017年4月 1日 至2018年3月31日) (億円) | 当期 (自2018年4月 1日 至2019年3月31日) (億円) | 増減額 (億円) | 増減率 (%) | |
金属 | 1,260 | 1,452 | 192 | 15.3 |
輸送機・建機 | 2,800 | 1,581 | △1,220 | △43.5 |
インフラ | 815 | 1,143 | 329 | 40.3 |
メディア・デジタル | 846 | 929 | 82 | 9.7 |
生活・不動産 | 1,963 | 2,107 | 144 | 7.3 |
資源・化学品 | 1,813 | 1,903 | 90 | 5.0 |
計 | 9,497 | 9,115 | △382 | △4.0 |
消去又は全社 | 67 | 117 | 50 | 73.4 |
連結 | 9,565 | 9,232 | △333 | △3.5 |
事業セグメント別当期利益(親会社の所有者に帰属)の内訳
前期 (自2017年4月 1日 至2018年3月31日) (億円) | 当期 (自2018年4月 1日 至2019年3月31日) (億円) | 増減額 (億円) | 増減率 (%) | |
金属 | 354 | 405 | 50 | 14.2 |
輸送機・建機 | 708 | 520 | △188 | △26.6 |
インフラ | 357 | 644 | 287 | 80.3 |
メディア・デジタル | 590 | 475 | △115 | △19.6 |
生活・不動産 | 345 | 421 | 76 | 21.9 |
資源・化学品 | 785 | 685 | △101 | △12.8 |
計 | 3,140 | 3,148 | 9 | 0.3 |
消去又は全社 | △54 | 57 | 111 | - |
連結 | 3,085 | 3,205 | 120 | 3.9 |
金属事業部門
当期の売上総利益は1,452億円となり、前期の1,260億円から192億円(15.3%)増加しました。当期利益(親会社の所有者に帰属)は、405億円となり、前期の354億円から50億円(14.2%)増加しました。これは、前期に米国税制改正に伴う一過性利益を計上したことによる反動減があったものの、北米鋼管事業が市況回復に伴い増益となったことに加え、海外スチールサービスセンター事業が堅調に推移したことなどによるものです。
輸送機・建機事業部門
当期の売上総利益は1,581億円となり、前期の2,800億円から1,220億円(43.5%)減少しました。これは、米国タイヤ事業の再編に伴う減少があったことなどによるものです。当期利益(親会社の所有者に帰属)は、520億円となり、前期の708億円から188億円(26.6%)減少しました。これは、建機販売及び建機レンタル事業が堅調に推移した一方、前期に米国税制改正に伴う一過性利益を計上したことによる反動減などによるものです。
インフラ事業部門
当期の売上総利益は1,143億円となり、前期の815億円から329億円(40.3%)増加しました。当期利益(親会社の所有者に帰属)は、644億円となり、前期の357億円から287億円(80.3%)増加しました。これは、大型EPC案件の建設進捗に加え、発電事業が堅調に推移したことなどによるものです。
メディア・デジタル事業部門
当期の売上総利益は929億円となり、前期の846億円から82億円(9.7%)増加しました。当期利益(親会社の所有者に帰属)は、475億円となり、前期の590億円から115億円(19.6%)減少しました。これは、国内主要事業会社やミャンマー通信事業などが堅調に推移した一方、前期に保有有価証券のIPO評価益やクオカードの売却益を計上したことによる反動などによるものです。
生活・不動産事業部門
当期の売上総利益は2,107億円となり、前期の1,963億円から144億円(7.3%)増加しました。当期利益(親会社の所有者に帰属)は、421億円となり、前期の345億円から76億円(21.9%)増加しました。これは、欧米州青果物生産・卸売事業の業績が低迷したものの、不動産事業が堅調に推移したことに加え、アジアバナナ事業が販売価格回復に伴い増益となったことなどによるものです。
資源・化学品事業部門
当期の売上総利益は1,903億円となり、前期の1,813億円から90億円(5.0%)増加しました。当期利益(親会社の所有者に帰属)は、685億円となり、前期の785億円から101億円(12.8%)減少しました。これは、資源価格の上昇により豪州石炭事業などで増益となった一方、マダガスカルニッケル事業における減損損失を計上したことなどによるものです。
⑦ 資金調達と流動性
当社の財務運営は財務健全性の維持・向上を基本方針とし、低利かつ中長期にわたり、安定的な資金調達を行うこと、及び十分な流動性の保持を図ることとしております。当社グループ内での資金管理については、グループファイナンスを整備し、資金調達を当社及び金融子会社、海外現地法人に集中した上で、キャッシュ・マネジメント・システムを通じて、当社グループ内で資金を効率的に活用する体制を整えております。
当社は総額3兆980億円の社債及び借入金を有しており、このうち短期の借入金は、前期比390億円増加の2,365億円で、内訳は短期借入金(主として銀行借入金)2,172億円、コマーシャルペーパー193億円となっております。
一年以内に期限の到来する社債及び長期借入金4,459億円を含めた当期の社債及び長期借入金は、前期比1,449億円減少の2兆8,615億円となっております。このうち、銀行及び保険会社からの長期借入残高は、前期比1,727億円減少の2兆4,300億円、社債残高は前期比278億円増加の4,315億円となっております。
当社の銀行からの借入の多くは、日本の商慣行上の規定に基づいております。当社は、このような規定が当社の営業活動や財務活動の柔軟性を制限しないと確信しておりますが、いくつかの借入契約においては、財務比率や純資産の最低比率の維持が求められております。さらに、主に政府系金融機関との契約においては、当社が増資や社債の発行等により資金を調達した際に、当該金融機関から、当該借入金の期限前返済を求められる可能性があり、また、一部の契約では当社の剰余金の配当等について当該金融機関の事前承認を請求される可能性があります。当社は、このような請求を受けたことはなく、今後も受けることはないと判断しております。
詳細は、「2 事業等のリスク(13) 資金の流動性に係るリスク」を参照願います。
資金調達については、各金融機関との良好な関係に基づく銀行借入等の間接金融を中心に、コマーシャルペーパーや社債等の直接金融との適切なバランスに留意し、調達期間の長期化を通じた償還期日の分散等による安定的な調達構造を構築しております。また、外貨建ての資金調達については、従来の銀行借入や通貨スワップ、金融子会社、海外現地法人におけるコマーシャルペーパー、ユーロMTN等に加え、2017年9月に米ドル建て無担保普通社債を発行し、資金調達ソースの多様化に取り組んでおります。
なお、当社は、資本市場での直接調達を目的として、以下の資金調達プログラムを設定しており、当期末時点での当社の長期及び短期の信用格付は、ムーディーズでBaa1/P-2(見通し安定的)、スタンダード&プアーズでA-/A-2(見通し安定的)、格付投資情報センターでA+/a-1(見通し安定的)となっております。
・2,000億円の国内公募普通社債発行登録枠
・国内における1兆円のコマーシャルペーパー発行枠
・米州住友商事により設定された、1,500百万米ドルのコマーシャルペーパープログラム
・当社、英国のSumitomo Corporation Capital Europe(以下、「SCCE」という。)、米州住友商事及びシンガポールのSumitomo Corporation Capital Asiaが共同で設定した3,000百万米ドルのユーロMTNプログラム
・SCCEが設定した1,500百万米ドルのユーロコマーシャルペーパープログラム
保有流動性については、金融市場の混乱等、複数の有事シナリオを想定し、当期末時点で現預金と国内外の主要な金融機関との総額1,260百万米ドル、及び4,250億円を上限とする以下の長期コミットメントラインを中心に、当社及び当社子会社における資金需要や1年内に期日が到来する借入や社債の償還資金等を補完する十分な流動性を確保しております。なお、当有価証券報告書の提出日までに、これらのコミットメントラインに基づく借入はありません。また、これらのコミットメントラインには、借入の実行を制限する重大なコベナンツ、格付トリガー条項などは付されておりません。なお、これらのコミットメントラインのほかに、当社は、コミットメントベースでない借入枠を有しております。
・米国及び欧州の大手銀行によるシンジケート団との間で締結した、1,060百万米ドルのマルチ・カレンシー(円・米ドル・ユーロ建)/マルチ・ボロワー(住友商事及び英国、米国、シンガポールにおける当社子会社への融資)型長期コミットメントライン
・大手米銀との間に締結した、米州住友商事への100百万米ドルの長期コミットメントライン
・大手欧銀との間に締結した、SCCEへの100百万米ドルのマルチ・カレンシー(円・米ドル・ユーロ・ポンド建)型長期コミットメントライン
・大手邦銀のシンジケート団による3,100億円の長期コミットメントライン(内、1,000億円はマルチ・カレンシー型)
・有力地方銀行のシンジケート団による1,150億円の長期コミットメントライン
資金調達の内訳
前期 (2018年3月31日) (億円) | 当期 (2019年3月31日) (億円) | |||
短期 | 1,975 | 2,365 | ||
借入金(主に銀行より調達) | 1,682 | 2,172 | ||
コマーシャルペーパー | 293 | 193 | ||
長期(一年以内期限到来分を含む) | 30,064 | 28,615 | ||
担保付 | ||||
借入金 | 2,331 | 1,901 | ||
無担保 | ||||
借入金 | 23,696 | 22,398 | ||
社債 | 4,037 | 4,315 | ||
有利子負債合計(グロス) | 32,039 | 30,980 | ||
現金及び現金同等物並びに定期預金 | 6,823 | 6,709 | ||
有利子負債合計(ネット) | 25,215 | 24,271 | ||
資産合計 | 77,706 | 79,165 | ||
親会社の所有者に帰属する持分合計 | 25,582 | 27,715 | ||
親会社所有者帰属持分合計比率(%) | 32.9 | 35.0 | ||
デット・エクイティ・レシオ(グロス)(倍) | 1.3 | 1.1 | ||
デット・エクイティ・レシオ(ネット)(倍) | 1.0 | 0.9 |
当期末時点での当社の期限別の支払債務は、以下のとおりです。
期限別内訳
社債及び借入金 (億円) | 解約不能 オペレーティング・ リース (億円) | |
2019年度 | 6,823 | 394 |
2020年度 | 3,883 | 358 |
2021年度 | 2,867 | 316 |
2022年度 | 3,521 | 296 |
2023年度 | 2,368 | 284 |
2024年度以降 | 11,516 | 1,576 |
合計 | 30,980 | 3,224 |
当社は、資金供与に関する契約(貸付契約、出資契約)及び設備使用契約等を締結しており、当期末における契約残高は、1兆1,110億円です。
当期末時点では、資本的支出に対する重要な契約はありません。
上述の契約に加えて、当社のビジネスに関連して、当社は、顧客の債務に対する保証などの様々な偶発債務を負っています。また、当社は、訴訟による偶発債務の影響を受ける可能性があります。これらの偶発債務に関する詳細は、「⑧ 偶発債務」及び「⑨ 訴訟等」を参照願います。当社は、現状においては、それらの偶発債務がもたらす資金需要が重大なものとはならないと判断しておりますが、仮に予想に反して、当社が保証を行っている債務に重大な不履行が生じた場合、また、訴訟の結果が、当社に大きく不利なものであった場合には、新たに、大きな資金調達が必要となる可能性があります。
当社は、主に、ワーキング・キャピタル、新規や既存ビジネスへの投資や債務の返済のために、将来にわたり継続的な資金調達を行う必要があります。当社は、成長戦略として買収、株式取得または貸付による投資を行っており、当期は、有形固定資産及び投資不動産の取得に1,363億円、また、その他の投資の取得に1,706億円の投資を行いました。当社は、現在、全てのセグメントにおいて、既存のコア・ビジネス及び周辺分野を中心に追加投資を検討しております。
しかしながら、これらの投資は、現在、予備調査段階のものや、今後の様々な条件により、その実施が左右されるものであり、結果的に実現されない可能性もあります。また当社は、手許の現金、現在の借入枠や営業活動によるキャッシュ・インで当面必要とされる資金需要を十分に満たせると考えておりますが、それは保証されている訳ではありません。当社の営業活動によるキャッシュ・インが想定より少なかった場合、当社は、追加借入の実施、他の資金調達手段の検討、または投資計画の修正を行う可能性があります。
⑧ 偶発債務
当社の取引に関連して、顧客の債務に対する保証履行のような偶発債務を負うことがあります。当社は、世界各国のサプライヤーや顧客と多種多様な営業活動を行うことにより、営業債権及び保証等に係る信用リスクを分散させており、これらに関し重大な追加損失は発生しないものと見込んでおります。
当社の当期末における保証に対する偶発債務の残高(最長期限2044年)は1,280億円で、このうち関連会社の債務に対する保証が805億円、第三者の債務に対する保証が475億円です。これらの保証は主に関連会社、サプライヤー、及び顧客の信用を補完するために行っているものであります。
⑨ 訴訟等
当社は、事業遂行上偶発的に発生する訴訟や訴訟に至らない請求等を受けておりますが、当社の経営上、重要な影響を及ぼすものはありません。
⑩ 未適用の新たな基準書及び解釈指針
連結財務諸表の承認日までに公表されている主な基準書及び解釈指針の新設または改訂は次のとおりであり、2019年3月31日現在において当社はこれらを適用しておりません。
基準書 | 基準名 | 強制適用時期 (以降開始年度) | 当社適用年度 | 新設・改訂の概要 |
IFRS第3号 | 企業結合 | 2020年1月1日 | 2021年3月期 | 事業の定義の明確化 |
IFRS第9号 | 金融商品 | 2019年1月1日 | 2020年3月期 | 負の補償の要素を伴う特定の金融資産の会計処理の改訂 |
IFRS第10号 | 連結財務諸表 | 未定 | 未定 | 投資者とその関連会社または共同支配企業との間の資産の売却または拠出の会計処理 |
IFRS第16号 | リース | 2019年1月1日 | 2020年3月期 | リース会計処理の改訂 |
IFRS第17号 | 保険契約 | 2021年1月1日 | 2022年3月期 | 保険契約の会計処理の改訂 |
IAS第1号 | 財務諸表の表示 | 2020年1月1日 | 2021年3月期 | 重要性の定義の明確化 |
IAS第8号 | 会計方針、会計上の見積りの変更及び誤謬 | 2020年1月1日 | 2021年3月期 | 重要性の定義の明確化 |
IAS第19号 | 従業員給付 | 2019年1月1日 | 2020年3月期 | 制度改訂、縮小又は清算が生じた場合の会計処理の明確化 |
IAS第28号 | 関連会社及び共同支配企業に対する投資 | 未定 | 未定 | 投資者とその関連会社または共同支配企業との間の資産の売却または拠出の会計処理 |
IAS第28号 | 関連会社及び共同支配企業に対する投資 | 2019年1月1日 | 2020年3月期 | 関連会社または共同支配企業に対する長期持分の会計処理の明確化 |
IFRIC第23号 | 法人所得税務処理に 関する不確実性 | 2019年1月1日 | 2020年3月期 | 税務処理に関する不確実性がある状況における法人所得税の会計処理の明確化 |
当社は、IFRS第16号「リース」の経過措置に従って、本基準の適用開始の累積的影響を適用開始日に認識する方法(修正遡及アプローチ)を採用する予定です。
この結果、2020年3月期の期首時点で、総資産がおよそ4,000億円増加し、利益剰余金がおよそ200億円減少する予定です。
IAS第28号「関連会社及び共同支配企業に対する投資」の改訂により、主にチリ銅・モリブデン鉱山事業における長期持分の会計処理に影響がでる見込みです。この結果、2020年3月期の期首時点で、営業債権及びその他の債権及び利益剰余金の残高がおよそ300億円減少する予定です。
⑪ 市場リスクに関する定量的・定性的情報
当社のビジネスは、金利、外国為替レート、商品価格、株価の変動リスクを伴い、これらのリスクマネジメントを行うため、為替予約取引、通貨スワップ・オプション取引、金利スワップ・先物・オプション取引、商品先物・先渡・スワップ・オプション取引等のデリバティブを利用しております。また、後述のリスク管理体制の下、予め決められたポジション限度・損失限度枠内で、トレーディング目的のデリバティブ取引も限定的に実施しております。
金利変動リスク
当社は、事業活動の中で様々な金利変動リスクに晒されております。コーポレート部門の財務・経理・リスクマネジメント担当役員が管掌する部署では、当社のビジネスに伴う金利変動リスクをモニタリングしております。特に、金利の変動は借入コストに影響を与えます。これは、当社の借入の大部分が変動金利であり、また、都度借換えを行う短期借入金があるためです。
しかしながら、金利変動が借入コストに与える影響は、金利変動の影響を受ける資産からの収益により相殺されます。また、当社は、金利変動リスクをミニマイズするために資産・負債の金利を調整・マッチングさせるよう、金利スワップ等のデリバティブ取引を利用しております。
為替変動リスク
当社は、グローバルなビジネス活動を行っており、各拠点の外貨建による売買取引、ファイナンス及び投資によって、為替変動リスクに晒されている場合があります。これらのうち、永続性の高い投資等を除いた取引については、為替変動リスクを軽減するために、各拠点において外貨借入・外貨預金等に加えて、第三者との間で、為替予約取引・通貨スワップ取引・通貨オプション取引等のデリバティブ取引を必要に応じ行っております。
商品市況変動リスク
当社は、貴金属、非鉄金属、燃料、及び農産物等の現物取引、並びに鉱物、石油、及びガス開発プロジェクトへの投資を行っており、関連する商品価格の変動リスクに晒されております。当社は、商品の売り繋ぎや売り買い数量・時期等のマッチング、デリバティブ等の活用によって、商品価格の変動によるリスクを減少させるよう努めております。また、予め決められたポジション限度・損失限度枠内で、トレーディング目的のデリバティブ取引も限定的に実施しております。
株価変動リスク
当社は、戦略的な目的で金融機関や顧客・サプライヤーが発行する株式等への投資を行っておりますが、これらの株式投資には株価変動リスクが伴います。これらの株式投資に関しては、継続的なヘッジ手段を講じておりません。当社が保有する市場性のある株式の当期末における公正価値は、3,091億円であります。
リスク管理体制
デリバティブや市場リスクを伴う取引を行う営業部は、取引規模に応じてマネジメントの承認を事前に取得しなければなりません。マネジメントは、場合によってはデリバティブについて専門的知識を有するスタッフのサポートを得て、案件の要否を判断し、当該申請における、取引の目的、利用市場、取引相手先、与信限度、取引限度、損失限度を明確にします。
財務・経理・リスクマネジメント担当役員が管掌する部署は、取引の実施・モニタリングに際して、以下の機能を提供しております。
・金融商品及び市況商品のデリバティブに関する口座開設、取引確認、代金決済と引渡し、帳簿記録の保管等のバックオフィス業務
・ポジション残高の照合
・ポジションのモニタリングと全社ベースでの関連取引のリスク分析・計測、シニアマネジメントへの定期的な報告
当社の子会社が市況商品取引を行う際には、上記のリスク管理体制に沿うことを要求しております。