有価証券報告書-第153期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)

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2021/06/18 14:48
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【項目】
135項目
(1) 企業環境
当期の世界経済は、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)により、戦後最悪となる深刻な景気後退に直面しました。このパンデミックの収束が各国当局の最重要課題となり、厳しい移動制限が課されたことで、社会活動は前例がないほどの制約を受けました。その結果、消費者マインドは著しく減退し、生産活動も大きく停滞しました。期中には、新型コロナウイルスの感染拡大の一時的な鈍化や各国当局による積極的かつ大規模な財政・金融支援の効果により、急速な景気回復基調が強まりましたが、期末になると、多くの地域で再び感染が拡大し、経済活動へ悪影響を及ぼしました。国際商品市況では、特に米国産の原油が大幅な供給過剰となり、価格がマイナスに陥るなど、需給バランスの悪化による不安定な価格推移が目立ちました。
国内経済は、新型コロナウイルスの感染拡大により著しく停滞しました。また、世界経済の景気後退の影響を受け、輸出入は大幅に抑制されました。しかし、感染拡大状況が徐々に落ち着くにつれ、地域・産業にばらつきは見られるものの、日本の内外需は回復基調となりました。
(2) 業績
当期の収益は、前期に比べ6,548億円減少し、4兆6,451億円となりました。売上総利益は、電力EPC案件のピークアウトや工事遅延に伴う追加コストを計上したことに加え、豪州石炭事業で資源価格の下落及び販売数量の減少により減益となったことなどから、前期に比べ1,442億円減少し、7,295億円となりました。販売費及び一般管理費は、前期に比べ15億円増加し、6,789億円となりました。固定資産損益は、鋼管事業での減損損失が減少した一方、欧米州青果事業などにおいて減損損失を計上したことなどから、前期に比べ239億円減少し、856億円の損失となりました。持分法による投資損益は、マダガスカルニッケル事業及びインドネシア自動車金融事業で減損損失を計上したことなどから、前期に比べ1,262億円減少し、414億円の損失となりました。これらの結果、親会社の所有者に帰属する当期損益は1,531億円の損失となり、前期に比べ3,244億円の減益となりました。また、基礎収益(注)は38億円の利益となり、前期に比べ2,182億円の減益となりました。
(注)基礎収益=(売上総利益+販売費及び一般管理費(除く貸倒引当金繰入額)+利息収支+受取配当金)×(1-税率)
+持分法による投資損益
(3) 事業セグメント
当社は、6つの業種に基づくセグメント(事業部門)により事業活動を行っております。
6つのセグメントは金属事業部門、輸送機・建機事業部門、インフラ事業部門、メディア・デジタル事業部門、生活・不動産事業部門、資源・化学品事業部門から構成されております。2020年4月1日付で、輸送機・建機事業部門傘下にあった自動車部品製造・販売事業の一部を金属事業部門傘下の組織に、リチウムイオン電池の二次利用事業をインフラ事業部門傘下の組織に移管しました。これに伴い、前期のセグメント情報は組替えております。
前期及び当期の売上総利益、当期利益又は損失(親会社の所有者に帰属)の事業セグメント別実績は以下のとおりであります。
事業セグメント別売上総利益の内訳
前期
(自2019年4月 1日
至2020年3月31日)
(億円)
当期
(自2020年4月 1日
至2021年3月31日)
(億円)
増減額
(億円)
増減率
(%)
金属1,048738△310△29.6
輸送機・建機1,6491,404△245△14.9
インフラ1,144155△989△86.4
メディア・デジタル1,0021,052505.0
生活・不動産2,2642,3881245.5
資源・化学品1,5201,516△4△0.3
8,6277,254△1,373△15.9
消去又は全社11041△69△62.7
連結8,7377,295△1,442△16.5

事業セグメント別当期利益又は損失(△)(親会社の所有者に帰属)の内訳
前期
(自2019年4月 1日
至2020年3月31日)
(億円)
当期
(自2020年4月 1日
至2021年3月31日)
(億円)
増減額
(億円)
増減率
(%)
金属△504△35614829.4
輸送機・建機305△175△480-
インフラ615△556△1,171-
メディア・デジタル3834436015.7
生活・不動産513△84△596-
資源・化学品432△637△1,069-
1,744△1,365△3,108-
消去又は全社△30△166△136△451.2
連結1,714△1,531△3,244-

金属事業部門
当期の売上総利益は738億円となり、前期の1,048億円から310億円(29.6%)減少しました。当期利益又は損失(親会社の所有者に帰属)は、356億円の損失となり、前期の504億円の損失から148億円改善しました。これは、北米鋼管事業が減益となった一方、鋼管事業での減損損失が減少したことなどによるものです。
輸送機・建機事業部門
当期の売上総利益は1,404億円となり、前期の1,649億円から245億円(14.9%)減少しました。当期利益又は損失(親会社の所有者に帰属)は、175億円の損失となり、前期の305億円の利益から480億円減少しました。これは、リース事業、自動車関連事業などが減益となったことに加え、インドネシア自動車金融事業で減損損失や現地政府の新型コロナウイルス緊急対策導入に伴う返済猶予等に関する引当金などの一過性損失を計上したことなどによるものです。
インフラ事業部門
当期の売上総利益は155億円となり、前期の1,144億円から989億円(86.4%)減少しました。当期利益又は損失(親会社の所有者に帰属)は、556億円の損失となり、前期の615億円の利益から1,171億円減少しました。これは、大型EPC案件のピークアウトや工事遅延に伴う追加コストを計上したことに加え、豪州発電事業やUAE発電・造水事業で減損損失などの一過性損失を計上したことなどによるものです。
メディア・デジタル事業部門
当期の売上総利益は1,052億円となり、前期の1,002億円から50億円(5.0%)増加しました。当期利益又は損失(親会社の所有者に帰属)は、443億円の利益となり、前期の383億円の利益から60億円増加しました。これは、国内主要事業会社が堅調に推移したことなどによるものです。
生活・不動産事業部門
当期の売上総利益は2,388億円となり、前期の2,264億円から124億円(5.5%)増加しました。当期利益又は損失(親会社の所有者に帰属)は、84億円の損失となり、前期の513億円の利益から596億円減少しました。これは、国内スーパーマーケット事業が好調に推移した一方、不動産事業で前期に大口案件の引渡しがあったことや、欧米州青果事業で減損損失を計上したことなどによるものです。
資源・化学品事業部門
当期の売上総利益は1,516億円となり、前期の1,520億円から4億円(0.3%)減少しました。当期利益又は損失(親会社の所有者に帰属)は、637億円の損失となり、前期の432億円の利益から1,069億円減少しました。これは、資源価格の下落及び販売数量の減少などにより豪州石炭事業が減益となったことや、マダガスカルニッケル事業が操業停止の影響により減益となったこと、並びに848億円の減損損失を計上したことなどによるものです。
(4) 仕入、成約及び販売の実績
当期において、特記事項はありません。
なお、販売の状況については上記「(2)業績」及び「第5 経理の状況 連結財務諸表注記 4 セグメント情報」をご参照ください。
(5) 連結包括利益計算書における主要な項目
以下は、連結包括利益計算書における主要な項目についての説明であります。
収益
当社では、収益を、商品販売に係る収益とサービス及びその他の販売に係る収益に区分して表示しております。
商品販売に係る収益としては、以下の取引に関連して発生する収益が含まれております。
・卸売、小売、製造・加工を通じた商品の販売
・不動産の開発販売
・長期請負工事契約に係る収益
サービス及びその他の販売に係る収益としては、以下の取引に関連して発生する収益が含まれております。
・ソフトウェアの開発に関連するサービス
・賃貸用不動産、船舶などの貸付金、ファイナンス・リース及びオペレーティング・リース
売上総利益
売上総利益は、以下により構成されております。
・当社が主たる契約当事者として関与する取引における総利益
・当社が代理人等として関与する取引における手数料
収益が総額で計上される場合、販売に直接寄与する第三者への費用または手数料は、商品販売に係る原価として計上され、売上総利益は、収益の総額から販売に係る原価を差引いた金額となります。当社はサービス及びその他の販売に係る収益の一部として手数料を計上しますが、この手数料は純額表示されるため、結果としてサービス及びその他の販売が売上総利益に占める比率は、収益合計に占める比率よりも大きくなっております。当期、サービス及びその他の販売が収益合計に占める比率は9.9%ですが、売上総利益に占める比率は28.6%となっております。
固定資産評価損
棚卸資産、繰延税金資産及び生物資産を除く当社の非金融資産の帳簿価額については、期末日ごとに減損の兆候の有無を判断しております。減損の兆候が存在する場合は、当該資産の回収可能価額を見積り、のれん及び耐用年数を確定できない、または未だ使用可能ではない無形資産については、回収可能価額を毎年同じ時期に見積った上で、資産または資金生成単位の帳簿価額が回収可能価額を超過する場合には、減損損失を認識しております。また、減損損失の戻し入れを行った場合は当該戻し入れ金額も含めております。
固定資産売却損益
当社は、資産のポートフォリオの戦略的かつ積極的な入替えを図っております。その結果、不動産の含み益を実現するために売却する場合や、価格の下落した不動産を売却する場合、売却損益を計上することになります。
受取配当金
受取配当金には、当社の子会社及び持分法適用会社以外で、当社が株式を保有している会社からの配当金が計上されております。
有価証券損益
当社は事業活動の一環として相応の規模の投資を行っております。これらの投資対象のうち、公正価値で測定し、その変動を当期利益で認識する金融資産(以下、FVTPLの金融資産)は公正価値で当初認識しております。当初認識後は公正価値の変動を当期利益で認識しております。また、償却原価で測定される金融資産は、公正価値(直接帰属する取引費用も含む)で当初認識しております。当初認識後、償却原価で測定される金融資産の帳簿価額については実効金利法を用いて算定し、帳簿価額の変動について、必要な場合には減損損失を認識しております。償却原価で測定される金融資産並びに子会社及び持分法適用会社への投資等を売却する際に、売却損益を認識しております。
持分法による投資損益
投資戦略やビジネスチャンスの拡大に関連して、当社は、各セグメントで状況に応じ、新規または既存の会社の買収や出資、他の企業とのジョイント・ベンチャーの結成、または同業他社とのビジネス・アライアンスの組成を行っております。一般的に、当社は、出資比率が20%以上50%以下である会社の投資に対し、その持分利益や損失を計上しております。
FVTOCIの金融資産
公正価値で測定し、その変動をその他の包括利益で認識する金融資産(以下、FVTOCIの金融資産)は、公正価値(直接帰属する取引費用も含む)で当初認識しております。当初認識後は公正価値で測定し、公正価値の変動をその他の包括利益で認識しております。
確定給付制度の再測定
当社は、確定給付負債(資産)の純額の再測定を、その他の包括利益で認識しております。
在外営業活動体の換算差額
在外営業活動体の資産・負債(取得により発生したのれん及び公正価値の調整を含む)については期末日の為替レート、収益及び費用については期中平均レートを用いて日本円に換算しており、在外営業活動体の財務諸表の換算から生じる為替換算差額はその他の包括利益で認識しております。当社のIFRS移行日以降、当該差額はその他の資本の構成要素である「在外営業活動体の換算差額」として表示しております。
キャッシュ・フロー・ヘッジ
デリバティブを、認識済み資産・負債、または当期利益に影響を与え得る発生可能性の非常に高い予定取引に関連する特定のリスクに起因するキャッシュ・フローの変動をヘッジするためのヘッジ手段として指定した場合、デリバティブの公正価値の変動のうちヘッジ有効部分は、その他の包括利益で認識しております。
(6) 重要な会計方針及び見積り
IFRSに基づく連結財務諸表の作成にあたり、期末時点の資産・負債の計上や偶発資産及び偶発債務の開示、並びに期中の収益費用の適正な計上を行うため、マネジメントによる見積りや前提が必要とされます。当社は、過去の実績、または、各状況下で最も合理的と判断される前提に基づき、一貫した見積りを実施しております。資産・負債及び収益費用を計上する上で客観的な判断材料が十分でない場合は、このような見積りが当社における判断の基礎となっております。従って、異なる前提条件の下においては、結果が異なる場合があります。以下、当社の財政状態や経営成績にとって重要であり、かつ相当程度の経営判断や見積りを必要とする重要な会計方針につき説明します。なお、当社の主な会計方針は、「第5 経理の状況 連結財務諸表注記 3 重要な会計方針」を参照願います。
金融資産の減損
当社は、償却原価で測定する金融資産、リース債権、契約資産及びその他の包括利益を通じて公正価値で測定する負債性金融資産に係る減損については、当該金融資産に係る予想信用損失に対して損失評価引当金を認識しております。
当社は、信用リスクの変動及び予想信用損失の算定にあたっては、主に当社独自の信用格付けである Sumisho Credit Rating(SCR)を用いております。これには、債務者の過去の貸倒実績、現在の財務状態及び合理的に利用可能な将来予測情報等が含まれております。
公正価値で測定する金融資産
当社は、有価証券やその他の投資等の金融資産を保有しており、FVTOCIの金融資産と、FVTPLの金融資産とに分類しております。当社は、投資先企業との取引関係の維持・強化による中長期的な収益の拡大などを目的として保有しており、公正価値の変動を業績評価指標としていない金融資産をFVTOCIの金融資産として分類し、公正価値の変動を獲得するために保有し、業績評価指標としている金融資産をFVTPLの金融資産として分類しております。当該金融資産の公正価値は、市場価格、割引将来キャッシュ・フローや純資産に基づく評価モデル等の評価方法により算定しております。
非流動資産の回収可能性
当社は、様々な非流動資産を保有しており、持分法で会計処理されている投資や無形資産などの非流動資産について、帳簿価額の回収可能性を損なうと考えられる企業環境の変化や経済事象が発生した場合には、減損テストを行っております。実際に減損の兆候があるかどうかの判定に際しては、様々な見積りや前提が必要となります。例えば、キャッシュ・フローが直接的に減損の懸念がある資産に関係して発生しているのかどうか、資産の残存耐用年数がキャッシュ・フローを生み出す期間として適切かどうか、生み出すキャッシュ・フローの額が適切かどうか、及び、残存価額が適切かどうか、などを考慮しなければなりません。また、のれん及び耐用年数を確定できない無形資産について、少なくとも年1回、更に減損の発生が予測される場合は、その都度、減損テストを実施しております。減損テスト時には、資産の回収可能価額を見積っております。資産または資金生成単位の回収可能価額は使用価値と売却費用控除後の公正価値のうち、いずれか高い金額としております。使用価値の算定において、見積将来キャッシュ・フローは、貨幣の時間的価値及び当該資産の固有のリスクを反映した税引前の割引率を用いて現在価値に割引いております。当社では、過去の経験や社内の事業計画、及び適切な割引率を基礎として将来キャッシュ・フローを見積っております。これらの見積りは、事業戦略の変更や、市場環境の変化により、重要な影響を受ける可能性があります。なお、非流動資産の回収可能性に関連する会計上の見積りのうち、重要なものは以下になります。詳細については、「第5経理の状況 連結財務諸表注記 11 持分法適用会社に対する投資、注記 13 無形資産」を参照願います。
① マダガスカルニッケル事業
AMBATOVY MINERALS S.A. 及びDYNATEC MADAGASCAR S.A. (以下、プロジェクト会社)の固定資産に減損の兆候が認められ、かつ、減損テストの結果、回収可能価額が固定資産の帳簿価額を下回った場合には、当社において持分相当額を持分法投資損失として認識いたします。プロジェクト会社における固定資産の回収可能価額は、使用価値と処分コスト控除後の公正価値のいずれか高い方が採用され、その見積りには、プロジェクト会社の生産状況、将来の資源価格(主にニッケル及びコバルト等の中・長期予想価格)、可採埋蔵量、割引率といった重要な仮定が使用されております。
当連結会計年度において、新型コロナウイルス感染拡大に伴う操業の一時停止及びニッケル中・長期価格見通しの下落等を踏まえ事業計画を見直した結果、プロジェクト会社に対する投資につき、84,810百万円の減損損失を計上しております。
② 欧米州青果事業
欧米州青果事業において、のれん及び耐用年数を確定できない無形資産の減損テストは、複数の資金生成単位グループに分けて実施しており、回収可能価額は使用価値に基づき算定しております。使用価値は、取得価額の前提とした事業計画に対して、直近の事業環境を反映させた将来キャッシュ・フローの現在価値を用いて、独立した鑑定人の支援を受け、評価しております。使用価値に大きく影響を及ぼす仮定は、バナナ&パイン事業、メロン事業、マッシュルーム事業それぞれにおいて販売数量・マージン・割引率等であります。 当連結会計年度において、欧米州青果事業において、新型コロナウイルス感染拡大の影響、及び欧州市場におけるバナナ卸売事業の競争激化等を踏まえ、事業計画を見直した結果、同事業に係るのれん及びその他の無形資産につき、41,050百万円の減損損失を計上しております。 なお、見直し後の事業計画における新型コロナウイルスの影響について、バナナ&パイン事業では限定的である一方、マッシュルーム事業では当面の間製造コストの上昇傾向が継続する前提としております。また、メロン事業では、新型コロナウイルスの影響による米国市場での著しい需要減退・市況悪化を受けて、今後も需要の停滞が続く前提としております。
繰延税金資産の回収可能性
当社は、繰延税金資産の全部または一部について、回収が不確実となった場合に、マネジメントの判断により、減額しております。繰延税金資産の回収可能性の評価にあたっては、繰延税金資産計上の根拠となっている将来の一時差異の解消が見込まれる期間内、または、繰越欠損金の繰越可能期間内に、納税地において将来十分な課税所得を生み出せるかどうかを評価しなければなりません。当社では、有利・不利に関わらず、入手可能なすべての根拠・確証を用いてこの評価を実施しております。繰延税金資産の評価は、見積りと判断に基づいております。納税地での将来の課税所得に影響を与える当社の収益力に変化があった場合、現状の繰延税金資産の回収可能性の評価も変わる場合があります。
引当金の測定
引当金は、過去の事象の結果として、当社が、現在の法的または推定的債務を負っており、当該債務を決済するために経済的資源の流出が生じる可能性が高く、その債務の金額が合理的に見積り可能である場合に認識しております。引当金は、見積将来キャッシュ・フローを貨幣の時間的価値及び当該負債に特有のリスクを反映した税引前の利率を用いて現在価値に割引いております。
確定給付債務の測定
確定給付型年金制度は、確定拠出型年金制度以外の退職後給付制度であります。確定給付型年金制度に関連する当社の純債務は、制度ごとに区別して、従業員が過年度及び当年度において提供したサービスの対価として獲得した将来給付額を見積り、当該金額を現在価値に割引き、制度資産の公正価値を差し引くことによって算定しております。割引率は、当社の債務と概ね同じ満期日を有するもので、期末日において信用格付AAの債券の利回りであります。この計算は、毎年、年金数理人によって予測単位積増方式を用いて行っております。
(7) 資産及び負債・資本
当期末の資産合計は、円安の影響により増加した一方、営業資産が減少したことに加え、複数の案件で減損損失を計上したことなどから、前期末に比べ486億円減少し、8兆800億円となりました。
資本のうち親会社の所有者に帰属する持分合計は、円安の影響により増加した一方、親会社の所有者に帰属する当期損失を認識したことや配当金の支払があったことなどから、前期末に比べ162億円減少し、2兆5,280億円となりました。
現預金ネット後の有利子負債(注1)は、前期末に比べ1,684億円減少し2兆3,004億円となりました。
この結果、ネットのデット・エクイティ・レシオ(有利子負債(ネット)/親会社の所有者に帰属する持分合計)は、0.9倍となりました。
(8) キャッシュ・フロー
営業活動によるキャッシュ・フローは、運転資金の減少に加え、コアビジネスが資金を創出し、基礎収益キャッシュ・フロー(注2)が1,308億円のキャッシュ・インとなったことなどから、合計で4,671億円のキャッシュ・インとなりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、メキシコ完成車製造事業や米国タイトオイル・シェールガス事業の売却など、資産入替えによる回収が約1,100億円あった一方で、三井住友ファイナンス&リースへの追加出資やSCSKにおける設備投資など、約2,600億円の投融資を行ったことなどから、1,201億円のキャッシュ・アウトとなりました。
これらの結果、営業活動によるキャッシュ・フローに投資活動によるキャッシュ・フローを加えたフリーキャッシュ・フローは、3,470億円のキャッシュ・インとなりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、借入金の返済や配当金の支払などにより、4,664億円のキャッシュ・アウトとなりました。
以上の結果、現金及び現金同等物の当期末残高は、前期末に比べ1,114億円減少し5,990億円となりました。
(注1)有利子負債=社債及び借入金(流動・非流動)の合計 (リース負債は含まれておりません)
(注2)基礎収益キャッシュ・フロー=基礎収益-持分法による投資損益+持分法投資先からの配当
(9) 資金調達と流動性
当社の財務運営は財務健全性の維持・向上を基本方針とし、低利かつ中長期にわたり、安定的な資金調達を行うこと、及び十分な流動性の保持を図ることとしております。当社グループ内での資金管理については、グループファイナンスを整備し、資金調達を当社及び金融子会社、海外現地法人に集中した上で、キャッシュ・マネジメント・システムを通じて、当社グループ内で資金を効率的に活用する体制を整えております。
当社は総額2兆9,122億円の社債及び借入金を有しており、このうち短期の借入金は、前期比2,006億円減少の1,884億円で、内訳は短期借入金(主として銀行借入金)1,381億円、コマーシャルペーパー503億円となっております。
一年以内に期限の到来する社債及び長期借入金2,895億円を含めた当期の社債及び長期借入金は、前期比766億円減少の2兆7,238億円となっております。このうち、銀行及び保険会社からの長期借入残高は、前期比795億円減少の2兆2,722億円、社債残高は前期比29億円増加の4,517億円となっております。
当社の銀行からの借入の多くは、日本の商慣行上の規定に基づいております。当社は、このような規定が当社の営業活動や財務活動の柔軟性を制限しないと確信しておりますが、いくつかの借入契約においては、財務比率や純資産の最低比率の維持が求められております。さらに、主に政府系金融機関との契約においては、当社が増資や社債の発行等により資金を調達した際に、当該金融機関から、当該借入金の期限前返済を求められる可能性があり、また、一部の契約では当社の剰余金の配当等について当該金融機関の事前承認を請求される可能性があります。当社は、このような請求を受けたことはなく、今後も受けることはないと判断しております。
詳細は、「2 事業等のリスク(3) タイプ別リスク ⑬資金の流動性に関するリスク」を参照願います。
資金調達については、各金融機関との良好な関係に基づく銀行借入等の間接金融を中心に、コマーシャルペーパーや社債等の直接金融との適切なバランスに留意し、調達期間の長期化を通じた償還期日の分散等による安定的な調達構造を構築しております。また、外貨建ての資金調達については、銀行借入や外貨建て社債発行、通貨スワップの他、金融子会社、海外現地法人におけるコマーシャルペーパー、ユーロMTN等の活用によって資金調達ソースの多様化に取り組んでおります。
なお、当社は、資本市場での直接調達を目的として、以下の資金調達プログラムを設定しており、当期末時点での当社の長期及び短期の信用格付は、ムーディーズでBaa1/P-2(見通し安定的)、スタンダード&プアーズで BBB+/A-2(見通し安定的)、格付投資情報センターでA+/a-1(見通し安定的)となっております。
・3,000億円の国内及び海外公募普通社債発行登録枠
・国内における1兆円のコマーシャルペーパー発行枠
・米州住友商事により設定された、1,500百万米ドルのコマーシャルペーパープログラム
・当社、英国のSumitomo Corporation Capital Europe(以下、「SCCE」という。)、米州住友商事及びシンガポールのSumitomo Corporation Capital Asiaが共同で設定した3,000百万米ドルのユーロMTNプログラム
・SCCEが設定した1,500百万米ドルのユーロコマーシャルペーパープログラム
保有流動性については、金融市場の混乱等、複数の有事シナリオを想定し、当期末時点で現預金と国内外の主要な金融機関との総額1,260百万米ドル、及び2,850億円を上限とする以下の長期コミットメントラインを中心に、当社及び当社子会社における資金需要や1年内に期日が到来する借入や社債の償還資金等を補完する十分な流動性を確保しております。なお、当有価証券報告書の提出日までに、これらのコミットメントラインに基づく借入はありません。また、これらのコミットメントラインには、借入の実行を制限する重大なコベナンツ、格付トリガー条項などは付されておりません。なお、これらのコミットメントラインのほかに、当社は、コミットメントベースでない借入枠を有しております。
・米国及び欧州の大手銀行によるシンジケート団との間で締結した、1,060百万米ドルのマルチ・カレンシー(円・米ドル・ユーロ建)/マルチ・ボロワー(住友商事及び英国、米国、シンガポールにおける当社子会社への融資)型長期コミットメントライン
・大手米銀との間に締結した、米州住友商事への100百万米ドルの長期コミットメントライン
・大手欧銀との間に締結した、SCCEへの100百万米ドルのマルチ・カレンシー(円・米ドル・ユーロ・ポンド建)型長期コミットメントライン
・大手邦銀のシンジケート団による1,500億円の長期コミットメントライン(内、790億円はマルチ・カレンシー型)
・有力地方銀行のシンジケート団による1,350億円の長期コミットメントライン
資金調達の内訳
前期
(2020年3月31日)
(億円)
当期
(2021年3月31日)
(億円)
短期3,8901,884
借入金(主に銀行より調達)2,6821,381
コマーシャルペーパー1,208503
長期(一年以内期限到来分を含む)28,00427,238
担保付
借入金1,7922,049
無担保
借入金21,72420,672
社債4,4884,517
有利子負債合計(グロス)31,89429,122
現金及び現金同等物並びに定期預金7,2066,118
有利子負債合計(ネット)24,68823,004
資産合計81,28680,800
親会社の所有者に帰属する持分合計25,44125,280
親会社所有者帰属持分合計比率(%)31.331.3
デット・エクイティ・レシオ(グロス)(倍)1.31.2
デット・エクイティ・レシオ(ネット)(倍)1.00.9

当期末時点での当社の期限別の支払債務は、以下のとおりであります。
期限別内訳
社債及び借入金
(億円)
リース負債
(億円)
2021年度4,779711
2022年度3,255650
2023年度3,379547
2024年度3,829454
2025年度2,715344
2026年度以降11,1652,308
合計29,1225,014

当社は、資金供与に関する契約(貸付契約、出資契約)及び設備使用契約等を締結しており、当期末における契約残高は、9,591億円です。
当期末時点では、資本的支出に対する重要な契約はありません。
上述の契約に加えて、当社のビジネスに関連して、当社は、顧客の債務に対する保証などの様々な偶発債務を負っています。また、当社は、訴訟による偶発債務の影響を受ける可能性があります。これらの偶発債務に関する詳細は、「(10)偶発債務」及び「(11)訴訟等」を参照願います。当社は、現状においては、それらの偶発債務がもたらす資金需要が重大なものとはならないと判断しておりますが、仮に予想に反して、当社が保証を行っている債務に重大な不履行が生じた場合、また、訴訟の結果が、当社に大きく不利なものであった場合には、新たに、大きな資金調達が必要となる可能性があります。
当社は、主に、ワーキング・キャピタル、新規や既存ビジネスへの投資や債務の返済のために、将来にわたり継続的な資金調達を行う必要があります。当社は、成長戦略として買収、株式取得または貸付による投資を行っており、当期は、有形固定資産及び投資不動産の取得に743億円、また、その他の投資の取得に1,951億円の投資を行いました。当社は、現在、全てのセグメントにおいて、既存のコア・ビジネス及び周辺分野を中心に追加投資を検討しております。
しかしながら、これらの投資は、現在、予備調査段階のものや、今後の様々な条件により、その実施が左右されるものであり、結果的に実現されない可能性もあります。また当社は、手許の現金、現在の借入枠や営業活動によるキャッシュ・インで当面必要とされる資金需要を十分に満たせると考えておりますが、それは保証されている訳ではありません。当社の営業活動によるキャッシュ・インが想定より少なかった場合、当社は、追加借入の実施、他の資金調達手段の検討、または投資計画の修正を行う可能性があります。
(10) 偶発債務
当社の取引に関連して、顧客の債務に対する保証履行のような偶発債務を負うことがあります。当社は、世界各国のサプライヤーや顧客と多種多様な営業活動を行うことにより、営業債権及び保証等に係る信用リスクを分散させており、これらに関し重大な追加損失は発生しないものと見込んでおります。
当社の当期末における保証に対する偶発債務の残高(最長期限2046年)は1,150億円で、このうち持分法適用会社の債務に対する保証が524億円、第三者の債務に対する保証が626億円です。これらの保証は主に持分法適用会社、サプライヤー、及び顧客の信用を補完するために行っているものであります。
(11) 訴訟等
当社は、事業遂行上偶発的に発生する訴訟や訴訟に至らない請求等を受けておりますが、当社の経営上、重要な影響を及ぼすものはありません。
(12) 未適用の新たな基準書及び解釈指針
連結財務諸表の承認日までに公表されている主な基準書及び解釈指針の新設または改訂は次のとおりであり、2021年3月31日現在において当社はこれらを適用しておりません。適用による当社への影響は検討中であり、現時点で見積ることはできません。
基準書基準名強制適用時期
(以降開始年度)
当社適用年度新設・改訂の概要
IFRS第4号保険契約2021年1月1日2022年3月期金利指標改革
IFRS第7号金融商品:開示2021年1月1日2022年3月期金利指標改革
IFRS第9号金融商品2021年1月1日2022年3月期金利指標改革
IFRS第10号連結財務諸表未定未定投資者とその関連会社または共同支配企業との間の資産の売却または拠出の会計処理
IFRS第16号リース2021年1月1日2022年3月期金利指標改革
IFRS第17号保険契約2023年1月1日2024年3月期保険契約の会計処理の改訂
IAS第1号財務諸表の表示2023年1月1日2024年3月期負債の流動負債又は非流動負債への分類の改訂及び会計方針の開示
IAS第8号会計方針、会計上の見積りの変更及び誤謬2023年1月1日2024年3月期会計上の見積りの定義の明確化
IAS第12号法人所得税2023年1月1日2024年3月期単一の取引から生じた資産及び負債に係る繰延税金
IAS第16号有形固定資産2022年1月1日2023年3月期意図した使用の前の収入
IAS第28号関連会社及び共同支配企業に対する投資未定未定投資者とその関連会社または共同支配企業との間の資産の売却または拠出の会計処理
IAS第37号引当金、偶発負債及び偶発資産2022年1月1日2023年3月期不利な契約-契約履行のコスト

(13) 市場リスクに関する定量的・定性的情報
当社のビジネスは、金利、外国為替レート、商品価格、株価の変動リスクを伴い、これらのリスクマネジメントを行うため、為替予約取引、通貨スワップ・オプション取引、金利スワップ・先物・オプション取引、商品先物・先渡・スワップ・オプション取引等のデリバティブを利用しております。また、後述のリスク管理体制の下、予め決められたポジション限度・損失限度枠内で、トレーディング目的のデリバティブ取引も限定的に実施しております。
金利変動リスク
当社は、事業活動の中で様々な金利変動リスクに晒されております。コーポレート部門の財務・経理・リスクマネジメント担当役員が管掌する部署では、当社のビジネスに伴う金利変動リスクをモニタリングしております。特に、金利の変動は借入コストに影響を与えます。これは、当社の借入金には変動金利で借り入れているものがあり、また、都度借換えを行う短期借入金があるためです。
しかしながら、金利変動が借入コストに与える影響は、金利変動の影響を受ける資産からの収益により相殺されます。また、当社は、金利変動リスクをミニマイズするために資産・負債の金利を調整・マッチングさせるよう、金利スワップ等のデリバティブ取引を利用しております。
為替変動リスク
当社は、グローバルなビジネス活動を行っており、各拠点の外貨建による売買取引、ファイナンス及び投資によって、為替変動リスクに晒されている場合があります。これらのうち、永続性の高い投資等を除いた取引については、為替変動リスクを軽減するために、各拠点において外貨借入・外貨預金等に加えて、第三者との間で、為替予約取引・通貨スワップ取引・通貨オプション取引等のデリバティブ取引を必要に応じ行っております。
商品市況変動リスク
当社は、貴金属、非鉄金属、燃料、及び農産物等の現物取引、並びに鉱物、石油、及びガス開発プロジェクトへの投資を行っており、関連する商品価格の変動リスクに晒されております。当社は、商品の売り繋ぎや売り買い数量・時期等のマッチング、デリバティブ等の活用によって、商品価格の変動によるリスクを減少させるよう努めております。また、予め決められたポジション限度・損失限度枠内で、トレーディング目的のデリバティブ取引も限定的に実施しております。
株価変動リスク
当社は、戦略的な目的で金融機関や顧客・サプライヤーが発行する株式等への投資を行っておりますが、これらの株式投資には株価変動リスクが伴います。これらの株式投資に関しては、継続的なヘッジ手段を講じておりません。当社が保有する市場性のある株式の当期末における公正価値は、2,717億円であります。
リスク管理体制
デリバティブや市場リスクを伴う取引を行う営業部は、取引規模に応じてマネジメントの承認を事前に取得しなければなりません。マネジメントは、場合によってはデリバティブについて専門的知識を有するスタッフのサポートを得て、案件の要否を判断し、当該申請における、取引の目的、利用市場、取引相手先、与信限度、取引限度、損失限度を明確にします。
財務・経理・リスクマネジメント担当役員が管掌する部署は、取引の実施・モニタリングに際して、以下の機能を提供しております。
・金融商品及び市況商品のデリバティブに関する口座開設、取引確認、代金決済と引渡し、帳簿記録の保管等のバックオフィス業務
・ポジション残高の照合
・ポジションのモニタリングと全社ベースでの関連取引のリスク分析・計測、シニアマネジメントへの定期的な報告
当社の子会社が市況商品取引を行う際には、上記のリスク管理体制に沿うことを要求しております。