四半期報告書-第153期第3四半期(令和2年10月1日-令和2年12月31日)
(1)財政状態及び経営成績の状況
企業環境
当第3四半期累計の世界経済は、新型コロナウイルスの影響による停滞から、緩やかに持ち直しつつあります。欧米では、各地で制限措置が段階的に解除され、経済活動が再開する動きが広がりつつある一方で、感染拡大が続く国・地域や再度制限が導入される国・地域があるなど、非常事態下でヒト・モノ・カネの流れに変化が生じております。米国経済は、経済活動の再開も、失業率は依然として高く、また、ユーロ圏経済も、制限強化により経済活動は低水準にとどまっております。新興国経済では、中国の回復基調が強まっている一方で、その他の国では景気回復の動きはまだら模様となっております。国際商品市況は、原油価格含め多くの商品価格で回復基調になりました。
国内経済は、内需では設備投資が弱い動きとなっている一方、個人消費は一部に足踏みがみられるものの持ち直しつつあります。外需では輸出が回復しつつあり緩やかに上向きつつあります。
業績
当第3四半期累計の収益は、前年同期に比べ6,422億円減少し、3兆2,926億円となりました。売上総利益は、電力EPC案件のピークアウトや工事遅延に伴う追加コストを計上したことに加え、ボリビア銀・亜鉛・鉛事業で販売数量の減少などにより減益となったことなどから、前年同期に比べ1,150億円減少し、5,430億円となりました。販売費及び一般管理費は、前年同期に比べ57億円減少し、4,865億円となりました。固定資産損益は、欧米州青果事業や鋼管事業において減損損失を計上したことなどから、前年同期に比べ608億円減少し、611億円の損失となりました。有価証券損益は、前年同期に資産入替に伴う一過性利益を計上したことの反動などから、前年同期に比べ150億円減少し、5億円の利益となりました。持分法による投資損益は、マダガスカルニッケル事業及びインドネシア自動車金融事業で減損損失を計上したことなどから、前年同期に比べ1,623億円減少し、714億円の損失となりました。これらの結果、親会社の所有者に帰属する四半期損益は1,137億円の損失となり、前年同期に比べ3,251億円の減益となりました。また、基礎収益(注)は236億円の損失となり、前年同期に比べ2,292億円の減益となりました。
なお、親会社の所有者に帰属する四半期損益のセグメント別の状況は次のとおりです。
・金属事業部門では、海外スチールサービスセンター事業や北米鋼管事業が減益となったことに加え、鋼管事業で減損損失を計上したことなどから、前年同期に比べ246億円減益の98億円の損失となりました。
・輸送機・建機事業部門では、リース事業、自動車関連事業などが減益となったことに加え、インドネシア自動車金融事業で減損損失や現地政府の新型コロナウイルス緊急対策導入に伴う返済猶予等に関する引当金などの一過性損失を計上したことなどから、前年同期に比べ503億円減益の151億円の損失となりました。
・インフラ事業部門では、大型EPC案件のピークアウトや工事遅延に伴う追加コストを計上したことに加え、豪州発電事業やUAE発電・造水事業で減損損失などの一過性損失を計上したことなどから、前年同期に比べ709億円減益の261億円の損失となりました。
・メディア・デジタル事業部門では、主要事業会社が堅調に推移したことなどから、前年同期に比べ12億円増益の296億円となりました。
・生活・不動産事業部門では、不動産事業が堅調に推移したことに加え、国内スーパーマーケット事業が好調に推移した一方、欧米州青果事業で減損損失を計上したことなどから、前年同期に比べ507億円減益の149億円の損失となりました。
・資源・化学品事業部門では、資源価格の下落などにより豪州石炭事業が減益となったことや、鉱山操業停止の影響によりマダガスカルニッケル事業、ボリビア銀・亜鉛・鉛事業が減益となったことに加え、マダガスカルニッケル事業で848億円の減損損失を計上したことなどから、前年同期に比べ1,294億円減益の825億円の損失となりました。
(注) 基礎収益=(売上総利益+販売費及び一般管理費(除く貸倒引当金繰入額)+利息収支+受取配当金)×(1-税率)+持分法による投資損益
当第3四半期末の資産合計は、営業資産が減少したことに加え、複数の案件で減損損失を計上したことなどから、前期末に比べ3,500億円減少し、7兆7,786億円となりました。
資本のうち親会社の所有者に帰属する持分合計は、親会社の所有者に帰属する四半期損失を認識したことや配当金の支払があったことなどから、前期末に比べ1,600億円減少し、2兆3,842億円となりました。
現預金ネット後の有利子負債(注1)は、前期末に比べ1,506億円減少し、2兆3,182億円となりました。
この結果、ネットのデット・エクイティ・レシオ(有利子負債(ネット)/親会社の所有者に帰属する持分合計)は、1.0倍となりました。
(注1)有利子負債=社債及び借入金(流動・非流動)の合計 (リース負債は含まれておりません)
(2)キャッシュ・フローの状況
営業活動によるキャッシュ・フローは、運転資金の減少に加え、コアビジネスが資金を創出し、基礎収益キャッシュ・フロー(注2)が1,173億円のキャッシュ・インとなったことなどから、合計で3,323億円のキャッシュ・インとなりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、メキシコ完成車製造事業や米国タイトオイル・シェールガス事業の売却など、資産入替による回収が約800億円あった一方で、東南アジア建機販売・レンタル事業の買収やSCSKにおける設備投資など、約1,600億円の投融資を行ったことなどから、646億円のキャッシュ・アウトとなりました。
これらの結果、営業活動によるキャッシュ・フローに投資活動によるキャッシュ・フローを加えたフリーキャッシュ・フローは、2,676億円のキャッシュ・インとなりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、借入金の返済や配当金の支払などにより、3,439億円のキャッシュ・アウトとなりました。
以上の結果、現金及び現金同等物の当第3四半期末残高は、前期末に比べ812億円減少し、6,292億円となりました。
(注2)基礎収益キャッシュ・フロー=基礎収益-持分法による投資損益+持分法投資先からの配当
(3)会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定に関しては、「第4 経理の状況 要約四半期連結財務諸表注記 4 見積り及び判断の利用」を参照願います。
(4)事業上及び財務上の対処すべき課題
「中期経営計画2020」の概要
当社の中期経営計画に関する以下の説明は、数々の判断、見積り、前提に基づき算出された今後の見通しに関するものです。なお、文中における将来に関する情報は、別段の記載がない限り、当四半期報告書提出日現在における当社の判断、目標、一定の前提または仮定に基づく予想等であり、将来そのとおりに実現する保証はありません。
① 基本方針
当社は、2018年4月より2018年度から2020年度までの3か年を対象とする「中期経営計画2020」をスタートさせ、目標達成に向けて取組んでおります。「中期経営計画2020」では、第四次産業革命などの産業構造の変化や全産業のボーダーレス化・複合化が加速する環境下において、経営基盤の強化を図りながら、成長戦略の推進を中心に据え、新たな価値創造への飽くなき挑戦に取り組んでいます。
具体的には、既存事業を徹底的に強化する「既存事業のバリューアップ」、中長期視点での「次世代新規ビジネス創出」及び有力な事業基盤・機能を掛合わせる「プラットフォーム事業の連携深化」の3つの施策を中心に取組むことで、成長戦略を推進しております。また、「ガバナンスの高度化」、「人材戦略の高度化」、「財務健全性の向上」を通じて、経営基盤の更なる強化を図っております。
② 2020年度における取り組み
当期は危機対応モードのもと、次期中期経営計画を見据えた構造改革を推進しております。短期、中期、長期それぞれの時間軸ごとの具体的な取り組み状況は以下のとおりです。
短期的には、資産入替を加速させており、当期末までに40社程度の資産入替を実現予定です。また、事業会社の収益性改善を促進する取り組みを進めており、資産入替及び不採算事業のターンアラウンドによる収益改善効果として今後2~3年で2019年度比300億円超を見込み、大型案件のターンアラウンド実現も含め500億円超の収益改善を目指しております。加えて、投融資の厳選、コスト削減にも徹底して取り組んでおります。
次に、中期的な取り組みとしては、全社のビジネスを戦略単位ごとの戦略ビジネスユニット(SBU)に分け、今後成長が見込まれるSBUを明確にし、経営資源を集中的に投下することで当社グループのビジネスポートフォリオの強化につなげていきます。また、新たなコア事業の創出に向けて検討を重ねており、次期中期経営計画では、長期的に取り組むべき分野として「次世代エネルギー分野」などを成長分野として特定する予定であり、当社としても水素事業部を立ち上げるなど当該分野に取り組んでいく上での体制の強化を進めております。
最後に、長期的な取り組みとして、社会のサステナビリティを軸とした成長戦略の実行により、ポートフォリオの転換を図ります。重要社会課題に対する中期目標及びKPIを設定し、社会課題の解決に向けた取り組みを推進するとともに、社会課題の長期的な動向を踏まえた経営を通じて、企業価値の向上を図ります。
③ 定量計画
世界経済は、財政・金融政策効果もあり、新型コロナウイルス感染拡大が収束に向かうにつれ、緩やかな回復基調が続く見通しです。先進国では、感染再拡大により厳しい状況下にありますが、ワクチン接種の開始もあり、緩やかな回復の動きが続くとみられます。新興国のうち、中国では引き続き力強い回復が見込まれる一方、感染拡大が継続している国では当面、景気回復は緩慢にとどまる見込みです。リスクとして、ワクチン普及の遅延、感染再拡大とそれに伴う経済活動制限の長期化、政治・社会情勢の変化に伴う不確実性の高まり、債務拡大、地政学的リスクの高まりなどが挙げられます。
このような環境下、当社では、当第2四半期決算発表時に想定していた以上の一過性損失が発生する見込みである一方で、一過性を除く業績は当第2四半期以降着実に回復してきていることを踏まえ、2020年度通期連結業績見通しを以下のとおり修正しております。
一過性損益については、当第3四半期までにマダガスカルニッケル事業、欧米州青果事業における減損損失など△2,440億円を認識済みですが、当第4四半期にも追加の減損損失や、構造改革費用などの一過性損失が発生する見込みであることから、通期では、当第2四半期決算発表時に公表した△2,500億円から△500億円下方修正し、△3,000億円を見込んでおります。
一過性を除く業績については、事業環境の改善などを取り込み、当第3四半期累計で1,300億円と着実に回復してきていることから、通期では当第2四半期決算発表時に公表した1,000億円から800億円上方修正し、1,800億円を見込んでおります。なお、セグメント毎の一過性を除く業績の当期末までの見立ては以下のとおりです。
・金属事業部門では、鋼材ビジネスでは自動車関連を中心に回復を見込む一方、鋼管ビジネスにおいては需要低迷により北米を中心に厳しい環境が継続する見込みです。
・輸送機・建機事業部門では、自動車関連事業では、回復基調が継続するものの、当第4四半期に構造改革費用を見込んでいるほか、インドネシア自動車金融事業においては新規成約が減少しており、今年度中は新型コロナウイルスの影響が継続する見込みです。
・インフラ事業部門では、大型EPC案件がピークアウトする見込みです。
・メディア・デジタル事業部門では、主要事業会社が堅調に推移する見込みです。
・生活・不動産事業部門では、不動産事業において当第4四半期に物件の引き渡しを見込んでいる一方、欧米州青果事業は低調に推移する見込みです。
・資源・化学品事業部門では、南アフリカ鉄鉱石事業で当第4四半期に持分利益の取り込みがあることに加え、マダガスカルニッケル事業では2021年3月を目途に操業再開を見込むほか、化学品・エレクトロニクスは堅調に推移する見込みです。
財務方針としては、引き続きコア・リスクバッファーとリスクアセットのバランス(注)を維持することに加え、財務健全性向上のため、3年合計の配当後フリーキャッシュ・フローを2,000億円の黒字とし、有利子負債の返済に充てる計画としております。
(注) 「コア・リスクバッファー」とは、「資本金」、「剰余金」及び「在外営業活動体の換算差額」の和から「自己株式」を差引いて得られる数値で、当社は、最大損失可能性額である「リスクアセット」を「コア・リスクバッファー」の範囲内に収めることを経営の基本としています。
④ 配当方針
当社は、株主の皆様に対して長期にわたり安定した配当を行うことを基本方針としつつ、中長期的な利益成長による配当額の増加を目指して取り組んでおります。
2020年度通期連結業績見通しは1,200億円の損失を見込んでおりますが、長期にわたる安定配当という基本方針に加え、一過性損失の大部分がキャッシュの流出を伴わない損失であること、また、1,200億円の損失を計上した場合でも、リスクアセットとコア・リスクバッファーのバランスを維持できる見込みであることを踏まえ、当期の予想年間配当金につきましては、2019年度決算発表時(2020年5月8日)に公表した1株当たり70円から変更ありません。なお、このうち、中間配当金35円につきましては実施済みであり、期末配当金は35円となる予定です。
住友商事グループのサステナビリティ経営の高度化
当社は、社会とともに持続的に成長するためのサステナビリティ経営の高度化の一環として、当社に関わりが深い6つの重要社会課題を選び、それに紐づく長期目標を定めました。
当社は、住友の事業精神、住友商事グループの経営理念・行動指針を踏まえて、2017年にマテリアリティを特定して、当社グループの事業と社会とのかかわりを明確にし、一つ一つの事業が社会の抱える様々な課題の解決に貢献することを意識した経営を行ってきました。
今般定めた重要社会課題は、住友商事グループのサステナビリティ経営を一歩進め、自らの強みである人的リソースやビジネスノウハウ、グローバルなネットワークやビジネスリレーションを活かして、持続可能な社会の実現にどのような役割を果たすのかを、より明確にコミットするためのものです。
重要社会課題は、社会の発展の基礎であり、住友商事の事業活動の前提である「社会の持続可能性」と、持続可能な社会の実現に必要なソリューションを生み出す「社会の発展と進化」という、相互に関連する二つのテーマから成っています。
当社は今後、重要社会課題に対する中期目標並びにKPI(注)を設定し各課題への取り組みを推進するとともに、その進捗を開示します。
(注) Key Performance Indicator
■住友商事グループの重要社会課題と長期目標
*『マテリアリティ』とは住友商事グループが社会とともに持続的に成長するために優先的に取り組むべき課題として特定したもの。
■住友商事グループのサステナビリティ経営
住友商事グループの目指すサステナビリティ経営の高度化は、重要社会課題や目標の設定にとどまりません。
我々の社会が直面する課題の解決に向けて、住友商事グループの果たす役割を明確にコミットすることに加え、社会課題を巡る長期的な事業環境変化を見通して、戦略的に経営資源を配分し、社会が真に必要とする価値を創り出していきます。
持続可能な社会の実現と自らの持続的な成長がしっかりと重なった姿が住友商事グループのサステナビリティ経営です。

(5)研究開発活動
特記事項はありません。
(6)資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社は、一般的に、営業活動によるキャッシュ・フローや、銀行借入、資本市場における社債発行、及びコマーシャルペーパーの発行等により、資金調達を行っております。当社の財務運営の方針・目的は、中長期にわたり、安定的かつ低利な資金調達を行うこと、及び十分な流動性を保持することです。
当社は当第3四半期において総額2兆9,566億円の有利子負債を有しております。このうち流動負債に区分される社債及び借入金は、前期末比1,663億円減少の5,884億円となっており、主な内訳は短期借入金(主として銀行借入金)1,735億円、コマーシャルペーパー985億円、1年以内に返済予定の長期借入金3,054億円となっております。
また、流動性については、従来、金融市場の混乱等、いくつかの有事シナリオを想定の上、必要な流動性額の保持につとめており、当第3四半期末時点においても十分な流動性を保持しております。
当社は、当第3四半期末時点で、総額1,260百万米ドル及び2,850億円を上限とする即時に借入可能な複数のコミットメントラインを締結しておりますが、当第3四半期末時点で、これらのコミットメントラインに基づく借入はありません。また、これらのコミットメントラインには、借入の実行を制限する重大なコベナンツ、格付トリガー条項などは付されておりません。なお、これらのコミットメントラインのほかに、当社は、コミットメントベースでない借入枠を有しております。
当社は、資本市場での直接調達を目的として、国内外で複数の資金調達プログラムを設定しております。当第3四半期末時点での当社の長期及び短期の信用格付は、ムーディーズでBaa1/P-2(見通し安定的)、スタンダード&プアーズでBBB+/A-2(見通し安定的)、格付投資情報センターでA+/a-1(見通し安定的)となっております。
(7)仕入、成約及び販売の状況
当第3四半期累計において、北米鋼管事業における販売数量減少及び大型EPC案件のピークアウト等により前年同期と比較し収益が大幅に減少しております。
企業環境
当第3四半期累計の世界経済は、新型コロナウイルスの影響による停滞から、緩やかに持ち直しつつあります。欧米では、各地で制限措置が段階的に解除され、経済活動が再開する動きが広がりつつある一方で、感染拡大が続く国・地域や再度制限が導入される国・地域があるなど、非常事態下でヒト・モノ・カネの流れに変化が生じております。米国経済は、経済活動の再開も、失業率は依然として高く、また、ユーロ圏経済も、制限強化により経済活動は低水準にとどまっております。新興国経済では、中国の回復基調が強まっている一方で、その他の国では景気回復の動きはまだら模様となっております。国際商品市況は、原油価格含め多くの商品価格で回復基調になりました。
国内経済は、内需では設備投資が弱い動きとなっている一方、個人消費は一部に足踏みがみられるものの持ち直しつつあります。外需では輸出が回復しつつあり緩やかに上向きつつあります。
業績
当第3四半期累計の収益は、前年同期に比べ6,422億円減少し、3兆2,926億円となりました。売上総利益は、電力EPC案件のピークアウトや工事遅延に伴う追加コストを計上したことに加え、ボリビア銀・亜鉛・鉛事業で販売数量の減少などにより減益となったことなどから、前年同期に比べ1,150億円減少し、5,430億円となりました。販売費及び一般管理費は、前年同期に比べ57億円減少し、4,865億円となりました。固定資産損益は、欧米州青果事業や鋼管事業において減損損失を計上したことなどから、前年同期に比べ608億円減少し、611億円の損失となりました。有価証券損益は、前年同期に資産入替に伴う一過性利益を計上したことの反動などから、前年同期に比べ150億円減少し、5億円の利益となりました。持分法による投資損益は、マダガスカルニッケル事業及びインドネシア自動車金融事業で減損損失を計上したことなどから、前年同期に比べ1,623億円減少し、714億円の損失となりました。これらの結果、親会社の所有者に帰属する四半期損益は1,137億円の損失となり、前年同期に比べ3,251億円の減益となりました。また、基礎収益(注)は236億円の損失となり、前年同期に比べ2,292億円の減益となりました。
なお、親会社の所有者に帰属する四半期損益のセグメント別の状況は次のとおりです。
・金属事業部門では、海外スチールサービスセンター事業や北米鋼管事業が減益となったことに加え、鋼管事業で減損損失を計上したことなどから、前年同期に比べ246億円減益の98億円の損失となりました。
・輸送機・建機事業部門では、リース事業、自動車関連事業などが減益となったことに加え、インドネシア自動車金融事業で減損損失や現地政府の新型コロナウイルス緊急対策導入に伴う返済猶予等に関する引当金などの一過性損失を計上したことなどから、前年同期に比べ503億円減益の151億円の損失となりました。
・インフラ事業部門では、大型EPC案件のピークアウトや工事遅延に伴う追加コストを計上したことに加え、豪州発電事業やUAE発電・造水事業で減損損失などの一過性損失を計上したことなどから、前年同期に比べ709億円減益の261億円の損失となりました。
・メディア・デジタル事業部門では、主要事業会社が堅調に推移したことなどから、前年同期に比べ12億円増益の296億円となりました。
・生活・不動産事業部門では、不動産事業が堅調に推移したことに加え、国内スーパーマーケット事業が好調に推移した一方、欧米州青果事業で減損損失を計上したことなどから、前年同期に比べ507億円減益の149億円の損失となりました。
・資源・化学品事業部門では、資源価格の下落などにより豪州石炭事業が減益となったことや、鉱山操業停止の影響によりマダガスカルニッケル事業、ボリビア銀・亜鉛・鉛事業が減益となったことに加え、マダガスカルニッケル事業で848億円の減損損失を計上したことなどから、前年同期に比べ1,294億円減益の825億円の損失となりました。
(注) 基礎収益=(売上総利益+販売費及び一般管理費(除く貸倒引当金繰入額)+利息収支+受取配当金)×(1-税率)+持分法による投資損益
当第3四半期末の資産合計は、営業資産が減少したことに加え、複数の案件で減損損失を計上したことなどから、前期末に比べ3,500億円減少し、7兆7,786億円となりました。
資本のうち親会社の所有者に帰属する持分合計は、親会社の所有者に帰属する四半期損失を認識したことや配当金の支払があったことなどから、前期末に比べ1,600億円減少し、2兆3,842億円となりました。
現預金ネット後の有利子負債(注1)は、前期末に比べ1,506億円減少し、2兆3,182億円となりました。
この結果、ネットのデット・エクイティ・レシオ(有利子負債(ネット)/親会社の所有者に帰属する持分合計)は、1.0倍となりました。
(注1)有利子負債=社債及び借入金(流動・非流動)の合計 (リース負債は含まれておりません)
(2)キャッシュ・フローの状況
営業活動によるキャッシュ・フローは、運転資金の減少に加え、コアビジネスが資金を創出し、基礎収益キャッシュ・フロー(注2)が1,173億円のキャッシュ・インとなったことなどから、合計で3,323億円のキャッシュ・インとなりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、メキシコ完成車製造事業や米国タイトオイル・シェールガス事業の売却など、資産入替による回収が約800億円あった一方で、東南アジア建機販売・レンタル事業の買収やSCSKにおける設備投資など、約1,600億円の投融資を行ったことなどから、646億円のキャッシュ・アウトとなりました。
これらの結果、営業活動によるキャッシュ・フローに投資活動によるキャッシュ・フローを加えたフリーキャッシュ・フローは、2,676億円のキャッシュ・インとなりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、借入金の返済や配当金の支払などにより、3,439億円のキャッシュ・アウトとなりました。
以上の結果、現金及び現金同等物の当第3四半期末残高は、前期末に比べ812億円減少し、6,292億円となりました。
(注2)基礎収益キャッシュ・フロー=基礎収益-持分法による投資損益+持分法投資先からの配当
(3)会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定に関しては、「第4 経理の状況 要約四半期連結財務諸表注記 4 見積り及び判断の利用」を参照願います。
(4)事業上及び財務上の対処すべき課題
「中期経営計画2020」の概要
当社の中期経営計画に関する以下の説明は、数々の判断、見積り、前提に基づき算出された今後の見通しに関するものです。なお、文中における将来に関する情報は、別段の記載がない限り、当四半期報告書提出日現在における当社の判断、目標、一定の前提または仮定に基づく予想等であり、将来そのとおりに実現する保証はありません。
① 基本方針
当社は、2018年4月より2018年度から2020年度までの3か年を対象とする「中期経営計画2020」をスタートさせ、目標達成に向けて取組んでおります。「中期経営計画2020」では、第四次産業革命などの産業構造の変化や全産業のボーダーレス化・複合化が加速する環境下において、経営基盤の強化を図りながら、成長戦略の推進を中心に据え、新たな価値創造への飽くなき挑戦に取り組んでいます。
具体的には、既存事業を徹底的に強化する「既存事業のバリューアップ」、中長期視点での「次世代新規ビジネス創出」及び有力な事業基盤・機能を掛合わせる「プラットフォーム事業の連携深化」の3つの施策を中心に取組むことで、成長戦略を推進しております。また、「ガバナンスの高度化」、「人材戦略の高度化」、「財務健全性の向上」を通じて、経営基盤の更なる強化を図っております。

当期は危機対応モードのもと、次期中期経営計画を見据えた構造改革を推進しております。短期、中期、長期それぞれの時間軸ごとの具体的な取り組み状況は以下のとおりです。
短期的には、資産入替を加速させており、当期末までに40社程度の資産入替を実現予定です。また、事業会社の収益性改善を促進する取り組みを進めており、資産入替及び不採算事業のターンアラウンドによる収益改善効果として今後2~3年で2019年度比300億円超を見込み、大型案件のターンアラウンド実現も含め500億円超の収益改善を目指しております。加えて、投融資の厳選、コスト削減にも徹底して取り組んでおります。
次に、中期的な取り組みとしては、全社のビジネスを戦略単位ごとの戦略ビジネスユニット(SBU)に分け、今後成長が見込まれるSBUを明確にし、経営資源を集中的に投下することで当社グループのビジネスポートフォリオの強化につなげていきます。また、新たなコア事業の創出に向けて検討を重ねており、次期中期経営計画では、長期的に取り組むべき分野として「次世代エネルギー分野」などを成長分野として特定する予定であり、当社としても水素事業部を立ち上げるなど当該分野に取り組んでいく上での体制の強化を進めております。
最後に、長期的な取り組みとして、社会のサステナビリティを軸とした成長戦略の実行により、ポートフォリオの転換を図ります。重要社会課題に対する中期目標及びKPIを設定し、社会課題の解決に向けた取り組みを推進するとともに、社会課題の長期的な動向を踏まえた経営を通じて、企業価値の向上を図ります。
③ 定量計画
世界経済は、財政・金融政策効果もあり、新型コロナウイルス感染拡大が収束に向かうにつれ、緩やかな回復基調が続く見通しです。先進国では、感染再拡大により厳しい状況下にありますが、ワクチン接種の開始もあり、緩やかな回復の動きが続くとみられます。新興国のうち、中国では引き続き力強い回復が見込まれる一方、感染拡大が継続している国では当面、景気回復は緩慢にとどまる見込みです。リスクとして、ワクチン普及の遅延、感染再拡大とそれに伴う経済活動制限の長期化、政治・社会情勢の変化に伴う不確実性の高まり、債務拡大、地政学的リスクの高まりなどが挙げられます。
このような環境下、当社では、当第2四半期決算発表時に想定していた以上の一過性損失が発生する見込みである一方で、一過性を除く業績は当第2四半期以降着実に回復してきていることを踏まえ、2020年度通期連結業績見通しを以下のとおり修正しております。
親会社の所有者に帰属する 当期利益又は損失(△) | 基本的1株当たり 当期利益又は損失(△) | |
前回発表予想(A) | 百万円 △150,000 | 円 銭 △120.01 |
今回修正予想(B) | △120,000 | △96.01 |
増減額(B-A) | 30,000 | 24.00 |
増減率(%) | - | - |
(参考) | 前回発表予想 (A) | 今回修正予想 (B) | 増減額 (B-A) |
一過性損益 | △2,500億円 | △3,000億円 | △500億円 |
一過性を除く業績 | 1,000億円 | 1,800億円 | 800億円 |
一過性損益については、当第3四半期までにマダガスカルニッケル事業、欧米州青果事業における減損損失など△2,440億円を認識済みですが、当第4四半期にも追加の減損損失や、構造改革費用などの一過性損失が発生する見込みであることから、通期では、当第2四半期決算発表時に公表した△2,500億円から△500億円下方修正し、△3,000億円を見込んでおります。
一過性を除く業績については、事業環境の改善などを取り込み、当第3四半期累計で1,300億円と着実に回復してきていることから、通期では当第2四半期決算発表時に公表した1,000億円から800億円上方修正し、1,800億円を見込んでおります。なお、セグメント毎の一過性を除く業績の当期末までの見立ては以下のとおりです。
・金属事業部門では、鋼材ビジネスでは自動車関連を中心に回復を見込む一方、鋼管ビジネスにおいては需要低迷により北米を中心に厳しい環境が継続する見込みです。
・輸送機・建機事業部門では、自動車関連事業では、回復基調が継続するものの、当第4四半期に構造改革費用を見込んでいるほか、インドネシア自動車金融事業においては新規成約が減少しており、今年度中は新型コロナウイルスの影響が継続する見込みです。
・インフラ事業部門では、大型EPC案件がピークアウトする見込みです。
・メディア・デジタル事業部門では、主要事業会社が堅調に推移する見込みです。
・生活・不動産事業部門では、不動産事業において当第4四半期に物件の引き渡しを見込んでいる一方、欧米州青果事業は低調に推移する見込みです。
・資源・化学品事業部門では、南アフリカ鉄鉱石事業で当第4四半期に持分利益の取り込みがあることに加え、マダガスカルニッケル事業では2021年3月を目途に操業再開を見込むほか、化学品・エレクトロニクスは堅調に推移する見込みです。
財務方針としては、引き続きコア・リスクバッファーとリスクアセットのバランス(注)を維持することに加え、財務健全性向上のため、3年合計の配当後フリーキャッシュ・フローを2,000億円の黒字とし、有利子負債の返済に充てる計画としております。
(注) 「コア・リスクバッファー」とは、「資本金」、「剰余金」及び「在外営業活動体の換算差額」の和から「自己株式」を差引いて得られる数値で、当社は、最大損失可能性額である「リスクアセット」を「コア・リスクバッファー」の範囲内に収めることを経営の基本としています。
④ 配当方針
当社は、株主の皆様に対して長期にわたり安定した配当を行うことを基本方針としつつ、中長期的な利益成長による配当額の増加を目指して取り組んでおります。
2020年度通期連結業績見通しは1,200億円の損失を見込んでおりますが、長期にわたる安定配当という基本方針に加え、一過性損失の大部分がキャッシュの流出を伴わない損失であること、また、1,200億円の損失を計上した場合でも、リスクアセットとコア・リスクバッファーのバランスを維持できる見込みであることを踏まえ、当期の予想年間配当金につきましては、2019年度決算発表時(2020年5月8日)に公表した1株当たり70円から変更ありません。なお、このうち、中間配当金35円につきましては実施済みであり、期末配当金は35円となる予定です。
住友商事グループのサステナビリティ経営の高度化
当社は、社会とともに持続的に成長するためのサステナビリティ経営の高度化の一環として、当社に関わりが深い6つの重要社会課題を選び、それに紐づく長期目標を定めました。
当社は、住友の事業精神、住友商事グループの経営理念・行動指針を踏まえて、2017年にマテリアリティを特定して、当社グループの事業と社会とのかかわりを明確にし、一つ一つの事業が社会の抱える様々な課題の解決に貢献することを意識した経営を行ってきました。
今般定めた重要社会課題は、住友商事グループのサステナビリティ経営を一歩進め、自らの強みである人的リソースやビジネスノウハウ、グローバルなネットワークやビジネスリレーションを活かして、持続可能な社会の実現にどのような役割を果たすのかを、より明確にコミットするためのものです。
重要社会課題は、社会の発展の基礎であり、住友商事の事業活動の前提である「社会の持続可能性」と、持続可能な社会の実現に必要なソリューションを生み出す「社会の発展と進化」という、相互に関連する二つのテーマから成っています。
当社は今後、重要社会課題に対する中期目標並びにKPI(注)を設定し各課題への取り組みを推進するとともに、その進捗を開示します。
(注) Key Performance Indicator
■住友商事グループの重要社会課題と長期目標

■住友商事グループのサステナビリティ経営
住友商事グループの目指すサステナビリティ経営の高度化は、重要社会課題や目標の設定にとどまりません。
我々の社会が直面する課題の解決に向けて、住友商事グループの果たす役割を明確にコミットすることに加え、社会課題を巡る長期的な事業環境変化を見通して、戦略的に経営資源を配分し、社会が真に必要とする価値を創り出していきます。
持続可能な社会の実現と自らの持続的な成長がしっかりと重なった姿が住友商事グループのサステナビリティ経営です。

(5)研究開発活動
特記事項はありません。
(6)資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社は、一般的に、営業活動によるキャッシュ・フローや、銀行借入、資本市場における社債発行、及びコマーシャルペーパーの発行等により、資金調達を行っております。当社の財務運営の方針・目的は、中長期にわたり、安定的かつ低利な資金調達を行うこと、及び十分な流動性を保持することです。
当社は当第3四半期において総額2兆9,566億円の有利子負債を有しております。このうち流動負債に区分される社債及び借入金は、前期末比1,663億円減少の5,884億円となっており、主な内訳は短期借入金(主として銀行借入金)1,735億円、コマーシャルペーパー985億円、1年以内に返済予定の長期借入金3,054億円となっております。
また、流動性については、従来、金融市場の混乱等、いくつかの有事シナリオを想定の上、必要な流動性額の保持につとめており、当第3四半期末時点においても十分な流動性を保持しております。
当社は、当第3四半期末時点で、総額1,260百万米ドル及び2,850億円を上限とする即時に借入可能な複数のコミットメントラインを締結しておりますが、当第3四半期末時点で、これらのコミットメントラインに基づく借入はありません。また、これらのコミットメントラインには、借入の実行を制限する重大なコベナンツ、格付トリガー条項などは付されておりません。なお、これらのコミットメントラインのほかに、当社は、コミットメントベースでない借入枠を有しております。
当社は、資本市場での直接調達を目的として、国内外で複数の資金調達プログラムを設定しております。当第3四半期末時点での当社の長期及び短期の信用格付は、ムーディーズでBaa1/P-2(見通し安定的)、スタンダード&プアーズでBBB+/A-2(見通し安定的)、格付投資情報センターでA+/a-1(見通し安定的)となっております。
(7)仕入、成約及び販売の状況
当第3四半期累計において、北米鋼管事業における販売数量減少及び大型EPC案件のピークアウト等により前年同期と比較し収益が大幅に減少しております。