有価証券報告書-第109期(2023/04/01-2024/03/31)
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 経営成績の状況
当連結会計年度における世界経済は、ウクライナおよび中東情勢の長期化、欧米におけるインフレおよびそれに伴う金融引締め政策の継続、また中国における不動産市場の停滞などから景気減速が懸念される状況となっております。
当社グループがビジネスを展開する地域を概観すると、グレーターチャイナでは、不動産市場の停滞が個人消費を押し下げていることから景気が減速しております。米州では、物価上昇が継続するもペースは鈍化しており、個人消費の増加や雇用増などによる景気の持ち直しが続く見通しです。アセアンでは、内需・インバウンドを中心に景気は堅調に推移しております。日本では、マイナス金利政策解除による金利上昇や地政学リスクなどによる為替の急激な変動、消費節約志向の高まりといった下振れ要因があるものの、実質賃金の改善、企業の設備投資の底堅さ、インバウンド需要の継続など引き続き景気回復が期待されます。
このような状況の下、当連結会計年度の業績は次のとおりとなりました。
・当連結会計年度の業績は、為替が円安に推移したこともあり、売上総利益は増益となりました。
・営業利益は、売上総利益は増加したものの、販売費及び一般管理費が増加したことにより減益となりました。詳細は以下のセグメント別の業績をご覧ください。
・親会社株主に帰属する当期純利益については、投資有価証券評価損の減少があったものの、12億円減少の224億円となりました。
セグメント別の業績および主な要因は、次のとおりであります。
なお、当連結会計年度の2023年10月1日より、報告セグメントの区分を一部変更しており、前年同期比の金額および比率については、前連結会計年度を当連結会計年度において用いた報告セグメントの区分に組み替えて算出しております。
※セグメント区分の変更の詳細については「第5経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(セグメント情報等)」をご参照ください。
機能素材
・塗料原料の販売が減少
・半導体関連等の電子業界向けの原料販売が減少
・情報印刷関連材料は製造業の収益性が低下し、販売も減少
・営業利益は売上総利益の減少を受け、減益
加工材料
・OA・ゲーム機器業界等向けの樹脂販売は需要の減少および顧客の在庫調整の影響等により、減少
・営業利益は売上総利益の減少を受け、減益
電子・エネルギー
・半導体市況の悪化はあるものの、商材の拡充により半導体業界向け材料販売が増加
・変性エポキシ樹脂関連は主にハイエンドサーバー用の半導体向け、モバイル機器向けの需要増加により、販売が増加
・電子デバイス向けフォトリソ材料の販売が増加
・営業利益は売上総利益の増加を受け、増益
モビリティ
・自動車生産台数の増加および既存顧客向けへのシェア拡大等により樹脂の販売が増加
・内外装・電動化用途の機能素材・機能部品の販売が増加
・営業利益は売上総利益の増加を受け、増益
生活関連
・Prinovaグループはユタ新工場の稼働もあり、全体として販売が増加
・ナガセヴィータ㈱(2024年4月1日に㈱林原から社名変更)は主に香粧品素材の販売が増加
・中間体・医薬品原料の販売が増加
・営業利益は売上総利益が増加したものの、主にPrinovaグループの人件費等の一般管理費の増加、ユタ新工場の利益貢献の遅れ等の影響により、減益
その他
特記すべき事項はありません。
② 財政状態の状況
・流動資産は、棚卸資産の減少があったものの、現預金および売掛金の増加等により増加
・固定資産は、投資有価証券の時価上昇、有形固定資産および無形固定資産の増加等により増加
・負債は、短期借入金の返済による減少があったものの、買掛金、未払法人税等およびリース債務等の増加等により増加
・純資産は、自己株式の取得および配当金の支払いによる減少等があったものの、親会社株主に帰属する当期純利益の計上、その他有価証券評価差額金および為替換算調整勘定の増加等により増加
・以上の結果、自己資本比率は前連結会計年度末の48.2%から49.7%へ1.5ポイント上昇
③ キャッシュ・フローの状況
(単位:百万円)
・営業活動による資金の増加額は、法人税等の支払額88億円があったものの、運転資本の減少による資金の増加330億円、税金等調整前当期純利益326億円の計上および減価償却費による資金留保139億円があったこと等によるもの
・投資活動による資金の減少額は、投資有価証券の売却による収入71億円があったものの、有形固定資産の取得による支出140億円および無形固定資産の取得による支出37億円があったこと等によるもの
・財務活動による資金の減少額は、短期借入金の純減少224億円、配当金の支払額92億円、自己株式の取得による支出80億円および連結の範囲の変更を伴わない子会社株式の取得による支出60億円があったこと等によるもの
④ 販売の状況
「① 経営成績の状況」および「第5経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(セグメント情報等)」をご参照願います。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
① 重要な会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に際し、資産、負債、収益、費用の報告数値に影響を与える見積りおよび仮定を用いておりますが、見積り特有の不確実性があるため実際の結果は異なる可能性があります。連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積りおよび仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。
・ 有形固定資産および無形固定資産の減損評価
当社は、のれんを含む有形・無形固定資産の価値が毀損していないかどうかを確認するために、各資産または資産グループの減損兆候の有無を調査した上で、割引前将来キャッシュ・フローに基づき減損損失の認識の判定を行っております。その結果、減損損失の認識が必要と判断された場合には、資産の帳簿価額のうち回収不能部分について減損損失を計上しております。
この減損損失の認識・測定に用いる将来キャッシュ・フローの基礎となる事業計画や使用価値の算定に用いる割引率等は、その性質上会計上の判断や仮定を伴うものでありますが、割引前将来キャッシュ・フローや回収可能価額の下落を引き起こすような事業環境の変化により見積りの見直しが必要になった場合には、追加的な減損損失が発生する可能性があります。
当連結会計年度においては、機能素材セグメントの情報印刷関連材料ビジネスに属する連結子会社の福井山田化学工業㈱(以下、福井山田)のカラーフォーマー製造事業等に係る有形・無形固定資産(事業用資産)について減損損失を計上しました。
福井山田は、テクノポート福井に所在し、レシート、チケット等の情報印刷用紙に使用されるカラーフォーマーの製造・販売を中核事業として行っております。
福井山田を取り巻く足元の事業環境は、海外市場を中心としたサプライチェーン上の在庫過多による需要減少、および、中国メーカーの台頭・価格競争の激化による販売価格下落の影響を受け、非常に厳しい状況となっております。このような事業環境のもと、2024年3月期において営業損失を計上し、さらに、将来の事業計画を見直した結果、将来キャッシュ・フローの見積りの総額が資産グループの帳簿価額を下回ったことから当連結会計年度において事業用資産の減損損失を計上することになりました。
当該減損損失の測定にあたっては、使用価値と正味売却価額を比較した結果、回収可能価額として正味売却価額を用いております。
使用価値(福井山田の最新の事業計画を基礎とし、将来の不確実性を加味して見積もった将来キャッシュ・フローの割引現在価値)の算定における主要な仮定は事業計画に含まれる主要製品であるカラーフォーマーの販売数量、販売単価、機能性色素等の新規開発案件の売上高であります。また、正味売却価額の算定における主要な仮定は福井山田が所在する土地の時価評価額であります。
詳細については「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記情報(連結損益計算書関係)および (セグメント情報等) 関連情報 報告セグメントごとの固定資産の減損損失に関する情報」をご参照ください。
・ 繰延税金資産の回収可能性の判断
繰延税金資産は、事業計画に基づき納税主体毎の将来の課税所得の見積りを行った上で、将来の税金支払額を軽減する効果が認められる範囲において計上しております。したがって、将来の課税所得が大きく減少するような事業環境の変化が生じた場合には、繰延税金資産を取崩し、当該期間の税金費用を増加させる可能性があります。
・ 退職給付に係る負債および資産の測定
当社グループの従業員に対する確定給付型退職給付制度について、退職給付債務と年金資産の差額を連結貸借対照表上退職給付に係る負債(または資産)に計上しております。退職給付債務は、簡便法を採用している場合を除き、退職率、死亡率、割引率等の基礎率を設定して算定しますが、特に割引率が重要な仮定であります。割引率は安全性の高い債券(一定格付以上の社債)の利回りを基礎として適宜見直しを行っております。なお、当連結会計年度末では1.6%(加重平均値)を設定しています。
年金資産に係る主な仮定は長期期待運用収益率であり、現在および予想される年金資産の配分と、年金資産を構成する多様な資産からの現在および将来期待される長期の収益率を考慮して適宜見直しを行っております。なお、当連結会計年度末では2.0%を設定しております。
この割引率を含む基礎率を見直した場合や、見積りと実績に差額が生じた場合は数理計算上の差異が発生し、主に発生時の翌連結会計年度に全額費用処理しております。従って、多額の数理計算上の差異が発生した場合には、将来の経営成績に影響を及ぼす可能性があります。詳細については「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記情報(退職給付関係)」をご参照ください。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、下記文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
A)財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度の経営成績等につきましては、「(1)経営成績等の状況の概況 ①経営成績の状況 ②財政状態の状況 ③キャッシュ・フローの状況 ④販売の状況」をご参照ください。
事業ポートフォリオの観点では、成長ストーリーと各領域において注力する分野を明確化し、今後の成長をより確実なものとするために事業ポートフォリオを機能軸で再整理いたしました。また、不採算事業の整理などの Quick Win施策を実施することで収益性の向上を推し進めております。詳細につきましては、「1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(2)中期経営計画 ACE 2.0」をご参照ください。
また、前年度から引き続き政策保有株式の売却を実施し、特別利益を計上しております。なお、ここから得られた資金は将来に向けた成長投資や株主還元等に効果的・効率的に活用し、収益力の向上を図ることに加え、資本効率性を高めることで、企業価値の向上を図ります。
B)当社グループの経営成績等に重要な影響を与える要因
「3.事業等のリスク」をご参照ください。
C)キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に関する情報
当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、「第3 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績の状況 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性につきましては、以下のとおりであります。
当社グループの資金需要は商品の仕入、製造費、販売費、研究開発などの一般管理費、設備投資、デジタルマーケティングなどへの新規成長投資、M&Aによる株式や営業権取得が主なものです。持続的成長の実現に向け、これらの資金需要に対応するための安定的かつ機動的な資金の確保は重要な戦略と考えています。
資本の財源としましては、営業活動によるキャッシュ・フローに加え、資金調達手段として金融機関からの借入の実施、社債ならびにコマーシャル・ペーパーの機動的な発行による資本市場からの調達など、多様化を図りながらバランスの良い調達を実施しております。
また、金融・資本市場における不測の事態や急な資金需要が発生した場合に備え、複数の金融機関と長期・短期のコミットメントライン契約を締結し流動性を確保しております。
当社グループの資金管理については日本国内における当社と国内子会社間においては日本円、中国国内の現地法人間においては人民元および米ドル、また米国と一部アジア地区およびメキシコにおける現地法人間においては米ドルのキャッシュ・マネジメント・システムを導入しており、資金の効率化を図ることで、流動性確保と金融費用の削減に努めております。
本報告書提出時点における格付けについては、株式会社格付投資情報センター(R&I)から発行体格付と長期債格付ともに「A」(シングルAフラット)を、短期格付で「a-1」(aワン)を取得しており、また取引先金融機関とは良好な関係を維持しております。
現状の資金調達および資金繰りに問題はないと認識しておりますが、外部環境の変化により資金需要が高まる場合は、手元流動性を厚めに保有するなどの手段を講じる場合があります。
D)経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の達成・進捗状況について
中期経営計画 ACE 2.0における重要指標は以下のとおりです。

ACE 2.0の基本方針、定量目標および実績、取り組み状況については、「1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(2)中期経営計画 ACE 2.0」をご参照ください。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 経営成績の状況
当連結会計年度における世界経済は、ウクライナおよび中東情勢の長期化、欧米におけるインフレおよびそれに伴う金融引締め政策の継続、また中国における不動産市場の停滞などから景気減速が懸念される状況となっております。
当社グループがビジネスを展開する地域を概観すると、グレーターチャイナでは、不動産市場の停滞が個人消費を押し下げていることから景気が減速しております。米州では、物価上昇が継続するもペースは鈍化しており、個人消費の増加や雇用増などによる景気の持ち直しが続く見通しです。アセアンでは、内需・インバウンドを中心に景気は堅調に推移しております。日本では、マイナス金利政策解除による金利上昇や地政学リスクなどによる為替の急激な変動、消費節約志向の高まりといった下振れ要因があるものの、実質賃金の改善、企業の設備投資の底堅さ、インバウンド需要の継続など引き続き景気回復が期待されます。
このような状況の下、当連結会計年度の業績は次のとおりとなりました。
(単位:百万円) | ||||
前連結会計年度 | 当連結会計年度 | 増減額 | 増減率 (%) | |
売上高 | 912,896 | 900,149 | △12,746 | △1.4 |
売上総利益 | 155,410 | 164,719 | 9,309 | 6.0 |
営業利益 | 33,371 | 30,618 | △2,753 | △8.2 |
経常利益 | 32,528 | 30,591 | △1,937 | △6.0 |
税金等調整前当期純利益 | 33,137 | 32,665 | △472 | △1.4 |
親会社株主に帰属する 当期純利益 | 23,625 | 22,402 | △1,222 | △5.2 |
・当連結会計年度の業績は、為替が円安に推移したこともあり、売上総利益は増益となりました。
・営業利益は、売上総利益は増加したものの、販売費及び一般管理費が増加したことにより減益となりました。詳細は以下のセグメント別の業績をご覧ください。
・親会社株主に帰属する当期純利益については、投資有価証券評価損の減少があったものの、12億円減少の224億円となりました。
セグメント別の業績および主な要因は、次のとおりであります。
なお、当連結会計年度の2023年10月1日より、報告セグメントの区分を一部変更しており、前年同期比の金額および比率については、前連結会計年度を当連結会計年度において用いた報告セグメントの区分に組み替えて算出しております。
※セグメント区分の変更の詳細については「第5経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(セグメント情報等)」をご参照ください。
機能素材
(単位:百万円) | ||||
前連結会計年度 | 当連結会計年度 | 増減額 | 増減率 (%) | |
売上高 | 156,161 | 146,804 | △9,356 | △6.0 |
売上総利益 | 29,889 | 28,123 | △1,765 | △5.9 |
営業利益 | 10,486 | 8,629 | △1,856 | △17.7 |
・塗料原料の販売が減少
・半導体関連等の電子業界向けの原料販売が減少
・情報印刷関連材料は製造業の収益性が低下し、販売も減少
・営業利益は売上総利益の減少を受け、減益
加工材料
(単位:百万円) | ||||
前連結会計年度 | 当連結会計年度 | 増減額 | 増減率 (%) | |
売上高 | 220,955 | 198,543 | △22,412 | △10.1 |
売上総利益 | 24,248 | 23,614 | △634 | △2.6 |
営業利益 | 7,678 | 6,804 | △874 | △11.4 |
・OA・ゲーム機器業界等向けの樹脂販売は需要の減少および顧客の在庫調整の影響等により、減少
・営業利益は売上総利益の減少を受け、減益
電子・エネルギー
(単位:百万円) | ||||
前連結会計年度 | 当連結会計年度 | 増減額 | 増減率 (%) | |
売上高 | 136,975 | 144,758 | 7,782 | 5.7 |
売上総利益 | 30,770 | 34,226 | 3,456 | 11.2 |
営業利益 | 9,273 | 11,327 | 2,053 | 22.1 |
・半導体市況の悪化はあるものの、商材の拡充により半導体業界向け材料販売が増加
・変性エポキシ樹脂関連は主にハイエンドサーバー用の半導体向け、モバイル機器向けの需要増加により、販売が増加
・電子デバイス向けフォトリソ材料の販売が増加
・営業利益は売上総利益の増加を受け、増益
モビリティ
(単位:百万円) | ||||
前連結会計年度 | 当連結会計年度 | 増減額 | 増減率 (%) | |
売上高 | 125,560 | 132,117 | 6,556 | 5.2 |
売上総利益 | 14,432 | 15,235 | 803 | 5.6 |
営業利益 | 4,794 | 4,933 | 138 | 2.9 |
・自動車生産台数の増加および既存顧客向けへのシェア拡大等により樹脂の販売が増加
・内外装・電動化用途の機能素材・機能部品の販売が増加
・営業利益は売上総利益の増加を受け、増益
生活関連
(単位:百万円) | ||||
前連結会計年度 | 当連結会計年度 | 増減額 | 増減率 (%) | |
売上高 | 273,161 | 277,779 | 4,617 | 1.7 |
売上総利益 | 55,907 | 63,436 | 7,528 | 13.5 |
営業利益 | 10,581 | 10,321 | △259 | △2.5 |
・Prinovaグループはユタ新工場の稼働もあり、全体として販売が増加
・ナガセヴィータ㈱(2024年4月1日に㈱林原から社名変更)は主に香粧品素材の販売が増加
・中間体・医薬品原料の販売が増加
・営業利益は売上総利益が増加したものの、主にPrinovaグループの人件費等の一般管理費の増加、ユタ新工場の利益貢献の遅れ等の影響により、減益
その他
特記すべき事項はありません。
② 財政状態の状況
前連結会計年度 | 当連結会計年度 | 増減 | 増減率 (%) | |
流動資産(百万円) | 530,132 | 542,470 | 12,337 | 2.3 |
固定資産(百万円) | 232,556 | 249,865 | 17,309 | 7.4 |
総資産(百万円) | 762,688 | 792,336 | 29,647 | 3.9 |
負債(百万円) | 384,300 | 391,021 | 6,720 | 1.7 |
純資産(百万円) | 378,388 | 401,315 | 22,926 | 6.1 |
自己資本比率(%) | 48.2 | 49.7 | +1.5ポイント | - |
・流動資産は、棚卸資産の減少があったものの、現預金および売掛金の増加等により増加
・固定資産は、投資有価証券の時価上昇、有形固定資産および無形固定資産の増加等により増加
・負債は、短期借入金の返済による減少があったものの、買掛金、未払法人税等およびリース債務等の増加等により増加
・純資産は、自己株式の取得および配当金の支払いによる減少等があったものの、親会社株主に帰属する当期純利益の計上、その他有価証券評価差額金および為替換算調整勘定の増加等により増加
・以上の結果、自己資本比率は前連結会計年度末の48.2%から49.7%へ1.5ポイント上昇
③ キャッシュ・フローの状況
(単位:百万円)
前連結会計年度 | 当連結会計年度 | |
営業活動によるキャッシュ・フロー | 9,414 | 72,959 |
投資活動によるキャッシュ・フロー | △8,031 | △11,627 |
財務活動によるキャッシュ・フロー | △17,247 | △48,046 |
・営業活動による資金の増加額は、法人税等の支払額88億円があったものの、運転資本の減少による資金の増加330億円、税金等調整前当期純利益326億円の計上および減価償却費による資金留保139億円があったこと等によるもの
・投資活動による資金の減少額は、投資有価証券の売却による収入71億円があったものの、有形固定資産の取得による支出140億円および無形固定資産の取得による支出37億円があったこと等によるもの
・財務活動による資金の減少額は、短期借入金の純減少224億円、配当金の支払額92億円、自己株式の取得による支出80億円および連結の範囲の変更を伴わない子会社株式の取得による支出60億円があったこと等によるもの
④ 販売の状況
「① 経営成績の状況」および「第5経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(セグメント情報等)」をご参照願います。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
① 重要な会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に際し、資産、負債、収益、費用の報告数値に影響を与える見積りおよび仮定を用いておりますが、見積り特有の不確実性があるため実際の結果は異なる可能性があります。連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積りおよび仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。
・ 有形固定資産および無形固定資産の減損評価
当社は、のれんを含む有形・無形固定資産の価値が毀損していないかどうかを確認するために、各資産または資産グループの減損兆候の有無を調査した上で、割引前将来キャッシュ・フローに基づき減損損失の認識の判定を行っております。その結果、減損損失の認識が必要と判断された場合には、資産の帳簿価額のうち回収不能部分について減損損失を計上しております。
この減損損失の認識・測定に用いる将来キャッシュ・フローの基礎となる事業計画や使用価値の算定に用いる割引率等は、その性質上会計上の判断や仮定を伴うものでありますが、割引前将来キャッシュ・フローや回収可能価額の下落を引き起こすような事業環境の変化により見積りの見直しが必要になった場合には、追加的な減損損失が発生する可能性があります。
当連結会計年度においては、機能素材セグメントの情報印刷関連材料ビジネスに属する連結子会社の福井山田化学工業㈱(以下、福井山田)のカラーフォーマー製造事業等に係る有形・無形固定資産(事業用資産)について減損損失を計上しました。
福井山田は、テクノポート福井に所在し、レシート、チケット等の情報印刷用紙に使用されるカラーフォーマーの製造・販売を中核事業として行っております。
福井山田を取り巻く足元の事業環境は、海外市場を中心としたサプライチェーン上の在庫過多による需要減少、および、中国メーカーの台頭・価格競争の激化による販売価格下落の影響を受け、非常に厳しい状況となっております。このような事業環境のもと、2024年3月期において営業損失を計上し、さらに、将来の事業計画を見直した結果、将来キャッシュ・フローの見積りの総額が資産グループの帳簿価額を下回ったことから当連結会計年度において事業用資産の減損損失を計上することになりました。
当該減損損失の測定にあたっては、使用価値と正味売却価額を比較した結果、回収可能価額として正味売却価額を用いております。
使用価値(福井山田の最新の事業計画を基礎とし、将来の不確実性を加味して見積もった将来キャッシュ・フローの割引現在価値)の算定における主要な仮定は事業計画に含まれる主要製品であるカラーフォーマーの販売数量、販売単価、機能性色素等の新規開発案件の売上高であります。また、正味売却価額の算定における主要な仮定は福井山田が所在する土地の時価評価額であります。
詳細については「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記情報(連結損益計算書関係)および (セグメント情報等) 関連情報 報告セグメントごとの固定資産の減損損失に関する情報」をご参照ください。
・ 繰延税金資産の回収可能性の判断
繰延税金資産は、事業計画に基づき納税主体毎の将来の課税所得の見積りを行った上で、将来の税金支払額を軽減する効果が認められる範囲において計上しております。したがって、将来の課税所得が大きく減少するような事業環境の変化が生じた場合には、繰延税金資産を取崩し、当該期間の税金費用を増加させる可能性があります。
・ 退職給付に係る負債および資産の測定
当社グループの従業員に対する確定給付型退職給付制度について、退職給付債務と年金資産の差額を連結貸借対照表上退職給付に係る負債(または資産)に計上しております。退職給付債務は、簡便法を採用している場合を除き、退職率、死亡率、割引率等の基礎率を設定して算定しますが、特に割引率が重要な仮定であります。割引率は安全性の高い債券(一定格付以上の社債)の利回りを基礎として適宜見直しを行っております。なお、当連結会計年度末では1.6%(加重平均値)を設定しています。
年金資産に係る主な仮定は長期期待運用収益率であり、現在および予想される年金資産の配分と、年金資産を構成する多様な資産からの現在および将来期待される長期の収益率を考慮して適宜見直しを行っております。なお、当連結会計年度末では2.0%を設定しております。
この割引率を含む基礎率を見直した場合や、見積りと実績に差額が生じた場合は数理計算上の差異が発生し、主に発生時の翌連結会計年度に全額費用処理しております。従って、多額の数理計算上の差異が発生した場合には、将来の経営成績に影響を及ぼす可能性があります。詳細については「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記情報(退職給付関係)」をご参照ください。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、下記文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
A)財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度の経営成績等につきましては、「(1)経営成績等の状況の概況 ①経営成績の状況 ②財政状態の状況 ③キャッシュ・フローの状況 ④販売の状況」をご参照ください。
事業ポートフォリオの観点では、成長ストーリーと各領域において注力する分野を明確化し、今後の成長をより確実なものとするために事業ポートフォリオを機能軸で再整理いたしました。また、不採算事業の整理などの Quick Win施策を実施することで収益性の向上を推し進めております。詳細につきましては、「1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(2)中期経営計画 ACE 2.0」をご参照ください。
また、前年度から引き続き政策保有株式の売却を実施し、特別利益を計上しております。なお、ここから得られた資金は将来に向けた成長投資や株主還元等に効果的・効率的に活用し、収益力の向上を図ることに加え、資本効率性を高めることで、企業価値の向上を図ります。
B)当社グループの経営成績等に重要な影響を与える要因
「3.事業等のリスク」をご参照ください。
C)キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に関する情報
当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、「第3 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績の状況 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性につきましては、以下のとおりであります。
当社グループの資金需要は商品の仕入、製造費、販売費、研究開発などの一般管理費、設備投資、デジタルマーケティングなどへの新規成長投資、M&Aによる株式や営業権取得が主なものです。持続的成長の実現に向け、これらの資金需要に対応するための安定的かつ機動的な資金の確保は重要な戦略と考えています。
資本の財源としましては、営業活動によるキャッシュ・フローに加え、資金調達手段として金融機関からの借入の実施、社債ならびにコマーシャル・ペーパーの機動的な発行による資本市場からの調達など、多様化を図りながらバランスの良い調達を実施しております。
また、金融・資本市場における不測の事態や急な資金需要が発生した場合に備え、複数の金融機関と長期・短期のコミットメントライン契約を締結し流動性を確保しております。
当社グループの資金管理については日本国内における当社と国内子会社間においては日本円、中国国内の現地法人間においては人民元および米ドル、また米国と一部アジア地区およびメキシコにおける現地法人間においては米ドルのキャッシュ・マネジメント・システムを導入しており、資金の効率化を図ることで、流動性確保と金融費用の削減に努めております。
本報告書提出時点における格付けについては、株式会社格付投資情報センター(R&I)から発行体格付と長期債格付ともに「A」(シングルAフラット)を、短期格付で「a-1」(aワン)を取得しており、また取引先金融機関とは良好な関係を維持しております。
現状の資金調達および資金繰りに問題はないと認識しておりますが、外部環境の変化により資金需要が高まる場合は、手元流動性を厚めに保有するなどの手段を講じる場合があります。
D)経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の達成・進捗状況について
中期経営計画 ACE 2.0における重要指標は以下のとおりです。

ACE 2.0の基本方針、定量目標および実績、取り組み状況については、「1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(2)中期経営計画 ACE 2.0」をご参照ください。