四半期報告書-第13期第3四半期(令和1年9月1日-令和1年11月30日)

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2020/01/14 11:18
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14項目
文中の将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において判断したものであります。
(1)経営成績の分析
当第3四半期連結累計期間(2019年3月1日~2019年11月30日)の日本経済は、大型台風の影響や消費増税前の駆け込みと増税後の反動により、個人消費に増減が見られるなど不安定で力強さに欠ける動きとなりました。その後、増税による影響は徐々に和らぎ、企業収益や雇用情勢に改善の動きが見られるなど緩やかな回復が続いています。
小売業界では、9月は消費増税前の駆け込みにより耐久財や高額商品を中心に売上高が大幅に増加したものの、消費増税後の10月はその反動により大幅な減少となりました。インバウンドは、為替の影響により、一時期低調となりましたが、現在は回復傾向に転じています。
このような厳しい環境の中、当社グループは“くらしの「あたらしい幸せ」を発明する。”という新しいグループビジョンの実現を目指した「2017~2021年度 中期経営計画」の3年目を迎え、小売業の枠を超えた「マルチサービスリテイラー」としての発展に向けて、既存事業の競争力と収益力の一段の強化をはかるとともに、重点3事業(クレジット金融事業、人材派遣事業、建装事業)の取り組みを行っています。
加えて、持続可能な社会への貢献と企業として持続的な成長の実現にむけたESGを重視した経営を実行するため、「低炭素社会への貢献」をはじめとする5つの重要課題を特定し、中長期の目標達成にむけた行動計画の立案など全社的な取り組みを進めております。また、当社グループは金融安定理事会が設置した「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の最終報告書(TCFD提言)に賛同するとともに、5月に設立された「TCFDコンソーシアム」に参画いたしました。10月には、当社グループが設定した温室効果ガス削減目標が「Science Based Targets(SBT)イニシアチブ」により、科学的根拠に基づいた目標として認定されました。
このような当社グループの取り組みについて、ご理解を深めていただくことを目的に、昨年同様、11月にアナリスト・機関投資家を対象に「ESG説明会」を開催いたしました。
百貨店事業につきましては、持続可能な社会の構築に貢献するため、不要となった衣料品などの回収を行う「ECOFF(エコフ)リサイクルキャンペーン」を大丸・松坂屋の基幹店舗で10月から11月にかけて開催し、今回も多くのお客様にご参加いただきました。
また、建て替え工事中であった大丸心斎橋店本館は8月23日に竣工し、9月20日にグランドオープンを迎えました。開店前から約5,000人のお客様にお並びいただき、開店時間を予定より前倒ししてのオープンとなりました。店づくりのコンセプトは「Delight the World ~世界が憧れる、心斎橋へ。」とし、心斎橋店の強みである富裕層や訪日外国人のお客様への対応をさらに強化しながら、“生活を積極的に楽しむすべてのお客様”をターゲットとして設定しています。新規ブランドも積極的に導入し、関西初出店37店舗、新業態50店舗を含む370店舗を展開します。ビジネスモデルは、従来の百貨店とはまったく異なり、全体面積の約65%を定期賃貸借の売場で構成するといった斬新なレイヤー構造をベースとしたものとなります。
一方で、地方郊外店の経済環境の変化と競合激化が進む中、当社グループの地方百貨店構造改革の一環として、下関大丸が今後も地域に貢献し、持続可能な成長を目指すため、同社を大丸松坂屋百貨店に吸収合併することを決定いたしました(2020年3月予定)。また、大丸山科店については3月をもって営業を終了いたしました。
不動産事業につきましては、アーバンドミナント戦略の一環として、「ビューティー&ヘルス」をキーワードとした商業施設として、4月に京都烏丸エリアの東洞院通に「BINO 東洞院(ビーノ ヒガシノトウイン)」を、12月に松坂屋上野店第二別館跡地に「BINO 御徒町(ビーノ オカチマチ)」をオープンいたしました。また、オー・エム・ホテル日航ビル地下1階を改装し、11月に「DAIMARU WHITE AVENUE(大丸 ホワイトアベニュー)」をオープンいたしました。
パルコ事業につきましては、3月には「職住が接近する都心生活者のための新しいコミュニティの創造」をコンセプトに錦糸町パルコを、6月には「幸せの共感 ここから未来へ」をコンセプトに沖縄初出店94店を含む全250店を擁するサンエー浦添西海岸 PARCO CITYを、8月には「都市生活者のライフスタイルサポート、都市機能の充実」をコンセプトに川崎ゼロゲートをオープンいたしました。一方で取り巻く商環境の変化を勘案し、5月に宇都宮パルコを閉店いたしました。また、1969年の池袋パルコ開業から50周年を迎える節目の年に生まれ変わる新生「渋谷パルコ」は約180の個性あふれるショップを導入し、11月22日にグランドオープンいたしました。次世代商業空間の創造に向けた店舗づくりの方向性では、体験型コンテンツを拡充させるほか、ラグジュアリー、モード、ストリート・カルチャーのミックスによるファッションの再提案や、ICTを活用した未来型の売場づくりなどに取り組んでいます。これまでの商業施設の枠を超え、デザイナー・クリエイターなどの送り手と共感・共創し、新たな取り組みを行うことで新しい刺激や楽しさの体験価値を提案し、グローバルに情報発信するビルを目指していきます。
以上のような諸施策に取り組みました結果、当第3四半期連結累計期間の連結業績は、前年同四半期に比べ売上収益は8.4%増の3,617億67百万円、営業利益は9.4%増の370億42百万円、税引前四半期利益は0.0%減の348億97百万円、親会社の所有者に帰属する四半期利益は4.9%減の209億97百万円となりました。
セグメントの業績は、以下のとおりであります。
<百貨店事業>9月は消費増税前の駆け込み需要により、高額品を中心に好調に推移いたしましたが、10月・11月はその反動が大きく、特に10月は台風などの天候不順も相まって店頭売上の回復が遅れました。
そうした中、大丸心斎橋店では9月20日に新本館がグランドオープンし、「Delight the World ~世界が憧れる、心斎橋へ。」というストアコンセプトのもと、フロア構成、品揃え、デザイン、環境など全てにおいて、今までにない「未来に向けた新しい百貨店」に生まれ変わりました。
店舗戦略の基軸となる集客力強化の取り組みとして、松坂屋名古屋店・南館2階フロアを7年ぶりに改装し、「美・食・雑貨」を融合した新編集売場「KiKiYOCOCHO(キキヨコチョ)」を3月にオープンいたしました。日本初出店・東海地区初出店を含む25ショップで構成し、百貨店の高級感と横丁の賑わい感が共存する、女性の「ためせる・みつかる・くつろげる」をかなえる空間となっております。
顧客基盤拡大の取り組みでは、「新しい顧客体験の提供」と「営業施策の高度化」の視点に基づく、お客様との更なる関係性強化のため、5月末に<大丸・松坂屋アプリ>を全国13店舗へ拡大展開いたしました。
拡大する富裕層マーケットに対しては、新規口座開拓を継続して取り組むとともに、新たな外商ビジネスモデルを展開するため、ICTを活用した業務支援システムの整備と新しい組織体制の構築に取り組みました。
インバウンドマーケットに対しては、化粧品売場の拡大やSNSを活用した情報発信、重点取組先との連携強化による顧客接点拡大などに取り組みました。
ECO活動を通じてお客様への負担や地球への負荷をOFFする「持続可能な参加型プロジェクト」に取り組んでおり、10月から11月には大丸・松坂屋10店舗でのリサイクルキャンペーンに加え、神戸と名古屋ではファッションイベントと連携してスペシャルデーを展開するなど、積極的なリサイクル・リユース活動「ECOFF(エコフ)」に取り組みました。
また、地方百貨店構造改革の一環として、下関大丸の今後の継続的な成長を目指し、2020年3月(予定)に同社を大丸松坂屋百貨店に吸収合併し、直営化することを決定いたしました。
なお、大丸山科店については昨今の経営環境の変化と競合激化が進む中、業績の改善を見通すことは困難であるとの判断から、3月31日をもって営業を終了いたしました。
以上のような諸施策に取り組みましたが、前年同四半期に比べ売上収益は1.7%減の
1,934億37百万円、営業利益は11.4%減の140億32百万円となりました。
<パルコ事業>ショッピングセンター事業では、11月にパルコブランドの新たな魅力の表現として渋谷パルコを再開業いたしました。また、リノベーション型の開発物件である錦糸町パルコ(3月)、株式会社サンエーとの共同事業によるサンエー浦添西海岸 PARCO CITY(6月)、川崎ゼロゲート(8月)をそれぞれ開業し、多様な業態開発手法に基づく不動産開発を推進いたしました。パルコ店舗では、デジタル環境の進化や消費志向の変化を捉え、優待方法を割引からポイントサービスに変更する(10月)など、顧客起点でのビジネスモデル変革を進める体制を整え、新たなテナント開発や顧客接点拡大・満足度向上に向けたコミュニケーション強化に取り組みました。
以上のような諸施策に取り組みました結果、前年同四半期に比べ売上収益は渋谷再開発事業における保留床売却などにより32.8%増の880億29百万円、営業利益は24.5%増の101億30百万円となりました。
<不動産事業>2017年度にGINZA SIXと上野フロンティアタワーが開業した後も、エリア全体の魅力を最大化し、地域と成長をともにするアーバンドミナント戦略の取り組みを進めております。
4月にはアーバンドミナント戦略の重点地区である京都においてビューティー&ヘルスをコンセプトとする商業施設「BINO 東洞院」を、12月には上野において「BINO 御徒町」を開業いたしました。また、11月には心斎橋でオー・エム・ホテル日航ビル地下1階を改装し、ファッションや美容サービスなど新規テナント19店舗を導入、既存テナント8店舗とあわせて「DAIMARU WHITE AVENUE」としてリニューアルオープンするなど、周辺開発に取り組みました。
以上のような取り組みに加え、百貨店事業から神戸店・京都店・上野店の周辺店舗の移管を受けたこともあり、前年同四半期に比べ売上収益は4.7%増の132億66百万円、営業利益につきましては、固定資産売却益を計上したこともあり60.2%増の71億89百万円となりました。
<クレジット金融事業>外部加盟店での利用増による手数料収入と割賦販売利息収入等が増加した結果、前年同四半期に比べ売上収益は2.1%増の80億18百万円となりましたが、先行投資費用が増加した結果、営業利益は3.2%減の19億5百万円となりました。
(2)財政状態の分析
当第3四半期連結会計期間末の資産合計は1兆2,842億27百万円となり、前連結会計年度末に比べ2,546億54百万円増加いたしました。これは主にIFRS第16号「リース」の適用による使用権資産の増加などによるものです。一方、負債合計は8,194億65百万円となり、前連結会計年度末に比べ2,583億78百万円増加いたしました。これは主にIFRS第16号「リース」の適用によるリース負債の増加などによるものです。資本合計は4,647億62百万円となり、前連結会計年度末に比べ37億23百万円減少いたしました。これは主にIFRS第16号「リース」の適用による利益剰余金の減少などによるものです。
(3)キャッシュ・フローの状況
当第3四半期連結会計期間末における「現金及び現金同等物」の残高は、前連結会計年度末に比べ235億11百万円増の491億70百万円となりました。
当第3四半期連結累計期間における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
① 営業活動によるキャッシュ・フロー
営業活動によるキャッシュ・フローは675億32百万円の収入となりました。前第3四半期連結累計期間との比較では、IFRS第16号「リース」の適用による減価償却費及び償却費の調整や営業債務の増加などにより457億2百万円の収入増となりました。
② 投資活動によるキャッシュ・フロー
投資活動によるキャッシュ・フローは256億54百万円の支出となりました。前第3四半期連結累計期間との比較では、有形固定資産の取得による支出の増加などにより37億22百万円の支出増となりました。
③ 財務活動によるキャッシュ・フロー
財務活動によるキャッシュ・フローは183億76百万円の支出となりました。前第3四半期連結累計期間との比較では、社債の発行による収入があったものの、IFRS第16号「リース」の適用によるリース負債の返済額の計上があったことなどにより62億80百万円の支出増となりました。
(4)事業上及び財務上の対処すべき課題
当第3四半期連結累計期間において、当社グループの事業上及び財務上の対処すべき課題に重要な変更及び新たに生じた課題はありません。
なお、当社は株式会社の支配に関する基本方針について定めており、その内容は次のとおりであります。
① 基本方針の内容
当社は、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者は、当社グループの財務及び事業の内容や当社グループの企業価値の源泉を十分に理解し、当社グループの企業価値ひいては株主共同の利益を継続的かつ持続的に確保し、これを向上していくことを可能とする者であることが必要であるものと考えております。
当社は、当社が上場会社であることから、当社の株主の在り方については、一般的には金融商品取引所における自由な市場取引を通じて決まるものであり、特定の株主又は特定の株主グループによって当社株式の一定規模以上の取得行為(以下「大量取得行為」といいます。)が行われる場合であっても、当該大量取得行為が当社グループの企業価値ひいては株主共同の利益に資するものであれば、一概にこれを否定するものではなく、これに応じるか否かについては、最終的には株主の皆さまのご判断に委ねられるべきものと考えております。
しかしながら、大量取得行為の中には、その目的等からして当社グループの企業価値に対する明白な侵害をもたらすもの、株主の皆さまに当社株式の売却を事実上強要するおそれがあるもの、当社取締役会や株主の皆さまが大量取得者の提案内容等について検討し、又は当社取締役会が代替案を提案するための十分な時間や情報を提供しないものなど、当社グループの企業価値を毀損する重大なおそれをもたらすものも想定されます。
このような当社グループの企業価値ひいては株主共同の利益に資さない大量取得行為を行う者(以下「大量取得者」といいます。)は、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者としては不適切であり、当社は、このような大量取得行為に対しては、大量取得者による情報提供並びに当社取締役会による検討及び評価といったプロセスを確保するとともに、当社グループの企業価値ひいては株主共同の利益の毀損を防止するため、当社取締役会及び株主の皆さまが大量取得者の提案内容を検討するための十分な時間を確保することこそが、株主の皆さまから当社経営の負託を受けた当社取締役会の責務であると考えております。
② 基本方針の実現に資する取組み
当社グループは、大丸・松坂屋の創業以来、その企業理念、伝統精神である「先義後利(義を先にして利を後にする者は栄える)」、「諸悪莫作 衆善奉行(諸悪をなすなかれ、多くの善行を行え)」、「人の利するところにおいて、われも利する」に基づき、永年にわたって呉服商、百貨店業を営んでまいりました。
当社は、当社グループの企業価値の源泉は、これらの理念、精神に基づくことにより築き上げられてきた、お客様及び社会との信頼関係にあるものと考えております。
そこで、当社は、これらの理念、精神に共通する「お客様第一主義」、「社会への貢献」を体現するため、当社グループの基本理念として「時代の変化に即応した高質な商品・サービスを提供し、お客様の期待を超えるご満足の実現を目指す」、「公正で信頼される企業として、広く社会への貢献を通じてグループの発展を目指す」ことを掲げ、この基本理念に基づき、当社グループの企業価値ひいては株主共同の利益の確保及び向上に資するため、当社グループのビジョンとして“くらしの「あたらしい幸せ」を発明する。”を掲げ、さまざまな施策に取り組んでおります。
③ 基本方針に照らして不適切な者によって当社の財務及び事業の方針の決定が支配されることを防止するための取組み
当社は、現在のところ、大量取得者が出現した場合の具体的な取り組み、いわゆる買収防衛策について特にこれを定めてはおりません。
しかしながら、大量取得者が出現した場合には、当社グループの企業価値の毀損を防止するため、大量取得者の属性、大量取得行為の目的、大量取得者が提案する財務及び事業の方針、株主の皆さま及び当社グループのお客様・お取引先様・従業員・当社グループを取り巻く地域社会その他のステークホルダーに対する対応方針など、大量取得者に関するこれらの情報を把握した上で、当該大量取得行為が当社グループの企業価値に及ぼす影響を慎重に検討する必要があるものと考えます。
したがって、このような場合には、当社は、当社社内取締役から独立した立場にある社外取締役及び有識者をメンバーとする独立委員会を設置し、その勧告意見を踏まえた上で、当該大量取得者が前記の基本方針に照らして不適切な者であると判断されるときは、必要かつ相当な対応を講じることにより、当社グループの企業価値ひいては株主共同の利益を確保する所存であります。
④ 具体的な取組みに対する当社取締役会の判断及びその理由
当社グループで策定するさまざまな施策は、当社グループの基本理念に基づいて策定されており、当社グループの企業価値の源泉であるお客様及び社会との信頼関係のさらなる構築を目指すものであります。したがって、これらの施策は、基本方針の内容に沿うものであり、当社グループの企業価値ひいては株主共同の利益の確保・向上に資するものであると考えております。
また、基本方針に照らして不適切な者であると判断される大量取得者に対して必要かつ相当な対応を講じることについては、当社社内取締役からの独立性が確保されている独立委員会の勧告意見を踏まえて判断することにより、その判断の公正性・中立性・合理性が担保されており、当社グループの企業価値・株主共同の利益を損なうものではないとともに、当社の会社役員の地位の維持をその目的とするものではないと考えております。
(5)研究開発活動
特記事項はありません。