有価証券報告書-第17期(2023/03/01-2024/02/29)
(1)財政状態及び経営成績の状況
① 当期の経営成績
当連結会計年度の日本経済は、国際情勢の不安定化や海外経済の減速など不確実性が高まる一方、社会・経済活動の正常化が一段と進むなか、サービス消費やインバウンド需要の伸長などにより、緩やかな回復基調が続きました。
個人消費は、雇用・所得環境の改善基調が続くなか、対面型サービスなどは増加した一方、物価上昇による実質賃金の低下などにより、消費の持ち直しの動きに足踏みが見られるなど、緩やかな回復にとどまりました。
当社は、2021年度より、サステナビリティ経営を基軸とする中期経営計画(2021-2023年度)を推進してきました。本計画は、コロナ危機からの「完全復活」を果たし、2024年度以降の「再成長」に着手する期間と位置づけ、主に、3つの重点戦略及び経営構造改革、また中長期の成長を支える経営基盤強化に取り組んできました。
中期経営計画の最終年度となる当年度は、回復基調の続く国内消費やインバウンド需要を着実に捉え、「完全復活」への足取りを確かなものとし、2024年度以降の「再成長」に繋げるため、本計画で掲げた重点戦略・施策を着実に推進しました。
サステナビリティへの取り組みでは、主に、7つのマテリアリティ(重要課題)において、重点戦略と一体化した活動を通じて、環境・社会課題の解決に取り組みました。
これらの結果、当初想定以上にコロナ感染症の影響が長期化したものの、本計画で掲げた連結営業利益目標(40,300百万円)をはじめ主要な経営数値目標を概ね達成し、財務体質は有利子負債の削減などにより改善しました。
また、本計画の目標達成に向けた戦略推進と並行して、2030年を見据えたグループの目指す姿、2024年度からスタートする次期中期経営計画(2024-2026年度)を策定しました。あわせて、グループ経営の更なる強化と企業価値の向上に向け、次期中期経営計画を始動させる新たな経営体制を決定しました。
「リアル×デジタル戦略」では、百貨店事業やSC事業において基幹店を中心に、リアル店舗の魅力化に向けた主力カテゴリーの強化や店舗改装など戦略投資を推進したほか、来店価値向上に向け、大型動員催事などプロモーション強化などに取り組みました。デジタル活用ではサブスクリプションサービスなどオンラインビジネスの拡充、また顧客との強固な関係構築に向け、アプリなどを通じた顧客接点のデジタル化を推進しました。
「プライムライフ戦略」では、富裕層マーケットへの対応を強化するため、主に百貨店外商を基盤に、重点カテゴリーの拡充、店頭・オンラインの両面から希少性の高い商品・サービスの開発と共に、新規顧客の獲得など顧客層の拡大を図りました。
「デベロッパー戦略」では、当年度から始動した新たな事業推進体制のもと、名古屋栄エリアや大阪心斎橋エリアに加え、新たに福岡天神エリアなど、当社が基盤を有する7都市の重点エリアを中心に中長期の開発計画を策定、推進しました。また、保有資産の有効活用に向けレジデンス事業に参入し、物件開発を推進しました。
「経営構造改革」では、固定費削減について組織・要員構造改革の効果に加え、業務委託の見直し、宣伝手法のデジタル化などにより当初計画以上の削減を図りました。また、経営効率向上への取り組みとして、当社が保有する株式会社スタイリングライフ・ホールディングスの全株式を譲渡しました。この結果、同社は当社の持分法適用関連会社から除外となりました。なお、新所沢PARCOは2024年2月末に営業終了しました。
これらの戦略推進に加え、事業ポートフォリオの変革や他社との共創による新規事業の創出を見据え、株式会社フィナンシェやクオン株式会社へ出資したほか、CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)ファンドを通じて8社に出資しました。また、当社のサステナビリティの重要課題である「地域社会との共生」に基づき、地域社会への貢献と各地域に根ざした商品・サービスの発掘・継承を目的に、2024年3月に他社共同による事業承継ファンドを設立しました。
グループ人財戦略では、ホールディングスや各事業での高度専門人財の採用強化や能力開発に加え、デジタル人財の計画育成、中堅・若手社員の活躍推進などグループ横断による人財開発に取り組みました。また、従業員の意志・意欲を反映した公募型の配置、組織・人財の多様性を高める人財交流を積極的に推進しました。
グループ財務戦略では、事業環境変化や今後の見通しなどを踏まえ、現預金残高の適正化や有利子負債の削減を進めるなど財務体質の改善を図りました。また、次期中期経営計画を見据え、中長期の財務政策を策定しました。
グループシステム戦略では、各事業での戦略推進支援とあわせ、経営管理の高度化と生産性向上を図るグループ共通会計システムの事業会社への導入を進めたほか、情報セキュリティや事業継続への対応強化を図りました。
以上のような諸施策に取り組みました結果、当期の連結業績について、売上収益は407,006百万円(対前年13.2%増)となりました。事業利益は売上収益の改善に加え、固定費削減の効果や経費節減により44,330百万円(対前年78.4%増)となりました。営業利益は百貨店の一部店舗で減損損失を計上する一方、持分法適用関連会社の株式譲渡などにより43,048百万円(対前年125.9%増)、税引前利益は41,343百万円(対前年145.0%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益は29,913百万円(対前年110.1%増)と大幅増益となりました。
なお、配当金につきまして、年間配当金は前期実績に比べ5円増配の1株当たり36円(前期実績31円)とさせていただきました。
セグメントの業績は、以下のとおりであります。
なお、2023年3月1日付の組織再編に伴い、株式会社パルコからJ.フロント都市開発株式会社へ不動産が移管されております。これに伴い、前連結会計年度の期首(2022年3月1日)より移管されたものとみなし遡及修正しております。
セグメント業績
<百貨店事業>
社会・経済活動の正常化が一段と進むなか、主に堅調な富裕層マーケットへの対応をはじめとする戦略・施策の効果に加え、訪日外国人観光客による売上が一段と伸長し、売上高は大幅な増収となりました。
店舗別では、特に訪日外国人売上が好調な大丸心斎橋店や大丸京都店に加え、ターミナル立地の大丸東京店や大丸札幌店において入店客数、売上高が大きく改善しました。
重点戦略への取り組みでは、基幹店を中心にラグジュアリーブランドや高級時計など主力カテゴリーの強化、リニューアルを実施したほか、お得意様ラウンジの導入など上質な店舗環境の構築に取り組みました。また、オンラインビジネスの強化に向けて、ファッションやアート、食のサブスクリプションサービスを拡充するなどデジタルを活用した新たな顧客体験の創出などに取り組みました。また、顧客との強固な関係構築に向け、リアル店舗に加え、大丸・松坂屋アプリなどを通じた顧客接点のデジタル化を着実に推進しました。
以上のような諸施策に取り組みました結果、売上収益は239,125百万円(対前年10.8%増)の増収となりました。営業利益は23,587百万円(対前年213.3%増)と、売上収益の改善に伴う変動費の増加などがあったものの、大幅な増益となりました。
基幹店を中心とする戦略改装や全店統一企画等のプロモーションの効果、また渋谷PARCO、心斎橋PARCOをはじめとする訪日外国人観光客の来店増などにより、入店客数、テナント取扱高ともに増加しました。
重点戦略に基づき、店舗の魅力化に向け、池袋PARCOでは話題性の高いエンタテインメントショップを集積したゾーンの構築、名古屋PARCOではユニセックス・レディス要素を拡張し共用環境を刷新するなど戦略改装を推進しました。浦和PARCOでは“好感度・上質な生活の提案”“心地よい日常生活”をキーワードとしたテナントを導入しました。また、来店価値向上に向け、人気TVアニメの大型動員催事の展開など独自のプロモーションに加え、渋谷PARCOでは50周年を記念し、半世紀を超える広告クリエイティブの歴史を巡る展覧会“「パルコを広告する」1969-2023PARCO広告展”を開催しました。なお、新所沢PARCOは本年2月末に営業を終了しました。
以上のような諸施策に取り組みました結果、売上収益は57,944百万円(対前年7.7%増)となりました。営業利益は売上収益の改善に加え、保有資産の売却益なども加わり9,414百万円(対前年121.8%増)と大幅な増益となりました。
<デベロッパー事業>
2023年度から始動した新たな事業推進体制の下、グループ全体最適の観点から、当社グループが基盤を有する7都市の重点エリアを中心に中長期の開発計画策定に取り組みました。具体的には、2026年の竣工・開業を目指す名古屋栄エリア「(仮称)錦三丁目25番街区計画」、大阪心斎橋エリア「(仮称)心斎橋プロジェクト」、福岡天神エリアにおける再開発計画を推進しました。また、保有資産を活用した非商業施設の開発として、当社が手掛けたレジデンス3物件を竣工させました。
建築内装事業では、都市部での再開発や出店拡大などの投資機会を捉え、ホテルなど開発案件への参画、特選ブランド等からの受注拡大など、営業力の強化に取り組みました。
以上のような諸施策に取り組みました結果、売上収益は、開発不動産の自社が組成したファンドへの売却、グループ内外の内装・設備工事や施設管理業務等の増加により、78,418百万円(対前年41.9%増)となりました。これらにより、営業利益は7,437百万円(対前年133.5%増)の増益となりました。
<決済・金融事業>
決済事業では、百貨店との協働による会員獲得とともに、独自のポイントサービス「QIRAポイント」の認知度向上に向けた特別イベントを実施しました。また、グループ商業施設での決済環境の整備や、グループ店舗が立地する各エリアでの他社施設との連携など加盟店事業の強化を図りました。金融事業では、他社との連携・協業による会員向けの新サービスの開発などを推進しました。
以上のような諸施策に取り組みました結果、売上収益は13,115百万円(対前年1.8%増)の増収となりましたものの、営業利益は事業基盤拡大に向けた投資費用等の増加やカード不正利用に伴う費用増などもあり、2,583百万円(対前年25.9%減)の減益となりました。
<その他>
卸売業の大丸興業において、主力の電子部品部門での受注減や海外事業の売上減少などにより、売上収益は51,925百万円(対前年7.1%減)の減収となりましたものの、営業利益は為替差益や保有資産の売却益などにより、1,370百万円(対前年52.3%増)の増益となりました。
② 財政状態
当連結会計年度末の資産合計は1,114,726百万円となり、前連結会計年度末に比べ6,227百万円減少いたしました。一方、負債合計は720,494百万円となり、前連結会計年度末に比べ29,048百万円減少いたしました。なお、有利子負債残高(含むリース負債)は、364,398百万円となり、前連結会計年度末に比べ49,551百万円減少いたしました。
資本合計は、394,232百万円となり、前連結会計年度末に比べ22,822百万円増加いたしました。
③ キャッシュ・フロー
当連結会計年度末における「現金及び現金同等物」の残高は、前連結会計年度末に比べ31,468百万円増の71,342百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
「営業活動によるキャッシュ・フロー」は90,692百万円の収入となりました。前連結会計年度との比較では、税引前利益が増益になったことなどにより25,212百万円の収入増となりました。
「投資活動によるキャッシュ・フロー」は13,429百万円の収入となりました。前連結会計年度との比較では、設備投資を実施した一方、持分法適用会社株式や投資不動産の売却による収入などにより26,800百万円の収入増となりました。
「財務活動によるキャッシュ・フロー」は72,746百万円の支出となりました。前連結会計年度との比較では、当年度においても有利子負債の返済を進めましたが32,948百万円の支出減となりました。
④ 生産、受注及び販売の実績
1)生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)1 請負工事につきましては生産実績を定義することが困難であるため、「生産実績」は記載しておりません。
2 上記以外のセグメントについては該当事項はありません。
2)受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)1 上記以外のセグメントについては該当事項はありません。
3)販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)1 セグメント間の取引については、「調整額」欄で調整しております。
2 販売高は、売上収益を記載しております。
(2) 経営者の視点による経営成績の状況に関する分析・検討内容
当社グループに関する財政状態及び経営成績の分析・検討内容は、原則として連結財務諸表に基づいて分析した内容であります。
文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①重要性のある会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、国際会計基準に基づいて作成しております。この連結財務諸表の作成にあたって、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者は、これらの見積りについて、過去の実績や現状を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要性のある会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 3.重要性のある会計方針」に記載しております。
また、連結財務諸表作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載しております。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
1)経営成績等
セグメントごとの情報については、(1)財政状態及び経営成績の状況 ① 当期の経営成績に記載しております。
a)売上収益
売上収益は、前連結会計年度に比べ47,327百万円増の407,006百万円となりました。
b)営業利益
営業利益は、前連結会計年度に比べ23,989百万円増の43,048百万円となりました。
c)税引前利益
税引前利益は、前連結会計年度に比べ24,470百万円増の41,343百万円となりました。
d)親会社の所有者に帰属する当期利益
親会社の所有者に帰属する当期利益は、前連結会計年度に比べ15,676百万円増の29,913百万円となりました。
e)財政状態
当連結会計年度末の資産合計は1,114,726百万円となり、前連結会計年度末に比べ 6,227百万円減少いたしました。一方、負債合計は720,494百万円となり、前連結会計年度末に比べ29,048百万円減少いたしました。なお、有利子負債残高(含むリース負債)は、364,398百万円となり、前連結会計年度末に比べ49,551百万円減少いたしました。資本合計は、394,232百万円となり、前連結会計年度末に比べ22,822百万円増加いたしました。これらの結果、資産合計営業利益率(ROA)は、3.9%、親会社所有者帰属持分当期利益率(ROE)は、8.1%、親会社所有者帰属持分比率は、34.3%となりました。
f)キャッシュ・フロー
「営業活動によるキャッシュ・フロー」は90,692百万円の収入となりました。「投資活動によるキャッシュ・フロー」は13,429百万円の収入、「財務活動によるキャッシュ・フロー」は72,746百万円の支出となりました。
この結果、当連結会計年度末における「現金及び現金同等物」の残高は、前連結会計年度末に比べ31,468百万円増の71,342百万円となりました。
今後も、利益水準やキャッシュ・フローの動向等を考慮し、適切な利益配分や設備投資を行っていく予定であります。
g)資本の財源及び資金の流動性
(資本政策の基本方針)
当社は、フリーキャッシュ・フローの増大とROEの向上が持続的な成長と中長期的な企業価値を高めることに繋がるものと考えています。その実現に向けて、経営環境及びリスクへの備えを勘案した上で「戦略投資の実施」「株主還元の充実」及び「自己資本の拡充」のバランスを取った資本政策を推進します。
また、有利子負債による資金調達はフリーキャッシュ・フロー創出力と有利子負債残高を勘案して行うことを基本とし、資金効率と資本コストを意識した最適な資本・負債構成を目指します。
フリーキャッシュ・フロー、ROEの向上には、収益を伴った売上拡大を実現する「事業戦略」及び投下資本収益性を向上させる「財務戦略(資本政策を含みます。)」が重要です。併せて、基幹事業の強化、事業領域の拡大・新規事業の積極展開等に経営資源を重点配分することにより、事業利益の最大化と事業利益率を持続的に向上させていくことが重要であると考えております。
なお、中期経営計画の達成における重要財務指標として、資本効率性はROE、事業収益性は連結事業利益及びROIC、収益性・安全性はフリーキャッシュ・フロー、財務健全性は親会社所有者帰属持分比率(自己資本比率)の各指標を重視しております。
(資金調達の状況)
当社グループでは、事業活動に必要となる資金は、グループで創出した資金でまかなうことを基本方針としております。その上で、事業投資等で必要資金が生じる場合には、財務の健全性維持を勘案し、主として社債の発行及び金融機関からの借入などにより持株会社が一元的に資金調達を行っております。
グループ子会社は金融機関からの資金調達を行わず、キャッシュ・マネジメントシステムを利用したグループ内ファイナンスにより必要資金の調達を行うことで、グループ資金の効率化を推進しております。
当連結会計年度については、上記方針に基づき、金融機関からの長期借入金により34億円を調達いたしました。一方、短期借入金91億円及び長期借入金295億円を返済した結果、有利子負債残高(除くリース負債)は、前連結会計年度末に比べ351億円減少し、2,139億円となりました。
なお、資金調達に係るリスクについては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載しております。
(財務政策)
「2024-2026年度 中期経営計画」における財務政策については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しております。
(配当政策)
当社の剰余金の配当に関する基本方針並びに当期の配当実績については、「第4 提出会社の状況 3 配当政策」に記載しております。
2)経営目標の達成状況
「2021-2023年度 中期経営計画」最終年度である2023年度において、連結営業利益目標(40,300百万円)をはじめ主要な経営数値目標を概ね達成し、財務体質は有利子負債の削減などにより改善しました。
※1 本計画の策定時に、最終年度である2023年度に財務数値を2019年度水準に戻し、コロナ禍からの「完全復活」を果たすとともに、2024年度以降の「再成長」への道筋をつけるための目標として設定しました。
※2 Scope1,2削減率(2017年度比)、2023年度実績は2024年5月29日時点の概算値
(ご参考) Scope1:事業者自らによる温室効果ガスの直接排出
(社用車のガソリンなど)
Scope2:他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出
(店舗・事務所の電気使用など)
※3 女性管理職比率 2024年3月1日現在:26.2%
なお、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しておりますとおり、当社は「2024-2026年度 中期経営計画」を策定いたしました。本中期経営計画を通じ、百貨店・SC事業など「リテール事業の深化」、飛躍的成長に向けた「グループシナジーの進化」と共に、これらの戦略の実効性を高める「グループ経営基盤の強化」に集中して取り組み、経営目標の達成に努めてまいります。
① 当期の経営成績
(単位:百万円、%) | 2024年2月期 | 対前年 | 対10月予想 | |
増減高 | 増減率 | 増減高 | ||
総額売上高 | 1,151,972 | 153,217 | 15.3 | 20,972 |
売上収益 | 407,006 | 47,327 | 13.2 | 1,506 |
売上総利益 | 195,516 | 25,980 | 15.3 | 3,016 |
販売費及び一般管理費 | 151,185 | 6,503 | 4.5 | 1,185 |
事業利益 | 44,330 | 19,476 | 78.4 | 1,830 |
その他の営業収益 | 3,673 | △867 | △19.1 | 473 |
その他の営業費用 | 4,955 | △5,381 | △52.1 | △745 |
営業利益 | 43,048 | 23,989 | 125.9 | 3,048 |
親会社の所有者に 帰属する当期利益 | 29,913 | 15,676 | 110.1 | 2,913 |
当連結会計年度の日本経済は、国際情勢の不安定化や海外経済の減速など不確実性が高まる一方、社会・経済活動の正常化が一段と進むなか、サービス消費やインバウンド需要の伸長などにより、緩やかな回復基調が続きました。
個人消費は、雇用・所得環境の改善基調が続くなか、対面型サービスなどは増加した一方、物価上昇による実質賃金の低下などにより、消費の持ち直しの動きに足踏みが見られるなど、緩やかな回復にとどまりました。
当社は、2021年度より、サステナビリティ経営を基軸とする中期経営計画(2021-2023年度)を推進してきました。本計画は、コロナ危機からの「完全復活」を果たし、2024年度以降の「再成長」に着手する期間と位置づけ、主に、3つの重点戦略及び経営構造改革、また中長期の成長を支える経営基盤強化に取り組んできました。
中期経営計画の最終年度となる当年度は、回復基調の続く国内消費やインバウンド需要を着実に捉え、「完全復活」への足取りを確かなものとし、2024年度以降の「再成長」に繋げるため、本計画で掲げた重点戦略・施策を着実に推進しました。
サステナビリティへの取り組みでは、主に、7つのマテリアリティ(重要課題)において、重点戦略と一体化した活動を通じて、環境・社会課題の解決に取り組みました。
これらの結果、当初想定以上にコロナ感染症の影響が長期化したものの、本計画で掲げた連結営業利益目標(40,300百万円)をはじめ主要な経営数値目標を概ね達成し、財務体質は有利子負債の削減などにより改善しました。
また、本計画の目標達成に向けた戦略推進と並行して、2030年を見据えたグループの目指す姿、2024年度からスタートする次期中期経営計画(2024-2026年度)を策定しました。あわせて、グループ経営の更なる強化と企業価値の向上に向け、次期中期経営計画を始動させる新たな経営体制を決定しました。
「リアル×デジタル戦略」では、百貨店事業やSC事業において基幹店を中心に、リアル店舗の魅力化に向けた主力カテゴリーの強化や店舗改装など戦略投資を推進したほか、来店価値向上に向け、大型動員催事などプロモーション強化などに取り組みました。デジタル活用ではサブスクリプションサービスなどオンラインビジネスの拡充、また顧客との強固な関係構築に向け、アプリなどを通じた顧客接点のデジタル化を推進しました。
「プライムライフ戦略」では、富裕層マーケットへの対応を強化するため、主に百貨店外商を基盤に、重点カテゴリーの拡充、店頭・オンラインの両面から希少性の高い商品・サービスの開発と共に、新規顧客の獲得など顧客層の拡大を図りました。
「デベロッパー戦略」では、当年度から始動した新たな事業推進体制のもと、名古屋栄エリアや大阪心斎橋エリアに加え、新たに福岡天神エリアなど、当社が基盤を有する7都市の重点エリアを中心に中長期の開発計画を策定、推進しました。また、保有資産の有効活用に向けレジデンス事業に参入し、物件開発を推進しました。
「経営構造改革」では、固定費削減について組織・要員構造改革の効果に加え、業務委託の見直し、宣伝手法のデジタル化などにより当初計画以上の削減を図りました。また、経営効率向上への取り組みとして、当社が保有する株式会社スタイリングライフ・ホールディングスの全株式を譲渡しました。この結果、同社は当社の持分法適用関連会社から除外となりました。なお、新所沢PARCOは2024年2月末に営業終了しました。
これらの戦略推進に加え、事業ポートフォリオの変革や他社との共創による新規事業の創出を見据え、株式会社フィナンシェやクオン株式会社へ出資したほか、CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)ファンドを通じて8社に出資しました。また、当社のサステナビリティの重要課題である「地域社会との共生」に基づき、地域社会への貢献と各地域に根ざした商品・サービスの発掘・継承を目的に、2024年3月に他社共同による事業承継ファンドを設立しました。
グループ人財戦略では、ホールディングスや各事業での高度専門人財の採用強化や能力開発に加え、デジタル人財の計画育成、中堅・若手社員の活躍推進などグループ横断による人財開発に取り組みました。また、従業員の意志・意欲を反映した公募型の配置、組織・人財の多様性を高める人財交流を積極的に推進しました。
グループ財務戦略では、事業環境変化や今後の見通しなどを踏まえ、現預金残高の適正化や有利子負債の削減を進めるなど財務体質の改善を図りました。また、次期中期経営計画を見据え、中長期の財務政策を策定しました。
グループシステム戦略では、各事業での戦略推進支援とあわせ、経営管理の高度化と生産性向上を図るグループ共通会計システムの事業会社への導入を進めたほか、情報セキュリティや事業継続への対応強化を図りました。
以上のような諸施策に取り組みました結果、当期の連結業績について、売上収益は407,006百万円(対前年13.2%増)となりました。事業利益は売上収益の改善に加え、固定費削減の効果や経費節減により44,330百万円(対前年78.4%増)となりました。営業利益は百貨店の一部店舗で減損損失を計上する一方、持分法適用関連会社の株式譲渡などにより43,048百万円(対前年125.9%増)、税引前利益は41,343百万円(対前年145.0%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益は29,913百万円(対前年110.1%増)と大幅増益となりました。
なお、配当金につきまして、年間配当金は前期実績に比べ5円増配の1株当たり36円(前期実績31円)とさせていただきました。
セグメントの業績は、以下のとおりであります。
なお、2023年3月1日付の組織再編に伴い、株式会社パルコからJ.フロント都市開発株式会社へ不動産が移管されております。これに伴い、前連結会計年度の期首(2022年3月1日)より移管されたものとみなし遡及修正しております。
セグメント業績
<百貨店事業>
(単位:百万円、%) | 2024年2月期 | 対前年 | 対10月予想 | |
増減高 | 増減率 | 増減高 | ||
売上収益 | 239,125 | 23,371 | 10.8 | 3,825 |
事業利益 | 26,265 | 13,431 | 104.6 | 1,965 |
営業利益 | 23,587 | 16,058 | 213.3 | 1,287 |
社会・経済活動の正常化が一段と進むなか、主に堅調な富裕層マーケットへの対応をはじめとする戦略・施策の効果に加え、訪日外国人観光客による売上が一段と伸長し、売上高は大幅な増収となりました。
店舗別では、特に訪日外国人売上が好調な大丸心斎橋店や大丸京都店に加え、ターミナル立地の大丸東京店や大丸札幌店において入店客数、売上高が大きく改善しました。
重点戦略への取り組みでは、基幹店を中心にラグジュアリーブランドや高級時計など主力カテゴリーの強化、リニューアルを実施したほか、お得意様ラウンジの導入など上質な店舗環境の構築に取り組みました。また、オンラインビジネスの強化に向けて、ファッションやアート、食のサブスクリプションサービスを拡充するなどデジタルを活用した新たな顧客体験の創出などに取り組みました。また、顧客との強固な関係構築に向け、リアル店舗に加え、大丸・松坂屋アプリなどを通じた顧客接点のデジタル化を着実に推進しました。
以上のような諸施策に取り組みました結果、売上収益は239,125百万円(対前年10.8%増)の増収となりました。営業利益は23,587百万円(対前年213.3%増)と、売上収益の改善に伴う変動費の増加などがあったものの、大幅な増益となりました。
(単位:百万円、%) | 2024年2月期 | 対前年 | 対10月予想 | |
増減高 | 増減率 | 増減高 | ||
売上収益 | 57,944 | 4,165 | 7.7 | △508 |
事業利益 | 8,379 | 2,525 | 43.1 | 1,189 |
営業利益 | 9,414 | 5,170 | 121.8 | 1,316 |
基幹店を中心とする戦略改装や全店統一企画等のプロモーションの効果、また渋谷PARCO、心斎橋PARCOをはじめとする訪日外国人観光客の来店増などにより、入店客数、テナント取扱高ともに増加しました。
重点戦略に基づき、店舗の魅力化に向け、池袋PARCOでは話題性の高いエンタテインメントショップを集積したゾーンの構築、名古屋PARCOではユニセックス・レディス要素を拡張し共用環境を刷新するなど戦略改装を推進しました。浦和PARCOでは“好感度・上質な生活の提案”“心地よい日常生活”をキーワードとしたテナントを導入しました。また、来店価値向上に向け、人気TVアニメの大型動員催事の展開など独自のプロモーションに加え、渋谷PARCOでは50周年を記念し、半世紀を超える広告クリエイティブの歴史を巡る展覧会“「パルコを広告する」1969-2023PARCO広告展”を開催しました。なお、新所沢PARCOは本年2月末に営業を終了しました。
以上のような諸施策に取り組みました結果、売上収益は57,944百万円(対前年7.7%増)となりました。営業利益は売上収益の改善に加え、保有資産の売却益なども加わり9,414百万円(対前年121.8%増)と大幅な増益となりました。
<デベロッパー事業>
(単位:百万円、%) | 2024年2月期 | 対前年 | 対10月予想 | |
増減高 | 増減率 | 増減高 | ||
売上収益 | 78,418 | 23,166 | 41.9 | 2,518 |
事業利益 | 7,546 | 5,070 | 204.7 | 546 |
営業利益 | 7,437 | 4,253 | 133.5 | 337 |
2023年度から始動した新たな事業推進体制の下、グループ全体最適の観点から、当社グループが基盤を有する7都市の重点エリアを中心に中長期の開発計画策定に取り組みました。具体的には、2026年の竣工・開業を目指す名古屋栄エリア「(仮称)錦三丁目25番街区計画」、大阪心斎橋エリア「(仮称)心斎橋プロジェクト」、福岡天神エリアにおける再開発計画を推進しました。また、保有資産を活用した非商業施設の開発として、当社が手掛けたレジデンス3物件を竣工させました。
建築内装事業では、都市部での再開発や出店拡大などの投資機会を捉え、ホテルなど開発案件への参画、特選ブランド等からの受注拡大など、営業力の強化に取り組みました。
以上のような諸施策に取り組みました結果、売上収益は、開発不動産の自社が組成したファンドへの売却、グループ内外の内装・設備工事や施設管理業務等の増加により、78,418百万円(対前年41.9%増)となりました。これらにより、営業利益は7,437百万円(対前年133.5%増)の増益となりました。
<決済・金融事業>
(単位:百万円、%) | 2024年2月期 | 対前年 | 対10月予想 | |
増減高 | 増減率 | 増減高 | ||
売上収益 | 13,115 | 226 | 1.8 | △435 |
事業利益 | 2,777 | △709 | △20.4 | △475 |
営業利益 | 2,583 | △902 | △25.9 | △574 |
決済事業では、百貨店との協働による会員獲得とともに、独自のポイントサービス「QIRAポイント」の認知度向上に向けた特別イベントを実施しました。また、グループ商業施設での決済環境の整備や、グループ店舗が立地する各エリアでの他社施設との連携など加盟店事業の強化を図りました。金融事業では、他社との連携・協業による会員向けの新サービスの開発などを推進しました。
以上のような諸施策に取り組みました結果、売上収益は13,115百万円(対前年1.8%増)の増収となりましたものの、営業利益は事業基盤拡大に向けた投資費用等の増加やカード不正利用に伴う費用増などもあり、2,583百万円(対前年25.9%減)の減益となりました。
<その他>
(単位:百万円、%) | 2024年2月期 | 対前年 | 対10月予想 | |
増減高 | 増減率 | 増減高 | ||
売上収益 | 51,925 | △3,997 | △7.1 | △4,475 |
事業利益 | 965 | 41 | 4.4 | △435 |
営業利益 | 1,370 | 471 | 52.3 | △330 |
卸売業の大丸興業において、主力の電子部品部門での受注減や海外事業の売上減少などにより、売上収益は51,925百万円(対前年7.1%減)の減収となりましたものの、営業利益は為替差益や保有資産の売却益などにより、1,370百万円(対前年52.3%増)の増益となりました。
② 財政状態
(単位:百万円、%) | 2023年2月期 | 2024年2月期 | 増減高 |
流動資産 | 201,860 | 246,501 | 44,641 |
非流動資産 | 919,092 | 868,225 | △ 50,867 |
資産合計 | 1,120,953 | 1,114,726 | △ 6,227 |
流動負債 | 317,953 | 331,261 | 13,308 |
非流動負債 | 431,589 | 389,232 | △ 42,357 |
負債合計 | 749,542 | 720,494 | △ 29,048 |
親会社の所有者に帰属する持分 | 359,385 | 381,898 | 22,513 |
親会社所有者帰属持分比率 | 32.1 | 34.3 | 2.2 |
資本合計 | 371,410 | 394,232 | 22,822 |
当連結会計年度末の資産合計は1,114,726百万円となり、前連結会計年度末に比べ6,227百万円減少いたしました。一方、負債合計は720,494百万円となり、前連結会計年度末に比べ29,048百万円減少いたしました。なお、有利子負債残高(含むリース負債)は、364,398百万円となり、前連結会計年度末に比べ49,551百万円減少いたしました。
資本合計は、394,232百万円となり、前連結会計年度末に比べ22,822百万円増加いたしました。
③ キャッシュ・フロー
(単位:百万円) | 2023年2月期 | 2024年2月期 | 増減高 |
営業活動によるキャッシュ・フロー | 65,480 | 90,692 | 25,212 |
投資活動によるキャッシュ・フロー | △13,371 | 13,429 | 26,800 |
フリーキャッシュ・フロー | 52,109 | 104,122 | 52,013 |
財務活動によるキャッシュ・フロー | △105,694 | △72,746 | 32,948 |
現金及び現金同等物の増減額 | △53,585 | 31,375 | 84,960 |
現金及び現金同等物の期末残高 | 39,874 | 71,342 | 31,468 |
当連結会計年度末における「現金及び現金同等物」の残高は、前連結会計年度末に比べ31,468百万円増の71,342百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
「営業活動によるキャッシュ・フロー」は90,692百万円の収入となりました。前連結会計年度との比較では、税引前利益が増益になったことなどにより25,212百万円の収入増となりました。
「投資活動によるキャッシュ・フロー」は13,429百万円の収入となりました。前連結会計年度との比較では、設備投資を実施した一方、持分法適用会社株式や投資不動産の売却による収入などにより26,800百万円の収入増となりました。
「財務活動によるキャッシュ・フロー」は72,746百万円の支出となりました。前連結会計年度との比較では、当年度においても有利子負債の返済を進めましたが32,948百万円の支出減となりました。
④ 生産、受注及び販売の実績
1)生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 生産高(百万円) | 前年同期比(%) |
デベロッパー事業 | 610 | 81.4% |
(注)1 請負工事につきましては生産実績を定義することが困難であるため、「生産実績」は記載しておりません。
2 上記以外のセグメントについては該当事項はありません。
2)受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 受注高(百万円) | 前年同期比(%) |
デベロッパー事業 | 62,915 | 159.3% |
(注)1 上記以外のセグメントについては該当事項はありません。
3)販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 内訳 | 販売高(百万円) | 前年同期比(%) |
百貨店事業 | 大丸松坂屋百貨店 | 220,058 | 110.9 |
博多大丸 | 15,701 | 111.5 | |
その他 | 3,366 | 101.1 | |
計 | 239,125 | 110.8 | |
SC事業 | パルコ | 57,868 | 107.7 |
その他 | 75 | 117.9 | |
計 | 57,944 | 107.7 | |
デベロッパー事業 | J.フロント都市開発 | 19,381 | 254.8 |
J.フロント建装 | 35,902 | 127.6 | |
パルコスペースシステムズ | 21,982 | 120.8 | |
その他 | 1,151 | 88.7 | |
計 | 78,418 | 141.9 | |
決済・金融事業 | JFRカード | 13,115 | 101.8 |
その他 | 卸売業 | 35,981 | 92.9 |
その他 | 15,944 | 92.8 | |
計 | 51,925 | 92.9 | |
調整額 | △33,523 | 98.8 | |
合計 | 407,006 | 113.2 |
(注)1 セグメント間の取引については、「調整額」欄で調整しております。
2 販売高は、売上収益を記載しております。
(2) 経営者の視点による経営成績の状況に関する分析・検討内容
当社グループに関する財政状態及び経営成績の分析・検討内容は、原則として連結財務諸表に基づいて分析した内容であります。
文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①重要性のある会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、国際会計基準に基づいて作成しております。この連結財務諸表の作成にあたって、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者は、これらの見積りについて、過去の実績や現状を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要性のある会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 3.重要性のある会計方針」に記載しております。
また、連結財務諸表作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載しております。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
1)経営成績等
セグメントごとの情報については、(1)財政状態及び経営成績の状況 ① 当期の経営成績に記載しております。
a)売上収益
売上収益は、前連結会計年度に比べ47,327百万円増の407,006百万円となりました。
b)営業利益
営業利益は、前連結会計年度に比べ23,989百万円増の43,048百万円となりました。
c)税引前利益
税引前利益は、前連結会計年度に比べ24,470百万円増の41,343百万円となりました。
d)親会社の所有者に帰属する当期利益
親会社の所有者に帰属する当期利益は、前連結会計年度に比べ15,676百万円増の29,913百万円となりました。
e)財政状態
当連結会計年度末の資産合計は1,114,726百万円となり、前連結会計年度末に比べ 6,227百万円減少いたしました。一方、負債合計は720,494百万円となり、前連結会計年度末に比べ29,048百万円減少いたしました。なお、有利子負債残高(含むリース負債)は、364,398百万円となり、前連結会計年度末に比べ49,551百万円減少いたしました。資本合計は、394,232百万円となり、前連結会計年度末に比べ22,822百万円増加いたしました。これらの結果、資産合計営業利益率(ROA)は、3.9%、親会社所有者帰属持分当期利益率(ROE)は、8.1%、親会社所有者帰属持分比率は、34.3%となりました。
f)キャッシュ・フロー
「営業活動によるキャッシュ・フロー」は90,692百万円の収入となりました。「投資活動によるキャッシュ・フロー」は13,429百万円の収入、「財務活動によるキャッシュ・フロー」は72,746百万円の支出となりました。
この結果、当連結会計年度末における「現金及び現金同等物」の残高は、前連結会計年度末に比べ31,468百万円増の71,342百万円となりました。
今後も、利益水準やキャッシュ・フローの動向等を考慮し、適切な利益配分や設備投資を行っていく予定であります。
g)資本の財源及び資金の流動性
(資本政策の基本方針)
当社は、フリーキャッシュ・フローの増大とROEの向上が持続的な成長と中長期的な企業価値を高めることに繋がるものと考えています。その実現に向けて、経営環境及びリスクへの備えを勘案した上で「戦略投資の実施」「株主還元の充実」及び「自己資本の拡充」のバランスを取った資本政策を推進します。
また、有利子負債による資金調達はフリーキャッシュ・フロー創出力と有利子負債残高を勘案して行うことを基本とし、資金効率と資本コストを意識した最適な資本・負債構成を目指します。
フリーキャッシュ・フロー、ROEの向上には、収益を伴った売上拡大を実現する「事業戦略」及び投下資本収益性を向上させる「財務戦略(資本政策を含みます。)」が重要です。併せて、基幹事業の強化、事業領域の拡大・新規事業の積極展開等に経営資源を重点配分することにより、事業利益の最大化と事業利益率を持続的に向上させていくことが重要であると考えております。
なお、中期経営計画の達成における重要財務指標として、資本効率性はROE、事業収益性は連結事業利益及びROIC、収益性・安全性はフリーキャッシュ・フロー、財務健全性は親会社所有者帰属持分比率(自己資本比率)の各指標を重視しております。
(資金調達の状況)
当社グループでは、事業活動に必要となる資金は、グループで創出した資金でまかなうことを基本方針としております。その上で、事業投資等で必要資金が生じる場合には、財務の健全性維持を勘案し、主として社債の発行及び金融機関からの借入などにより持株会社が一元的に資金調達を行っております。
グループ子会社は金融機関からの資金調達を行わず、キャッシュ・マネジメントシステムを利用したグループ内ファイナンスにより必要資金の調達を行うことで、グループ資金の効率化を推進しております。
当連結会計年度については、上記方針に基づき、金融機関からの長期借入金により34億円を調達いたしました。一方、短期借入金91億円及び長期借入金295億円を返済した結果、有利子負債残高(除くリース負債)は、前連結会計年度末に比べ351億円減少し、2,139億円となりました。
なお、資金調達に係るリスクについては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載しております。
(財務政策)
「2024-2026年度 中期経営計画」における財務政策については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しております。
(配当政策)
当社の剰余金の配当に関する基本方針並びに当期の配当実績については、「第4 提出会社の状況 3 配当政策」に記載しております。
2)経営目標の達成状況
「2021-2023年度 中期経営計画」最終年度である2023年度において、連結営業利益目標(40,300百万円)をはじめ主要な経営数値目標を概ね達成し、財務体質は有利子負債の削減などにより改善しました。
中期経営計画目標※1 | 2023年度実績 | |
連結営業利益(IFRS) | 40,300百万円 | 43,048百万円 |
連結ROE | 7.0% | 8.1% |
連結ROIC | 5.0% | 5.1% |
温室効果ガス排出量※2 | △40.0% | △57.5% |
女性管理職比率※3 | 26.0% | 22.5% |
※1 本計画の策定時に、最終年度である2023年度に財務数値を2019年度水準に戻し、コロナ禍からの「完全復活」を果たすとともに、2024年度以降の「再成長」への道筋をつけるための目標として設定しました。
※2 Scope1,2削減率(2017年度比)、2023年度実績は2024年5月29日時点の概算値
(ご参考) Scope1:事業者自らによる温室効果ガスの直接排出
(社用車のガソリンなど)
Scope2:他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出
(店舗・事務所の電気使用など)
※3 女性管理職比率 2024年3月1日現在:26.2%
なお、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しておりますとおり、当社は「2024-2026年度 中期経営計画」を策定いたしました。本中期経営計画を通じ、百貨店・SC事業など「リテール事業の深化」、飛躍的成長に向けた「グループシナジーの進化」と共に、これらの戦略の実効性を高める「グループ経営基盤の強化」に集中して取り組み、経営目標の達成に努めてまいります。