四半期報告書-第82期第1四半期(平成30年4月1日-平成30年6月30日)

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2018/08/03 15:32
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本項における将来に関する事項は、別段の記載がない限り、当第1四半期連結会計期間の末日現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 財政状態の分析
<資産の部>当第1四半期連結会計期間末の総資産は前年度末比2,811億円(1.3%)減少の20兆8,538億円となりました。内訳は流動資産が同3,199億円(1.6%)減少の20兆1,585億円であり、このうち現金・預金が同4,305億円(11.7%)増加の4兆1,248億円、有価証券が同849億円(8.6%)増加の1兆721億円、トレーディング商品が同7,371億円(11.1%)増加の7兆4,041億円、営業貸付金が同1,632億円(11.3%)増加の1兆6,061億円、有価証券担保貸付金が同1兆7,310億円(26.6%)減少の4兆7,656億円となっております。固定資産は同387億円(5.9%)増加の6,953億円となっております。
<負債の部・純資産の部>負債合計は前年度末比2,819億円(1.4%)減少の19兆4,826億円となりました。内訳は流動負債が同4,030億円(2.4%)減少の16兆6,320億円であり、このうちトレーディング商品が同2,759億円(5.5%)減少の4兆7,548億円、有価証券担保借入金が同4,597億円(8.0%)減少の5兆3,161億円、銀行業における預金が同1,477億円(4.4%)増加の3兆5,362億円、短期借入金が同1,424億円(13.0%)増加の1兆2,341億円となっております。固定負債は同1,211億円(4.4%)増加の2兆8,466億円であり、このうち社債が同126億円(1.0%)増加の1兆3,279億円、長期借入金が同1,005億円(7.6%)増加の1兆4,283億円となっております。
純資産合計は同7億円(0.1%)増加の1兆3,712億円となりました。資本金及び資本剰余金の合計は4,781億円となりました。利益剰余金は親会社株主に帰属する四半期純利益を185億円計上したほか、総額242億円の配当金の支払いなどにより、同57億円(0.7%)減少の7,799億円となっております。自己株式の控除額は同86百万円(0.2%)減少の542億円、その他有価証券評価差額金は同37億円(6.1%)増加の649億円、為替換算調整勘定は同25億円(99.9%)増加の50億円、非支配株主持分は同96百万円(0.1%)減少の885億円となっております。
(2) 経営成績の分析
① 事業全体の状況
当第1四半期連結累計期間の営業収益は前年同期比9.7%増の1,751億円、純営業収益は同6.5%増の1,156億円となりました。
受入手数料は738億円と、同5.8%の増収となりました。委託手数料は、株式取引が増加したことにより、同2.2%増の165億円となりました。引受業務では、複数の大型エクイティ募集案件等が貢献し、引受け・売出し・特定投資家向け売付け勧誘等の手数料は、同99.7%増の114億円となりました。
トレーディング損益は、エクイティにおける顧客フローが増加したこと等により前年同期比10.6%増の266億円となりました。
販売費・一般管理費は前年同期比7.3%増の934億円となりました。取引関係費は販売促進に関連する費用の増加により同8.0%増の179億円、人件費は国内における給与の増加及び米国のSagent Holdings, Inc.とSignal Hill Holdings LLCを買収統合して昨年度発足させたDCS Advisory Holdings Inc.を連結子会社化したことにより同8.5%増の469億円、減価償却費は新システムの稼働等により同2.8%増の62億円となっております。
以上より、経常利益は同2.8%増の258億円となりました。
これに特別損益、法人税等及び非支配株主に帰属する四半期純利益を差し引いた結果、親会社株主に帰属する四半期純利益は前年同期比4.4%減の185億円となりました。
② セグメント情報に記載された区分ごとの状況
純営業収益及び経常利益をセグメント別に分析した状況は次のとおりであります。
(単位:百万円)
純営業収益経常利益又は経常損失(△)
平成29年
6月期
平成30年
6月期
対前年同期
増減率
構成比率平成29年
6月期
平成30年
6月期
対前年同期
増減率
構成比率
リテール部門48,83350,6093.6%43.8%10,3919,894△4.8%38.3%
ホールセール部門35,28039,79812.8%34.4%6,4386,9968.7%27.1%
アセット・マネジメント部門12,01112,2682.1%10.6%7,2007,4884.0%29.0%
投資部門1,8012,43535.2%2.1%1,4171,76024.2%6.8%
その他・調整等10,61810,4949.1%△294△278△1.1%
連結 計108,543115,6066.5%100.0%25,15325,8602.8%100.0%

[リテール部門]
リテール部門の主な収益源は、国内の個人投資家及び未上場会社の顧客の資産管理・運用に関する商品・サービスの手数料であり、経営成績に重要な影響を与える要因には、顧客動向を左右する国内外の金融市場及び経済環境の状況に加え、顧客のニーズに合った商品の開発状況や引受け状況及び販売戦略が挙げられます。
当第1四半期連結累計期間においては、昨年4月より取り組んでいるお客様目線をより重視した営業推進体制を継続し、営業員がより多くの時間を、お客様のニーズやマーケット動向を的確に捉えた提案に割けるようになりました。その結果、米国株式を中心に外国株式の売買金額が大幅に増加したほか、大型エクイティ募集により新規口座開設件数も大幅に増加となりました。
また、ラップ口座サービスの拡充にも継続的に取り組んでおり、当第1四半期連結会計期間末のラップ口座契約資産残高は2兆円を超え、過去最高水準となりました。
市場環境は良好と言えない中で、これらの取り組みにより、当第1四半期連結累計期間のリテール部門における純営業収益は前年同期比3.6%増の506億円、経常利益は同4.8%減の98億円となりました。リテール部門の当第1四半期連結累計期間の純営業収益及び経常利益のグループ全体の連結純営業収益及び連結経常利益に占める割合は、それぞれ43.8%及び38.3%でした。
[ホールセール部門]
ホールセール部門は、機関投資家等を対象に有価証券のセールス及びトレーディングを行うグローバル・マーケッツと、事業法人、金融法人等が発行する有価証券の引き受け、M&Aアドバイザリー業務や上場コンサルティング業務を行うグローバル・インベストメント・バンキングによって構成されます。グローバル・マーケッツの主な収益源は、機関投資家に対する有価証券の売買に伴って得る取引手数料及びトレーディング収益です。グローバル・インベストメント・バンキングの主な収益源は、引受業務やM&Aアドバイザリー業務によって得る引受け・売出し手数料とM&A手数料です。グローバル・マーケッツにおいては、国際的な地政学リスクや経済状況等で変化する市場の動向や、それに伴う顧客フローの変化が、経営成績に重要な影響を与える要因となります。グローバル・インベストメント・バンキングにおいては、顧客企業の資金調達手段の決定やM&Aの需要を左右する国内外の経済環境等に加え、当社が企業の需要を捉え、案件を獲得できるかどうかが経営成績に重要な影響を与える要因となります。
グローバル・マーケッツにおいては、当第1四半期連結累計期間半ば以降の顧客フロー回復や、株式市場における売買金額の増加により、エクイティ収益は前年同期比で増加しました。金融市場では、顧客フローはクレジットを中心に堅調を維持しましたが、国内長期金利が狭いレンジで推移する難しい環境が継続したことを受け、ポジション運営では厳しい状況となりました。これらの結果、当第1四半期連結累計期間の純営業収益は前年同期比2.6%増の280億円、経常利益は同9.0%増の58億円となりました。
グローバル・インベストメント・バンキングにおいては、複数の大型エクイティ募集・売出し案件でジョイント・グローバル・コーディネーターや主幹事を務めたこと等により、当第1四半期連結累計期間の引受け・売出し手数料は、前年同期比99.7%増の114億円と大幅な増加となりました。その結果、純営業収益は同47.9%増の117億円となりました。M&Aビジネスにおいては、欧州のDC Advisoryや、米国のDCS Advisoryが関与する海外・クロスボーダー案件や、国内の事業再編案件等が収益に貢献しました。これらの結果、グローバル・インベストメント・バンキングの経常利益は前年同期比10.1%増の8億円となりました。
当第1四半期連結累計期間のホールセール部門における純営業収益は前年同期比12.8%増の397億円、経常利益は同8.7%増の69億円となりました。ホールセール部門の当第1四半期累計期間の純営業収益及び経常利益のグループ全体の連結純営業収益及び連結経常利益に占める割合は、それぞれ34.4%及び27.1%でした。
[アセット・マネジメント部門]
アセット・マネジメント部門の収益は、主に当社連結子会社の大和証券投資信託委託における投資信託の組成と運用に関する報酬と、連結子会社の大和リアル・エステート・アセット・マネジメントの不動産運用収益によって構成されます。また、当社持分法適用関連会社である大和住銀投信投資顧問の投資信託の組成と運用及び投資顧問業務に関する報酬からの利益及び同じく持分法適用関連会社である大和証券オフィス投資法人の不動産運用収益からの利益は、それぞれ当社の持分割合に従って経常利益に計上されます。経営成績に重要な影響を与える要因としては、マーケット環境によって変動する顧客の投資信託及び投資顧問サービスへの需要と、マーケット環境に対するファンドの運用パフォーマンスや、顧客の関心を捉えたテーマ性のある商品開発等による商品自体の訴求性が挙げられます。大和リアル・エステート・アセット・マネジメント及び大和証券オフィス投資法人の経営成績は、国内の不動産市場・オフィス需要の動向に左右されます。
当第1四半期連結累計期間において、大和証券投資信託委託では、R&Iファンド大賞において複数のファンドが表彰を受けたことに示される運用力の高い商品、NISA、iDeCo向け資産形成型商品やETFなど、投資家の資産形成ステージに応じた商品の提供を通じて運用資産残高を拡大させ、公募投資信託の運用資産残高は前年同期比6.7%増の15.9兆円となりました。大和住銀投信投資顧問では、アクティブ運用力を生かしたファンドの設定や投資一任において新規の年金顧客との取引を開始したことにより、公募株式投資信託及び投資顧問の運用資産残高は前年同期比0.7%増の4.8兆円となりました。不動産アセット・マネジメントでは、大和リアル・エステート・アセット・マネジメントが運用する不動産及びインフラ資産はホテル私募リートの運用開始に伴う物件取得等により拡大した一方で、大和証券オフィス投資法人における運用資産残高は保有物件の入替えにより減少したため、運用資産残高は前年同期比1.5%減の8,163億円となりました。その結果、当第1四半期連結累計期間のアセット・マネジメント部門の純営業収益は前年同期比2.1%増の122億円、経常利益は同4.0%増の74億円となりました。アセット・マネジメント部門の当第1四半期連結累計期間の純営業収益及び経常利益のグループ全体の連結純営業収益及び連結経常利益に占める割合は、それぞれ10.6%及び29.0%でした。
[投資部門]
投資部門は主に、連結子会社である大和企業投資と大和PIパートナーズで構成されます。投資部門の主な収益源は、投資先の新規上場(IPO)・M&A等による売却益や、投資事業組合への出資を通じたキャピタルゲインのほか、契約に基づきファンドから受領する、管理運営に対する管理報酬や投資成果に応じた成功報酬です。
当第1四半期連結累計期間においては、大和企業投資において国内外の成長企業への投資を積極的に実行するとともに、投資先企業と大手企業とのマッチングを実施したほか、大和PIパートナーズは、昨年に引き続き、重点地域であるミャンマーへの投資を実行しながら、複数のエクイティ投資先の売却益により、着実に収益を確保しました。
その結果、投資部門の純営業収益は前年同期比35.2%増の24億円、経常利益は同24.2%増の17億円となりました。投資部門の純営業収益及び経常利益のグループ全体の連結純営業収益及び連結経常利益に占める割合は、それぞれ2.1%及び6.8%でした。
[その他]
その他の事業には、主に大和総研と大和総研ビジネス・イノベーションからなる大和総研グループによるリサーチ・コンサルティング業務及びシステム業務のほか、大和ネクスト銀行による銀行業務などが含まれます。
大和総研は、当社グループのシステム開発を着実に遂行したほか、高付加価値のソリューション提案により、顧客との関係を強化し、当社グループのビジネスに貢献しました。
大和総研ビジネス・イノベーションは、大口顧客向けシステム開発案件を手掛けたこと等により、当社グループの収益に貢献しました。
大和ネクスト銀行では、外貨建てローン債権を裏付資産とする資産流動化ローンの積み増しにより貸出金利息が増加しました。また昨年11月より定期預金に「金利」以外の魅力を付加するため、企業・団体とタイアップした預金商品である「えらべる預金」の提供を開始し、6月末時点の累計預入件数は11,808件、累計預入金額は140億円となりました。
その結果、その他・調整等に係る純営業収益は104億円(前年同期106億円)、経常損失は2億円(前年同期2億円)となりました。その他・調整等の当第1四半期累計期間の純営業収益のグループ全体の連結純営業収益に占める割合は、9.1%でした。
③ 経営方針・経営戦略等及び経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループでは、当第1四半期連結累計期間より3ヵ年の中期経営計画“Passion for the Best” 2020を新たにスタートさせております。前連結会計年度を最終年度とする中期経営計画“Passion for the Best” 2017においては、数値目標として連結自己資本利益率(ROE)10%以上と固定費カバー率75%以上の指標を掲げておりましたが、“Passion for the Best” 2020においては、お客様本位を起点として健全な利益の確保を通じた持続的成長を図るべく、「お客様本位」、「業績」、「財務」の3つのキー・パフォーマンス・インディケーター(KPI)を設定しています。お客様本位KPIでは、お客様本位の業務運営をさらに進化させるため、「お客様満足度」をKPIのメインフレームに据えています。具体的には、ネット・プロモーター・スコア(NPS)という、お客様のロイヤリティーを数値化した指標を本格的にKPIとして導入します。また、お客様からの信頼の証しである預り資産についてもKPIとして設定し、2020年度に80兆円以上を目指します。業績KPIでは、これまでの取組みにより安定的に収益を上げる基盤ができてきたことから、大きな成長を目指す次なるステージに入ってきたと捉え、従来より掲げておりますROE10%以上に加えて、2020年度における連結経常利益2,000億円以上を新たに設定しました。財務KPIについては、当社グループとしてのハイブリッド化を進める中でも、強固な財務基盤を維持することを示すべく、連結総自己資本規制比率18%以上を掲げています。
④ 経営成績の前提となる当第1四半期連結累計期間のマクロ経済環境
<海外の状況>世界経済は緩やかに拡大しているものの、先行き不透明なリスク要因が浮上しています。米国では、雇用・所得環境が引き続き安定しており、平成29年末に成立した税制改革などの拡張的な財政政策もあって、米国景気は着実に拡大しています。しかし、内外の政治的な混乱に対する懸念を払拭できず、特に、米国のトランプ大統領が保護主義的な通商政策を強力に推進していることは、米国だけでなく、中国や欧州など世界全体に対して不確実性をもたらしています。
米国経済は平成30年1-3月期に、これまで景気を牽引してきた個人消費が約5年ぶりの低い伸びに鈍化し、実質GDP成長率は前期比年率2.2%増と低成長に留まりました。もっとも、消費の裏付けとなる雇用・所得環境が安定し、消費者マインドも高水準を維持していることから、4-6月期の成長率は個人消費を中心に再び加速し、同4.1%増と約4年ぶりの高成長となりました。また、税制改革の恩恵は、企業業績や企業マインドの改善にも及んでおり、設備投資は堅調に推移しています。ただ、平成30年に入ってから、トランプ大統領は保護主義的な通商政策を強力に推進しており、その矛先は、鉄鋼・アルミニウムにとどまらず、自動車・同部品などにも及ぶほか、対象となる国についても、中国にとどまらず、EU(欧州連合)、カナダ、メキシコ、日本などにも拡大させています。これらの国々が対抗措置を取ることになれば、米国からの輸出量は減少し、企業の生産活動や投資計画に悪影響が及ぶ恐れがあります。
金融面では、底堅い景気拡大を受けて、FRB(連邦準備制度理事会)は平成29年の計3回の利上げに続いて、平成30年3月と6月にも政策金利を引き上げました。一方、平成29年10月からは、FRBが保有する資産の規模縮小も開始しています。また、4-6月期の米国株式市場では、底堅い米国経済や好調な企業決算を背景に、NYダウ平均株価は緩やかに上昇し、6月中旬の米朝首脳会談の開催前後には約3ヵ月ぶりの高値を付けました。しかし、6月後半にかけては、貿易摩擦激化への懸念が広がるとともに、株価は大きく下落しました。
欧州経済(ユーロ圏経済)は、緩やかながら安定した成長が続き、2017年の実質GDP成長率は2.4%と10年ぶりの高成長になりました。ユーロ圏の雇用情勢は改善傾向にあり、賃金上昇など家計の所得環境も良好なことから個人消費が底堅く、内需を中心にバランスの取れた形で、1%程度とされる潜在成長率を上回る成長が続くとみられます。もっとも、平成30年1-3月期のユーロ圏は、悪天候等の幾つかの一時的な要因に下押しされたこともあり、成長率が前期比年率1.5%増となり、過去3四半期平均の前期比年率2.9%増から大きく鈍化しました。また、4-6月期も同1.4%増と2年ぶりの低成長にとどまりました。高成長だった2017年に比べると、2018年は、原油価格の上昇やユーロ高、金利先高観の台頭などの要因によって、成長が抑制されることが想定されます。3月の総選挙後、政権樹立協議が難航したイタリアでは、漸く6月になって連立政権が発足し、政局不安が後退しました。ただ、EUに懐疑的なポピュリスト新政権がイタリアに誕生したことに加えて、6月下旬にドイツでも政局不安を招く原因になった移民問題がEU内の対立を生じさせており、米国との貿易摩擦問題とともに、欧州経済にとって重荷になっています。
一方、金融面では、デフレ懸念の後退を受けて、ECB(欧州中央銀行)は非伝統的な金融緩和政策の軌道修正を進めています。平成29年4月から量的緩和の規模を縮小させたのに続き、平成30年1月以降、資産買取額を毎月300億ユーロに半減させました。そして、平成30年6月には、同年10月からさらに減額した上で、同年12月末で新規の資産買取を停止することを決定しました。同時に、残高を維持するための再投資を継続する他、政策金利は少なくとも平成31年夏まで現行水準に据え置く方針を示しました。穏健なスタンスを示したECBは、急激な金利上昇や通貨高を回避するため、非伝統的な金融緩和政策の修正を慎重に進めていくとみられます。
新興国経済は、平成27年をボトムにして成長率が加速しており、平成29年は4年ぶりの高成長となりました。中国は、平成30年4-6月期の実質GDP成長率が前年比6.7%増と、平成30年1-3月期の同6.8%成長から僅かに減速したものの、堅調に成長を続けています。固定資産投資は、インフラ投資が大幅に減速する一方、過剰生産能力が懸念される製造業はやや加速しています。能力拡張投資が抑制される中、技術革新を促す投資が大きく増えているという特徴が見られます。また、貿易摩擦の一方の当事者である中国は、米国側の動きに対して、即座に対抗措置を講じる姿勢を示すなど、互いに制裁を発動し合う状況にエスカレートしつつあります。実際に平成30年4-6月期に実施された追加関税の規模は限定的ですが、7月以降、制裁が順次発動されれば経済への影響は徐々に大きくなるとみられ、米国との通商問題は長期的なリスク要因になることが懸念されます。一方、中国以外の新興国を見ると、原油などの資源価格の上昇は資源国経済にとって追い風になっています。もっとも、平成30年6月のOPEC総会後も原油価格は高止まりしており、資源の乏しい国々には大きな負担になっています。また、米国など先進国の金利上昇の影響から資本が国外に流出し、通貨安に伴う高インフレや通貨防衛のために、政策金利を引き上げざるを得ないケースも散見されます。さらに、米中を中心とした貿易摩擦が、貿易数量の鈍化を通じて世界全体に及ぶことになれば、新興国経済への影響も避けられないとみられます。
<日本の状況>日本経済は、平成28年半ば以降、内需を中心に緩やかな回復基調が続きましたが、平成30年1-3月期の実質GDP成長率は前期比年率0.6%減と9四半期ぶりのマイナス成長に陥り、過去4四半期の平均年率2%弱の成長から大幅に減速しました。背景には、個人消費や住宅投資が軟調であったことに加えて、これまで堅調に拡大してきた設備投資や輸出の伸びも鈍化したことがあります。内需の弱さを反映して輸入も減速したために、外需の寄与度はプラスとなったものの、内需の寄与度のマイナス幅が上回ったことから、経済全体ではマイナス成長となり、景気拡大の足踏みが見られました。
GDPに占めるウエイトの大きい個人消費は、平成30年1-3月期に小幅ながらも2四半期ぶりに減少しました。天候不順による生鮮食品の高騰や原油価格の上昇、人手不足などに伴うコスト増などを受けて、消費者が直面する物価上昇率は高止まり、消費者の生活に影響を及ぼしているとみられます。もっとも、失業率が2%台前半まで低下するなど企業の採用意欲は引き続き強く、賃金も緩やかに増加するなど、雇用・所得環境の着実な改善が個人消費を下支えすることが期待されます。
住宅投資については、低い住宅ローン金利が下支え要因となったものの、建材コストや人件費の上昇もあって、大都市圏を中心に住宅価格が上昇したことが需要を抑制したほか、相続税対策などの特殊要因によって押し上げられてきた貸家建設の減速感が強まりました。この結果、平成29年7-9月期以降、3四半期連続で前期比マイナス成長となりました。4~5月の新設住宅着工はやや持ち直していますが、住宅投資の緩やかな減速は継続するとみられます。
一方、企業の設備投資は、平成30年1-3月期もプラス成長を維持したものの、生産活動が一服したこともあって、伸び率は鈍化しています。もっとも、企業収益が高水準にあることや労働需給の逼迫を背景に、深刻な人手不足に対応した合理化・省人化投資や、競争力を維持するための設備の更新、研究開発投資などに対する企業の意欲は強いものと見込まれます。また、日銀短観(6月調査)の平成30年度の設備投資計画をみても、設備過剰感が解消されている大企業の場合、製造業や非製造業ともに高い伸びが示されています。
外需に目を向けると、海外経済が堅調に推移してきたことから、輸出は増加基調にありました。もっとも、EU向けやアジア向けの輸出数量は平成29年末頃から頭打ちになっており、米国向けの輸出数量も平成30年に入り足踏みしています。一旦減速局面を迎えた後は、海外経済の成長に合わせて拡大傾向に復することも予想されますが、米国の保護主義的な通商政策によって、世界貿易の縮小につながるリスクがある点には留意が必要です。一方、輸入金額に関しては、好調な内需を背景に輸入数量が拡大していること、円安と原油高が前年比で見た輸入価格を押し上げていることから、持ち直しの動きが見られます。
金融面では、日本銀行による強力な金融緩和措置が続いています。「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の一環として、イールドカーブ・コントロールを導入し、短期金利と長期金利の両方を事実上管理するという政策を実行しています。米国の市場金利に連動して、日本の国債利回りが上昇する局面もありましたが、平成30年4-6月期の長期金利(10年国債利回り)は0.02%~0.07%という狭いレンジで安定的に推移し、期間平均では0.046%になりました。なお、日本銀行は、4月末に公表した展望レポートの中で、インフレ率が2%程度に達する具体的な時期に関する表記を削除しています。一方、為替レートは、平成30年2月に世界的な株安が進み、さらに米中の貿易摩擦激化への警戒感が強まると、リスク回避の動きから円高が加速し、平成30年3月下旬には、1年4ヵ月ぶりの円高水準となる104円台を記録しました。ただ、4月に入ると、緩やかに円安・ドル高に転じ、5月以降は概ね109円~111円というレンジで推移しました。また、対ユーロでは、欧州の景気減速やイタリアの政局不安を背景に、4~5月にかけて円高・ユーロ安が進展し、5月末には平成29年6月以来となる高値を付けました。6月に入ると、政治リスクが後退したことから、ユーロは上昇基調となったものの、ECBの金融政策発表を受けて再び円高に振れるなど、6月全体で見ると、円は対ユーロで概ね横ばいで推移しました。
平成30年6月末の日経平均株価は22,304円51銭(同年3月末比850円21銭高)、10年国債利回りは0.04%(同0.003ポイントの低下)、為替は1ドル110円64銭(同4円45銭の円安)となりました。
(3) 事業上及び財務上の対処すべき課題
当第1四半期連結累計期間において、事業上及び財務上の対処すべき課題について、重要な変更及び新たに生じた事項はありません。
(4) 研究開発活動
該当事項はありません。
(5) 資本の財源及び流動性に係る情報
① 流動性の管理
<財務の効率性と安定性の両立>当社グループは、多くの資産及び負債を用いて有価証券関連業務を中心としたビジネスを行っており、ビジネスを継続する上で十分な流動性を効率的かつ安定的に確保することを資金調達の基本方針としております。
当社グループの資金調達手段には、社債、ミディアム・ターム・ノート、金融機関借入、コマーシャル・ペーパー、コールマネー、預金受入等の無担保調達、現先取引、レポ取引等の有担保調達があり、これらの多様な調達手段を適切に組み合わせることにより、効率的かつ安定的な資金調達の実現を図っております。
財務の安定性という観点では、環境が大きく変動した場合においても、業務の継続に支障をきたすことのないよう、平時から安定的に資金を確保するよう努めております。特に近年においては、世界的金融危機及び信用危機による不測の事態に備え、市場からの資金調達、金融機関からの借入等により、手元流動性の更なる積み増しを行っております。同時に、危機発生等により、新規の資金調達及び既存資金の再調達が困難となる場合も想定し、調達資金の償還期限及び調達先の分散を図っております。
当社は、平成26年金融庁告示第61号による連結流動性カバレッジ比率(以下、「LCR」)の最低基準(平成27年3月末から段階的に導入)の遵守が求められております。当社の当第1四半期日次平均のLCRは141.7%となっており、上記金融庁告示による要件を満たしております。また、当社は、上記金融庁告示による規制上のLCRのほかに、独自の流動性管理指標を用いた流動性管理態勢を構築しております。即ち、一定期間内に期日が到来する無担保調達資金及び同期間にストレスが発生した場合の資金流出見込額に対し、様々なストレスシナリオを想定したうえで、それらをカバーする流動性ポートフォリオが保持されていることを日次で確認しております。その他、1年以上の長期間に亘りストレス環境が継続することを想定した場合に、保有資産を維持するための長期性資金調達状況の十分性を計測及びモニタリングしており、1年間無担保資金調達が行えない場合でも業務の継続が可能となるように取り組んでおります。
当第1四半期日次平均のLCRの状況は次のとおりです。
(単位:億円)
日次平均
(自 平成30年4月
至 平成30年6月)
適格流動資産(A)26,880
資金流出額(B)37,621
資金流入額(C)18,659
連結流動性カバレッジ比率(LCR)
算入可能適格流動資産の合計額(D)26,880
純資金流出額(B)-(C)18,962
連結流動性カバレッジ比率(D)/((B)-(C))141.7%


<グループ全体の資金管理>当社グループでは、グループ全体での適正な流動性確保という基本方針の下、当社が一元的に資金の流動性の管理・モニタリングを行っております。当社は、当社固有のストレス又は市場全体のストレスの発生により新規の資金調達及び既存資金の再調達が困難となる場合も想定し、短期の無担保調達資金について、当社グループの流動性ポートフォリオが十分に確保されているかをモニタリングしております。また、当社は、必要に応じて当社からグループ各社に対し、機動的な資金の配分・供給を行うと共に、グループ内で資金融通を可能とする態勢を整えることで、効率性に基づく一体的な資金調達及び資金管理を行っております。
<コンティンジェンシー・ファンディング・プラン>当社グループは、流動性リスクへの対応の一環として、コンティンジェンシー・ファンディング・プランを策定しております。同プランは、信用力の低下等の内生的要因や金融市場の混乱等の外生的要因によるストレスの逼迫度に応じた報告体制や資金調達手段の確保などの方針を定めており、これにより当社グループは機動的な対応により流動性を確保する態勢を整備しております。
当社グループのコンティンジェンシー・ファンディング・プランは、グループ全体のストレスを踏まえて策定しており、変動する金融環境に機動的に対応するため、定期的な見直しを行っております。
また、金融市場の変動の影響が大きく、その流動性確保の重要性の高い大和証券株式会社、株式会社大和ネクスト銀行及び海外証券子会社においては、更に個別のコンティンジェンシー・ファンディング・プランも策定し、同様に定期的な見直しを行っております。
なお、当社は、子会社のコンティンジェンシー・ファンディング・プランの整備状況について定期的にモニタリングしており、必要に応じて想定すべき危機シナリオを考慮して子会社の資金調達プランやコンティンジェンシー・ファンディング・プランそのものの見直しを行い、更には流動性の積み増しを実行すると同時に資産圧縮を図るといった事前の対策を講じることとしております。
② 株主資本
当社グループが株式や債券、デリバティブ等のトレーディング取引、貸借取引、引受業務、ストラクチャード・ファイナンス、M&A、プリンシパル・インベストメント、証券担保ローン等の有価証券関連業を中心とした幅広い金融サービスを展開するためには、十分な資本を確保する必要があります。また、当社グループは、日本のみならず、海外においても有価証券関連業務を行っており、それぞれの地域において法規制上必要な資本を維持しなければなりません。
当第1四半期連結会計期間末の株主資本は、前連結会計年度末比56億円減少し、1兆2,038億円となりました。資本金及び資本剰余金の合計は4,781億円となっております。利益剰余金は親会社株主に帰属する四半期純利益を185億円計上したほか、配当金242億円の支払いを行った結果、前連結会計年度末比57億円減少の7,799億円となりました。自己株式の控除額は、542億円となっております。