四半期報告書-第84期第1四半期(令和2年4月1日-令和2年6月30日)
本項における将来に関する事項は、別段の記載がない限り、当第1四半期連結会計期間の末日現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 財政状態の分析
<資産の部>当第1四半期連結会計期間末の総資産は前連結会計年度末比1兆8,354億円(7.7%)増加の25兆6,575億円となりました。内訳は流動資産が同1兆8,612億円(8.1%)増加の24兆7,078億円であり、このうち現金・預金が同813億円(2.1%)増加の4兆458億円、トレーディング商品が同1兆639億円(13.3%)増加の9兆912億円、営業貸付金が同2,034億円(11.5%)増加の1兆9,718億円、有価証券担保貸付金が同409億円(0.6%)増加の6兆7,266億円となっております。固定資産は同257億円(2.6%)減少の9,496億円となっております。
<負債の部・純資産の部>負債合計は前連結会計年度末比1兆8,290億円(8.1%)増加の24兆3,933億円となりました。内訳は流動負債が同1兆7,604億円(8.8%)増加の21兆6,791億円であり、このうち有価証券担保借入金が同2兆4,674億円(34.3%)増加の9兆6,662億円、銀行業における預金が同597億円(1.5%)減少の3兆9,774億円となっております。固定負債は同685億円(2.6%)増加の2兆7,102億円であり、このうち社債が同536億円(3.9%)増加の1兆4,328億円、長期借入金が同151億円(1.3%)増加の1兆1,984億円となっております。
純資産合計は同64億円(0.5%)増加の1兆2,641億円となりました。資本金及び資本剰余金の合計は4,782億円となりました。利益剰余金は親会社株主に帰属する四半期純利益を175億円計上したほか、配当金136億円の支払いを行ったこと等により、同36億円(0.4%)増加の8,381億円となっております。自己株式の控除額は同8億円(0.7%)減少の1,095億円、その他有価証券評価差額金は同26億円(9.9%)増加の295億円、為替換算調整勘定は同21億円減少の△76億円、非支配株主持分は同6億円(1.8%)減少の381億円となっております。
(2) 経営成績の分析
① 事業全体の状況
当第1四半期連結累計期間の営業収益は前年同期比29.1%減の1,286億円、純営業収益は同1.6%減の1,054億円となりました。
受入手数料は577億円と、同11.1%の減収となりました。委託手数料は、株式取引が増加したことにより、同37.9%増の171億円となりました。引受業務では、新型コロナウイルス感染症の影響で複数のエクイティ引受案件等が延期となったことから、前年同期と比べ引受け・売出し・特定投資家向け売付け勧誘等の手数料が同36.1%減の44億円となりました。
トレーディング損益は、相場環境を見据えたポジション構築が奏功したことなどから、同14.5%増の320億円となりました。
販売費・一般管理費は同6.2%減の888億円となりました。取引関係費は販売促進に関連する費用が減少し同25.4%減の132億円、人件費は主に国内における賞与が減少したことから同4.2%減の449億円となっております。
以上より、経常利益は同19.2%増の213億円となりました。
これに特別損益を加え、法人税等及び非支配株主に帰属する四半期純利益を差し引いた結果、親会社株主に帰属する四半期純利益は前年同期比9.2%増の175億円となりました。
② セグメント情報に記載された区分ごとの状況
純営業収益及び経常利益をセグメント別に分析した状況は次のとおりであります。
(単位:百万円)
[リテール部門]
リテール部門の主な収益源は、国内の個人投資家及び未上場会社のお客様の資産管理・運用に関する商品・サービスの手数料であり、経営成績に重要な影響を与える要因には、お客様動向を左右する国内外の金融市場及び経済環境の状況に加え、お客様のニーズに合った商品の開発状況や引受け状況及び販売戦略が挙げられます。
当第1四半期連結累計期間においては、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言の発令の影響等から、商品販売が減少しましたが、緊急事態宣言が解除された後は回復傾向にあります。エクイティ収益はエクイティ募集手数料収入の減少により減収となり、債券収益についても個人向け国債及び外債の販売額減少等により減収となりました。また、株式投資信託も4月の販売額が低迷したことから販売手数料収入は減少しました。なお、ラップ口座サービスの契約口座数が減少したものの、市場環境の回復により契約資産残高は増加しました。
その結果、当第1四半期連結累計期間のリテール部門における純営業収益は前年同期比18.4%減の351億円、経常損失は8億円(前年同期は26億円の経常利益)となりました。リテール部門の当第1四半期連結累計期間の純営業収益のグループ全体に占める割合は33.3%でした。
[ホールセール部門]
ホールセール部門は、機関投資家等を対象に有価証券のセールス及びトレーディングを行うグローバル・マーケッツと、事業法人、金融法人等が発行する有価証券の引受け、M&Aアドバイザリー業務や上場コンサルティング業務を行うグローバル・インベストメント・バンキングによって構成されます。グローバル・マーケッツの主な収益源は、機関投資家に対する有価証券の売買に伴って得る取引手数料及びトレーディング収益です。グローバル・インベストメント・バンキングの主な収益源は、引受業務やM&Aアドバイザリー業務によって得る引受け・売出し手数料とM&A手数料です。グローバル・マーケッツにおいては、地政学リスクや国際的な経済状況等で変化する市場の動向や、それに伴う顧客フローの変化が、経営成績に重要な影響を与える要因となります。グローバル・インベストメント・バンキングにおいては、顧客企業の資金調達手段の決定やM&Aの需要を左右する国内外の経済環境等に加え、当社が企業の需要を捉え、案件を獲得できるかどうかが経営成績に重要な影響を与える要因となります。
グローバル・マーケッツは増収増益となりました。エクイティ収益は株価の上昇を背景に投資家のアクティビティが回復し、増収となりました。フィクスト・インカム収益は、相場環境を見据えたポジション運営が好調であったことに加えて、前年度から引き続き米州における顧客フローが堅調であったことから増収となりました。その結果、当第1四半期連結累計期間の純営業収益は前年同期比65.8%増の452億円、経常利益は同353.0%増の205億円となりました。
グローバル・インベストメント・バンキングは減収減益となりました。引受け・売出し手数料は、新型コロナウイルス感染症の影響で業績見通しが不透明となったこと等により、複数のエクイティ引受け案件が延期となったことから、減収となりました。また、M&Aビジネスにおいても、国内外で案件の延期等があったことから、減収となりました。これらの結果、グローバル・インベストメント・バンキングの純営業収益は前年同期比48.5%減の62億円、経常損失は20億円となりました。
その結果、当第1四半期連結累計期間のホールセール部門における純営業収益は前年同期比30.7%増の515億円、経常利益は同231.6%増の184億円となりました。ホールセール部門の当第1四半期連結累計期間の純営業収益及び経常利益のグループ全体に占める割合は、それぞれ48.8%及び70.6%でした。
[アセット・マネジメント部門]
アセット・マネジメント部門の収益は、主に当社連結子会社の大和アセットマネジメント(旧大和証券投資信託委託)における投資信託の組成と運用に関する報酬と、連結子会社の大和リアル・エステート・アセット・マネジメント及びサムティ・レジデンシャル投資法人の不動産運用収益によって構成されます。また、当社持分法適用関連会社である三井住友DSアセットマネジメントの投資信託の組成と運用及び投資顧問業務に関する報酬からの利益、同じく持分法適用関連会社である大和証券オフィス投資法人の不動産運用収益からの利益は、それぞれ当社の持分割合に従って経常利益に計上されます。経営成績に重要な影響を与える要因としては、マーケット環境によって変動する顧客の投資信託及び投資顧問サービスへの需要と、マーケット環境に対するファンドの運用パフォーマンスや、顧客の関心を捉えたテーマ性のある商品開発等による商品自体の訴求性が挙げられます。大和リアル・エステート・アセット・マネジメント、サムティ・レジデンシャル投資法人及び大和証券オフィス投資法人の経営成績は、国内の不動産市場・オフィス需要の動向の影響を受けます。
当第1四半期連結累計期間において、大和アセットマネジメントでは、R&Iファンド大賞において表彰された複数のファンド、NISA、iDeCo向け資産形成型商品やETFなど、投資家の資産形成ステージに応じた商品を提供しており、特にETFを中心に運用資産残高を拡大させた結果、公募投資信託の運用資産残高は前連結会計年度末比14.2%増の17.0兆円となりました。不動産アセット・マネジメントでは、大和リアル・エステート・アセット・マネジメント及びサムティ・レジデンシャル投資法人の2社を合わせた運用資産残高は前連結会計年度末比6.0%増の1兆1,332億円となりました。
その結果、当第1四半期連結累計期間のアセット・マネジメント部門における純営業収益は前年同期比12.6%増の127億円、経常利益は同21.9%増の75億円となりました。アセット・マネジメント部門の当第1四半期連結累計期間の純営業収益及び経常利益のグループ全体に占める割合は、それぞれ12.1%及び28.9%でした。なお、当第1四半期連結累計期間のアセット・マネジメント部門における、新型コロナウイルスの感染拡大による業績への影響は限定的です。
[投資部門]
投資部門は主に、連結子会社である大和企業投資、大和PIパートナーズ及び大和エナジー・インフラで構成されます。投資部門の主な収益源は、投資先の新規上場(IPO)・M&A等による売却益や、投資事業組合への出資を通じたキャピタルゲインのほか、契約に基づきファンドから受領する、管理運営に対する管理報酬や投資成果に応じた成功報酬です。
当第1四半期連結累計期間において、大和企業投資では、引き続き国内外の成長企業への投資を行ったほか、大和PIパートナーズでは、ローン、不良債権、不動産、国内外のPE投資を着実に実行しました。また、大和エナジー・インフラでは、脱炭素エネルギーファンドやスペインの通信事業への出資を行うなど、持続可能な開発目標(SDGs)に資するエネルギー・インフラ関連投資を拡大しました。しかしながら、前年同期に貢献した太陽光発電事業による収益が減少したこと等から、減収減益となりました。
その結果、当第1四半期連結累計期間の投資部門における純営業収益は前年同期比38.9%減の10億円、経常利益は同87.3%減の1億円となりました。投資部門の当第1四半期連結累計期間の純営業収益及び経常利益のグループ全体に占める割合は、それぞれ1.0%及び0.4%でした。なお、新型コロナウイルス感染症を起因とする投資先の株価下落や業績悪化等で、当第1四半期連結累計期間の投資部門の業績に大きな影響を与えたものはありません。
[その他]
その他の事業には、主に大和総研と大和総研ビジネス・イノベーションからなる大和総研グループによるリサーチ・コンサルティング業務及びシステム業務のほか、大和ネクスト銀行による銀行業務、連結会計上の調整などが含まれます。
大和総研は、当社グループのシステム開発を着実に実行したほか、社内外の連携強化による、付加価値の高いソリューション提案により、顧客との関係を強化し、当社グループのビジネスに貢献しました。
大和総研ビジネス・イノベーションは、大口顧客向けシステム開発案件を手掛けたこと等により、当社グループの収益に貢献しました。
大和ネクスト銀行では、引き続き、銀行代理業者である大和証券と連携して各種キャンペーンを実施しました。当第1四半期連結会計期間末の預金残高(譲渡性預金含む)は前連結会計年度末比1.6%減の3兆9,945億円、銀行口座数は同0.4%増の141万口座となりました。
当第1四半期連結累計期間において、その他セグメントに属する一部のグループ会社の収益が、前年同期比で減少したため、その他・調整等に係る純営業収益は49億円(前年同期115億円)、経常損失は39億円(前年同期は25億円の経常利益)となりました。その他・調整等の当第1四半期連結累計期間の純営業収益のグループ全体に占める割合は4.7%でした。
③ 経営方針・経営戦略等及び経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当第1四半期連結累計期間において、経営方針・経営戦略等及び経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等について、第83期有価証券報告書の「目標とする経営指標の達成状況等」に記載した経営指標から重要な変更及び新たに生じた事項はありません。
④ 経営成績の前提となる当第1四半期連結累計期間のマクロ経済環境
<海外の状況>2019年の世界経済は、米中貿易摩擦などから減速感が強まりつつも緩やかな拡大が続いていました。しかし、2020年に入って、新型コロナウイルスの感染が拡大したことにより、世界経済は急激に悪化することになりました。IMF(国際通貨基金)が2020年6月に公表した世界経済見通しによれば、2020年は新型コロナウイルス感染症の影響により先進国、新興国ともにマイナス成長に転じ、世界経済成長率は△4.9%とリーマン・ショック時を上回る大幅なマイナスが見込まれています。
米国経済は、新型コロナウイルスの感染者数の急増を受けて、急速に悪化しました。3月半ばにトランプ大統領が緊急事態を宣言し、小売店や飲食店、娯楽施設などの営業規制や外出制限を実施したことによって、外食や娯楽関連など不要不急のサービスを中心に個人消費が急減し、2020年1-3月期の実質GDP成長率は前期比年率△5.0%と6年ぶりのマイナス成長となりました。また、営業規制の影響を受けたサービス業などでは、大量の失業者が発生し、4月の失業率は14.7%と戦後最高水準を記録しました。急激な景気悪化を受けて、トランプ政権および連邦議会は、矢継ぎ早に対策を打ち出しました。なかでも3月27日に成立した経済対策は総額2兆ドル超と過去最大規模となり、4月以降、家計への現金給付や失業給付の拡充、企業への融資などが実施されました。こうした政府の経済対策による下支えに加えて、営業規制・外出制限が段階的に解除され、経済活動が再開されたことで、米国経済は5月頃から持ち直しつつあります。ただし、経済活動の再開はあくまで段階的なものであり、コロナウイルスの感染拡大前に比べると、経済活動の水準は非常に低い状況が続いています。このため4-6月期の実質GDP成長率は前期比年率△32.9%と2四半期連続のマイナスとなり、マイナス幅は1-3月期から大きく拡大しました。
金融面では、FRB(連邦準備制度理事会)が景気悪化に対応して、積極的な金融緩和を行いました。新型コロナウイルスの感染が拡大する以前においても、景気減速懸念が高まる中、FRBは2019年7月、9月および10月のFOMC(連邦公開市場委員会)において、3度にわたる利下げを実施しました。しかし、こうした金融緩和にもかかわらず、新型コロナウイルス感染症の影響によって経済が急激に悪化したことを受け、FRBは2020年3月に2度の緊急利下げを実施し、2015年12月以来となる実質的なゼロ金利政策を復活させました。さらに、無制限の量的緩和の拡大も決定し、FRBのバランスシートは大幅に拡大しています。
欧州経済(ユーロ圏経済)も、2019年までの緩やかな成長から一転して、2020年に入って急激に悪化しています。2020年1-3月期の実質GDP成長率は前期比年率△13.6%と、1995年の統計開始以降で最大の落ち込みとなりました。国別の動向を見ると、フランス、スペイン、イタリアなど、特に新型コロナウイルスの感染拡大が深刻だった国の落ち込みが大きく、欧州全体の実質GDP成長率の悪化の大きな要因となりました。また、多くの国では3月半ばからロックダウン(都市封鎖)に踏み切ったことから、4月には、個人消費や生産など、幅広い分野でユーロ圏経済は一層大きく落ち込むことになりました。一方、5月に入るとロックダウンが徐々に緩和されたことで、経済の悪化に歯止めが掛かりつつあります。ただし、引き続き新型コロナウイルスの感染リスクが高い中、経済活動の再開は段階的なものとなっており、景気の回復ペースは非常に緩やかなものとなっています。
金融面では、ECB(欧州中央銀行)は、世界経済の不透明さが増し、ユーロ圏の景気減速が鮮明になる中で金融緩和を支持する傾向を強めました。ECBは2019年9月に3年半ぶりとなる利下げを実施し、量的緩和政策の再開を決定しましたが、新型コロナウイルスの感染拡大による急激な景気悪化を受けて、2020年3月に量的緩和策の拡大を決定しました。さらに、2020年6月には資産の買い取り枠を拡大し、量的緩和を強化しました。
新興市場国・発展途上国経済は、2019年の実質GDP成長率が3.7%と、2年連続で成長率が鈍化し、2009年以来の低成長となりました。また、IMFによれば、2020年の実質GDP成長率は新型コロナウイルス感染症の影響によって、△3.0%とマイナス成長に落ち込むことが見込まれています。
新興国のうち、世界第2位の経済規模を持つ中国は、新型コロナウイルス感染症による影響が顕在化する以前から、米国との貿易摩擦を主因に成長率が減速傾向にありました。2020年1-3月期に入ると新型コロナウイルス感染症により、中国の一部でロックダウンが実施され、経済活動の停止を余儀なくされたため、実質GDP成長率は前年同期比△6.8%と、1992年に四半期ベースの統計が開始されて以降、初めてのマイナス成長となりました。しかし、中国での新型コロナウイルスの感染は、他国に先んじて収束へ向かいつつあり、経済は4-6月期には持ち直しつつあります。4-6月期の実質GDP成長率は前年同期比+3.2%と、新型コロナウイルスの感染拡大以前に比べると成長率は小幅ながら、プラス成長へと転じました。
中国以外の新興国については、総じて厳しい状況に置かれています。新興国でも新型コロナウイルス感染拡大を防止するために経済活動を制限せざるを得ない状況になったことに加えて、世界的な景気悪化を受けた資金流出や、資源価格の急激な低下も、新興国経済を下押しする要因となっています。多くの新興国では、財政による景気の下支えが困難であり、経済活動を停止することへの耐久力が低いことから、4-6月期には経済活動の再開を進めました。しかし、この結果として、多くの新興国では新型コロナウイルス感染者数の増加が続いており、非常にリスクの高い状況が続いています。
<日本の状況>日本経済は、2019年10月に実施された消費増税に伴う反動減によって、2019年10-12月期の実質GDP成長率が前期比年率△7.2%と大幅に落ち込んでいましたが、2020年に入ってからの新型コロナウイルスによる影響が、日本経済の悪化に拍車をかけることになりました。2020年1-3月期の実質GDPは前期比年率△2.2%と、個人消費の減少を主因に2四半期連続のマイナス成長となり、さらに4月7日に緊急事態宣言が発出され、自粛の動きが強まったことで、4-6月期の日本経済は一層落ち込みました。
需要項目ごとに見ると、個人消費は減少基調が続いています。2019年10-12月期には、消費増税に伴う駆け込み需要からの反動減によって、耐久財を中心に個人消費が大幅に減少しました。2020年1-3月期には、反動減からの持ち直しが期待されていたものの、新型コロナウイルスの感染拡大による自粛の動きによって、外食などをはじめとする不要不急のサービス消費が減少し、個人消費は2四半期連続で減少することとなりました。こうした個人消費を手控える動きは4月7日の緊急事態宣言によって加速し、4-6月期の個人消費はさらに大きく落ち込みました。住宅投資についても同様に、消費増税に伴う反動減があった2019年10-12月期以降減少が続いています。2020年1-3月期以降は、自粛に伴う販売の低迷や建設の遅れに加えて、雇用・所得環境の悪化が下押し要因となりました。
企業の設備投資は、高水準の企業収益や低金利、労働需給の逼迫などを背景として、2020年1-3月期まで底堅い推移が続きました。しかし、4-6月期に入って企業活動が急速に低迷する中、設備投資を手控える動きが広がっています。日銀短観(2020年6月調査)によれば、2020年度の設備投資計画(含む土地投資額)では、中小企業を中心に設備投資の減少が見込まれています。
金融面では、日本銀行による短期金利に加えて長期金利も操作対象とする金融緩和措置が継続しています。また、日本銀行は、新型コロナウイルス感染拡大による急激な景気の悪化を受けて、2020年4月に、国債の購入額の上限を撤廃したほか、社債などの買い入れ枠を拡大するなど、量的緩和を強化しました。
金利については、日本銀行による追加緩和策を受けて、日本の10年国債利回りが4月に一時△0.04%台まで低下しました。しかし、世界的に経済活動再開の動きが広まる中で、5月末以降はプラス圏で推移しました。FRBが実質的なゼロ金利政策を当面続けることを表明したことで、米国の長期金利が歴史的低水準圏で安定的に推移したこともあり、日本の長期金利も総じて0%近傍で安定的に推移しました。
為替市場をみると、新型コロナウイルスによって世界的に経済が急速に悪化する中、リスク回避の動きが強まった4月から5月前半にかけては、安全資産とされる円への需要が高まり、対ドルでは一時106円台前半まで円高が進みました。その後、経済活動再開への期待が高まる中、6月前半には109円台まで円安が進みましたが、6月後半になると、欧米などで新型コロナウイルスの感染再拡大への懸念が高まったことで、再度円高傾向に転じました。日米ともに金利が安定的に推移したため、ドル円相場は総じて振れが小さな展開となりました。対ユーロについても、対ドルと総じて同様の推移となり、4月から5月前半まで円高傾向となったのち、5月後半から6月前半にかけては円安が進みましたが、6月後半には再度円高方向で推移しました。
株式市場は、2020年度に入って以降、総じて上昇基調で推移しました。新型コロナウイルスの感染拡大によって、経済や企業業績は急激に悪化したものの、世界的に金融緩和が強化されたことによる低金利や、量的緩和拡大による需給の改善が株価を押し上げる要因となりました。2020年3月に16,000円台まで下落した日経平均は、6月には一時23,000円台を回復しました。
2020年6月末の日経平均株価は22,288円14銭(同年3月末比3,371円13銭高)、10年国債利回りは0.042%(同0.011ポイントの上昇)、為替は1ドル107円73銭(同69銭の円高)となりました。
(3) 事業上及び財務上の対処すべき課題
当第1四半期連結累計期間において、事業上及び財務上の対処すべき課題について、重要な変更及び新たに生じた事項はありません。
(4) 研究開発活動
該当事項はありません。
(5) 資本の財源及び流動性に係る情報
① 流動性の管理
<財務の効率性と安定性の両立>当社グループは、多くの資産及び負債を用いる有価証券関連業務や、投融資業務を行っており、これらのビジネスを継続する上で十分な流動性を効率的かつ安定的に確保することを資金調達の基本方針としております。
当社グループの資金調達手段には、社債、ミディアム・ターム・ノート、金融機関借入、コマーシャル・ペーパー、コールマネー、預金受入等の無担保調達、現先取引、レポ取引等の有担保調達があり、これらの多様な調達手段を適切に組み合わせることにより、効率的かつ安定的な資金調達の実現を図っております。
財務の安定性という観点では、環境が大きく変動した場合においても、業務の継続に支障をきたすことのないよう、平時から安定的に資金を確保するよう努めると同時に、危機発生等により、新規の資金調達及び既存資金の再調達が困難となる場合も想定し、調達資金の償還期限及び調達先の分散を図っております。
当社は、平成26年金融庁告示第61号による連結流動性カバレッジ比率(以下、「LCR」という。)の最低基準の遵守が求められております。当社の当第1四半期日次平均のLCRは181.0%となっており、上記金融庁告示による要件を満たしております。また、当社は、上記金融庁告示による規制上のLCRのほかに、独自の流動性管理指標を用いた流動性管理態勢を構築しております。即ち、一定期間内に期日が到来する無担保調達資金及び同期間にストレスが発生した場合の資金流出見込額に対し、様々なストレスシナリオを想定したうえで、それらをカバーする流動性ポートフォリオが保持されていることを日次で確認しており、1年間無担保資金調達が行えない場合でも業務の継続が可能となるように取り組んでおります。
当第1四半期日次平均のLCRの状況は次のとおりです。
(単位:億円)
<グループ全体の資金管理>当社グループでは、グループ全体での適正な流動性確保という基本方針の下、当社が一元的に資金の流動性の管理・モニタリングを行っております。当社は、当社グループ固有のストレス又は市場全体のストレスの発生により新規の資金調達及び既存資金の再調達が困難となる場合も想定し、短期の無担保調達資金について、当社グループの流動性ポートフォリオが十分に確保されているかをモニタリングしております。また、当社は、必要に応じて当社からグループ各社に対し、機動的な資金の配分・供給を行うと共に、グループ内で資金融通を可能とする態勢を整えることで、効率性に基づく一体的な資金調達及び資金管理を行っております。
<コンティンジェンシー・ファンディング・プラン>当社グループは、流動性リスクへの対応の一環として、コンティンジェンシー・ファンディング・プランを策定しております。同プランは、信用力の低下等の内生的要因や金融市場の混乱等の外生的要因によるストレスの逼迫度に応じた報告体制や資金調達手段の確保などの方針を定めており、これにより当社グループは機動的な対応により流動性を確保する態勢を整備しております。
当社グループのコンティンジェンシー・ファンディング・プランは、グループ全体のストレスを踏まえて策定しており、変動する金融環境に機動的に対応するため、定期的な見直しを行っております。
また、金融市場の変動の影響が大きく、その流動性確保の重要性の高い大和証券株式会社、株式会社大和ネクスト銀行及び海外証券子会社においては、更に個別のコンティンジェンシー・ファンディング・プランも策定し、同様に定期的な見直しを行っております。
なお、当社は、子会社のコンティンジェンシー・ファンディング・プランの整備状況について定期的にモニタリングしており、必要に応じて想定すべき危機シナリオを考慮して子会社の資金調達プランやコンティンジェンシー・ファンディング・プランそのものの見直しを行い、更には流動性の積み増しを実行すると同時に資産圧縮を図るといった事前の対策を講じることとしております。
② 株主資本
当社グループが株式や債券、デリバティブ等のトレーディング取引、貸借取引、引受業務、ストラクチャード・ファイナンス、M&A、プリンシパル・インベストメント、証券担保ローン等の有価証券関連業を中心とした幅広い金融サービスを展開し、ハイブリッド型総合証券グループとしての新たな価値の提供に資する投融資を行うためには、十分な資本を確保する必要があります。また、当社グループは、日本のみならず、海外においても有価証券関連業務を行っており、それぞれの地域において法規制上必要な資本を維持しなければなりません。
当第1四半期連結会計期間末の株主資本は、前連結会計年度末比44億円増加し、1兆2,067億円となりました。また、資本金及び資本剰余金の合計は4,782億円となっております。利益剰余金は親会社株主に帰属する四半期純利益175億円を計上したほか、配当金136億円の支払いを行った結果、前連結会計年度末比36億円増加の8,381億円となりました。自己株式の控除額は同8億円減少し、1,095億円となっております。
(1) 財政状態の分析
<資産の部>当第1四半期連結会計期間末の総資産は前連結会計年度末比1兆8,354億円(7.7%)増加の25兆6,575億円となりました。内訳は流動資産が同1兆8,612億円(8.1%)増加の24兆7,078億円であり、このうち現金・預金が同813億円(2.1%)増加の4兆458億円、トレーディング商品が同1兆639億円(13.3%)増加の9兆912億円、営業貸付金が同2,034億円(11.5%)増加の1兆9,718億円、有価証券担保貸付金が同409億円(0.6%)増加の6兆7,266億円となっております。固定資産は同257億円(2.6%)減少の9,496億円となっております。
<負債の部・純資産の部>負債合計は前連結会計年度末比1兆8,290億円(8.1%)増加の24兆3,933億円となりました。内訳は流動負債が同1兆7,604億円(8.8%)増加の21兆6,791億円であり、このうち有価証券担保借入金が同2兆4,674億円(34.3%)増加の9兆6,662億円、銀行業における預金が同597億円(1.5%)減少の3兆9,774億円となっております。固定負債は同685億円(2.6%)増加の2兆7,102億円であり、このうち社債が同536億円(3.9%)増加の1兆4,328億円、長期借入金が同151億円(1.3%)増加の1兆1,984億円となっております。
純資産合計は同64億円(0.5%)増加の1兆2,641億円となりました。資本金及び資本剰余金の合計は4,782億円となりました。利益剰余金は親会社株主に帰属する四半期純利益を175億円計上したほか、配当金136億円の支払いを行ったこと等により、同36億円(0.4%)増加の8,381億円となっております。自己株式の控除額は同8億円(0.7%)減少の1,095億円、その他有価証券評価差額金は同26億円(9.9%)増加の295億円、為替換算調整勘定は同21億円減少の△76億円、非支配株主持分は同6億円(1.8%)減少の381億円となっております。
(2) 経営成績の分析
① 事業全体の状況
当第1四半期連結累計期間の営業収益は前年同期比29.1%減の1,286億円、純営業収益は同1.6%減の1,054億円となりました。
受入手数料は577億円と、同11.1%の減収となりました。委託手数料は、株式取引が増加したことにより、同37.9%増の171億円となりました。引受業務では、新型コロナウイルス感染症の影響で複数のエクイティ引受案件等が延期となったことから、前年同期と比べ引受け・売出し・特定投資家向け売付け勧誘等の手数料が同36.1%減の44億円となりました。
トレーディング損益は、相場環境を見据えたポジション構築が奏功したことなどから、同14.5%増の320億円となりました。
販売費・一般管理費は同6.2%減の888億円となりました。取引関係費は販売促進に関連する費用が減少し同25.4%減の132億円、人件費は主に国内における賞与が減少したことから同4.2%減の449億円となっております。
以上より、経常利益は同19.2%増の213億円となりました。
これに特別損益を加え、法人税等及び非支配株主に帰属する四半期純利益を差し引いた結果、親会社株主に帰属する四半期純利益は前年同期比9.2%増の175億円となりました。
② セグメント情報に記載された区分ごとの状況
純営業収益及び経常利益をセグメント別に分析した状況は次のとおりであります。
(単位:百万円)
純営業収益 | 経常利益又は経常損失(△) | ||||||||
2019年 6月期 | 2020年 6月期 | 対前年同期 増減率 | 構成比率 | 2019年 6月期 | 2020年 6月期 | 対前年同期 増減率 | 構成比率 | ||
リテール部門 | 43,095 | 35,148 | △18.4% | 33.3% | 2,680 | △893 | - | - | |
ホールセール部門 | 39,420 | 51,509 | 30.7% | 48.8% | 5,572 | 18,476 | 231.6% | 70.6% | |
グローバル・マーケッツ | 27,310 | 45,271 | 65.8% | 42.9% | 4,541 | 20,574 | 353.0% | 78.6% | |
グローバル・インベストメント・バンキング | 12,109 | 6,238 | △48.5% | 5.9% | 924 | △2,060 | - | - | |
アセット・マネジメント部門 | 11,352 | 12,784 | 12.6% | 12.1% | 6,209 | 7,571 | 21.9% | 28.9% | |
投資部門 | 1,683 | 1,028 | △38.9% | 1.0% | 924 | 117 | △87.3% | 0.4% | |
その他・調整等 | 11,571 | 4,974 | - | 4.7% | 2,535 | △3,901 | - | - | |
連結 計 | 107,123 | 105,445 | △1.6% | 100.0% | 17,922 | 21,370 | 19.2% | 100.0% |
[リテール部門]
リテール部門の主な収益源は、国内の個人投資家及び未上場会社のお客様の資産管理・運用に関する商品・サービスの手数料であり、経営成績に重要な影響を与える要因には、お客様動向を左右する国内外の金融市場及び経済環境の状況に加え、お客様のニーズに合った商品の開発状況や引受け状況及び販売戦略が挙げられます。
当第1四半期連結累計期間においては、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言の発令の影響等から、商品販売が減少しましたが、緊急事態宣言が解除された後は回復傾向にあります。エクイティ収益はエクイティ募集手数料収入の減少により減収となり、債券収益についても個人向け国債及び外債の販売額減少等により減収となりました。また、株式投資信託も4月の販売額が低迷したことから販売手数料収入は減少しました。なお、ラップ口座サービスの契約口座数が減少したものの、市場環境の回復により契約資産残高は増加しました。
その結果、当第1四半期連結累計期間のリテール部門における純営業収益は前年同期比18.4%減の351億円、経常損失は8億円(前年同期は26億円の経常利益)となりました。リテール部門の当第1四半期連結累計期間の純営業収益のグループ全体に占める割合は33.3%でした。
[ホールセール部門]
ホールセール部門は、機関投資家等を対象に有価証券のセールス及びトレーディングを行うグローバル・マーケッツと、事業法人、金融法人等が発行する有価証券の引受け、M&Aアドバイザリー業務や上場コンサルティング業務を行うグローバル・インベストメント・バンキングによって構成されます。グローバル・マーケッツの主な収益源は、機関投資家に対する有価証券の売買に伴って得る取引手数料及びトレーディング収益です。グローバル・インベストメント・バンキングの主な収益源は、引受業務やM&Aアドバイザリー業務によって得る引受け・売出し手数料とM&A手数料です。グローバル・マーケッツにおいては、地政学リスクや国際的な経済状況等で変化する市場の動向や、それに伴う顧客フローの変化が、経営成績に重要な影響を与える要因となります。グローバル・インベストメント・バンキングにおいては、顧客企業の資金調達手段の決定やM&Aの需要を左右する国内外の経済環境等に加え、当社が企業の需要を捉え、案件を獲得できるかどうかが経営成績に重要な影響を与える要因となります。
グローバル・マーケッツは増収増益となりました。エクイティ収益は株価の上昇を背景に投資家のアクティビティが回復し、増収となりました。フィクスト・インカム収益は、相場環境を見据えたポジション運営が好調であったことに加えて、前年度から引き続き米州における顧客フローが堅調であったことから増収となりました。その結果、当第1四半期連結累計期間の純営業収益は前年同期比65.8%増の452億円、経常利益は同353.0%増の205億円となりました。
グローバル・インベストメント・バンキングは減収減益となりました。引受け・売出し手数料は、新型コロナウイルス感染症の影響で業績見通しが不透明となったこと等により、複数のエクイティ引受け案件が延期となったことから、減収となりました。また、M&Aビジネスにおいても、国内外で案件の延期等があったことから、減収となりました。これらの結果、グローバル・インベストメント・バンキングの純営業収益は前年同期比48.5%減の62億円、経常損失は20億円となりました。
その結果、当第1四半期連結累計期間のホールセール部門における純営業収益は前年同期比30.7%増の515億円、経常利益は同231.6%増の184億円となりました。ホールセール部門の当第1四半期連結累計期間の純営業収益及び経常利益のグループ全体に占める割合は、それぞれ48.8%及び70.6%でした。
[アセット・マネジメント部門]
アセット・マネジメント部門の収益は、主に当社連結子会社の大和アセットマネジメント(旧大和証券投資信託委託)における投資信託の組成と運用に関する報酬と、連結子会社の大和リアル・エステート・アセット・マネジメント及びサムティ・レジデンシャル投資法人の不動産運用収益によって構成されます。また、当社持分法適用関連会社である三井住友DSアセットマネジメントの投資信託の組成と運用及び投資顧問業務に関する報酬からの利益、同じく持分法適用関連会社である大和証券オフィス投資法人の不動産運用収益からの利益は、それぞれ当社の持分割合に従って経常利益に計上されます。経営成績に重要な影響を与える要因としては、マーケット環境によって変動する顧客の投資信託及び投資顧問サービスへの需要と、マーケット環境に対するファンドの運用パフォーマンスや、顧客の関心を捉えたテーマ性のある商品開発等による商品自体の訴求性が挙げられます。大和リアル・エステート・アセット・マネジメント、サムティ・レジデンシャル投資法人及び大和証券オフィス投資法人の経営成績は、国内の不動産市場・オフィス需要の動向の影響を受けます。
当第1四半期連結累計期間において、大和アセットマネジメントでは、R&Iファンド大賞において表彰された複数のファンド、NISA、iDeCo向け資産形成型商品やETFなど、投資家の資産形成ステージに応じた商品を提供しており、特にETFを中心に運用資産残高を拡大させた結果、公募投資信託の運用資産残高は前連結会計年度末比14.2%増の17.0兆円となりました。不動産アセット・マネジメントでは、大和リアル・エステート・アセット・マネジメント及びサムティ・レジデンシャル投資法人の2社を合わせた運用資産残高は前連結会計年度末比6.0%増の1兆1,332億円となりました。
その結果、当第1四半期連結累計期間のアセット・マネジメント部門における純営業収益は前年同期比12.6%増の127億円、経常利益は同21.9%増の75億円となりました。アセット・マネジメント部門の当第1四半期連結累計期間の純営業収益及び経常利益のグループ全体に占める割合は、それぞれ12.1%及び28.9%でした。なお、当第1四半期連結累計期間のアセット・マネジメント部門における、新型コロナウイルスの感染拡大による業績への影響は限定的です。
[投資部門]
投資部門は主に、連結子会社である大和企業投資、大和PIパートナーズ及び大和エナジー・インフラで構成されます。投資部門の主な収益源は、投資先の新規上場(IPO)・M&A等による売却益や、投資事業組合への出資を通じたキャピタルゲインのほか、契約に基づきファンドから受領する、管理運営に対する管理報酬や投資成果に応じた成功報酬です。
当第1四半期連結累計期間において、大和企業投資では、引き続き国内外の成長企業への投資を行ったほか、大和PIパートナーズでは、ローン、不良債権、不動産、国内外のPE投資を着実に実行しました。また、大和エナジー・インフラでは、脱炭素エネルギーファンドやスペインの通信事業への出資を行うなど、持続可能な開発目標(SDGs)に資するエネルギー・インフラ関連投資を拡大しました。しかしながら、前年同期に貢献した太陽光発電事業による収益が減少したこと等から、減収減益となりました。
その結果、当第1四半期連結累計期間の投資部門における純営業収益は前年同期比38.9%減の10億円、経常利益は同87.3%減の1億円となりました。投資部門の当第1四半期連結累計期間の純営業収益及び経常利益のグループ全体に占める割合は、それぞれ1.0%及び0.4%でした。なお、新型コロナウイルス感染症を起因とする投資先の株価下落や業績悪化等で、当第1四半期連結累計期間の投資部門の業績に大きな影響を与えたものはありません。
[その他]
その他の事業には、主に大和総研と大和総研ビジネス・イノベーションからなる大和総研グループによるリサーチ・コンサルティング業務及びシステム業務のほか、大和ネクスト銀行による銀行業務、連結会計上の調整などが含まれます。
大和総研は、当社グループのシステム開発を着実に実行したほか、社内外の連携強化による、付加価値の高いソリューション提案により、顧客との関係を強化し、当社グループのビジネスに貢献しました。
大和総研ビジネス・イノベーションは、大口顧客向けシステム開発案件を手掛けたこと等により、当社グループの収益に貢献しました。
大和ネクスト銀行では、引き続き、銀行代理業者である大和証券と連携して各種キャンペーンを実施しました。当第1四半期連結会計期間末の預金残高(譲渡性預金含む)は前連結会計年度末比1.6%減の3兆9,945億円、銀行口座数は同0.4%増の141万口座となりました。
当第1四半期連結累計期間において、その他セグメントに属する一部のグループ会社の収益が、前年同期比で減少したため、その他・調整等に係る純営業収益は49億円(前年同期115億円)、経常損失は39億円(前年同期は25億円の経常利益)となりました。その他・調整等の当第1四半期連結累計期間の純営業収益のグループ全体に占める割合は4.7%でした。
③ 経営方針・経営戦略等及び経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当第1四半期連結累計期間において、経営方針・経営戦略等及び経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等について、第83期有価証券報告書の「目標とする経営指標の達成状況等」に記載した経営指標から重要な変更及び新たに生じた事項はありません。
④ 経営成績の前提となる当第1四半期連結累計期間のマクロ経済環境
<海外の状況>2019年の世界経済は、米中貿易摩擦などから減速感が強まりつつも緩やかな拡大が続いていました。しかし、2020年に入って、新型コロナウイルスの感染が拡大したことにより、世界経済は急激に悪化することになりました。IMF(国際通貨基金)が2020年6月に公表した世界経済見通しによれば、2020年は新型コロナウイルス感染症の影響により先進国、新興国ともにマイナス成長に転じ、世界経済成長率は△4.9%とリーマン・ショック時を上回る大幅なマイナスが見込まれています。
米国経済は、新型コロナウイルスの感染者数の急増を受けて、急速に悪化しました。3月半ばにトランプ大統領が緊急事態を宣言し、小売店や飲食店、娯楽施設などの営業規制や外出制限を実施したことによって、外食や娯楽関連など不要不急のサービスを中心に個人消費が急減し、2020年1-3月期の実質GDP成長率は前期比年率△5.0%と6年ぶりのマイナス成長となりました。また、営業規制の影響を受けたサービス業などでは、大量の失業者が発生し、4月の失業率は14.7%と戦後最高水準を記録しました。急激な景気悪化を受けて、トランプ政権および連邦議会は、矢継ぎ早に対策を打ち出しました。なかでも3月27日に成立した経済対策は総額2兆ドル超と過去最大規模となり、4月以降、家計への現金給付や失業給付の拡充、企業への融資などが実施されました。こうした政府の経済対策による下支えに加えて、営業規制・外出制限が段階的に解除され、経済活動が再開されたことで、米国経済は5月頃から持ち直しつつあります。ただし、経済活動の再開はあくまで段階的なものであり、コロナウイルスの感染拡大前に比べると、経済活動の水準は非常に低い状況が続いています。このため4-6月期の実質GDP成長率は前期比年率△32.9%と2四半期連続のマイナスとなり、マイナス幅は1-3月期から大きく拡大しました。
金融面では、FRB(連邦準備制度理事会)が景気悪化に対応して、積極的な金融緩和を行いました。新型コロナウイルスの感染が拡大する以前においても、景気減速懸念が高まる中、FRBは2019年7月、9月および10月のFOMC(連邦公開市場委員会)において、3度にわたる利下げを実施しました。しかし、こうした金融緩和にもかかわらず、新型コロナウイルス感染症の影響によって経済が急激に悪化したことを受け、FRBは2020年3月に2度の緊急利下げを実施し、2015年12月以来となる実質的なゼロ金利政策を復活させました。さらに、無制限の量的緩和の拡大も決定し、FRBのバランスシートは大幅に拡大しています。
欧州経済(ユーロ圏経済)も、2019年までの緩やかな成長から一転して、2020年に入って急激に悪化しています。2020年1-3月期の実質GDP成長率は前期比年率△13.6%と、1995年の統計開始以降で最大の落ち込みとなりました。国別の動向を見ると、フランス、スペイン、イタリアなど、特に新型コロナウイルスの感染拡大が深刻だった国の落ち込みが大きく、欧州全体の実質GDP成長率の悪化の大きな要因となりました。また、多くの国では3月半ばからロックダウン(都市封鎖)に踏み切ったことから、4月には、個人消費や生産など、幅広い分野でユーロ圏経済は一層大きく落ち込むことになりました。一方、5月に入るとロックダウンが徐々に緩和されたことで、経済の悪化に歯止めが掛かりつつあります。ただし、引き続き新型コロナウイルスの感染リスクが高い中、経済活動の再開は段階的なものとなっており、景気の回復ペースは非常に緩やかなものとなっています。
金融面では、ECB(欧州中央銀行)は、世界経済の不透明さが増し、ユーロ圏の景気減速が鮮明になる中で金融緩和を支持する傾向を強めました。ECBは2019年9月に3年半ぶりとなる利下げを実施し、量的緩和政策の再開を決定しましたが、新型コロナウイルスの感染拡大による急激な景気悪化を受けて、2020年3月に量的緩和策の拡大を決定しました。さらに、2020年6月には資産の買い取り枠を拡大し、量的緩和を強化しました。
新興市場国・発展途上国経済は、2019年の実質GDP成長率が3.7%と、2年連続で成長率が鈍化し、2009年以来の低成長となりました。また、IMFによれば、2020年の実質GDP成長率は新型コロナウイルス感染症の影響によって、△3.0%とマイナス成長に落ち込むことが見込まれています。
新興国のうち、世界第2位の経済規模を持つ中国は、新型コロナウイルス感染症による影響が顕在化する以前から、米国との貿易摩擦を主因に成長率が減速傾向にありました。2020年1-3月期に入ると新型コロナウイルス感染症により、中国の一部でロックダウンが実施され、経済活動の停止を余儀なくされたため、実質GDP成長率は前年同期比△6.8%と、1992年に四半期ベースの統計が開始されて以降、初めてのマイナス成長となりました。しかし、中国での新型コロナウイルスの感染は、他国に先んじて収束へ向かいつつあり、経済は4-6月期には持ち直しつつあります。4-6月期の実質GDP成長率は前年同期比+3.2%と、新型コロナウイルスの感染拡大以前に比べると成長率は小幅ながら、プラス成長へと転じました。
中国以外の新興国については、総じて厳しい状況に置かれています。新興国でも新型コロナウイルス感染拡大を防止するために経済活動を制限せざるを得ない状況になったことに加えて、世界的な景気悪化を受けた資金流出や、資源価格の急激な低下も、新興国経済を下押しする要因となっています。多くの新興国では、財政による景気の下支えが困難であり、経済活動を停止することへの耐久力が低いことから、4-6月期には経済活動の再開を進めました。しかし、この結果として、多くの新興国では新型コロナウイルス感染者数の増加が続いており、非常にリスクの高い状況が続いています。
<日本の状況>日本経済は、2019年10月に実施された消費増税に伴う反動減によって、2019年10-12月期の実質GDP成長率が前期比年率△7.2%と大幅に落ち込んでいましたが、2020年に入ってからの新型コロナウイルスによる影響が、日本経済の悪化に拍車をかけることになりました。2020年1-3月期の実質GDPは前期比年率△2.2%と、個人消費の減少を主因に2四半期連続のマイナス成長となり、さらに4月7日に緊急事態宣言が発出され、自粛の動きが強まったことで、4-6月期の日本経済は一層落ち込みました。
需要項目ごとに見ると、個人消費は減少基調が続いています。2019年10-12月期には、消費増税に伴う駆け込み需要からの反動減によって、耐久財を中心に個人消費が大幅に減少しました。2020年1-3月期には、反動減からの持ち直しが期待されていたものの、新型コロナウイルスの感染拡大による自粛の動きによって、外食などをはじめとする不要不急のサービス消費が減少し、個人消費は2四半期連続で減少することとなりました。こうした個人消費を手控える動きは4月7日の緊急事態宣言によって加速し、4-6月期の個人消費はさらに大きく落ち込みました。住宅投資についても同様に、消費増税に伴う反動減があった2019年10-12月期以降減少が続いています。2020年1-3月期以降は、自粛に伴う販売の低迷や建設の遅れに加えて、雇用・所得環境の悪化が下押し要因となりました。
企業の設備投資は、高水準の企業収益や低金利、労働需給の逼迫などを背景として、2020年1-3月期まで底堅い推移が続きました。しかし、4-6月期に入って企業活動が急速に低迷する中、設備投資を手控える動きが広がっています。日銀短観(2020年6月調査)によれば、2020年度の設備投資計画(含む土地投資額)では、中小企業を中心に設備投資の減少が見込まれています。
金融面では、日本銀行による短期金利に加えて長期金利も操作対象とする金融緩和措置が継続しています。また、日本銀行は、新型コロナウイルス感染拡大による急激な景気の悪化を受けて、2020年4月に、国債の購入額の上限を撤廃したほか、社債などの買い入れ枠を拡大するなど、量的緩和を強化しました。
金利については、日本銀行による追加緩和策を受けて、日本の10年国債利回りが4月に一時△0.04%台まで低下しました。しかし、世界的に経済活動再開の動きが広まる中で、5月末以降はプラス圏で推移しました。FRBが実質的なゼロ金利政策を当面続けることを表明したことで、米国の長期金利が歴史的低水準圏で安定的に推移したこともあり、日本の長期金利も総じて0%近傍で安定的に推移しました。
為替市場をみると、新型コロナウイルスによって世界的に経済が急速に悪化する中、リスク回避の動きが強まった4月から5月前半にかけては、安全資産とされる円への需要が高まり、対ドルでは一時106円台前半まで円高が進みました。その後、経済活動再開への期待が高まる中、6月前半には109円台まで円安が進みましたが、6月後半になると、欧米などで新型コロナウイルスの感染再拡大への懸念が高まったことで、再度円高傾向に転じました。日米ともに金利が安定的に推移したため、ドル円相場は総じて振れが小さな展開となりました。対ユーロについても、対ドルと総じて同様の推移となり、4月から5月前半まで円高傾向となったのち、5月後半から6月前半にかけては円安が進みましたが、6月後半には再度円高方向で推移しました。
株式市場は、2020年度に入って以降、総じて上昇基調で推移しました。新型コロナウイルスの感染拡大によって、経済や企業業績は急激に悪化したものの、世界的に金融緩和が強化されたことによる低金利や、量的緩和拡大による需給の改善が株価を押し上げる要因となりました。2020年3月に16,000円台まで下落した日経平均は、6月には一時23,000円台を回復しました。
2020年6月末の日経平均株価は22,288円14銭(同年3月末比3,371円13銭高)、10年国債利回りは0.042%(同0.011ポイントの上昇)、為替は1ドル107円73銭(同69銭の円高)となりました。
(3) 事業上及び財務上の対処すべき課題
当第1四半期連結累計期間において、事業上及び財務上の対処すべき課題について、重要な変更及び新たに生じた事項はありません。
(4) 研究開発活動
該当事項はありません。
(5) 資本の財源及び流動性に係る情報
① 流動性の管理
<財務の効率性と安定性の両立>当社グループは、多くの資産及び負債を用いる有価証券関連業務や、投融資業務を行っており、これらのビジネスを継続する上で十分な流動性を効率的かつ安定的に確保することを資金調達の基本方針としております。
当社グループの資金調達手段には、社債、ミディアム・ターム・ノート、金融機関借入、コマーシャル・ペーパー、コールマネー、預金受入等の無担保調達、現先取引、レポ取引等の有担保調達があり、これらの多様な調達手段を適切に組み合わせることにより、効率的かつ安定的な資金調達の実現を図っております。
財務の安定性という観点では、環境が大きく変動した場合においても、業務の継続に支障をきたすことのないよう、平時から安定的に資金を確保するよう努めると同時に、危機発生等により、新規の資金調達及び既存資金の再調達が困難となる場合も想定し、調達資金の償還期限及び調達先の分散を図っております。
当社は、平成26年金融庁告示第61号による連結流動性カバレッジ比率(以下、「LCR」という。)の最低基準の遵守が求められております。当社の当第1四半期日次平均のLCRは181.0%となっており、上記金融庁告示による要件を満たしております。また、当社は、上記金融庁告示による規制上のLCRのほかに、独自の流動性管理指標を用いた流動性管理態勢を構築しております。即ち、一定期間内に期日が到来する無担保調達資金及び同期間にストレスが発生した場合の資金流出見込額に対し、様々なストレスシナリオを想定したうえで、それらをカバーする流動性ポートフォリオが保持されていることを日次で確認しており、1年間無担保資金調達が行えない場合でも業務の継続が可能となるように取り組んでおります。
当第1四半期日次平均のLCRの状況は次のとおりです。
(単位:億円)
日次平均 (自 2020年4月 至 2020年6月) | |||
適格流動資産 | (A) | 25,383 | |
資金流出額 | (B) | 32,634 | |
資金流入額 | (C) | 18,615 | |
連結流動性カバレッジ比率(LCR) | |||
算入可能適格流動資産の合計額 | (D) | 25,383 | |
純資金流出額 | (E) | 14,019 | |
連結流動性カバレッジ比率 | (D)/(E) | 181.0% |
<グループ全体の資金管理>当社グループでは、グループ全体での適正な流動性確保という基本方針の下、当社が一元的に資金の流動性の管理・モニタリングを行っております。当社は、当社グループ固有のストレス又は市場全体のストレスの発生により新規の資金調達及び既存資金の再調達が困難となる場合も想定し、短期の無担保調達資金について、当社グループの流動性ポートフォリオが十分に確保されているかをモニタリングしております。また、当社は、必要に応じて当社からグループ各社に対し、機動的な資金の配分・供給を行うと共に、グループ内で資金融通を可能とする態勢を整えることで、効率性に基づく一体的な資金調達及び資金管理を行っております。
<コンティンジェンシー・ファンディング・プラン>当社グループは、流動性リスクへの対応の一環として、コンティンジェンシー・ファンディング・プランを策定しております。同プランは、信用力の低下等の内生的要因や金融市場の混乱等の外生的要因によるストレスの逼迫度に応じた報告体制や資金調達手段の確保などの方針を定めており、これにより当社グループは機動的な対応により流動性を確保する態勢を整備しております。
当社グループのコンティンジェンシー・ファンディング・プランは、グループ全体のストレスを踏まえて策定しており、変動する金融環境に機動的に対応するため、定期的な見直しを行っております。
また、金融市場の変動の影響が大きく、その流動性確保の重要性の高い大和証券株式会社、株式会社大和ネクスト銀行及び海外証券子会社においては、更に個別のコンティンジェンシー・ファンディング・プランも策定し、同様に定期的な見直しを行っております。
なお、当社は、子会社のコンティンジェンシー・ファンディング・プランの整備状況について定期的にモニタリングしており、必要に応じて想定すべき危機シナリオを考慮して子会社の資金調達プランやコンティンジェンシー・ファンディング・プランそのものの見直しを行い、更には流動性の積み増しを実行すると同時に資産圧縮を図るといった事前の対策を講じることとしております。
② 株主資本
当社グループが株式や債券、デリバティブ等のトレーディング取引、貸借取引、引受業務、ストラクチャード・ファイナンス、M&A、プリンシパル・インベストメント、証券担保ローン等の有価証券関連業を中心とした幅広い金融サービスを展開し、ハイブリッド型総合証券グループとしての新たな価値の提供に資する投融資を行うためには、十分な資本を確保する必要があります。また、当社グループは、日本のみならず、海外においても有価証券関連業務を行っており、それぞれの地域において法規制上必要な資本を維持しなければなりません。
当第1四半期連結会計期間末の株主資本は、前連結会計年度末比44億円増加し、1兆2,067億円となりました。また、資本金及び資本剰余金の合計は4,782億円となっております。利益剰余金は親会社株主に帰属する四半期純利益175億円を計上したほか、配当金136億円の支払いを行った結果、前連結会計年度末比36億円増加の8,381億円となりました。自己株式の控除額は同8億円減少し、1,095億円となっております。