四半期報告書-第84期第3四半期(令和2年10月1日-令和2年12月31日)

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2021/02/10 15:31
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本項における将来に関する事項は、別段の記載がない限り、当第3四半期連結会計期間の末日現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 財政状態の分析
<資産の部>当第3四半期連結会計期間末の総資産は前連結会計年度末比2兆4,128億円(10.1%)増加の26兆2,349億円となりました。内訳は流動資産が同2兆4,182億円(10.6%)増加の25兆2,648億円であり、このうち現金・預金が同6,295億円(15.9%)増加の4兆5,940億円、トレーディング商品が同6,139億円(7.6%)増加の8兆6,412億円、営業投資有価証券が同322億円(15.9%)増加の2,347億円、有価証券担保貸付金が同8,890億円(13.3%)増加の7兆5,748億円となっております。固定資産は同53億円(0.5%)減少の9,701億円となっております。
<負債の部・純資産の部>負債合計は前連結会計年度末比2兆3,704億円(10.5%)増加の24兆9,348億円となりました。内訳は流動負債が同2兆2,338億円(11.2%)増加の22兆1,526億円であり、このうちトレーディング商品が同1兆697億円(20.0%)減少の4兆2,924億円、有価証券担保借入金が同2兆2,399億円(31.1%)増加の9兆4,386億円、銀行業における預金が同2,133億円(5.3%)増加の4兆2,505億円となっております。固定負債は同1,366億円(5.2%)増加の2兆7,783億円であり、このうち社債が同739億円(5.4%)増加の1兆4,531億円、長期借入金が同581億円(4.9%)増加の1兆2,414億円となっております。
純資産合計は同423億円(3.4%)増加の1兆3,001億円となりました。資本金及び資本剰余金の合計は4,780億円となりました。利益剰余金は親会社株主に帰属する四半期純利益を577億円計上したほか、配当金304億円の支払いを行ったこと等により、同267億円(3.2%)増加の8,612億円となっております。自己株式の控除額は同22億円(2.1%)減少の1,080億円、その他有価証券評価差額金は同91億円(34.2%)増加の360億円、為替換算調整勘定は同34億円減少の△89億円、非支配株主持分は同20億円(5.2%)増加の408億円となっております。
(2) 経営成績の分析
① 事業全体の状況
当第3四半期連結累計期間の営業収益は前年同期比20.1%減の4,088億円、純営業収益は同8.4%増の3,420億円となりました。
受入手数料は2,052億円と、同3.5%の増収となりました。委託手数料は、株式取引が増加したことにより、同37.7%増の538億円となりました。引受業務では、エクイティ引受案件等が増加し、引受け・売出し・特定投資家向け売付け勧誘等の手数料は、同24.3%増の307億円となりました。
トレーディング損益は、顧客フローが増加したことや、相場環境を見据えたポジション構築が奏功したことなどから、同16.0%増の875億円となりました。
販売費・一般管理費は前年同期比1.4%減の2,738億円となりました。取引関係費は販売促進に関連する費用が減少し同18.3%減の424億円、人件費は賞与が増加したことにより同2.5%増の1,405億円、減価償却費はポータブル端末等の次世代オフィスインフラの導入等により同10.0%増の253億円となっております。
その結果、経常利益は同59.2%増の796億円となりました。
特別損益は投資有価証券売却益等を計上しましたが、持分変動利益や固定資産売却益を計上した前年同期と比べ、82.0%減の26億円の利益となりました。
法人税等及び非支配株主に帰属する四半期純利益を差し引いた結果、親会社株主に帰属する四半期純利益は前年同期比17.7%増の577億円となりました。
② セグメント情報に記載された区分ごとの状況
純営業収益及び経常利益をセグメント別に分析した状況は次のとおりであります。
(単位:百万円)
純営業収益経常利益又は経常損失(△)
2019年
12月期
2020年
12月期
対前年同期
増減率
構成比率2019年
12月期
2020年
12月期
対前年同期
増減率
構成比率
(注)
リテール部門125,182120,161△4.0%35.1%4,8538,71079.5%9.7%
ホールセール部門127,962156,18422.1%45.7%28,78954,11888.0%60.3%
グローバル・マーケッツ90,192118,63131.5%34.7%21,37345,047110.8%50.2%
グローバル・インベストメント
・バンキング
37,76937,552△0.6%11.0%7,0518,43419.6%9.4%
アセット・マネジメント部門35,64537,7906.0%11.0%19,80822,71414.7%25.3%
投資部門△1,7157,848-2.3%△4,0814,226-4.7%
その他・調整等28,56420,098-5.9%654△10,135--
連結 計315,638342,0838.4%100.0%50,02379,63559.2%100.0%

(注)構成比率は経常利益のセグメントの合計に占める割合としており、経常損失のセグメントを控除しております。
[リテール部門]
リテール部門の主な収益源は、国内の個人投資家及び未上場会社のお客様の資産管理・運用に関する商品・サービスの手数料であり、経営成績に重要な影響を与える要因には、お客様動向を左右する国内外の金融市場及び経済環境の状況に加え、お客様のニーズに合った商品の開発状況や引受け状況及び販売戦略が挙げられます。
当第3四半期連結累計期間においては、複数の大型エクイティ引受案件に加え、マーケット上昇を追い風にお客様のアクティビティが拡大した結果、エクイティ収益が増加しました。また、ラップ口座サービスの契約資産残高は過去最高となりました。一方で、債券収益は個人向け国債の販売額減少等により減収、また、お客様のアクティビティは新型コロナウイルスの感染拡大の影響から依然回復の途上にあり、投信募集手数料も株式投資信託の販売額が低迷したことから減収となりました。
その結果、当第3四半期連結累計期間のリテール部門における純営業収益は前年同期比4.0%減の1,201億円、取引関係費を中心に販売費・一般管理費を抑えられた事により、経常利益は同79.5%増の87億円となりました。リテール部門の当第3四半期連結累計期間の純営業収益及び経常利益のグループ全体の連結純営業収益及び連結経常利益に占める割合は、それぞれ35.1%及び9.7%でした。
[ホールセール部門]
ホールセール部門は、機関投資家等を対象に有価証券のセールス及びトレーディングを行うグローバル・マーケッツと、事業法人、金融法人等が発行する有価証券の引き受け、M&Aアドバイザリー業務や上場コンサルティング業務を行うグローバル・インベストメント・バンキングによって構成されます。グローバル・マーケッツの主な収益源は、機関投資家に対する有価証券の売買に伴って得る取引手数料及びトレーディング収益です。グローバル・インベストメント・バンキングの主な収益源は、引受業務やM&Aアドバイザリー業務によって得る引受け・売出し手数料とM&A関連手数料です。グローバル・マーケッツにおいては、地政学リスクや国際的な経済状況等で変化する金融市場の動向や、それに伴う顧客フローの変化が、経営成績に重要な影響を与える要因となります。グローバル・インベストメント・バンキングにおいては、顧客企業の資金調達手段の決定やM&Aの需要を左右する国内外の経済環境等に加え、当社が企業の需要を捉え、案件を獲得できるかが経営成績に重要な影響を与える要因となります。
グローバル・マーケッツは増収増益となりました。エクイティ収益は、国内株式及び外国株式の相場上昇を背景に投資家のアクティビティが増加したことから増収となりました。また、フィクストインカム収益は、相場環境を見据えたポジション運営が好調であったことに加えて、前年度から引き続き米州における顧客フローが堅調であったことから増収となりました。大幅な増収に比べて販売費・一般管理費の増加が抑えられたこともあり、当第3四半期連結累計期間の純営業収益は前年同期比31.5%増の1,186億円、経常利益は同110.8%増の450億円となりました。
グローバル・インベストメント・バンキングは減収増益となりました。大型の公募案件で主幹事を務めたほか、複数のエクイティ募集・売出し案件で主幹事を務めた結果、引受け・売出し手数料は増加しました。その一方、M&Aビジネスにおいては、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で複数案件が中断、延期されたために、海外クロスボーダー案件や、国内案件の収益が減少したことで、減収となりました。当第3四半期連結累計期間の純営業収益は前年同期比0.6%減の375億円、販売費・一般管理費を抑えられたことで、経常利益は同19.6%増の84億円となりました。
当第3四半期連結累計期間のホールセール部門における純営業収益は前年同期比22.1%増の1,561億円、経常利益は同88.0%増の541億円となりました。ホールセール部門の当第3四半期連結累計期間の純営業収益及び経常利益のグループ全体の連結純営業収益及び連結経常利益に占める割合は、それぞれ45.7%及び60.3%でした。
[アセット・マネジメント部門]
アセット・マネジメント部門の収益は、主に当社連結子会社の大和アセットマネジメント(旧大和証券投資信託委託)における投資信託の組成と運用に関する報酬と、連結子会社の大和リアル・エステート・アセット・マネジメント及びサムティ・レジデンシャル投資法人の不動産運用収益によって構成されます。また、当社持分法適用関連会社である三井住友DSアセットマネジメントの投資信託の組成と運用及び投資顧問業務に関する報酬からの利益、同じく持分法適用関連会社である大和証券オフィス投資法人の不動産運用収益からの利益は、それぞれ当社の持分割合に従って経常利益に計上されます。経営成績に重要な影響を与える要因としては、マーケット環境によって変動するお客様の投資信託及び投資顧問サービスへの需要と、マーケット環境に対するファンドの運用パフォーマンスや、お客様の関心を捉えたテーマ性のある商品開発等による商品自体の訴求性が挙げられます。大和リアル・エステート・アセット・マネジメント、サムティ・レジデンシャル投資法人及び大和証券オフィス投資法人の経営成績は、国内の不動産市場・オフィス需要の動向の影響を受けます。
当第3四半期連結累計期間において、大和アセットマネジメントでは、R&Iファンド大賞において表彰された複数のファンド、NISA、iDeCo向け資産形成型商品やETFなど、投資家の資産形成ステージに応じた商品を提供しました。株式市場の上昇を受け、ETFを中心に運用資産残高を拡大させた結果、公募投資信託の運用資産残高は前連結会計年度末比30.8%増の19.4兆円となりました。不動産アセット・マネジメントでは、大和リアル・エステート・アセット・マネジメント及びサムティ・レジデンシャル投資法人の2社を合わせた運用資産残高は前連結会計年度末比11.1%増の1兆1,870億円となりました。
その結果、当第3四半期連結累計期間のアセット・マネジメント部門の純営業収益は前年同期比6.0%増の377億円、経常利益は同14.7%増の227億円となりました。アセット・マネジメント部門の当第3四半期連結累計期間の純営業収益及び経常利益のグループ全体の連結純営業収益及び連結経常利益に占める割合は、それぞれ11.0%及び25.3%でした。なお、当第3四半期連結累計期間のアセット・マネジメント部門における、新型コロナウイルスの感染拡大による業績への影響は限定的です。
[投資部門]
投資部門は主に、連結子会社である大和企業投資、大和PIパートナーズ及び大和エナジー・インフラで構成されます。投資部門の主な収益源は、投資先の新規上場(IPO)・M&A等による売却益や、投資事業組合への出資を通じたキャピタルゲインのほか、契約に基づきファンドから受領する、管理運営に対する管理報酬や投資成果に応じた成功報酬です。
当第3四半期連結累計期間において、大和企業投資では、国内外の成長企業への投資や上場支援に貢献しながら、投資先の売却益により収益を確保しました。また、大和PIパートナーズでは、プライベート・エクイティ投資におけるエグジットが収益に寄与し、大和エナジー・インフラでは、脱炭素エネルギーファンドやスペインの通信事業への出資を行うなど、持続可能な開発目標(SDGs)に資するエネルギー・インフラ関連投資を拡大しました。
その結果、当第3四半期連結累計期間の投資部門における純営業収益は78億円(前年同期は△17億円)、経常利益は42億円(前年同期は40億円の経常損失)となりました。投資部門の当第3四半期連結累計期間の純営業収益及び経常利益のグループ全体の連結純営業収益及び連結経常利益に占める割合は、それぞれ2.3%及び4.7%でした。なお、新型コロナウイルス感染症を起因とする投資先の株価下落や業績悪化等で、当第3四半期連結累計期間の投資部門の業績に大きな影響を与えたものはありません。
[その他]
その他の事業には、主に大和総研と大和総研ビジネス・イノベーションからなる大和総研グループによるリサーチ・コンサルティング業務及びシステム業務のほか、大和ネクスト銀行による銀行業務などが含まれます。
大和総研は、当社グループのシステム開発を着実に遂行したほか、高付加価値のソリューション提案により、お客様との関係を強化し、当社グループのビジネスに貢献しました。
大和総研ビジネス・イノベーションは、大口顧客向けシステム開発案件を手掛けたこと等により、当社グループの収益に貢献しました。
大和ネクスト銀行では、引き続き、銀行代理業者である大和証券と連携して各種キャンペーンを実施しました。当第3四半期連結会計期間末の預金残高(譲渡性預金含む)は前連結会計年度末比4.9%増の4兆2,639億円、銀行口座数は同4.6%増の147万口座となりました。しかし、金利低下により金融収支の黒字幅が縮小した結果、当第3四半期累計期間の業績は減収減益となりました。
またその他事業においても、世界的な金利低下により金融収支の黒字幅が縮小しました。
その結果、その他・調整等に係る純営業収益は200億円(前年同期285億円)、経常損失は101億円(前年同期は6億円の経常利益)となりました。その他・調整等の当第3四半期連結累計期間の純営業収益のグループ全体に占める割合は、5.9%でした。
なお、当第3四半期連結累計期間のその他・調整等における、新型コロナウイルスの感染拡大による業績への影響は限定的です。
③ 経営方針・経営戦略等及び経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当第3四半期連結累計期間において、経営方針・経営戦略等及び経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等について、第83期有価証券報告書の「目標とする経営指標の達成状況等」に記載した経営指標から重要な変更及び新たに生じた事項はありません。
④ 経営成績の前提となる当第3四半期連結累計期間のマクロ経済環境
<海外の状況>世界経済は、新型コロナウイルスの感染拡大を主な要因として、2020年に入って急激に悪化したものの、2020年後半以降、持ち直し基調にあります。世界の多くの地域で感染拡大防止のためのロックダウン(都市封鎖)が行われた2020年4-6月期は、米国や欧州、日本など、多くの地域で記録的なマイナス成長となりました。一方、社会経済活動が再開されたことで、7-9月期以降は多くの地域で経済の持ち直しの動きが見られています。ただし、10-12月期に入って、感染の再拡大によって欧州や米国の一部などでは再びロックダウンを余儀なくされた地域もあり、世界経済の回復は非常に緩やかなものとなっています。IMF(国際通貨基金)が2021年1月に公表した世界経済見通しによれば、2020年は新型コロナウイルス感染症の影響により先進国、新興国ともにマイナス成長に転じ、世界経済成長率は△3.5%とリーマン・ショック時を上回る大幅なマイナスが見込まれています。
米国経済は、新型コロナウイルスの感染者数の急増を受けて急速に悪化した後、持ち直しの動きが続いています。2020年3月半ばにトランプ大統領が緊急事態を宣言し、小売店や飲食店、娯楽施設などの営業規制や外出制限を実施したことによって、外食や娯楽関連など不要不急のサービスを中心に個人消費が急減し、2020年1-3月期の実質GDP成長率は前期比年率△5.0%と6年ぶりのマイナス成長となりました。また、営業規制の影響を受けたサービス業従事者の失業を主因として、4月の失業率は14.7%まで上昇し、4-6月期の実質GDP成長率は同△31.4%と、1947年の現行統計開始以来最大のマイナス幅を記録しました。その後、営業規制・外出制限の段階的な解除に伴い経済活動が再開されたことに加え、政府による経済対策が下支えとなり、7-9月期の実質GDP成長率は前期比年率+33.1%と大幅なプラスに転じました。もっとも、10-12月期に入って新型コロナウイルスの新規感染者数が再び大幅に増加する中、一部の州・地域で営業規制・外出制限が再び導入されたことで経済の回復ペースは鈍化しつつあります。10-12月期の実質GDP成長率は前期比年率+4.0%と前期から伸びが大幅に縮小し、経済活動の水準は新型コロナウイルスの感染拡大前に比べて低い状態が続いています。
金融面では、FRB(連邦準備制度理事会)が積極的な金融緩和を行いました。新型コロナウイルス感染症の影響によって経済が急激に悪化したことを受け、FRBは2020年3月に2度の緊急利下げを実施し、2015年12月以来となる実質的なゼロ金利政策を復活させました。また、量的緩和の拡大も決定し、FRBのバランスシートは大幅に拡大しています。12月のFOMCでは、少なくとも2023年末まで政策金利がゼロで据え置かれる見通しが示されたことに加え、経済が十分に回復するまでFRBのバランスシートの拡大を続けることが約束され、緩和的な金融環境を長期にわたって維持する方針が示されました。
欧州経済(ユーロ圏経済)は、新型コロナウイルス感染症の影響が長引く中、厳しい状況が続いています。ユーロ圏でも多くの国が2020年3月半ばからロックダウンに踏み切ったことにより、個人消費や生産など、幅広い分野で経済が大きく落ち込み、1-3月の実質GDP成長率は前期比年率△14.1%と大幅なマイナスとなりました。また、4-6月期には同△39.2%とさらにマイナス幅が拡大し、2四半期連続で統計開始以降の最悪値を更新しました。その後、早い国では4月半ばから、遅い国でも5月以降はロックダウンを緩和したことで、5月以降、ユーロ圏経済は持ち直しに転じ、7-9月期の実質GDP成長率は前期比年率+59.9%とプラスに転じました。しかし、10-12月期には、新型コロナウイルスの感染者数が再び増加に転じたことを受け、ドイツ、フランスなど、多くの国で再びロックダウンを余儀なくされたことで、実質GDP成長率は前期比年率△2.8%となり、一時的に持ち直していた欧州経済は再び悪化しています。
金融面では、ECB(欧州中央銀行)による金融緩和が続いています。新型コロナウイルスの感染拡大による急激な景気悪化を受けて、ECBは2020年3月の緊急会合で、新型コロナウイルス感染症対応のための新規の資産買い取りプログラムを設定し、量的緩和策の拡大を決定しました。また6月には資産の買い取り枠を拡大し、2020年末までとしていた買い入れ期間も「少なくとも2021年6月末まで」に延長しました。さらに12月には、資産買い取り枠の追加拡大や、買い入れ期間の9ヵ月延長に加えて、金融機関向け資金供給策が2022年6月まで延長されるなど、金融緩和策が一層強化されました。
新興市場国・発展途上国経済は、先進国と同様に2020年前半に急激に悪化した後、2020年後半以降持ち直しの動きが続いています。IMFによれば、2020年の実質GDP成長率は、△2.4%とマイナス成長に落ち込むことが見込まれています。
新興国のうち、世界第2位の経済規模を持つ中国では、2020年1-3月期には新型コロナウイルス感染症によって経済活動の停止を余儀なくされ、実質GDP成長率は前年同期比△6.8%と、1992年に四半期ベースの統計が開始されて以降、初めてのマイナス成長となりましたが、他国に先んじて新型コロナウイルスの感染が収束へ向かったこともあり、4-6月期以降、着実に経済が持ち直しています。4-6月期の実質GDP成長率は前年同期比+3.2%と、新型コロナウイルスの感染拡大以前に比べると成長率は小幅ながら、プラス成長へと転じ、政策による下支えを背景とした投資の回復を主な要因として、7-9月期の実質GDP成長率は前年同期比+4.9%とプラス幅が拡大しました。10-12月期も、世界の多くの地域で感染再拡大によって経済活動が制限されるのとは対照的に、中国国内での感染拡大は抑制された状況が続いたこともあり、実質GDP成長率は前年同期比+6.5%と前期からさらに加速し、経済の回復が継続しています。
一方で、中国以外の新興国については、総じて厳しい状況が続いています。新興国でも新型コロナウイルスの感染拡大を防止するために経済活動を制限せざるを得ない状況になったことに加えて、世界的な景気悪化を受けた資金流出や、資源価格の低迷などが、新興国経済を下押しする要因となっています。また、多くの新興国は、先進国と比べて財政による景気の下支えが困難であり、経済活動を停止することへの耐久力が低いことから、経済活動の再開を進めました。その結果として、経済の悪化には一定の歯止めがかかる一方、新型コロナウイルスの感染者数の増加が続く国も少なくなく、新興国経済は非常にリスクの高い状況が続いています。
<日本の状況>日本経済は、新型コロナウイルス感染症の影響を受けて2020年初めから急激に悪化しましたが、2020年後半以降、持ち直しの動きが見られています。日本の実質GDP成長率は、消費増税に伴う反動減があった2019年10-12月期から3四半期連続でマイナス成長となり、特に新型コロナウイルス感染症の影響が本格的に顕在化した2020年4-6月期は前期比年率△28.1%と、戦後最大のマイナス幅を記録しました。しかし、緊急事態宣言が全面解除された5月下旬以降、社会経済活動が徐々に再開されたことで日本経済は持ち直しに転じ、7-9月期の実質GDPは前期比年率+21.4%と大幅な回復を見せました。また、10-12月期も政策による下支えなどを背景に、緩やかな持ち直しが続きました。
需要項目ごとに見ると、個人消費は緩やかな持ち直しが続いています。2020年1-3月期は、2019年10月に実施された消費増税による落ち込みからの持ち直しが期待されていましたが、新型コロナウイルスの感染拡大による自粛の動きによって、外食などをはじめとする不要不急のサービス消費を中心に減少しました。さらに、個人消費を手控える動きは2020年4月7日の緊急事態宣言によって加速し、個人消費は4月に入って大幅に減少することとなりました。その後、5月下旬に緊急事態宣言が全面解除されたことに加えて、特定定額給付金などの経済対策による下支えなどから、個人消費は持ち直しつつあります。ただし、感染拡大への懸念が強い状況が続く中、対面や移動を伴う接触型サービスの回復は緩やかであり、個人消費の水準は新型コロナウイルスの感染拡大前に比べて低い水準にとどまっています。一方、住宅投資については、消費増税に伴う反動減があった2019年10-12月期以降、減少傾向が続いています。自粛に伴う販売の低迷や建設の遅れに加えて、雇用環境の悪化や先行きに対する不透明感が、住宅投資の下押し要因となっています。企業部門に関しては、新型コロナウイルス感染症の影響によって企業活動が低迷し、収益環境が急速に悪化する中、設備投資は減少傾向にあります。日銀短観(2020年12月調査)によれば、2020年度の設備投資計画(含む土地投資額)は、12月調査としてはリーマン・ショック後の2009年以来のマイナスとなっており、企業は設備投資に対して慎重な姿勢を続けています。
金融面では、日本銀行による短期金利に加えて長期金利も操作対象とする金融緩和措置が継続しています。日本銀行は、新型コロナウイルスの感染拡大による急激な景気の悪化を受けて、2020年4月に、国債の購入額の上限を撤廃したほか、社債などの買い入れ枠を拡大するなど、量的緩和を強化しました。
金利については、日本銀行による追加緩和策を受けて、日本の10年国債利回りが4月に一時△0.04%台まで低下しました。世界的に経済活動再開の動きが広まる中で、5月末にはプラス圏を回復しましたが、0%近傍と非常に低い水準で推移しています。FRBが実質的なゼロ金利政策を当面続けることを表明したことで米国の長期金利が歴史的低水準圏で安定的に推移していることもあり、日本の長期金利も総じて安定的な推移が続いています。
為替市場をみると、対ドルでは2020年4月以降、総じて円高傾向で推移しました。世界的に経済活動再開への期待が高まった6月前半には、リスク回避の動きが弱まり、一時109円台まで円安が進みましたが、6月後半以降は、米国で新型コロナウイルスの感染が再拡大し、FRBによる追加金融緩和への期待感が強まったことなどから再び円高傾向に転じ、11月には2020年3月以来の103円台まで円高が進みました。対ユーロについては、世界経済が急激に悪化し、リスク回避の動きが強まった4月から5月前半までは、対ドルと同様に円高傾向で推移しました。しかし、5月後半には欧州の景気回復期待から円安傾向へと転じ、さらにEU27カ国による復興基金案の合意を受けて、7月以降、一層の円安が進行しました。欧州での新型コロナウイルスの感染再拡大をうけて、9月から11月には一時円高が進む局面もありましたが、ワクチン開発への期待などから年末にかけては再び円安傾向へと転じました。
株式市場は、2020年度に入って以降、総じて上昇基調で推移しました。新型コロナウイルスの感染拡大によって、経済や企業業績は急激に悪化したものの、世界的に金融緩和が強化されたことによる低金利や、量的緩和拡大による需給の改善が株価を押し上げる要因となりました。また、2020年後半には、新型コロナウイルス感染症のワクチン開発が進展し、世界的なワクチンの普及に対する期待感が高まったことも株価の押し上げ要因となりました。
2020年12月末の日経平均株価は27,444円17銭(同年9月末比4,259円5銭高)、10年国債利回りは0.035%(同0.008ポイントの上昇)、為替は1ドル103円33銭(同2円29銭の円高)となりました。
(3) 事業上及び財務上の対処すべき課題
当第3四半期連結累計期間において、事業上及び財務上の対処すべき課題について、重要な変更及び新たに生じた事項はありません。
(4) 研究開発活動
該当事項はありません。
(5) 資本の財源及び流動性に係る情報
① 流動性の管理
<財務の効率性と安定性の両立>当社グループは、多くの資産及び負債を用いる有価証券関連業務や、投融資業務を行っており、これらのビジネスを継続する上で十分な流動性を効率的かつ安定的に確保することを資金調達の基本方針としております。
当社グループの資金調達手段には、社債、ミディアム・ターム・ノート、金融機関借入、コマーシャル・ペーパー、コールマネー、預金受入等の無担保調達、現先取引、レポ取引等の有担保調達があり、これらの多様な調達手段を適切に組み合わせることにより、効率的かつ安定的な資金調達の実現を図っております。
財務の安定性という観点では、環境が大きく変動した場合においても、業務の継続に支障をきたすことのないよう、平時から安定的に資金を確保するよう努めると同時に、危機発生等により、新規の資金調達及び既存資金の再調達が困難となる場合も想定し、調達資金の償還期限及び調達先の分散を図っております。
当社は、平成26年金融庁告示第61号による連結流動性カバレッジ比率(以下、「LCR」という。)の最低基準の遵守が求められております。当社の当第3四半期日次平均のLCRは168.2%となっており、上記金融庁告示による要件を満たしております。また、当社は、上記金融庁告示による規制上のLCRのほかに、独自の流動性管理指標を用いた流動性管理態勢を構築しております。即ち、一定期間内に期日が到来する無担保調達資金及び同期間にストレスが発生した場合の資金流出見込額に対し、様々なストレスシナリオを想定したうえで、それらをカバーする流動性ポートフォリオが保持されていることを日次で確認しており、1年間無担保資金調達が行えない場合でも業務の継続が可能となるように取り組んでおります。
当第3四半期日次平均のLCRの状況は次のとおりです。
(単位:億円)
日次平均
(自 2020年10月
至 2020年12月)
適格流動資産(A)28,329
資金流出額(B)34,490
資金流入額(C)17,650
連結流動性カバレッジ比率(LCR)
算入可能適格流動資産の合計額(D)28,329
純資金流出額(E)16,839
連結流動性カバレッジ比率(D)/(E)168.2%


<グループ全体の資金管理>当社グループでは、グループ全体での適正な流動性確保という基本方針の下、当社が一元的に資金の流動性の管理・モニタリングを行っております。当社は、当社グループ固有のストレス又は市場全体のストレスの発生により新規の資金調達及び既存資金の再調達が困難となる場合も想定し、短期の無担保調達資金について、当社グループの流動性ポートフォリオが十分に確保されているかをモニタリングしております。また、当社は、必要に応じて当社からグループ各社に対し、機動的な資金の配分・供給を行うと共に、グループ内で資金融通を可能とする態勢を整えることで、効率性に基づく一体的な資金調達及び資金管理を行っております。
<コンティンジェンシー・ファンディング・プラン>当社グループは、流動性リスクへの対応の一環として、コンティンジェンシー・ファンディング・プランを策定しております。同プランは、信用力の低下等の内生的要因や金融市場の混乱等の外生的要因によるストレスの逼迫度に応じた報告体制や資金調達手段の確保などの方針を定めており、これにより当社グループは機動的な対応により流動性を確保する態勢を整備しております。
当社グループのコンティンジェンシー・ファンディング・プランは、グループ全体のストレスを踏まえて策定しており、変動する金融環境に機動的に対応するため、定期的な見直しを行っております。
また、金融市場の変動の影響が大きく、その流動性確保の重要性の高い大和証券株式会社、株式会社大和ネクスト銀行及び海外証券子会社においては、更に個別のコンティンジェンシー・ファンディング・プランも策定し、同様に定期的な見直しを行っております。
なお、当社は、子会社のコンティンジェンシー・ファンディング・プランの整備状況について定期的にモニタリングしており、必要に応じて想定すべき危機シナリオを考慮して子会社の資金調達プランやコンティンジェンシー・ファンディング・プランそのものの見直しを行い、更には流動性の積み増しを実行すると同時に資産圧縮を図るといった事前の対策を講じることとしております。
② 株主資本
当社グループが株式や債券、デリバティブ等のトレーディング取引、貸借取引、引受業務、ストラクチャード・ファイナンス、M&A、プリンシパル・インベストメント、証券担保ローン等の有価証券関連業を中心とした幅広い金融サービスを展開し、ハイブリッド型総合証券グループとしての新たな価値の提供に資する投融資を行うためには、十分な資本を確保する必要があります。また、当社グループは、日本のみならず、海外においても有価証券関連業務を行っており、それぞれの地域において法規制上必要な資本を維持しなければなりません。
当第3四半期連結会計期間末の株主資本は、前連結会計年度末比289億円増加し、1兆2,312億円となりました。また、資本金及び資本剰余金の合計は4,780億円となっております。利益剰余金は親会社株主に帰属する四半期純利益577億円を計上したほか、配当金304億円の支払いを行った結果、前連結会計年度末比267億円増加の8,612億円となりました。自己株式の控除額は同22億円減少し、1,080億円となっております。