四半期報告書-第85期第1四半期(令和3年4月1日-令和3年6月30日)

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2021/08/11 15:07
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本項における将来に関する事項は、別段の記載がない限り、当第1四半期連結会計期間の末日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)財政状態の分析
<資産の部>当第1四半期連結会計期間末の総資産は前連結会計年度末比5,127億円(2.0%)減少の25兆5,866億円となりました。内訳は流動資産が同5,145億円(2.1%)減少の24兆1,318億円であり、このうち現金・預金が同7,924億円(16.6%)減少の3兆9,707億円、トレーディング商品が同6,300億円(8.0%)増加の8兆4,641億円、営業貸付金が同748億円(3.7%)減少の1兆9,212億円、有価証券担保貸付金が同3,952億円(5.3%)減少の7兆530億円となっております。固定資産は同18億円(0.1%)増加の1兆4,548億円となっております。
<負債の部・純資産の部>負債合計は前連結会計年度末比5,023億円(2.0%)減少の24兆51億円となりました。内訳は流動負債が同3,116億円(1.5%)減少の20兆9,077億円であり、このうち約定見返勘定が同4,748億円(36.0%)減少の8,454億円、有価証券担保借入金が同7,462億円(9.1%)増加の8兆9,223億円、銀行業における預金が同1,293億円(2.9%)減少の4兆2,867億円、また短期借入金が同5,363億円(38.1%)減少の8,718億円となっております。固定負債は同1,906億円(5.8%)減少の3兆937億円であり、このうち社債が同357億円(2.3%)減少の1兆5,215億円、長期借入金が同1,531億円(9.7%)減少の1兆4,337億円となっております。
純資産合計は同103億円(0.7%)減少の1兆5,814億円となりました。資本金及び資本剰余金の合計は4,780億円となりました。利益剰余金は親会社株主に帰属する四半期純利益を235億円計上したほか、配当金380億円の支払いを行ったこと等により、同146億円(1.6%)減少の8,971億円となっております。自己株式の控除額は同7億円(0.7%)減少の1,068億円、その他有価証券評価差額金は同8億円(2.1%)増加の424億円、為替換算調整勘定は同34億円増加の163億円、非支配株主持分は同13億円(0.6%)増加の2,505億円となっております。
(2)経営成績の分析
① 事業全体の状況
当第1四半期連結累計期間の営業収益は前年同期比16.5%増の1,498億円、純営業収益は同20.2%増の1,267億円となりました。
受入手数料は773億円と、同33.9%の増収となりました。委託手数料は、株式取引が増加したことにより、同8.6%増の186億円となりました。引受業務では、エクイティや債券引受案件等が増加し、引受け・売出し・特定投資家向け売付け勧誘等の手数料が同139.1%増の105億円となりました。
トレーディング損益は、米州における債券収益が減少したこと等により、同18.0%減の262億円となりました。
販売費・一般管理費は同6.8%増の948億円となりました。取引関係費は販売促進に関連する費用が増加し同14.6%増の152億円、人件費は主に国内外における賞与が増加したことから同9.4%増の492億円となっております。
以上より、経常利益は同63.4%増の349億円となりました。
これに特別損益を加え、法人税等及び非支配株主に帰属する四半期純利益を差し引いた結果、親会社株主に帰属する四半期純利益は前年同期比34.2%増の235億円となりました。
② セグメント情報に記載された区分ごとの状況
純営業収益及び経常利益をセグメント別に分析した状況は次のとおりであります。
(単位:百万円)
純営業収益経常利益又は経常損失(△)
2020年
6月期
2021年
6月期
対前年同期
増減率
構成比率2020年
6月期
2021年
6月期
対前年同期
増減率
構成比率
リテール部門35,14847,35634.7%37.4%△89310,037-28.7%
ホールセール部門51,50946,751△9.2%36.9%18,47611,328△38.7%32.4%
グローバル・マーケッツ45,27131,682△30.0%25.0%20,5747,795△62.1%22.3%
グローバル・インベストメント・バンキング6,23815,068141.6%11.9%△2,0603,144-9.0%
アセット・マネジメント部門12,78417,35235.7%13.7%7,57110,00032.1%28.6%
証券アセット・マネジメント9,12911,09621.5%8.8%3,1885,18462.6%14.8%
不動産アセット・マネジメント3,6556,25571.1%4.9%4,3834,8169.9%13.8%
投資部門1,0282,757168.1%2.2%1171,82415.6倍5.2%
その他・調整等4,97412,502-9.9%△3,9011,730-5.0%
連結 計105,445126,72120.2%100.0%21,37034,92263.4%100.0%

[リテール部門]
リテール部門の主な収益源は、国内の個人投資家及び未上場会社のお客様の資産管理・運用に関する商品・サービスの手数料であり、経営成績に重要な影響を与える要因には、お客様動向を左右する国内外の金融市場及び経済環境の状況に加え、お客様のニーズに合った商品の開発状況や引受け状況及び販売戦略が挙げられます。
当第1四半期連結累計期間においては、大型のエクイティ引受案件があったことや、新型コロナウイルスの感染拡大に起因する前年同期のマーケット下落時に比べてお客様のアクティビティが拡大したことにより、エクイティ収益が増加しました。債券収益は、大型の債券引受案件があったことにより増加しました。投資信託は、投信フレックスプランの効果も寄与し、販売額が拡大した結果、募集手数料、代理事務手数料ともに増加しました。また、契約額の増加により、ラップ口座サービスの契約資産残高は過去最高となりました。
その結果、当第1四半期連結累計期間のリテール部門における純営業収益は前年同期比34.7%増の473億円、経常利益は100億円(前年同期は8億円の経常損失)となりました。リテール部門の当第1四半期連結累計期間の純営業収益及び経常利益のグループ全体の連結純営業収益及び連結経常利益に占める割合は37.4%及び28.7%でした。
[ホールセール部門]
ホールセール部門は、機関投資家等を対象に有価証券のセールス及びトレーディングを行うグローバル・マーケッツと、事業法人、金融法人等が発行する有価証券の引受け、M&Aアドバイザリー業務や上場コンサルティング業務を行うグローバル・インベストメント・バンキングによって構成されます。
グローバル・マーケッツの主な収益源は、機関投資家に対する有価証券の売買に伴って得る取引手数料及びトレーディング収益であり、地政学リスクや国際的な経済状況等で変化する市場の動向や、それに伴う顧客フローの変化が、経営成績に重要な影響を与える要因となります。
グローバル・マーケッツは減収減益となりました。エクイティ収益は、ほぼ横ばいとなりました。フィクストインカム収益は、ボラティリティの低下により国内外での収益機会が減少したため、債券市場が活況を呈した前年同期比では減収となりました。その結果、当第1四半期連結累計期間の純営業収益は前年同期比30.0%減の316億円、経常利益は同62.1%減の77億円となりました。
グローバル・インベストメント・バンキングの主な収益源は、引受業務やM&Aアドバイザリー業務によって得る引受け・売出し手数料とM&A手数料であり、顧客企業の資金調達手段の決定やM&Aの需要を左右する国内外の経済環境等に加え、当社が企業の需要を捉え、案件を獲得できるかどうかが経営成績に重要な影響を与える要因となります。
グローバル・インベストメント・バンキングは増収増益となりました。引受け・売出し手数料は、エクイティ大型公募売出し案件でグローバル・コーディネーターを務めたことや、多数の債券主幹事案件を積上げたことなどから増収となりました。またM&Aビジネスでは、国内外多数の案件を遂行したことにより、増収となりました。これらの結果、グローバル・インベストメント・バンキングの純営業収益は前年同期比141.6%増の150億円、経常利益は31億円(前年同期は20億円の経常損失)となりました。
その結果、当第1四半期連結累計期間のホールセール部門における純営業収益は前年同期比9.2%減の467億円、経常利益は同38.7%減の113億円となりました。ホールセール部門の当第1四半期連結累計期間の純営業収益及び経常利益のグループ全体の連結純営業収益及び連結経常利益に占める割合は、それぞれ36.9%及び32.4%でした。
なお、当第1四半期連結累計期間のホールセール部門における、新型コロナウイルスの感染拡大による業績への影響は限定的です。
[アセット・マネジメント部門]
アセット・マネジメント部門は、証券アセット・マネジメントと不動産アセット・マネジメントで構成されます。
証券アセット・マネジメントの主な収益源は、当社連結子会社の大和アセットマネジメントにおける投資信託の組成と運用に関する報酬です。また、当社持分法適用関連会社である三井住友DSアセットマネジメントの投資信託の組成と運用及び投資顧問業務に関する報酬からの利益は持分割合に従って経常利益に計上されます。経営成績に重要な影響を与える要因には、マーケット環境によって変動するお客様の投資信託及び投資顧問サービスへの需要と、マーケット環境に対するファンドの運用パフォーマンスや、お客様の関心を捉えたテーマ性のある商品開発等による商品自体の訴求性が挙げられます。
証券アセット・マネジメントは増収増益となりました。大和アセットマネジメントでは、R&Iファンド大賞において表彰された複数のファンド、NISA、iDeCo向け資産形成型商品やETFなど、投資家の資産形成ステージに応じた商品を提供しており、運用資産残高を拡大させた結果、公募投資信託の運用資産残高は前連結会計年度末比2.0%増の21.4兆円となりました。その結果、当第1四半期累計期間の純営業収益は前年同期比21.5%増の110億円、経常利益は同62.6%増の51億円となりました。
不動産アセット・マネジメントの主な収益源は、当社連結子会社の大和リアル・エステート・アセット・マネジメント、大和証券オフィス投資法人及びサムティ・レジデンシャル投資法人の不動産運用収益です。また、当社持分法適用関連会社であるサムティ株式会社及び大和証券リビング投資法人の不動産運用収益からの利益は持分割合に従って経常利益に計上されます。経営成績に重要な影響を与える要因には、国内の不動産市場・オフィス需要の動向が挙げられます。
不動産アセット・マネジメントは増収増益となりました。大和証券オフィス投資法人の連結子会社化に伴い、当第1四半期累計期間より同社の利益の100%を経常利益へ取り込んでいます。大和リアル・エステート・アセット・マネジメント及びサムティ・レジデンシャル投資法人の2社を合わせた運用資産残高は前連結会計年度末比0.4%増の1兆2,174億円となりました。その結果、当第1四半期累計期間の純営業収益は前年同期比71.1%増の62億円、経常利益は同9.9%増の48億円となりました。
当第1四半期連結累計期間のアセット・マネジメント部門における純営業収益は前年同期比35.7%増の173億円、経常利益は同32.1%増の100億円となりました。アセット・マネジメント部門の当第1四半期連結累計期間の純営業収益及び経常利益のグループ全体の連結純営業収益及び連結経常利益に占める割合は、それぞれ13.7%及び28.6%でした。なお、当第1四半期連結累計期間のアセット・マネジメント部門における、新型コロナウイルスの感染拡大による業績への影響は限定的です。
[投資部門]
投資部門は主に、連結子会社である大和企業投資、大和PIパートナーズ及び大和エナジー・インフラで構成されます。投資部門の主な収益源は、投資先の新規上場(IPO)・M&A等による売却益や、投資事業組合への出資を通じたキャピタルゲインのほか、契約に基づきファンドから受領する、管理運営に対する管理報酬や投資成果に応じた成功報酬です。
当第1四半期連結累計期間において、大和企業投資では、国内外の成長企業への投資や上場支援に貢献しながら、投資先の売却益により収益を確保しました。また、大和PIパートナーズでは、ローン、不良債権、不動産、国内外のPE投資を着実に実行し、大和エナジー・インフラでは、蓄電池分野や通信事業への出資を行うなど、持続可能な開発目標(SDGs)に資するエネルギー・インフラ関連投資を拡大しながら、インカムゲイン及びキャピタルゲインを計上しました。
その結果、当第1四半期連結累計期間の投資部門における純営業収益は前年同期比168.1%増の27億円、経常利益は同15.6倍の18億円となりました。投資部門の当第1四半期連結累計期間の純営業収益及び経常利益のグループ全体の連結純営業収益及び連結経常利益に占める割合は、それぞれ2.2%及び5.2%でした。なお、新型コロナウイルス感染症を起因とする投資先の株価下落や業績悪化等で、当第1四半期連結累計期間の投資部門の業績に大きな影響を与えたものはありません。
[その他]
その他の事業には、主に大和総研によるリサーチ・コンサルティング業務及びシステム業務のほか、大和ネクスト銀行による銀行業務などが含まれます。
大和総研は、当社グループのシステム開発を着実に遂行したほか、高付加価値のソリューション提案により、お客様との関係を強化したこと、また、大口顧客向けシステム開発案件を手掛けたこと等により、当社グループの収益に貢献しました。
大和ネクスト銀行では、引き続き、銀行代理業者である大和証券と連携して各種キャンペーンを実施しました。当第1四半期連結会計期間末の預金残高(譲渡性預金含む)は前連結会計年度末比3.0%減の4兆2,933億円、銀行口座数は同0.9%増の152万口座となり、金融収支が改善した結果、当第1四半期連結累計期間の業績は増収増益となりました。
その結果、その他・調整等に係る純営業収益は125億円(前年同期49億円)、経常利益は17億円(前年同期は39億円の経常損失)となりました。その他・調整等の当第1四半期連結累計期間の純営業収益及び経常利益のグループ全体の連結純営業収益及び連結経常利益に占める割合は、それぞれ9.9%及び5.0%でした。
なお、当第1四半期連結累計期間のその他・調整等における、新型コロナウイルスの感染拡大による業績への影響は限定的です。
③ 経営方針・経営戦略等及び経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当第1四半期連結累計期間において、経営方針・経営戦略等及び経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等について、第84期有価証券報告書の「目標とする経営指標の達成状況等」に記載した経営指標から重要な変更及び新たに生じた事項はありません。
④ 経営成績の前提となる当第1四半期連結累計期間のマクロ経済環境
<海外の状況>新型コロナウイルスの感染拡大により2020年初からに急激に悪化した世界経済は、2020年後半以降、持ち直しへと向かっています。IMF(国際通貨基金)が2021年7月に公表した世界経済見通しによれば、2020年は先進国、新興国ともにマイナス成長に転じ、世界経済成長率は△3.2%とリーマン・ショック時を上回る大幅なマイナス成長となりました。一方、2021年は、世界的に新型コロナウイルスワクチンの普及が見込まれることに加えて、前年の落ち込みからの反動もあり+6.0%と高い成長が見込まれています。もっとも、世界経済は最悪期を脱しつつも、引き続き新型コロナウイルスの感染状況に左右される不安定な状況が続いています。
米国経済は、2020年後半以降、順調な回復が続いています。新型コロナウイルスの感染拡大以降、政府が実行してきた累次の経済対策が下支えとなったことに加えて、2021年に入って新型コロナウイルスワクチンの接種が順調に進む中、政府による行動規制が緩和されたことで、2021年1-3月期の実質GDP成長率は前期比年率+6.3%となりました。4-6月期に入ると経済再開の動きが一層進展したことに加えて、2021年1月に発足したバイデン政権が3月に成立させた追加経済対策による家計所得の増加が個人消費を後押しし、4-6月期の実質GDP成長率は前期比年率+6.5%と成長ペースが加速しました。
金融面では、FRB(連邦準備制度理事会)がコロナ禍への対応として復活させたゼロ金利政策が続き、緩和的な環境が継続しています。2021年6月のFOMCでは、少なくとも2022年末まで政策金利がゼロで据え置かれる見通しが示されました。また、2020年12月のFOMCでは、経済が十分に回復するまでバランスシートの拡大を続けることを約束しており、量的緩和政策も継続されています。
欧州経済(ユーロ圏経済)は、新型コロナウイルス感染症の影響が長引く中、厳しい状況が続いています。2020年前半に新型コロナウイルスの感染拡大によって急激に落ち込んだユーロ圏経済は、2020年7-9月期には一旦はプラス成長に転じましたが、2020年後半から感染者数が再び増加に転じたことを受け、ドイツ、フランスなど、多くの国で再びロックダウンを余儀なくされました。この結果、2020年10-12月期の実質GDP成長率は前期比年率△2.5%とマイナス成長に転じ、続く2021年1-3月期も同△1.3%と2四半期連続のマイナス成長となりました。しかし、4-6月期に入ると新型コロナワクチンの接種が進展したこともあり、経済は再び持ち直しへと向かっています。4―6月期の実質GDP成長率は前期比年率+8.3%と3四半期ぶりのプラス成長となりました。
金融面では、ECB(欧州中央銀行)による金融緩和が続いています。新型コロナウイルスの感染拡大による急激な景気悪化を受けて、ECBは2020年3月の緊急会合で、新型コロナウイルス感染症対応のための新規の資産買い取りプログラムを設定し、量的緩和策の拡大を決定しました。当初は2020年末までとされていた買い入れ期間は「少なくとも2022年3月まで」延長されており、ECBは緩和的な金融政策を当面続けることを約束しています。
新興市場国・発展途上国経済は、先進国と同様に2020年前半に急激に悪化した後、2020年後半以降持ち直しの動きが続いています。IMFによれば、新興国の実質GDP成長率は2020年に△2.1%とマイナス成長に陥った後、2021年は+6.3%と高い成長が見込まれています。
新興国のうち、世界第2位の経済規模を持つ中国では、世界に先んじて新型コロナウイルスの感染が収束へ向かったこともあり、2020年4-6月期以降、経済の持ち直しが続いています。政策による下支えを背景とした投資の増加が経済の持ち直しに大きく寄与したことに加えて、コロナ禍に伴う医療用品やIT製品などの特需による輸出の増加が成長に寄与しました。さらに2021年に入ると、米国の成長加速を主因に輸出の伸びが加速したことに加え、出遅れていた個人消費の回復が進み、2021年1-3月期の実質GDP成長率は、前年の落ち込みからの反動もあり前年比+18.3%と四半期統計の公表を開始した1992年以来、最も高い成長となりました。続く4-6月期は、前年からの反動の影響が一巡したことで成長率が低下しつつも、同+7.9%と底堅い成長が続きました。
中国以外の新興国についても、2020年後半以降持ち直しの動きが続いています。米国や中国を中心とした海外経済の回復や、それに伴う資源価格の上昇、世界的な金融緩和を背景とした資金流入が新興国経済を下支えしています。ただし、新興国ではワクチン接種の実施が遅れている国が多く、感染再拡大による経済の下振れリスクが高い状況が続いています。



<日本の状況>日本経済は、2020年初めから新型コロナウイルス感染症の影響によって大幅に悪化した後、2020年後半に一時持ち直しに転じたものの、感染再拡大によって2021年に入り再び回復が足踏みしています。新型コロナウイルスの感染再拡大を受けて2021年1月8日に2回目の緊急事態宣言が発出され、2021年1-3月期の実質GDP成長率は、前期比年率△3.9%と3四半期ぶりのマイナス成長に転じました。2度目の緊急事態宣言は3月21日に全面解除されましたが、4月25日には3回目の緊急事態宣言が発出されたことで、人々の外出は抑制され、4-6月期も国内需要を中心に日本経済は厳しい状況が続いています。
需要項目ごとに見ると、個人消費は低い水準での推移が続いています。2020年後半には持ち直しの動きが見られていましたが、2回目の緊急事態宣言が発出されたことで、外食や娯楽サービスなどを中心としたサービス消費の減少を主因に、2021年1-3月期の個人消費は前期比年率△5.8%と3四半期ぶりに減少しました。また、4月に3回目となる緊急事態宣言が発出されたことで、対象地域ではサービス消費が抑制された状況が続いています。さらに、こうしたサービス業の低迷は雇用・所得環境の回復の遅れにも繋がり、個人消費は4-6月期に入っても、新型コロナウイルス感染拡大前よりも低い水準での推移が続いています。住宅投資についても同様に、コロナ禍によって大きく落ちこんだ後、持ち直しの動きがみられつつも、雇用環境の先行きに対する不透明感が続く中で低い水準で推移しています。
企業部門の需要である設備投資は、2020年後半に一時持ち直した後、緊急事態宣言の再発出によって2021年1-3月期には再び減少に転じました。しかし、4-6月期に入ると米中を中心とした海外経済の回復を背景に輸出が増加する中、設備投資についても再び増加傾向に転じつつあります。日銀短観(2021年6月調査)によれば、2021年度の設備投資計画(含む土地投資額)は、2020年度からの反動もあり、前年比+7.1%と高めの伸びが見込まれています。
金融面では、日本銀行による短期金利に加えて長期金利も操作対象とする金融緩和措置が継続しています。また、日本銀行は、新型コロナウイルスの感染拡大による急激な景気の悪化を受けて、2020年4月に、国債の購入額の上限を撤廃したほか、社債などの買い入れ枠を拡大するなど量的緩和を強化しました。こうした中、日本の10年国債利回りは0%近傍での推移が続いています。2021年に入って米国での景気過熱や財政悪化への懸念から米国の長期金利が上昇したのに伴い、日本の長期金利も小幅ながら上昇し、2月末には一時、2018年10月以来初めて0.15%を上回りました。しかし、3月以降、米国の長期金利が低下したことを受けて日本の長期金利も低下傾向に転じています。
為替市場をみると、2021年前半は対ドルでは総じて円安傾向で推移しました。米国での長期金利の大幅な上昇を受けて日米金利差が拡大したことで、2021年1-3月期は速いペースで円安が続き、年初時点で102円台だった対ドルレートは3月末には110円台となりました。4-6月期に入って米国金利の上昇が収まったことで4月には一時的に円高が進む局面もありましたが、感染拡大による緊急事態宣言の再発出によって日本経済の回復が足踏みとなる中、米国経済の回復期待から4月末以降は再びドル高・円安傾向となりました。対ユーロについても、2021年に入って以降、総じて円安傾向が続いています。欧州では日本に比べて早くワクチンの接種が進み、行動制限の緩和による欧州経済の回復期待がユーロ高・円安の要因となりました。
株式市場では、2021年2月に日経平均株価が一時1990年8月以来となる30,000円台まで上昇しました。しかし、2021年度に入るとそれまで上昇基調に歯止めが掛かり、概ね横ばい圏で推移しています。世界的に緩和的な金融環境が続く中、経済の回復が進む米国で株価の上昇傾向が続いたことは日本の株式市場にとっても好材料となりました。一方、日本ではワクチンの接種が相対的に遅れ、緊急事態宣言が繰り返し発出されたことが、株価を押し下げる要因となり、日々の感染状況に左右される形で日本の株価も上昇・下落を繰り返しました。2021年6月末の日経平均株価は28,791円53銭(同年3月末比387円27銭安)、10年国債利回りは0.07%(同0.034ポイントの低下)、為替は1ドル110円55銭(同19銭の円高)となりました。
(3)事業上及び財務上の対処すべき課題
当第1四半期連結累計期間において、事業上及び財務上の対処すべき課題について、重要な変更及び新たに生じた事項はありません。
(4)研究開発活動
該当事項はありません。
(5)資本の財源及び流動性に係る情報
① 流動性の管理
<財務の効率性と安定性の両立>当社グループは、多くの資産及び負債を用いる有価証券関連業務や、投融資業務を行っており、これらのビジネスを継続する上で十分な流動性を効率的かつ安定的に確保することを資金調達の基本方針としております。
当社グループの資金調達手段には、社債、ミディアム・ターム・ノート、金融機関借入、コマーシャル・ペーパー、コールマネー、預金受入等の無担保調達、現先取引、レポ取引等の有担保調達があり、これらの多様な調達手段を適切に組み合わせることにより、効率的かつ安定的な資金調達の実現を図っております。
財務の安定性という観点では、環境が大きく変動した場合においても、業務の継続に支障をきたすことのないよう、平時から安定的に資金を確保するよう努めると同時に、危機発生等により、新規の資金調達及び既存資金の再調達が困難となる場合も想定し、調達資金の償還期限及び調達先の分散を図っております。
当社は、平成26年金融庁告示第61号による連結流動性カバレッジ比率(以下、「LCR」という。)の最低基準の遵守が求められております。当社の当第1四半期日次平均のLCRは152.8%となっており、上記金融庁告示による要件を満たしております。また、当社は、上記金融庁告示による規制上のLCRのほかに、独自の流動性管理指標を用いた流動性管理態勢を構築しております。即ち、一定期間内に期日が到来する無担保調達資金及び同期間にストレスが発生した場合の資金流出見込額に対し、様々なストレスシナリオを想定したうえで、それらをカバーする流動性ポートフォリオが保持されていることを日次で確認しており、1年間無担保資金調達が行えない場合でも業務の継続が可能となるように取り組んでおります。
当第1四半期日次平均のLCRの状況は次のとおりです。
(単位:億円)
日次平均
(自 2021年4月
至 2021年6月)
適格流動資産(A)26,736
資金流出額(B)34,946
資金流入額(C)17,453
連結流動性カバレッジ比率(LCR)
算入可能適格流動資産の合計額(D)26,736
純資金流出額(E)17,493
連結流動性カバレッジ比率(D)/(E)152.8%

<グループ全体の資金管理>当社グループでは、グループ全体での適正な流動性確保という基本方針の下、当社が一元的に資金の流動性の管理・モニタリングを行っております。当社は、当社グループ固有のストレス又は市場全体のストレスの発生により新規の資金調達及び既存資金の再調達が困難となる場合も想定し、短期の無担保調達資金について、当社グループの流動性ポートフォリオが十分に確保されているかをモニタリングしております。また、当社は、必要に応じて当社からグループ各社に対し、機動的な資金の配分・供給を行うと共に、グループ内で資金融通を可能とする態勢を整えることで、効率性に基づく一体的な資金調達及び資金管理を行っております。
<コンティンジェンシー・ファンディング・プラン>当社グループは、流動性リスクへの対応の一環として、コンティンジェンシー・ファンディング・プランを策定しております。同プランは、信用力の低下等の内生的要因や金融市場の混乱等の外生的要因によるストレスの逼迫度に応じた報告体制や資金調達手段の確保などの方針を定めており、これにより当社グループは機動的な対応により流動性を確保する態勢を整備しております。
当社グループのコンティンジェンシー・ファンディング・プランは、グループ全体のストレスを踏まえて策定しており、変動する金融環境に機動的に対応するため、定期的な見直しを行っております。
また、金融市場の変動の影響が大きく、その流動性確保の重要性の高い大和証券株式会社、株式会社大和ネクスト銀行及び海外証券子会社においては、更に個別のコンティンジェンシー・ファンディング・プランも策定し、同様に定期的な見直しを行っております。
なお、当社は、子会社のコンティンジェンシー・ファンディング・プランの整備状況について定期的にモニタリングしており、必要に応じて想定すべき危機シナリオを考慮して子会社の資金調達プランやコンティンジェンシー・ファンディング・プランそのものの見直しを行い、更には流動性の積み増しを実行すると同時に資産圧縮を図るといった事前の対策を講じることとしております。
② 株主資本
当社グループが株式や債券、デリバティブ等のトレーディング取引、貸借取引、引受業務、ストラクチャード・ファイナンス、M&A、プリンシパル・インベストメント、証券担保ローン等の有価証券関連業を中心とした幅広い金融サービスを展開し、ハイブリッド型総合証券グループとしての新たな価値の提供に資する投融資を行うためには、十分な資本を確保する必要があります。また、当社グループは、日本のみならず、海外においても有価証券関連業務を行っており、それぞれの地域において法規制上必要な資本を維持しなければなりません。
当第1四半期連結会計期間末の株主資本は、前連結会計年度末比138億円減少し、1兆2,682億円となりました。また、資本金及び資本剰余金の合計は4,780億円となっております。利益剰余金は親会社株主に帰属する四半期純利益235億円を計上したほか、配当金380億円の支払いを行った結果、前連結会計年度末比146億円減少の8,971億円となりました。自己株式の控除額は同7億円減少し、1,068億円となっております。