四半期報告書-第85期第3四半期(令和3年10月1日-令和3年12月31日)

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2022/02/10 15:19
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46項目
本項における将来に関する事項は、別段の記載がない限り、当第3四半期連結会計期間の末日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)財政状態の分析
<資産の部>当第3四半期連結会計期間末の総資産は前連結会計年度末比3,159億円(1.2%)増加の26兆4,152億円となりました。内訳は流動資産が同2,510億円(1.0%)増加の24兆8,973億円であり、このうち現金・預金が同1,503億円(3.2%)減少の4兆6,128億円、有価証券が同1,905億円(19.1%)増加の1兆1,872億円、トレーディング商品が同405億円(0.5%)増加の7兆8,746億円、営業貸付金が同937億円(4.7%)減少の1兆9,023億円、有価証券担保貸付金が同2,713億円(3.6%)増加の7兆7,196億円、その他の流動資産が同1,024億円(13.0%)減少の6,863億円となっております。固定資産は同648億円(4.5%)増加の1兆5,178億円であり、このうち投資その他の資産が同455億円(10.3%)増加の4,893億円となっております。
<負債の部・純資産の部>負債合計は前連結会計年度末比3,072億円(1.3%)増加の24兆8,147億円となりました。内訳は流動負債が同6,223億円(2.9%)増加の21兆8,416億円であり、このうちトレーディング商品が同4,487億円(10.3%)増加の4兆8,165億円、約定見返勘定が同2,568億円(19.5%)減少の1兆634億円、預り金が同1,601億円(38.1%)増加の5,801億円、短期借入金が同4,240億円(30.1%)増加の1兆8,323億円、コマーシャル・ペーパーが同1,880億円(70.9%)減少の770億円、1年内償還予定の社債が同1,588億円(77.9%)増加の3,625億円となっております。固定負債は同3,150億円(9.6%)減少の2兆9,694億円であり、このうち社債が同72億円(0.5%)減少の1兆5,501億円、長期借入金が同3,107億円(19.6%)減少の1兆2,761億円となっております。
純資産合計は同86億円(0.5%)増加の1兆6,004億円となりました。資本金及び資本剰余金の合計は4,779億円となりました。利益剰余金は親会社株主に帰属する四半期純利益を769億円計上したほか、配当金637億円の支払いを行ったこと等により、同129億円(1.4%)増加の9,246億円となっております。自己株式の控除額は同268億円(25.0%)増加の1,345億円、その他有価証券評価差額金は同34億円(8.3%)減少の381億円、為替換算調整勘定は同138億円(107.5%)増加の267億円、非支配株主持分は同109億円(4.4%)増加の2,600億円となっております。
(2)経営成績の分析
① 事業全体の状況
当第3四半期連結累計期間の営業収益は前年同期比15.2%増の4,711億円、純営業収益は同14.1%増の3,903億円となりました。
受入手数料は2,447億円と、同19.3%の増収となりました。委託手数料は、株式取引が増加したことにより、同8.2%増の582億円となりました。引受業務では、債券引受案件等が増加し、引受け・売出し・特定投資家向け売付け勧誘等の手数料は、同11.0%増の341億円となりました。
トレーディング損益は、米州、欧州における債券収益が減少したこと等により、同7.8%減の806億円となりました。
販売費・一般管理費は前年同期比6.5%増の2,917億円となりました。取引関係費は支払手数料が増加し同10.1%増の467億円、人件費は賞与が増加したことにより同7.5%増の1,510億円となっております。
以上より、経常利益は同41.2%増の1,124億円となりました。
これに特別損益を加え、法人税等及び非支配株主に帰属する四半期純利益を差し引いた結果、親会社株主に帰属する四半期純利益は前年同期比33.1%増の769億円となりました。
② セグメント情報に記載された区分ごとの状況
純営業収益及び経常利益をセグメント別に分析した状況は次のとおりであります。
(単位:百万円)
純営業収益経常利益又は経常損失(△)
2020年
12月期
2021年
12月期
対前年同期
増減率
構成比率2020年
12月期
2021年
12月期
対前年同期
増減率
構成比率
(注)
リテール部門120,161146,79422.2%37.6%8,71035,104303.0%31.1%
ホールセール部門156,184150,864△3.4%38.7%54,11840,539△25.1%35.9%
グローバル・
マーケッツ
118,631100,142△15.6%25.7%45,04727,925△38.0%24.8%
グローバル・イ
ンベストメント
・バンキング
37,55250,72135.1%13.0%8,43411,42935.5%10.1%
アセット・マネジメント部門37,79053,29141.0%13.7%22,71434,05249.9%30.2%
証券アセット・マネジメント28,86534,11718.2%8.7%11,35516,67746.9%14.8%
不動産アセット・マネジメント8,92419,174114.9%4.9%11,35917,37453.0%15.4%
投資部門7,8486,940△11.6%1.8%4,2263,089△26.9%2.7%
その他・調整等20,09832,426-8.3%△10,135△304--
連結 計342,083390,31714.1%100.0%79,635112,48141.2%100.0%

(注)構成比率は経常利益のセグメント合計に占める割合としており、経常損失のセグメントを控除しております。
[リテール部門]
リテール部門の主な収益源は、国内の個人投資家及び未上場会社のお客様の資産管理・運用に関する商品・サービスの手数料であり、経営成績に重要な影響を与える要因には、お客様動向を左右する国内外の金融市場及び経済環境の状況に加え、お客様のニーズに合った商品の開発状況や引受け状況及び販売戦略が挙げられます。
当第3四半期連結累計期間においては、エクイティ収益は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けた前年同期と比べて、お客様のアクティビティが拡大したことにより、増加しました。債券収益は、大型の債券引受案件があったことにより増加しました。投資信託は、投信フレックスプランの効果も寄与し、販売額が拡大した結果、募集手数料、代理事務手数料ともに増加しました。また、契約額の増加等により、ラップ口座サービスの契約資産残高は過去最高となりました。
収益の増加に対し販売費・一般管理費は前年と同水準に抑えられた結果、当第3四半期連結累計期間のリテール部門における純営業収益は前年同期比22.2%増の1,467億円、経常利益は同303.0%増の351億円となりました。リテール部門の当第3四半期連結累計期間の純営業収益及び経常利益のグループ全体の連結純営業収益及び連結経常利益に占める割合は、それぞれ37.6%及び31.1%でした。
[ホールセール部門]
ホールセール部門は、機関投資家等を対象に有価証券のセールス及びトレーディングを行うグローバル・マーケッツと、事業法人、金融法人等が発行する有価証券の引受け、M&Aアドバイザリー業務や上場コンサルティング業務を行うグローバル・インベストメント・バンキングによって構成されます。
グローバル・マーケッツの主な収益源は、機関投資家に対する有価証券の売買に伴って得る取引手数料及びトレーディング収益であり、地政学リスクや国際的な経済状況等で変化する市場の動向や、それに伴う顧客フローの変化が、経営成績に重要な影響を与える要因となります。
グローバル・マーケッツは減収減益となりました。エクイティ収益は、国内株式及び外国株式の相場上昇を背景に投資家のアクティビティが増加したことから増収となりました。フィクストインカム収益は、ボラティリティの低下により国内外での収益機会が減少したため、債券市場が活況を呈した前年同期比では減収となりました。その結果、当第3四半期連結累計期間の純営業収益は前年同期比15.6%減の1,001億円、経常利益は同38.0%減の279億円となりました。
グローバル・インベストメント・バンキングの主な収益源は、引受業務やM&Aアドバイザリー業務によって得る引受け・売出し手数料とM&A手数料であり、顧客企業の資金調達手段の決定やM&Aの需要を左右する国内外の経済環境等に加え、当社が企業の需要を捉え、案件を獲得できるかどうかが経営成績に重要な影響を与える要因となります。
グローバル・インベストメント・バンキングは増収増益となりました。引受け・売出し手数料は、多数のエクイティ・債券主幹事案件を積上げたことなどから増収となりました。またM&Aビジネスでは、国内外で多数の案件を遂行したことにより、増収となりました。これらの結果、当第3四半期連結累計期間の純営業収益は前年同期比35.1%増の507億円、経常利益は同35.5%増の114億円となりました。
その結果、当第3四半期連結累計期間のホールセール部門における純営業収益は前年同期比3.4%減の1,508億円、経常利益は同25.1%減の405億円となりました。ホールセール部門の当第3四半期連結累計期間の純営業収益及び経常利益のグループ全体の連結純営業収益及び連結経常利益に占める割合は、それぞれ38.7%及び35.9%でした。
なお、当第3四半期連結累計期間のホールセール部門における、新型コロナウイルスの感染拡大による業績への影響は限定的です。
[アセット・マネジメント部門]
アセット・マネジメント部門は、証券アセット・マネジメントと不動産アセット・マネジメントで構成されます。
証券アセット・マネジメントの主な収益源は、当社連結子会社の大和アセットマネジメントにおける投資信託の組成と運用に関する報酬です。また、当社持分法適用関連会社である三井住友DSアセットマネジメントの投資信託の組成と運用及び投資顧問業務に関する報酬からの利益は持分割合に従って経常利益に計上されます。経営成績に重要な影響を与える要因には、マーケット環境によって変動するお客様の投資信託及び投資顧問サービスへの需要と、マーケット環境に対するファンドの運用パフォーマンスや、お客様の関心を捉えたテーマ性のある商品開発等による商品自体の訴求性が挙げられます。
証券アセット・マネジメントは増収増益となりました。大和アセットマネジメントでは、R&Iファンド大賞において表彰された複数のファンド、NISA、iDeCo向け資産形成型商品やETFなど、投資家の資産形成ステージに応じた商品を提供しており、運用資産残高を拡大させた結果、公募投資信託の運用資産残高は前連結会計年度末比5.0%増の22兆197億円となりました。その結果、当第3四半期連結累計期間の純営業収益は前年同期比18.2%増の341億円、経常利益は同46.9%増の166億円となりました。
不動産アセット・マネジメントの主な収益源は、当社連結子会社の大和リアル・エステート・アセット・マネジメント、大和証券オフィス投資法人等及びサムティ・レジデンシャル投資法人の不動産運用収益です。また、当社持分法適用関連会社であるサムティ株式会社及び大和証券リビング投資法人の不動産運用収益からの利益は持分割合に従って経常利益に計上されます。経営成績に重要な影響を与える要因には、国内の不動産市場・オフィス需要の動向が挙げられます。
不動産アセット・マネジメントは増収増益となりました。前連結会計年度末の大和証券オフィス投資法人の連結子会社化に伴い、第1四半期連結会計期間の期首より同社の利益の100%を経常利益へ取り込んでいます。また、大和リアル・エステート・アセット・マネジメントが運用する不動産投資法人等及びサムティ・レジデンシャル投資法人を合わせた運用資産残高は前連結会計年度末比5.4%増の1兆2,780億円となりました。その結果、当第3四半期連結累計期間の純営業収益は前年同期比114.9%増の191億円、経常利益は同53.0%増の173億円となりました。
当第3四半期連結累計期間のアセット・マネジメント部門における純営業収益は前年同期比41.0%増の532億円、経常利益は同49.9%増の340億円となりました。アセット・マネジメント部門の当第3四半期連結累計期間の純営業収益及び経常利益のグループ全体の連結純営業収益及び連結経常利益に占める割合は、それぞれ13.7%及び30.2%でした。
なお、当第3四半期連結累計期間のアセット・マネジメント部門における、新型コロナウイルスの感染拡大による業績への影響は限定的です。
[投資部門]
投資部門は主に、連結子会社である大和企業投資、大和PIパートナーズ及び大和エナジー・インフラで構成されます。投資部門の主な収益源は、投資先の新規上場(IPO)・M&A等による売却益や、投資事業組合への出資を通じたキャピタルゲインのほか、契約に基づきファンドから受領する、管理運営に対する管理報酬や投資成果に応じた成功報酬です。
当第3四半期連結累計期間において、大和企業投資では、国内外の成長企業への投資や上場支援に貢献しながら、投資先の売却益により収益を確保しました。また、大和PIパートナーズでは、ローン、不良債権、不動産、国内外のPE投資を着実に実行し、大和エナジー・インフラでは、蓄電池分野や通信事業への出資を行うなど、持続可能な開発目標(SDGs)に資するエネルギー・インフラ関連投資を拡大しながら、インカムゲイン及びキャピタルゲインを計上しました。しかしながら、当第3四半期連結累計期間においては、既存投資の再評価に伴う損失を計上した結果、減収減益となりました。
その結果、当第3四半期連結累計期間の投資部門における純営業収益は前年同期比11.6%減の69億円、経常利益は同26.9%減の30億円となりました。投資部門の当第3四半期連結累計期間の純営業収益及び経常利益のグループ全体の連結純営業収益及び連結経常利益に占める割合は、それぞれ1.8%及び2.7%でした。なお、新型コロナウイルス感染症の影響に伴い、航空需要の低下が長期化していることを踏まえて、航空機関連投資の一部について再評価を実施し、貸倒引当金を追加計上しております。
[その他]
その他の事業には、主に大和総研によるリサーチ・コンサルティング業務及びシステム業務のほか、大和ネクスト銀行による銀行業務などが含まれます。
大和総研は、当社グループのシステム開発を着実に遂行したほか、高付加価値のソリューション提案により、お客様との関係を強化したこと、また、大口顧客向けシステム開発案件を手掛けたこと等により、当社グループの収益に貢献しました。
大和ネクスト銀行では、引き続き、銀行代理業者である大和証券と連携して各種キャンペーンを実施しました。当第3四半期連結会計期間末の預金残高(譲渡性預金含む)は前連結会計年度末比2.0%減の4兆3,407億円、銀行口座数は同3.1%増の155万口座となりました。当第3四半期連結累計期間の業績は、運用収益が改善した結果、増収増益となりました。
その結果、その他・調整等に係る純営業収益は324億円(前年同期200億円)、経常損失は3億円(前年同期は101億円の経常損失)となりました。その他・調整等の当第3四半期連結累計期間の純営業収益のグループ全体の連結純営業収益に占める割合は8.3%でした。
なお、当第3四半期連結累計期間のその他・調整等における、新型コロナウイルスの感染拡大による業績への影響は限定的です。
③ 経営方針・経営戦略等及び経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当第3四半期連結累計期間において、経営方針・経営戦略等及び経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等について、第84期有価証券報告書の「目標とする経営指標の達成状況等」に記載した経営指標から重要な変更及び新たに生じた事項はありません。
④ 経営成績の前提となる当第3四半期連結累計期間のマクロ経済環境
<海外の状況>新型コロナウイルスの感染拡大により2020年年初から急激に悪化した世界経済は、2020年後半以降、持ち直しへと向かっています。IMF(国際通貨基金)が2022年1月に公表した世界経済見通しによれば、2020年は先進国、新興国ともにマイナス成長に転じ、世界経済成長率は△3.1%とリーマン・ショック時を上回る大幅なマイナス成長となりました。一方、2021年は、世界的に新型コロナウイルスワクチンの普及が進んだことに加えて、前年の落ち込みからの反動もあり+5.9%と高い成長が見込まれています。もっとも、世界経済は最悪期を脱しつつも、引き続き新型コロナウイルスの感染状況に左右される不安定な状況が続いています。
米国経済は、2020年後半以降、回復傾向が続いています。新型コロナウイルスの感染拡大以降、政府が実行してきた経済対策が下支えとなったことに加えて、2021年に入って新型コロナウイルスワクチンの接種が順調に進む中、政府による行動規制が緩和されたことで、2021年1-3月期の実質GDP成長率は前期比年率+6.3%となりました。4-6月期に入ると経済再開の動きが一層進展したことに加えて、2021年1月に発足したバイデン政権が3月に成立させた追加経済対策による家計所得の増加が個人消費を後押ししました。個人消費の増加を主因に4-6月期の実質GDP成長率は前期比年率+6.7%と前期から加速し、実質GDPはコロナ禍前の水準を回復しました。7-9月期には変異株によって新型コロナウイルスの感染が再拡大したことや、自動車などでの部品不足による供給制約の影響によって、実質GDP成長率は前期比年率+2.3%と前期から鈍化しました。しかし、10-12月期に入ると感染拡大が落ち着く中、雇用環境の回復を背景とした個人消費の増加などにより、実質GDP成長率は前期比年率+6.9%と再加速しました。
金融面では、FRB(連邦準備制度理事会)がコロナ禍への対応として復活させたゼロ金利政策が続き、緩和的な環境が継続しています。FRBは経済が十分に回復するまでバランスシートの拡大を続けることを約束しており、量的緩和政策も継続されています。ただし、雇用環境の改善が続いてきたことに加えて、2021年に入ってインフレ率がFRBの目標とする2%を大きく上回って推移していることを受けて、2021年11月のFOMCでは量的緩和の縮小開始を決定し、続く2021年12月のFOMCでは縮小ペースの加速を決定しました。
欧州経済(ユーロ圏経済)は、新型コロナウイルス感染症による落ち込みから持ち直しつつあります。2020年後半からの感染再拡大を受け、ドイツ、フランスなど、多くの国で2度目のロックダウンを余儀なくされたことから、ユーロ圏経済は、2020年10-12月期、2021年1-3月期は2四半期連続のマイナス成長となりました。一方、4-6月期に入ると、新型コロナウイルスワクチンの接種が進展する中、行動制限が緩和されたことで、ユーロ圏経済は持ち直しへと向かいました。4―6月期の実質GDP成長率は前期比年率+9.1%と3四半期ぶりのプラス成長に転じ、続く7-9月期も前期比年率+9.4%と2四半期連続のプラス成長となりました。しかし、10-12月期には新規感染者数が再び増加に転じる中、行動規制が強化されたことなどから、実質GDP成長率は前期比年率+1.2%と小幅な増加にとどまりました。
金融面では、ECB(欧州中央銀行)による金融緩和が続いています。ただし、ユーロ圏経済の回復が進んだことを受け、2021年9月のECB理事会ではコロナ禍で新設されたパンデミック緊急購入プログラムによる資産の買い入れペースを、10-12月期以降減速させる方針が示されました。また、12月のECB理事会では、2022年3月で同プログラムによる資産の買い取りを終了することが決定されました。
新興市場国・発展途上国経済は、先進国と同様に2020年前半に急激に悪化した後、2020年後半以降持ち直しの動きが続いています。IMFによれば、新興国の実質GDP成長率は2020年に△2.0%とマイナス成長に陥った後、2021年は+6.5%と高い成長が見込まれています。
新興国のうち、世界第2位の経済規模を持つ中国では、世界に先んじて新型コロナウイルスの感染が収束へ向かったこともあり、2020年4-6月期以降、経済の持ち直しが続いています。2021年に入ると、米国の成長加速を主因に輸出の伸びが加速したことに加え、出遅れていた個人消費の回復が進み、1-3月期の実質GDP成長率は前年比+18.3%と四半期統計の公表を開始した1992年以来、最も高い成長となりました。もっとも、4-6月期以降、中国の成長ペースは鈍化傾向にあります。4-6月期の実質GDP成長率は、前年からの反動の影響が一巡したこともあり、同+7.9%と前期から大きく減速しました。さらに7-9月期以降は、変異株の感染拡大を受けた行動制限や、資源価格の上昇、不動産市場の調整、電力不足の問題などから一層減速感が強まり、7-9月期は前年比+4.9%、10-12月期は前年比+4.0%の成長にとどまりました。
中国以外の新興国についても、2020年後半以降総じて見れば持ち直しの動きが続いています。米国や中国を中心とした海外経済の回復や、それに伴う資源価格の上昇、世界的な金融緩和を背景とした資金流入が新興国経済を下支えしています。ただし、新興国ではワクチン接種の実施が遅れている国が多く、2021年夏場に東南アジア諸国がロックダウンを余儀なくされたように、感染拡大による経済の下振れリスクが高い状況が続いています。
<日本の状況>日本経済は、新型コロナウイルスの感染動向に大きく左右され一進一退となりつつも、ならしてみれば緩やかな回復傾向が続いています。新型コロナウイルスの感染拡大を受けて2021年1月8日に2回目の緊急事態宣言が発出され、2021年1-3月期の実質GDP成長率は、前期比年率△2.9%と3四半期ぶりのマイナス成長に転じました。4-6月期には前期比年率+2.0%とプラスに転じましたが、4月25日に発出された3回目の緊急事態宣言が9月末まで続いたことで、7-9月期は前期比年率△3.6%とマイナス成長となりました。しかし、緊急事態宣言等が解除されたことに伴い10月以降は経済活動が再開され、経済は再び持ち直しへ向かいました。
需要項目ごとに見ると、個人消費は感染状況に左右される形で増加・減少を繰り返し、コロナ禍前に比べて低い水準での推移が続いています。2020年後半には持ち直しの動きが見られていましたが、2回目の緊急事態宣言が発出されたことで、外食や娯楽サービスなどを中心としたサービス消費の減少を主因に、2021年1-3月期の個人消費は前期比で3四半期ぶりに減少しました。4-6月期には一時的に人手が回復したことで持ち直しに転じましたが、7-9月に入ると新型コロナウイルスの感染が再び拡大し、緊急事態宣言が続いたことで個人消費は減少しました。しかし緊急事態宣言等が解除されたことで、サービス消費を中心に10月以降、個人消費は回復傾向となりました。住宅投資については、コロナ禍によって大きく落ちこんだ後、持ち直しの動きがみられつつも、雇用・所得環境の先行きに対する不透明感や、資材価格上昇を背景とした価格上昇などから、低水準での推移が続いています。
企業部門の需要である設備投資は、2020年後半から緩やかな持ち直しが続いています。緊急事態宣言等の影響や、供給制約による影響を受けた2021年7-9月期は一時的に落ち込みましたが、欧米や中国など海外経済の回復を背景に輸出の増加が続いたことや供給制約の解消を受け、年末にかけては再び増加基調となりました。日銀短観(2021年12月調査)によれば、2021年度の設備投資計画(含む土地投資額)は、2020年度からの反動もあり、前年比+7.9%と高めの伸びが見込まれています。
金融面では、日本銀行による短期金利に加えて長期金利も操作対象とする金融緩和措置が継続しています。新型コロナウイルスの感染拡大による急激な景気の悪化を受けて、2020年4月以降は日本銀行による国債の購入額の上限が撤廃されたほか、社債などの買い入れ枠が拡大されるなど、量的緩和が強化されました。ただし、日本経済が徐々に持ち直す中、日本銀行は2021年12月の政策決定会合で、社債などの買い入れ増額を2022年3月で終了することを決定しました。
日本銀行による緩和的な金融政策が続く中、日本の10年国債利回りは0%近傍での推移が続いていますが、2021年に入ってからは、特に米国長期金利の変動に影響される形で、日本の長期金利も小幅ながら上昇と下落を繰り返しました。2021年初めには米国での景気過熱や財政悪化への懸念から米国の長期金利が上昇したことに伴い日本の長期金利も小幅ながら上昇し、2月末には一時、2018年10月以来初めて0.15%を上回りました。その後、米国の長期金利が低下したことを受けて日本の長期金利も低下傾向に転じましたが、2021年7月以降は、FRBの量的緩和縮小や利上げ開始前倒し観測による米国長期金利上昇を受けて、日本の長期金利も緩やかな上昇傾向となりました。
為替市場をみると、2021年は総じて円安傾向で推移しました。米国での長期金利の大幅な上昇を受けて日米金利差が拡大したことで、2021年1-3月期は速いペースで円安が続き、年初時点で102円台だった対ドルレートは3月末には110円台となりました。その後、米国金利の上昇が収まったことで4月から9月頃にかけては概ね横ばい圏で推移しました。しかし、米国での着実な景気回復や金利上昇を受けて9月末以降は再びドル高・円安傾向となり、11月には2017年3月以来となる115円台まで円安が進みました。対ユーロについては、欧州では日本に比べて早くワクチンの接種が進んだことによる欧州経済の回復期待から、2021年年初から6月初頭まではユーロ高・円安傾向となりました。一方、欧州経済の回復ペースが緩やかとなる中、ECBによる金融緩和が長期化するとの見方が広がったことにより、6月中旬以降は上昇下落を繰り返しつつも概ね横ばい圏で推移しました。
株式市場では、2021年2月に日経平均株価が一時1990年8月以来となる30,000円台まで上昇しました。その後、2021年度に入ると、緊急事態宣言が繰り返し発出されたことなどが重荷となり、株価は緩やかな下落傾向となりました。9月には新政権への期待感から株価は大幅に上昇し、日経平均株価は再び一時30,000円を上回る局面もありましたが、感染の再拡大や金利上昇などが重荷となり、年末にかけては一進一退で推移しました。
2021年12月末の日経平均株価は28,791円71銭(同年9月末比660円95銭安)、10年国債利回りは0.089%(同0.008ポイントの上昇)、為替は1ドル115円12銭(同3円24銭の円安)となりました。
(3)事業上及び財務上の対処すべき課題
当第3四半期連結累計期間において、事業上及び財務上の対処すべき課題について、重要な変更及び新たに生じた事項はありません。
(4)研究開発活動
該当事項はありません。
(5)資本の財源及び流動性に係る情報
① 流動性の管理
<財務の効率性と安定性の両立>当社グループは、多くの資産及び負債を用いる有価証券関連業務や、投融資業務を行っており、これらのビジネスを継続するうえで十分な流動性を効率的かつ安定的に確保することを資金調達の基本方針としております。
当社グループの資金調達手段には、社債、ミディアム・ターム・ノート、金融機関借入、コマーシャル・ペーパー、コールマネー、預金受入等の無担保調達、現先取引、レポ取引等の有担保調達があり、これらの多様な調達手段を適切に組み合わせることにより、効率的かつ安定的な資金調達の実現を図っております。
財務の安定性という観点では、環境が大きく変動した場合においても、業務の継続に支障をきたすことのないよう、平時から安定的に資金を確保するよう努めると同時に、危機発生等により、新規の資金調達及び既存資金の再調達が困難となる場合も想定し、調達資金の償還期限及び調達先の分散を図っております。
当社は、平成26年金融庁告示第61号により連結流動性カバレッジ比率(以下、「LCR」という。)及び連結安定調達比率(以下、「NSFR」という。)を所定の比率(それぞれ100%)以上に維持することが求められており、当第3四半期日次平均のLCRは145.4%です。当第3四半期末のNSFRは所定の比率を上回る見込みとなっております。また、当社は、上記金融庁告示による規制上のLCRとNSFRのほかに、独自の流動性管理指標を用いた流動性管理態勢を構築しております。即ち、一定期間内に期日が到来する無担保調達資金及び同期間にストレスが発生した場合の資金流出見込額に対し、様々なストレスシナリオを想定したうえで、それらをカバーする流動性ポートフォリオが保持されていることを日次で確認しており、1年間無担保資金調達が行えない場合でも業務の継続が可能となるように取り組んでおります。
当第3四半期日次平均のLCRの状況は次のとおりです。
(単位:億円)
日次平均
(自 2021年10月
至 2021年12月)
適格流動資産(A)26,153
資金流出額(B)35,358
資金流入額(C)17,379
連結流動性カバレッジ比率(LCR)
算入可能適格流動資産の合計額(D)26,153
純資金流出額(E)17,978
連結流動性カバレッジ比率(D)/(E)145.4%

<グループ全体の資金管理>当社グループでは、グループ全体での適正な流動性確保という基本方針の下、当社が一元的に資金の流動性の管理・モニタリングを行っております。当社は、当社グループ固有のストレス又は市場全体のストレスの発生により新規の資金調達及び既存資金の再調達が困難となる場合も想定し、短期の無担保調達資金について、当社グループの流動性ポートフォリオが十分に確保されているかをモニタリングしております。また、当社は、必要に応じて当社からグループ各社に対し、機動的な資金の配分・供給を行うと共に、グループ内で資金融通を可能とする態勢を整えることで、効率性に基づく一体的な資金調達及び資金管理を行っております。
<コンティンジェンシー・ファンディング・プラン>当社グループは、流動性リスクへの対応の一環として、コンティンジェンシー・ファンディング・プランを策定しております。同プランは、信用力の低下等の内生的要因や金融市場の混乱等の外生的要因によるストレスの逼迫度に応じた報告体制や資金調達手段の確保などの方針を定めており、これにより当社グループは機動的な対応により流動性を確保する態勢を整備しております。
当社グループのコンティンジェンシー・ファンディング・プランは、グループ全体のストレスを踏まえて策定しており、変動する金融環境に機動的に対応するため、定期的な見直しを行っております。
また、金融市場の変動の影響が大きく、その流動性確保の重要性の高い大和証券株式会社、株式会社大和ネクスト銀行及び海外証券子会社においては、さらに個別のコンティンジェンシー・ファンディング・プランも策定し、同様に定期的な見直しを行っております。
なお、当社は、子会社のコンティンジェンシー・ファンディング・プランの整備状況について定期的にモニタリングしており、必要に応じて想定すべき危機シナリオを考慮して子会社の資金調達プランやコンティンジェンシー・ファンディング・プランそのものの見直しを行い、更には流動性の積み増しを実行すると同時に資産圧縮を図るといった事前の対策を講じることとしております。
② 株主資本
当社グループが株式や債券、デリバティブ等のトレーディング取引、貸借取引、引受業務、ストラクチャード・ファイナンス、M&A、プリンシパル・インベストメント、証券担保ローン等の有価証券関連業を中心とした幅広い金融サービスを展開し、ハイブリッド型総合証券グループとしての新たな価値の提供に資する投融資を行うためには、十分な資本を確保する必要があります。また、当社グループは、日本のみならず、海外においても有価証券関連業務を行っており、それぞれの地域において法規制上必要な資本を維持しなければなりません。
当第3四半期連結会計期間末の株主資本は、前連結会計年度末比140億円減少し、1兆2,681億円となりました。また、資本金及び資本剰余金の合計は4,779億円となっております。利益剰余金は親会社株主に帰属する四半期純利益769億円を計上したほか、配当金637億円の支払いを行った結果、前連結会計年度末比129億円増加の9,246億円となりました。自己株式の控除額は同268億円増加し、1,345億円となっております。