四半期報告書-第83期第1四半期(平成31年4月1日-令和1年6月30日)

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2019/08/06 14:26
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本項における将来に関する事項は、別段の記載がない限り、当第1四半期連結会計期間の末日現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 財政状態の分析
<資産の部>当第1四半期連結会計期間末の総資産は前連結会計年度末比1兆7,697億円(8.4%)増加の22兆8,964億円となりました。内訳は流動資産が同1兆7,065億円(8.4%)増加の22兆1,121億円であり、このうち現金・預金が同1,557億円(3.8%)増加の4兆3,090億円、トレーディング商品が同1兆2,544億円(18.7%)増加の7兆9,704億円、営業貸付金が同786億円(5.0%)増加の1兆6,434億円、有価証券担保貸付金が同2,048億円(3.4%)増加の6兆1,786億円となっております。固定資産は同631億円(8.8%)増加の7,843億円となっております。
<負債の部・純資産の部>負債合計は前連結会計年度末比1兆7,805億円(9.0%)増加の21兆6,508億円となりました。内訳は流動負債が同1兆8,471億円(10.8%)増加の18兆9,291億円であり、このうち約定見返勘定が同7,333億円(286.7%)増加の9,891億円、有価証券担保借入金が同7,990億円(13.4%)増加の6兆7,469億円、銀行業における預金が同2,159億円(5.9%)増加の3兆8,484億円となっております。固定負債は同666億円(2.4%)減少の2兆7,177億円であり、このうち社債が同533億円(3.9%)減少の1兆3,085億円、長期借入金が同322億円(2.4%)減少の1兆3,045億円となっております。
純資産合計は同108億円(0.9%)減少の1兆2,456億円となりました。資本金及び資本剰余金の合計は4,780億円となりました。利益剰余金は親会社株主に帰属する四半期純利益を160億円計上したほか、配当金140億円の支払いを行ったこと等により、同19億円(0.2%)増加の8,077億円となっております。自己株式の控除額は同1億円(0.1%)減少の872億円、その他有価証券評価差額金は同12億円(2.7%)減少の463億円、為替換算調整勘定は同100億円減少の△40億円、非支配株主持分は同9百万円(0.3%)減少の32億円となっております。
(2) 経営成績の分析
① 事業全体の状況
当第1四半期連結累計期間の営業収益は前年同期比3.5%増の1,813億円、純営業収益は同7.3%減の1,071億円となりました。
受入手数料は649億円と、同12%の減収となりました。委託手数料は、株式取引が減少したことにより、同25.1%減の124億円となりました。引受業務では、複数の大型エクイティ募集案件等が貢献した前年同期と比べ、引受け・売出し・特定投資家向け売付け勧誘等の手数料が、同39.5%減の69億円となりました。
トレーディング損益は、金利動向を捉えたことで債券収益が増加し、同5.2%増の279億円となりました。
販売費・一般管理費は同1.3%増の947億円となりました。取引関係費は同0.9%減の178億円、人件費は国内における賞与や退職給付費用が減少した一方で、海外子会社で業績に連動する賞与が増加したことから同0.1%増の469億円、減価償却費はシステムの更改や、海外子会社における新リース基準の適用により同23.2%増の77億円となっております。
以上より、経常利益は同30.7%減の179億円となりました。
これに特別損益を加え、法人税等及び非支配株主に帰属する四半期純利益を差し引いた結果、親会社株主に帰属する四半期純利益は前年同期比13.3%減の160億円となりました。
② セグメント情報に記載された区分ごとの状況
純営業収益及び経常利益をセグメント別に分析した状況は次のとおりであります。
(単位:百万円)
純営業収益経常利益又は経常損失(△)
2018年
6月期
2019年
6月期
対前年同期
増減率
構成比率2018年
6月期
2019年
6月期
対前年同期
増減率
構成比率
リテール部門50,60943,095△14.8%40.2%9,8942,680△72.9%15.0%
ホールセール部門39,79839,420△0.9%36.8%6,9965,572△20.4%31.1%
グローバル・マーケッツ28,07827,310△2.7%25.5%5,8494,541△22.4%25.3%
グローバル・インベストメント・バンキング11,71912,1093.3%11.3%82392412.2%5.2%
アセット・マネジメント部門12,26811,352△7.5%10.6%7,4886,209△17.1%34.6%
投資部門2,4351,683△30.9%1.6%1,760924△47.5%5.2%
その他・調整等10,49411,571-10.8%△2782,535-14.1%
連結 計115,606107,123△7.3%100.0%25,86017,922△30.7%100.0%

[リテール部門]
リテール部門の主な収益源は、国内の個人投資家及び未上場会社のお客様の資産管理・運用に関する商品・サービスの手数料であり、経営成績に重要な影響を与える要因には、お客様動向を左右する国内外の金融市場及び経済環境の状況に加え、お客様のニーズに合った商品の開発状況や引受け状況及び販売戦略が挙げられます。
当第1四半期連結累計期間においては、ラップ口座サービスの契約資産残高が過去最高水準の2兆円突破後も堅調に推移したものの、低調な顧客アクティビティから日本株収益が減少しました。また、外債の販売額減少等により、債券収益も減少しました。
その結果、当第1四半期連結累計期間のリテール部門における純営業収益は前年同期比14.8%減の430億円、経常利益は同72.9%減の26億円となりました。リテール部門の当第1四半期連結累計期間の純営業収益及び経常利益のグループ全体の連結純営業収益及び連結経常利益に占める割合は、それぞれ40.2%及び15.0%でした。
[ホールセール部門]
ホールセール部門は、機関投資家等を対象に有価証券のセールス及びトレーディングを行うグローバル・マーケッツと、事業法人、金融法人等が発行する有価証券の引き受け、M&Aアドバイザリー業務や上場コンサルティング業務を行うグローバル・インベストメント・バンキングによって構成されます。グローバル・マーケッツの主な収益源は、機関投資家に対する有価証券の売買に伴って得る取引手数料及びトレーディング収益です。グローバル・インベストメント・バンキングの主な収益源は、引受業務やM&Aアドバイザリー業務によって得る引受け・売出し手数料とM&A手数料です。グローバル・マーケッツにおいては、国際的な地政学リスクや経済状況等で変化する市場の動向や、それに伴う顧客フローの変化が、経営成績に重要な影響を与える要因となります。グローバル・インベストメント・バンキングにおいては、顧客企業の資金調達手段の決定やM&Aの需要を左右する国内外の経済環境等に加え、当社が企業の需要を捉え、案件を獲得できるかどうかが経営成績に重要な影響を与える要因となります。
グローバル・マーケッツは減収減益となりました。フィクスト・インカム収益は、金利低下とイールドカーブのフラットニングのトレンドを捉えたこと等から増収となりましたが、エクイティ収益は、昨年度からの米中貿易摩擦懸念等による不透明な市場環境が継続したことにより、日本株における顧客のアクティビティが低調に推移し、減収となりました。その結果、当第1四半期連結累計期間の純営業収益は前年同期比2.7%減の273億円、経常利益は同22.4%減の45億円となりました。
グローバル・インベストメント・バンキングは増収増益となりました。エクイティの引受け・売出し手数料は、複数の大型エクイティ募集・売出し案件でジョイント・グローバル・コーディネーターや主幹事を務めた前年同期と比べ、減収となりました。その一方で、M&Aビジネスにおいては、DC Advisoryが関与する海外・クロスボーダー案件や、国内案件が収益に貢献し、増収となりました。これらの結果、グローバル・インベストメント・バンキングの純営業収益は前年同期比3.3%増の121億円、経常利益は同12.2%増の9億円となりました。
当第1四半期連結累計期間のホールセール部門における純営業収益は前年同期比0.9%減の394億円、経常利益は同20.4%減の55億円となりました。ホールセール部門の当第1四半期連結累計期間の純営業収益及び経常利益のグループ全体の連結純営業収益及び連結経常利益に占める割合は、それぞれ36.8%及び31.1%でした。
[アセット・マネジメント部門]
アセット・マネジメント部門の収益は、主に当社連結子会社の大和証券投資信託委託における投資信託の組成と運用に関する報酬と、連結子会社の大和リアル・エステート・アセット・マネジメントの不動産等運用収益によって構成されます。また、当社持分法適用関連会社である三井住友DSアセットマネジメント(注)の投資信託の組成と運用及び投資顧問業務に関する報酬からの利益、同じく持分法適用関連会社である大和証券オフィス投資法人の不動産運用収益からの利益は、それぞれ当社の持分割合に従って経常利益に計上されます。経営成績に重要な影響を与える要因としては、マーケット環境によって変動する顧客の投資信託及び投資顧問サービスへの需要と、マーケット環境に対するファンドの運用パフォーマンスや、顧客の関心を捉えたテーマ性のある商品開発等による商品自体の訴求性が挙げられます。大和リアル・エステート・アセット・マネジメント及び大和証券オフィス投資法人の経営成績は、国内の不動産市場・オフィス需要の動向の影響を受けます。
当第1四半期連結累計期間において、大和証券投資信託委託では、R&Iファンド大賞において表彰された複数のファンド、NISA、iDeCo向け資産形成型商品やETFなど、投資家の資産形成ステージに応じた商品の提供を通じて資金流入は継続したものの、市場環境悪化の影響を受け、公募投資信託の運用資産残高は前連結会計年度末比0.3%減の15.9兆円となりました。不動産アセット・マネジメントでは、大和リアル・エステート・アセット・マネジメントが運用する2019年6月末時点の運用資産残高が0.9兆円となっています。
その結果、当第1四半期連結累計期間のアセット・マネジメント部門における純営業収益は前年同期比7.5%減の113億円、経常利益は同17.1%減の62億円となりました。アセット・マネジメント部門の当第1四半期連結累計期間の純営業収益及び経常利益のグループ全体の連結純営業収益及び連結経常利益に占める割合は、それぞれ10.6%及び34.6%でした。
(注)当社の持分法適用関連会社であった大和住銀投信投資顧問株式会社は、三井住友アセットマネジメント株式会社と合併し、2019年4月1日に三井住友DSアセットマネジメント株式会社となりました。
[投資部門]
投資部門は主に、連結子会社である大和企業投資、大和PIパートナーズ及び大和エナジー・インフラで構成されます。投資部門の主な収益源は、投資先の新規上場(IPO)・M&A等による売却益や、投資事業組合への出資を通じたキャピタルゲインのほか、契約に基づきファンドから受領する、管理運営に対する管理報酬や投資成果に応じた成功報酬です。
当第1四半期連結累計期間において、大和企業投資では、引き続き国内外の成長企業への投資を行ったほか、大和PIパートナーズでは、ローン、不良債権、不動産、国内外のPE投資を着実に実行しました。また、大和エナジー・インフラでは、洋上太陽光発電事業への出資を行うなど、持続可能な開発目標(SDGs)に資するエネルギー・インフラ関連投資を拡大しました。
当第1四半期連結累計期間は、前年同期にあった大型のエクイティ投資先の売却益がなかったことなどから、投資部門の純営業収益は前年同期比30.9%減の16億円、経常利益は同47.5%減の9億円となりました。投資部門の当第1四半期連結累計期間の純営業収益及び経常利益のグループ全体の連結純営業収益及び連結経常利益に占める割合は、それぞれ1.6%及び5.2%でした。
[その他]
その他の事業には、主に大和総研と大和総研ビジネス・イノベーションからなる大和総研グループによるリサーチ・コンサルティング業務及びシステム業務のほか、大和ネクスト銀行による銀行業務などが含まれます。
大和総研は、当社グループのシステム開発を着実に実行したほか、社内外の連携強化による、付加価値の高いソリューション提案により、顧客との関係を強化し、当社グループのビジネスに貢献しました。
大和総研ビジネス・イノベーションは、大口顧客向けシステム開発案件を手掛けたこと等により、当社グループの収益に貢献しました。
大和ネクスト銀行では、引き続き、銀行代理業者である大和証券と連携して各種キャンペーンを実施し、当第1四半期連結会計期間末の預金残高(譲渡性預金含む)は前連結会計年度末比5.5%増の3兆8,814億円、銀行口座数は同0.6%増の137万口座となりました。
その結果、その他・調整等に係る純営業収益は115億円(前年同期104億円)、経常利益は25億円(前年同期は2億円の経常損失)となりました。その他・調整等の当第1四半期連結累計期間の純営業収益及び経常利益のグループ全体の連結純営業収益及び連結経常利益に占める割合は、それぞれ10.8%及び14.1%でした。
③ 経営方針・経営戦略等及び経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当第1四半期連結累計期間において、経営方針・経営戦略等及び経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等について、第82期有価証券報告書の「目標とする経営指標の達成状況等」に記載した経営指標から重要な変更及び新たに生じた事項はありません。
④ 経営成績の前提となる当第1四半期連結累計期間のマクロ経済環境
<海外の状況>世界経済は緩やかに拡大しているものの、IMF(国際通貨基金)などの国際機関は、米国のトランプ大統領が保護主義的な通商政策を強力に推進したことで米中間の貿易摩擦が激化し、世界経済の先行きに対する下振れリスクが一段と高まっているとみています。IMFによると、2018年の世界経済成長率は3.6%と前年を下回る伸びにとどまり、2019年は3.2%とさらに鈍化すると見込まれています。地域別にみると、先進国では米国やユーロ圏、イギリスの減速を主因に、2018年の2.2%の成長から、2019年は1.9%まで成長率が低下すると予想されています。新興国についても、2019年は下記のように幅広い地域で減速する見通しです。
米国経済では、2019年1-3月期の実質GDP成長率が前期比年率3.1%増と堅調な伸びとなりました。政府閉鎖や悪天候などの一時的な要因が下押し要因となり、個人消費や設備投資といった民間需要が減速する一方で、輸入の減少に伴う外需の寄与や在庫の増加、政府支出が押し上げに寄与しました。4-6月期になると、一時的な要因による下押しがなくなったことに加えて、雇用・所得環境の改善を背景に、個人消費に持ち直しの動きが見られました。しかし、輸出の減少や在庫の減少、設備投資の停滞が足を引っ張り、4-6月期の実質GDP成長率は前期比年率2.1%増と伸び率が縮小しました。トランプ大統領の政権運営は米国内外の混乱を招いており、先行きに対する懸念が高まっています。米国内では、政府機関の一部閉鎖が起こったように、野党である民主党とトランプ大統領の対立は激しさを増しています。対外的には、トランプ大統領の強硬姿勢は、中国にとどまらず、EU(欧州連合)やメキシコ、カナダ、日本などに対しても広がっています。メキシコ、カナダと新たな貿易協定の合意が成立するなど、一定の成果を挙げているものの、中国との間では互いに追加関税を掛け合う状態が続いており、対立解消に向けた糸口が見えない状況にあります。米中対立をはじめとする通商政策をめぐる不透明感は、すでに企業景況感を悪化させる要因になっており、中国からの輸入品に対する追加関税の対象が更に拡大すれば、輸入コストの増加による家計や企業の負担が増加し、米国経済への悪影響が一層拡大する恐れがあります。
金融面では、底堅い景気拡大を受けて、FRB(連邦準備制度理事会)が2018年まで利上げを続けてきました。しかし、米国経済、世界経済の減速懸念が強まったことを受けて、2019年に入ると、景気に配慮した「ハト派」の姿勢にシフトしました。3月のFOMC(連邦公開市場委員会)では、2019年中の利上げを見送る見通しを示すと同時に、バランスシート縮小を9月末で停止することが決定されました。また6月には、FOMC参加者のおよそ半数が2019年内に利下げを実施すべきであると考えていることが明らかとなり、「ハト派」姿勢がより鮮明となりました。
欧州経済(ユーロ圏経済)では、緩やかな成長が続いているものの、成長ペースが減速傾向にあります。2018年の後半にかけては、米中の貿易摩擦の激化に加え、ユーロ圏と関係が深いトルコなどの新興国の景気減速によって外需が落ち込み、イタリアやドイツを中心に減速がみられました。2019年1-3月期には、イギリスのEU離脱に備えた買いだめなどもあり、ドイツやスペイン、フランス等の主要国において個人消費を中心に内需が持ち直し、ユーロ圏の実質GDP成長率は前期比年率1.8%増へと加速しました。しかし、米中貿易摩擦やイギリスのEU離脱問題の混迷に加えて、EUと米国の通商交渉も控える中、外需の先行きが不透明な状況が続いています。また、1-3月期に持ち直しが見られた内需も再び減速感が強まっており、4-6月期の実質GDP成長率は前期比年率0.8%増と伸び率が縮小しました。
金融面では、ECB(欧州中央銀行)は、2018年末まで非伝統的な金融緩和政策の軌道修正を進めてきました。しかしながら、世界経済の不透明さが増し、ユーロ圏の景気減速が鮮明になる中で、2019年3月、ECBは次の利上げの可能性を2019年秋から2020年以降に先送りしました。さらに6月にはこれを2020年後半まで先送りすることを決定し、ECBによる非伝統的な金融緩和終了に向けた議論は後退し、当面、金融緩和が継続されることが見込まれます。
新興市場国・発展途上国経済は、2018年の実質GDP成長率が4.5%と、3年ぶりに成長が鈍化しました。その大きな要因となったのは、世界第2位の経済規模を持つ中国で、2018年1-3月期の6.8%をピークに成長率の低下傾向が続いてきていることです。2019年に入ると、中国の1-3月期の実質GDP成長率は6.4%と、2018年10-12月期から横ばいとなり、成長率の低下に一旦歯止めがかかったように見えました。ただし、これは個人消費や総資本形成などの内需の鈍化により輸出以上に輸入が落ち込んだことが外需の寄与を拡大させたためであり、米国との貿易摩擦の激化が中国経済に打撃を及ぼしていることが確認される内容でした。4-6期の実質GDP成長率は6.2%と、内需の減速によってさらに伸びが低下する結果となり、中国経済の減速傾向に歯止めはかかっていません。このため、中国政府は、貿易摩擦をきっかけとした景気失速を回避すべく財政・金融の両面から大規模な経済対策を打ち出しており、内需を下支えする効果が期待されます。米中を中心とした貿易摩擦の激化の影響は世界全体に及んでおり、中国以外の新興国経済にも大きな打撃を与えています。新興国全体では、上記のような中国の成長率の鈍化に加えて、ASEANやロシアなどの減速により、2019年の成長率は4.1%と、2018年の4.5%から成長率が低下する見通しです。
他方、世界経済の減速を受けて、FRBをはじめとする各国中央銀行による金融緩和への期待が高まり、世界的に金利が低下したことは、新興国への資金流入を促し、新興国経済を下支えする要因になると期待されています。また、経済対策によって中国経済の減速に歯止めがかかれば、その効果は他の新興国へも波及するとみられることから、中国の経済対策への期待感が高まっています。
<日本の状況>日本経済は、緩やかな回復基調が続いていますが、2019年に入って足踏みが見られています。2019年1-3月期の実質GDP成長率は前期比年率2.2%増と底堅い伸びとなりましたが、その内容をみると、輸入の減少に伴う外需の寄与が成長率を大きく押し上げており、在庫要因を除くと内需はほぼゼロ成長にとどまりました。
GDPに占めるウエイトが大きい個人消費は、前期に好調だった自動車販売の反動減が響き、2019年1-3月期は2四半期ぶりのマイナス成長となりました。しかし、個人消費の裏付けとなる雇用・所得環境の着実な改善が続いているため、4-6月期には持ち直しの動きが見られています。消費者マインドについては、米中貿易摩擦に対する懸念などから弱含みが続いていますが、企業による高水準の採用意欲を背景とした雇用・所得環境の改善が持続し、個人消費を下支えすることが期待されます。
住宅投資は、低金利の継続や雇用・所得環境の改善を受けて、2018年7-9月期以降、3四半期連続で増加が続いています。2019年4-6月期に入って、住宅着工は弱含んでいますが、これは相続税対策を見込んだ貸家需要の減少基調が影響したと考えられます。10月の消費増税に向けて、住宅投資では増税前の駆け込み需要が見込まれます。ただし、住宅購入支援策により、駆け込み需要は過去の消費増税時に比べると抑制される見込みです。
企業の設備投資は、2019年1-3月期は2四半期連続の増加となりました。堅調な企業収益や低金利、労働需給の逼迫など企業を取り巻く環境に変化はなく、人手不足に対応した合理化・省人化投資や、競争力を維持するための機械・設備の更新、研究開発投資などが増加しました。また、日銀短観(6月調査)の2019年度の設備投資計画をみても、設備過剰感が解消されている大企業の場合、製造業や非製造業ともに堅調な伸びが示されています。
もっとも、米中の通商交渉やイギリスのEU離脱の行方など先行きの不透明感が高まったために、企業の景況感は高水準ながらも悪化傾向にあり、設備投資に対する態度にも慎重さが見られるようになりました。引き続き、米国の保護主義的な通商政策によって、世界貿易の縮小につながるリスクがある点には留意が必要です。
金融面では、日本銀行による短期金利に加えて長期金利も操作対象とする金融緩和措置が継続しています。また、世界経済の減速懸念が強まる中、日本銀行は4月の金融政策決定会合において、少なくとも2020年春頃まで金融緩和措置を続けることを表明しました。2019年に入って以降は、FRBによる利下げ期待によって世界的に金利が低下する中、日本の長期金利も低下基調を強め、2019年6月末の10年国債利回りは△0.15%前後と、2016年7月以来の低水準になりました。
為替市場をみると、対ドルでは、2018年末にかけての世界経済に対する過度に悲観的な見方が後退したことから、2019年年初からは円安・ドル高傾向で推移し、4月には一時112円台まで円安が進みました。しかし、5月に入ると米国による対中関税率の追加引き上げをきっかけに米中貿易摩擦激化への警戒感が高まり、再びリスク回避の動きが強まりました。また、世界経済の減速感が強まる中、FRBによる追加緩和期待によって日米金利差が縮小したことも円高・ドル安要因となり、6月には一時106円台まで円高が進みました。対ユーロでも対ドルと同様に、2019年年初から4月にかけて円安傾向で推移した後、4月半ば以降は、リスク回避の動きが強まったことで円高方向へとトレンドが転換しました。
株式市場においては、引き続き海外経済・市場の動向に左右される展開となりました。2019年に入ると、FRBがそれまでの引き締め路線から、緩和的な政策スタンスへと転じたことにより、2018年末の過度な景気悪化懸念が後退し、世界的に株価は上昇基調となりました。日経平均も2019年年初から上昇基調が続き、4月の半ばには2018年12月以来およそ4ヵ月ぶりに22,000円台を回復しました。5月に入ると米中貿易摩擦激化に対する懸念が再燃したことで、株価は下落に転じました。しかし、6月以降はFRBによる利下げ期待の高まりによる金利低下、米国株高を受けて、日経平均も再び上昇基調へと転じました。
2019年6月末の日経平均株価は21,275円92銭(同年3月末比70円11銭安)、10年国債利回りは△0.165%(同0.070ポイントの低下)、為替は1ドル107円64銭(同3円11銭の円高)となりました。
(3) 事業上及び財務上の対処すべき課題
当第1四半期連結累計期間において、事業上及び財務上の対処すべき課題について、重要な変更及び新たに生じた事項はありません。
(4) 研究開発活動
該当事項はありません。
(5) 資本の財源及び流動性に係る情報
① 流動性の管理
<財務の効率性と安定性の両立>当社グループは、多くの資産及び負債を用いて有価証券関連業務を中心としたビジネスを行っており、ビジネスを継続する上で十分な流動性を効率的かつ安定的に確保することを資金調達の基本方針としております。
当社グループの資金調達手段には、社債、ミディアム・ターム・ノート、金融機関借入、コマーシャル・ペーパー、コールマネー、預金受入等の無担保調達、現先取引、レポ取引等の有担保調達があり、これらの多様な調達手段を適切に組み合わせることにより、効率的かつ安定的な資金調達の実現を図っております。
財務の安定性という観点では、環境が大きく変動した場合においても、業務の継続に支障をきたすことのないよう、平時から安定的に資金を確保するよう努めると同時に、危機発生等により、新規の資金調達及び既存資金の再調達が困難となる場合も想定し、調達資金の償還期限及び調達先の分散を図っております。
当社は、平成26年金融庁告示第61号による連結流動性カバレッジ比率(以下、「LCR」という。)の最低基準の遵守が求められております。当社の当第1四半期日次平均のLCRは145.7%となっており、上記金融庁告示による要件を満たしております。また、当社は、上記金融庁告示による規制上のLCRのほかに、独自の流動性管理指標を用いた流動性管理態勢を構築しております。即ち、一定期間内に期日が到来する無担保調達資金及び同期間にストレスが発生した場合の資金流出見込額に対し、様々なストレスシナリオを想定したうえで、それらをカバーする流動性ポートフォリオが保持されていることを日次で確認しております。その他、1年以上の長期間に亘りストレス環境が継続することを想定した場合に、保有資産を維持するための長期性資金調達状況の十分性を計測及びモニタリングしており、1年間無担保資金調達が行えない場合でも業務の継続が可能となるように取り組んでおります。
当第1四半期日次平均のLCRの状況は次のとおりです。
(単位:億円)
日次平均
(自 2019年4月
至 2019年6月)
適格流動資産(A)26,742
資金流出額(B)35,524
資金流入額(C)17,170
連結流動性カバレッジ比率(LCR)
算入可能適格流動資産の合計額(D)26,742
純資金流出額(B)-(C)18,354
連結流動性カバレッジ比率(D)/((B)-(C))145.7%


<グループ全体の資金管理>当社グループでは、グループ全体での適正な流動性確保という基本方針の下、当社が一元的に資金の流動性の管理・モニタリングを行っております。当社は、当社固有のストレス又は市場全体のストレスの発生により新規の資金調達及び既存資金の再調達が困難となる場合も想定し、短期の無担保調達資金について、当社グループの流動性ポートフォリオが十分に確保されているかをモニタリングしております。また、当社は、必要に応じて当社からグループ各社に対し、機動的な資金の配分・供給を行うと共に、グループ内で資金融通を可能とする態勢を整えることで、効率性に基づく一体的な資金調達及び資金管理を行っております。
<コンティンジェンシー・ファンディング・プラン>当社グループは、流動性リスクへの対応の一環として、コンティンジェンシー・ファンディング・プランを策定しております。同プランは、信用力の低下等の内生的要因や金融市場の混乱等の外生的要因によるストレスの逼迫度に応じた報告体制や資金調達手段の確保などの方針を定めており、これにより当社グループは機動的な対応により流動性を確保する態勢を整備しております。
当社グループのコンティンジェンシー・ファンディング・プランは、グループ全体のストレスを踏まえて策定しており、変動する金融環境に機動的に対応するため、定期的な見直しを行っております。
また、金融市場の変動の影響が大きく、その流動性確保の重要性の高い大和証券株式会社、株式会社大和ネクスト銀行及び海外証券子会社においては、更に個別のコンティンジェンシー・ファンディング・プランも策定し、同様に定期的な見直しを行っております。
なお、当社は、子会社のコンティンジェンシー・ファンディング・プランの整備状況について定期的にモニタリングしており、必要に応じて想定すべき危機シナリオを考慮して子会社の資金調達プランやコンティンジェンシー・ファンディング・プランそのものの見直しを行い、更には流動性の積み増しを実行すると同時に資産圧縮を図るといった事前の対策を講じることとしております。
② 株主資本
当社グループが株式や債券、デリバティブ等のトレーディング取引、貸借取引、引受業務、ストラクチャード・ファイナンス、M&A、プリンシパル・インベストメント、証券担保ローン等の有価証券関連業を中心とした幅広い金融サービスを展開するためには、十分な資本を確保する必要があります。また、当社グループは、日本のみならず、海外においても有価証券関連業務を行っており、それぞれの地域において法規制上必要な資本を維持しなければなりません。
当第1四半期連結会計期間末の株主資本は、前連結会計年度末比20億円増加し、1兆1,985億円となりました。また、資本金及び資本剰余金の合計は4,780億円となっております。利益剰余金は親会社株主に帰属する四半期純利益160億円を計上したほか、配当金140億円の支払いを行った結果、前連結会計年度末比19億円増加の8,077億円となりました。自己株式の控除額は同1億円減少し、872億円となっております。