有価証券報告書-第104期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。また、当社はオンライン証券取引サービスの単一セグメントであるため、セグメントごとの記載を省略しております。
なお、文中における将来に関する事項は、当事業年度末(2020年3月31日)現在において当社が判断したものです。
(1) 経営成績の状況及び分析
当事業年度の国内株式市場は、期首に21,500円台で取引を開始した日経平均株価が、米国の良好な経済指標や原油価格の上昇を受けて堅調に推移した後、5月に入ると、米政府が中国に対する制裁関税の引き上げを表明したことから下落に転じました。その後、米利下げ観測の高まりなどを背景に株価は一時的に回復しましたが、8月には米国が中国への追加関税の実施を表明したことなどを受けて再び下落し20,500円前後で推移しました。9月に入ると、米中閣僚級協議が再開するとの発表や、ECBやFRBによる金融緩和政策の決定を受けて株価は上昇を開始し、9月中旬に22,000円を回復しました。その後も、米中交渉の進展期待や英国の合意なきEU離脱に対するリスクの後退等を背景に株価は上昇基調となり、12月中旬には2018年10月以来となる24,000円台まで上昇しました。しかし、1月下旬以降、中国で発生した新型コロナウイルスの感染拡大による世界経済への影響が懸念され、株価は下落する展開となりました。2月下旬には、欧米での感染拡大を受けて、世界経済悪化への警戒感が一段と強まったことを背景に株価は大幅に下落し、3月中旬には一時16,500円を下回りました。その後は日銀によるETFの買い入れ金額の拡大や米国の大型経済対策への期待などから反発したものの、3月末の日経平均株価は18,917円で取引を終えました。
このような市場環境の中で、二市場(東京、名古屋の各証券取引所)合計の株式等売買代金は、前事業年度と比較して9%減少しました。当社の主たる顧客層である個人投資家についても、相場の先行きが不透明となるなか積極的な売買が手控えられるなど、二市場全体における個人の株式等委託売買代金も、同8%減少しました。その結果、二市場における個人の株式等委託売買代金の割合は18%と、前事業年度とほぼ同様の水準となりました。また、当社の株式等委託売買代金についても低調に推移し、同11%の減少となりました。
当事業年度における当社の取組みとしては、株式取引について、手数料及び金利等の改定を行い、少額投資における無料枠の拡大、デイトレード専用の信用取引サービス「一日信用取引」における金利・貸株料の引き下げ等を実施しました。また、お客様向けウェブサイトの全面リニューアルや、貸株サービスの拡充、株式及び投資信託について、他社から当社へ移管する際に発生する移管手数料を当社が全額負担するサービスの提供開始など、サービスの拡充に努めました。投資信託については、販売手数料を完全無料としたほか、信託報酬の一部をお客様に現金で還元する日本初のサービス「投信毎月現金還元サービス」の開始を発表し、投資信託の購入・保有に伴うお客様のコスト負担削減に取り組みました。また、先物取引について、取引手数料を業界最低水準へ引き下げたほか、FXについては、サービスの全面的なリニューアルを行い、パソコン及びスマートフォンの取引チャネルを刷新すると共に、取引通貨ペアの拡大、取引通貨単位の引き下げを実施するなど、サービスの拡充に努めました。
以上を背景に、当事業年度においては、株式等委託売買代金の減少等により受入手数料が13,490百万円(対前事業年度比10.0%減)となりました。また、信用取引平均買残高の減少等により金融収支も同21.1%減の7,734百万円となりました。
この結果、営業収益は24,150百万円(同11.6%減)、純営業収益は22,345百万円(同14.1%減)となりました。また、営業利益は8,909百万円(同33.8%減)、経常利益は9,016百万円(同33.7%減)、当期純利益は6,136百万円(同35.8%減)となりました。前事業年度と比較して、営業収益、純営業収益、営業利益、経常利益、当期純利益は大幅な減少となりました。なお、オンライン証券という当社の業態の性質もあり、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う業績への重要な影響はありませんでした。
収益・費用の主な項目については以下の通りです。
(受入手数料)
受入手数料は13,490百万円(同10.0%減)となりました。そのうち、委託手数料は12,850百万円(同10.0%減)となりました。これは主として、株式等委託売買代金が同11%減となったことによるものです。
(トレーディング損益)
トレーディング損益は、主としてFX取引のトレーディング益により、1,120百万円の利益となりました。
(金融収支)
金融収益から金融費用を差し引いた金融収支は7,734百万円(同21.1%減)となりました。これは主として、信用取引平均買残高の減少によるものです。
(販売費・一般管理費)
販売費・一般管理費は、同7.1%増の13,436百万円となりました。これは主として、事務委託費の増加による事務費の増加(同15.2%増)、データセンター関連保守料の増加に伴う不動産関係費の増加(同30.3%増)、減価償却費の増加(同13.7%増)によるものです。また、取引関係費は、株式等委託売買代金の減少により取引所費が減少しているものの、プロモーション強化に伴い広告宣伝費が増加しているため、同3.6%増となりました。
(営業外損益)
営業外損益は合計で107百万円の利益となりました。これは主として、受取配当金121百万円によるものです。
(特別損益)
特別損益は合計で173百万円の損失となりました。これは主として、投資有価証券評価損160百万円を計上したことによるものです。
なお、当社は、株主資本コスト(8%)を上回るROE(自己資本当期純利益率)を中長期的に達成することを経営目標としておりますが、当事業年度のROEは、株式等委託売買代金の減少や信用取引平均買残高の減少等を背景に7.0%となりました。上記の目標値は達成しておりませんが、今後も引き続き中長期的な資本効率の向上に努めてまいります。
(2) 経営成績に重要な影響を与える要因について
当社の主たる事業は、個人投資家向けの株式等委託売買業務であり、収入項目としては受入手数料、とりわけ株式等売買に関する委託手数料が当社の業績に重要な影響を及ぼします。また、主として信用取引に起因する金融収益についても当社の業績に重要な影響を及ぼす要因となります。しかしながら、その水準はともに株式市場の相場環境に大きく左右されます。
(3) 財政状態の状況及び分析
当事業年度末の資産合計は、対前事業年度末比1.8%増の708,314百万円となりました。これは主として、信用取引貸付金が同20.5%減の154,302百万円となる一方で、預り金や受入保証金等の増加に伴い預託金が同5.8%増の449,312百万円となった他、現金・預金が同45.4%増の52,501百万円、有価証券担保貸付金が同122.9%増の21,188百万円となったことによるものです。
負債合計は、同4.8%増の628,029百万円となりました。これは主として、預り金が同13.1%増の270,003百万円となったことによるものです。なお、信用取引貸付金の減少に伴い、短期借入金が同19.3%減の78,900百万円となりました。
純資産合計は、同16.9%減の80,285百万円となりました。当事業年度においては、創業100周年記念配当を含む2019年3月期期末配当金及び2020年3月期中間配当金計22,472百万円を計上する一方、当期純利益6,136百万円を計上しております。
当社の主な資産は、顧客からの預り金や受入保証金等を信託銀行に預託した顧客分別金信託(預託金に含まれます)と、信用取引貸付金を中心とする信用取引資産です。一方、信用取引貸付金に充当することを目的として、短期借入金等による調達を行っております。当社の主な負債は、預り金、受入保証金及び短期借入金です。
当事業年度末において、預り金は同13.1%増の270,003百万円、受入保証金は同5.0%増の212,539百万円となりました。これに伴い、預託金は同5.8%増の449,312百万円となりました。また、信用取引貸付金が同20.5%減の154,302百万円となったことに伴い、短期借入金は同19.3%減の78,900百万円となりました。
(4) キャッシュ・フローの状況及び分析
当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、60,195百万円のプラス(前事業年度は103,499百万円のプラス)となりました。これは、信用取引資産及び信用取引負債の増減と、立替金及び預り金の増減が主な要因です。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、2,749百万円のマイナス(前事業年度は2,011百万円のマイナス)となりました。これは、無形固定資産の取得による支出が主な要因です。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、41,209百万円のマイナス(前事業年度は101,650百万円のマイナス)となりました。これは、配当金の支払及び短期借入金の純減少が主な要因です。
以上の結果、当事業年度末における現金及び現金同等物の残高は、55,345百万円(前事業年度末は39,108百万円)となりました。
(5) 資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社は、株式ブローキング事業の強化と商品・サービスの拡充を経営戦略として位置付けております。各事業年度において、オンライン証券取引サービスを継続的に提供するとともに、各種新サービスの追加や取引システムの能力強化あるいは改良等に必要なシステム投資を中心とする設備投資を継続的に行っており、このための成長資金を必要としております。一方で、日々の業務運営に手元資金を必要としておりますが、ともに当事業年度末現在では内部留保の範囲で十分カバーできる水準です。
手元資金は、株式等委託売買や株券貸借取引等に伴う決済の他、顧客への出金等に対応するために十分な水準を確保しておりますが、日々の決済等の状況により、必ずしもその水準は一定しません。
なお、複数の金融機関と当座貸越契約やコミットメントライン契約を締結することで、資金調達の安全性を確保しております。
当社が行う資金調達は、主として信用取引貸付金の増加に対応するものですが、経常的な信用取引貸付金の増減については、銀行等金融機関からの短期借入金の増減を中心に対応しております。信用取引貸付金の水準が大きく増加する場合に備えて、社債による資金調達を機動的に行えるよう発行登録も行っておりますが、当事業年度末現在においては、信用取引貸付金と内部留保の水準を踏まえ、資金調達の大部分はコール・マネーを含む短期借入金によっております。
なお、新型コロナウイルス感染拡大に伴う資金調達への重要な影響はありませんでした。
当社は、中長期的に株主資本コストを上回るROEを達成することを経営目標としており、株主還元は、株主資本コスト相当額以上を配当として実施する方針です。当事業年度末現在の株主資本コストは、資本資産評価モデルを参考に8%と想定していることから、経営目標として中長期的に8%を上回るROEを達成するとともに、配当政策として各期8%以上の純資産配当率(DOE)を実現することとしております。併せて、各期の配当性向については60%以上とすることとしております。
当社は当事業年度末現在で十分な水準の自己資本規制比率を維持しておりますが、株主還元の結果内部留保が増加する場合においては、信用取引貸付金の原資や設備投資資金等として有効に活用いたします。
(6) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の財務諸表において見積りに基づき計上されている主な勘定科目としては、貸借対照表上の貸倒引当金と繰延税金資産があります。
貸倒引当金は、一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権については個別債権の回収可能性を勘案し、回収不能見込額を計上しております。一般債権の貸倒実績率は原則として過去三年間の実績をもとに算出しております。貸倒引当金の金額は、以後の各事業年度の信用取引に伴う立替金の発生や、個別債権の回収の状況等に応じて貸倒実績率や個別債権の回収可能性の判断が変化することで、増減する可能性があります。
繰延税金資産は、将来減算一時差異に係る金額について、その回収可能性を慎重に検討した上で計上しております。繰延税金資産の金額は、以後の各事業年度における将来減算一時差異の増減や、経営環境や将来減算一時差異の規模の変化に伴い回収可能性の判断が変化することで、増減する可能性があります。
なお、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う貸倒引当金と繰延税金資産の見積りへの重要な影響はありませんでした。
なお、文中における将来に関する事項は、当事業年度末(2020年3月31日)現在において当社が判断したものです。
(1) 経営成績の状況及び分析
当事業年度の国内株式市場は、期首に21,500円台で取引を開始した日経平均株価が、米国の良好な経済指標や原油価格の上昇を受けて堅調に推移した後、5月に入ると、米政府が中国に対する制裁関税の引き上げを表明したことから下落に転じました。その後、米利下げ観測の高まりなどを背景に株価は一時的に回復しましたが、8月には米国が中国への追加関税の実施を表明したことなどを受けて再び下落し20,500円前後で推移しました。9月に入ると、米中閣僚級協議が再開するとの発表や、ECBやFRBによる金融緩和政策の決定を受けて株価は上昇を開始し、9月中旬に22,000円を回復しました。その後も、米中交渉の進展期待や英国の合意なきEU離脱に対するリスクの後退等を背景に株価は上昇基調となり、12月中旬には2018年10月以来となる24,000円台まで上昇しました。しかし、1月下旬以降、中国で発生した新型コロナウイルスの感染拡大による世界経済への影響が懸念され、株価は下落する展開となりました。2月下旬には、欧米での感染拡大を受けて、世界経済悪化への警戒感が一段と強まったことを背景に株価は大幅に下落し、3月中旬には一時16,500円を下回りました。その後は日銀によるETFの買い入れ金額の拡大や米国の大型経済対策への期待などから反発したものの、3月末の日経平均株価は18,917円で取引を終えました。
このような市場環境の中で、二市場(東京、名古屋の各証券取引所)合計の株式等売買代金は、前事業年度と比較して9%減少しました。当社の主たる顧客層である個人投資家についても、相場の先行きが不透明となるなか積極的な売買が手控えられるなど、二市場全体における個人の株式等委託売買代金も、同8%減少しました。その結果、二市場における個人の株式等委託売買代金の割合は18%と、前事業年度とほぼ同様の水準となりました。また、当社の株式等委託売買代金についても低調に推移し、同11%の減少となりました。
当事業年度における当社の取組みとしては、株式取引について、手数料及び金利等の改定を行い、少額投資における無料枠の拡大、デイトレード専用の信用取引サービス「一日信用取引」における金利・貸株料の引き下げ等を実施しました。また、お客様向けウェブサイトの全面リニューアルや、貸株サービスの拡充、株式及び投資信託について、他社から当社へ移管する際に発生する移管手数料を当社が全額負担するサービスの提供開始など、サービスの拡充に努めました。投資信託については、販売手数料を完全無料としたほか、信託報酬の一部をお客様に現金で還元する日本初のサービス「投信毎月現金還元サービス」の開始を発表し、投資信託の購入・保有に伴うお客様のコスト負担削減に取り組みました。また、先物取引について、取引手数料を業界最低水準へ引き下げたほか、FXについては、サービスの全面的なリニューアルを行い、パソコン及びスマートフォンの取引チャネルを刷新すると共に、取引通貨ペアの拡大、取引通貨単位の引き下げを実施するなど、サービスの拡充に努めました。
以上を背景に、当事業年度においては、株式等委託売買代金の減少等により受入手数料が13,490百万円(対前事業年度比10.0%減)となりました。また、信用取引平均買残高の減少等により金融収支も同21.1%減の7,734百万円となりました。
この結果、営業収益は24,150百万円(同11.6%減)、純営業収益は22,345百万円(同14.1%減)となりました。また、営業利益は8,909百万円(同33.8%減)、経常利益は9,016百万円(同33.7%減)、当期純利益は6,136百万円(同35.8%減)となりました。前事業年度と比較して、営業収益、純営業収益、営業利益、経常利益、当期純利益は大幅な減少となりました。なお、オンライン証券という当社の業態の性質もあり、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う業績への重要な影響はありませんでした。
収益・費用の主な項目については以下の通りです。
(受入手数料)
受入手数料は13,490百万円(同10.0%減)となりました。そのうち、委託手数料は12,850百万円(同10.0%減)となりました。これは主として、株式等委託売買代金が同11%減となったことによるものです。
(トレーディング損益)
トレーディング損益は、主としてFX取引のトレーディング益により、1,120百万円の利益となりました。
(金融収支)
金融収益から金融費用を差し引いた金融収支は7,734百万円(同21.1%減)となりました。これは主として、信用取引平均買残高の減少によるものです。
(販売費・一般管理費)
販売費・一般管理費は、同7.1%増の13,436百万円となりました。これは主として、事務委託費の増加による事務費の増加(同15.2%増)、データセンター関連保守料の増加に伴う不動産関係費の増加(同30.3%増)、減価償却費の増加(同13.7%増)によるものです。また、取引関係費は、株式等委託売買代金の減少により取引所費が減少しているものの、プロモーション強化に伴い広告宣伝費が増加しているため、同3.6%増となりました。
(営業外損益)
営業外損益は合計で107百万円の利益となりました。これは主として、受取配当金121百万円によるものです。
(特別損益)
特別損益は合計で173百万円の損失となりました。これは主として、投資有価証券評価損160百万円を計上したことによるものです。
なお、当社は、株主資本コスト(8%)を上回るROE(自己資本当期純利益率)を中長期的に達成することを経営目標としておりますが、当事業年度のROEは、株式等委託売買代金の減少や信用取引平均買残高の減少等を背景に7.0%となりました。上記の目標値は達成しておりませんが、今後も引き続き中長期的な資本効率の向上に努めてまいります。
(2) 経営成績に重要な影響を与える要因について
当社の主たる事業は、個人投資家向けの株式等委託売買業務であり、収入項目としては受入手数料、とりわけ株式等売買に関する委託手数料が当社の業績に重要な影響を及ぼします。また、主として信用取引に起因する金融収益についても当社の業績に重要な影響を及ぼす要因となります。しかしながら、その水準はともに株式市場の相場環境に大きく左右されます。
(3) 財政状態の状況及び分析
当事業年度末の資産合計は、対前事業年度末比1.8%増の708,314百万円となりました。これは主として、信用取引貸付金が同20.5%減の154,302百万円となる一方で、預り金や受入保証金等の増加に伴い預託金が同5.8%増の449,312百万円となった他、現金・預金が同45.4%増の52,501百万円、有価証券担保貸付金が同122.9%増の21,188百万円となったことによるものです。
負債合計は、同4.8%増の628,029百万円となりました。これは主として、預り金が同13.1%増の270,003百万円となったことによるものです。なお、信用取引貸付金の減少に伴い、短期借入金が同19.3%減の78,900百万円となりました。
純資産合計は、同16.9%減の80,285百万円となりました。当事業年度においては、創業100周年記念配当を含む2019年3月期期末配当金及び2020年3月期中間配当金計22,472百万円を計上する一方、当期純利益6,136百万円を計上しております。
当社の主な資産は、顧客からの預り金や受入保証金等を信託銀行に預託した顧客分別金信託(預託金に含まれます)と、信用取引貸付金を中心とする信用取引資産です。一方、信用取引貸付金に充当することを目的として、短期借入金等による調達を行っております。当社の主な負債は、預り金、受入保証金及び短期借入金です。
当事業年度末において、預り金は同13.1%増の270,003百万円、受入保証金は同5.0%増の212,539百万円となりました。これに伴い、預託金は同5.8%増の449,312百万円となりました。また、信用取引貸付金が同20.5%減の154,302百万円となったことに伴い、短期借入金は同19.3%減の78,900百万円となりました。
(4) キャッシュ・フローの状況及び分析
当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、60,195百万円のプラス(前事業年度は103,499百万円のプラス)となりました。これは、信用取引資産及び信用取引負債の増減と、立替金及び預り金の増減が主な要因です。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、2,749百万円のマイナス(前事業年度は2,011百万円のマイナス)となりました。これは、無形固定資産の取得による支出が主な要因です。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、41,209百万円のマイナス(前事業年度は101,650百万円のマイナス)となりました。これは、配当金の支払及び短期借入金の純減少が主な要因です。
以上の結果、当事業年度末における現金及び現金同等物の残高は、55,345百万円(前事業年度末は39,108百万円)となりました。
(5) 資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社は、株式ブローキング事業の強化と商品・サービスの拡充を経営戦略として位置付けております。各事業年度において、オンライン証券取引サービスを継続的に提供するとともに、各種新サービスの追加や取引システムの能力強化あるいは改良等に必要なシステム投資を中心とする設備投資を継続的に行っており、このための成長資金を必要としております。一方で、日々の業務運営に手元資金を必要としておりますが、ともに当事業年度末現在では内部留保の範囲で十分カバーできる水準です。
手元資金は、株式等委託売買や株券貸借取引等に伴う決済の他、顧客への出金等に対応するために十分な水準を確保しておりますが、日々の決済等の状況により、必ずしもその水準は一定しません。
なお、複数の金融機関と当座貸越契約やコミットメントライン契約を締結することで、資金調達の安全性を確保しております。
当社が行う資金調達は、主として信用取引貸付金の増加に対応するものですが、経常的な信用取引貸付金の増減については、銀行等金融機関からの短期借入金の増減を中心に対応しております。信用取引貸付金の水準が大きく増加する場合に備えて、社債による資金調達を機動的に行えるよう発行登録も行っておりますが、当事業年度末現在においては、信用取引貸付金と内部留保の水準を踏まえ、資金調達の大部分はコール・マネーを含む短期借入金によっております。
なお、新型コロナウイルス感染拡大に伴う資金調達への重要な影響はありませんでした。
当社は、中長期的に株主資本コストを上回るROEを達成することを経営目標としており、株主還元は、株主資本コスト相当額以上を配当として実施する方針です。当事業年度末現在の株主資本コストは、資本資産評価モデルを参考に8%と想定していることから、経営目標として中長期的に8%を上回るROEを達成するとともに、配当政策として各期8%以上の純資産配当率(DOE)を実現することとしております。併せて、各期の配当性向については60%以上とすることとしております。
当社は当事業年度末現在で十分な水準の自己資本規制比率を維持しておりますが、株主還元の結果内部留保が増加する場合においては、信用取引貸付金の原資や設備投資資金等として有効に活用いたします。
(6) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の財務諸表において見積りに基づき計上されている主な勘定科目としては、貸借対照表上の貸倒引当金と繰延税金資産があります。
貸倒引当金は、一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権については個別債権の回収可能性を勘案し、回収不能見込額を計上しております。一般債権の貸倒実績率は原則として過去三年間の実績をもとに算出しております。貸倒引当金の金額は、以後の各事業年度の信用取引に伴う立替金の発生や、個別債権の回収の状況等に応じて貸倒実績率や個別債権の回収可能性の判断が変化することで、増減する可能性があります。
繰延税金資産は、将来減算一時差異に係る金額について、その回収可能性を慎重に検討した上で計上しております。繰延税金資産の金額は、以後の各事業年度における将来減算一時差異の増減や、経営環境や将来減算一時差異の規模の変化に伴い回収可能性の判断が変化することで、増減する可能性があります。
なお、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う貸倒引当金と繰延税金資産の見積りへの重要な影響はありませんでした。