有価証券報告書-第102期(平成29年4月1日-平成30年3月31日)

【提出】
2018/06/18 15:09
【資料】
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【項目】
79項目
(1) 経営成績等の状況の概要
当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。なお、当社はオンライン証券取引サービスの単一セグメントであるため、セグメントごとの記載を省略しております。
①経営成績の状況
当事業年度の国内株式市場は、期首に18,900円台であった日経平均株価が、米トランプ政権が法人減税に前向きな姿勢を示したことや、仏大統領選で親EU派のマクロン氏が勝利したことなどから上昇し、6月に約1年半ぶりとなる20,000円を回復しました。9月には、国連安保理による北朝鮮への追加制裁決議の採択や、米FOMCでバランスシート縮小開始の決定を受けて円安が進行したことなどから、19,200円台まで下落していた株価が上昇に転じ、10月には、好調な企業決算や衆議院解散・総選挙での与党の勝利などが相場を支え、歴代最長となる16連騰を記録しました。その後も史上最高値の更新が続く米株価等を背景に底堅く推移し、1月に約26年ぶりとなる24,000円を回復しました。しかし、2月に発生したVIX指数の急上昇を起点とした米株価の急落を受けて、一時は21,000円を割り込む水準まで下落し、その後は方向感に乏しい展開となり、3月末の日経平均株価は21,400円台で取引を終えました。
このような市場環境の中で、二市場(東京、名古屋の各証券取引所)合計の株式等売買代金は、前事業年度と比較して16%増加しました。当社の主たる顧客層である個人投資家についても、年間を通じて市場並みの売買が行われ、二市場全体における個人の株式等委託売買代金は、同19%の増加となりました。なお、二市場における個人の株式等委託売買代金の割合は19%と、前事業年度と同様の水準でした。
当事業年度において、当社は株式取引における夜間取引の取扱いを開始したほか、顧客向け取引画面「ネットストック」における資産管理機能の拡充、WEB上で口座開設申込手続きが完了するよう口座開設申込画面の刷新を行いました。また、平成28年11月に取扱いを開始した投資信託及びロボアドバイザーによるポートフォリオ提案サービス「投信工房」では、取扱投信の拡充や最低購入金額の引き下げ、スマートフォン向けアプリの提供を開始したほか、ポートフォリオ運用にかかる管理料が無料のアドバイス型サービスとしては国内初となる「自動リバランス」機能を追加しました。更に、平成30年1月から開始されたつみたてNISAへの対応やiDeCoの取扱いを開始したほか、AIを活用したFX向け情報ツール「AIチャート・FX」の提供を開始するなど、顧客向けサービスの拡充や取引環境の改善に努めました。当社の主たる収益源である株式等委託売買代金は、前事業年度と比較して3%増となりました。前事業年度と比較して日中の株価変動が小さい状況において、デイトレーダー向けの一日信用取引の売買が伸び悩む一方で現物取引の売買が増加し、株式等委託手数料率は上昇しました。また、FXについてはカバーモデルを変更し、収益性が改善しました。
以上の結果、当事業年度の営業収益は322億10百万円(対前事業年度比16.2%増)、純営業収益は304億80百万円(同15.0%増)となりました。また、営業利益は185億32百万(同24.1%増)、経常利益は186億32百万円(同23.8%増)、当期純利益は129億8百万円(同20.7%増)となりました。
②財政状態の状況
当事業年度末の資産合計は、前事業年度末比8.5%増の8,363億18百万円となりました。これは主として、信用取引貸付金が同29.9%増の3,080億37百万円となったことによるものです。
負債合計は、前事業年度末比9.1%増の7,375億67百万円となりました。これは主として、信用取引貸付金の増加に伴い短期借入金が同48.8%増の1,876億円となったことによるものです。
純資産合計は、前事業年度末比4.1%増の987億51百万円となりました。当事業年度においては、当期純利益129億8百万円を計上する一方、平成29年3月期期末配当金及び平成30年3月期中間配当金計94億99百万円の計上を行っております。
③キャッシュ・フローの状況
当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、396億65百万円のマイナス(前事業年度は、115億10百万円のプラス)となりました。これは、信用取引資産及び信用取引負債の増減や立替金及び預り金の増減が主な要因です。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、20億67百万円のマイナス(前事業年度は、20億14百万円のマイナス)となりました。これは、無形固定資産の取得による支出が主な要因です。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、519億8百万円のプラス(前事業年度は、102億69百万円のマイナス)となりました。これは、短期借入金の純増加が主な要因です。
以上の結果、当事業年度末における現金及び現金同等物の残高は、392億69百万円(前事業年度末は、290億93百万円)となりました。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。また、当社はオンライン証券取引サービスの単一セグメントであるため、セグメントごとの記載を省略しております。
①経営成績の分析
当事業年度は、株式等委託手数料率の上昇や、株式等委託売買代金及び信用取引平均残高の増加等により、営業収益は322億10百万円(対前事業年度比16.2%増)、純営業収益は304億80百万円(同15.0%増)となりました。また、営業利益は185億32百万円(同24.1%増)、経常利益は186億32百万円(同23.8%増)、当期純利益は129億8百万円(同20.7%増)となりました。その主な要因は次のとおりです。
(受入手数料)
受入手数料は189億68百万円(同9.9%増)となりました。そのうち、委託手数料は182億50百万円(同12.2%増)となりました。これは主として、株式等委託売買代金が前事業年度と比較して3%増加したことに加え、手数料が原則として無料となる一日信用取引が売買代金に占める割合が低下したことを受けて、株式等委託手数料率が上昇したことによるものです。
(トレーディング損益)
トレーディング損益は、主としてFX取引のトレーディング益により、12億1百万円の利益となりました。
(金融収支)
金融収益から金融費用を差し引いた金融収支は103億10百万円(同11.6%増)となりました。これは主として、信用取引平均残高の増加によるものです。
(販売費・一般管理費)
販売費・一般管理費は、前事業年度比3.4%増の119億49百万円となりました。これは主として、取引所費等の増加による取引関係費の増加(同5.7%増)、NetFxのカバーモデル変更等による事務費の増加(同14.3%増)、平成28年11月の投資信託の取扱い開始等による減価償却費の増加(同22.2%増)によるものです。なお、前事業年度には貸倒引当金繰入れを3億11百万円計上しましたが、当事業年度は29百万円の戻入となりました。
(営業外損益)
営業外損益は合計で1億円の利益となりました。これは主として、受取配当金91百万円によるものです。
なお、当社は、株主資本コスト(8%)を上回るROE(自己資本当期純利益率)を中長期的に達成することを経営目標としておりますが、当事業年度のROEは13.4%となり、株式等委託手数料率の上昇や、株式等委託売買代金及び信用取引平均残高の増加等を背景に、前事業年度の11.4%から上昇しました。上記の目標値を達成しており、今後も中長期的な資本効率の向上に努めます。
② 経営成績に重要な影響を与える要因について
当社の主たる事業は、個人投資家向けの株式委託売買業務であり、収入項目としては受入手数料、とりわけ株式売買に関する委託手数料が当社の業績に重要な影響を及ぼします。また、主として信用取引に起因する金融収益についても当社の業績に重要な影響を及ぼす要因となります。しかしながら、その水準は、株式市場の相場環境に大きく左右されます。
③財政状態、キャッシュ・フローの状況の分析
当社の主な資産は、顧客からの預り金や受入保証金等を信託銀行に預託した顧客分別金信託(預託金に含まれます)と、信用取引貸付金を中心とする信用取引資産です。一方、信用取引貸付金に充当することを目的として、短期借入金等による調達を行っております。当社の主な負債は、預り金、受入保証金及び短期借入金です。
当事業年度は、預り金が前事業年度末比7.0%減の2,530億16百万円、受入保証金が同1.2%増の2,078億75百万円となりました。預託金は同2.5%減の4,555億12百万円となり、前事業年度末から大きく変動しておりません。また、信用取引貸付金が同29.9%増の3,080億37百万円と増加したことに伴い、短期借入金が同48.8%増の1,876億円となりました。
キャッシュ・フローについては、信用取引貸付金の増加に伴い、営業活動によるキャッシュ・フローのうち、信用取引資産及び信用取引負債の増減額が501億77百万円のマイナスとなっております。信用取引貸付金の増加に対応するため、銀行等金融機関から短期借入金を調達した結果、財務活動によるキャッシュ・フローのうち、短期借入金の純増減額が615億円のプラスとなりました。
④ 資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社は、信用取引貸付金の増減等に対応した経常的な調達について、銀行等金融機関からの借入金を中心に対応しております。過去に信用取引貸付金が大きく増加する局面においては、普通社債や新株予約権付社債の発行を行った実績があり、現在も社債による資金調達を機動的に行えるよう発行登録を行っておりますが、当事業年度末現在においては、信用取引貸付金と内部留保の水準を踏まえ、資金調達の大部分はコール・マネーを含む短期借入金によっております。