訂正有価証券報告書-第27期(平成30年3月1日-平成31年2月28日)

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2020/11/13 15:54
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業績等の概要
(1)業績
当連結会計年度におけるわが国経済は、全体的には緩やかな回復基調で推移しましたが、不安定な国際情勢などの要因もあり全体として先行き不透明な状況が続きました。
株式会社電通が2019年2月に発表した「2018年(平成30年)日本の広告費」によると、2018年(1~12月)の国内広告費は6兆5,300億円(前年比2.2%増)と7年連続の増加となりましたが、そのうちのインターネット広告の分野が1兆7,589億円(同16.5%増)と5年連続の二桁成長となり全体を押し上げる結果になりました。またインターネット広告のなかでも動画広告の分野の成長が著しく、株式会社サイバーエージェントが2018年11月に公表した国内動画広告の市場動向調査によると、2018年の動画広告の市場規模は1,843億円(前年比34%増)となり、その後も高い水準で成長を継続し2024年にはおよそ4,957億円に達する見込みであることが示されています。
当社グループが手掛ける事業領域についても、PRサービスの分野がひきつづき堅調に成長していくことが見込まれておりますが、企業等の「いいモノを世の中にひろめる」ためのマーケティング活動においては、従来のPRサービスの枠内にとどまらない幅広いサービスに対するニーズが高まっており、今後も新しい情報伝達手法を取り込みながら全体としてその市場規模は拡大していくものと思われます。
このような市場環境のもと、当社グループは、顧客の「いいモノを世の中に広める」ためのマーケティング戦略を総合的にサポートする「FAST COMPANY」として、引き続き堅調な成長を実現いたしました。当社グループの従来の中核事業である戦略PRサービスだけでなく、動画やアドテクノロジーを活用した広告配信サービスなど最新の技術を活用した実効性の高いサービス分野を積極的に取り込み、コストパフォーマンスの高いサービスをタイムリーかつ幅広くワンストップで提供するマーケティングインフラとしての体制の強化を継続的に進め、その結果、「アジアNo.1のPRグループになる」という目標の達成に向けて、引き続き堅調な成長を実現しました。
2018年7月には、オウンドメディアの構築ツールを提供するラグル株式会社を子会社化し、Webマーケティング分野の重要なサービス強化を実現しています。さらに、2019年4月には、当社はタクシーの後部座席に設置するタブレットを活用したIoTサイネージサービスを開始するなど、次期以降のさらなる成長も見据えた継続的なサービスの拡充を推し進めました。
また当社は、2018年7月に、企業の人事評価制度の導入や運用を支援する人事関連クラウドサービスを展開する株式会社あしたのチームを子会社化しました。人材採用活動を支援するための企業PRの案件を当社として獲得する機会も増えており、企業においては採用活動にとどまらない人事全般に関するサービスに対する関心も高まっていることから、当社グループとしても人事分野の事業の強化にも取り組みました。
一方、当社グループが近年積極的に推し進めるM&Aおよび投資活動に関連して、M&A等により取得した子会社の一部事業の業績が想定を下回る結果となったことから、第3四半期連結会計期間においては、株式会社あしたのチームに関連する資産グループ(のれん及び事業用資産)の帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として2,874百万円を計上、当第4四半期連結会計期間においては、株式会社スマートメディアのメディア事業に関してのれんの減損損失を計上することになりました。また投資活動においても、保有株式の売却により投資有価証券売却益が生じたものの、一部の投資先については投資有価証券評価損を計上しました。
以上の結果、当連結会計年度の売上高は29,693百万円(前連結会計年度比47.8%増)、営業利益は2,575百万円(同14.9%減)、経常利益は2,738百万円(同7.2%減)、親会社株主に帰属する当期純損失は2,421百万円(前年同期は1,425百万円の親会社株主に帰属する当期純利益)となりました。
さらに、当社子会社でニュースリリース配信事業を手がける株式会社PR TIMESは、2018年8月29日付で株式の上場市場を東京証券取引所市場第一部へ変更いたしました。
また、当社グループがインベストメントベンチャー事業として行うベンチャー企業等への出資活動において、出資先に対してPRおよびIRもあわせたサポートを提供し、その結果として、株式会社ピアラが2018年12月に、株式会社識学が2019年2月に、さらに株式会社ミンカブ・ジ・インフォノイドが2019年3月に、いずれも東京証券取引所マザーズ市場への上場を果たしました。
セグメント業績は、次のとおりであります。
なお、当連結会計年度より、報告セグメントの区分変更を行っており、以下の前連結会計年度との比較については、前連結会計年度の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較しております。
・PR事業
PR事業においては、ひきつづき安定的に案件を獲得し順調に推移しました。一方、当セグメントには、近年当社グループがM&A等により強化を進めていたWebメディアを含むコンテンツマーケティング分野の事業が含まれており、Webメディアの事業分野においては、上期に生じた検索エンジンの表示順位変更等により特に広告収入が想定を下回る結果となりました。さらに、当セグメントにおいて実行したM&A等により生じたのれんの償却額が前年度を大きく上回る水準となったこともあり、当セグメントの営業利益は、前年度を下回る結果となりました。
その結果、PR事業全体では、売上高は17,875百万円(前連結会計年度比19.8%増)、営業利益は1,935百万円(同11.9%減)となりました。
なお、当セグメントのWebメディア以外の事業は引き続き堅調であり、また、Webメディア事業についてもリストラクチャリングを推し進め、今後は業績も回復するものと見込んでおります。
・ニュースリリース配信事業
株式会社PR TIMESが手掛けるニュースリリース配信事業においては、ニュースリリース配信サイト「PR TIMES」をはじめとした多数のWebサイトにニュースリリースを配信・掲載し、1年間で7,000社近くの新規顧客を獲得し、2019年2月には利用企業社数が28,000社を突破しました。
以上の結果、ニュースリリース配信事業における売上高は2,286百万円(前連結会計年度比33.1%増)、営業利益は518百万円(同38.0%増)となりました。
・ビデオリリース配信事業
株式会社NewsTVが手掛けるビデオリリース配信事業は、アドテクノロジーを活用した動画コンテンツ配信サービス「NewsTV」が引き続き順調に業績を積み上げました。「広告・マーケティング業界にビデオリリースという商習慣を創る」というビジョンを掲げ、年間を通じて積極的に営業活動を推進し、売上面および利益面いずれも大きな成長を達成しました。
以上の結果、ビデオリリース配信事業における売上高は1,646百万円(前連結会計年度比50.3%増)、営業利益は319百万円(同32.5%増)となりました。
・ダイレクトマーケティング事業
株式会社ビタブリッドジャパンが手掛けるダイレクトマーケティング事業においては、同社が取扱う「ビタブリッドC」の販売が順調であり、売上高は前連結会計年度比で130%を超える成長率を達成しました。営業利益に関しても、期初に重点的に広告宣伝費を投入したことから第1四半期連結会計期間において損失を計上しておりましたが、広告宣伝の効果もあり通期では前連結会計年度比で110%を超える成長率を達成しました。
以上の結果、ダイレクトマーケティング事業における売上高は6,519百万円(前連結会計年度比128.7%増)、営業利益は458百万円(同113.3%増)となりました。
・その他
当社は、2018年7月に株式会社あしたのチームを子会社化しましたが、当期においては積極的な拡大戦略を行ったことで運営費用が先行するかたちとなり、同社業績は想定を大きく下回る結果となりました。また、同社の子会社化により生じたのれんの償却も業績を下振れさせる要因となりました。
その結果、上記のセグメントに含まれない同社事業を含むその他の事業分野における売上高は1,951百万円、営業損失は656百万円となりました。
(2)キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は6,038百万円と、前連結会計年度末に比較して1,717百万円の増加となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は789百万円となりました(前連結会計年度比71.8%減)。これは主に、減価償却費の計上243百万円、のれん償却費の計上821百万円、投資有価証券評価損の計上730百万円、減損損失の計上3,358百万円による増加、及び税金等調整前当期純損失の計上524百万円、段階取得に係る差益111百万円、投資有価証券売却益の計上829百万円、売上債権の増加額516百万円、営業投資有価証券の増加額689百万円、法人税等の支払額1,490百万円による減少によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動により支出した資金は4,915百万円となりました(前連結会計年度は4,611百万円の支出)。これは主に、投資有価証券売却による収入1,044百万円、及び無形固定資産の取得による支出331百万円、貸付による支出700百万円、投資有価証券の取得による支出2,248百万円、連結範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出2,127百万円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により得られた資金は5,857百万円となりました(前連結会計年度比186.7%増)。これは主に、短期借入金の純増額1,078百万円、長期借入による収入3,871百万円、株式の発行による収入824百万円及び長期借入金の返済による支出425百万円、配当金の支払額△248百万円によるものであります。
(3)生産、受注及び販売の実績
①生産実績
当社グループの主たる業務は、PR事業であるため、生産に該当する事項はありません。
②受注実績
当社グループの主たる業務であるPR事業は、提供するサービスの性格上、受注の記載に馴染まないため、当該記載を省略しております。
③販売実績
当連結会計年度の販売実績は次のとおりであります。
事業の名称当連結会計年度
(自 2018年3月1日
至 2019年2月28日)
前年同期比(%)
PR事業(千円)17,754,474119.2
ニュースリリース配信事業(千円)2,099,177135.4
ビデオリリース配信事業(千円)1,374,071172.2
ダイレクトマーケティング事業(千円)6,519,293228.7
報告セグメント計(千円)27,747,017138.1
その他(千円)1,946,712-
合 計(千円)29,693,729147.8

(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.当連結会計年度より、従来、「その他」に含まれていた㈱Starbank及び㈱LAUGH TECH(現㈱スマートメディア)は「PR事業」セグメントに含めております。また、「PR事業」セグメントに区分していた㈱100キャピタルは「その他」に含めております。
また、当連結会計年度より連結の範囲に含めておりますラグル㈱は「PR事業」セグメントに、㈱あしたのチーム及びその子会社4社は「その他」に含めております。
3.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(4)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
①重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般的に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、経営者により、一定の会計基準の範囲内で見積りが行われている部分があり、資産・負債や収益・費用の数値に反映されています。これらの見積りについては、継続して評価し、必要に応じて見直しを行っていますが、見積りには不確定性が伴うため、実際の結果は、これらと異なることがあります。当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されております。当社グループの採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表 (1)連結財務諸表 注記事項 4.会計方針に関する事項」をご参照ください。
なお、以下の事象については、当社グループの連結財務諸表の作成において使用される当社の重要な判断と見積りに大きな影響を及ぼすと認識しております。
イ のれん
のれんについては、その効果の及ぶ期間を見積り、その期間にわたり均等償却することとしております。その資産性について、事業又は連結子会社の業績及び事業計画等を検討し、将来において当初見積もられた収益の獲得が見込まれなくなった場合には、のれんの減損処理を行う可能性があります。
ロ 投資有価証券の評価
時価のある有価証券については、期末における時価が取得原価に比べ50%以上下落した場合に、回復可能性がある場合を除き減損処理を行っております。また、時価のない有価証券については期末の実質価額が取得原価に比べて50%以上下落した場合に回復可能性がある場合を除き減損処理を行っております。
ハ 繰延税金資産
当社グループは、会計上の資産及び負債と課税所得計算上の資産及び負債の額との一時差異が生じた場合において税効果会計を適用し、繰延税金資産及び繰延税金負債を計上しております。繰延税金資産については、将来減算一時差異の解消時期をスケジューリングし、翌期以降の事業計画に基づき課税所得を見積ることで、その回収可能性を判断することとしております。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
(営業利益の状況)
営業利益の詳細につきましては、「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 [業績等の概要](1)業績」をご参照ください。
(経常利益の状況)
インベストメントベンチャー事業における投資有価証券の売却により投資有価証券売却益829百万円を計上する一方で、著しい価値の下落が生じている投資有価証券について投資有価証券評価損を730百万円を計上しております。また、投資事業組合への出資に関連し投資事業組合運用益326百万円、投資事業組合運用損62百万円をそれぞれ計上しております。
これらを主な要因として、経常利益は前連結会計年度に比べ212百万円減少の2,738百万円(前連結会計年度比7.2%減)となりました。
(親会社株主に帰属する当期純利益の状況)
特別損失として、関連する事業又は連結子会社について、当初予定していた収益が見込めなくなったため、減損損失3,358百万円を計上しております。
これを主な要因として、親会社株主に帰属する当期純損失は、2,421百万円(前年同期は1,425百万円の親会社株主に帰属する当期純利益)となりました。
③財政状態の分析
(資産の部)
当連結会計年度末における総資産は、前連結会計年度末に比べ6,244百万円増加し、24,839百万円となりました。
流動資産におきましては、当連結会計年度末残高は14,792百万円と前連結会計年度末に比べ5,665百万円の増加となりました。これは、現金及び預金が1,742百万円、受取手形及び売掛金が1,123百万円増加したこと及び当期に100キャピタル第1号投資事業有限責任組合を組成したことにより生じた営業投資有価証券874百万円が主な要因となります。
固定資産におきましては、当連結会計年度末残高は10,047百万円と前連結会計年度末に比べ578百万円の増加となりました。これは、のれんが956百万円減少したものの、インベストメントベンチャー事業に関連する投資有価証券の取得により投資有価証券が1,156百万円増加したことが主な要因となります。
(負債の部)
当連結会計年度末における負債は、前連結会計年度末に比べ7,378百万円増加し、14,550百万円となりました。
流動負債におきましては、当連結会計年度末残高は10,236百万円と前連結会計年度末に比べ3,536百万円の増加となりました。これは、短期借入金が1,206百万円、1年内返済予定長期借入金が1,075百万円、支払手形及び買掛金が254百万円増加したことが主な要因となります。
固定負債におきましては、当連結会計年度末残高は4,314百万円と前連結会計年度末に比べ3,842百万円の増加となりました。これは、子会社株式の取得に関連した借り入れによる増加を主たる要因とする長期借入金が3,872百万円増加したこと及び繰延税金負債が129百万円減少したことが主な要因となります。
(純資産の部)
当連結会計年度末における純資産は、前連結会計年度末に比べ1,133百万円減少し、10,288百万円となりました。これは、資本金が415百万円、新株予約権が190百万円、非支配株主持分が1,303百万円増加したこと及び利益剰余金が2,697百万円、その他有価証券評価差額金が301百万円減少したことが主な要因となります。
④資本の財源及び資金の流動性
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況については、「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 [業績等の概要](2)キャッシュ・フローの状況」記載のとおりであります。
当社グループにおける主な資金需要は、運転資金及びベンチャー投資事業における投資資金となります。運転資金としては、主に人件費及び広告宣伝費等の販売費及び一般管理費の支払となります。これらの資金につきましては、内部資金、金融機関から借入及び社債により調達しております。当期末における現金及び預金は6,063百万円、短期借入金は4,065百万円、長期借入金(一年内返済予定を含む)は4,963百万円となっております。
⑤経営方針・経営戦略等又は経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、現時点においても成長途上であると認識しており、営業基盤の拡大による企業価値の継続的拡大を目指していることから、営業基盤の指標として営業利益を重視しておりますが、当社グループが取り組むインベストメントベンチャー事業に関連して経常利益もあわせて重要な経営指標と位置づけております。
当連結会計年度における営業利益は前連結会計年度に比べ451百万円減少し2,575百万円(前連結会計年度比14.9%減)、また、経常利益は前連結会計年度に比べ212百万円減少し2,738百万円(同7.2%減)となりました。引き続き、これら経営指標の達成するよう取り組んでまいります。