有価証券報告書-第6期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当社グループは、『Oil & New 石油のすべてを。次の「エネルギー」を。』をスローガンとした第6次連結中期経営計画の基本方針に基づき、主力事業である石油開発事業、石油事業の収益力を強化し財務基盤を確立するとともに、長期的な環境変化を見据え、再生可能エネルギー事業への積極投資や石油化学事業の競争力強化等、事業ポートフォリオの拡充に向けた取り組みを実施しました。
当連結会計年度の業績につきましては、売上高は2兆2,333億円(前期比18.4%の減少)、営業利益は1,013億円(前期比629.1%の増加)、経常利益は974億円(前期比497.9%の増加)となりました。
これは、期首に新型コロナウイルス感染症の影響により急落した原油価格が、経済再開や需要回復への期待が高まったこと等により上昇し、特に石油事業において製品のマージンが改善したこと等によるものです。
上記の増益要因により、親会社株主に帰属する当期純利益は859億円となりました。
なお、セグメント情報につきましては、以下のとおりであります。
(石油事業)
石油事業につきましては、前年同期比で原油価格が下落したこと等により、売上高は2兆558億円(前期比△4,510億円)となりました。一方で、原油価格の回復基調が続いたことによるマージン改善等の影響によりセグメント利益は741億円(前期はセグメント損失478億円)となりました。
(石油化学事業)
石油化学事業につきましては、前年同期比で販売数量が減少したこと並びに製品市況が悪化したこと等により、売上高は3,045億円(前期比△1,099億円)、セグメント損失は33億円(前期はセグメント利益52億円)となりました。
(石油開発事業)
石油開発事業につきましては、前年同期比で原油販売数量が増加したものの原油販売価格が下落したこと等により、売上高は604億円(前期比△375億円)、セグメント利益は139億円(前期比△311億円)となりました。
(その他事業)
その他事業につきましては、売上高は765億円(前期比△81億円)となり、前年同期比で洋上風力への本格進出に伴う開発費及び人件費が増加したこと等により、セグメント利益は79億円(前期比△13億円)となりました。
当期の連結財政状態は、総資産は1兆7,090億円(前連結会計年度末比+692億円)、負債合計は1兆2,599億円(前連結会計年度末比△170億円)、純資産合計は4,491億円(前連結会計年度末比+863億円)となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は445億円となり、前連結会計年度末の残高433億円に比べ12億円増加いたしました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果、資金の増加は1,674億円となり、前連結会計年度に比べ557億円キャッシュ・フローが増加いたしました。これは主に、税金等調整前当期純利益が増加したこと等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果、資金の減少は846億円となり、前連結会計年度とほぼ同水準になりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果、資金の減少は806億円となり、前連結会計年度に比べ559億円キャッシュ・フローが増加いたしました。これは主に、コマーシャル・ペーパーの返済による支出が増加したこと等によるものであります。
③生産、受注及び販売の実績
a生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 生産高(百万円) | 前年同期比(%) | |
石油事業 | 662,532 | 68.5 | |
石油化学事業 | 242,654 | 69.9 | |
石油開発事業 | 14,885 | 64.2 | |
合計 | 920,071 | 68.8 |
(注)1 自家燃料は除いております。
2 委託処理分を含み、受託処理分は除いております。
3 上記の金額にセグメント間の生産高は含まれておりません。
4 上記の金額に消費税等は含まれておりません。
b受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 受注高(百万円) | 前年同期比(%) | 受注残高(百万円) | 前年同期比(%) |
その他 | 13,017 | 102.6 | 7,901 | 96 |
(注)上記の金額に消費税等は含まれておりません。
c販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 販売高(百万円) | 前年同期比(%) | |
石油事業 | 1,906,912 | 83.2 | |
石油化学事業 | 268,005 | 73.5 | |
石油開発事業 | 22,939 | 53.5 | |
その他 | 35,392 | 89.7 | |
合計 | 2,233,250 | 81.6 |
(注)1 上記の金額にセグメント間の販売高は含まれておりません。
2 最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先 | 前連結会計年度 (自 2019年4月1日 至 2020年3月31日) | 当連結会計年度 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) | ||
金額(百万円) | 割合(%) | 金額(百万円) | 割合(%) | |
ENEOSホールディングス㈱ | 370,197 | 13.5 | 335,154 | 15.0 |
キグナス石油㈱ | 159,289 | 5.8 | 234,426 | 10.5 |
※JXTGホールディングス㈱は、2020年6月25日付でENEOSホールディングス㈱に商号変更しております。
※販売実績には、当該顧客と同一の企業集団に属する顧客に対する販売実績を含めております。
3 上記の金額に消費税等は含まれておりません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたり採用した会計方針及びその適用方法並びに見積りの評価については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」、財務諸表の作成にあたり採用した会計方針及びその適用方法並びに見積りの評価については、「第5 経理の状況 2 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 重要な会計方針」に記載のとおりです。
なお、連結財務諸表の作成に関して、認識している重要な見積りを伴う項目については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 重要な会計上の見積り」を参照ください。
②経営成績の分析
a売上高
売上高は、前連結会計年度に比べ5,047億円減少し、2兆2,333億円となりました。これは主に、原油価格の下落等によるものです。
b売上原価、販売費及び一般管理費
売上原価は、前連結会計年度に比べ5,856億円減少し、2兆6億円となりました。これは主に、原油価格の下落等によるものです。売上高に対する売上原価の比率は、4.9ポイント減少して、89.6%となりました。
販売費及び一般管理費は、前連結会計年度に比べ65億円減少し、1,314億円となりました。販売費及び一般管理費の売上高に対する比率は、0.9ポイント増加して、5.9%となりました。
c営業利益
上記の結果を受け、営業利益は、前連結会計年度に比べ874億円増加し、1,013億円となりました。これは主に、石油化学事業における市況悪化や定期整備に伴う販売数量減少、石油開発事業における原油価格下落による販売価格の下落等の減益要因があった一方、石油事業においてキグナス石油㈱への供給拡大や製品マージンの改善といった増益要因があったこと等によるものです。
d営業外損益
営業外損益は、前連結会計年度に比べ63億円悪化し、39億円の損失となりました。これは主に、支払利息が前連結会計年度に比べ21億円改善したものの、持分法投資損益が58億円悪化したこと等によるものです。
e特別損益
特別損益は、前連結会計年度に比べ13億円悪化し37億円の損失となりました。これは主に、固定資産売却益20億円を特別利益として計上する一方、特別損失として固定資産の除却・撤去に関する固定資産処分損67億円を計上したこと等によるものです。
f親会社株主に帰属する当期純利益
親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に比べ1,141億円増加し、859億円となりました。これは主に、上記に記載した営業利益の増益要因の他に、法人税等が前連結会計年度に比べ305億円減少し44億円となったこと及び非支配株主に帰属する当期純利益が前連結会計年度に比べ38億円減少し33億円となったこと等によるものです。なお、1株当たりの当期純利益は、1,025.86円となりました。
なお、セグメントごとの経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
(石油事業)
新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い航空燃料を中心に燃料油の需要の減少等の影響を受けましたが、キグナス石油㈱への供給拡大、製品マージン改善等の影響を享受したことにより、セグメント利益は、741億円(前期はセグメント損失478億円)となりました。
2021年度は当連結会計年度に享受した製品マージン改善の影響が解消されることが想定されますが、燃料油需要が回復し、販売数量が回復することを見込んでおります。
(石油化学事業)
石油化学市況の悪化や定期整備に伴う販売数量の減少により、セグメント損失は、33億円(前期はセグメント利益52億円)となりました。
2021年度は当連結会計年度に行った定期整備の影響が解消し、市況も回復へ向かうことを見込んでおります。石油事業とのシナジーを追求しながら、継続して協業の深化を進めてまいります。
(石油開発事業)
原油生産数量は増加したものの、原油価格の下落に伴う販売価格下落等の影響により、セグメント利益は前連結会計年度に比べ311億円減少し、139億円となりました。
2021年度は、原油価格の回復による影響を享受する見込みです。また、当連結会計年度に海上の炭鉱鉱区(Offshore Block 4)を落札いたしました。今後探鉱作業を開始し、本鉱区における石油及び天然ガスの商業生産の可能性を調査してまいります。
(その他)
風力発電設備が順調な稼動を継続したものの、洋上風力への本格進出に伴う開発費及び人件費が増加したこと等により、セグメント利益は前連結会計年度に比べ13億円減少し、79億円となりました。
2021年度は、陸上風力については、既存の発電設備の安定稼動を目指すとともに新規発電設備の開発並びに建設を進めてまいります。洋上風力については、現在建設中の秋田港、能代港のほか、4つのプロジェクト(秋田県由利本荘市沖、青森西北沖、秋田中央海域、山形県遊佐沖等)の開発に向けた計画を着実に推進いたします。
③資本の財源及び資金の流動性に関する分析
a資金需要
当社グループの資金需要は主に運転資金と設備投資に関するものです。
運転資金需要は製品製造のための原材料仕入のほか、製造費、販売費及び一般管理費等によるものであり、設備投資需要は競争力強化を目的とした石油・石油化学製品の製造設備、サービスステーションや販売促進のためのアプリ開発、原油の生産設備、風力発電設備等の取得や維持更新等によるものです。
b財務政策
第6次連結中期経営計画では、「財務体質の健全化」を基本方針の一つとして掲げ、“稼ぐ力”と“財務体質”を強化し、原油価格下落等の環境変化に耐えうる自己資本の厚みを目指しております。財務体質強化の施策の一つとして2022年満期ユーロ円建転換社債型新株予約権付社債の発行、劣後ローンのリファイナンスを行っております。
当社は、財務の安全性と効率性を両立させる財務運営を目指しており、コマーシャル・ペーパーによる直接金融と金融機関からの借入等の間接金融を機動的に行うことで効率的な調達を行っております。また、原油備蓄資金の制度融資も活用しており、市中の金融機関のみならず政府系金融機関とも関係を維持し、調達先の多様化を図り十分な流動性を確保しております。
当年度においては、新型コロナウイルス感染症が業績に与える影響と金融市場の動向を精査しながら、過剰な手元流動性対策は行わず、有利子負債を返済することで、金融コストの抑制を図りました。また、当社が一括して資金調達し、子会社に融通するグループ金融体制を構築しており、調達の効率化を行っております。
当社は、円滑な資金調達を行うために日本格付研究所(JCR)から格付けを取得しており、当連結会計年度末において当社の格付けは、BBB(方向性:ポジティブ)です。
(特定融資枠契約)
平時における十分な流動性の確保と災害発生等の緊急時に円滑な資金調達を行うために取引金融機関と特定融資枠契約(コミットメントライン契約)を締結しております。なお、当連結会計年度末における当該契約の極度額は1,344億円です。
c株主還元
当社グループは、株主の皆様への利益還元を重要な課題の一つとして認識しております。今後も、財務体質とのバランスを鑑みながら、持続性のある安定配当の維持を目指しており、中長期的な視点で総合的に判断し、期末配当を一株当たり80円といたしました。
d財政状態
当社グループは、財務体質を健全化することを最重要課題の1つとして認識しており、原油価格変動等の市場環境変化に耐えうる自己資本の充実を目指しております。今後も、重要な将来への成長投資と両立させながら、財務体質の健全化を目指してまいります。
(資産)
当連結会計年度末における流動資産は6,058億円となり、前連結会計年度末に比べ332億円増加いたしました。これは主に、売上債権が199億円及びたな卸資産が151億円増加したこと等によるものです。固定資産は1兆1,031億円となり、前連結会計年度末に比べ362億円増加いたしました。これは主に、有形固定資産が117億円増加したこと及び繰延税金資産が167億円増加したこと等によるものであります。
この結果、総資産は1兆7,090億円となり、前連結会計年度末に比べ692億円増加いたしました。
(負債)
当連結会計年度末における流動負債は7,525億円となり、前連結会計年度末に比べ464億円増加いたしました。これは主に、仕入債務が332億円増加したこと等によるものです。固定負債は5,074億円となり、前連結会計年度末に比べ634億円減少いたしました。これは主に、長期借入金が378億円減少したこと等によるものです。
この結果、負債合計は1兆2,599億円となり、前連結会計年度末に比べ170億円減少いたしました。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産合計は4,491億円となり、前連結会計年度末に比べ863億円増加いたしました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益859億円を計上したこと等によるものであります。
この結果、自己資本比率は19.0%(前連結会計年度末は14.6%)となりました。
eキャッシュ・フロー
当連結会計年度の各キャッシュ・フローの状況は、次のとおりであります。営業活動は税金等調整前当期純利益を計上したこと等により1,674億円のプラスとなりました。投資活動は前連結会計年度並みの846億円のマイナス、財務活動はコマーシャル・ペーパーの返済による支出が増加したこと等により806億円のマイナスとなりました。
以上の結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末比12億円増加の445億円となりました。
当連結会計年度は新型コロナウイルス感染症の世界的な流行等に伴う原油価格の下落や航空燃料を中心とした燃料油の需要減少等の影響を受けましたが、キグナス石油への供給拡大や石油製品のマージン良化等を主要因とし、税金等調整前当期純利益は前期比で大きく増加しております。フリー・キャッシュ・フローも828億円となり、着実に稼ぐ力が強化されております。また、新型コロナウイルス感染症の影響や金融市場の動向を注視しながら、財務運営を実施し、過剰な手元流動性対策を行うことなく、金融コストの抑制を図ることが出来ました。引き続き、財務体質を強化し、洋上風力等への積極的な成長投資により、事業ポートフォリオの転換を目指し、収益機会を確実に享受し、更なるフリー・キャッシュ・フローの創出を目指してまいります。
なお、当社グループのキャッシュ・フロー指標のトレンドは下記のとおりであります。
2017年3月期 | 2018年3月期 | 2019年3月期 | 2020年3月期 | 2021年3月期 | |
自己資本比率 | 10.8% | 14.1% | 16.5% | 14.6% | 19.0% |
時価ベースの自己資本比率 | 10.5% | 17.2% | 11.0% | 7.8% | 12.9% |
キャッシュ・フロー対有利子負債比率 | 16.2年 | 3.6年 | 7.7年 | 6.1年 | 3.6年 |
インタレスト・カバレッジ・レシオ | 3.8倍 | 15.6倍 | 8.2倍 | 11.8倍 | 23.1倍 |
(注)1 各指標は、以下の計算式によっております。
自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い
2 各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により計算しております。
3 株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式総数(自己株式控除後)により計算しております。
4 営業キャッシュ・フローは連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている借入金、コマーシャル・ペーパー、社債、転換社債型新株予約権付社債を対象としております。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。
④経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、中期的な経営の方向性を第6次連結中期経営計画にて目標値として定めております。当該連結中期経営計画3年目の評価として、当連結会計年度における客観的指標の実績を示すとともにその達成状況を分析すると以下のとおりとなります。
親会社株主に帰属する当期純利益は859億円、自己資本は3,249億円(自己資本比率19.0%)、ネットD/Eレシオ(※)は1.59倍となりました。足元の原油価格は連結中期経営計画策定時よりも下落しており、当連結会計年度においては新型コロナウイルス感染症の影響を受けたものの、連結中期経営計画において掲げた施策の実行による収益力の強化により、過去最高となる親会社株主に帰属する当期純利益を計上し、財務体質は大きく改善いたしました。
連結中期経営計画の対象期間も残り2年となりましたが、自己資本4,000億円以上、自己資本比率20%以上、ネットD/Eレシオ1.0~1.5倍は概ね達成できるものと想定しております。引き続き、重要な将来への成長投資と確実な収益機会の享受等により、第6次連結中期経営計画の目標達成に向けて邁進してまいります。
(※):2020年3月31日実行のハイブリッドローン300億円について、50%を資本とみなして算出。