訂正有価証券報告書-第5期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

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2021/11/11 16:01
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(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当社グループは、『Oil & New 石油のすべてを。次の「エネルギー」を。』をスローガンとした第6次連結中期経営計画の基本方針に基づき、主力事業である石油開発事業、石油事業の収益力を強化し財務基盤を確立するとともに、長期的な環境変化を見据え、再生可能エネルギー事業への積極投資や石油化学事業の競争力強化等、事業ポートフォリオの拡充に向けた取り組みを実施しました。
当連結会計年度の業績につきましては、売上高は2兆7,380億円(前期比1.2%の減少)、営業利益は139億円(前期比85.3%の減少)、経常利益は163億円(前期比83.2%の減少)となりました。
これは、新型コロナウイルス感染症の世界的な流行等に伴う原油価格の急落による市況の悪化並びに原油価格の変動によるたな卸資産評価の影響を受けたこと等によるものです。
上記の減益要因により、親会社株主に帰属する当期純損失は282億円となりました。
なお、セグメント情報につきましては、以下のとおりであります。
(石油事業)
石油事業につきましては、前年同期比で販売数量は増加したものの原油価格が下落したことに等より、売上高は2兆5,068億円(前期比△201億円)となりました。また、原油価格の変動によるたな卸資産の評価損の影響等により、セグメント損失は478億円(前期はセグメント利益142億円)となりました。
(石油化学事業)
石油化学事業につきましては、前年同期比で販売数量は増加したものの製品販売価格が下落したこと等により、売上高は4,144億円(前期比△442億円)、セグメント利益は52億円(前期比△101億円)となりました。
(石油開発事業)
石油開発事業につきましては、前年同期比で原油販売数量が減少並びに原油販売価格が下落したこと等により、売上高は979億円(前期比△138億円)、セグメント利益は450億円(前期比△119億円)となりました。
(その他事業)
その他事業につきましては、前年同期比で新規の風力発電サイトが稼働を開始したこと等により、売上高は846億円(前期比+244億円)、セグメント利益は92億円(前期比+31億円)となりました。
当期の連結財政状態は、総資産は1兆6,398億円(前連結会計年度末比△625億円)、負債合計は1兆2,769億円(前連結会計年度末比△235億円)、純資産合計は3,628億円(前連結会計年度末比△391億円)となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は433億円となり、前連結会計年度末の残高407億円に比べ26億円増加いたしました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果、資金の増加は1,117億円となり、前連結会計年度に比べ212億円キャッシュ・フローが増加いたしました。これは主に、法人税等の支払額が減少したこと等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果、資金の減少は842億円となり、前連結会計年度に比べ3億円キャッシュ・フローが減少いたしました。これは主に、投資有価証券や有形固定資産の取得による支出が増加したものの、有形固定資産の売却による収入が増加したこと等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果、資金の減少は247億円となり、前連結会計年度に比べ42億円キャッシュ・フローが増加いたしました。これは主に、社債の発行による収入の減少並びに借入金の返済による支出が増加したこと等によるものであります。
③生産、受注及び販売の実績
a生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称生産高(百万円)前年同期比(%)
石油事業966,51396.0
石油化学事業347,25788.7
石油開発事業23,179103.4
合計1,336,95094.1

(注)1 自家燃料は除いております。
2 委託処理分を含み、受託処理分は除いております。
3 上記の金額にセグメント間の生産高は含まれておりません。
4 上記の金額に消費税等は含まれておりません。
b受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称受注高(百万円)前年同期比(%)受注残高(百万円)前年同期比(%)
その他12,68189.58,22973.3

(注)上記の金額に消費税等は含まれておりません。
c販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称販売高(百万円)前年同期比(%)
石油事業2,290,96499.9
石油化学事業364,65890.1
石油開発事業42,91795.1
その他39,462147.2
合計2,738,00398.8

(注)1 上記の金額にセグメント間の販売高は含まれておりません。
2 最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先前連結会計年度
(自 2018年4月1日
至 2019年3月31日)
当連結会計年度
(自 2019年4月1日
至 2020年3月31日)
金額(百万円)割合(%)金額(百万円)割合(%)
JXTGホールディングス㈱367,77013.3370,19713.5

※販売実績には、JXTGホールディングス㈱と同一の企業集団に属する企業に対する販売実績を含めております。
3 上記の金額に消費税等は含まれておりません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたり採用した会計方針及びその適用方法並びに見積りの評価については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」、財務諸表の作成にあたり採用した会計方針及びその適用方法並びに見積りの評価については、「第5 経理の状況 2 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 重要な会計方針」に記載のとおりです。
なお、連結財務諸表の作成に関して、認識している特に重要な見積りを伴う「繰延税金資産の回収可能性の評価」については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 追加情報」並びに「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 税効果会計関係」を参照ください。個別財務諸表の作成に関して、認識している特に重要な見積りを伴う「投資損失引当金に係る見積り」については、上記参照先並びに「第5 経理の状況 2 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 追加情報」を参照ください。
②経営成績の分析
a売上高
売上高は、前連結会計年度に比べ324億円減少し、2兆7,380億円となりました。これは主に、原油価格の下落等によるものです。
b売上原価、販売費及び一般管理費
売上原価は、前連結会計年度に比べ463億円増加し、2兆5,862億円となりました。これは主に、原油価格の変動によるたな卸資産評価の影響を受けたこと等によるものです。売上高に対する売上原価の比率は、2.8ポイント増加して、94.5%となりました。
販売費及び一般管理費は、前連結会計年度に比べ21億円増加し、1,379億円となりました。販売費及び一般管理費の売上高に対する比率は、0.1ポイント増加して、5.0%となりました。
c営業利益
上記の結果を受け、営業利益は、前連結会計年度947億円に比べ808億円悪化し、139億円となりました。これは主に、石油事業においてキグナス石油㈱へ供給開始、石油化学事業において前連結会計年度に実施した定期整備の影響解消による販売数量増加といった増益要因があった一方、石油事業における原油価格変動に伴うたな卸資産評価の影響や石油化学事業における市況悪化、石油開発事業における原油販売数量の減少並びに原油販売価格の下落といった減益要因があったこと等によるものです。
d営業外損益
営業外損益は、前連結会計年度に比べ4億円増加し、24億円の利益となりました。これは主に、支払利息が前連結会計年度に比べ16億円改善したものの、持分法投資損益が15億円悪化したこと等によるものです。
e特別損益
特別損益は、受取補償金79億円等を特別利益として計上する一方、特別損失として固定資産の除却・撤去に関する固定資産処分損85億円、石油開発事業などに係る減損損失39億円を計上したこと等により、前連結会計年度に比べ17億円悪化し24億円の損失となりました。
f親会社株主に帰属する当期純利益又は親会社株主に帰属する当期純損失
法人税等が前連結会計年度に比べ50億円増加し349億円となったこと、非支配株主に帰属する当期純利益が前連結会計年度に比べ58億円減少し71億円となったこと等により、前連結会計年度に比べ813億円減少し、282億円の親会社株主に帰属する当期純損失となりました。1株当たりの当期純損失は、334.84円となりました。
なお、セグメントごとの経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
(石油事業)
キグナス石油㈱へ供給開始による販売数量の増加、IMO規制強化に伴う低硫黄C重油市況良化の影響を享受しましたが、新型コロナウイルス感染症の影響により各種製品市況が悪化したこと、及び原油価格下落によるたな卸資産評価等が影響し、セグメント損失は、478億円(前期はセグメント利益142億円)となりました。
2020年度は全世界的に新型コロナウイルス感染症の影響により、燃料油需要の減少が見込まれますが、キグナス石油㈱向けの供給を拡大することで、販売数量をほぼ前年並みに維持できるものと見込んでおります。
(石油化学事業)
前年度に実施した定期整備の影響解消により販売数量は改善したものの、石油化学市況の悪化により、セグメント利益は、前連結会計年度に比べ101億円減少し、52億円となりました。
2020年度は海外市況の悪化や丸善石油化学㈱の定期整備の影響を受ける見込みですが、引き続き石油事業とのシナジーを追求しながら積極的な投資を行ってまいります。
(石油開発事業)
既存油田の生産数量は回復しましたが、ヘイル油田の生産数量を抑制したことによる原油販売数量が減少したことや、原油価格の下落の影響等により、セグメント利益は前連結会計年度に比べ119億円減少し、450億円となりました。
2020年度は、原油価格の下落による影響を受ける見込みです。またヘイル油田の油層圧回復のための二次回収に向けた投資の実施時期は再検討することとなりましたが、既存油田の安定的な生産の継続、操業コストの削減、次代の新規投資案件の検討を行ってまいります。
(その他)
2019年4月に運転を開始した姫神ウィンドパーク、度会ウィンドファーム(2期)の風力発電設備が寄与したこと等により、セグメント利益は前連結会計年度に比べ31億円増加し、92億円となりました。
2020年度は、引き続き陸上風力発電の発電量拡大、洋上風力発電の事業化(秋田港・能代港、秋田由利本荘沖、青森西北沖、秋田中央海域などの各プロジェクト)に向けた計画を着実に進めてまいります。
③資本の財源及び資金の流動性に関する分析
a資金需要
当社グループの資金需要は主に運転資金と設備投資に関するものです。
運転資金需要は製品製造のための原材料仕入のほか、製造費、販売費及び一般管理費等、設備投資需要は競争力強化を目的とした石油・石化製品の製造設備、原油の生産設備、発電設備等の取得や維持更新等によるものです。
b財務政策
第6次連結中期経営計画の目標の一つに財務体質の強化を掲げております。現連結中期経営計画期間においては、2022年満期ユーロ円建転換社債型新株予約権付社債の発行、劣後ローンのリファイナンス等を行っております。また、グループ金融体制を構築することで、子会社の運転資金並びに設備投資資金の調達を効率化しており、引き続き適切かつ効率的な調達を行ってまいります。
(特定融資枠契約)
平時における十分な流動性の確保と災害発生等の緊急時に円滑な資金調達を行うために取引金融機関と特定融資枠契約(コミットメントライン契約)を締結しております。なお、当連結会計年度末における当該契約の極度額は1,344億円です。
c株主還元
当社グループは、株主の皆様への利益還元を重要な課題の一つとして認識しております。今後も、財務体質とのバランスを鑑みながら、持続性のある安定配当の維持を目指してまいります。2019年度は、原油価格の下落による在庫評価損の計上により財務体質の改善がやや足踏みしましたが、各事業において掲げる施策は順調に進捗していることを踏まえ、中長期的な視点で総合的に判断し、期末配当を一株当たり80円といたしました。
d財政状態
当社グループは、財務体質を健全化することを最重要課題の1つとして認識しており、原油価格変動等の市場環境変化に耐えうる自己資本の充実を目指しております。今後も、各事業の積極的な成長投資と両立させながら、財務体質健全化を目指してまいります。
(資産)
当連結会計年度末における流動資産は5,726億円となり、前連結会計年度末に比べ691億円減少いたしました。これは主に、たな卸資産が430億円減少したこと並びに受取手形及び売掛金が305億円減少したこと等によるものです。固定資産は1兆669億円となり、前連結会計年度末に比べ68億円増加いたしました。これは主に、有形固定資産が114億円増加したこと等によるものです。
この結果、総資産は、1兆6,398億円となり、前連結会計年度末に比べ625億円減少いたしました。
(負債)
当連結会計年度末における流動負債は7,061億円となり、前連結会計年度末に比べ586億円減少いたしました。これは主に、支払手形及び買掛金が344億円減少したこと並びに短期借入金が297億円減少したこと等によるものです。固定負債は5,708億円となり、前連結会計年度末に比べ351億円増加いたしました。これは主に、長期借入金が289億円増加したこと等によるものです。
この結果、負債合計は、1兆2,769億円となり、前連結会計年度末に比べ235億円減少いたしました。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産合計は3,628億円となり、前連結会計年度末に比べ391億円減少いたしました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純損失282億円を計上したこと等によるものです。
この結果、自己資本比率は14.6%(前連結会計年度末は16.5%)となりました。
eキャッシュ・フロー
当連結会計年度の各キャッシュ・フローの状況は、次のとおりであります。営業活動は税金等調整前当期純利益を計上したことや原油価格の下落に伴う運転収支の改善などの資金増加要因により1,117億円のプラスとなりました。投資活動は、有形固定資産並びに投資有価証券の取得に伴う支出等により842億円のマイナスとなりました。財務活動は、借入金の返済等により247億円のマイナスとなりました。
以上の結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末比26億円増加の433億円となりました。
当連結会計年度は新型コロナウイルス感染症の世界的な流行等に伴う原油価格の急落による市況の悪化並びに原油価格の変動によるたな卸資産評価の影響を受けたこと等により、税金等調整前当期純利益は前期比で大きく下回ったものの、原油価格の下落による運転収支の改善等により営業活動によるキャッシュ・フローは前期比で増加しております。投資については、2020年から始まったIMO規制強化に向けた堺製油所のコーカー装置能力の増強や洋上風力サイトへの投資を実施いたしました。今後も将来の事業環境と成長を見据え、石油化学製品への高付加価値化、洋上風力サイト開発などを予定しております。引き続き、財務体質を強化し、洋上風力などへの積極的な成長投資により、事業ポートフォリオの転換を目指し、収益機会を確実に享受し、更なるフリー・キャッシュ・フローの創出を目指してまいります。
なお、当社グループのキャッシュ・フロー指標のトレンドは下記のとおりであります。
2016年3月期2017年3月期2018年3月期2019年3月期2020年3月期
自己資本比率7.7%10.8%14.1%16.5%14.6%
時価ベースの自己資本比率7.1%10.5%17.2%11.0%7.8%
キャッシュ・フロー対有利子負債比率41.1年16.2年3.6年7.7年6.1年
インタレスト・カバレッジ・レシオ1.4倍3.8倍15.6倍8.2倍11.8倍

(注)1 各指標は、以下の計算式によっております。
自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い
2 各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により計算しております。
3 株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式総数(自己株式控除後)により計算しております。
4 営業キャッシュ・フローは連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている借入金、コマーシャル・ペーパー、社債、転換社債型新株予約権付社債を対象としております。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。
④経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、中期的な経営の方向性を第6次連結中期経営計画にて目標値として定めております。当該中期経営計画2年目の評価として、当連結会計年度における客観的指標の実績を示すとともにその達成状況を分析すると以下のとおりとなります。
親会社株主に帰属する当期純損失は282億円、自己資本は2,398億円(自己資本比率14.6%)、ネットD/Eレシオ(※)は2.41倍となりました。
当連結会計年度は、一時的な原油価格の下落による在庫評価損の計上により、親会社株主に帰属する当期純損失282億円となり、財務体質の改善には至りませんでしたが、各事業において掲げている第6次連結中期経営計画の施策は順調に進捗しております。2020年度は、新型コロナウイルス感染症の影響により投資のタイミングや内容について見直しを行っておりますが、将来の事業環境を見据えた投資や事業継続に必要な設備投資は継続して実施予定となっております。今後、需要減少と原油価格下落が回復すれば、徐々に財務体質も改善する見込みです。引き続き、適切な成長投資と確実な収益機会の享受等により、第6次連結中期経営計画の目標達成に向けて邁進してまいります。
(※):2020年3月31日実行のハイブリッドローン300億円について、50%を資本とみなして算出。