有価証券報告書-第9期(2023/04/01-2024/03/31)

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2024/06/20 15:00
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【項目】
168項目
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当社グループは、第7次連結中期経営計画において、スローガンを『Oil&New~Next Stage~』として、「収益力の確保」「成長に向けたNew領域の拡充」「三位一体の資本政策実現」「経営基盤の変革」の4点を基本方針に、非財務資本の活用による事業戦略の実現と、これによる収益力の向上、資本政策の充実、成長事業の拡大を図り、持続的な企業価値の向上に取り組んでおります。また、当連結会計年度において、ROE及びPER向上の取組を加速し、PBR1倍について早期に達成いたしました。
こうした経営活動の結果、当連結会計年度の連結経営成績は、売上高は2兆7,296億円(前期比△623億円)、営業利益は1,492億円(前期比△146億円)、経常利益は1,616億円(前期比△29億円)、親会社株主に帰属する当期純利益は821億円(前期比+142億円)となりました。
各セグメントの業績を示すと次のとおりであります。
(石油事業)
石油事業につきましては、前期比で原油価格が下落したこと等により、売上高は2兆4,456億円(前期比△59億円)となりました。一方、国内市況が良化したこと等により、セグメント利益は907億円(前期比+250億円)となりました。なお、在庫評価の影響を除くセグメント利益は913億円(前期比+472億円)となっております。
(石油化学事業)
石油化学事業につきましては、前期比で製品市況が悪化したこと等により、売上高は3,618億円(前期比△784億円)、セグメント損失は78億円(前期はセグメント利益38億円)となりました。
(石油開発事業)
石油開発事業につきましては、前期比で原油販売価格が下落したこと等により、売上高は1,278億円(前期比△102億円)、セグメント利益は683億円(前期比△162億円)となりました。
(再生可能エネルギー事業)
再生可能エネルギー事業につきましては、前期比で風力発電における風況が良化したこと等により、売上高は143億円(前期比+21億円)、セグメント利益は28億円(前期比+2億円)となりました。
当連結会計年度末の連結財政状態は、総資産は2兆2,119億円となり、前連結会計年度末に比べ911億円増加しております。負債合計は1兆4,852億円となり、前連結会計年度末に比べ278億円増加しております。純資産合計は7,268億円となり、前連結会計年度末に比べ634億円増加しております。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は1,055億円となり、前連結会計年度末に比べ437億円増加しております。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果、資金の増加は1,779億円(前期は81億円の資金の増加)となり、これは主に、税金等調整前当期純利益を計上したこと等によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果、資金の減少は328億円(前期は812億円の資金の減少)となり、これは主に、有形固定資産の取得による支出等によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果、資金の減少は1,042億円(前期は811億円の資金の増加)となり、これは主に、コマーシャル・ペーパーの減少等によるものです。
③生産、受注及び販売の実績
a生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称生産高(百万円)前年同期比(%)
石油事業1,553,27582.6
石油化学事業451,79286.6
石油開発事業12,64564.4
合計2,017,71383.3

(注)1 自家燃料は除いております。
2 委託処理分を含み、受託処理分は除いております。
3 上記の金額にセグメント間の生産高は含まれておりません。
b受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称受注高(百万円)前年同期比(%)受注残高(百万円)前年同期比(%)
その他13,091104.212,979164.0

c販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称販売高(百万円)前年同期比(%)
石油事業2,341,027100.5
石油化学事業313,11584.5
石油開発事業39,14174.4
再生可能エネルギー事業14,156116.8
その他22,12978.7
合計2,729,57097.8

(注)1 上記の金額にセグメント間の販売高は含まれておりません。
2 最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先前連結会計年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
当連結会計年度
(自 2023年4月1日
至 2024年3月31日)
金額(百万円)割合(%)金額(百万円)割合(%)
キグナス石油㈱353,33612.7363,43013.3

※販売実績には、当該顧客と同一の企業集団に属する顧客に対する販売実績を含めております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたり採用した会計方針及びその適用方法並びに見積りの評価については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」、財務諸表の作成にあたり採用した会計方針及びその適用方法並びに見積りの評価については、「第5 経理の状況 2 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 重要な会計方針」に記載のとおりです。
なお、連結財務諸表の作成に関して、認識している重要な見積りを伴う項目については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 重要な会計上の見積り」を参照ください。
②経営成績の分析
a売上高
売上高は、前連結会計年度に比べ623億円減少し、2兆7,296億円となりました。これは主に、石油化学事業において製品市況が悪化したこと等によるものです。
b売上原価、販売費及び一般管理費
売上原価は、前連結会計年度に比べ612億円減少し、2兆4,099億円となりました。売上高に対する売上原価の比率は、0.2ポイント減少して、88.3%となりました。
販売費及び一般管理費は、前連結会計年度に比べ135億円増加し、1,704億円となりました。売上高に対する販売費及び一般管理費の比率は、0.6ポイント増加して、6.2%となりました。
c営業利益
営業利益は、前連結会計年度に比べ146億円減少し、1,492億円となりました。これは主に、石油開発セグメントにおいて原油販売価格が下落したこと等によるものです。
d営業外損益
営業外損益は、前連結会計年度に比べ117億円改善し、124億円の利益となりました。これは主に、為替差益が88億円増加したこと等によるものです。
e特別損益
特別損益は、前連結会計年度に比べ45億円改善し、67億円の損失となりました。これは主に、受取補償金が64億円増加したこと等によるものです。
f親会社株主に帰属する当期純利益
親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に比べ142億円増加し、821億円となりました。これは主に、法人税等が前連結会計年度に比べ68億円減少し646億円となったこと及び非支配株主に帰属する当期純利益が前連結会計年度に比べ57億円減少し83億円となったこと等によるものです。なお、1株当たりの当期純利益は、938.11円となりました。
なお、セグメントごとの経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
(石油事業)
国内市況が良化したこと等により、セグメント利益は前連結会計年度に比べ250億円増加し、907億円となりました。
2024年度は、海外市況の悪化を見込むことにより当連結会計年度比で減益となる見通しとなっております。
(石油化学事業)
製品市況が悪化したこと等により、セグメント損失は78億円(前連結会計年度はセグメント利益38億円)となりました。
2024年度は、国内販売数量の増加を見込むことにより当連結会計年度比で増益となる見通しとなっております。
(石油開発事業)
原油販売価格が下落したこと等により、セグメント利益は前連結会計年度に比べ162億円減少し、683億円となりました。
2024年度は、操業コストの増加により当連結会計年度比で減益となる見通しとなっております。
(再生可能エネルギー事業)
風力発電における風況が良化したこと等により、セグメント利益は前連結会計年度に比べ2億円増加し、28億円となりました。
2024年度は、設備容量拡大に伴うコストが増加することにより当連結会計年度比で減益となる見通しとなっております。
③資本の財源及び資金の流動性に関する分析
a資金需要
当社グループの資金需要は主に運転資金と設備投資に関するものです。
運転資金需要は製品製造のための原材料仕入のほか、製造費、販売費及び一般管理費等によるものであり、設備投資需要は競争力強化を目的とした石油・石油化学製品の製造設備、サービスステーション設備や販売促進のためのシステム投資、原油の生産設備、風力発電設備等の取得や維持更新等によるものです。
b財務政策
2023年4月より開始された第7次連結中期経営計画では、株主還元、財務健全性、資本効率を三位一体で実行することで企業価値の最大化を目指しております。財務健全性においては、資産に内在するリスク、求められる資本効率、柔軟な資金調達といった観点を総合的に精査し、自己資本並びにネットD/Eレシオの目標値を設定しております。
当社は、財務の安全性と効率性を両立させる財務運営を目指しており、短期並びに長期社債による直接金融と金融機関からの借入等の間接金融を機動的に行うことで効率的な資金調達を行っております。また、原油備蓄資金の制度融資も活用しており、市中の金融機関のみならず政府系金融機関とも関係を維持し、調達先の多様化を行っております。また、持株会社である当社が一括して資金を調達し、グループ会社に融通するグループ金融体制を構築しており、資金の集中化並びに効率化を行っております。
当社は、円滑な資金調達を行うために日本格付研究所(JCR)並びに格付け投資情報センター(R&I)から格付を取得しております。当連結会計年度末において当社の格付は、JCR、R&IともにA-(安定的)となります。
(特定融資枠契約)
平時における十分な流動性の確保と災害発生等の緊急時に円滑な資金調達を行うために取引金融機関と特定融資枠契約(コミットメントライン契約)を締結しております。なお、当連結会計年度末における当該契約の極度額は1,201億円です。
c株主還元方針
当社グループは、株主の皆様への利益還元を重要な課題の一つとして認識しております。
第7次連結中期経営計画では、株主還元、財務健全性、資本効率のいずれも欠けることなく、三位一体で実行していくことを資本政策として掲げ、企業価値の最大化を図っており、株主還元方針としましては、総還元性向60%以上(3ヵ年累計、在庫影響を除く純利益に対する比率)、配当1株当たり300円以上としております。
また、財務健全性が目標値(自己資本6,000億円以上、ネットD/Eレシオ1.0倍)に到達した場合は原則として追加の還元を実施いたします。
当連結会計年度は、堅調な収益をベースに配当の引き上げを行い、前連結会計年度から150円増配の1株当たり300円の配当を行うとともに、下限配当についても同額の300円に引き上げました。加えて、取得総額230億円または取得株式総数350万株を上限とする自己株式の取得の実施を予定しており、これにより当連結会計年度は単年で総還元性向60%(在庫影響を除く純利益に対する比率)を実現しております。
引き続き企業価値向上を目指し、収益環境や株価等を見極めながら、柔軟に早期還元実現を検討してまいります。
d財政状態
当社グループは、自己資本やネットD/Eレシオといった財務健全性の向上を重要な課題の一つとして認識しております。財務健全性に加え、株主還元、資本効率を三位一体で実行することで企業価値の最大化を目指してまいります。
(資産)
当連結会計年度末における流動資産は1兆1,227億円となり、前連結会計年度末に比べ867億円増加しております。これは主に、売掛金が755億円増加したこと等によるものです。固定資産は1兆891億円となり、前連結会計年度末に比べ44億円増加しております。これは主に、有形固定資産が39億円増加したこと等によるものです。
この結果、総資産は2兆2,119億円となり、前連結会計年度末に比べ911億円増加しております。
(負債)
当連結会計年度末における流動負債は1兆76億円となり、前連結会計年度末に比べ50億円減少しております。これは主に、コマーシャル・ペーパーが673億円減少したこと等によるものです。固定負債は4,775億円となり、前連結会計年度末に比べ327億円増加しております。これは主に、社債が186億円増加したこと等によるものです。
この結果、負債合計は1兆4,852億円となり、前連結会計年度末に比べ278億円増加しております。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産合計は7,268億円となり、前連結会計年度末に比べ634億円増加しております。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益821億円を計上したこと等によるものです。
この結果、自己資本比率は27.1%(前連結会計年度末は24.9%)となりました。
eキャッシュ・フロー
当連結会計年度の各キャッシュ・フローの状況は、次のとおりであります。営業活動は税金等調整前当期純利益を計上したこと等により1,779億円のプラスとなりました。投資活動は有形固定資産の取得による支出等により328億円のマイナスとなりました。財務活動はコマーシャル・ペーパーの減少等により1,042億円のマイナスとなりました。
以上の結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比べ437億円増加の1,055億円となりました。
なお、当社グループのキャッシュ・フロー指標のトレンドは下記のとおりであります。
2020年3月期2021年3月期2022年3月期2023年3月期2024年3月期
自己資本比率14.6%19.0%23.5%24.9%27.1%
時価ベースの自己資本比率7.8%12.9%11.4%17.7%30.4%
キャッシュ・フロー対有利子負債比率6.1年3.6年5.4年84.5年3.5年
インタレスト・カバレッジ・レシオ11.8倍23.1倍16.7倍1.3倍38.3倍

(注)1 各指標は、以下の計算式によっております。
自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い
2 各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により計算しております。
3 株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式総数(自己株式控除後)により計算しております。
4 営業キャッシュ・フローは連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている借入金、コマーシャル・ペーパー、社債を対象としております。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。
④経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、中期的な経営の方向性を2025年度が最終年度となる第7次連結中期経営計画にて目標値として定めております。当該連結中期経営計画初年度の評価として、当連結会計年度における客観的指標の実績を示すとともにその達成状況を分析すると以下のとおりとなります。
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株主還元・財務健全性・資本効率等、多くの指標で2025年度の目標を達成しております。その他の指標につきましても順調に推移しておりますが、引き続き全指標において目標を達成すべく各種施策を実行してまいります。