有価証券報告書-第16期(2023/05/01-2024/04/30)
文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
Ⅰ 経営成績等の状況の概要
(1)財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における我が国の経済状況は、所得・雇用環境が改善される中、各種政策の効果もあって、緩やかな回復が期待されているものの、世界的な金融引締めや急激な為替変動、中東地域をめぐる情勢及び物価の上昇などによる景気の下振れリスクが懸念されています。
その一方で、情報サービス業界においては、従来なかったスピード感での技術革新や、少子高齢化・生産年齢人口の減少等を受け、デジタル技術を活用したDX(デジタルトランスフォーメーション)に関する投資が引き続き拡大を続けています。特に、AI市場においては、OpenAI社による「ChatGPT-3.5」「ChatGPT-4.0」のリリースに端を発した、各産業におけるAIトランスフォーメーション(以下、「AIX」という。)に関する投資の加速が続いており、まさに現在進行形で、LLM(Large Language Model:大規模言語モデル)を含むAIの技術競争・需要拡大・社会実装が急激なスピードで進んでおります。なお、当社グループでは、AIXとは、AIを社会に浸透させることにより、その力を通じて既存の業務プロセスやビジネスモデル等を含めて社会全体に抜本的な変革を起こすこと、ととらえております。
また、SaaS市場においても、導入の需要のみならず、「ニーズの多様化に伴うSaaS間連携」「統合管理の複雑化によるセキュリティ要件の高度化」等に関する需要拡大が見込まれるほか、セキュリティ市場においても、サイバーセキュリティ攻撃による脅威が年々増加しており、近年ではランサムウェア(身代金要求型ウイルス)によるサイバー攻撃被害が国内外の様々な企業や医療機関等で続き、国民生活や社会経済に影響が出る事例も発生しています。2023年3月には「Emotet」の活動再開が確認され、国民の誰もがサイバー攻撃の懸念に直面しております。
このような環境の中で、当社グループは、HEROZ3.0として「AI BPaaS」を掲げ、単なるSaaSツール提供会社にとどまらず、生成AI等を駆使し大幅に自動化されたWorkというかたちで価値提供を行い、社会全体にAIXを起こしていくことを目指しております。
また、当連結会計年度は、2023年11月に、コンタクトセンター領域において各種ソリューションを提供している株式会社エーアイスクエア、2024年3月にAI事業を行っている株式会社ティファナ・ドットコムの株式を取得し、子会社化を行いました。HEROZグループでは、グループ各社が持つ強みと当社が持つAI技術力でシナジーを創出・拡大し、社会やビジネスにおけるAIXをさらに推進させるべく、今後も「オーガニックな成長」「企業価値向上のためのM&A」の両方に積極的に取り組んでまいります。
なお、セグメント別の経営成績の概況は以下のとおりです。
(ⅰ)AI/DX事業
当連結会計年度において、当社グループのAI/DX事業については、BtoC領域における新サービスリリース・機能追加やBtoB領域における稼働案件数の増加等の効果により、安定した収益を上げました。また当連結会計年度に子会社化した株式会社エーアイスクエア及び株式会社ティファナ・ドットコムの両社の事業はAI/DX事業となります。
BtoC領域については、藤井聡太竜王・名人による史上初の八冠獲得に伴う将棋への注目度向上等の効果により、「将棋ウォーズ」「棋神アナリティクス」ともに安定した収益を上げました。2023年10月には、将棋初段昇段を目指すeラーニングサービス「棋神ラーニング」をリリースいたしました。また、BtoB領域についても、LLMを含むAIに関する投資拡大・注目度向上を受け、案件数・引き合いの増加や大型案件の獲得等もあり、収益が拡大しております。同領域においては、各種展示会の出展等を受け、生成AI関連の引き合いも増加しているほか、株式会社ポケモンと共同開発した「Pokémon Battle Scope」が、「ポケモンジャパンチャンピオンシップス2024」のゲーム部門に導入、また2024年5月には株式会社ストラテジットでSaaS連携プラットフォーム「JOINT」の新プロダクトとして、「JOINT iPaaS for SaaS」の正式版をリリースするなど、事業拡大に向けた活動を積極的に展開しております。
当セグメントにおいて、LLMの活用・社会実装は事業戦略の中核となるテーマであり、今後も、2023年5月に新設された専門組織を中心にスピード感をもって研究開発を進めてまいります。その取り組みとして、2024年5月に生成AIを活用したエンタープライズ向けAIアシスタントSaaS「HEROZ ASK」を本リリースしました。2023年9月よりクローズドβ版、2024年2月よりアーリーアクセス版を提供していましたが、本リリース版ではさらなる機能をアップデートし、より進化した形でサービス提供を行います。
(ⅱ)AI Security事業
当社グループ会社であるバリオセキュア株式会社が提供するインターネットセキュリティ関連の事業となります。
同社は、中小企業向けのセキュリティ対策を支援するため、「マネージドサービスの対応領域拡大・競争力強化」「成長セキュリティ市場への参入」「既存販売網と異なる新規営業体制の強化」を中期経営計画の目標として定め、実現に向けて当連結会計年度より人材の獲得、サービス企画・事業開発の強化、ソフトウエア開発等の事業投資を行ってまいりました。
そして、当連結会計年度においては、ネットワーク機器、Wi-Fiアクセスポイントのファームウェアのアップデートやネットワークトラブルの早期発見を行い、オフィスLAN環境を健全に維持する運用アウトソーシングサービスを開始しました。また、自社のセキュリティ環境の脆弱性を診断する「脆弱性診断サービス」の提供を行い、企業のニーズに対応したサービスラインナップを拡充しました。
このような状況のもと、マネージドセキュリティサービスの売上収益は、ストック型の積み上げとその低解約率により、安定的に推移しました。特にエンドポイントセキュリティ対策としてサイバー攻撃の兆候を検知するVarioマネージドEDRは、引き続き高い成長となりました。一方で、ワンショットの収益モデルであるインテグレーションサービスにおいては、統合セキュリティ機器(UTM)の販売低迷により、前年を下回りました。
費用面に関して、当社にてオフィス体制の見直しを行う等、適切なコストコントロールを進めましたが、一方で、事業・サービス拡大に伴う人材採用強化による人件費等の増加や、取締役・執行役員に関する業績連動報酬の概算計上のほか、広告宣伝強化・追加のM&Aに関連したデュー・デリジェンス費用等の発生・為替の影響によるサーバ利用料の増加等により、売上原価・販売費及び一般管理費は増加しております。そのほか、営業外費用として株主優待関連費用37,771千円、特別損失としてのれんの一部の一括償却891,209千円及びのれんの減損損失184,966千円が発生しております。なお、特別損失ののれんの一部の一括償却は、バリオセキュア社株式の市場価格の下落に伴うのれんの一部の一括償却であり、バリオセキュア社の個別決算で計上しているのれんの再評価を行ったものではありません。また、のれんの減損損失は、株式会社ストラテジットに関して連結決算で計上していたのれんについて、減損処理を行ったものであります。
以上の結果、当連結会計年度の売上高は4,841,640千円(前期比62.4%増)となり、EBITDA(注)901,190千円(前期比47.8%増)、営業利益451,351千円(前期比75.0%増)、経常利益368,859千円(前期比70.6%増)、親会社株主に帰属する当期純損失1,134,535千円(前期は574,334千円の損失)となりました。
(注)EBITDA:(営業利益+減価償却費+敷金償却+のれん償却額(特別損失計上分を除く)+株式報酬費用+
棚卸資産評価損)
なお、当社グループの当連結会計年度におけるセグメント別の損益状況については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(セグメント情報等)」をご参照ください。
当連結会計年度末の資産につきましては、前連結会計年度末に比べ981,814千円減少し、7,691,233千円となりました。これは主に、売掛金が102,132千円、ソフトウエア仮勘定が321,612千円増加した一方で、現金及び預金が1,060,378千円、のれんが348,168円減少したことによります。
負債につきましては、前連結会計年度末に比べ44,559千円減少し、2,548,159千円となりました。これは主に、未払金が143,068千円増加した一方で、未払法人税等が50,848千円、契約損失引当金が50,797千円、長期借入金が113,488千円減少したことによります。なお、長期借入金は、主にバリオセキュア株式会社に係るものとなります。
純資産につきましては、前連結会計年度末に比べ937,254千円減少し、5,143,074千円となりました。これは主に、非支配株主持分が149,093千円増加した一方で、利益剰余金が1,134,535千円減少したことによります。
(2)キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は、期首より1,056,958千円減少し、2,741,433千円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において営業活動の結果得られた資金は、464,004千円(前年同期は483,382千円の収入)であります。
この主な要因は、税金等調整前当期純損失707,315千円、減価償却費181,443千円、減損損失184,966千円、のれん償却額1,063,348千円、長期前受金の減少額103,899千円、法人税等の支払額272,506千円等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において投資活動の結果使用した資金は、1,217,003千円(前年同期は、144,475千円の使用)であります。
この主な要因は、有形固定資産の取得による支出147,528千円、無形固定資産の取得による支出295,680千円、連結の範囲の変更を伴う子会社株式等の取得による支出793,882千円があったこと等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において財務活動の結果使用した資金は、303,958千円(前年同期は200,785千円の使用)であります。
この主な要因は、長期借入金の返済による支出201,560千円、非支配株主への配当金の支払額104,437千円があったこと等によります。
(3)生産、受注及び販売の実績
① 生産実績
提供するサービスの性格上、生産実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。
② 受注実績
提供するサービスの性格上、受注実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。
③ 販売実績
当連結会計年度の販売実績は次のとおりであります。
(注)1、セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
3.ソフトバンク株式会社の前連結会計年度の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合並びにGoogle Inc.の当連結会計年度の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、当該割合が10%未満であるため記載を省略しております。
Ⅱ 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
(1)重要な会計方針、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。その作成には、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債および収益・費用の報告金額および開示に影響を与える見積りを必要としております。これらの見積りについては、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積りによる不確実性のため、これらの見積りとは異なる場合があります。
① のれん
のれんについては、2022年9月にバリオセキュア株式会社を、2023年11月に株式会社エーアイスクエアを、2024年3月に株式会社ティファナ・ドットコムを連結子会社化した際に発生したものであり、いずれも取得時点での対象会社の将来の事業計画等に基づいて超過収益力を検討し、計上しております。
のれんの減損判定については、グループ会社における継続した営業損失の発生、経営環境の著しい悪化、事業計画からの大幅な乖離等の有無をもとに減損の兆候の有無を検討しています。減損の兆候を識別した場合には、のれんの残存償却期間に対応する期間における割引前将来キャッシュ・フローを事業計画に基づいて算定し、帳簿価額と比較して減損損失の認識の要否を判定しています。減損損失の認識が必要と判定された場合、当該のれんについては、回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として認識しています。
なお、当連結会計年度においては、株式会社ストラテジットに係るのれんについて184,966千円の減損損失を計上しておりますが、その他のグループ会社ののれんについては、減損の兆候はありません。
減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定に当たっては慎重に検討していますが、グループ会社の事業計画や経営環境の変化等によって影響を受ける可能性があり、実際の業績が見積りと異なる場合、翌連結会計年度の連結財務諸表において重要な影響を与える可能性があります。
② 繰延税金資産
繰延税金資産については、将来事業年度の課税所得を合理的に見積り、回収可能性を判断した上で繰延税金資産を計上しています。今後の経営環境の変化等によっては、翌事業年度において、当該将来事業年度の課税所得の見積り及び繰延税金資産の計上額が変動する可能性があります。
③ グループ会社における契約損失引当金の評価
当社のグループ会社であるバリオセキュア株式会社におきまして、仕入先との間で締結した契約の最低購入保証条項に基づき、最低購入保証の未達に備えるため、将来発生する損失見込みに基づき契約損失引当金を計上しております。
当該引当金は、バリオセキュア株式会社が仕入先との間で締結した契約の最低購入保証条項に基づき、最低購入保証の未達に備えるため、将来発生する損失見込額を計上しております。将来発生する損失見込額は、合理的な仕入計画に基づき、将来に発生が見込まれる金額を見積もっております。また、合理的な仕入計画の策定にあたっては、予測販売数量を主要な仮定として用いており、予測販売数量については、過去の実績等を基礎として見積りを行っております。
上記見積りの予測販売数量及び当該数量に基づく合理的な仕入計画には不確実性が含まれているため、予測不能な前提条件の変化等により結果として、契約損失引当金の追加計上または戻入が必要となる可能性があります。
④ 関係会社株式
市場価格のある株式等は、その時価が著しく下落した時は、回復する見込みがあると認められる場合を除き、当該時価をもって貸借対照表価額とし、評価差額を当事業年度の損失として認識しております。
また非上場の関係会社に対する投資等、市場価格のない株式等は取得価額をもって貸借対照表価額としていますが、当該株式の発行会社の財政状態の悪化により実質価額が著しく低下した時には、回復可能性が十分な論拠によって裏付けられている場合を除いて、相当の減額を行い、評価差額を当事業年度の損失として認識しております。
なお、当連結会計年度においては、バリオセキュア株式会社の株式について1,506,362千円、株式会社ストラテジットの株式について359,594千円の関係会社株式評価損を計上しております。
株式の評価については慎重に検討を行っておりますが、今後の経営環境の変化等によって発行体の業績・事業状況が悪化した場合、翌連結会計年度の連結財務諸表において重要な影響を与える可能性があります。
そのほか、貸倒引当金、賞与引当金、株主優待引当金の計上基準については、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載のとおり計上を行っております。いずれも過去の実績に基づき算定しており、会計上の見積りの重要性は低く、当社の経営成績等に与える影響は軽微であると判断しております。
(2)財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
①財政状態の分析
財政状態に関する分析は、「Ⅰ 経営成績等の状況の概要 (1)財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりです。
②経営成績の分析
a 売上高
当連結会計年度の売上高は、4,841,640千円(前期比62.4%増)となりました。セグメント別の分析は以下のとおりです。
・AI/DX事業
AI/DX事業については、BtoC領域におけるイベント開催やBtoB領域における稼働案件数の増加等の効果により安定した収益を上げ、売上高は2,201,968千円となりました。なお、売上高については連結内部の取引消去後の金額となります。
BtoC領域については、藤井聡太竜王・名人による史上初の八冠獲得に伴う将棋への注目度向上等の効果により、「将棋ウォーズ」「棋神アナリティクス」ともに安定した収益を上げました。2023年10月には、将棋初段昇段を目指すeラーニングサービス「棋神ラーニング」をリリースいたしました。
また、BtoB領域についても、LLMを含むAIに関する投資拡大・注目度向上を受け、案件数・引き合いの増加や大型案件の獲得等もあり、収益が拡大しております。
・AI Security事業
AI Security事業については、主にマネージドセキュリティサービスでの堅調な成長達成により、売上高は2,639,671千円となりました。なお、売上高については連結内部の取引消去後の金額となります。
マネージドセキュリティサービスでは、VSRを利用した統合型インターネットセキュリティサービスにおいて、主に上位機種へのアップセル等により売上高が増加しました。VDaPは、前期及び当期の新規契約に係る上位機種の月額課金の積み上がりにより売上高が増加しました。Vario EDRは主要代理店でのエンドポイントセキュリティサービスの案件獲得等によるライセンス数増加により売上高が増加しました。
また、インテグレーションサービスについては、ネットワーク構築も含めたセキュリティ導入を行うネットワークインテグレーションサービス(以下、IS)においては、人員を増加し納品件数が増加したことで売上高が増加しました。VCRにおいては、前事業年度より競合環境が激化しており当事業年度も販売数の回復に至っていないため売上高が減少しました。
b 売上原価、売上総利益、販売費及び一般管理費、営業利益
当社グループの売上原価、販売費及び一般管理費については、人材関連費用、機械学習用サーバ等設備の減価償却費・通信費、BtoCサービスに係る課金決済手数料、支払手数料及び技術研究・自社プロダクト開発のための研究開発費が主な内容となります。
当連結会計年度は、当社にてオフィス体制の見直しを行う等、適切なコストコントロールを進めましたが、一方で、事業・サービス拡大に伴う人材採用強化による人件費等の増加や、取締役・執行役員に関する業績連動報酬の概算計上のほか、広告宣伝強化・追加のM&Aに関連したデュー・デリジェンス費用等の発生・為替の影響によるサーバ利用料の増加等により、売上原価・販売費及び一般管理費は増加しております。
これらの結果、当連結会計年度における売上原価は2,449,558千円となり、当連結会計年度の売上総利益は2,392,082千円となりました。また、当連結会計年度における販売費及び一般管理費は1,940,731千円となり、当連結会計年度の営業利益は451,351千円(前期比75.0%増)となりました。
c 営業外収益、営業外費用、経常利益、特別損益
営業外収益及び費用については、当社が出資する投資事業組合に関する運用損益や、グループ会社における支払利息等が主な内容となります。そのほか、当連結会計年度は営業外費用として株主優待関連費用37,771千円、特別損失としてのれんの一部の一括償却891,209千円及びのれんの減損損失184,966千円が発生しております。
これらの結果、当連結会計年度の経常利益は368,859千円(前期比70.6%増)、税金等調整前当期純損失は707,315千円(前期は517,675千円)となりました。
上記a~cの結果を受け、当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純損失は1,134,535千円(前期は574,334千円)となりました。なお、法人税等調整額を含む法人税等合計は223,610千円となっております。
(3)キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容
キャッシュ・フローの分析・検討内容については、「Ⅰ 経営成績等の状況の概要 (2)キャッシュ・フローの状況」に記載の通りです。
(4)経営成績に重要な影響を与える要因について
「3 事業等のリスク」に記載した通り、事業内容、事業運営・組織体制等、様々なリスク要因が経営成績に重要な影響を与える可能性があると認識しております。そのため、当社グループは常に市場動向や業界動向を注視しつつ、優秀な人材の確保と適切な教育を実施するとともに、事業運営体制の強化と整備を進めることで、経営成績に重要な影響を与えるリスク要因に適切な対応を図ってまいります。
(5)経営戦略の現状と見通し
当連結会計年度における我が国の経済状況は、所得・雇用環境が改善される中、各種政策の効果もあって、緩やかな回復が期待されているものの、世界的な金融引締めに伴う影響や物価上昇等による景気の下振れリスクが懸念
されています。
その一方で、情報サービス業界においては、従来なかったスピード感での技術革新や、少子高齢化・生産年齢人口の減少等を受け、デジタル技術を活用したDX(デジタルトランスフォーメーション)に関する投資が引き続き拡
大を続けています。特に、AI 市場においては、OpenAI 社による「ChatGPT-3.5」「ChatGPT-4.0」のリリースに端を発した、各産業におけるAIトランスフォーメーション(以下、「AIX」という。)に関する投資の加速が続いており、まさに現在進行形で、LLM(Large Language Model:大規模言語モデル)を含むAIの技術競争・需要拡大・社会実装が急激なスピードで進んでおります。
このような環境の中で、当社グループは、HEROZ3.0として「AI BPaaS」を掲げ、単なるSaaSツール提供会社にとどまらず、生成AI等を駆使し大幅に自動化されたWorkというかたちで価値提供を行い、社会全体にAIXを起こしていくことを目指しております。
(6)資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。運転資金や自社サーバ購入等を目的とした資金需要は自己資金によることを基本としておりますが、必要に応じて多様な調達手段を検討してまいります。
なお、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は2,741,433千円、有利子負債の残高は1,404,056千円となっております。
Ⅰ 経営成績等の状況の概要
(1)財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における我が国の経済状況は、所得・雇用環境が改善される中、各種政策の効果もあって、緩やかな回復が期待されているものの、世界的な金融引締めや急激な為替変動、中東地域をめぐる情勢及び物価の上昇などによる景気の下振れリスクが懸念されています。
その一方で、情報サービス業界においては、従来なかったスピード感での技術革新や、少子高齢化・生産年齢人口の減少等を受け、デジタル技術を活用したDX(デジタルトランスフォーメーション)に関する投資が引き続き拡大を続けています。特に、AI市場においては、OpenAI社による「ChatGPT-3.5」「ChatGPT-4.0」のリリースに端を発した、各産業におけるAIトランスフォーメーション(以下、「AIX」という。)に関する投資の加速が続いており、まさに現在進行形で、LLM(Large Language Model:大規模言語モデル)を含むAIの技術競争・需要拡大・社会実装が急激なスピードで進んでおります。なお、当社グループでは、AIXとは、AIを社会に浸透させることにより、その力を通じて既存の業務プロセスやビジネスモデル等を含めて社会全体に抜本的な変革を起こすこと、ととらえております。
また、SaaS市場においても、導入の需要のみならず、「ニーズの多様化に伴うSaaS間連携」「統合管理の複雑化によるセキュリティ要件の高度化」等に関する需要拡大が見込まれるほか、セキュリティ市場においても、サイバーセキュリティ攻撃による脅威が年々増加しており、近年ではランサムウェア(身代金要求型ウイルス)によるサイバー攻撃被害が国内外の様々な企業や医療機関等で続き、国民生活や社会経済に影響が出る事例も発生しています。2023年3月には「Emotet」の活動再開が確認され、国民の誰もがサイバー攻撃の懸念に直面しております。
このような環境の中で、当社グループは、HEROZ3.0として「AI BPaaS」を掲げ、単なるSaaSツール提供会社にとどまらず、生成AI等を駆使し大幅に自動化されたWorkというかたちで価値提供を行い、社会全体にAIXを起こしていくことを目指しております。
また、当連結会計年度は、2023年11月に、コンタクトセンター領域において各種ソリューションを提供している株式会社エーアイスクエア、2024年3月にAI事業を行っている株式会社ティファナ・ドットコムの株式を取得し、子会社化を行いました。HEROZグループでは、グループ各社が持つ強みと当社が持つAI技術力でシナジーを創出・拡大し、社会やビジネスにおけるAIXをさらに推進させるべく、今後も「オーガニックな成長」「企業価値向上のためのM&A」の両方に積極的に取り組んでまいります。
なお、セグメント別の経営成績の概況は以下のとおりです。
(ⅰ)AI/DX事業
当連結会計年度において、当社グループのAI/DX事業については、BtoC領域における新サービスリリース・機能追加やBtoB領域における稼働案件数の増加等の効果により、安定した収益を上げました。また当連結会計年度に子会社化した株式会社エーアイスクエア及び株式会社ティファナ・ドットコムの両社の事業はAI/DX事業となります。
BtoC領域については、藤井聡太竜王・名人による史上初の八冠獲得に伴う将棋への注目度向上等の効果により、「将棋ウォーズ」「棋神アナリティクス」ともに安定した収益を上げました。2023年10月には、将棋初段昇段を目指すeラーニングサービス「棋神ラーニング」をリリースいたしました。また、BtoB領域についても、LLMを含むAIに関する投資拡大・注目度向上を受け、案件数・引き合いの増加や大型案件の獲得等もあり、収益が拡大しております。同領域においては、各種展示会の出展等を受け、生成AI関連の引き合いも増加しているほか、株式会社ポケモンと共同開発した「Pokémon Battle Scope」が、「ポケモンジャパンチャンピオンシップス2024」のゲーム部門に導入、また2024年5月には株式会社ストラテジットでSaaS連携プラットフォーム「JOINT」の新プロダクトとして、「JOINT iPaaS for SaaS」の正式版をリリースするなど、事業拡大に向けた活動を積極的に展開しております。
当セグメントにおいて、LLMの活用・社会実装は事業戦略の中核となるテーマであり、今後も、2023年5月に新設された専門組織を中心にスピード感をもって研究開発を進めてまいります。その取り組みとして、2024年5月に生成AIを活用したエンタープライズ向けAIアシスタントSaaS「HEROZ ASK」を本リリースしました。2023年9月よりクローズドβ版、2024年2月よりアーリーアクセス版を提供していましたが、本リリース版ではさらなる機能をアップデートし、より進化した形でサービス提供を行います。
(ⅱ)AI Security事業
当社グループ会社であるバリオセキュア株式会社が提供するインターネットセキュリティ関連の事業となります。
同社は、中小企業向けのセキュリティ対策を支援するため、「マネージドサービスの対応領域拡大・競争力強化」「成長セキュリティ市場への参入」「既存販売網と異なる新規営業体制の強化」を中期経営計画の目標として定め、実現に向けて当連結会計年度より人材の獲得、サービス企画・事業開発の強化、ソフトウエア開発等の事業投資を行ってまいりました。
そして、当連結会計年度においては、ネットワーク機器、Wi-Fiアクセスポイントのファームウェアのアップデートやネットワークトラブルの早期発見を行い、オフィスLAN環境を健全に維持する運用アウトソーシングサービスを開始しました。また、自社のセキュリティ環境の脆弱性を診断する「脆弱性診断サービス」の提供を行い、企業のニーズに対応したサービスラインナップを拡充しました。
このような状況のもと、マネージドセキュリティサービスの売上収益は、ストック型の積み上げとその低解約率により、安定的に推移しました。特にエンドポイントセキュリティ対策としてサイバー攻撃の兆候を検知するVarioマネージドEDRは、引き続き高い成長となりました。一方で、ワンショットの収益モデルであるインテグレーションサービスにおいては、統合セキュリティ機器(UTM)の販売低迷により、前年を下回りました。
費用面に関して、当社にてオフィス体制の見直しを行う等、適切なコストコントロールを進めましたが、一方で、事業・サービス拡大に伴う人材採用強化による人件費等の増加や、取締役・執行役員に関する業績連動報酬の概算計上のほか、広告宣伝強化・追加のM&Aに関連したデュー・デリジェンス費用等の発生・為替の影響によるサーバ利用料の増加等により、売上原価・販売費及び一般管理費は増加しております。そのほか、営業外費用として株主優待関連費用37,771千円、特別損失としてのれんの一部の一括償却891,209千円及びのれんの減損損失184,966千円が発生しております。なお、特別損失ののれんの一部の一括償却は、バリオセキュア社株式の市場価格の下落に伴うのれんの一部の一括償却であり、バリオセキュア社の個別決算で計上しているのれんの再評価を行ったものではありません。また、のれんの減損損失は、株式会社ストラテジットに関して連結決算で計上していたのれんについて、減損処理を行ったものであります。
以上の結果、当連結会計年度の売上高は4,841,640千円(前期比62.4%増)となり、EBITDA(注)901,190千円(前期比47.8%増)、営業利益451,351千円(前期比75.0%増)、経常利益368,859千円(前期比70.6%増)、親会社株主に帰属する当期純損失1,134,535千円(前期は574,334千円の損失)となりました。
(注)EBITDA:(営業利益+減価償却費+敷金償却+のれん償却額(特別損失計上分を除く)+株式報酬費用+
棚卸資産評価損)
なお、当社グループの当連結会計年度におけるセグメント別の損益状況については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(セグメント情報等)」をご参照ください。
当連結会計年度末の資産につきましては、前連結会計年度末に比べ981,814千円減少し、7,691,233千円となりました。これは主に、売掛金が102,132千円、ソフトウエア仮勘定が321,612千円増加した一方で、現金及び預金が1,060,378千円、のれんが348,168円減少したことによります。
負債につきましては、前連結会計年度末に比べ44,559千円減少し、2,548,159千円となりました。これは主に、未払金が143,068千円増加した一方で、未払法人税等が50,848千円、契約損失引当金が50,797千円、長期借入金が113,488千円減少したことによります。なお、長期借入金は、主にバリオセキュア株式会社に係るものとなります。
純資産につきましては、前連結会計年度末に比べ937,254千円減少し、5,143,074千円となりました。これは主に、非支配株主持分が149,093千円増加した一方で、利益剰余金が1,134,535千円減少したことによります。
(2)キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は、期首より1,056,958千円減少し、2,741,433千円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において営業活動の結果得られた資金は、464,004千円(前年同期は483,382千円の収入)であります。
この主な要因は、税金等調整前当期純損失707,315千円、減価償却費181,443千円、減損損失184,966千円、のれん償却額1,063,348千円、長期前受金の減少額103,899千円、法人税等の支払額272,506千円等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において投資活動の結果使用した資金は、1,217,003千円(前年同期は、144,475千円の使用)であります。
この主な要因は、有形固定資産の取得による支出147,528千円、無形固定資産の取得による支出295,680千円、連結の範囲の変更を伴う子会社株式等の取得による支出793,882千円があったこと等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において財務活動の結果使用した資金は、303,958千円(前年同期は200,785千円の使用)であります。
この主な要因は、長期借入金の返済による支出201,560千円、非支配株主への配当金の支払額104,437千円があったこと等によります。
(3)生産、受注及び販売の実績
① 生産実績
提供するサービスの性格上、生産実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。
② 受注実績
提供するサービスの性格上、受注実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。
③ 販売実績
当連結会計年度の販売実績は次のとおりであります。
セグメントの名称 | 当連結会計年度 (自 2023年5月1日 至 2024年4月30日) | |
金額(千円) | 前年同期比(%) | |
AI/DX事業 | 2,201,968 | 130.8 |
AI Security事業 | 2,639,671 | 203.6 |
合計 | 4,841,640 | 162.4 |
(注)1、セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先 | 前連結会計年度 (自 2022年5月1日 至 2023年4月30日) | 当連結会計年度 (自 2023年5月1日 至 2024年4月30日) | ||
金額(千円) | 割合(%) | 金額(千円) | 割合(%) | |
株式会社USEN ICT Solutions | 373,153 | 12.5 | 797,465 | 16.5 |
Apple Inc. | 556,238 | 18.7 | 614,212 | 12.7 |
ソフトバンク株式会社 | - | - | 584,728 | 12.1 |
Google Inc. | 331,523 | 11.1 | - | - |
3.ソフトバンク株式会社の前連結会計年度の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合並びにGoogle Inc.の当連結会計年度の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、当該割合が10%未満であるため記載を省略しております。
Ⅱ 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
(1)重要な会計方針、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。その作成には、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債および収益・費用の報告金額および開示に影響を与える見積りを必要としております。これらの見積りについては、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積りによる不確実性のため、これらの見積りとは異なる場合があります。
① のれん
のれんについては、2022年9月にバリオセキュア株式会社を、2023年11月に株式会社エーアイスクエアを、2024年3月に株式会社ティファナ・ドットコムを連結子会社化した際に発生したものであり、いずれも取得時点での対象会社の将来の事業計画等に基づいて超過収益力を検討し、計上しております。
のれんの減損判定については、グループ会社における継続した営業損失の発生、経営環境の著しい悪化、事業計画からの大幅な乖離等の有無をもとに減損の兆候の有無を検討しています。減損の兆候を識別した場合には、のれんの残存償却期間に対応する期間における割引前将来キャッシュ・フローを事業計画に基づいて算定し、帳簿価額と比較して減損損失の認識の要否を判定しています。減損損失の認識が必要と判定された場合、当該のれんについては、回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として認識しています。
なお、当連結会計年度においては、株式会社ストラテジットに係るのれんについて184,966千円の減損損失を計上しておりますが、その他のグループ会社ののれんについては、減損の兆候はありません。
減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定に当たっては慎重に検討していますが、グループ会社の事業計画や経営環境の変化等によって影響を受ける可能性があり、実際の業績が見積りと異なる場合、翌連結会計年度の連結財務諸表において重要な影響を与える可能性があります。
② 繰延税金資産
繰延税金資産については、将来事業年度の課税所得を合理的に見積り、回収可能性を判断した上で繰延税金資産を計上しています。今後の経営環境の変化等によっては、翌事業年度において、当該将来事業年度の課税所得の見積り及び繰延税金資産の計上額が変動する可能性があります。
③ グループ会社における契約損失引当金の評価
当社のグループ会社であるバリオセキュア株式会社におきまして、仕入先との間で締結した契約の最低購入保証条項に基づき、最低購入保証の未達に備えるため、将来発生する損失見込みに基づき契約損失引当金を計上しております。
当該引当金は、バリオセキュア株式会社が仕入先との間で締結した契約の最低購入保証条項に基づき、最低購入保証の未達に備えるため、将来発生する損失見込額を計上しております。将来発生する損失見込額は、合理的な仕入計画に基づき、将来に発生が見込まれる金額を見積もっております。また、合理的な仕入計画の策定にあたっては、予測販売数量を主要な仮定として用いており、予測販売数量については、過去の実績等を基礎として見積りを行っております。
上記見積りの予測販売数量及び当該数量に基づく合理的な仕入計画には不確実性が含まれているため、予測不能な前提条件の変化等により結果として、契約損失引当金の追加計上または戻入が必要となる可能性があります。
④ 関係会社株式
市場価格のある株式等は、その時価が著しく下落した時は、回復する見込みがあると認められる場合を除き、当該時価をもって貸借対照表価額とし、評価差額を当事業年度の損失として認識しております。
また非上場の関係会社に対する投資等、市場価格のない株式等は取得価額をもって貸借対照表価額としていますが、当該株式の発行会社の財政状態の悪化により実質価額が著しく低下した時には、回復可能性が十分な論拠によって裏付けられている場合を除いて、相当の減額を行い、評価差額を当事業年度の損失として認識しております。
なお、当連結会計年度においては、バリオセキュア株式会社の株式について1,506,362千円、株式会社ストラテジットの株式について359,594千円の関係会社株式評価損を計上しております。
株式の評価については慎重に検討を行っておりますが、今後の経営環境の変化等によって発行体の業績・事業状況が悪化した場合、翌連結会計年度の連結財務諸表において重要な影響を与える可能性があります。
そのほか、貸倒引当金、賞与引当金、株主優待引当金の計上基準については、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載のとおり計上を行っております。いずれも過去の実績に基づき算定しており、会計上の見積りの重要性は低く、当社の経営成績等に与える影響は軽微であると判断しております。
(2)財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
①財政状態の分析
財政状態に関する分析は、「Ⅰ 経営成績等の状況の概要 (1)財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりです。
②経営成績の分析
a 売上高
当連結会計年度の売上高は、4,841,640千円(前期比62.4%増)となりました。セグメント別の分析は以下のとおりです。
・AI/DX事業
AI/DX事業については、BtoC領域におけるイベント開催やBtoB領域における稼働案件数の増加等の効果により安定した収益を上げ、売上高は2,201,968千円となりました。なお、売上高については連結内部の取引消去後の金額となります。
BtoC領域については、藤井聡太竜王・名人による史上初の八冠獲得に伴う将棋への注目度向上等の効果により、「将棋ウォーズ」「棋神アナリティクス」ともに安定した収益を上げました。2023年10月には、将棋初段昇段を目指すeラーニングサービス「棋神ラーニング」をリリースいたしました。
また、BtoB領域についても、LLMを含むAIに関する投資拡大・注目度向上を受け、案件数・引き合いの増加や大型案件の獲得等もあり、収益が拡大しております。
・AI Security事業
AI Security事業については、主にマネージドセキュリティサービスでの堅調な成長達成により、売上高は2,639,671千円となりました。なお、売上高については連結内部の取引消去後の金額となります。
マネージドセキュリティサービスでは、VSRを利用した統合型インターネットセキュリティサービスにおいて、主に上位機種へのアップセル等により売上高が増加しました。VDaPは、前期及び当期の新規契約に係る上位機種の月額課金の積み上がりにより売上高が増加しました。Vario EDRは主要代理店でのエンドポイントセキュリティサービスの案件獲得等によるライセンス数増加により売上高が増加しました。
また、インテグレーションサービスについては、ネットワーク構築も含めたセキュリティ導入を行うネットワークインテグレーションサービス(以下、IS)においては、人員を増加し納品件数が増加したことで売上高が増加しました。VCRにおいては、前事業年度より競合環境が激化しており当事業年度も販売数の回復に至っていないため売上高が減少しました。
b 売上原価、売上総利益、販売費及び一般管理費、営業利益
当社グループの売上原価、販売費及び一般管理費については、人材関連費用、機械学習用サーバ等設備の減価償却費・通信費、BtoCサービスに係る課金決済手数料、支払手数料及び技術研究・自社プロダクト開発のための研究開発費が主な内容となります。
当連結会計年度は、当社にてオフィス体制の見直しを行う等、適切なコストコントロールを進めましたが、一方で、事業・サービス拡大に伴う人材採用強化による人件費等の増加や、取締役・執行役員に関する業績連動報酬の概算計上のほか、広告宣伝強化・追加のM&Aに関連したデュー・デリジェンス費用等の発生・為替の影響によるサーバ利用料の増加等により、売上原価・販売費及び一般管理費は増加しております。
これらの結果、当連結会計年度における売上原価は2,449,558千円となり、当連結会計年度の売上総利益は2,392,082千円となりました。また、当連結会計年度における販売費及び一般管理費は1,940,731千円となり、当連結会計年度の営業利益は451,351千円(前期比75.0%増)となりました。
c 営業外収益、営業外費用、経常利益、特別損益
営業外収益及び費用については、当社が出資する投資事業組合に関する運用損益や、グループ会社における支払利息等が主な内容となります。そのほか、当連結会計年度は営業外費用として株主優待関連費用37,771千円、特別損失としてのれんの一部の一括償却891,209千円及びのれんの減損損失184,966千円が発生しております。
これらの結果、当連結会計年度の経常利益は368,859千円(前期比70.6%増)、税金等調整前当期純損失は707,315千円(前期は517,675千円)となりました。
上記a~cの結果を受け、当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純損失は1,134,535千円(前期は574,334千円)となりました。なお、法人税等調整額を含む法人税等合計は223,610千円となっております。
(3)キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容
キャッシュ・フローの分析・検討内容については、「Ⅰ 経営成績等の状況の概要 (2)キャッシュ・フローの状況」に記載の通りです。
(4)経営成績に重要な影響を与える要因について
「3 事業等のリスク」に記載した通り、事業内容、事業運営・組織体制等、様々なリスク要因が経営成績に重要な影響を与える可能性があると認識しております。そのため、当社グループは常に市場動向や業界動向を注視しつつ、優秀な人材の確保と適切な教育を実施するとともに、事業運営体制の強化と整備を進めることで、経営成績に重要な影響を与えるリスク要因に適切な対応を図ってまいります。
(5)経営戦略の現状と見通し
当連結会計年度における我が国の経済状況は、所得・雇用環境が改善される中、各種政策の効果もあって、緩やかな回復が期待されているものの、世界的な金融引締めに伴う影響や物価上昇等による景気の下振れリスクが懸念
されています。
その一方で、情報サービス業界においては、従来なかったスピード感での技術革新や、少子高齢化・生産年齢人口の減少等を受け、デジタル技術を活用したDX(デジタルトランスフォーメーション)に関する投資が引き続き拡
大を続けています。特に、AI 市場においては、OpenAI 社による「ChatGPT-3.5」「ChatGPT-4.0」のリリースに端を発した、各産業におけるAIトランスフォーメーション(以下、「AIX」という。)に関する投資の加速が続いており、まさに現在進行形で、LLM(Large Language Model:大規模言語モデル)を含むAIの技術競争・需要拡大・社会実装が急激なスピードで進んでおります。
このような環境の中で、当社グループは、HEROZ3.0として「AI BPaaS」を掲げ、単なるSaaSツール提供会社にとどまらず、生成AI等を駆使し大幅に自動化されたWorkというかたちで価値提供を行い、社会全体にAIXを起こしていくことを目指しております。
(6)資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。運転資金や自社サーバ購入等を目的とした資金需要は自己資金によることを基本としておりますが、必要に応じて多様な調達手段を検討してまいります。
なお、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は2,741,433千円、有利子負債の残高は1,404,056千円となっております。