有価証券報告書-第92期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

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2020/06/26 9:44
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(1) 経営成績
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりである。
① 経営成績の概況
当連結会計年度の建設業界を取り巻く環境は、東京オリンピック・パラリンピックに向け当年度内に引渡しを終える大型案件の施工がピークを迎える中、工程の逼迫に伴う建設労働者不足が深刻化する中で推移した。
当社グループにおいても、大都市圏の工期が長い大型案件を中心に、建設労働市場の引き締まりを受けた労務費の高騰や、工程の遅れに対処するための追加労務費の支出などが発生し、利益率の低下が顕在化した。
このような経営環境のもと当社グループは、中期経営計画(2015年度~2019年度:5カ年計画)の最終年度を迎えた本年度を「完成と総括」の年と定め、これまでの成果を検証・分析し、課題を整理した上で、継続的な成長を実現する企業づくりを行ってきた。
また、事業領域・事業エリアの拡大、収益力の強化と受注確率の向上、現場戦力の充実強化などの具体的取り組みに加え、利益率低下に対する原因の分析と改善対策の実施に全力を傾注してきた。受注面では、従業員の法令違反を受けた指名停止や営業停止処分により中小型を中心とした官公庁工事が減少したものの、当社グループの強みである再生可能エネルギー工事に関するノウハウと地域密着営業力を結集し、1案件の受注額としては過去最大となる超大型の太陽光発電事業案件の施工に着手した。
このような事業運営の結果、当連結会計年度の業績は、以下のとおりとなった。
[連結業績]
工事受注高507,025百万円(前年同期比 24.9%増)
売 上 高428,939百万円(前年同期比 5.1%増)
営業利益36,022百万円(前年同期比 2.0%減)
経常利益38,643百万円(前年同期比 3.2%減)
親会社株主に帰属
する当期純利益
26,245百万円(前年同期比 1.7%減)

事業の種類別セグメントの業績は、次のとおりである。
(設備工事業)
売上高の状況は、前連結会計年度に比べ増加した期首の手持工事が順調に進捗したことなどから、前連結会計年度と比べ19,179百万円増加(4.9%増)し、407,506百万円となった。
また、セグメント利益(営業利益)については、大型案件の利益率が低下したことなどから、前連結会計年度と比べ1,179百万円減少(3.4%減)し、33,770百万円となった。
(その他)
売上高の状況は、工事に関連する材料並びに機器の販売事業が増加したことなどから、前連結会計年度と比べ1,616百万円増加(8.2%増)し、21,432百万円となった。
また、セグメント利益(営業利益)についても、工事に関連する材料並びに機器の販売事業の売上高の増加に伴い、前連結会計年度と比べ339百万円増加(19.5%増)し、2,077百万円となった。
② 財政状態の概況
[連結財政状態]
流動資産は、現金預金の増加などにより、前連結会計年度末と比べ10,001百万円増加し、216,269百万円となった。
固定資産は、投資有価証券の増加などにより、前連結会計年度末と比べ1,209百万円増加し、152,212百万円となった。
これらの結果、資産合計は前連結会計年度末と比べ11,210百万円増加し、368,482百万円となった。
流動負債は、未成工事受入金の増加などにより、前連結会計年度末と比べ578百万円増加し、142,723百万円となった。
固定負債は、退職給付に係る負債の減少などにより、前連結会計年度末と比べ4,633百万円減少し、28,316百万円となった。
これらの結果、負債合計は、前連結会計年度末と比べ4,055百万円減少し、171,039百万円となった。
純資産合計は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上などにより、前連結会計年度末と比べ15,266百万円増加し、197,442百万円となった。
[キャッシュ・フローの状況]
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ14,771百万円増加し、54,964百万円となった。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果増加した資金は、38,222百万円(前連結会計年度比12,168百万円の収入額の増加)となった。
これは、主に仕入債務の決済や法人税等の支払よりも、税金等調整前当期純利益の計上及び売上債権の回収が上回ったことによるものである。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果支出した資金は、12,136百万円(前連結会計年度比838百万円の支出額の増加)となった。
これは、主に投資有価証券の取得及び有形固定資産の取得によるものである。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果支出した資金は、11,250百万円(前連結会計年度比2,229百万円の支出額の増加)となった。
これは、主に配当金の支払によるものである。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりである。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものである。
① 当連結会計年度の財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
[前中期経営計画の振り返り]
前中期経営計画では、好調な建設需要の追い風に乗って、首都圏を始めとする九州域外での受注強化や、総合設備業としての強みを活かした空調管事業の拡大、更には施工会社のM&Aに積極的に取り組み、国内設備工事業を中心に業容を大きく拡大することができた。
同時に、技術管理部による原価管理の徹底や、2017年度に新設したQ-mastを中心に資材コストの削減に取り組んだ結果、受注確率は向上し、利益率も改善した 。
これは特に、事業の最前線である「現場」を重視し、技術者の採用拡大をはじめとする施工戦力強化を計画的かつ積極的に進めたことが、業容拡大に繋がった最大の要因であり、これまでの中期経営計画にはない最大の成果である。
一方で、工事量の急激な増加に対して現時点では、人財育成や生産性向上の取り組みが十分には追い付いておらず、結果として、時間外作業の増加や若年者を中心とする離職率の上昇といった傾向があらわれ、更にこの状況が続けば、将来的な品質低下や災害発生等のリスクも懸念される。
また、利益率についても、目標数値を前倒しでクリアしていたものの、前中期経営計画の終盤には目標を下回るなど、課題を残した。

[当連結会計年度の分析]
当連結会計年度においては、手持工事高の拡大や年度内に引渡しを終える案件の増加を背景に、売上高については過去最高となったが、労務費単価の高騰や追加労務コストの発生などにより、大都市圏の工期が長い大型案件を中心に、利益率が低下した。その結果、営業利益は前連結会計年度に比べ725百万円減少した。

今後は、利益率が低い案件を対象として、受注前及び施工の初期段階で工程全体の改善策検討を行うフロントローディングや先行工事などの具体的対策をさらに徹底することで、利益率・作業効率の改善を図っていく。
② 生産、受注及び販売の実績
(a) 受注実績
セグメントの名称前連結会計年度
(自 2018年4月1日
至 2019年3月31日)
当連結会計年度
(自 2019年4月1日
至 2020年3月31日)
金額(百万円)金額(百万円)
設備工事業405,903507,025(24.9%増)
その他(―)
合計405,903507,025(24.9%増)

(b) 売上実績
セグメントの名称前連結会計年度
(自 2018年4月1日
至 2019年3月31日)
当連結会計年度
(自 2019年4月1日
至 2020年3月31日)
金額(百万円)金額(百万円)
設備工事業388,327407,506(4.9%増)
その他19,81621,432(8.2%増)
合計408,143428,939(5.1%増)

総売上実績に対する割合が100分の10以上の相手先別の売上実績及びその割合は、次のとおりである。
相手先前連結会計年度
(自 2018年4月1日
至 2019年3月31日)
当連結会計年度
(自 2019年4月1日
至 2020年3月31日)
金額(百万円)割合(%)金額(百万円)割合(%)
九州電力㈱52,80512.951,74912.1

(c) 次期繰越高
セグメントの名称前連結会計年度
(2019年3月31日)
当連結会計年度
(2020年3月31日)
金額(百万円)金額(百万円)
設備工事業349,063448,462(28.5%増)
その他(―)
合計349,063448,462(28.5%増)

(注) 1 セグメント間の取引については相殺消去している。
2 当社グループでは設備工事業以外は受注生産を行っていない。
3 当社グループでは生産実績を定義することが困難であるため「生産の状況」は記載していない。
4 本表の金額には、消費税等は含まれていない。
なお、参考のため提出会社個別の事業の状況は次のとおりである。
設備工事業における受注工事高及び完成工事高の状況
〇 受注工事高、完成工事高及び次期繰越工事高
期別工事
種別
前期繰越
工事高
(百万円)
当期受注
工事高
(百万円)

(百万円)
当期完成
工事高
(百万円)
次期繰越
工事高
(百万円)
前事業年度
(自 2018年4月1日
至 2019年3月31日)
配電線工事68845,59546,28345,712571
屋内線工事224,378189,913414,291199,232215,059
空調管工事77,673128,036205,710105,78299,927
302,740363,544666,285350,727315,557
当事業年度
(自 2019年4月1日
至 2020年3月31日)
配電線工事57145,40545,97644,9731,003
屋内線工事215,059313,350528,409206,979321,429
空調管工事99,927102,520202,448108,58693,861
315,557461,276776,834360,540416,294

(注) 1 前事業年度以前に受注した工事で、契約の変更により請負金額の増減がある場合は、当期受注工事高にその増減額を含む。したがって、当期完成工事高にもかかる増減額が含まれる。
2 次期繰越工事高は(前期繰越工事高+当期受注工事高-当期完成工事高)である。
〇 受注工事高の受注方法別比率
工事の受注方法は、特命と競争並びに九州電力㈱との委託契約によるものに大別される。
期別区分特命(%)競争(%)委託契約(%)計(%)
前事業年度
(自 2018年4月1日
至 2019年3月31日)
配電線工事3.44.692.0100
屋内線工事74.825.2100
空調管工事59.940.1100
当事業年度
(自 2019年4月1日
至 2020年3月31日)
配電線工事5.64.390.1100
屋内線工事88.911.1100
空調管工事61.338.7100

(注) 百分比は請負金額比である。
〇 完成工事高
期別区分官公庁
(百万円)
民間(百万円)合計
(百万円)
九州電力㈱一般民間会社
前事業年度
(自 2018年4月1日
至 2019年3月31日)
配電線工事144,80390745,71045,712
屋内線工事17,3991,249180,584181,833199,232
空調管工事7,2661,06797,44898,516105,782
24,66747,120278,940326,060350,727
当事業年度
(自 2019年4月1日
至 2020年3月31日)
配電線工事4243,4841,44744,93144,973
屋内線工事12,8421,495192,642194,137206,979
空調管工事5,619901102,065102,966108,586
18,50445,880296,155342,036360,540


(注) 1 完成工事のうち主なものは、次のとおりである。
前事業年度 請負金額 10億円以上の主なもの
合同会社ソーラーパーク高岡宮崎市高岡町花見太陽光発電所建設工事
KPJU東広島合同会社広島県東広島市志和町志和東太陽光発電所建設工事
Kクリーンエナジー奈良・ツー㈱(仮称)天理市ソーラーパーク2号発電所建設工事
㈱大林組(仮称)西武鉄道池袋ビル新築工事
大村市ボートレース大村ナイター設備設置工事

当事業年度 請負金額 10億円以上の主なもの
清水建設㈱福岡空港国内線旅客ターミナルビル再整備工事
合同会社ソーラーファーム南さつまソーラーファーム南さつま発電所建設工事
大成建設㈱熊本都市計画桜町地区第一種市街地再開発事業(東工区)
㈱大林組宮崎キヤノン移転新築工事
大成建設㈱国立競技場 電気設備工事

2 完成工事高総額に対する割合が100分の10以上の相手先別の完成工事高及びその割合は、次のとおりである。
前事業年度
九州電力㈱47,120百万円13.4%
当事業年度
九州電力㈱45,880百万円12.7%

〇 次期繰越工事高(2020年3月31日現在)
区分官公庁
(百万円)
民間(百万円)合計
(百万円)
九州電力㈱一般民間会社
配電線工事3666361,0031,003
屋内線工事8,199289312,940313,230321,429
空調管工事1,80011991,94192,06093,861
9,999775405,519406,294416,294

次期繰越工事のうち請負金額 10億円以上の主なものは、次のとおりである。
宇久島みらいエネルギー
合同会社
宇久島メガソーラーパーク発電所建設工事2023年6月完成予定
合同会社宮リバー度会
ソーラーパーク
宮リバー度会ソーラーパーク太陽光発電所建設工事2023年4月完成予定
串間ウインドヒル㈱串間風力発電所建設工事2020年9月完成予定
七尾メガソーラー合同会社石川県七尾メガソーラー発電所建設工事2023年3月完成予定
清水建設㈱(仮称)旧大名小学校跡地活用事業2022年12月完成予定


③ キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
営業活動によるキャッシュ・フローについて
当連結会計年度における営業キャッシュ・フローは、38,222百万円となり、前連結会計年度に比べ12,168百万円の増加となった。売上高の増加及び施工案件の大型化に伴い、営業債権は増加する傾向にあるが、日頃よりこまめな出来高請求を行うことでその削減に努め、毎月末長期未収金の確認を行うなど貸倒れリスクの低減に努めている。また、全社で集金に取り組む集金強調期間を年2回設けるなど、キャッシュ・フロー経営の浸透を図っている。
投資活動によるキャッシュ・フローについて
当社グループは、中期経営計画の経営指標としてROICを採用し、加重平均資本コストを意識した投資を行っている。当連結会計年度における設備投資等の概要については「第3 設備の状況 1 設備投資等の概要」に、設備の新設、除却等の計画については「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画」に記載している。なお、設備工事業に係る通常の維持更新投資については、年間50億円程度を想定している。
また、再生可能エネルギー発電事業を行うSPCへの出資を行っている。
財務活動によるキャッシュ・フローについて
足もとでは、宇久島メガソーラーの工事進捗に伴う先行投資や新型コロナウイルスの蔓延に伴う不確実性の増大に備える目的から、これまで300億円程度と想定していた運転資金の積み増しも検討している。調達コストを勘案しながら、機動的に資金使途のリスクに応じた資金調達を遂行していく。
業容拡大やリスク対応のために悪化する棚卸資産や運転資金の回転率に対しては、営業債権の回収率改善や事業外資産の見直しを行うことで対処し、営業活動及び投資活動のキャッシュ・フローを通じたROICの改善を図っていく。
④ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている企業会計の基準に準拠して作成している。この連結財務諸表作成に際し、当社グループ経営陣は、決算日における資産・負債の数値及び報告期間における収益・費用の報告数値に影響を与える様々な要因・仮定に対し、継続して可能な限り正確な見積りと適正な評価を行っている。
なお、見積り、判断及び評価は、過去の実績や状況に応じて合理的と考えられる要因等に基づき行っているが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果は異なる可能性がある。
当社グループの会計方針については、「第5経理の状況 1連結財務諸表等 注記事項 4 会計方針に関する事項」に記載している。個別の取引や経済事象に会計方針を適用するにあたり、現在及び将来の財政状態及び経営成績に大きな影響を与えると想定される事項は以下のとおりである。
宇久島メガソーラー建設工事に係る収益及び費用の計上基準について
宇久島メガソーラーの工事売上高及び利益については、最新かつ適切な工事原価総額の見積りと契約書に基づいた工事収益総額を根拠に工事進行基準を適用している。ただし、2 事業等のリスクに記載のとおり、コストの上昇や予期しない工事進捗の遅れにより工事原価総額の見積りが増加した場合において、不可抗力条項や保険の付保にもかかわらずその影響を工事収益総額に十分に反映できないときは、採算性が低下するリスクがある。なお、2020年3月期の業績にあたえている当案件の工事売上高及び利益の影響は僅少である。