有価証券報告書-第93期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)
(1) 経営成績
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりである。
① 経営成績の概況
当連結会計年度は、新型コロナウイルス感染症のまん延という未曽有の事態に直面し、経営環境に大きな変化が生じた一年であった。
当社グループにおいても、受注・施工の両面において影響を受けた。受注面では、春先の緊急事態宣言の発出を受けお客様への訪問が憚られる状況となり、第1四半期において中小型案件が減少した。また、旅客・宿泊などのサービス業や製造業のお客様を中心に、設備投資の先送りや見直しが発生し、大型案件の発注も減少した。これら需要の減少を受け、価格競争が激しさを増している。施工面においては、感染症の拡大防止を念頭に置いた、新たな働き方・施工管理が求められた。特に一部の大型再生可能エネルギー工事では、着工や進捗が遅れ、売上高が伸び悩んだ。設備工事業以外の事業では、グループ子会社が運営するホテルや商業施設において、大きな需要の減退を受けた。
このような経営環境のもと当社グループは、中期経営計画(2020年度~2024年度:5カ年計画)の初年度である2020年度のテーマを「検証と反省、そして再構築」と定め、計画に掲げる「施工戦力改革」、「生産性改革」、「ガバナンス改革」の3つの改革すべてに共通する「人財育成強化」、また前中期経営計画からの課題として残る「利益率改善」と「受注拡大」、更には過去に発生した「重大不祥事への対策の徹底」などについて、まずは過去の取り組みを徹底的に検証・反省し、新たな計画の完遂に向けた取り組みの土台づくり(戦略・具体策の再構築)に全力を傾注した。
このような事業運営の結果、当連結会計年度の業績は、以下のとおりとなった。
[連結業績]
事業の種類別セグメントの業績は、次のとおりである。
(設備工事業)
工事受注高は、前連結会計年度に計上した超大型再生可能エネルギー工事案件の反動減に加え、複数の案件の発注先送りに伴い、前連結会計年度と比べ181,866百万円減少(35.9%減)し、325,158百万円となった。
売上高は、前連結会計年度は、竣工を控えた大型案件の進捗が高水準であったため、その反動減が生じたことや、当連結会計年度において、一部の大型再生可能エネルギー工事案件の着工や進捗が遅れたことなどにより、前連結会計年度と比べ30,175百万円減少(7.4%減)し、377,331百万円となった。
また、セグメント利益(営業利益)については、売上高の減少に伴い、前連結会計年度と比べ3,284百万円減少(9.7%減)し、30,485百万円となった。
(その他)
売上高は、工事に関連する材料及び機器の販売事業や施設運営事業が減少したことなどから、前連結会計年度と比べ6,861百万円減少(32.0%減)し、14,570百万円となった。
また、セグメント利益(営業利益)については、発電事業の減価償却費の減少に伴い、前連結会計年度と比べ293百万円増加(14.1%増)し、2,371百万円となった。
② 財政状態の概況
[連結財政状態]
流動資産は、売掛債権の減少などにより、前連結会計年度末と比べ3,695百万円減少し、212,574百万円となった。
固定資産は、投資有価証券の増加などにより、前連結会計年度末と比べ1,745百万円増加し、153,957百万円となった。
これらの結果、資産合計は前連結会計年度末と比べ1,950百万円減少し、366,532百万円となった。
流動負債は、支払債務の減少などにより、前連結会計年度末と比べ17,361百万円減少し、125,361百万円となった。
固定負債は、退職給付に係る負債の減少などにより、前連結会計年度末と比べ8,887百万円減少し、19,429百万円となった。
これらの結果、負債合計は、前連結会計年度末と比べ26,249百万円減少し、144,790百万円となった。
純資産合計は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上などにより、前連結会計年度末と比べ24,298百万円増加し、221,741百万円となった。
[キャッシュ・フローの状況]
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ、5,164百万円減少し、49,800百万円となった。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果増加した資金は、9,184百万円(前連結会計年度比29,038百万円の収入額の減少)となった。これは、主にたな卸資産の増加や仕入債務の決済に比べ、税金等調整前当期純利益の計上及び売上債権の回収が上回ったことによるものである。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果支出した資金は、4,232百万円(前連結会計年度比7,903百万円の支出額の減少)となった。これは、主に投資有価証券の取得及び有形固定資産の取得によるものである。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果支出した資金は、10,064百万円(前連結会計年度比1,185百万円の支出額の減少)となった。これは、主に配当金の支払によるものである。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりである。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものである。
① 当連結会計年度の財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
[中期経営計画初年度の総括]
当連結会計年度における「3つの改革」と「前中期経営計画からの継続取り組み課題」に対する具体的実施事項と評価は次のとおりである。
まず、「施工戦力改革」だが、要である人財の確保については概ね順調に推移している。若年者を中心とした人財の育成については、指導者であるエルダーに対する教育を含めた職場全体でのOJTを強化してきたが、今後、デジタル教育支援ツールを導入するなど、さらなる教育体制の構築を進める必要がある。
「生産性改革」では、10月に新設したDX推進部を中心に、業務の合理化・省力化を進める上での課題を複数抽出し、その解決に向けタスクフォースチームを組成したうえで、それぞれ具体的なプロジェクトを立ち上げ、課題解決の完遂に向け着実に取り組んでいる。
「ガバナンス改革」については、不正行為撲滅に向けた再発防止策を継続的に実施している。組織・体制強化を目指し、2021年4月に「経営管理部」を新設した。
「継続取り組み課題」である「利益率向上施策の深化」として、フロントローディングをはじめとした利益率改善対策の徹底に取り組んだ。これにより、利益率は改善途上にある。一方で、「国内設備工事業の受注基盤強化・拡充」に関しては、新型コロナウイルス感染症の影響もあり、大きな課題を残した。特に、地域密着営業を中心とした中小型案件の受注が減少傾向であることは、当社グループの経営基盤を揺るがしかねない憂慮すべき事態であると認識しており、受注に取り組む意識や手法の再構築など徹底的な対策を実施している。

[当連結会計年度の分析]
当連結会計年度の営業利益は、前連結会計年度に比べ約30億円減少した。
この要因は、設備工事業の売上高の減少に伴う減益と売上高総利益率の改善にともなう増益に集約される。
設備工事業の売上高が減少した理由は、前連結会計年度の売上高が、竣工を控えた大型案件の進捗に伴い高水準であったためその反動減が生じたこと、次に、当連結会計年度において、新型コロナウイルス感染症の拡大予防を念頭に、一部の大型再生可能エネルギー工事の現場で入場を差し控えたため着工や進捗が遅延したこと、また、緊急事態宣言の発出に伴い中小型案件の営業活動が停滞したことなどが挙げられる。
売上高総利益率の改善については、前連結会計年度の工程逼迫により採算性が悪化した一部の大型案件の引渡しに伴う利益率の低下があったものの、それら案件の引き渡しを上半期に終えたため、継続的に取り組みを続けている利益改善対策も相まって、下半期以降、利益率が改善傾向にあることが主な理由である。

② 生産、受注及び販売の実績
(a) 受注実績
(b) 売上実績
総売上実績に対する割合が100分の10以上の相手先別の売上実績及びその割合は、次のとおりである。
(c) 次期繰越高
(注) 1 セグメント間の取引については相殺消去している。
2 当社グループでは設備工事業以外は受注生産を行っていない。
3 当社グループでは生産実績を定義することが困難であるため「生産の状況」は記載していない。
4 本表の金額には、消費税等は含まれていない。
なお、参考のため提出会社個別の事業の状況は次のとおりである。
設備工事業における受注工事高及び完成工事高の状況
〇 受注工事高、完成工事高及び次期繰越工事高
(注) 1 前事業年度以前に受注した工事で、契約の変更により請負金額の増減がある場合は、当期受注工事高にその増減額を含む。
2 次期繰越工事高は(前期繰越工事高+当期受注工事高-当期完成工事高)である。
〇 受注工事高の受注方法別比率
工事の受注方法は、特命と競争並びに九州電力送配電㈱との委託契約によるものに大別される。
(注) 百分比は請負金額比である。
〇 完成工事高
(注) 1 九州電力グループとは、九州電力㈱及び九州電力送配電㈱のことである。
2 完成工事のうち主なものは、次のとおりである。
前事業年度 請負金額 10億円以上の主なもの
当事業年度 請負金額 10億円以上の主なもの
3 完成工事高総額に対する割合が100分の10以上の相手先別の完成工事高及びその割合は、次のとおりである。
〇 次期繰越工事高(2021年3月31日現在)
次期繰越工事のうち請負金額 10億円以上の主なものは、次のとおりである。
③ キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
営業活動によるキャッシュ・フローについて
当連結会計年度における営業キャッシュ・フローは、9,184百万円となり、前連結会計年度に比べ、29,038百万円の収入額の減少となった。売上高の増加および施工案件の大型化に伴い、運転資本は増加する傾向にあるが、日頃よりこまめな出来高請求を行うことでその削減に努め、毎月末長期未収金の確認を行うなど貸倒れリスクの低減に努めている。また、全社で集金に取り組む集金強調期間を年2回設けるなど、キャッシュ・フロー経営の浸透を図っている。
投資活動によるキャッシュ・フローについて
当社グループは、中期経営計画の経営指標としてROICを採用し、加重平均資本コストを意識した投資を行っている。当連結会計年度における設備投資等の概要については「第3 設備の状況 1 設備投資等の概要」に、設備の新設、除却等の計画については「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画」に記載している。なお、設備工事業に係る通常の維持更新投資については、年間50億円程度を想定している。
また、再生可能エネルギー発電事業を行うSPCへの出資を行っている。
財務活動によるキャッシュ・フローについて
設備工事業に関する運転資金は従来300億円程度を想定していたが、新型コロナウイルス感染症のまん延など不確実性の増大に備えるため、足元では厚めの手元流動性を確保している。加えて、再生可能エネルギーや脱炭素などESGへの取り組みをはじめとした投融資を主な使途とした社債発行登録を行っている。今後も、調達コストを勘案しながら、機動的に資金使途に応じた資金調達を遂行していく。
業容拡大やリスク対応に伴う棚卸資産や運転資金の回転率の低下に対しては、営業債権の回収率改善や事業外資産の見直しを行うことで対処し、営業活動および投資活動のキャッシュ・フローを通じたROICの改善を図っていく。
④ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている企業会計の基準に準拠して作成している。この連結財務諸表作成に際し、当社グループ経営陣は、決算日における資産・負債の数値及び報告期間における収益・費用の報告数値に影響を与える様々な要因・仮定に対し、継続して可能な限り正確な見積りと適正な評価を行っている。
なお、見積り、判断及び評価は、過去の実績や状況に応じて合理的と考えられる要因等に基づき行っているが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果は異なる可能性がある。
当社グループの会計方針については、「第5経理の状況 1連結財務諸表等 注記事項 4 会計方針に関する事項」に記載している。個別の取引や経済事象に会計方針を適用するに当たり、現在及び将来の財政状態及び経営成績に大きな影響を与えると想定される事項は以下のとおりである。
宇久島メガソーラー建設工事に係る収益及び費用の計上基準について
宇久島メガソーラーの工事売上高及び利益については、最新かつ適切な工事原価総額の見積りと契約書に基づいた工事収益総額を根拠に工事進行基準を適用している。ただし、「2 事業等のリスク」に記載のとおり、コストの上昇や予期しない工事進捗の遅れにより工事原価総額の見積りが増加した場合において、不可抗力条項や保険の付保にもかかわらずその影響を工事収益総額に十分に反映できないときは、採算性が低下するリスクがある。
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりである。
① 経営成績の概況
当連結会計年度は、新型コロナウイルス感染症のまん延という未曽有の事態に直面し、経営環境に大きな変化が生じた一年であった。
当社グループにおいても、受注・施工の両面において影響を受けた。受注面では、春先の緊急事態宣言の発出を受けお客様への訪問が憚られる状況となり、第1四半期において中小型案件が減少した。また、旅客・宿泊などのサービス業や製造業のお客様を中心に、設備投資の先送りや見直しが発生し、大型案件の発注も減少した。これら需要の減少を受け、価格競争が激しさを増している。施工面においては、感染症の拡大防止を念頭に置いた、新たな働き方・施工管理が求められた。特に一部の大型再生可能エネルギー工事では、着工や進捗が遅れ、売上高が伸び悩んだ。設備工事業以外の事業では、グループ子会社が運営するホテルや商業施設において、大きな需要の減退を受けた。
このような経営環境のもと当社グループは、中期経営計画(2020年度~2024年度:5カ年計画)の初年度である2020年度のテーマを「検証と反省、そして再構築」と定め、計画に掲げる「施工戦力改革」、「生産性改革」、「ガバナンス改革」の3つの改革すべてに共通する「人財育成強化」、また前中期経営計画からの課題として残る「利益率改善」と「受注拡大」、更には過去に発生した「重大不祥事への対策の徹底」などについて、まずは過去の取り組みを徹底的に検証・反省し、新たな計画の完遂に向けた取り組みの土台づくり(戦略・具体策の再構築)に全力を傾注した。
このような事業運営の結果、当連結会計年度の業績は、以下のとおりとなった。
[連結業績]
工事受注高 | 325,158百万円(前年同期比 35.9%減) |
売 上 高 | 391,901百万円(前年同期比 8.6%減) |
営業利益 | 32,998百万円(前年同期比 8.4%減) |
経常利益 | 35,906百万円(前年同期比 7.1%減) |
親会社株主に帰属 する当期純利益 | 25,042百万円(前年同期比 4.6%減) |
事業の種類別セグメントの業績は、次のとおりである。
(設備工事業)
工事受注高は、前連結会計年度に計上した超大型再生可能エネルギー工事案件の反動減に加え、複数の案件の発注先送りに伴い、前連結会計年度と比べ181,866百万円減少(35.9%減)し、325,158百万円となった。
売上高は、前連結会計年度は、竣工を控えた大型案件の進捗が高水準であったため、その反動減が生じたことや、当連結会計年度において、一部の大型再生可能エネルギー工事案件の着工や進捗が遅れたことなどにより、前連結会計年度と比べ30,175百万円減少(7.4%減)し、377,331百万円となった。
また、セグメント利益(営業利益)については、売上高の減少に伴い、前連結会計年度と比べ3,284百万円減少(9.7%減)し、30,485百万円となった。
(その他)
売上高は、工事に関連する材料及び機器の販売事業や施設運営事業が減少したことなどから、前連結会計年度と比べ6,861百万円減少(32.0%減)し、14,570百万円となった。
また、セグメント利益(営業利益)については、発電事業の減価償却費の減少に伴い、前連結会計年度と比べ293百万円増加(14.1%増)し、2,371百万円となった。
② 財政状態の概況
[連結財政状態]
流動資産は、売掛債権の減少などにより、前連結会計年度末と比べ3,695百万円減少し、212,574百万円となった。
固定資産は、投資有価証券の増加などにより、前連結会計年度末と比べ1,745百万円増加し、153,957百万円となった。
これらの結果、資産合計は前連結会計年度末と比べ1,950百万円減少し、366,532百万円となった。
流動負債は、支払債務の減少などにより、前連結会計年度末と比べ17,361百万円減少し、125,361百万円となった。
固定負債は、退職給付に係る負債の減少などにより、前連結会計年度末と比べ8,887百万円減少し、19,429百万円となった。
これらの結果、負債合計は、前連結会計年度末と比べ26,249百万円減少し、144,790百万円となった。
純資産合計は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上などにより、前連結会計年度末と比べ24,298百万円増加し、221,741百万円となった。
[キャッシュ・フローの状況]
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ、5,164百万円減少し、49,800百万円となった。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果増加した資金は、9,184百万円(前連結会計年度比29,038百万円の収入額の減少)となった。これは、主にたな卸資産の増加や仕入債務の決済に比べ、税金等調整前当期純利益の計上及び売上債権の回収が上回ったことによるものである。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果支出した資金は、4,232百万円(前連結会計年度比7,903百万円の支出額の減少)となった。これは、主に投資有価証券の取得及び有形固定資産の取得によるものである。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果支出した資金は、10,064百万円(前連結会計年度比1,185百万円の支出額の減少)となった。これは、主に配当金の支払によるものである。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりである。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものである。
① 当連結会計年度の財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
[中期経営計画初年度の総括]
当連結会計年度における「3つの改革」と「前中期経営計画からの継続取り組み課題」に対する具体的実施事項と評価は次のとおりである。
まず、「施工戦力改革」だが、要である人財の確保については概ね順調に推移している。若年者を中心とした人財の育成については、指導者であるエルダーに対する教育を含めた職場全体でのOJTを強化してきたが、今後、デジタル教育支援ツールを導入するなど、さらなる教育体制の構築を進める必要がある。
「生産性改革」では、10月に新設したDX推進部を中心に、業務の合理化・省力化を進める上での課題を複数抽出し、その解決に向けタスクフォースチームを組成したうえで、それぞれ具体的なプロジェクトを立ち上げ、課題解決の完遂に向け着実に取り組んでいる。
「ガバナンス改革」については、不正行為撲滅に向けた再発防止策を継続的に実施している。組織・体制強化を目指し、2021年4月に「経営管理部」を新設した。
「継続取り組み課題」である「利益率向上施策の深化」として、フロントローディングをはじめとした利益率改善対策の徹底に取り組んだ。これにより、利益率は改善途上にある。一方で、「国内設備工事業の受注基盤強化・拡充」に関しては、新型コロナウイルス感染症の影響もあり、大きな課題を残した。特に、地域密着営業を中心とした中小型案件の受注が減少傾向であることは、当社グループの経営基盤を揺るがしかねない憂慮すべき事態であると認識しており、受注に取り組む意識や手法の再構築など徹底的な対策を実施している。

[当連結会計年度の分析]
当連結会計年度の営業利益は、前連結会計年度に比べ約30億円減少した。
この要因は、設備工事業の売上高の減少に伴う減益と売上高総利益率の改善にともなう増益に集約される。
設備工事業の売上高が減少した理由は、前連結会計年度の売上高が、竣工を控えた大型案件の進捗に伴い高水準であったためその反動減が生じたこと、次に、当連結会計年度において、新型コロナウイルス感染症の拡大予防を念頭に、一部の大型再生可能エネルギー工事の現場で入場を差し控えたため着工や進捗が遅延したこと、また、緊急事態宣言の発出に伴い中小型案件の営業活動が停滞したことなどが挙げられる。
売上高総利益率の改善については、前連結会計年度の工程逼迫により採算性が悪化した一部の大型案件の引渡しに伴う利益率の低下があったものの、それら案件の引き渡しを上半期に終えたため、継続的に取り組みを続けている利益改善対策も相まって、下半期以降、利益率が改善傾向にあることが主な理由である。

② 生産、受注及び販売の実績
(a) 受注実績
セグメントの名称 | 前連結会計年度 (自 2019年4月1日 至 2020年3月31日) | 当連結会計年度 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) | ||
金額(百万円) | 金額(百万円) | |||
設備工事業 | 507,025 | 325,158 | (35.9%減) | |
その他 | ― | ─ | (─) | |
合計 | 507,025 | 325,158 | (35.9%減) |
(b) 売上実績
セグメントの名称 | 前連結会計年度 (自 2019年4月1日 至 2020年3月31日) | 当連結会計年度 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) | ||
金額(百万円) | 金額(百万円) | |||
設備工事業 | 407,506 | 377,331 | (7.4%減) | |
その他 | 21,432 | 14,570 | (32.0%減) | |
合計 | 428,939 | 391,901 | (8.6%減) |
総売上実績に対する割合が100分の10以上の相手先別の売上実績及びその割合は、次のとおりである。
相手先 | 前連結会計年度 (自 2019年4月1日 至 2020年3月31日) | 当連結会計年度 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) | ||
金額(百万円) | 割合(%) | 金額(百万円) | 割合(%) | |
九州電力㈱ | 51,749 | 12.1 | 4,146 | 1.1 |
九州電力送配電㈱ | ― | ― | 45,688 | 11.7 |
(c) 次期繰越高
セグメントの名称 | 前連結会計年度 (2020年3月31日) | 当連結会計年度 (2021年3月31日) | ||
金額(百万円) | 金額(百万円) | |||
設備工事業 | 448,462 | 396,289 | (11.6%減) | |
その他 | ― | ─ | (─) | |
合計 | 448,462 | 396,289 | (11.6%減) |
(注) 1 セグメント間の取引については相殺消去している。
2 当社グループでは設備工事業以外は受注生産を行っていない。
3 当社グループでは生産実績を定義することが困難であるため「生産の状況」は記載していない。
4 本表の金額には、消費税等は含まれていない。
なお、参考のため提出会社個別の事業の状況は次のとおりである。
設備工事業における受注工事高及び完成工事高の状況
〇 受注工事高、完成工事高及び次期繰越工事高
期別 | 工事 種別 | 前期繰越 工事高 (百万円) | 当期受注 工事高 (百万円) | 計 (百万円) | 当期完成 工事高 (百万円) | 次期繰越 工事高 (百万円) |
前事業年度 (自 2019年4月1日 至 2020年3月31日) | 配電線工事 | 571 | 45,405 | 45,976 | 44,973 | 1,003 |
屋内線工事 | 215,059 | 313,350 | 528,409 | 206,979 | 321,429 | |
空調管工事 | 99,927 | 102,520 | 202,448 | 108,586 | 93,861 | |
計 | 315,557 | 461,276 | 776,834 | 360,540 | 416,294 | |
当事業年度 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) | 配電線工事 | 1,003 | 42,919 | 43,922 | 43,446 | 476 |
屋内線工事 | 321,429 | 143,071 | 464,501 | 190,794 | 273,706 | |
空調管工事 | 93,861 | 94,726 | 188,587 | 98,639 | 89,947 | |
計 | 416,294 | 280,717 | 697,011 | 332,880 | 364,131 |
(注) 1 前事業年度以前に受注した工事で、契約の変更により請負金額の増減がある場合は、当期受注工事高にその増減額を含む。
2 次期繰越工事高は(前期繰越工事高+当期受注工事高-当期完成工事高)である。
〇 受注工事高の受注方法別比率
工事の受注方法は、特命と競争並びに九州電力送配電㈱との委託契約によるものに大別される。
期別 | 区分 | 特命(%) | 競争(%) | 委託契約(%) | 計(%) |
前事業年度 (自 2019年4月1日 至 2020年3月31日) | 配電線工事 | 5.6 | 4.3 | 90.1 | 100 |
屋内線工事 | 88.9 | 11.1 | ― | 100 | |
空調管工事 | 61.3 | 38.7 | ― | 100 | |
当事業年度 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) | 配電線工事 | 2.9 | 4.6 | 92.5 | 100 |
屋内線工事 | 69.1 | 30.9 | ─ | 100 | |
空調管工事 | 58.4 | 41.6 | ─ | 100 |
(注) 百分比は請負金額比である。
〇 完成工事高
期別 | 区分 | 官公庁 (百万円) | 民間(百万円) | 合計 (百万円) | ||
九州電力 グループ | 一般民間会社 | 計 | ||||
前事業年度 (自 2019年4月1日 至 2020年3月31日) | 配電線工事 | 42 | 43,484 | 1,447 | 44,931 | 44,973 |
屋内線工事 | 12,842 | 1,495 | 192,642 | 194,137 | 206,979 | |
空調管工事 | 5,619 | 901 | 102,065 | 102,966 | 108,586 | |
計 | 18,504 | 45,880 | 296,155 | 342,036 | 360,540 | |
当事業年度 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) | 配電線工事 | 4 | 42,140 | 1,301 | 43,441 | 43,446 |
屋内線工事 | 13,541 | 959 | 176,294 | 177,253 | 190,794 | |
空調管工事 | 3,711 | 700 | 94,228 | 94,928 | 98,639 | |
計 | 17,256 | 43,799 | 271,823 | 315,623 | 332,880 |
(注) 1 九州電力グループとは、九州電力㈱及び九州電力送配電㈱のことである。
2 完成工事のうち主なものは、次のとおりである。
前事業年度 請負金額 10億円以上の主なもの
清水建設㈱ | 福岡空港国内線旅客ターミナルビル再整備工事 |
合同会社ソーラーファーム南さつま | ソーラーファーム南さつま発電所建設工事 |
大成建設㈱ | 熊本都市計画桜町地区第一種市街地再開発事業(東工区) |
㈱大林組 | 宮崎キヤノン移転新築工事 |
大成建設㈱ | 国立競技場 電気設備工事 |
当事業年度 請負金額 10億円以上の主なもの
串間ウインドヒル㈱ | 串間風力発電所建設工事 |
東京センチュリー㈱ | 大分・日出第一及び第二メガソーラー発電所建設工事 |
㈱フジタ | (仮称)江東区潮見二丁目ホテル開発計画 |
田川太陽光発電合同会社 | 田川郡川崎町太陽光発電所建設工事 |
㈱大林組 | 新砂プラザリニューアルプロジェクト |
3 完成工事高総額に対する割合が100分の10以上の相手先別の完成工事高及びその割合は、次のとおりである。
前事業年度 | ||
九州電力㈱ | 45,880百万円 | 12.7% |
当事業年度 | ||
九州電力送配電㈱ | 41,957百万円 | 12.6% |
〇 次期繰越工事高(2021年3月31日現在)
区分 | 官公庁 (百万円) | 民間(百万円) | 合計 (百万円) | ||
九州電力グループ | 一般民間会社 | 計 | |||
配電線工事 | ─ | 452 | 23 | 476 | 476 |
屋内線工事 | 12,348 | 174 | 261,183 | 261,358 | 273,706 |
空調管工事 | 4,274 | 139 | 85,534 | 85,673 | 89,947 |
計 | 16,622 | 766 | 346,741 | 347,508 | 364,131 |
次期繰越工事のうち請負金額 10億円以上の主なものは、次のとおりである。
宇久島みらいエネルギー 合同会社 | 宇久島メガソーラーパーク発電所建設工事 | 2023年6月完成予定 |
七尾メガソーラー合同会社 | 石川県七尾メガソーラー発電所建設工事 | 2023年3月完成予定 |
英田光メガソーラー発電 合同会社 | 英田光太陽光発電所建設工事 | 2021年6月完成予定 |
清水建設㈱ | (仮称)旧大名小学校跡地活用事業 | 2022年12月完成予定 |
フジタ・國場組 建設共同企業体 | (仮称)名城ビーチホテル新築工事 | 2022年5月完成予定 |
③ キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
営業活動によるキャッシュ・フローについて
当連結会計年度における営業キャッシュ・フローは、9,184百万円となり、前連結会計年度に比べ、29,038百万円の収入額の減少となった。売上高の増加および施工案件の大型化に伴い、運転資本は増加する傾向にあるが、日頃よりこまめな出来高請求を行うことでその削減に努め、毎月末長期未収金の確認を行うなど貸倒れリスクの低減に努めている。また、全社で集金に取り組む集金強調期間を年2回設けるなど、キャッシュ・フロー経営の浸透を図っている。
投資活動によるキャッシュ・フローについて
当社グループは、中期経営計画の経営指標としてROICを採用し、加重平均資本コストを意識した投資を行っている。当連結会計年度における設備投資等の概要については「第3 設備の状況 1 設備投資等の概要」に、設備の新設、除却等の計画については「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画」に記載している。なお、設備工事業に係る通常の維持更新投資については、年間50億円程度を想定している。
また、再生可能エネルギー発電事業を行うSPCへの出資を行っている。
財務活動によるキャッシュ・フローについて
設備工事業に関する運転資金は従来300億円程度を想定していたが、新型コロナウイルス感染症のまん延など不確実性の増大に備えるため、足元では厚めの手元流動性を確保している。加えて、再生可能エネルギーや脱炭素などESGへの取り組みをはじめとした投融資を主な使途とした社債発行登録を行っている。今後も、調達コストを勘案しながら、機動的に資金使途に応じた資金調達を遂行していく。
業容拡大やリスク対応に伴う棚卸資産や運転資金の回転率の低下に対しては、営業債権の回収率改善や事業外資産の見直しを行うことで対処し、営業活動および投資活動のキャッシュ・フローを通じたROICの改善を図っていく。
④ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている企業会計の基準に準拠して作成している。この連結財務諸表作成に際し、当社グループ経営陣は、決算日における資産・負債の数値及び報告期間における収益・費用の報告数値に影響を与える様々な要因・仮定に対し、継続して可能な限り正確な見積りと適正な評価を行っている。
なお、見積り、判断及び評価は、過去の実績や状況に応じて合理的と考えられる要因等に基づき行っているが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果は異なる可能性がある。
当社グループの会計方針については、「第5経理の状況 1連結財務諸表等 注記事項 4 会計方針に関する事項」に記載している。個別の取引や経済事象に会計方針を適用するに当たり、現在及び将来の財政状態及び経営成績に大きな影響を与えると想定される事項は以下のとおりである。
宇久島メガソーラー建設工事に係る収益及び費用の計上基準について
宇久島メガソーラーの工事売上高及び利益については、最新かつ適切な工事原価総額の見積りと契約書に基づいた工事収益総額を根拠に工事進行基準を適用している。ただし、「2 事業等のリスク」に記載のとおり、コストの上昇や予期しない工事進捗の遅れにより工事原価総額の見積りが増加した場合において、不可抗力条項や保険の付保にもかかわらずその影響を工事収益総額に十分に反映できないときは、採算性が低下するリスクがある。