有価証券報告書-第86期(平成29年4月1日-平成30年3月31日)

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2018/06/21 15:14
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(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態および経営成績の状況
当連結会計年度(2017年4月1日~2018年3月31日、以下、当期)のわが国経済は、設備投資が緩やかに増加し、企業収益や雇用環境の改善が見られるなかで、各種政策の効果もあり、緩やかな回復基調が続きました。
このような経済環境下、当社の事業領域であるICT(※1)市場におきましては、分野ごとに強弱が見られました。
企業におきましては、投資効果に対する経営者意識の厳しさは継続しておりますが、働き方改革などの企業の経営強化・競争力強化を目指した投資が堅調に推移いたしました。通信事業者におきましては、ネットワークインフラへの設備投資抑制が底打ちし、若干ながら回復が見られました。官庁・自治体、公益関連では、安心・安全に関する分野など都市基盤高度化に向けた投資は堅調に推移いたしましたが、一部で競争環境の厳しさが継続するなど、弱さも見られました。また、FIT法(※2)の改正に伴い太陽光発電所の建設需要が顕在化してきました。海外においては、アジア圏を中心として移動体通信をはじめとするインフラ構築の需要が顕在化しておりますが、一部地域においてはプロジェクトの先送りなど弱さが見られました。
こうした市場環境のなか、当社グループでは、働き方改革への高まりを受け、「EmpoweredOffice(※3)」をはじめとした働き方改革関連事業の取り組みやロボティクス、DX(※4)など新技術、新テーマへの取り組みを強化してきました。特に昨今ニーズが顕在化してきたテレワークについては、2015年から実施してきた社内実証実験の結果を受け、2017年7月から全社本格導入するとともに、拡販に向けた積極的なプロモーションを行ってきました。また、本社にあるショールーム機能を持つEmpoweredOffice Centerや営業・SEのオフィスを、国内外の最先端技術・サービスを取り入れてリニューアルするなど、お客様対応の強化を図りました。加えて、2018年1月にはCVC(※5)ファンドを設立し、ベンチャー企業とのオープンイノベーションによる新事業創出に関する取り組みを強化いたしました。海外向けには、国内通信事業者向けの豊富な実績で培ったノウハウや高い施工品質を海外通信事業者向けに展開するなど、事業の強化を図りました。加えて、前期に受注した大型の太陽光発電所建設プロジェクトについては、全社プロジェクトマネジメント体制の下、着実に建設を進めました。
これらの結果、当期における連結業績は、売上高 2,679億39百万円(前期比 3.9%増加)
営業利益 110億57百万円(前期比 10.9%増加)
経常利益 109億57百万円(前期比 9.8%増加)
親会社株主に帰属する当期純利益 73億57百万円(前期比 12.3%増加)
<参考>受注高 2,878億31百万円(前期比 3.1%増加)
となりました。
売上高は、2,679億39百万円と前期比3.9%の増加となりました。これは、キャリアネットワーク分野において通信事業者向けの売上高が増加したことに加え、前期に受注した大型の太陽光発電所建設プロジェクトが売上貢献したことや働き方改革関連分野をはじめとした中期事業戦略(2016年5月公表)における注力分野の売上高が増加したことによるものです。なお、受注高は、新たに大型の太陽光発電所建設プロジェクトを受注したことや、社会インフラ分野において、大型プロジェクトの獲得などから官公庁自治体向けが拡大したことにより、前期比3.1%増加の2,878億31百万円となりました。
収益面では、原価率の悪化や販売費及び一般管理費の増加により社会インフラ分野が悪化しましたが、企業ネットワーク、キャリアネットワーク分野が、売上ミックスの改善やコスト構造改革効果の継続などにより改善した結果、営業利益が前期比10.9%増加の110億57百万円、経常利益が前期比9.8%増加の109億57百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が前期比12.3%増加の73億57百万円と、それぞれ増益となりました。
セグメント情報につきましては以下のとおりであります。
企業ネットワーク事業
働き方改革へのICT投資は引き続き堅調に推移し、オフィス改革ソリューション「EmpoweredOffice」が伸長したことに加え、前期に受注した大型の太陽光発電所建設プロジェクトにおける電気設備領域が売上貢献したことにより、売上高は前期比3.3%増加の1,108億87百万円となりました。
キャリアネットワーク事業
通信事業者向け事業が拡大したことに加え、前期に受注した大型の太陽光発電所建設プロジェクトにおけるパネル工事領域が売上貢献したことにより、売上高は前期比5.4%増加の649億2百万円となりました。
社会インフラ事業
海外事業が減少しましたが、前期に受注した大型の太陽光発電所建設プロジェクトにおける土木造成領域が売上貢献したことにより、売上高は前期比3.4%増加の851億92百万円となりました。
<セグメントの概要>
セグメント主な事業内容
企業ネットワーク事業◇主に企業等のオフィス向けのICTソリューションに関するサービスインテ
グレーションの提供
◇ICTを核にセキュリティや環境等の対応まで含めた総合オフィスソリュー
ションや、これらに関する運用・監視サービスならびにデータセンター
やコンタクトセンターを活用したアウトソーシング・サービスの提供
キャリアネットワーク事業◇主に通信事業者向けのICT基盤(移動体基地局からコアネットワークま
で)におけるSIサービス・設置工事から運用・監視等の関連サービスに
至るサービスインテグレーションの提供や、キャリアグレードの大規模
かつ広域なICT基盤やデータセンターに関するSIサービスならびにこれら
に関する運用・監視サービスの提供
◇ネットワーク機器などの製造開発、販売およびシステムインテグレー
ションの提供
社会インフラ事業◇主に官庁・自治体や公益法人(放送事業者、電力事業者など)向けのICT
インフラに関するSIサービス・設置工事から運用・監視等の関連サービス
に至るサービスインテグレーションの提供
◇海外子会社における各種サービスの提供
その他◇主に情報通信機器等の仕入販売

②キャッシュ・フローの状況
当期末の現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前期末に比べ23億66百万円減少し、572億81百万円となりました。
各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は47億79百万円となりました。これは主に、売上債権の増加、たな卸資産の減少、仕入債務の増加、法人税等の支払などによるものであります。前期は、2016年5月を期限とした消防救急無線システムのデジタル化対応プロジェクトの収入が大きかったため、前期と比べると178億54百万円の資金の減少となっております。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は、28億2百万円となりました。これは主に、働き方改革や拡販に向けた投資(本社にあるショールーム機能を持つEmpoweredOffice Centerや営業・SEのオフィスのリニューアル)、基幹システム構築による設備投資を行った一方、社員寮の土地・建物を売却したことによるもので、前期と比べると1億4百万円の資金の減少となっております。
この結果、営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローを合算したフリー・キャッシュ・フローは、19億76百万円の資金の増加となりました。前期と比べると179億59百万円の資金の減少となっております。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は、43億66百万円となりました。これは主に、配当金の支払などによるもので、前期と比べると2億21百万円の資金の減少となっております。なお、利益配当金につきましては、前期末の1株当たり配当金を36円、中間の1株当たり配当金を37円にしたことにより、前期と比べると99百万円増加し、36億20百万円の支払となっております。
③生産、受注および販売の実績
a.受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称受注高(百万円)前期比(%)
企業ネットワーク事業125,8267.6
キャリアネットワーク事業68,543△0.2
社会インフラ事業87,0460.6
その他6,414△9.1
合計287,8313.1

(注) 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
b.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称販売高(百万円)前期比(%)
企業ネットワーク事業110,8873.3
キャリアネットワーク事業64,9025.4
社会インフラ事業85,1923.4
その他6,9575.4
合計267,9393.9

(注)1 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
2 主な相手先の販売実績および当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
相手先前連結会計年度当連結会計年度
販売高(百万円)割合(%)販売高(百万円)割合(%)
日本電気㈱71,42127.767,20325.1

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①重要な会計方針および見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。
連結財務諸表の作成に際し、決算日における資産・負債の数値ならびに報告期間における収益・費用の数値に影響を与える見積りを行っております。当社は、過去の実績や状況に応じ合理的だと考えられる様々な要因に基づき、見積りおよび判断を行っておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループは、特に以下の重要な会計方針が、当社の連結財務諸表の作成において使用される見積りに大きな影響を及ぼすと考えております。
a. 貸倒引当金
当社グループは、顧客の支払い不能時に発生する損失の見積額について、貸倒引当金を計上しております。顧客の財務状態が悪化し、その支払い能力が低下した場合、追加引当が必要となる可能性があります。
b. 繰延税金資産
当社グループは、繰延税金資産について、将来の課税所得および、実現可能性の高い継続的な税務計画を検討しますが、繰延税金資産の全部または一部を将来実現できないと判断した場合、当該判断を行った期間に繰延税金資産の調整額を費用として計上します。同様に、計上金額の純額を上回る繰延税金資産を今後実現できると判断した場合、繰延税金資産への調整により当該判断を行った期間に利益を増加させることになります。
c. 退職給付費用
退職給付費用および債務は、数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出されております。これらの前提条件には、割引率、将来の報奨水準、退職率、死亡率および年金資産の収益率などが含まれます。実際の結果が前提条件と異なる場合、または前提条件が変更された場合、その影響は累積され、将来にわたって規則的に認識されるため、一般的には将来期間において認識される費用に影響を及ぼします。未認識数理計算上の差異の償却は、退職給付費用の一部を構成しておりますが、前提条件の変化による影響や前提条件と実際との結果の違いの影響を規則的に費用認識したものであります。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容
a. 概要
当期のわが国経済は、設備投資が緩やかに増加し、企業収益や雇用環境の改善が見られるなかで、各種政策の効果もあり、緩やかな回復基調が続きました。
このような経済環境下、当社の事業領域であるICT市場におきましては、分野ごとに強弱が見られました。
企業におきましては、投資効果に対する経営者意識の厳しさは継続しておりますが、働き方改革などの企業の経営強化・競争力強化を目指した投資が堅調に推移いたしました。通信事業者におきましては、ネットワークインフラへの設備投資抑制が底打ちし、若干ながら回復が見られました。官庁・自治体、公益関連では、安心・安全に関する分野など都市基盤高度化に向けた投資は堅調に推移いたしましたが、一部で競争環境の厳しさが継続するなど、弱さも見られました。また、FIT法の改正に伴い太陽光発電所の建設需要が顕在化してきました。海外においては、アジア圏を中心として移動体通信をはじめとするインフラ構築の需要が顕在化しておりますが、一部地域においてはプロジェクトの先送りなど弱さが見られました。
こうした市場環境のなか、当社グループでは、働き方改革への高まりを受け、「EmpoweredOffice」をはじめとした働き方改革関連事業の取り組みやロボティクス、DXなど新技術、新テーマへの取り組みを強化してきました。特に昨今ニーズが顕在化してきたテレワークについては、2015年から実施してきた社内実証実験の結果を受け、2017年7月から全社本格導入するとともに、拡販に向けた積極的なプロモーションを行ってきました。また、本社にあるショールーム機能を持つEmpoweredOffice Centerや営業・SEのオフィスを、国内外の最先端技術・サービスを取り入れてリニューアルするなど、お客様対応の強化を図りました。加えて、2018年1月にはCVCファンドを設立し、ベンチャー企業とのオープンイノベーションによる新事業創出に関する取り組みを強化いたしました。海外向けには、国内通信事業者向けの豊富な実績で培ったノウハウや高い施工品質を海外通信事業者向けに展開するなど、事業の強化を図りました。加えて、前期に受注した大型の太陽光発電所建設プロジェクトについては、全社プロジェクトマネジメント体制の下、着実に建設を進めました。
b. 売上高
売上高は2,679億39百万円(前期比3.9%増加)となりました。
企業ネットワーク事業の売上高は、働き方改革へのICT投資は引き続き堅調に推移し、オフィス改革ソリューション「EmpoweredOffice」が伸長したことに加え、前期に受注した大型の太陽光発電所建設プロジェクトにおける電気設備領域が売上貢献したことにより、1,108億87百万円(前期比3.3%増加)となりました。
キャリアネットワーク事業の売上高は、通信事業者向け事業が拡大したことに加え、前期に受注した大型の太陽光発電所建設プロジェクトにおけるパネル工事領域が売上貢献したことにより、649億2百万円(前期比5.4%増加)となりました。
社会インフラ事業の売上高は、海外事業が減少しましたが、前期に受注した大型の太陽光発電所建設プロジェクトにおける土木造成領域が売上貢献したことにより、851億92百万円(前期比3.4%増加)となりました。
c. 売上総利益
売上総利益は、収益が改善したことにより442億65百万円(前期比3.9%増加)となり、売上総利益率は16.5%となりました。
d. 販売費及び一般管理費、営業利益
販売費及び一般管理費は、前期比5億96百万円増加の332億8百万円となりました。
この結果、売上高の増加などにより、営業利益は110億57百万円(前期比10.9%増加)となりました。
e. 営業外損益、経常利益
営業外損益は、前期比100百万円悪化の99百万円の損(純額)となりました。
この結果、経常利益は109億57百万円(前期比9.8%増加)となりました。
f. 親会社株主に帰属する当期純利益
親会社株主に帰属する当期純利益は、前期比12.3%増加し、金額にして8億8百万円増加の73億57百万円となりました。
③資本の財源および資金の流動性
a. 資産
当期末の総資産は、前期末に比べ105億81百万円増加し、2,080億50百万円となりました。流動資産は、前期末に比べ107億42百万円増加し、1,797億42百万円となりました。これは主に、大型の太陽光発電所建設プロジェクトなどによる売上高の増加により受取手形及び売掛金が132億円増加した一方、現金及び預金が23億66百万円、たな卸資産が2億57百万円減少したことなどによるものであります。固定資産は、前期末に比べ1億61百万円減少し、283億8百万円となりました。これは主に、基幹システム構築やアウトソーシング設備への投資、関係会社の本社移転に伴う投資を行った一方、社員寮の土地・建物を売却したことや既存設備の償却が進んだことによるものであります。
b. 負債
当期末の負債は、前期末に比べ55億23百万円増加し、1,063億18百万円となりました。これは主に、大型の太陽光発電所建設プロジェクトなどに係わる機器や外注費の増加により支払手形及び買掛金が30億99百万円増加したほか、税金等調整前当期純利益の増加により未払法人税等が8億4百万円増加したことなどによるものであります。
c. 純資産
当期末の純資産は、前期末に比べ50億57百万円増加し、1,017億32百万円となりました。これは主に、利益剰余金が37億34百万円、退職給付に係る調整累計額が11億1百万円、非支配株主持分が1億96百万円増加したことなどによるものであります。
d. キャッシュ・フローの状況
当期のキャッシュ・フローの分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載の通りです。
e. 資金需要
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、当社グループの事業展開のための材料および機器の購入のほか、外注費、販売費及び一般管理費等の経費によるものであります。販売費及び一般管理費の主なものは、人件費および当社グループの事業所の不動産賃借料等であります。
※1 ICT:
Information and Communication Technology(情報通信技術)の略。
※2 FIT法:
電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法の通称。
※3 EmpoweredOffice(エンパワードオフィス):
当社の提供するオフィス改革ソリューション。当社の強みであるICTとファシリティ施工力を融合し、より知的で創造的なワークスタイルへの業務プロセス改革を実現するとともに、セキュリティ強化や環境対応力といった社会的責任に応える「働き方」と「働く場」の改革を提案するもの。
※4 DX:
Digital transformationの略。AI・IoT・RPA(Robotic Process Automation)等の最先端技術を用いて、企業・産業の事業活動や都市運営などを大きく変革すること。
※5 CVC:
Corporate Venture Capital の略。投資会社がキャピタルゲインを目的としたべンチャーキャピタル(VC)と異なり、事業会社が本業との事業シナジーを目的にベンチャー企業へ出資するVC。