有価証券報告書-第88期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

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2020/06/24 15:34
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157項目
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態および経営成績の状況
当連結会計年度(2019年4月1日~2020年3月31日、以下、当期)のわが国経済は、通商問題の動向やそれに伴う金融資本市場の変動など楽観視できない状況が継続したものの、雇用や所得環境が改善もあって緩やかな回復が続いておりましたが、今後に向けては、当期末からの新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大により、各種活動の自粛・制限や、サプライチェーンの分断など、日本においても景気の大幅な下振れが避けられない状況となっております。
このような経済環境下、当社の事業領域であるICT(※1)市場におきましては、当期における新型コロナウイルス感染症の拡大によるお客様投資やサプライチェーンなどの事業運営への影響は小さく、各分野が概ね堅調に推移いたしました。
企業においては、働き方改革などの企業の経営強化・競争力強化を目指した投資は堅調に推移し、さらに新型コロナウイルス感染症の影響によりテレワーク導入の機運が急激に高まりました。また、ホテル向けを中心にインバウンド需要に向けた設備投資も継続いたしました。加えて、クラウドやAI、IoT、RPAといったDX(※2)などの最先端技術領域への関心も引き続き高まりました。また、官庁・自治体、公益関連における消防・防災や放送、映像・CATV分野などの都市基盤高度化に向けたシステム投資や、通信事業者における通信品質改善に向けた設備投資が継続いたしました。
こうした市場環境のなか、当社グループでは、働き方改革分野や、ホテルの新築や建て替えに伴う通信インフラ整備、消防・防災、放送、映像・CATV等において顕在化したプロジェクトに積極的に対応いたしました。
また、当社は、10年先の環境変化を見据え、中長期の成長実現に向けて、2019年5月に中期経営計画「Beyond Borders 2021」を発表いたしました。当社グループの強みを活かし、パートナー企業と共に新しい社会価値を生み出す「コミュニケーションサービス・オーケストレーター」を目指し、社会課題の解決、技術変革の波を事業拡大のチャンスと捉え、「デジタル」と「5G」を軸に、新しい事業モデルへのシフト、新事業創出を加速していく計画です。
この考えのもと、2019年4月には、注力事業領域に合わせ、技術の専門性や、競争力の発揮を目的に事業本部を再編するとともに、先端技術対応・新ビジネス創出機能を集約し、新たにビジネスデザイン統括本部を設置するなど、今後の成長に向けた組織力の強化を図りました。加えて、働き方改革ソリューション「EmpoweredOffice(※3)」とDX技術を組み合わせた新たなサービスの開発や自社実践を積極的に行うとともに、さらなる先端ソリューション・サービスの発掘にむけ、米国のベンチャーファンドへの出資や、グローバル・ベンチャーキャピタル/アクセラレーター(※4)とのパートナーシップを推進するなど、オープンイノベーションへの取り組みを加速させました。2019年10月からは、DX技術を徹底活用した新しい働き方を自社実践し、新サービス開発につなげるべく、本社スタッフを自宅から約30分圏内のサテライトオフィスに分散させて働く分散型ワークを開始いたしました。また、2020年2月には、パートナーとの共創による新ビジネス創出・お客様ビジネスのイノベーションを創造する場として、東京日本橋に新たにイノベーションベースを開設し、イノベーションを活性化する仕組みを構築いたしました。なお、これら当社の働き方改革の自社実践により、新型コロナウイルス感染症による政府の外出自粛要請に対しても、従来の延長線上で、在宅勤務を原則とした勤務形態へと柔軟に対応を行っております。
新事業創出面においては、パートナーとの共創により当社バリューチェーンの対応領域を、既存のICT領域からさらにその先の付加価値領域まで取り込んで拡張すべく、ICT/デジタル技術を活用した陸上養殖事業に参入いたしました。
これらの結果、当期における連結業績は、売上高 3,036億16百万円(前期比 9.2%増加)
営業利益 162億45百万円(前期比 27.2%増加)
経常利益 159億38百万円(前期比 22.4%増加)
親会社株主に帰属する当期純利益 94億22百万円(前期比 6.0%増加)
<参考>受注高 3,049億78百万円(前期比 7.1%増加)
となり、すべての項目において、過去最高業績を達成いたしました。
売上高は、前期比9.2%の増加の3,036億16百万円となりました。これは、働き方改革に関連したICTサービスやホテル向けネットワーク構築を中心としたデジタルソリューション事業の拡大に加え、消防救急システム・防災行政無線システムやメガソーラーなどの国内施工、保守・運用の両面でエンジニアリング&サポートサービス事業が拡大するなど全セグメントで増加したものです。受注高につきましても、働き方改革関連分野や、消防救急システム・防災行政無線システムや映像・CATVなどの社会公共インフラ分野、通信事業者向けなど、全セグメントが堅調に拡大し、前期比7.1%増加の3,049億78百万円となりました。
収益面では、売上高の増加とそれによる固定費効率の改善に加え、組織横断的な人材活用を通じたリソース効率の向上やプロジェクト管理徹底などにより収益性改善効果が進展したことで、デジタルソリューション事業、ネットワークインフラ事業が大きく増益いたしました。これにより、オフィス再編や新サービス開発などの成長に向けた投資の増加や、不採算プロジェクトによるエンジニアリング&サポートサービス事業の悪化を吸収し、営業利益は前期比27.2%増加の162億45百万円、経常利益は22.4%増加の159億38百万円となりました。なお、親会社株主に帰属する当期純利益は、研修施設閉鎖の決定に伴う減損損失や国内施工プロジェクトの遅延に関わる損害賠償引当金繰入額などの特別損失を計上したことにより、6.0%増加の94億22百万円となりました。
セグメント情報につきましては次のとおりであります。
デジタルソリューション事業
働き方改革に関連したICTサービスやホテル向けネットワーク構築を中心に拡大し、売上高は前期比10.2%増
加の1,099億86百万円となりました。
ネットワークインフラ事業
社会公共インフラ分野が拡大し、売上高は前期比4.5%増加の839億53百万円となりました。
エンジニアリング&サポートサービス事業
国内施工事業、海外事業および保守・運用事業のすべてが拡大し、売上高は前期比9.9%増加の993億62百万円
となりました。
<セグメントの概要>
セグメント主な事業内容
デジタルソリューション事業主に企業などの業務系ICTプラットフォームに関するシステムインテグレーションおよびこれらに関するアウトソーシング/クラウドサービスや、最先端/デジタル技術を活用し、お客様のビジネス変革に資するソリューション、サービスの提供、ならびにコンタクトセンターサービスの提供
ネットワークインフラ事業主に通信事業者や官庁・自治体、社会インフラを提供する事業者向けを中心に、信頼性が要求される公共性の高いネットワークインフラに関するシステムインテグレーション、サービスの提供、ならびにネットワーク機器などの製造開発、販売およびシステムインテグレーションの提供
エンジニアリング&サポート
サービス事業
主に国内・海外における施工事業、および当社が提供する各種ICTシステム、サービスに関する保守、運用・監視ならびに全社サービス基盤の運用とそれらを活用したテクニカルサービスなどのサポートサービスの提供
その他主に情報通信機器等の仕入販売

当社の組織再編を2019年4月1日付で実施したことに伴い、「企業ネットワーク事業」「キャリアネットワーク事業」および「社会インフラ事業」としていた報告セグメントを当連結会計年度より「デジタルソリューション事業」「ネットワークインフラ事業」および「エンジニアリング&サポートサービス事業」に変更しております。
なお、前連結会計年度に係る報告セグメントに関する情報につきましても、当該事象による変更を反映したものに組替えて開示しております。
②キャッシュ・フローの状況
当期末の現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前期末に比べ39億67百万円増加し、583億21百万円となりました。
各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は、129億35百万円となりました。これは主に、売上債権の増加、仕入債務の増加、法人税等の支払などによるものであります。前期と比べると45億39百万円の資金の増加となっております。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は、67億26百万円となりました。これは主に、オフィス分散化による敷金の支払や米国のベンチャーファンドへの出資などによるもので、前期と比べると11億21百万円の資金の減少となっております。
この結果、営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローを合算したフリー・キャッシュ・フローは、62億8百万円の資金の増加となりました。前期と比べると34億17百万円の資金の増加となっております。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は、23億円となりました。これは主に、配当金の支払や借入金の借入・返済などによるもので、前期と比べると33億14百万円の資金の増加となっております。なお、利益配当金につきましては、前期末の1株当たり配当金を40円、中間の1株当たり配当金を40円にしたことにより、前期と比べると2億47百万円増加し、39億65百万円の支払となっております。
③生産、受注および販売の実績
a.受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称受注高(百万円)前期比(%)
デジタルソリューション事業112,4557.9
ネットワークインフラ事業89,0099.8
エンジニアリング&サポートサービス事業93,4833.2
その他10,03111.7
合計304,9787.1

(注) 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
b.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称販売高(百万円)前期比(%)
デジタルソリューション事業109,98610.2
ネットワークインフラ事業83,9534.5
エンジニアリング&サポートサービス事業99,3629.9
その他10,31439.7
合計303,6169.2

(注)1 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
2 主な相手先の販売実績および当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
相手先前連結会計年度当連結会計年度
販売高(百万円)割合(%)販売高(百万円)割合(%)
日本電気㈱68,80824.868,11022.4

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①財政状態および経営成績の状況に関する認識および分析・検討内容
a. 概要
当期のわが国経済は、通商問題の動向やそれに伴う金融資本市場の変動など楽観視できない状況が継続したものの、雇用や所得環境が改善もあって緩やかな回復が続いておりましたが、今後に向けては、当期末からの新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大により、各種活動の自粛・制限や、サプライチェーンの分断など、日本においても景気の大幅な下振れが避けられない状況となっております。
このような経済環境下、当社の事業領域であるICT市場におきましては、当期における新型コロナウイルス感染症の拡大によるお客様投資やサプライチェーンなどの事業運営への影響は小さく、各分野が概ね堅調に推移いたしました。
企業においては、働き方改革などの企業の経営強化・競争力強化を目指した投資は堅調に推移し、さらに新型コロナウイルス感染症の影響によりテレワーク導入の機運が急激に高まりました。また、ホテル向けを中心にインバウンド需要に向けた設備投資も継続いたしました。加えて、クラウドやAI、IoT、RPAといったDXなどの最先端技術領域への関心も引き続き高まりました。また、官庁・自治体、公益関連における消防・防災や放送、映像・CATV分野などの都市基盤高度化に向けたシステム投資や、通信事業者における通信品質改善に向けた設備投資が継続いたしました。
こうした市場環境のなか、当社グループでは、働き方改革分野や、ホテルの新築や建て替えに伴う通信インフラ整備、消防・防災、放送、映像・CATV等において顕在化したプロジェクトに積極的に対応いたしました。
また、当社は、10年先の環境変化を見据え、中長期の成長実現に向けて、2019年5月に中期経営計画「Beyond Borders 2021」を発表いたしました。当社グループの強みを活かし、パートナー企業と共に新しい社会価値を生み出す「コミュニケーションサービス・オーケストレーター」を目指し、社会課題の解決、技術変革の波を事業拡大のチャンスと捉え、「デジタル」と「5G」を軸に、新しい事業モデルへのシフト、新事業創出を加速していく計画です。
この考えのもと、2019年4月には、注力事業領域に合わせ、技術の専門性や、競争力の発揮を目的に事業本部を再編するとともに、先端技術対応・新ビジネス創出機能を集約し、新たにビジネスデザイン統括本部を設置するなど、今後の成長に向けた組織力の強化を図りました。加えて、働き方改革ソリューション「EmpoweredOffice」とDX技術を組み合わせた新たなサービスの開発や自社実践を積極的に行うとともに、さらなる先端ソリューション・サービスの発掘にむけ、米国のベンチャーファンドへの出資や、グローバル・ベンチャーキャピタル/アクセラレーターとのパートナーシップを推進するなど、オープンイノベーションへの取り組みを加速させました。2019年10月からは、DX技術を徹底活用した新しい働き方を自社実践し、新サービス開発につなげるべく、本社スタッフを自宅から約30分圏内のサテライトオフィスに分散させて働く分散型ワークを開始いたしました。また、2020年2月には、パートナーとの共創による新ビジネス創出・お客様ビジネスのイノベーションを創造する場として、東京日本橋に新たにイノベーションベースを開設し、イノベーションを活性化する仕組みを構築いたしました。なお、これら当社の働き方改革の自社実践により、新型コロナウイルス感染症による政府の外出自粛要請に対しても、従来の延長線上で、在宅勤務を原則とした勤務形態へと柔軟に対応を行っております。
新事業創出面においては、パートナーとの共創により当社バリューチェーンの対応領域を、既存のICT領域からさらにその先の付加価値領域まで取り込んで拡張すべく、ICT/デジタル技術を活用した陸上養殖事業に参入いたしました。
b. 売上高
売上高は、前述の取り組みの結果、全セグメントが拡大し、3,036億16百万円(前期比9.2%増加)となりました。
デジタルソリューション事業の売上高は、働き方改革に関連したICTサービスやホテル向けネットワーク構築を中心に拡大したことにより、1,099億86百万円(前期比10.2%増加)となりました。
ネットワークインフラ事業の売上高は、社会公共インフラ分野が拡大したことにより、839億53百万円(前期比4.5%増加)となりました。
エンジニアリング&サポートサービス事業の売上高は、国内施工事業、海外事業および保守・運用事業のすべてが拡大したことにより、993億62百万円(前期比9.9%増加)となりました。
c. 売上総利益
売上総利益は、売上高の増加とそれによる固定費効率の改善に加え、組織横断的な人材活用を通じたリソース効率の向上やプロジェクト管理徹底などにより収益が改善したことにより、543億74百万円(前期比14.0%増加)となり、売上総利益率は17.9%となりました。
d. 販売費及び一般管理費、営業利益
販売費及び一般管理費は、オフィス再編や新サービス開発などの成長に向けた投資の増加により、前期比32億22百万円増加の381億28百万円となりましたが、これらの結果、営業利益は162億45百万円(前期比27.2%増加)となりました。
e. 営業外損益、経常利益
営業外損益は、前期比5億55百万円悪化の3億7百万円の損(純額)となりました。
この結果、経常利益は159億38百万円(前期比22.4%増加)となりました。
f. 親会社株主に帰属する当期純利益
親会社株主に帰属する当期純利益は、経常利益の増加があった一方で、研修施設閉鎖の決定に伴う減損損失や国内施工プロジェクトの遅延に関わる損害賠償引当金繰入額などの特別損失を計上したことにより、前期比6.0%増加し、金額にして5億37百万円増加の94億22百万円となりました。
g. 資産
当期末の総資産は、前期末に比べ140億73百万円増加し、2,302億44百万円となりました。流動資産は、前期末に比べ108億11百万円増加し、1,918億47百万円となりました。これは主に、受取手形及び売掛金が58億4百万円増加したほか、現金及び預金が39億67百万円増加したことなどによるものであります。固定資産は、前期末に比べ32億62百万円増加し、383億97百万円となりました。これは主に、繰延税金資産の回収可能性を見直したことなどにより、繰延税金資産が29億19百万円増加したほか、米国のベンチャーファンドへの出資などの投資有価証券の取得により、投資有価証券が8億19百万円増加したことや、オフィス分散化による敷金の支払により、投資その他の資産のその他が13億75百万円増加した一方、研修施設閉鎖の決定に伴い減損損失を計上したことなどにより、有形固定資産が12億74百万円減少したことなどによるものであります。
h. 負債
当期末の負債は、前期末に比べ81億71百万円増加し、1,167億34百万円となりました。これは主に、支払手形及び買掛金が13億92百万円増加したほか、短期借入金が23億47百万円、損害賠償引当金が13億26百万円増加したことなどによるものであります。
i. 純資産
当期末の純資産は、前期末に比べ59億2百万円増加し、1,135億10百万円となりました。これは主に、利益剰余金が54億52百万円増加したことなどによるものであります。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当期末の現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前期末に比べ39億67百万円増加し、583億21百万円となりました。
各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は、129億35百万円となりました。これは主に、売上債権の増加、仕入債務の増加、法人税等の支払などによるものであります。前期と比べると45億39百万円の資金の増加となっております。
なお、当社グループでは資本効率性の指標であるROEを高め、資本コストを上回るリターンを継続的に実現し、最大化するためには、運転資本の効率化を追求する必要があると考えており、キャッシュ・コンバージョン・サイクルの圧縮に努めています。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当社グループは「デジタル×5G」時代に向けた成長戦略の実現のため積極的な投資を行っていく考えです。働き方改革関連事業においては、他社よりも先を行く新しい働き方に挑戦すべく、コーポレートスタッフの分散化に取り組むとともに、先端技術を活用して新規ビジネスの創出、共創を促進する「イノベーションベース」を設置するなど積極的な投資を推進し、また、新しい事業を創出するための基盤、仕組み、体制の強化に向けては、新たな技術をもたらす有望なスタートアップ企業との事業共創は重要なテーマとなっております。このような考えのもと、投資活動の結果使用した資金は、67億26百万円となりました。これは主に、オフィス分散化による敷金の支払や米国のベンチャーファンドへの出資などによるもので、前期と比べると11億21百万円の資金の減少となっております。
この結果、営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローを合算したフリー・キャッシュ・フローは、62億8百万円の資金の増加となりました。前期と比べると34億17百万円の資金の増加となっております。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は、23億円となりました。これは主に、配当金の支払や借入金の借入・返済などによるもので、前期と比べると33億14百万円の資金の増加となっております。
利益配当金につきましては、配当政策に従い、前期末の1株当たり配当金を40円、中間の1株当たり配当金を40円にしたことにより、前期と比べると2億47百万円増加し、39億65百万円の支払となっております。
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、当社グループの事業展開のための材料および機器の購入のほか、外注費、販売費及び一般管理費等の経費によるものであります。販売費及び一般管理費の主なものは、人件費および当社グループの事業所の不動産賃借料等であります。当社グループは国や自治体、通信事業者等の公共的なインフラ構築をはじめとした信頼性の高いサービスを継続的に提供する責務があり、健全な財務基盤が要求されます。このため突発的な資金需要等に備え、売上高の2カ月程度は現預金として確保しておきたいと考えています。この資金の財源は主として営業活動によるキャッシュ・フローによる自己資金により、現在必要とされる資金水準を満たす流動性を保持していると考えています。また、事業を行うための設備計画等に照らして、必要な資金(主に銀行等金融機関からの借入)により調達しており、今後、事業成長や大きな投資等でさらなる資金需要が出てきた際は、株主価値に配慮し、売上高の2カ月分を超過した現預金に加え、健全性を損なわない範囲での負債の活用を優先していきます。
なお、当社は短期的な資金調達方法として、国内金融機関2社と合計80億円のコミットメントライン契約を締結しております。
③重要な会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。
連結財務諸表の作成に際し、決算日における資産・負債の数値ならびに報告期間における収益・費用の数値に影響を与える見積りを行っております。当社は、過去の実績や状況に応じ合理的だと考えられる様々な要因に基づき、見積りおよび判断を行っておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループは、特に以下の重要な会計方針が、当社の連結財務諸表の作成において使用される見積りに大きな影響を及ぼすと考えております。
新型コロナウイルス感染症(以下、本感染症)の影響に関して、当社グループでは、厳重な対策を実施した上で事業活動を継続しております。
しかし、本感染症は経済、企業活動に広範な影響を与える事象であり、また第2波の懸念があるなど今後の広がり方や収束時期等を予想することは困難なことから、今後2021年3月期の一定期間にわたり当該影響が継続するとの仮定のもと、繰延税金資産の回収可能性等の会計上の見積りを行っております。
a. 貸倒引当金
当社グループは、顧客の支払い不能時に発生する損失の見積額について、貸倒引当金を計上しております。顧客の財務状態が悪化し、その支払い能力が低下した場合、追加引当が必要となる可能性があります。
b. 受注損失引当金
当社グループは、顧客より受注済みの案件のうち、当該受注契約の履行に伴い、翌連結会計年度以降に損失の発生が見込まれ、かつ、当該損失額を合理的に見積もることが可能なものについては、将来の損失に備えるため翌連結会計年度以降に発生が見込まれる損失額を受注損失引当金として計上しております。将来、発生原価が見積額を上回ると予想される場合、追加引当が必要となる可能性があります。
c. 損害賠償引当金
国内施工プロジェクトの遅延に係わる損害賠償金の支払に備えるため、今後必要と見込まれる額を計上しております。
d. 繰延税金資産
当社グループは、繰延税金資産について、将来の課税所得および、実現可能性の高い継続的な税務計画を検討いたしますが、繰延税金資産の全部または一部を将来実現できないと判断した場合、当該判断を行った期間に繰延税金資産の取り崩し額を費用として計上いたします。同様に、計上金額の純額を上回る繰延税金資産を今後実現できると判断した場合、当該判断を行った期間に繰延税金資産の追加計上額を利益として計上いたします。
e. 退職給付に係る負債
退職給付費用および債務は、数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出されております。これらの前提条件には、割引率、将来の報奨水準、退職率、死亡率および年金資産の収益率などが含まれております。実際の結果が前提条件と異なる場合、または前提条件が変更された場合、その影響は累積され、将来にわたって規則的に認識されるため、一般的には将来期間において認識される費用に影響を及ぼします。未認識数理計算上の差異の償却は、退職給付費用の一部を構成しておりますが、前提条件の変化による影響や前提条件と実際との結果の違いの影響を規則的に費用認識したものであります。
※1 ICT:
Information and Communication Technology(情報通信技術)の略。
※2 DX:
Digital transformationの略。AI・IoT・RPA(Robotic Process Automation)等の最先端技術を用いて、企業・産業の事業活動や都市運営などを大きく変革すること。
※3 EmpoweredOffice(エンパワードオフィス):
当社の強みであるICTとファシリティ施工力を融合し、より知的で創造的なワークスタイルへ業務プロセス改革
を提案する働き方改革ソリューション。
※4 アクセラレーター:
ベンチャーやスタートアップの成長を加速させるために支援を行う組織・企業。