有価証券報告書-第89期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)

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2021/06/24 15:30
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(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態および経営成績の状況
当連結会計年度(2020年4月1日~2021年3月31日、以下、当期)のわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の影響により、4月に緊急事態宣言が発令されるなど急速な悪化を余儀なくされ、5月末の緊急事態宣言解除を経て、一時的に持ち直しの動きが見られましたが、本年1月に緊急事態宣言の再発令などもあり、その回復も弱いものとなっております。足元では、製造業中心に企業の景況感は戻りつつありますが、未だ感染症収束の目途はつかず、国内外における経済の先行きは依然として不透明な状況が続いております。
このような経済環境下、当社の事業領域であるICT(※1)市場においては、一部に新型コロナウイルス感染症の影響が顕在化するなど、分野毎に強弱が見られました。
企業においては、新型コロナウイルス感染症対策を契機としたテレワーク導入など、働き方改革関連投資が堅調に推移し、クラウドやAI、IoT、RPAといったDX(※2)などの最先端技術領域への関心も急速に高まりましたが、お客様企業における業績悪化等の懸念により、設備更新といった不要不急のICT投資については先送りされるなどの弱さも見られました。通信事業者においては、5Gに向けたマイグレーションや通信品質改善に向けた設備投資が堅調に推移し、年度後半からは基地局設置等5G投資も動きはじめました。官庁・自治体、公益関連においては、一部で入札案件の先送りなどの影響がありましたが、消防・防災や放送、映像・CATV分野などの都市基盤高度化に向けたシステム投資は継続しました。また、文教分野では遠隔授業や教育の情報化推進に伴うICT投資ニーズが急速に拡大し、特に、GIGAスクール構想の実現に向けた投資が当期に集中しました。一方、海外においては、新型コロナウイルス感染症の拡大を受けた入管規制などの影響が見られました。
こうした市場環境のなか、当社グループでは、働き方改革分野や、文教市場向けICT投資、通信事業者向けインフラ整備投資において顕在化したプロジェクトに積極的に対応いたしました。
当社は、2019年5月に策定した中期経営計画「Beyond Borders 2021」のもと、当社グループの強みを活かし、パートナー企業と共に新しい社会価値を生み出す「コミュニケーションサービス・オーケストレーター」を目指し、社会課題の解決、技術変革の波を事業拡大のチャンスと捉え、「デジタル」と「5G」を軸に、新しい事業モデルへのシフト、新事業創出に注力しております。
この考え方に基づき、デジタル領域については、2007年より取り組んでいる働き方改革関連事業において、時代の先を見据えたイノベーションを生む働き方を実践し、その成果を通じてお客様に様々な働き方改革ソリューションを提供すべく、DX技術の積極活用を図ってまいりました。その一環として、2019年10月より、本社オフィスのスペースを削減し、通勤30分以内となる東京近郊のサテライトオフィスに分かれて働く分散型ワークを実践しております。当期において、当社では、4月の緊急事態宣言発令を受け、この仕組み、技術を生かして原則テレワークでの事業遂行を行うとともに、昨今の社会課題である新型コロナウイルス感染症予防策として当社の働き方改革のノウハウをお客様と共有し、分散型ワークの導入やテレワーク・遠隔授業等の環境整備に迅速に対応してまいりました。また、DX技術を活用し、業務やコミュニケーションの効率化、承認の電子化など、パートナーとの共創のもと、今後の新しい働き方(ニューノーマルな働き方)に対応する様々な取り組みの実践やソリューション開発を加速させてまいりました。さらには、これらのクラウド型のサービスについて、電話、Web等を活用してお客様とのコミュニケーションを図るインサイドセールスの取り組みを新たに展開し、従来当社の事業領域ではなかった中小企業(SMB)市場の開拓も進めてまいりました。一方、5G領域に対しては、2020年11月に、人材育成および新技術の評価・検証、新サービス創出の場として「基盤技術開発センター」を開設するとともに、そのなかに、5Gの実機やサービス検証が出来る設備を備えた5Gラボを新設いたしました。今後市場の拡大が期待される5G領域における技術者の育成強化を図るとともに、お客様やパートナーとの共創を通じて、5Gを活用した新しいサービスの開発や実証を行ってまいります。また、市場の潜在力があるローカル5Gにおいては、CATV、防災・減災などの当社の強みを活かせる分野に注力して、実証実験や提案活動を行っております。さらに、「デジタル×5G」時代に向け、ローカル5Gを活用したスマートビルの実現や新たなワークスタイルのサービス提供を目指した三井不動産株式会社との共同実証実験も行っております。今後も、5G領域における基地局、コアネットワークといったインフラの構築から、企業向けデジタルサービスまで手掛ける当社の強みを活かした事業展開を加速させていく考えであります。


これらの結果、当期における連結業績は、売上高 3,391億 9百万円(前期比 11.7%増加)
営業利益 255億63百万円(前期比 57.4%増加)
経常利益 254億93百万円(前期比 60.0%増加)
親会社株主に帰属する当期純利益 157億45百万円(前期比 67.1%増加)
<参考>受注高 3,368億77百万円(前期比 10.5%増加)
となりました。
売上高は、前期比11.7%増加の3,391億9百万円となりました。これは、当期に投資が集中したGIGAスクールの売上が大きく貢献したことや、DX技術を活用した働き方改革に関連したICTサービス、通信事業者向けインフラ整備などの注力領域が増加したことにより、全セグメントで増加したことによるものです。受注高につきましても、GIGAスクール案件に加え、テレワークニーズを追い風にしたDX/働き方改革関連分野や、通信事業者向けなどを中心に拡大し、前期比10.5%増加の3,368億77百万円となりました。
収益面では、新サービス開発や人材育成などの成長に向けた投資を増やしましたが、売上高の増加に加えて、高付加価値サービス拡大への取り組みやリソース効率の向上、プロジェクト管理徹底などによる収益性改善効果の進展に加え、エンジニアリング&サポートサービス事業において不採算プロジェクトに対する損失引当金が減少したことにより、増益となりました。これにより、営業利益は前期比57.4%増加の255億63百万円、経常利益は60.0%増加の254億93百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は、67.1%増加の157億45百万円と、いずれも過去最高業績となりました。
セグメント情報につきましては次のとおりであります。
デジタルソリューション事業
DX技術を活用した働き方改革に関連したICTサービスの拡大や子会社におけるGIGAスクール案件などにより、売上高は前期比11.7%増加の1,259億60百万円となりました。
ネットワークインフラ事業
通信事業者向けが拡大し、売上高は前期比7.4%増加の892億32百万円となりました。
エンジニアリング&サポートサービス事業
地域GIGAスクール案件の売上貢献やメガソーラープロジェクトの売上増により、売上高は前期比17.1%増加の1,140億89百万円となりました。
<セグメントの概要>
セグメント主な事業内容
デジタルソリューション事業主に企業などの業務系ICTプラットフォームに関するシステムインテグレーションおよびこれらに関するアウトソーシング/クラウドサービスや、最先端/デジタル技術を活用し、お客様のビジネス変革に資するソリューション、サービスの提供、ならびにコンタクトセンターサービスの提供
ネットワークインフラ事業主に通信事業者や官庁・自治体、社会インフラを提供する事業者向けを中心に、信頼性が要求される公共性の高いネットワークインフラに関するシステムインテグレーション、サービスの提供、ならびにネットワーク機器などの製造開発、販売およびシステムインテグレーションの提供
エンジニアリング&サポート
サービス事業
主に国内・海外における施工事業、および当社が提供する各種ICTシステム、サービスに関する保守、運用・監視ならびに全社サービス基盤の運用とそれらを活用したテクニカルサービスなどのサポートサービスの提供
その他主に情報通信機器等の仕入販売

当社は、2020年4月より、事業効率の最適化のための一部事業の入れ替えおよび社内業績管理上の経営資源の配分の見直しを行ったことに伴い、当社の経営管理の実態に合わせ、セグメント間の組替えを行っております。
なお、前連結会計年度に係る報告セグメントに関する情報につきましても、当該事象による変更を反映したものに組替えて開示しております。
②キャッシュ・フローの状況
当期末の現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前期末に比べ101億5百万円増加し、684億26百万円となりました。
各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は、173億83百万円となりました。これは主に、売上債権の増加、たな卸資産の減少、仕入債務の増加、法人税等の支払などによるものであります。前期と比べると44億47百万円の資金の増加となっております。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は、42億89百万円となりました。これは主に、有形固定資産の取得などによるもので、前期と比べると24億36百万円の資金の増加となっております。
この結果、営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローを合算したフリー・キャッシュ・フローは、130億93百万円の資金の増加となりました。前期と比べると68億84百万円の資金の増加となっております。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は、23億88百万円となりました。これは主に、配当金の支払などによるもので、前期と比べると88百万円の資金の減少となっております。なお、利益配当金につきましては、前期末の1株当たり配当金を14円、中間の1株当たり配当金を14円にしたことにより、前期と比べると1億96百万円増加し、41億62百万円の支払となっております。
③生産、受注および販売の実績
a.受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称受注高(百万円)前期比(%)
デジタルソリューション事業128,30111.4
ネットワークインフラ事業95,3388.7
エンジニアリング&サポートサービス事業103,71812.7
その他9,518△5.1
合計336,87710.5

(注) 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
b.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称販売高(百万円)前期比(%)
デジタルソリューション事業125,96011.7
ネットワークインフラ事業89,2327.4
エンジニアリング&サポートサービス事業114,08917.1
その他9,827△4.7
合計339,10911.7

(注)1 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
2 主な相手先の販売実績および当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
相手先前連結会計年度当連結会計年度
販売高(百万円)割合(%)販売高(百万円)割合(%)
日本電気㈱68,11022.469,63020.5

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①財政状態および経営成績の状況に関する認識および分析・検討内容
a. 概要
当期のわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の影響により、4月に緊急事態宣言が発令されるなど急速な悪化を余儀なくされ、5月末の緊急事態宣言解除を経て、一時的に持ち直しの動きが見られましたが、本年1月に緊急事態宣言の再発令などもあり、その回復も弱いものとなっております。足元では、製造業中心に企業の景況感は戻りつつありますが、未だ感染症収束の目途はつかず、国内外における経済の先行きは依然として不透明な状況が続いております。
このような経済環境下、当社の事業領域であるICT市場においては、一部に新型コロナウイルス感染症の影響が顕在化するなど、分野毎に強弱が見られました。
企業においては、新型コロナウイルス感染症対策を契機としたテレワーク導入など、働き方改革関連投資が堅調に推移し、クラウドやAI、IoT、RPAといったDXなどの最先端技術領域への関心も急速に高まりましたが、お客様企業における業績悪化等の懸念により、設備更新といった不要不急のICT投資については先送りされるなどの弱さも見られました。通信事業者においては、5Gに向けたマイグレーションや通信品質改善に向けた設備投資が堅調に推移し、年度後半からは基地局設置等5G投資も動きはじめました。官庁・自治体、公益関連においては、一部で入札案件の先送りなどの影響がありましたが、消防・防災や放送、映像・CATV分野などの都市基盤高度化に向けたシステム投資は継続しました。また、文教分野では遠隔授業や教育の情報化推進に伴うICT投資ニーズが急速に拡大し、特に、GIGAスクール構想の実現に向けた投資が当期に集中しました。一方、海外においては、新型コロナウイルス感染症の拡大を受けた入管規制などの影響が見られました。
こうした市場環境のなか、当社グループでは、働き方改革分野や、文教市場向けICT投資、通信事業者向けインフラ整備投資において顕在化したプロジェクトに積極的に対応いたしました。
当社は、2019年5月に策定した中期経営計画「Beyond Borders 2021」のもと、当社グループの強みを活かし、パートナー企業と共に新しい社会価値を生み出す「コミュニケーションサービス・オーケストレーター」を目指し、社会課題の解決、技術変革の波を事業拡大のチャンスと捉え、「デジタル」と「5G」を軸に、新しい事業モデルへのシフト、新事業創出に注力しております。
この考え方に基づき、デジタル領域については、2007年より取り組んでいる働き方改革関連事業において、時代の先を見据えたイノベーションを生む働き方を実践し、その成果を通じてお客様に様々な働き方改革ソリューションを提供すべく、DX技術の積極活用を図ってまいりました。その一環として、2019年10月より、本社オフィスのスペースを削減し、通勤30分以内となる東京近郊のサテライトオフィスに分かれて働く分散型ワークを実践しております。当期において、当社では、4月の緊急事態宣言発令を受け、この仕組み、技術を生かして原則テレワークでの事業遂行を行うとともに、昨今の社会課題である新型コロナウイルス感染症予防策として当社の働き方改革のノウハウをお客様と共有し、分散型ワークの導入やテレワーク・遠隔授業等の環境整備に迅速に対応してまいりました。また、DX技術を活用し、業務やコミュニケーションの効率化、承認の電子化など、パートナーとの共創のもと、今後の新しい働き方(ニューノーマルな働き方)に対応する様々な取り組みの実践やソリューション開発を加速させてまいりました。さらには、これらのクラウド型のサービスについて、電話、Web等を活用してお客様とのコミュニケーションを図るインサイドセールスの取り組みを新たに展開し、従来当社の事業領域ではなかった中小企業(SMB)市場の開拓も進めてまいりました。一方、5G領域に対しては、2020年11月に、人材育成および新技術の評価・検証、新サービス創出の場として「基盤技術開発センター」を開設するとともに、そのなかに、5Gの実機やサービス検証が出来る設備を備えた5Gラボを新設いたしました。今後市場の拡大が期待される5G領域における技術者の育成強化を図るとともに、お客様やパートナーとの共創を通じて、5Gを活用した新しいサービスの開発や実証を行ってまいります。また、市場の潜在力があるローカル5Gにおいては、CATV、防災・減災などの当社の強みを活かせる分野に注力して、実証実験や提案活動を行っております。さらに、「デジタル×5G」時代に向け、ローカル5Gを活用したスマートビルの実現や新たなワークスタイルのサービス提供を目指した三井不動産株式会社との共同実証実験も行っております。今後も、5G領域における基地局、コアネットワークといったインフラの構築から、企業向けデジタルサービスまで手掛ける当社の強みを活かした事業展開を加速させていく考えであります。

b. 売上高
売上高は、前述の取り組みの結果、全セグメントが拡大し、3,391億9百万円(前期比11.7%増加)となりました。
デジタルソリューション事業の売上高は、DX技術を活用した働き方改革に関連したICTサービスの拡大や子会社におけるGIGAスクール案件などにより、1,259億60百万円(前期比11.7%増加)となりました。
ネットワークインフラ事業の売上高は、通信事業者向けが拡大し、892億32百万円(前期比7.4%増加)となりました。
エンジニアリング&サポートサービス事業の売上高は、地域GIGAスクール案件の売上貢献やメガソーラープロジェクトの売上増により、1,140億89百万円(前期比17.1%増加)となりました。
c. 売上総利益
売上総利益は、売上高の増加とそれによる固定費効率の改善に加え、組織横断的な人材活用を通じたリソース効率の向上、プロジェクト管理徹底などによる収益性改善効果が進展したことにより、639億29百万円(前期比17.6%増加)となり、売上総利益率は18.9%となりました。
d. 販売費及び一般管理費、営業利益
販売費及び一般管理費は、前期比2億37百万円増加の383億66百万円となりました。一方で、売上高の増加などにより、営業利益は255億63百万円(前期比57.4%増加)となりました。
e. 営業外損益、経常利益
営業外損益は、前期比2億37百万円改善の69百万円の損(純額)となりました。
この結果、経常利益は254億93百万円(前期比60.0%増加)となりました。
f. 親会社株主に帰属する当期純利益
親会社株主に帰属する当期純利益は、新サービス開発や人材育成などの成長に向けた投資を増やしましたが、売上高の増加に加えて、不採算プロジェクトに対する損失引当金が減少したことにより、前期比67.1%増加し、金額にして63億22百万円増加の157億45百万円となりました。
g. 資産
当期末の総資産は、前期末に比べ200億93百万円増加し、2,503億38百万円となりました。流動資産は、前期末に比べ199億59百万円増加し、2,118億6百万円となりました。これは主に、たな卸資産が16億48百万円減少した一方、受取手形及び売掛金が109億55百万円、現金及び預金が101億5百万円増加したことなどによるものであります。固定資産は、前期末に比べ1億34百万円増加し、385億31百万円となりました。
h. 負債
当期末の負債は、前期末に比べ64億86百万円増加し、1,232億20百万円となりました。これは主に、受注損失引当金が16億46百万円減少した一方、支払手形及び買掛金が25億21百万円、短期借入金が17億27百万円、電子記録債務が12億7百万円増加したことなどによるものであります。
i. 純資産
当期末の純資産は、前期末に比べ136億7百万円増加し、1,271億17百万円となりました。これは主に、利益剰余金が116億16百万円増加したことなどによるものであります。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当期末の現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前期末に比べ101億5百万円増加し、684億26百万円となりました。
各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は、173億83百万円となりました。これは主に、売上債権の増加、たな卸資産の減少、仕入債務の増加、法人税等の支払などによるものであります。前期と比べると44億47百万円の資金の増加となっております。
なお、当社グループでは資本効率性の指標であるROEを高め、資本コストを上回るリターンを継続的に実現し、最大化するためには、運転資本の効率化を追求する必要があると考えており、キャッシュ・コンバージョン・サイクルの圧縮に努めております。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当社グループは「デジタル×5G」時代に向けた成長戦略の実現のため積極的な投資を行っていく考えであります。働き方改革関連事業においては、他社よりも先を行く新しい働き方(ニューノーマルな働き方)に挑戦すべく、コーポレートスタッフの分散化に取り組むとともに、先端技術を活用して新規ビジネスの創出、共創を促進する「イノベーションベース」を設置するなど積極的な投資を推進し、また、新しい事業を創出するための基盤、仕組み、体制の強化に向けては、新たな技術をもたらす有望なスタートアップ企業との事業共創は重要なテーマとなっております。このような考えのもと、投資活動の結果使用した資金は、42億89百万円となりました。前期と比べると24億36百万円の資金の増加となっております。
この結果、営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローを合算したフリー・キャッシュ・フローは、130億93万円の資金の増加となりました。前期と比べると68億84百万円の資金の増加となっております。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は、23億88百万円となりました。これは主に、配当金の支払などによるもので、前期と比べると88百万円の資金の減少となっております。
利益配当金につきましては、前期末の1株当たり配当金を14円、中間の1株当たり配当金を14円にしたことにより、前期と比べると1億96百万円増加し、41億62百万円の支払となっております。
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、当社グループの事業展開のための材料および機器の購入のほか、外注費、販売費及び一般管理費等の経費によるものであります。販売費及び一般管理費の主なものは、人件費および当社グループの事業所の不動産賃借料等であります。当社グループは国や自治体、通信事業者等の公共的なインフラ構築をはじめとした信頼性の高いサービスを継続的に提供する責務があり、健全な財務基盤が要求されます。このため突発的な資金需要等に備え、売上高の2カ月程度は現預金として確保しておきたいと考えております。この資金の財源は主として営業活動によるキャッシュ・フローによる自己資金により、現在必要とされる資金水準を満たす流動性を保持していると考えております。また、事業を行うための設備計画等に照らして、必要な資金(主に銀行等金融機関からの借入)により調達しており、今後、事業成長や大きな投資等でさらなる資金需要が出てきた際は、株主価値に配慮し、売上高の2カ月分を超過した現預金に加え、健全性を損なわない範囲での負債の活用を優先してまいります。
なお、当社は短期的な資金調達方法として、国内金融機関2社と合計80億円のコミットメントライン契約を締結しております。
③重要な会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。
連結財務諸表の作成に際し、決算日における資産・負債の数値ならびに報告期間における収益・費用の数値に影響を与える見積りを行っております。当社は、過去の実績や状況に応じ合理的だと考えられる様々な要因に基づき、見積りおよび判断を行っておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループは、特に以下の重要な会計方針が、当社の連結財務諸表の作成において使用される見積りに大きな影響を及ぼすと考えております。
a. 工事進行基準による収益認識
当社グループは、当連結会計年度末において工事出来高に対応して発生した工事原価の見積工事原価総額に対する割合により算出した進捗率により売上高を計上しております。将来工事原価総額の見積りの前提条件の変更等(設計変更や天災等)により当初見積りの変更が発生する可能性があります。
b. 受注損失引当金
当社グループは、顧客より受注済みの案件のうち、当該受注契約の履行に伴い、翌連結会計年度以降に損失の発生が見込まれ、かつ、当該損失額を合理的に見積ることが可能なものについては、将来の損失に備えるため翌連結会計年度以降に発生が見込まれる損失額を受注損失引当金として計上しております。将来、発生原価が見積額を上回ると予想される場合、追加引当が必要となる可能性があります。
c. 損害賠償引当金
国内施工プロジェクトの遅延に係わる損害賠償金の支払に備えるため、今後必要と見込まれる額を計上しております。
d. 繰延税金資産
当社グループは、繰延税金資産について、将来の課税所得および、実現可能性の高い継続的な税務計画を検討いたしますが、繰延税金資産の全部または一部を将来実現できないと判断した場合、当該判断を行った期間に繰延税金資産の取り崩し額を費用として計上いたします。同様に、計上金額の純額を上回る繰延税金資産を今後実現できると判断した場合、当該判断を行った期間に繰延税金資産の追加計上額を利益として計上いたします。
e. 退職給付に係る負債
退職給付費用および債務は、数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出されております。これらの前提条件には、割引率、将来の報奨水準、退職率、死亡率および年金資産の収益率などが含まれております。実際の結果が前提条件と異なる場合、または前提条件が変更された場合、その影響は累積され、将来にわたって規則的に認識されるため、一般的には将来期間において認識される費用に影響を及ぼします。未認識数理計算上の差異の償却は、退職給付費用の一部を構成しておりますが、前提条件の変化による影響や前提条件と実際との結果の違いの影響を規則的に費用認識したものであります。
※1 ICT:
Information and Communication Technology(情報通信技術)の略。
※2 DX:
Digital transformationの略。AI・IoT・RPA(Robotic Process Automation)等の最先端技術を用いて、企業・産業の事業活動や都市運営などを大きく変革すること。