有価証券報告書-第87期(平成30年4月1日-平成31年3月31日)
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態および経営成績の状況
当連結会計年度(2018年4月1日~2019年3月31日、以下、当期)のわが国経済は、雇用や所得環境が改善するなかで緩やかな回復が続きましたが、通商問題の動向やそれに伴う金融資本市場の変動など楽観視できない状況であり、足元では、輸出や生産の一部に弱さも見られました。
このような経済環境下、当社の事業領域であるICT(※1)市場におきましては、分野ごとに強弱が見られました。
企業におきましては、働き方改革などの企業の経営強化・競争力強化を目指した投資が堅調に推移したことに加え、インバウンド需要の高まりを受けた設備投資の活性化が見られました。加えて、AIやIoT、RPA、データ解析といったDX(※2)などの最先端技術領域への関心も高まりました。通信事業者におきましては、ネットワークインフラへの投資に回復が見られました。官庁・自治体、公益関連では、放送・CATV分野など都市基盤高度化に向けた投資は堅調に推移する一方で、消防指令システム分野における投資が端境期となった影響なども見られました。海外におきましては、ASEAN地域で都市インフラ増強に伴う通信設備需要の高まりや、一部地域において原油市況の影響などから先送りされていた設備投資が再び動き出すなど、回復の兆しが見られました。
こうした市場環境のなか、当社グループでは、働き方改革への機運の高まりを受け、「EmpoweredOffice(※3)」をはじめとした働き方改革関連事業の取り組みを継続して強化するとともに、DX技術領域に関する実証実験など新ソリューションの開発・検証や、2018年1月に設立したCVC(※4)ファンドを通じたベンチャー企業への出資などの成長投資を積極的に展開いたしました。また、足元、活性化しているホテルの新築や建て替えに伴う通信インフラ整備需要にも積極的に対応すると同時に、設備投資の回復が見込まれる通信事業者向けではKDDI株式会社と合弁で新会社を設立し基地局施工体制の再構築を行いました。加えて、今後IoTへの適用で急成長が期待されるLPWA(※5)の分野では、ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社、オリックス株式会社と共同事業者として新規格の事業展開を開始するなど事業拡大に向けた取り組みの強化を行いました。
これらの結果、当期における連結業績は、売上高 2,779億49百万円(前期比 3.7%増加)
営業利益 127億74百万円(前期比 15.5%増加)
経常利益 130億23百万円(前期比 18.9%増加)
親会社株主に帰属する当期純利益 88億85百万円(前期比 20.8%増加)
<参考>受注高 2,847億39百万円(前期比 1.1%減少)
となりました。
売上高は、2,779億49百万円と前期比3.7%の増加となりました。これは、働き方改革関連分野やホテル等のサービス業向けネットワーク構築などを中心に企業ネットワークおよびキャリアネットワーク分野の売上高が増加したことによるものであります。なお、受注高は、前期の大型案件受注の反動減やメガソーラープロジェクトの受注取り消しの影響がありましたが、ホテル等のサービス業や金融業を中心とした一般企業向けや、通信事業者向けが拡大するとともに、海外大型案件の受注などもあり、前期比1.1%減少の2,847億39百万円とほぼ横ばいとなりました。
収益面では、成長に向けた費用が増加しましたが、売上高の増加に加え、企業ネットワークにおける付加価値が高い案件の売上構成比の増加やコスト効率化および社会インフラにおける原価低減効果などにより原価率が大幅に改善したことで、営業利益が前期比15.5%増加の127億74百万円、経常利益が18.9%増加の130億23百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が20.8%増加の88億85百万円となりました。
セグメント情報につきましては次のとおりであります。
企業ネットワーク事業
働き方改革へのICT投資が引き続き堅調に推移し、働き方改革ソリューション「EmpoweredOffice」を軸に業種全般が拡大したことにより、売上高は前期比10.7%増加の1,227億75百万円となりました。
キャリアネットワーク事業
通信事業者向け事業が拡大したことや、サービス業向けネットワーク構築などの非キャリア分野が拡大したことにより、売上高は前期比8.7%増加の705億29百万円となりました。
社会インフラ事業
放送・CATV分野は拡大しましたが、大型のメガソーラープロジェクトにおける土木造成領域の反動減と海外向け売上の減少により、売上高は前期比9.3%減少の772億60百万円となりました。
<セグメントの概要>
②キャッシュ・フローの状況
当期末の現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前期末に比べ29億27百万円減少し、543億54百万円となりました。
各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は83億96百万円となりました。これは主に、売上債権の増加、たな卸資産の増加、仕入債務の増加、法人税等の支払などによるものであります。当期は、大型のメガソーラープロジェクトに係わる売掛金の回収などにより、前期と比べると36億16百万円の資金の増加となっております。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は、56億4百万円となりました。これは主に、基幹システム構築やアウトソーシング設備への投資、LPWAサービスの販売権取得によるもので、前期と比べると28億1百万円の資金の減少となっております。
この結果、営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローを合算したフリー・キャッシュ・フローは、27億91百万円の資金の増加となりました。前期と比べると8億14百万円の資金の増加となっております。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は、56億15百万円となりました。これは主に、借入金の返済や配当金の支払などによるもので、前期と比べると12億49百万円の資金の減少となっております。なお、利益配当金につきましては、前期末の1株当たり配当金を37円、中間の1株当たり配当金を38円にしたことにより、前期と比べると97百万円増加し、37億17百万円の支払となっております。
③生産、受注および販売の実績
a.受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
b.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)1 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
2 主な相手先の販売実績および当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①重要な会計方針および見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。
連結財務諸表の作成に際し、決算日における資産・負債の数値ならびに報告期間における収益・費用の数値に影響を与える見積りを行っております。当社は、過去の実績や状況に応じ合理的だと考えられる様々な要因に基づき、見積りおよび判断を行っておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループは、特に以下の重要な会計方針が、当社の連結財務諸表の作成において使用される見積りに大きな影響を及ぼすと考えております。
a. 貸倒引当金
当社グループは、顧客の支払い不能時に発生する損失の見積額について、貸倒引当金を計上しております。顧客の財務状態が悪化し、その支払い能力が低下した場合、追加引当が必要となる可能性があります。
b. 受注損失引当金
当社グループは、顧客より受注済みの案件のうち、当該受注契約の履行に伴い、翌連結会計年度以降に損失の発生が見込まれ、かつ、当該損失額を合理的に見積もることが可能なものについては、将来の損失に備えるため翌連結会計年度以降に発生が見込まれる損失額を受注損失引当金として計上しております。将来、発生原価が見積額を上回ると予想される場合、追加引当が必要となる可能性があります。
c. 繰延税金資産
当社グループは、繰延税金資産について、将来の課税所得および、実現可能性の高い継続的な税務計画を検討いたしますが、繰延税金資産の全部または一部を将来実現できないと判断した場合、当該判断を行った期間に繰延税金資産の取り崩し額を費用として計上いたします。同様に、計上金額の純額を上回る繰延税金資産を今後実現できると判断した場合、当該判断を行った期間に繰延税金資産の追加計上額を利益として計上いたします。
d. 退職給付に係る負債
退職給付費用および債務は、数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出されております。これらの前提条件には、割引率、将来の報奨水準、退職率、死亡率および年金資産の収益率などが含まれております。実際の結果が前提条件と異なる場合、または前提条件が変更された場合、その影響は累積され、将来にわたって規則的に認識されるため、一般的には将来期間において認識される費用に影響を及ぼします。未認識数理計算上の差異の償却は、退職給付費用の一部を構成しておりますが、前提条件の変化による影響や前提条件と実際との結果の違いの影響を規則的に費用認識したものであります。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容
a. 概要
当期のわが国経済は、雇用や所得環境が改善するなかで緩やかな回復が続きましたが、通商問題の動向やそれに伴う金融資本市場の変動など楽観視できない状況であり、足元では、輸出や生産の一部に弱さも見られました。
このような経済環境下、当社の事業領域であるICT市場におきましては、分野ごとに強弱が見られました。
企業におきましては、働き方改革などの企業の経営強化・競争力強化を目指した投資が堅調に推移したことに加え、インバウンド需要の高まりを受けた設備投資の活性化が見られました。加えて、AIやIoT、RPA、データ解析といったDXなどの最先端技術領域への関心も高まりました。通信事業者におきましては、ネットワークインフラへの投資に回復が見られました。官庁・自治体、公益関連では、放送・CATV分野など都市基盤高度化に向けた投資は堅調に推移する一方で、消防指令システム分野における投資が端境期となった影響なども見られました。海外におきましては、ASEAN地域で都市インフラ増強に伴う通信設備需要の高まりや、一部地域において原油市況の影響などから先送りされていた設備投資が再び動き出すなど、回復の兆しが見られました。
こうした市場環境のなか、当社グループでは、働き方改革への機運の高まりを受け、「EmpoweredOffice」をはじめとした働き方改革関連事業の取り組みを継続して強化するとともに、DX技術領域に関する実証実験など新ソリューションの開発・検証や、2018年1月に設立したCVCファンドを通じたベンチャー企業への出資などの成長投資を積極的に展開いたしました。また、足元、活性化しているホテルの新築や建て替えに伴う通信インフラ整備需要にも積極的に対応すると同時に、設備投資の回復が見込まれる通信事業者向けではKDDI株式会社と合弁で新会社を設立し基地局施工体制の再構築を行いました。加えて、今後IoTへの適用で急成長が期待されるLPWAの分野では、ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社、オリックス株式会社と共同事業者として新規格の事業展開を開始するなど事業拡大に向けた取り組みの強化を行いました。
b. 売上高
売上高は2,779億49百万円(前期比3.7%増加)となりました。
企業ネットワーク事業の売上高は、働き方改革へのICT投資が引き続き堅調に推移し、働き方改革ソリューション「EmpoweredOffice」を軸に業種全般が拡大したことにより、1,227億75百万円(前期比10.7%増加)となりました。
キャリアネットワーク事業の売上高は、通信事業者向け事業が拡大したことや、サービス業向けネットワーク構築などの非キャリア分野が拡大したことにより、売上高は705億29百万円(前期比8.7%増加)となりました。
社会インフラ事業の売上高は、放送・CATV分野は拡大しましたが、大型のメガソーラープロジェクトにおける土木造成領域の反動減と海外向け売上の減少により、772億60百万円(前期比9.3%減少)となりました。
c. 売上総利益
売上総利益は、収益が改善したことにより476億81百万円(前期比7.7%増加)となり、売上総利益率は17.2%となりました。
d. 販売費及び一般管理費、営業利益
販売費及び一般管理費は、前期比16億98百万円増加の349億6百万円となりました。
一方で、売上高の増加などにより、営業利益は127億74百万円(前期比15.5%増加)となりました。
e. 営業外損益、経常利益
営業外損益は、前期比3億48百万円改善の2億48百万円の益(純額)となりました。
この結果、経常利益は130億23百万円(前期比18.9%増加)となりました。
f. 親会社株主に帰属する当期純利益
親会社株主に帰属する当期純利益は、前期比20.8%増加し、金額にして15億28百万円増加の88億85百万円となりました。
③資本の財源および資金の流動性
a. 資産
当期末の総資産は、前期末に比べ85億27百万円増加し、2,161億71百万円となりました。流動資産は、前期末に比べ58億17百万円増加し、1,810億36百万円となりました。これは主に、大型のメガソーラープロジェクトに係わる資材先行投入などによりたな卸資産が49億44百万円増加したほか、大型の消防防災案件に係わる売掛金の計上などにより受取手形及び売掛金が26億41百万円増加した一方、現金及び預金が29億27百万円減少したことなどによるものであります。固定資産は、前期末に比べ27億9百万円増加し、351億34百万円となりました。これは主に、基幹システム構築やLPWAサービスの販売権取得によるものであります。
b. 負債
当期末の負債は、前期末に比べ26億51百万円増加し、1,085億62百万円となりました。これは主に、大型のメガソーラープロジェクトに係わる前受金の受領などにより前受金が24億79百万円、受注損失引当金が14億22百万円、支払手形及び買掛金が7億円増加した一方、借入金の返済により借入金が16億88百万円減少したほか、法人税等の支払により未払法人税等が5億93百万円減少したことなどによるものであります。
c. 純資産
当期末の純資産は、前期末に比べ58億76百万円増加し、1,076億8百万円となりました。これは主に、利益剰余金が51億63百万円増加したほか、非支配株主持分が4億60百万円、退職給付に係る調整累計額が3億59百万円増加したことなどによるものであります。
d. キャッシュ・フローの状況
当期のキャッシュ・フローの分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
e. 資金需要
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、当社グループの事業展開のための材料および機器の購入のほか、外注費、販売費及び一般管理費等の経費によるものであります。販売費及び一般管理費の主なものは、人件費および当社グループの事業所の不動産賃借料等であります。
※1 ICT:
Information and Communication Technology(情報通信技術)の略。
※2 DX:
Digital transformationの略。AI・IoT・RPA(Robotic Process Automation)等の最先端技術を用いて、企業・産業の事業活動や都市運営などを大きく変革すること。
※3 EmpoweredOffice(エンパワードオフィス):
当社の提供する働き方改革ソリューション。当社の強みであるICTとファシリティ施工力を融合し、最先端技術を使い、働く場所や時間にとらわれない、より知的で創造的なワークスタイルへの業務プロセス改革を実現するとともに、セキュリティ強化や環境対応力といった社会的責任に応える「働き方」の改革を提案するもの。
※4 CVC:
Corporate Venture Capital の略。投資会社がキャピタルゲインを目的としたべンチャーキャピタル(VC)と異なり、事業会社が本業との事業シナジーを目的にベンチャー企業へ出資するVC。
※5 LPWA:
Low Power Wide Area の略。従来の無線ネットワークと比べ、低速ながら低コスト・低消費電力という特長を持つ、IoTに最適な広域ネットワーク技術。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態および経営成績の状況
当連結会計年度(2018年4月1日~2019年3月31日、以下、当期)のわが国経済は、雇用や所得環境が改善するなかで緩やかな回復が続きましたが、通商問題の動向やそれに伴う金融資本市場の変動など楽観視できない状況であり、足元では、輸出や生産の一部に弱さも見られました。
このような経済環境下、当社の事業領域であるICT(※1)市場におきましては、分野ごとに強弱が見られました。
企業におきましては、働き方改革などの企業の経営強化・競争力強化を目指した投資が堅調に推移したことに加え、インバウンド需要の高まりを受けた設備投資の活性化が見られました。加えて、AIやIoT、RPA、データ解析といったDX(※2)などの最先端技術領域への関心も高まりました。通信事業者におきましては、ネットワークインフラへの投資に回復が見られました。官庁・自治体、公益関連では、放送・CATV分野など都市基盤高度化に向けた投資は堅調に推移する一方で、消防指令システム分野における投資が端境期となった影響なども見られました。海外におきましては、ASEAN地域で都市インフラ増強に伴う通信設備需要の高まりや、一部地域において原油市況の影響などから先送りされていた設備投資が再び動き出すなど、回復の兆しが見られました。
こうした市場環境のなか、当社グループでは、働き方改革への機運の高まりを受け、「EmpoweredOffice(※3)」をはじめとした働き方改革関連事業の取り組みを継続して強化するとともに、DX技術領域に関する実証実験など新ソリューションの開発・検証や、2018年1月に設立したCVC(※4)ファンドを通じたベンチャー企業への出資などの成長投資を積極的に展開いたしました。また、足元、活性化しているホテルの新築や建て替えに伴う通信インフラ整備需要にも積極的に対応すると同時に、設備投資の回復が見込まれる通信事業者向けではKDDI株式会社と合弁で新会社を設立し基地局施工体制の再構築を行いました。加えて、今後IoTへの適用で急成長が期待されるLPWA(※5)の分野では、ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社、オリックス株式会社と共同事業者として新規格の事業展開を開始するなど事業拡大に向けた取り組みの強化を行いました。
これらの結果、当期における連結業績は、売上高 2,779億49百万円(前期比 3.7%増加)
営業利益 127億74百万円(前期比 15.5%増加)
経常利益 130億23百万円(前期比 18.9%増加)
親会社株主に帰属する当期純利益 88億85百万円(前期比 20.8%増加)
<参考>受注高 2,847億39百万円(前期比 1.1%減少)
となりました。
売上高は、2,779億49百万円と前期比3.7%の増加となりました。これは、働き方改革関連分野やホテル等のサービス業向けネットワーク構築などを中心に企業ネットワークおよびキャリアネットワーク分野の売上高が増加したことによるものであります。なお、受注高は、前期の大型案件受注の反動減やメガソーラープロジェクトの受注取り消しの影響がありましたが、ホテル等のサービス業や金融業を中心とした一般企業向けや、通信事業者向けが拡大するとともに、海外大型案件の受注などもあり、前期比1.1%減少の2,847億39百万円とほぼ横ばいとなりました。
収益面では、成長に向けた費用が増加しましたが、売上高の増加に加え、企業ネットワークにおける付加価値が高い案件の売上構成比の増加やコスト効率化および社会インフラにおける原価低減効果などにより原価率が大幅に改善したことで、営業利益が前期比15.5%増加の127億74百万円、経常利益が18.9%増加の130億23百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が20.8%増加の88億85百万円となりました。
セグメント情報につきましては次のとおりであります。
企業ネットワーク事業
働き方改革へのICT投資が引き続き堅調に推移し、働き方改革ソリューション「EmpoweredOffice」を軸に業種全般が拡大したことにより、売上高は前期比10.7%増加の1,227億75百万円となりました。
キャリアネットワーク事業
通信事業者向け事業が拡大したことや、サービス業向けネットワーク構築などの非キャリア分野が拡大したことにより、売上高は前期比8.7%増加の705億29百万円となりました。
社会インフラ事業
放送・CATV分野は拡大しましたが、大型のメガソーラープロジェクトにおける土木造成領域の反動減と海外向け売上の減少により、売上高は前期比9.3%減少の772億60百万円となりました。
<セグメントの概要>
セグメント | 主な事業内容 |
企業ネットワーク事業 | ◇主に企業等のオフィス向けのICTソリューションに関するサービスインテグレーションの提供 ◇ICTを核にセキュリティや環境等の対応まで含めた総合オフィスソリューションや、これらに関する運用・監視サービスならびにデータセンターやコンタクトセンターを活用したアウトソーシング・サービスの提供 |
キャリアネットワーク事業 | ◇主に通信事業者向けのICT基盤(移動体基地局からコアネットワークまで)におけるSIサービス・設置工事から運用・監視等の関連サービスに至るサービスインテグレーションの提供およびキャリアグレードの大規模かつ広域なICT基盤やデータセンターに関するSIサービスならびにこれらに関する運用・監視サービスの提供 ◇ネットワーク機器などの製造開発、販売およびシステムインテグレーションの提供 |
社会インフラ事業 | ◇主に官庁・自治体や公益法人(放送事業者、電力事業者など)向けのICTインフラに関するSIサービス・設置工事から運用・監視等の関連サービスに至るサービスインテグレーションの提供 ◇海外子会社における各種サービスの提供 |
その他 | ◇情報通信機器等の仕入販売 |
②キャッシュ・フローの状況
当期末の現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前期末に比べ29億27百万円減少し、543億54百万円となりました。
各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は83億96百万円となりました。これは主に、売上債権の増加、たな卸資産の増加、仕入債務の増加、法人税等の支払などによるものであります。当期は、大型のメガソーラープロジェクトに係わる売掛金の回収などにより、前期と比べると36億16百万円の資金の増加となっております。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は、56億4百万円となりました。これは主に、基幹システム構築やアウトソーシング設備への投資、LPWAサービスの販売権取得によるもので、前期と比べると28億1百万円の資金の減少となっております。
この結果、営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローを合算したフリー・キャッシュ・フローは、27億91百万円の資金の増加となりました。前期と比べると8億14百万円の資金の増加となっております。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は、56億15百万円となりました。これは主に、借入金の返済や配当金の支払などによるもので、前期と比べると12億49百万円の資金の減少となっております。なお、利益配当金につきましては、前期末の1株当たり配当金を37円、中間の1株当たり配当金を38円にしたことにより、前期と比べると97百万円増加し、37億17百万円の支払となっております。
③生産、受注および販売の実績
a.受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 受注高(百万円) | 前期比(%) |
企業ネットワーク事業 | 122,456 | △2.7 |
キャリアネットワーク事業 | 73,020 | 6.5 |
社会インフラ事業 | 80,285 | △7.8 |
その他 | 8,976 | 39.9 |
合計 | 284,739 | △1.1 |
(注) 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
b.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 販売高(百万円) | 前期比(%) |
企業ネットワーク事業 | 122,775 | 10.7 |
キャリアネットワーク事業 | 70,529 | 8.7 |
社会インフラ事業 | 77,260 | △9.3 |
その他 | 7,383 | 6.1 |
合計 | 277,949 | 3.7 |
(注)1 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
2 主な相手先の販売実績および当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
相手先 | 前連結会計年度 | 当連結会計年度 | ||
販売高(百万円) | 割合(%) | 販売高(百万円) | 割合(%) | |
日本電気㈱ | 67,203 | 25.1 | 68,808 | 24.8 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①重要な会計方針および見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。
連結財務諸表の作成に際し、決算日における資産・負債の数値ならびに報告期間における収益・費用の数値に影響を与える見積りを行っております。当社は、過去の実績や状況に応じ合理的だと考えられる様々な要因に基づき、見積りおよび判断を行っておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループは、特に以下の重要な会計方針が、当社の連結財務諸表の作成において使用される見積りに大きな影響を及ぼすと考えております。
a. 貸倒引当金
当社グループは、顧客の支払い不能時に発生する損失の見積額について、貸倒引当金を計上しております。顧客の財務状態が悪化し、その支払い能力が低下した場合、追加引当が必要となる可能性があります。
b. 受注損失引当金
当社グループは、顧客より受注済みの案件のうち、当該受注契約の履行に伴い、翌連結会計年度以降に損失の発生が見込まれ、かつ、当該損失額を合理的に見積もることが可能なものについては、将来の損失に備えるため翌連結会計年度以降に発生が見込まれる損失額を受注損失引当金として計上しております。将来、発生原価が見積額を上回ると予想される場合、追加引当が必要となる可能性があります。
c. 繰延税金資産
当社グループは、繰延税金資産について、将来の課税所得および、実現可能性の高い継続的な税務計画を検討いたしますが、繰延税金資産の全部または一部を将来実現できないと判断した場合、当該判断を行った期間に繰延税金資産の取り崩し額を費用として計上いたします。同様に、計上金額の純額を上回る繰延税金資産を今後実現できると判断した場合、当該判断を行った期間に繰延税金資産の追加計上額を利益として計上いたします。
d. 退職給付に係る負債
退職給付費用および債務は、数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出されております。これらの前提条件には、割引率、将来の報奨水準、退職率、死亡率および年金資産の収益率などが含まれております。実際の結果が前提条件と異なる場合、または前提条件が変更された場合、その影響は累積され、将来にわたって規則的に認識されるため、一般的には将来期間において認識される費用に影響を及ぼします。未認識数理計算上の差異の償却は、退職給付費用の一部を構成しておりますが、前提条件の変化による影響や前提条件と実際との結果の違いの影響を規則的に費用認識したものであります。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容
a. 概要
当期のわが国経済は、雇用や所得環境が改善するなかで緩やかな回復が続きましたが、通商問題の動向やそれに伴う金融資本市場の変動など楽観視できない状況であり、足元では、輸出や生産の一部に弱さも見られました。
このような経済環境下、当社の事業領域であるICT市場におきましては、分野ごとに強弱が見られました。
企業におきましては、働き方改革などの企業の経営強化・競争力強化を目指した投資が堅調に推移したことに加え、インバウンド需要の高まりを受けた設備投資の活性化が見られました。加えて、AIやIoT、RPA、データ解析といったDXなどの最先端技術領域への関心も高まりました。通信事業者におきましては、ネットワークインフラへの投資に回復が見られました。官庁・自治体、公益関連では、放送・CATV分野など都市基盤高度化に向けた投資は堅調に推移する一方で、消防指令システム分野における投資が端境期となった影響なども見られました。海外におきましては、ASEAN地域で都市インフラ増強に伴う通信設備需要の高まりや、一部地域において原油市況の影響などから先送りされていた設備投資が再び動き出すなど、回復の兆しが見られました。
こうした市場環境のなか、当社グループでは、働き方改革への機運の高まりを受け、「EmpoweredOffice」をはじめとした働き方改革関連事業の取り組みを継続して強化するとともに、DX技術領域に関する実証実験など新ソリューションの開発・検証や、2018年1月に設立したCVCファンドを通じたベンチャー企業への出資などの成長投資を積極的に展開いたしました。また、足元、活性化しているホテルの新築や建て替えに伴う通信インフラ整備需要にも積極的に対応すると同時に、設備投資の回復が見込まれる通信事業者向けではKDDI株式会社と合弁で新会社を設立し基地局施工体制の再構築を行いました。加えて、今後IoTへの適用で急成長が期待されるLPWAの分野では、ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社、オリックス株式会社と共同事業者として新規格の事業展開を開始するなど事業拡大に向けた取り組みの強化を行いました。
b. 売上高
売上高は2,779億49百万円(前期比3.7%増加)となりました。
企業ネットワーク事業の売上高は、働き方改革へのICT投資が引き続き堅調に推移し、働き方改革ソリューション「EmpoweredOffice」を軸に業種全般が拡大したことにより、1,227億75百万円(前期比10.7%増加)となりました。
キャリアネットワーク事業の売上高は、通信事業者向け事業が拡大したことや、サービス業向けネットワーク構築などの非キャリア分野が拡大したことにより、売上高は705億29百万円(前期比8.7%増加)となりました。
社会インフラ事業の売上高は、放送・CATV分野は拡大しましたが、大型のメガソーラープロジェクトにおける土木造成領域の反動減と海外向け売上の減少により、772億60百万円(前期比9.3%減少)となりました。
c. 売上総利益
売上総利益は、収益が改善したことにより476億81百万円(前期比7.7%増加)となり、売上総利益率は17.2%となりました。
d. 販売費及び一般管理費、営業利益
販売費及び一般管理費は、前期比16億98百万円増加の349億6百万円となりました。
一方で、売上高の増加などにより、営業利益は127億74百万円(前期比15.5%増加)となりました。
e. 営業外損益、経常利益
営業外損益は、前期比3億48百万円改善の2億48百万円の益(純額)となりました。
この結果、経常利益は130億23百万円(前期比18.9%増加)となりました。
f. 親会社株主に帰属する当期純利益
親会社株主に帰属する当期純利益は、前期比20.8%増加し、金額にして15億28百万円増加の88億85百万円となりました。
③資本の財源および資金の流動性
a. 資産
当期末の総資産は、前期末に比べ85億27百万円増加し、2,161億71百万円となりました。流動資産は、前期末に比べ58億17百万円増加し、1,810億36百万円となりました。これは主に、大型のメガソーラープロジェクトに係わる資材先行投入などによりたな卸資産が49億44百万円増加したほか、大型の消防防災案件に係わる売掛金の計上などにより受取手形及び売掛金が26億41百万円増加した一方、現金及び預金が29億27百万円減少したことなどによるものであります。固定資産は、前期末に比べ27億9百万円増加し、351億34百万円となりました。これは主に、基幹システム構築やLPWAサービスの販売権取得によるものであります。
b. 負債
当期末の負債は、前期末に比べ26億51百万円増加し、1,085億62百万円となりました。これは主に、大型のメガソーラープロジェクトに係わる前受金の受領などにより前受金が24億79百万円、受注損失引当金が14億22百万円、支払手形及び買掛金が7億円増加した一方、借入金の返済により借入金が16億88百万円減少したほか、法人税等の支払により未払法人税等が5億93百万円減少したことなどによるものであります。
c. 純資産
当期末の純資産は、前期末に比べ58億76百万円増加し、1,076億8百万円となりました。これは主に、利益剰余金が51億63百万円増加したほか、非支配株主持分が4億60百万円、退職給付に係る調整累計額が3億59百万円増加したことなどによるものであります。
d. キャッシュ・フローの状況
当期のキャッシュ・フローの分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
e. 資金需要
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、当社グループの事業展開のための材料および機器の購入のほか、外注費、販売費及び一般管理費等の経費によるものであります。販売費及び一般管理費の主なものは、人件費および当社グループの事業所の不動産賃借料等であります。
※1 ICT:
Information and Communication Technology(情報通信技術)の略。
※2 DX:
Digital transformationの略。AI・IoT・RPA(Robotic Process Automation)等の最先端技術を用いて、企業・産業の事業活動や都市運営などを大きく変革すること。
※3 EmpoweredOffice(エンパワードオフィス):
当社の提供する働き方改革ソリューション。当社の強みであるICTとファシリティ施工力を融合し、最先端技術を使い、働く場所や時間にとらわれない、より知的で創造的なワークスタイルへの業務プロセス改革を実現するとともに、セキュリティ強化や環境対応力といった社会的責任に応える「働き方」の改革を提案するもの。
※4 CVC:
Corporate Venture Capital の略。投資会社がキャピタルゲインを目的としたべンチャーキャピタル(VC)と異なり、事業会社が本業との事業シナジーを目的にベンチャー企業へ出資するVC。
※5 LPWA:
Low Power Wide Area の略。従来の無線ネットワークと比べ、低速ながら低コスト・低消費電力という特長を持つ、IoTに最適な広域ネットワーク技術。