有価証券報告書-第92期(2023/04/01-2024/03/31)
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態および経営成績の状況
当連結会計年度(2023年4月1日~2024年3月31日、以下、当期)のわが国経済は、新型コロナウイルス感染症による行動制限の緩和により経済活動の正常化に向けた動きが見られ、緩やかな回復が続きました。一方で、為替の変動、海外紛争の長期化などに伴う物価上昇や海外景気の下振れ、さらには令和6年能登半島地震の経済に与える影響など留意するリスクもあり、先行き不透明な状況が続いております。
このような経済環境下、当社グループの事業領域におけるお客様の投資意欲は、分野ごとに濃淡がありましたが、全般的には堅調に推移いたしました。
企業においては、DX(※1)などの最先端技術を活用した、オフィス、在宅といった場所にとらわれない新しい働き方や、製造業などにおけるスマートファクトリー化、それに伴うセキュリティの見直しなどのニーズが強まっております。通信事業者においては、全般的に、昨年度来の設備投資抑制の動きが一段と強まりました。ローカル5Gにおいては、通信事業者における5Gサービス本格普及の遅れの影響を受けて端末デバイスの低価格化が進まず、市場の立ち上がりに遅れが出ておりますが、発電所や医療など、高速無線ネットワークのなかでも高セキュリティや安定性などといったローカル5Gが強みとする特徴が必須となる領域から、徐々に実装への動きが見られております。官庁・自治体、公益関連においては、官庁・自治体における働き方改革への動きが顕在化してくるとともに、防災・減災や安全保障をテーマとしたネットワーク整備のニーズの高まりが見られ、また、道路等の交通インフラ分野でのICT(※2)投資も活発に行われました。
こうした市場環境のもと、当社グループでは、2022年5月に発表した中期経営計画「Shift up 2024」に基づき、Sustainable Symphonic Societyの実現に向け社会への提供価値を高めるべく、DX×次世代ネットワークを軸に、自社実践によるノウハウやお客様の現場を熟知している強みを活かしたお客様目線のコンサルテーションと顧客伴走によるスパイラル型成長を行う新しい事業モデルへのシフトに注力しております。
DX領域につきましては、2007年より取り組んでいる働き方改革関連事業を、さらにお客様の経営力、事業力強化につながるサービスへと進化させるべく、積極的なDX技術の活用によるイノベーションを生む働き方/プロセス改革に取り組み、そこから得られた技術・ノウハウなどを強みとしてサービス開発や提案型モデル(オファリングモデル)を強化してまいりました。また、企業向けのみならず自治体DX推進のニーズが高まる官庁・自治体向けには、パートナー企業とともに自治体の閉域ネットワークに対応したサービスを順次リリースし、お客様がソリューションを実際に目で見て体験出来る課題解決型ショーケースを活用したお客様提案を加速するとともに、様々な自治体とDX推進に関する協定を締結するなど、連携も強化しております。通信事業者向けにおいても、投資が抑制されているインフラ領域の体制効率化を進める一方で、お客様の業務プロセスに対する知見を活かし、DX技術による業務自動化サービスなど、運用効率化につながるDXサービスの提供へと領域の拡大を進めております。
5Gを含む次世代ネットワーク領域につきましては、先行市場に向けた対応を強化するとともに、海外企業や東京大学発のベンチャー企業などとのパートナーシップによる製品・サービスの強化、技術者の育成など、市場の本格立ち上がりに備えた積極的な取り組みを行いました。
さらに、新たな事業領域の開拓として、ICTを活用した陸上養殖により、気象等の諸条件に左右されず水産資源の安定的供給を実現すべく山梨県にサーモンの陸上養殖場を設立しておりましたが、2023年8月より育成したサーモンの出荷を開始いたしました。
そして、これらの取り組み成果を、より迅速にお客様に実装するため、全社横断組織であった新事業開発機能を、2023年4月に各事業部門への融合を図りました。また、成長戦略を支えるコンサルティングやDX、次世代ネットワークに対応した高度人材の育成や、健康経営の推進など、社員一人ひとりが能力を最大限に発揮するための施策を積極的に推進するなど人的資本経営の強化を進めてきました。
加えて、社会課題としての重要性がさらに拡大している気候変動対応に関して、次世代ネットワーク活用や最先端のDXソリューション実証の場として2023年3月に移転した新本社ビルを活用し、カーボンニュートラルの実現に向けたオフィスビル活用の検証を行うなど、その強化を進めております。また、これまで培ってきた様々な環境関連のサービス、ノウハウと当社の全事業とを組み合わせて気候変動対応型ビジネスの強化を図っており、2023年5月には経済産業省の「GXリーグ」にも参画いたしました。情報開示の面でも、2023年6月にはTCFD(※3)のフレームワークに基づく2度目の情報開示を行うとともに、カーボンニュートラル実現に向けた目標を前倒し修正いたしました。
これらの結果、当期における連結業績は、売上高 3,595億 5百万円(前期比 12.1%増加)
営業利益 251億20百万円(前期比 10.4%増加)
経常利益 246億84百万円(前期比 7.5%増加)
親会社株主に帰属する当期純利益 153億29百万円(前期比 11.0%増加)
<参考>受注高 3,772億34百万円(前期比 6.0%増加)
となりました。
売上高は、製造業や公共企業などの企業向けや官公庁向けを中心に受注が好調に推移したなか、豊富な受注残からの売上が本格化したことなどにより全セグメントで増加し、前期比12.1%増加の3,595億5百万円となりました。
利益面では、データ経営の強化とその実践を通じた提案力の向上に向けた新基幹システムの導入に係る費用など成長に向けた費用の増加により販売費及び一般管理費が拡大しましたが、売上高拡大の本格化により、営業利益は前期比10.4%増加の251億20百万円、経常利益は7.5%増加の246億84百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は11.0%増加の153億29百万円となりました。
セグメント情報につきましては次のとおりであります。
DXソリューション事業
コンタクトセンター事業を行う子会社における新型コロナ関連ビジネスの売上が減少しましたが、DX技術を活用した働き方改革や次世代ネットワーク・セキュリティ分野など中期経営計画における注力領域に加えて、既存領域も増加し、売上高は前期比13.5%増加の1,297億10百万円となりました。
ネットワークソリューション事業
通信事業者向けは設備投資抑制の影響を受け厳しさが継続しておりますが、宇宙や放送関連などといった社会基盤事業が増加したことに加え、改刷需要を捉えた製造子会社の売上増加により、売上高は前期比4.9%増加の830億88百万円となりました。
社会・環境ソリューション事業
受注残からの売上本格化も追い風に、道路・交通などの国内ICT施工領域を中心に増加したことに加え、当期に受注した官公庁向け機器調達大型案件の売上もあり、売上高は前期比15.0%増加の1,371億61百万円と大きく拡大いたしました。
<セグメントの概要>
②キャッシュ・フローの状況
当期の現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前期末に比べ49億58百万円増加し、735億7百万円となりました。
各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は以下のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は202億28百万円となりました。これは主に、売上債権及び契約資産の増加、棚卸資産の減少、仕入債務の増加、法人税等の支払などによるものであります。前期と比べると174億11百万円の資金の増加となっております。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は、48億48百万円となりました。これは主に、有形固定資産および無形固定資産の取得によるもので、前期と比べると86百万円の資金の増加となっております。
この結果、営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローを合算したフリー・キャッシュ・フローは、153億79百万円の増加となりました。前期と比べると174億97百万円の資金の増加となっております。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は、105億20百万円となりました。これは主に、配当金の支払および短期借入金の返済などによるもので、前期と比べると12億76百万円の資金の減少となっております。なお、配当金につきましては、前年度末の1株当たり配当金を23円、中間の1株当たり配当金を24.5円にしたことにより、70億67百万円の支払となっております。
③生産、受注および販売の実績
a.受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
b.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)主な相手先の販売実績および当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①財政状態および経営成績の状況に関する認識および分析・検討内容
a. 概要
当期のわが国経済は、新型コロナウイルス感染症による行動制限の緩和により経済活動の正常化に向けた動きが見られ、緩やかな回復が続きました。一方で、為替の変動、海外紛争の長期化などに伴う物価上昇や海外景気の下振れ、さらには令和6年能登半島地震の経済に与える影響など留意するリスクもあり、先行き不透明な状況が続いております。
このような経済環境下、当社グループの事業領域におけるお客様の投資意欲は、分野ごとに濃淡がありましたが、全般的には堅調に推移いたしました。
企業においては、DX(※1)などの最先端技術を活用した、オフィス、在宅といった場所にとらわれない新しい働き方や、製造業などにおけるスマートファクトリー化、それに伴うセキュリティの見直しなどのニーズが強まっております。通信事業者においては、全般的に、昨年度来の設備投資抑制の動きが一段と強まりました。ローカル5Gにおいては、通信事業者における5Gサービス本格普及の遅れの影響を受けて端末デバイスの低価格化が進まず、市場の立ち上がりに遅れが出ておりますが、発電所や医療など、高速無線ネットワークのなかでも高セキュリティや安定性などといったローカル5Gが強みとする特徴が必須となる領域から、徐々に実装への動きが見られております。官庁・自治体、公益関連においては、官庁・自治体における働き方改革への動きが顕在化してくるとともに、防災・減災や安全保障をテーマとしたネットワーク整備のニーズの高まりが見られ、また、道路等の交通インフラ分野でのICT(※2)投資も活発に行われました。
こうした市場環境のもと、当社グループでは、2022年5月に発表した中期経営計画「Shift up 2024」に基づき、Sustainable Symphonic Societyの実現に向け社会への提供価値を高めるべく、DX×次世代ネットワークを軸に、自社実践によるノウハウやお客様の現場を熟知している強みを活かしたお客様目線のコンサルテーションと顧客伴走によるスパイラル型成長を行う新しい事業モデルへのシフトに注力しております。
DX領域につきましては、2007年より取り組んでいる働き方改革関連事業を、さらにお客様の経営力、事業力強化につながるサービスへと進化させるべく、積極的なDX技術の活用によるイノベーションを生む働き方/プロセス改革に取り組み、そこから得られた技術・ノウハウなどを強みとしてサービス開発や提案型モデル(オファリングモデル)を強化してまいりました。また、企業向けのみならず自治体DX推進のニーズが高まる官庁・自治体向けには、パートナー企業とともに自治体の閉域ネットワークに対応したサービスを順次リリースし、お客様がソリューションを実際に目で見て体験出来る課題解決型ショーケースを活用したお客様提案を加速するとともに、様々な自治体とDX推進に関する協定を締結するなど、連携も強化しております。通信事業者向けにおいても、投資が抑制されているインフラ領域の体制効率化を進める一方で、お客様の業務プロセスに対する知見を活かし、DX技術による業務自動化サービスなど、運用効率化につながるDXサービスの提供へと領域の拡大を進めております。
5Gを含む次世代ネットワーク領域につきましては、先行市場に向けた対応を強化するとともに、海外企業や東京大学発のベンチャー企業などとのパートナーシップによる製品・サービスの強化、技術者の育成など、市場の本格立ち上がりに備えた積極的な取り組みを行いました。
さらに、新たな事業領域の開拓として、ICTを活用した陸上養殖により、気象等の諸条件に左右されず水産資源の安定的供給を実現すべく山梨県にサーモンの陸上養殖場を設立しておりましたが、2023年8月より育成したサーモンの出荷を開始いたしました。
そして、これらの取り組み成果を、より迅速にお客様に実装するため、全社横断組織であった新事業開発機能を、2023年4月に各事業部門への融合を図りました。また、成長戦略を支えるコンサルティングやDX、次世代ネットワークに対応した高度人材の育成や、健康経営の推進など、社員一人ひとりが能力を最大限に発揮するための施策を積極的に推進するなど人的資本経営の強化を進めてきました。
加えて、社会課題としての重要性がさらに拡大している気候変動対応に関して、次世代ネットワーク活用や最先端のDXソリューション実証の場として2023年3月に移転した新本社ビルを活用し、カーボンニュートラルの実現に向けたオフィスビル活用の検証を行うなど、その強化を進めております。また、これまで培ってきた様々な環境関連のサービス、ノウハウと当社の全事業とを組み合わせて気候変動対応型ビジネスの強化を図っており、2023年5月には経済産業省の「GXリーグ」にも参画いたしました。情報開示の面でも、2023年6月にはTCFD(※3)のフレームワークに基づく2度目の情報開示を行うとともに、カーボンニュートラル実現に向けた目標を前倒し修正いたしました。
b. 売上高
売上高は、前述の取り組みの結果、3,595億5百万円(前期比12.1%の増加)となりました。
DXソリューション事業の売上高は、コンタクトセンター事業を行う子会社における新型コロナ関連ビジネスの売上が減少しましたが、DX技術を活用した働き方改革や次世代ネットワーク・セキュリティ分野など中期経営計画における注力領域に加えて、既存領域も増加し、1,297億10百万円(前期比13.5%増加)となりました。
ネットワークソリューション事業の売上高は、通信事業者向けは設備投資抑制の影響を受け厳しさが継続しておりますが、宇宙や放送関連などといった社会基盤事業が増加したことに加え、改刷需要を捉えた製造子会社の売上増加により、830億88百万円(前期比4.9%増加)となりました。
社会・環境ソリューション事業の売上高は、受注残からの売上本格化も追い風に、道路・交通などの国内ICT施工領域を中心に増加したことに加え、当期に受注した官公庁向け機器調達大型案件の売上もあり、1,371億61百万円(前期比15.0%増加)となりました。
c. 売上総利益
売上総利益は、712億28百万円(前期比7.0%の増加)となり、売上総利益率は19.8%となりました。
d. 販売費及び一般管理費、営業利益
販売費及び一般管理費は、データ経営の強化とその実践を通じた提案力の向上に向けた新基幹システムの導入に係る費用など成長に向けた費用の増加により、前期比23億13百万円増加の461億8百万円となりました。
一方で、売上高拡大の本格化により、営業利益は251億20百万円(前期比10.4%の増加)となりました。
e. 営業外損益、経常利益
営業外損益は、前期比6億55百万円悪化の4億35百万円の損(純額)となりました。
この結果、経常利益は246億84百万円(前期比7.5%の増加)となりました。
f. 親会社株主に帰属する当期純利益
親会社株主に帰属する当期純利益は、前期比11.0%増加し、金額にして15億16百万円増加の153億29百万円となりました。
g. 資産
当期末の総資産は、前期末に比べ178億97百万円増加し、2,848億97百万円となりました。流動資産は、前期末に比べ167億28百万円増加し、2,374億64百万円となりました。これは主に、現金及び預金が49億58百万円、受取手形、電子記録債権、売掛金及び契約資産が合計で119億11百万円増加したことなどによるものであります。固定資産は、前期末に比べ11億68百万円増加し、474億33百万円となりました。
h. 負債
当期末の負債は、前期末に比べ61億30百万円増加し、1,274億16百万円となりました。これは主に、支払手形及び買掛金、電子記録債務が合計で45億52百万円、未払消費税等が21億79百万円、契約負債が15億31百万円増加したことなどによるものであります。
i. 純資産
当期末の純資産は、前期末に比べ117億66百万円増加し、1,574億81百万円となりました。
これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益が153億29百万円、第91期期末および第92期中間配当金の支払70億75百万円により利益剰余金が82億54百万円増加したことなどによるものであります。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当期の現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前期末に比べ49億58百万円増加し、735億7百万円となりました。
各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は、202億28百万円となりました。これは主に、売上債権および契約資産の増加、棚卸資産の減少、仕入債務の増加、法人税等の支払などによるものであります。前期と比べると174億11百万円の資金の増加となっております。
なお、当社グループでは資本効率性の指標であるROEを高め、資本コストを上回るリターンを継続的に実現し、最大化するためには、運転資本の効率化を追求する必要があると考えており、キャッシュ・コンバージョン・サイクルの圧縮に努めております。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当社は新たな技術をもたらす有望なスタートアップ企業との事業共創に継続的に取り組んでおります。
こうした取り組みにより、投資活動の結果使用した資金は、48億48百万円となりました。前期と比べると86百万円の資金の増加となっております。
この結果、営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローを合算したフリー・キャッシュ・フローは、153億79百万円の資金の増加となりました。前期と比べると174億97百万円の資金の増加となっております。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は、105億20百万円となりました。これは主に、配当金の支払および短期借入金の返済などによるもので、前期と比べると12億76百万円の資金の減少となっております。
配当金につきましては、前期末の1株当たり配当金を23円、中間の1株当たり配当金を24.5円にしたことにより、前期と比べると77百万円増加し、70億67百万円の支払となっております。
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、当社グループの事業展開のための材料および機器の購入のほか、外注費、販売費及び一般管理費等の経費によるものであります。販売費及び一般管理費の主なものは、人件費および当社グループの事業所の不動産賃借料等であります。当社グループは国や自治体、通信事業者等の公共的なインフラ構築をはじめとした信頼性の高いサービスを継続的に提供する責務があり、健全な財務基盤が要求されます。このため突発的な資金需要等に備え、売上高の2カ月程度は現預金として確保しておきたいと考えております。この資金の財源は主として営業活動によるキャッシュ・フローによる自己資金により、現在必要とされる資金水準を満たす流動性を保持していると考えております。また、事業を行うための設備計画等に照らして、必要な資金を調達(主に銀行等金融機関からの借入)しており、今後、事業成長や大きな投資等でさらなる資金需要が出てきた際は、株主価値に配慮し、売上高の2カ月分を超過した現預金に加え、健全性を損なわない範囲での負債の活用を優先してまいります。
なお、当社は短期的な資金調達方法として、国内金融機関2社と合計80億円のコミットメントライン契約を締結しております。
③重要な会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。
連結財務諸表の作成に際し、決算日における資産・負債の数値ならびに報告期間における収益・費用の数値に影響を与える見積りを行っております。当社は、過去の実績や状況に応じ合理的だと考えられる様々な要因に基づき、見積りおよび判断を行っておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループは、特に以下の重要な会計方針が、当社の連結財務諸表の作成において使用される見積りに大きな影響を及ぼすと考えております。
a. 一定期間にわたり履行義務が充足される施工工事等の収益認識
当社グループは、施工工事等において、一定の期間にわたり充足される履行義務のうち、合理的な進捗度の見積りが出来るものにつきましては、期間がごく短い場合を除き、履行義務の充足に係る進捗度を見積もり、当該進捗度に基づき収益を一定の期間にわたり認識しております。なお、履行義務の充足に係る進捗度の見積りの方法は、見積工事原価総額に対する発生原価の割合(インプット法)で算出しております。将来工事原価総額の見積りの前提条件の変更等(設計変更や天災等)により当初見積りの変更が発生する可能性があります。
b. 繰延税金資産
当社グループは、繰延税金資産につきまして、将来の課税所得および、実現可能性の高い継続的な税務計画を検討しますが、繰延税金資産の全部または一部を将来実現出来ないと判断した場合、当該判断を行った期間に繰延税金資産の取り崩し額を費用として計上します。同様に、計上金額の純額を上回る繰延税金資産を今後実現出来ると判断した場合、当該判断を行った期間に繰延税金資産の追加計上額を利益として計上します。
c. 退職給付に係る負債
退職給付費用および債務は、数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出されております。これらの前提条件には、割引率、将来の報酬水準、退職率、死亡率および年金資産の収益率などが含まれております。実際の結果が前提条件と異なる場合、または前提条件が変更された場合、その影響は累積され、将来にわたって規則的に認識されるため、一般的には将来期間において認識される費用に影響を及ぼします。未認識数理計算上の差異の償却は、退職給付費用の一部を構成しておりますが、前提条件の変化による影響や前提条件と実際との結果の違いの影響を規則的に費用認識したものであります。
※1 DX:
Digital Transformationの略。AI・IoT・RPA(Robotic Process Automation)等の最先端技術を用いて、企
業・産業の事業活動や都市運営などを大きく変革すること。
※2 ICT:
Information and Communication Technology(情報通信技術)の略。
※3 TCFD:
気候関連財務情報開示タスクフォース。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態および経営成績の状況
当連結会計年度(2023年4月1日~2024年3月31日、以下、当期)のわが国経済は、新型コロナウイルス感染症による行動制限の緩和により経済活動の正常化に向けた動きが見られ、緩やかな回復が続きました。一方で、為替の変動、海外紛争の長期化などに伴う物価上昇や海外景気の下振れ、さらには令和6年能登半島地震の経済に与える影響など留意するリスクもあり、先行き不透明な状況が続いております。
このような経済環境下、当社グループの事業領域におけるお客様の投資意欲は、分野ごとに濃淡がありましたが、全般的には堅調に推移いたしました。
企業においては、DX(※1)などの最先端技術を活用した、オフィス、在宅といった場所にとらわれない新しい働き方や、製造業などにおけるスマートファクトリー化、それに伴うセキュリティの見直しなどのニーズが強まっております。通信事業者においては、全般的に、昨年度来の設備投資抑制の動きが一段と強まりました。ローカル5Gにおいては、通信事業者における5Gサービス本格普及の遅れの影響を受けて端末デバイスの低価格化が進まず、市場の立ち上がりに遅れが出ておりますが、発電所や医療など、高速無線ネットワークのなかでも高セキュリティや安定性などといったローカル5Gが強みとする特徴が必須となる領域から、徐々に実装への動きが見られております。官庁・自治体、公益関連においては、官庁・自治体における働き方改革への動きが顕在化してくるとともに、防災・減災や安全保障をテーマとしたネットワーク整備のニーズの高まりが見られ、また、道路等の交通インフラ分野でのICT(※2)投資も活発に行われました。
こうした市場環境のもと、当社グループでは、2022年5月に発表した中期経営計画「Shift up 2024」に基づき、Sustainable Symphonic Societyの実現に向け社会への提供価値を高めるべく、DX×次世代ネットワークを軸に、自社実践によるノウハウやお客様の現場を熟知している強みを活かしたお客様目線のコンサルテーションと顧客伴走によるスパイラル型成長を行う新しい事業モデルへのシフトに注力しております。
DX領域につきましては、2007年より取り組んでいる働き方改革関連事業を、さらにお客様の経営力、事業力強化につながるサービスへと進化させるべく、積極的なDX技術の活用によるイノベーションを生む働き方/プロセス改革に取り組み、そこから得られた技術・ノウハウなどを強みとしてサービス開発や提案型モデル(オファリングモデル)を強化してまいりました。また、企業向けのみならず自治体DX推進のニーズが高まる官庁・自治体向けには、パートナー企業とともに自治体の閉域ネットワークに対応したサービスを順次リリースし、お客様がソリューションを実際に目で見て体験出来る課題解決型ショーケースを活用したお客様提案を加速するとともに、様々な自治体とDX推進に関する協定を締結するなど、連携も強化しております。通信事業者向けにおいても、投資が抑制されているインフラ領域の体制効率化を進める一方で、お客様の業務プロセスに対する知見を活かし、DX技術による業務自動化サービスなど、運用効率化につながるDXサービスの提供へと領域の拡大を進めております。
5Gを含む次世代ネットワーク領域につきましては、先行市場に向けた対応を強化するとともに、海外企業や東京大学発のベンチャー企業などとのパートナーシップによる製品・サービスの強化、技術者の育成など、市場の本格立ち上がりに備えた積極的な取り組みを行いました。
さらに、新たな事業領域の開拓として、ICTを活用した陸上養殖により、気象等の諸条件に左右されず水産資源の安定的供給を実現すべく山梨県にサーモンの陸上養殖場を設立しておりましたが、2023年8月より育成したサーモンの出荷を開始いたしました。
そして、これらの取り組み成果を、より迅速にお客様に実装するため、全社横断組織であった新事業開発機能を、2023年4月に各事業部門への融合を図りました。また、成長戦略を支えるコンサルティングやDX、次世代ネットワークに対応した高度人材の育成や、健康経営の推進など、社員一人ひとりが能力を最大限に発揮するための施策を積極的に推進するなど人的資本経営の強化を進めてきました。
加えて、社会課題としての重要性がさらに拡大している気候変動対応に関して、次世代ネットワーク活用や最先端のDXソリューション実証の場として2023年3月に移転した新本社ビルを活用し、カーボンニュートラルの実現に向けたオフィスビル活用の検証を行うなど、その強化を進めております。また、これまで培ってきた様々な環境関連のサービス、ノウハウと当社の全事業とを組み合わせて気候変動対応型ビジネスの強化を図っており、2023年5月には経済産業省の「GXリーグ」にも参画いたしました。情報開示の面でも、2023年6月にはTCFD(※3)のフレームワークに基づく2度目の情報開示を行うとともに、カーボンニュートラル実現に向けた目標を前倒し修正いたしました。
これらの結果、当期における連結業績は、売上高 3,595億 5百万円(前期比 12.1%増加)
営業利益 251億20百万円(前期比 10.4%増加)
経常利益 246億84百万円(前期比 7.5%増加)
親会社株主に帰属する当期純利益 153億29百万円(前期比 11.0%増加)
<参考>受注高 3,772億34百万円(前期比 6.0%増加)
となりました。
売上高は、製造業や公共企業などの企業向けや官公庁向けを中心に受注が好調に推移したなか、豊富な受注残からの売上が本格化したことなどにより全セグメントで増加し、前期比12.1%増加の3,595億5百万円となりました。
利益面では、データ経営の強化とその実践を通じた提案力の向上に向けた新基幹システムの導入に係る費用など成長に向けた費用の増加により販売費及び一般管理費が拡大しましたが、売上高拡大の本格化により、営業利益は前期比10.4%増加の251億20百万円、経常利益は7.5%増加の246億84百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は11.0%増加の153億29百万円となりました。
セグメント情報につきましては次のとおりであります。
DXソリューション事業
コンタクトセンター事業を行う子会社における新型コロナ関連ビジネスの売上が減少しましたが、DX技術を活用した働き方改革や次世代ネットワーク・セキュリティ分野など中期経営計画における注力領域に加えて、既存領域も増加し、売上高は前期比13.5%増加の1,297億10百万円となりました。
ネットワークソリューション事業
通信事業者向けは設備投資抑制の影響を受け厳しさが継続しておりますが、宇宙や放送関連などといった社会基盤事業が増加したことに加え、改刷需要を捉えた製造子会社の売上増加により、売上高は前期比4.9%増加の830億88百万円となりました。
社会・環境ソリューション事業
受注残からの売上本格化も追い風に、道路・交通などの国内ICT施工領域を中心に増加したことに加え、当期に受注した官公庁向け機器調達大型案件の売上もあり、売上高は前期比15.0%増加の1,371億61百万円と大きく拡大いたしました。
<セグメントの概要>
セグメント | 主な事業内容 |
DXソリューション事業 | 主に企業などの業務系ICTプラットフォームに関するシステムインテグレー ションおよびこれらに関するアウトソーシング/クラウドサービスや、最先端/デジタル技術を活用し、お客様のビジネス変革に資するソリュー ション、サービスの提供、ならびにコンタクトセンターサービスの提供 |
ネットワークソリューション事業 | 主に通信事業者や、宇宙・海洋・放送などの専門技術が必要な社会基盤事業者向けの、信頼性が要求される公共性の高いネットワークインフラに関するシステムインテグレーション、サービスの提供、ならびにネットワーク機器などの製造開発、販売およびシステムインテグレーションの提供 |
社会・環境ソリューション 事業 | 主に社会・公共事業者向けの施工事業、および当社が提供する各種ICTシステム、サービスに関する保守、運用などの全社サービス基盤の運用とそれらを活用したテクニカルサービスなどのサポートサービスの提供、ならびに海外現地法人によるネットワークインフラの施工事業 |
その他 | 主に情報通信機器等の仕入販売 |
②キャッシュ・フローの状況
当期の現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前期末に比べ49億58百万円増加し、735億7百万円となりました。
各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は以下のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は202億28百万円となりました。これは主に、売上債権及び契約資産の増加、棚卸資産の減少、仕入債務の増加、法人税等の支払などによるものであります。前期と比べると174億11百万円の資金の増加となっております。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は、48億48百万円となりました。これは主に、有形固定資産および無形固定資産の取得によるもので、前期と比べると86百万円の資金の増加となっております。
この結果、営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローを合算したフリー・キャッシュ・フローは、153億79百万円の増加となりました。前期と比べると174億97百万円の資金の増加となっております。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は、105億20百万円となりました。これは主に、配当金の支払および短期借入金の返済などによるもので、前期と比べると12億76百万円の資金の減少となっております。なお、配当金につきましては、前年度末の1株当たり配当金を23円、中間の1株当たり配当金を24.5円にしたことにより、70億67百万円の支払となっております。
③生産、受注および販売の実績
a.受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 受注高(百万円) | 前期比(%) |
DXソリューション事業 | 132,818 | 8.3 |
ネットワークソリューション事業 | 82,108 | △10.9 |
社会・環境ソリューション事業 | 142,596 | 7.5 |
その他 | 19,710 | 128.4 |
合計 | 377,234 | 6.0 |
b.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 販売高(百万円) | 前期比(%) |
DXソリューション事業 | 129,710 | 13.5 |
ネットワークソリューション事業 | 83,088 | 4.9 |
社会・環境ソリューション事業 | 137,161 | 15.0 |
その他 | 9,545 | 17.9 |
合計 | 359,505 | 12.1 |
(注)主な相手先の販売実績および当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
相手先 | 前連結会計年度 | 当連結会計年度 | ||
販売高(百万円) | 割合(%) | 販売高(百万円) | 割合(%) | |
日本電気㈱ | 70,597 | 22.0 | 77,708 | 21.6 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①財政状態および経営成績の状況に関する認識および分析・検討内容
a. 概要
当期のわが国経済は、新型コロナウイルス感染症による行動制限の緩和により経済活動の正常化に向けた動きが見られ、緩やかな回復が続きました。一方で、為替の変動、海外紛争の長期化などに伴う物価上昇や海外景気の下振れ、さらには令和6年能登半島地震の経済に与える影響など留意するリスクもあり、先行き不透明な状況が続いております。
このような経済環境下、当社グループの事業領域におけるお客様の投資意欲は、分野ごとに濃淡がありましたが、全般的には堅調に推移いたしました。
企業においては、DX(※1)などの最先端技術を活用した、オフィス、在宅といった場所にとらわれない新しい働き方や、製造業などにおけるスマートファクトリー化、それに伴うセキュリティの見直しなどのニーズが強まっております。通信事業者においては、全般的に、昨年度来の設備投資抑制の動きが一段と強まりました。ローカル5Gにおいては、通信事業者における5Gサービス本格普及の遅れの影響を受けて端末デバイスの低価格化が進まず、市場の立ち上がりに遅れが出ておりますが、発電所や医療など、高速無線ネットワークのなかでも高セキュリティや安定性などといったローカル5Gが強みとする特徴が必須となる領域から、徐々に実装への動きが見られております。官庁・自治体、公益関連においては、官庁・自治体における働き方改革への動きが顕在化してくるとともに、防災・減災や安全保障をテーマとしたネットワーク整備のニーズの高まりが見られ、また、道路等の交通インフラ分野でのICT(※2)投資も活発に行われました。
こうした市場環境のもと、当社グループでは、2022年5月に発表した中期経営計画「Shift up 2024」に基づき、Sustainable Symphonic Societyの実現に向け社会への提供価値を高めるべく、DX×次世代ネットワークを軸に、自社実践によるノウハウやお客様の現場を熟知している強みを活かしたお客様目線のコンサルテーションと顧客伴走によるスパイラル型成長を行う新しい事業モデルへのシフトに注力しております。
DX領域につきましては、2007年より取り組んでいる働き方改革関連事業を、さらにお客様の経営力、事業力強化につながるサービスへと進化させるべく、積極的なDX技術の活用によるイノベーションを生む働き方/プロセス改革に取り組み、そこから得られた技術・ノウハウなどを強みとしてサービス開発や提案型モデル(オファリングモデル)を強化してまいりました。また、企業向けのみならず自治体DX推進のニーズが高まる官庁・自治体向けには、パートナー企業とともに自治体の閉域ネットワークに対応したサービスを順次リリースし、お客様がソリューションを実際に目で見て体験出来る課題解決型ショーケースを活用したお客様提案を加速するとともに、様々な自治体とDX推進に関する協定を締結するなど、連携も強化しております。通信事業者向けにおいても、投資が抑制されているインフラ領域の体制効率化を進める一方で、お客様の業務プロセスに対する知見を活かし、DX技術による業務自動化サービスなど、運用効率化につながるDXサービスの提供へと領域の拡大を進めております。
5Gを含む次世代ネットワーク領域につきましては、先行市場に向けた対応を強化するとともに、海外企業や東京大学発のベンチャー企業などとのパートナーシップによる製品・サービスの強化、技術者の育成など、市場の本格立ち上がりに備えた積極的な取り組みを行いました。
さらに、新たな事業領域の開拓として、ICTを活用した陸上養殖により、気象等の諸条件に左右されず水産資源の安定的供給を実現すべく山梨県にサーモンの陸上養殖場を設立しておりましたが、2023年8月より育成したサーモンの出荷を開始いたしました。
そして、これらの取り組み成果を、より迅速にお客様に実装するため、全社横断組織であった新事業開発機能を、2023年4月に各事業部門への融合を図りました。また、成長戦略を支えるコンサルティングやDX、次世代ネットワークに対応した高度人材の育成や、健康経営の推進など、社員一人ひとりが能力を最大限に発揮するための施策を積極的に推進するなど人的資本経営の強化を進めてきました。
加えて、社会課題としての重要性がさらに拡大している気候変動対応に関して、次世代ネットワーク活用や最先端のDXソリューション実証の場として2023年3月に移転した新本社ビルを活用し、カーボンニュートラルの実現に向けたオフィスビル活用の検証を行うなど、その強化を進めております。また、これまで培ってきた様々な環境関連のサービス、ノウハウと当社の全事業とを組み合わせて気候変動対応型ビジネスの強化を図っており、2023年5月には経済産業省の「GXリーグ」にも参画いたしました。情報開示の面でも、2023年6月にはTCFD(※3)のフレームワークに基づく2度目の情報開示を行うとともに、カーボンニュートラル実現に向けた目標を前倒し修正いたしました。
b. 売上高
売上高は、前述の取り組みの結果、3,595億5百万円(前期比12.1%の増加)となりました。
DXソリューション事業の売上高は、コンタクトセンター事業を行う子会社における新型コロナ関連ビジネスの売上が減少しましたが、DX技術を活用した働き方改革や次世代ネットワーク・セキュリティ分野など中期経営計画における注力領域に加えて、既存領域も増加し、1,297億10百万円(前期比13.5%増加)となりました。
ネットワークソリューション事業の売上高は、通信事業者向けは設備投資抑制の影響を受け厳しさが継続しておりますが、宇宙や放送関連などといった社会基盤事業が増加したことに加え、改刷需要を捉えた製造子会社の売上増加により、830億88百万円(前期比4.9%増加)となりました。
社会・環境ソリューション事業の売上高は、受注残からの売上本格化も追い風に、道路・交通などの国内ICT施工領域を中心に増加したことに加え、当期に受注した官公庁向け機器調達大型案件の売上もあり、1,371億61百万円(前期比15.0%増加)となりました。
c. 売上総利益
売上総利益は、712億28百万円(前期比7.0%の増加)となり、売上総利益率は19.8%となりました。
d. 販売費及び一般管理費、営業利益
販売費及び一般管理費は、データ経営の強化とその実践を通じた提案力の向上に向けた新基幹システムの導入に係る費用など成長に向けた費用の増加により、前期比23億13百万円増加の461億8百万円となりました。
一方で、売上高拡大の本格化により、営業利益は251億20百万円(前期比10.4%の増加)となりました。
e. 営業外損益、経常利益
営業外損益は、前期比6億55百万円悪化の4億35百万円の損(純額)となりました。
この結果、経常利益は246億84百万円(前期比7.5%の増加)となりました。
f. 親会社株主に帰属する当期純利益
親会社株主に帰属する当期純利益は、前期比11.0%増加し、金額にして15億16百万円増加の153億29百万円となりました。
g. 資産
当期末の総資産は、前期末に比べ178億97百万円増加し、2,848億97百万円となりました。流動資産は、前期末に比べ167億28百万円増加し、2,374億64百万円となりました。これは主に、現金及び預金が49億58百万円、受取手形、電子記録債権、売掛金及び契約資産が合計で119億11百万円増加したことなどによるものであります。固定資産は、前期末に比べ11億68百万円増加し、474億33百万円となりました。
h. 負債
当期末の負債は、前期末に比べ61億30百万円増加し、1,274億16百万円となりました。これは主に、支払手形及び買掛金、電子記録債務が合計で45億52百万円、未払消費税等が21億79百万円、契約負債が15億31百万円増加したことなどによるものであります。
i. 純資産
当期末の純資産は、前期末に比べ117億66百万円増加し、1,574億81百万円となりました。
これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益が153億29百万円、第91期期末および第92期中間配当金の支払70億75百万円により利益剰余金が82億54百万円増加したことなどによるものであります。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当期の現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前期末に比べ49億58百万円増加し、735億7百万円となりました。
各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は、202億28百万円となりました。これは主に、売上債権および契約資産の増加、棚卸資産の減少、仕入債務の増加、法人税等の支払などによるものであります。前期と比べると174億11百万円の資金の増加となっております。
なお、当社グループでは資本効率性の指標であるROEを高め、資本コストを上回るリターンを継続的に実現し、最大化するためには、運転資本の効率化を追求する必要があると考えており、キャッシュ・コンバージョン・サイクルの圧縮に努めております。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当社は新たな技術をもたらす有望なスタートアップ企業との事業共創に継続的に取り組んでおります。
こうした取り組みにより、投資活動の結果使用した資金は、48億48百万円となりました。前期と比べると86百万円の資金の増加となっております。
この結果、営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローを合算したフリー・キャッシュ・フローは、153億79百万円の資金の増加となりました。前期と比べると174億97百万円の資金の増加となっております。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は、105億20百万円となりました。これは主に、配当金の支払および短期借入金の返済などによるもので、前期と比べると12億76百万円の資金の減少となっております。
配当金につきましては、前期末の1株当たり配当金を23円、中間の1株当たり配当金を24.5円にしたことにより、前期と比べると77百万円増加し、70億67百万円の支払となっております。
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、当社グループの事業展開のための材料および機器の購入のほか、外注費、販売費及び一般管理費等の経費によるものであります。販売費及び一般管理費の主なものは、人件費および当社グループの事業所の不動産賃借料等であります。当社グループは国や自治体、通信事業者等の公共的なインフラ構築をはじめとした信頼性の高いサービスを継続的に提供する責務があり、健全な財務基盤が要求されます。このため突発的な資金需要等に備え、売上高の2カ月程度は現預金として確保しておきたいと考えております。この資金の財源は主として営業活動によるキャッシュ・フローによる自己資金により、現在必要とされる資金水準を満たす流動性を保持していると考えております。また、事業を行うための設備計画等に照らして、必要な資金を調達(主に銀行等金融機関からの借入)しており、今後、事業成長や大きな投資等でさらなる資金需要が出てきた際は、株主価値に配慮し、売上高の2カ月分を超過した現預金に加え、健全性を損なわない範囲での負債の活用を優先してまいります。
なお、当社は短期的な資金調達方法として、国内金融機関2社と合計80億円のコミットメントライン契約を締結しております。
③重要な会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。
連結財務諸表の作成に際し、決算日における資産・負債の数値ならびに報告期間における収益・費用の数値に影響を与える見積りを行っております。当社は、過去の実績や状況に応じ合理的だと考えられる様々な要因に基づき、見積りおよび判断を行っておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループは、特に以下の重要な会計方針が、当社の連結財務諸表の作成において使用される見積りに大きな影響を及ぼすと考えております。
a. 一定期間にわたり履行義務が充足される施工工事等の収益認識
当社グループは、施工工事等において、一定の期間にわたり充足される履行義務のうち、合理的な進捗度の見積りが出来るものにつきましては、期間がごく短い場合を除き、履行義務の充足に係る進捗度を見積もり、当該進捗度に基づき収益を一定の期間にわたり認識しております。なお、履行義務の充足に係る進捗度の見積りの方法は、見積工事原価総額に対する発生原価の割合(インプット法)で算出しております。将来工事原価総額の見積りの前提条件の変更等(設計変更や天災等)により当初見積りの変更が発生する可能性があります。
b. 繰延税金資産
当社グループは、繰延税金資産につきまして、将来の課税所得および、実現可能性の高い継続的な税務計画を検討しますが、繰延税金資産の全部または一部を将来実現出来ないと判断した場合、当該判断を行った期間に繰延税金資産の取り崩し額を費用として計上します。同様に、計上金額の純額を上回る繰延税金資産を今後実現出来ると判断した場合、当該判断を行った期間に繰延税金資産の追加計上額を利益として計上します。
c. 退職給付に係る負債
退職給付費用および債務は、数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出されております。これらの前提条件には、割引率、将来の報酬水準、退職率、死亡率および年金資産の収益率などが含まれております。実際の結果が前提条件と異なる場合、または前提条件が変更された場合、その影響は累積され、将来にわたって規則的に認識されるため、一般的には将来期間において認識される費用に影響を及ぼします。未認識数理計算上の差異の償却は、退職給付費用の一部を構成しておりますが、前提条件の変化による影響や前提条件と実際との結果の違いの影響を規則的に費用認識したものであります。
※1 DX:
Digital Transformationの略。AI・IoT・RPA(Robotic Process Automation)等の最先端技術を用いて、企
業・産業の事業活動や都市運営などを大きく変革すること。
※2 ICT:
Information and Communication Technology(情報通信技術)の略。
※3 TCFD:
気候関連財務情報開示タスクフォース。