有価証券報告書-第66期(平成29年4月1日-平成30年3月31日)

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2018/06/21 10:19
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(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度の末日現在において当社グループが判断したものです。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、海外経済の不確実性の高まりなどを受け、先行きは不透明な状況が続くものの、企業収益が改善し個人消費も緩やかに持ち直しているなど、景気は緩やかな回復基調で推移しました。
このような状況の中で、当社グループは、事業の根幹であるプロバイオティクスの啓発・普及活動を展開し、商品の優位性を訴求してきました。また、販売組織の拡充、新商品の研究開発や生産設備の更新に加え、国際事業や医薬品事業にも積極的に取り組み、業績の向上に努めました。
この結果、当連結会計年度の連結売上高は401,569百万円(前期比6.1%増)となりました。利益面においては、営業利益は43,463百万円(前期比16.6%増)、経常利益は53,054百万円(前期比7.5%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は34,064百万円(前期比13.0%増)となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりです。
・飲料および食品製造販売事業部門(日本)
日本国内における乳製品については、当社独自の「乳酸菌 シロタ株」などの科学性を広く訴求するため、エビデンスを活用し、地域に根差した「価値普及」活動を積極的に展開しました。
宅配チャネルにおいては、乳製品乳酸菌飲料「ヤクルト400」および「ヤクルト400LT」について、新規のお客さまづくりや継続飲用の促進に努めました。また、昨年10月から商品のお届けをインターネット上で申し込むことができる「ヤクルト届けてネット」によるサービスを地域限定で開始し、お客さまの利便性の向上とヤクルトの宅配を利用したことがないお客さまとの接点づくりを目指しました。さらに、宅配組織の強化を図るため、ヤクルトレディの働く環境整備をすすめるとともに、採用活動を積極的に展開しました。
店頭チャネルにおいては、乳製品乳酸菌飲料「Newヤクルト」および「Newヤクルトカロリーハーフ」を中心に、プロモーションスタッフを活用した「価値普及」活動を継続的に展開しました。さらに、これらの商品を対象に、昨年7月から8月にかけて「2017プロ野球応援フェア」を、本年2月から3月にかけて「つづけて実感!ヤクルト キャンペーン」を実施するなど、売り上げの増大を図りました。また、昨年11月からパーソナルタイプの乳製品乳酸菌飲料「シンバイオティクス ヤクルト W」を全国のコンビニエンスストアやスーパーマーケットなどで発売し、新たなお客さまの獲得に努めました。
商品別では、のむヨーグルト「ジョア」について、ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社とのライセンス契約に基づき、ディズニーキャラクターを用いたパッケージを引き続き展開しました。さらに、「ジョアまろやかハニー」「ジョア 手摘みりんご」などの期間限定アイテムを導入するとともに、昨年10月から本年1月にかけて「ジョアでひと息 カラダにしあわせキャンペーン」を実施し、ブランドの活性化を図りました。
このような取り組みを中心に販売強化に努めた結果、乳製品全体では前期を上回る実績となりました。
一方、ジュース・清涼飲料については、栄養ドリンク「タフマン」や血糖値対策飲料「蕃爽麗茶」などの機能性飲料を中心に売り上げの増大を目指しました。また、本年1月には乳酸菌はっ酵果汁飲料「ヤクルトのおいしいはっ酵果実」を全国で発売しました。
しかしながら、ジュース・清涼飲料全体では前期を下回る結果となりました。
これらの結果、飲料および食品製造販売事業部門(日本)の連結売上高は210,022百万円(前期比2.9%増)となりました。
・飲料および食品製造販売事業部門(海外)
海外については、昭和39年3月の台湾ヤクルト株式会社の営業開始をかわきりに、現在28の事業所および1つの研究所を中心に、37の国と地域で主として乳製品乳酸菌飲料「ヤクルト」の製造、販売を行っており、平成30年3月の一日当たり平均販売本数は約2,978万本となっています。
ア.米 州 地 域
米州地域においては、ブラジル、メキシコおよび米国で乳製品乳酸菌飲料「ヤクルト」などを製造、販売しています。
同地域では宅配・店頭の両チャネルにおける販売体制強化を図り、売り上げの増大に努めました。
これらの結果、飲料および食品製造販売事業部門(米州地域)の連結売上高は50,158百万円(前期比10.8%増)となりました。
イ.アジア・オセアニア地域
アジア・オセアニア地域においては、香港、シンガポール、インドネシア、オーストラリア、マレーシア、ベトナム、インドおよび中国などで乳製品乳酸菌飲料「ヤクルト」などを製造、販売し、アラブ首長国連邦(UAE)などでは「ヤクルト」を輸入販売しています。
中国においては、本年1月までに中国全体での販売拠点を42か所に拡大し、さらなる販売体制の強化を図りました。また「ヤクルト」の販売本数の増加に伴い、広東省佛山市での新規工場および無錫工場(無錫ヤクルト株式会社)敷地内への第2工場棟の建設を開始しており、平成31年の生産開始を目指しています。
インドにおいては、消費者の健康志向による低糖および低カロリー製品のニーズに応えるため、本年2月からカロリー低減タイプの「ヤクルトライト」の販売を開始しました。
ミャンマーにおいては、「ヤクルト」の製造、販売開始を予定し準備を進めています。
これらの結果、飲料および食品製造販売事業部門(アジア・オセアニア地域)の連結売上高は109,852百万円(前期比17.7%増)となりました。
ウ.ヨーロッパ地域
ヨーロッパ地域においては、乳製品乳酸菌飲料「ヤクルト」などをオランダで製造し、同国を含め、ベルギー、イギリス、ドイツ、オーストリアおよびイタリアなどで販売しています。
ヨーロッパにおいては、プロバイオティクスを普及するための活動に対する厳しい規制の中で、健康強調表示(ヘルスクレーム)の承認に向け、各種の取り組みを行いながら売り上げの増大に努めました。
これらの結果、飲料および食品製造販売事業部門(ヨーロッパ地域)の連結売上高は8,342百万円(前期比6.9%増)となりました。
・医薬品製造販売事業部門
医薬品については、がんおよびその周辺領域に特化した当社製品の啓発活動や適正使用を推奨する活動を推進しました。
当社の主力製品である抗悪性腫瘍剤「エルプラット」については、医療関係者を対象とした講演会などを積極的に開催し、シェアの維持・拡大に努めました。「エルプラット」の後発医薬品が上市されて以降、後発医薬品へ切り替える医療機関が増加傾向にあるものの、先発医薬品を開発した当社の強みである情報提供力やこれまで築き上げてきた医療関係者との信頼関係により、引き続き「エルプラット」を選択してもらうよう活動を展開しました。また、サノフィ社と共同プロモーション契約を締結した抗悪性腫瘍剤「ザルトラップ®」については、大腸がん領域における早期浸透を図るため、積極的な情報提供を実施し、採用に向けた活動を推進し
ました。そのほか、後発医薬品の当社の主力製品である代謝拮抗性抗悪性腫瘍剤「ゲムシタビンヤクルト」、骨吸収抑制剤「ゾレドロン酸ヤクルト」およびタキソイド系抗悪性腫瘍剤「ドセタキセルヤクルト」などの販路拡大に努め、売り上げの増大を図りました。
一方、研究開発においては、4SC AG社から導入しているHDAC阻害剤「レスミノスタット」および日産化学工業株式会社と共同開発を進めている血小板増加薬「YHI-1501」などの開発品目の臨床開発を推進しました。これらにより、今後、がんおよびその周辺領域において、さらなる強固な地位の確立を目指します。
これらの結果、医薬品製造販売事業部門の連結売上高は25,661百万円(前期比7.8%減)となりました。
・その他事業部門
その他事業部門には、化粧品の製造販売およびプロ野球興行などがあります。
化粧品については、当社が創業以来培ってきた乳酸菌研究から生まれたオリジナル保湿成分「S.E.(シロタエッセンス)」の「価値普及」に重点をおき、基礎化粧品の主力ブランドである「パラビオ」「リベシィ」および「リベシィホワイト」を中心としたカウンセリング型訪問販売活動を継続して展開しました。
また、昨年6月には植物由来の当社オリジナル成分「水丁香エキス」を新たに配合した「リベシィ」シリーズをリニューアル発売しました。さらに、昨年11月には乾燥による小ジワを目立たなくする高機能クリーム状美容液「エジティックス モイストリペア エッセンス」をリニューアル発売し、お客さま満足度の向上と売り上げの増大に努めました。
これらにより、化粧品全体としては、前期を上回る実績となりました。
一方、プロ野球興行については、神宮球場において各種イベントやさまざまな情報発信を行うなど、積極的なファンサービスに取り組んだ結果、入場者数が増加しました。
これらの結果、その他事業部門の連結売上高は20,778百万円(前期比4.1%増)となりました。
(注)各セグメントの連結売上高には、セグメント間売上高が含まれています。また、セグメント別売上高
には、消費税等は含まれていません。
当連結会計年度末の総資産は631,241百万円(前連結会計年度末比45,500百万円の増加)となりました。
純資産は386,674百万円(前連結会計年度末比9,793百万円の増加)となりました。主な要因は、自己株式の取得による純資産の減少があったものの、親会社株主に帰属する当期純利益により利益剰余金が増加したことに加え、株価上昇によりその他有価証券評価差額金が増加したためです。
また、自己資本比率は55.8%(前連結会計年度末比2.8ポイントの減少)となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における連結ベースの現金及び現金同等物は、前連結会計年度に比べ10,805百万円増加し、105,936百万円となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益53,481百万円、減価償却費21,532百万円があった一方、法人税等の支払額が14,331百万円あったこと等により、61,989百万円(前期比1,990百万円の収入増)となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、主に定期預金の預入や生産設備の増設等による固定資産の取得があったことにより△30,285百万円(前期比14,700百万円の支出減)となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、主に自己株式の取得や配当金の支払い等があったことにより、△21,969百万円(前期比8,219百万円の支出増)となりました。
③ 生産、受注及び販売の実績
ア.生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称金額(百万円)前期比(%)
飲料および食品製造販売事業(日本)135,5321.4
飲料および食品製造販売事業(米州)50,25010.6
飲料および食品製造販売事業(アジア・オセアニア)110,22216.3
飲料および食品製造販売事業(ヨーロッパ)8,3587.2
医薬品製造販売事業18,272△8.9
その他事業9,384△1.8
合計332,0196.7

(注) 1 金額は販売価格によっています。
2 上記の金額には、消費税等は含まれていません。
イ.受注実績
当社グループは、受注生産は行っていません。
ウ.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称金額(百万円)前期比(%)
飲料および食品製造販売事業(日本)189,2131.4
飲料および食品製造販売事業(米州)50,15810.8
飲料および食品製造販売事業(アジア・オセアニア)109,85217.7
飲料および食品製造販売事業(ヨーロッパ)8,3426.9
医薬品製造販売事業25,661△7.8
その他事業18,3404.7
合計401,5696.1

(注) 1 上記の金額には、消費税等は含まれていません。
2 主な相手先別の販売実績および当該販売実績の総販売実績に対する割合は、当該割合が100分の10以上の相手先がないため記載を省略しています。
3 セグメント間の取引については相殺消去しています。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
① 財政状態
当連結会計年度の自己資本比率は55.8%と前連結会計年度の58.6%から2.8ポイント減少しました。
非支配株主持分を含めた純資産額は、前期比2.6%、97億円増加しました。主な要因は、自己株式の取得による純資産の減少があったものの、親会社株主に帰属する当期純利益により利益剰余金が増加したことに加え、株価上昇によりその他有価証券評価差額金が増加したためです。
また、当連結会計年度の自己資本利益率(ROE)は9.8%と前連結会計年度の8.9%から0.9ポイント増加し、総資産経常利益率(ROA)は8.7%と前連結会計年度の8.5%から0.2ポイント増加しました。
有利子負債の短期借入金については、主に当社の資金需要が増したため5億円増加しました。また、1年内返済予定を含む長期借入金については、自己株式の取得に伴う資金借入により、243億円増加しました。この結果、有利子負債依存度(有利子負債÷総資産)は21.5%と前連結会計年度の19.1%から2.4ポイント増加しています。また、有利子負債対自己資本比率は38.6%と前連結会計年度の32.5%から6.1ポイント増加しています。
なお、財政状態は依然として堅固な状態が続いています。
② 経営成績
ア.売上高
売上高は前連結会計年度から232億円増収(前期比6.1%増)の4,015億円となりました。飲料および食品製造販売事業部門(日本)では、58億円の増収(前期比2.9%増)、飲料および食品製造販売事業部門(海外)では、219億円の増収(同15.0%増)、医薬品製造販売事業部門では、21億円の減収(同7.8%減)、その他事業部門では、8億円の増収(同4.1%増)となりました。事業部門別の調整額控除前の売上高構成比は、飲料および食品製造販売事業部門(日本)が49.4%(前連結会計年度は51.2%)、飲料および食品製造販売事業部門(海外)が39.7%(同36.8%)、医薬品製造販売事業部門が6.0%(同7.0%)、その他事業部門が4.9%(同5.0%)となっています。飲料および食品製造販売事業部門(日本)が増収となった主な要因は、乳製品のマーケティング投資継続による販売本数の増加および乳製品の価格改定効果があったためです。また、飲料および食品製造販売事業部門(海外)が増収となった主な要因は、中国およびインドネシアで順調に販売実績が伸び、為替の円安影響もあったためです。医薬品製造販売事業部門が減収となった主な要因は、「エルプラット」が後発医薬品への置換えにより売上数量が減少したためです。
また、日本からの輸出を含めた海外売上高は前連結会計年度から14.6%増の1,704億円となり、海外売上高比率は42.5%と前連結会計年度の39.3%から3.2ポイント増加しました。
イ.売上原価、販売費及び一般管理費およびその他収益(費用)
売上原価は1,716億円となり、前連結会計年度から4.7%増加しています。売上総利益は2,299億円となり、前連結会計年度に比べ7.3%増となりました。売上高売上総利益率は57.3%と前連結会計年度の56.7%から0.6ポイント増加しました。
販売費及び一般管理費は1,864億円と前連結会計年度から94億円増加しました。主な要因は、飲料および食品製造販売事業部門(日本)、飲料および食品製造販売事業部門(海外)の積極的な販売活動による販売費の増加および人件費の増加によるものです。
この結果、営業利益は434億円と前連結会計年度から61億円の増益(前期比16.6%増)となりました。事業部門別の調整額控除前の営業利益構成比は、飲料および食品製造販売事業部門(日本)が27.8%(前連結会計年度は25.7%)、飲料および食品製造販売事業部門(海外)が68.5%(同67.2%)、医薬品製造販売事業部門が2.2%(同5.4%)、その他事業部門が1.5%(同1.7%)となっており、増益であった飲料および食品製造販売事業部門(日本)の構成比が増加しました。
営業外収益は118億円と前連結会計年度から14億円減少しました。主な要因は、海外子会社で発生した為替差益の減少によるものです。
営業外費用は22億円と前連結会計年度から10億円増加しました。
特別利益は8億円と前連結会計年度から5億円増加しました。
特別損失は3億円と前連結会計年度から5億円減少しました。
税金費用は前連結会計年度から11億円増加しました。
この結果、親会社株主に帰属する当期純利益は340億円と前連結会計年度から39億円の増益(前期比13.0%増)となりました。売上高当期純利益率は8.5%と前連結会計年度の8.0%から0.5ポイント増加しました。
③ 為替の影響
為替レートの変動による影響は、当連結会計年度の売上高では43億円の増収、営業利益では8億円の増益と試算されました。ただし、この試算は、在外子会社の現地通貨建ての売上高、売上原価、販売費及び一般管理費に、前連結会計年度の各在外子会社における期中平均レートを適用して算出したものであり、為替変動に対応した販売価格等の影響は考慮していません。
④ 経営方針・経営戦略の達成状況
当連結会計年度は、連結売上高4,015億円(当社業績予想4,025億円に対して10億円減)、連結営業利益434億円(同415億円に対して19億円増)となり、中期経営計画である「Yakult Vision 2020 第3フェーズ計画(2017-2020)」の進捗としては、概ね順調に推移しました。引き続き、当社の企業理念に基づいた長期ビジョンの戦略展開により、計画達成に向けて事業の推進を図っていきます。