有価証券報告書-第67期(平成30年4月1日-平成31年3月31日)
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度の末日現在において当社グループが判断したものです。
なお、「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正」(企業会計基準第28号 平成30年2月16日)等を当連結会計年度の期首から適用しており、財政状態の状況については、当該会計基準等を遡って適用した後の数値で前連結会計年度との比較・分析を行っています。
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社および持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、世界経済や金融資本市場の変動の影響に留意する必要があるものの、所得環境の改善が続くなかで、景気は緩やかな回復基調が続きました。
このような状況の中で、当社グループは、事業の根幹であるプロバイオティクスの啓発・普及活動を展開し、商品の優位性を訴求してきました。また、販売組織の拡充、新商品の研究開発や生産設備の更新に加え、国際事業や医薬品事業にも積極的に取り組み、業績の向上に努めました。
この結果、当連結会計年度の連結売上高は407,017百万円(前期比1.4%増)となりました。利益面においては、営業利益は45,846百万円(前期比5.5%増)、経常利益は57,121百万円(前期比7.7%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は34,935百万円(前期比2.6%増)となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりです。
・飲料および食品製造販売事業部門(日本)
日本国内における乳製品につきましては、当社独自の「乳酸菌 シロタ株」や「ビフィズス菌 BY株」などの科学性を広く普及するため、エビデンスを活用し、地域に根ざした「価値普及」活動を積極的に展開しました。
宅配チャネルにおいては、乳製品乳酸菌飲料「ヤクルト400」および「ヤクルト400LT」について、「ヤクルト400」が本年1月に発売20周年を迎えたことを機に、改めてお客さまへの飲用促進を図りました。また、昨年9月から全国展開したインターネット注文サービス「ヤクルト届けてネット」を活用し、新たなお客さまとの接点づくりを強化しました。さらに、宅配組織の強化を図るため、ヤクルトレディの働く環境整備を推進するとともに、採用活動を積極的に実施しました。
店頭チャネルにおいては、乳製品乳酸菌飲料「Newヤクルト」および「Newヤクルトカロリーハーフ」について、昨年7月には「2018プロ野球応援フェア」を、本年2月から3月にかけては消費者キャンペーン「つづけて実感!ヤクルト キャンペーン」を展開し、さらに3月には同商品のデザインリニューアルを実施しました。また、「乳酸菌 シロタ株」と5種の栄養成分を配合した乳製品乳酸菌飲料「ヤクルトファイブ」を本年3月に発売するなど、ブランドの活性化を図りました。
商品別では、はっ酵乳「ミルミル」類について、昨年9月のデザインリニューアル以降、飲用促進活動を継続的に展開し、売り上げの増大を図りました。また、本年1月には期間限定商品「カップ de ヤクルト」を発売しました。
一方、清涼飲料につきましては、当社の発酵技術を活かした乳酸菌はっ酵果汁飲料「ヤクルトのおいしいはっ酵果実」の販売を強化するなど、健康飲料を中心に売り上げの増大を図りました。
これらの結果、飲料および食品製造販売事業部門(日本)の連結売上高は214,957百万円(前期比2.3%増)となりました。
・飲料および食品製造販売事業部門(海外)
海外につきましては、1964年3月の台湾ヤクルト株式会社の営業開始をかわきりに、現在28の事業所および1つの研究所を中心に、38の国と地域で主として乳製品乳酸菌飲料「ヤクルト」の製造、販売を行っており、2019年3月の一日当たり平均販売本数は約2,985万本となっています。
ア.米 州 地 域
米州地域においては、ブラジル、メキシコおよび米国で乳製品乳酸菌飲料「ヤクルト」などを製造、販売しています。
同地域では宅配・店頭の両チャネルにおける販売体制強化を図り、売り上げの増大に努めました。
これらの結果、飲料および食品製造販売事業部門(米州地域)の連結売上高は48,907百万円(前期比2.5%減)となりました。
イ.アジア・オセアニア地域
アジア・オセアニア地域においては、香港、シンガポール、インドネシア、オーストラリア、マレーシア、ベトナム、インドおよび中国などで乳製品乳酸菌飲料「ヤクルト」などを製造、販売し、アラブ首長国連邦(UAE)などでは「ヤクルト」などを輸入販売しています。
中国においては、「ヤクルト」などの販売本数増加に伴い、本年3月に佛山工場(広州ヤクルト株式会社)で生産を開始しました。また、無錫工場(無錫ヤクルト株式会社)敷地内の第2工場棟については、本年6月に生産を開始しました。
ミャンマーにおいては、「ヤクルト」の製造、販売開始を予定し準備を進めています。
これらの結果、飲料および食品製造販売事業部門(アジア・オセアニア地域)の連結売上高は120,784百万円(前期比10.0%増)となりました。
ウ.ヨーロッパ地域
ヨーロッパ地域においては、乳製品乳酸菌飲料「ヤクルト」などをオランダで製造し、同国を含め、ベルギー、イギリス、ドイツ、オーストリアおよびイタリアなどで販売しています。
ヨーロッパにおいては、プロバイオティクスを普及するための活動に対する厳しい規制の中で、健康強調表示(ヘルスクレーム)の承認に向け、各種の取り組みを行っています。このような状況の中、各国事業所による市場特性に合った販売活動の展開により、持続的成長を目指しました。
デンマークにおいては、本年1月から「ヤクルト」の販売を開始しました。これにより、海外進出数については、38の国と地域に販売網が拡大しました。
これらの結果、飲料および食品製造販売事業部門(ヨーロッパ地域)の連結売上高は8,673百万円(前期比4.0%増)となりました。
・医薬品製造販売事業部門
医薬品につきましては、がんおよびその周辺領域に特化した当社製品の啓発活動や適正使用を推奨する活動を推進しました。
当社の主力製品である抗悪性腫瘍剤「エルプラット」については、医療関係者を対象とした講演会などを積極的に開催し、シェアの維持に努めました。後発医薬品へ切り替える医療機関が増加傾向にあるものの、先発医薬品を開発した当社の強みである情報提供力や医療関係者との信頼関係により、引き続き「エルプラット」を選択してもらうための活動を展開しました。また、サノフィ社と共同プロモーション活動を推進した抗悪性腫瘍剤「ザルトラップ®」については、大腸がん領域における浸透のため積極的に情報提供を実施しました。そのほか、後発医薬品の当社主力製品である代謝拮抗性抗悪性腫瘍剤「ゲムシタビン『ヤクルト』」などの販路拡大にも努めました。しかしながら、昨年4月に実施された薬価基準改定により、大半の当社製品の薬価が引き下げられ、売り上げに大きな影響を受けました。
一方、研究開発においては、昨年6月にベラステム社(米国)と日本における開発および商業化に関する独占的ライセンス契約を締結したPI3K阻害剤「デュベリシブ」や、4SC AG社(ドイツ)から導入しているHDAC阻害剤「レスミノスタット」などの開発品目の臨床開発を推進しました。
また、本年2月には新たな後発医薬品として、抗悪性腫瘍剤「カペシタビン錠『ヤクルト』」および「ゲフィチニブ錠『ヤクルト』」の製造販売承認を取得し、6月発売に向けて準備を進めています。これらにより、今後、がんおよびその周辺領域において、さらなる強固な地位の確立を目指します。
これらの結果、医薬品製造販売事業部門の連結売上高は21,696百万円(前期比15.5%減)となりました。
・その他事業部門
その他事業部門には、化粧品の製造販売およびプロ野球興行などがあります。
化粧品につきましては、当社が創業以来培ってきた乳酸菌研究から生まれたオリジナル保湿成分「S.E.(シロタエッセンス)」の「価値普及」活動に重点をおき、お客さまの「内外美容」の実現と化粧品愛用者数の増大に努めました。
具体的には、昨年5月に薬用歯みがき剤「ヤクルト 薬用アパコート S.E.⦅ナノテクノロジー⦆」をリニューアル発売し、新たなお客さまとの接点拡大を図りました。
また、昨年11月には美容液「ビサイクル リフトリペア エッセンス」を、本年3月には高保湿美白基礎化粧品「リベシィホワイト」シリーズをリニューアル発売し、お客さま満足度の向上と売り上げの増大に努めました。
これらにより、化粧品全体としては、前期を上回る実績となりました。
一方、プロ野球興行につきましては、東京ヤクルトスワローズのクライマックスシリーズ進出に加え、神宮球場において各種イベントやさまざまな情報発信を行うなど、積極的なファンサービスに取り組んだ結果、入場者数が増加しました。
これらの結果、その他事業部門の連結売上高は22,447百万円(前期比8.0%増)となりました。
(注)各セグメントの連結売上高には、セグメント間売上高が含まれています。また、セグメント別売上高
には、消費税等は含まれていません。
当連結会計年度末の総資産は618,532百万円(前連結会計年度末比8,498百万円の減少)となりました。
純資産は392,279百万円(前連結会計年度末比5,605百万円の増加)となりました。主な要因は、円高により為替換算調整勘定が減少したことや、株価下落によりその他有価証券評価差額金が減少したものの、親会社株主に帰属する当期純利益により利益剰余金が増加したためです。
また、自己資本比率は57.8%(前連結会計年度末比1.6ポイントの増加)となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における連結ベースの現金及び現金同等物は、前連結会計年度に比べ2,764百万円減少し、103,171百万円となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益55,801百万円、減価償却費21,237百万円があった一方、法人税等の支払額が13,881百万円あったこと等により、62,125百万円(前期比135百万円の収入増)となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、主に定期預金の預入や生産設備の増設等による固定資産の取得があったことにより△37,012百万円(前期比6,727百万円の支出増)となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、主に借入金の返済や配当金の支払い等があったことにより、△22,980百万円(前期比1,011百万円の支出増)となりました。
③ 生産、受注及び販売の実績
ア.生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注) 1 金額は販売価格によっています。
2 上記の金額には、消費税等は含まれていません。
イ.受注実績
当社グループは、受注生産は行っていません。
ウ.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注) 1 上記の金額には、消費税等は含まれていません。
2 主な相手先別の販売実績および当該販売実績の総販売実績に対する割合は、当該割合が100分の10以上の相手先がないため記載を省略しています。
3 セグメント間の取引については相殺消去しています。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりです。
① 財政状態
当連結会計年度の自己資本比率は57.8%と前連結会計年度の56.2%から1.6ポイント増加しました。
非支配株主持分を含めた純資産額は、前期比1.4%、56億円増加しました。主な要因は、円高により為替換算調整勘定が減少したことや、株価下落によりその他有価証券評価差額金が減少したものの、親会社株主に帰属する当期純利益により利益剰余金が増加したためです。
また、当連結会計年度の自己資本利益率(ROE)は9.8%と前連結会計年度から変動はありません。総資産経常利益率(ROA)は9.2%と前連結会計年度の8.7%から0.5ポイント増加しました。
有利子負債の短期借入金については、主に当社および海外子会社の返済により70億円減少しました。また、1年内返済予定を含む長期借入金についても、主に当社の返済により、55億円減少しました。この結果、有利子負債依存度(有利子負債÷総資産)は19.8%と前連結会計年度の21.7%から1.9ポイント減少しています。また、有利子負債対自己資本比率は34.2%と前連結会計年度の38.6%から4.4ポイント減少しています。
なお、財政状態は依然として堅固な状態が続いています。
② 経営成績
ア.売上高
売上高は前連結会計年度から54億円増収(前期比1.4%増)の4,070億円となりました。飲料および食品製造販売事業部門(日本)では、49億円の増収(前期比2.3%増)、飲料および食品製造販売事業部門(海外)では、100億円の増収(同5.9%増)、医薬品製造販売事業部門では、39億円の減収(同15.5%減)、その他事業部門では、16億円の増収(同8.0%増)となりました。事業部門別の調整額控除前の売上高構成比は、飲料および食品製造販売事業部門(日本)が49.1%(前連結会計年度は49.4%)、飲料および食品製造販売事業部門(海外)が40.8%(同39.7%)、医薬品製造販売事業部門が5.0%(同6.0%)、その他事業部門が5.1%(同4.9%)となっています。飲料および食品製造販売事業部門(日本)が増収となった主な要因は、乳製品・清涼飲料の販売本数が減少したものの、生産機器売上の増加があったためです。また、飲料および食品製造販売事業部門(海外)が増収となった主な要因は、中国およびインドネシアで順調に販売実績が伸びたことに加え、価格改定効果もあったためです。医薬品製造販売事業部門が減収となった主な要因は、昨年4月に実施された薬価基準改定により、大半の当社製品の薬価が引き下げられたためです。
また、日本からの輸出を含めた海外売上高は前連結会計年度から6.0%増の1,806億円となり、海外売上高比率は44.4%と前連結会計年度の42.5%から1.9ポイント増加しました。
イ.売上原価、販売費及び一般管理費およびその他収益(費用)
売上原価は1,711億円となり、前連結会計年度から0.3%減少しています。売上総利益は2,359億円となり、前連結会計年度に比べ2.6%増となりました。売上高売上総利益率は58.0%と前連結会計年度の57.3%から0.7ポイント増加しました。
販売費及び一般管理費は1,900億円と前連結会計年度から35億円増加しました。主な要因は、飲料および食品製造販売事業部門(日本)、飲料および食品製造販売事業部門(海外)の積極的な販売活動による販売費の増加および人件費の増加によるものです。
この結果、営業利益は458億円と前連結会計年度から23億円の増益(前期比5.5%増)となりました。事業部門別の調整額控除前の営業利益構成比は、飲料および食品製造販売事業部門(日本)が25.9%(前連結会計年度は27.8%)、飲料および食品製造販売事業部門(海外)が75.0%(同68.5%)、医薬品製造販売事業部門が△2.8%(同2.2%)、その他事業部門が1.9%(同1.5%)となっており、増益であった飲料および食品製造販売事業部門(海外)の構成比が増加しました。
営業外収益は128億円と前連結会計年度から10億円増加しました。
営業外費用は16億円と前連結会計年度から6億円減少しました。
特別利益は34億円と前連結会計年度から26億円増加しました。主な要因は、当社が投資有価証券売却益を計上したためです。
特別損失は47億円と前連結会計年度から43億円増加しました。主な要因は、医薬品事業で減損損失を計上したためです。
税金費用は前連結会計年度から7億円増加しました。
この結果、親会社株主に帰属する当期純利益は349億円と前連結会計年度から8億円の増益(前期比2.6%増)となりました。売上高当期純利益率は8.6%と前連結会計年度の8.5%から0.1ポイント増加しました。
③ 為替の影響
為替レートの変動による影響は、当連結会計年度の売上高では52億円の減収、営業利益では10億円の減益と試算されました。ただし、この試算は、在外子会社の現地通貨建ての売上高、売上原価、販売費及び一般管理費に、前連結会計年度の各在外子会社における期中平均レートを適用して算出したものであり、為替変動に対応した販売価格等の影響は考慮していません。
④ 経営方針・経営戦略の達成状況
当連結会計年度は、連結売上高4,070億円(当社業績予想4,180億円に対して109億円減)、連結営業利益458億円(同480億円に対して21億円減)となりました。当社中期経営計画「Yakult Vision 2020 第3フェーズ計画」2年目の進捗としては、事業部門別では進捗の程度に違いは生じてはいるものの、全体としては順調に推移しました。引き続き、当社の企業理念に基づいた長期ビジョンの戦略展開により、全社目標の達成に向けて事業の推進を図っていきます。
なお、「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正」(企業会計基準第28号 平成30年2月16日)等を当連結会計年度の期首から適用しており、財政状態の状況については、当該会計基準等を遡って適用した後の数値で前連結会計年度との比較・分析を行っています。
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社および持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、世界経済や金融資本市場の変動の影響に留意する必要があるものの、所得環境の改善が続くなかで、景気は緩やかな回復基調が続きました。
このような状況の中で、当社グループは、事業の根幹であるプロバイオティクスの啓発・普及活動を展開し、商品の優位性を訴求してきました。また、販売組織の拡充、新商品の研究開発や生産設備の更新に加え、国際事業や医薬品事業にも積極的に取り組み、業績の向上に努めました。
この結果、当連結会計年度の連結売上高は407,017百万円(前期比1.4%増)となりました。利益面においては、営業利益は45,846百万円(前期比5.5%増)、経常利益は57,121百万円(前期比7.7%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は34,935百万円(前期比2.6%増)となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりです。
・飲料および食品製造販売事業部門(日本)
日本国内における乳製品につきましては、当社独自の「乳酸菌 シロタ株」や「ビフィズス菌 BY株」などの科学性を広く普及するため、エビデンスを活用し、地域に根ざした「価値普及」活動を積極的に展開しました。
宅配チャネルにおいては、乳製品乳酸菌飲料「ヤクルト400」および「ヤクルト400LT」について、「ヤクルト400」が本年1月に発売20周年を迎えたことを機に、改めてお客さまへの飲用促進を図りました。また、昨年9月から全国展開したインターネット注文サービス「ヤクルト届けてネット」を活用し、新たなお客さまとの接点づくりを強化しました。さらに、宅配組織の強化を図るため、ヤクルトレディの働く環境整備を推進するとともに、採用活動を積極的に実施しました。
店頭チャネルにおいては、乳製品乳酸菌飲料「Newヤクルト」および「Newヤクルトカロリーハーフ」について、昨年7月には「2018プロ野球応援フェア」を、本年2月から3月にかけては消費者キャンペーン「つづけて実感!ヤクルト キャンペーン」を展開し、さらに3月には同商品のデザインリニューアルを実施しました。また、「乳酸菌 シロタ株」と5種の栄養成分を配合した乳製品乳酸菌飲料「ヤクルトファイブ」を本年3月に発売するなど、ブランドの活性化を図りました。
商品別では、はっ酵乳「ミルミル」類について、昨年9月のデザインリニューアル以降、飲用促進活動を継続的に展開し、売り上げの増大を図りました。また、本年1月には期間限定商品「カップ de ヤクルト」を発売しました。
一方、清涼飲料につきましては、当社の発酵技術を活かした乳酸菌はっ酵果汁飲料「ヤクルトのおいしいはっ酵果実」の販売を強化するなど、健康飲料を中心に売り上げの増大を図りました。
これらの結果、飲料および食品製造販売事業部門(日本)の連結売上高は214,957百万円(前期比2.3%増)となりました。
・飲料および食品製造販売事業部門(海外)
海外につきましては、1964年3月の台湾ヤクルト株式会社の営業開始をかわきりに、現在28の事業所および1つの研究所を中心に、38の国と地域で主として乳製品乳酸菌飲料「ヤクルト」の製造、販売を行っており、2019年3月の一日当たり平均販売本数は約2,985万本となっています。
ア.米 州 地 域
米州地域においては、ブラジル、メキシコおよび米国で乳製品乳酸菌飲料「ヤクルト」などを製造、販売しています。
同地域では宅配・店頭の両チャネルにおける販売体制強化を図り、売り上げの増大に努めました。
これらの結果、飲料および食品製造販売事業部門(米州地域)の連結売上高は48,907百万円(前期比2.5%減)となりました。
イ.アジア・オセアニア地域
アジア・オセアニア地域においては、香港、シンガポール、インドネシア、オーストラリア、マレーシア、ベトナム、インドおよび中国などで乳製品乳酸菌飲料「ヤクルト」などを製造、販売し、アラブ首長国連邦(UAE)などでは「ヤクルト」などを輸入販売しています。
中国においては、「ヤクルト」などの販売本数増加に伴い、本年3月に佛山工場(広州ヤクルト株式会社)で生産を開始しました。また、無錫工場(無錫ヤクルト株式会社)敷地内の第2工場棟については、本年6月に生産を開始しました。
ミャンマーにおいては、「ヤクルト」の製造、販売開始を予定し準備を進めています。
これらの結果、飲料および食品製造販売事業部門(アジア・オセアニア地域)の連結売上高は120,784百万円(前期比10.0%増)となりました。
ウ.ヨーロッパ地域
ヨーロッパ地域においては、乳製品乳酸菌飲料「ヤクルト」などをオランダで製造し、同国を含め、ベルギー、イギリス、ドイツ、オーストリアおよびイタリアなどで販売しています。
ヨーロッパにおいては、プロバイオティクスを普及するための活動に対する厳しい規制の中で、健康強調表示(ヘルスクレーム)の承認に向け、各種の取り組みを行っています。このような状況の中、各国事業所による市場特性に合った販売活動の展開により、持続的成長を目指しました。
デンマークにおいては、本年1月から「ヤクルト」の販売を開始しました。これにより、海外進出数については、38の国と地域に販売網が拡大しました。
これらの結果、飲料および食品製造販売事業部門(ヨーロッパ地域)の連結売上高は8,673百万円(前期比4.0%増)となりました。
・医薬品製造販売事業部門
医薬品につきましては、がんおよびその周辺領域に特化した当社製品の啓発活動や適正使用を推奨する活動を推進しました。
当社の主力製品である抗悪性腫瘍剤「エルプラット」については、医療関係者を対象とした講演会などを積極的に開催し、シェアの維持に努めました。後発医薬品へ切り替える医療機関が増加傾向にあるものの、先発医薬品を開発した当社の強みである情報提供力や医療関係者との信頼関係により、引き続き「エルプラット」を選択してもらうための活動を展開しました。また、サノフィ社と共同プロモーション活動を推進した抗悪性腫瘍剤「ザルトラップ®」については、大腸がん領域における浸透のため積極的に情報提供を実施しました。そのほか、後発医薬品の当社主力製品である代謝拮抗性抗悪性腫瘍剤「ゲムシタビン『ヤクルト』」などの販路拡大にも努めました。しかしながら、昨年4月に実施された薬価基準改定により、大半の当社製品の薬価が引き下げられ、売り上げに大きな影響を受けました。
一方、研究開発においては、昨年6月にベラステム社(米国)と日本における開発および商業化に関する独占的ライセンス契約を締結したPI3K阻害剤「デュベリシブ」や、4SC AG社(ドイツ)から導入しているHDAC阻害剤「レスミノスタット」などの開発品目の臨床開発を推進しました。
また、本年2月には新たな後発医薬品として、抗悪性腫瘍剤「カペシタビン錠『ヤクルト』」および「ゲフィチニブ錠『ヤクルト』」の製造販売承認を取得し、6月発売に向けて準備を進めています。これらにより、今後、がんおよびその周辺領域において、さらなる強固な地位の確立を目指します。
これらの結果、医薬品製造販売事業部門の連結売上高は21,696百万円(前期比15.5%減)となりました。
・その他事業部門
その他事業部門には、化粧品の製造販売およびプロ野球興行などがあります。
化粧品につきましては、当社が創業以来培ってきた乳酸菌研究から生まれたオリジナル保湿成分「S.E.(シロタエッセンス)」の「価値普及」活動に重点をおき、お客さまの「内外美容」の実現と化粧品愛用者数の増大に努めました。
具体的には、昨年5月に薬用歯みがき剤「ヤクルト 薬用アパコート S.E.⦅ナノテクノロジー⦆」をリニューアル発売し、新たなお客さまとの接点拡大を図りました。
また、昨年11月には美容液「ビサイクル リフトリペア エッセンス」を、本年3月には高保湿美白基礎化粧品「リベシィホワイト」シリーズをリニューアル発売し、お客さま満足度の向上と売り上げの増大に努めました。
これらにより、化粧品全体としては、前期を上回る実績となりました。
一方、プロ野球興行につきましては、東京ヤクルトスワローズのクライマックスシリーズ進出に加え、神宮球場において各種イベントやさまざまな情報発信を行うなど、積極的なファンサービスに取り組んだ結果、入場者数が増加しました。
これらの結果、その他事業部門の連結売上高は22,447百万円(前期比8.0%増)となりました。
(注)各セグメントの連結売上高には、セグメント間売上高が含まれています。また、セグメント別売上高
には、消費税等は含まれていません。
当連結会計年度末の総資産は618,532百万円(前連結会計年度末比8,498百万円の減少)となりました。
純資産は392,279百万円(前連結会計年度末比5,605百万円の増加)となりました。主な要因は、円高により為替換算調整勘定が減少したことや、株価下落によりその他有価証券評価差額金が減少したものの、親会社株主に帰属する当期純利益により利益剰余金が増加したためです。
また、自己資本比率は57.8%(前連結会計年度末比1.6ポイントの増加)となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における連結ベースの現金及び現金同等物は、前連結会計年度に比べ2,764百万円減少し、103,171百万円となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益55,801百万円、減価償却費21,237百万円があった一方、法人税等の支払額が13,881百万円あったこと等により、62,125百万円(前期比135百万円の収入増)となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、主に定期預金の預入や生産設備の増設等による固定資産の取得があったことにより△37,012百万円(前期比6,727百万円の支出増)となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、主に借入金の返済や配当金の支払い等があったことにより、△22,980百万円(前期比1,011百万円の支出増)となりました。
③ 生産、受注及び販売の実績
ア.生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称 | 金額(百万円) | 前期比(%) |
飲料および食品製造販売事業(日本) | 134,104 | △1.1 |
飲料および食品製造販売事業(米州) | 48,905 | △2.7 |
飲料および食品製造販売事業(アジア・オセアニア) | 121,375 | 10.1 |
飲料および食品製造販売事業(ヨーロッパ) | 8,708 | 4.2 |
医薬品製造販売事業 | 14,410 | △21.1 |
その他事業 | 10,398 | 10.8 |
合計 | 337,902 | 1.8 |
(注) 1 金額は販売価格によっています。
2 上記の金額には、消費税等は含まれていません。
イ.受注実績
当社グループは、受注生産は行っていません。
ウ.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称 | 金額(百万円) | 前期比(%) |
飲料および食品製造販売事業(日本) | 186,879 | △1.2 |
飲料および食品製造販売事業(米州) | 48,907 | △2.5 |
飲料および食品製造販売事業(アジア・オセアニア) | 120,784 | 10.0 |
飲料および食品製造販売事業(ヨーロッパ) | 8,673 | 4.0 |
医薬品製造販売事業 | 21,696 | △15.5 |
その他事業 | 20,075 | 9.5 |
合計 | 407,017 | 1.4 |
(注) 1 上記の金額には、消費税等は含まれていません。
2 主な相手先別の販売実績および当該販売実績の総販売実績に対する割合は、当該割合が100分の10以上の相手先がないため記載を省略しています。
3 セグメント間の取引については相殺消去しています。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりです。
① 財政状態
当連結会計年度の自己資本比率は57.8%と前連結会計年度の56.2%から1.6ポイント増加しました。
非支配株主持分を含めた純資産額は、前期比1.4%、56億円増加しました。主な要因は、円高により為替換算調整勘定が減少したことや、株価下落によりその他有価証券評価差額金が減少したものの、親会社株主に帰属する当期純利益により利益剰余金が増加したためです。
また、当連結会計年度の自己資本利益率(ROE)は9.8%と前連結会計年度から変動はありません。総資産経常利益率(ROA)は9.2%と前連結会計年度の8.7%から0.5ポイント増加しました。
有利子負債の短期借入金については、主に当社および海外子会社の返済により70億円減少しました。また、1年内返済予定を含む長期借入金についても、主に当社の返済により、55億円減少しました。この結果、有利子負債依存度(有利子負債÷総資産)は19.8%と前連結会計年度の21.7%から1.9ポイント減少しています。また、有利子負債対自己資本比率は34.2%と前連結会計年度の38.6%から4.4ポイント減少しています。
なお、財政状態は依然として堅固な状態が続いています。
② 経営成績
ア.売上高
売上高は前連結会計年度から54億円増収(前期比1.4%増)の4,070億円となりました。飲料および食品製造販売事業部門(日本)では、49億円の増収(前期比2.3%増)、飲料および食品製造販売事業部門(海外)では、100億円の増収(同5.9%増)、医薬品製造販売事業部門では、39億円の減収(同15.5%減)、その他事業部門では、16億円の増収(同8.0%増)となりました。事業部門別の調整額控除前の売上高構成比は、飲料および食品製造販売事業部門(日本)が49.1%(前連結会計年度は49.4%)、飲料および食品製造販売事業部門(海外)が40.8%(同39.7%)、医薬品製造販売事業部門が5.0%(同6.0%)、その他事業部門が5.1%(同4.9%)となっています。飲料および食品製造販売事業部門(日本)が増収となった主な要因は、乳製品・清涼飲料の販売本数が減少したものの、生産機器売上の増加があったためです。また、飲料および食品製造販売事業部門(海外)が増収となった主な要因は、中国およびインドネシアで順調に販売実績が伸びたことに加え、価格改定効果もあったためです。医薬品製造販売事業部門が減収となった主な要因は、昨年4月に実施された薬価基準改定により、大半の当社製品の薬価が引き下げられたためです。
また、日本からの輸出を含めた海外売上高は前連結会計年度から6.0%増の1,806億円となり、海外売上高比率は44.4%と前連結会計年度の42.5%から1.9ポイント増加しました。
イ.売上原価、販売費及び一般管理費およびその他収益(費用)
売上原価は1,711億円となり、前連結会計年度から0.3%減少しています。売上総利益は2,359億円となり、前連結会計年度に比べ2.6%増となりました。売上高売上総利益率は58.0%と前連結会計年度の57.3%から0.7ポイント増加しました。
販売費及び一般管理費は1,900億円と前連結会計年度から35億円増加しました。主な要因は、飲料および食品製造販売事業部門(日本)、飲料および食品製造販売事業部門(海外)の積極的な販売活動による販売費の増加および人件費の増加によるものです。
この結果、営業利益は458億円と前連結会計年度から23億円の増益(前期比5.5%増)となりました。事業部門別の調整額控除前の営業利益構成比は、飲料および食品製造販売事業部門(日本)が25.9%(前連結会計年度は27.8%)、飲料および食品製造販売事業部門(海外)が75.0%(同68.5%)、医薬品製造販売事業部門が△2.8%(同2.2%)、その他事業部門が1.9%(同1.5%)となっており、増益であった飲料および食品製造販売事業部門(海外)の構成比が増加しました。
営業外収益は128億円と前連結会計年度から10億円増加しました。
営業外費用は16億円と前連結会計年度から6億円減少しました。
特別利益は34億円と前連結会計年度から26億円増加しました。主な要因は、当社が投資有価証券売却益を計上したためです。
特別損失は47億円と前連結会計年度から43億円増加しました。主な要因は、医薬品事業で減損損失を計上したためです。
税金費用は前連結会計年度から7億円増加しました。
この結果、親会社株主に帰属する当期純利益は349億円と前連結会計年度から8億円の増益(前期比2.6%増)となりました。売上高当期純利益率は8.6%と前連結会計年度の8.5%から0.1ポイント増加しました。
③ 為替の影響
為替レートの変動による影響は、当連結会計年度の売上高では52億円の減収、営業利益では10億円の減益と試算されました。ただし、この試算は、在外子会社の現地通貨建ての売上高、売上原価、販売費及び一般管理費に、前連結会計年度の各在外子会社における期中平均レートを適用して算出したものであり、為替変動に対応した販売価格等の影響は考慮していません。
④ 経営方針・経営戦略の達成状況
当連結会計年度は、連結売上高4,070億円(当社業績予想4,180億円に対して109億円減)、連結営業利益458億円(同480億円に対して21億円減)となりました。当社中期経営計画「Yakult Vision 2020 第3フェーズ計画」2年目の進捗としては、事業部門別では進捗の程度に違いは生じてはいるものの、全体としては順調に推移しました。引き続き、当社の企業理念に基づいた長期ビジョンの戦略展開により、全社目標の達成に向けて事業の推進を図っていきます。