有価証券報告書-第120期(平成25年4月1日-平成26年3月31日)

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2014/06/27 16:40
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125項目

対処すべき課題

DNPは、事業ビジョン「P&Iソリューション」に基づき、「未来のあたりまえを作る。」を目指して、事業の拡大に努めていく。「未来のあたりまえを作る。」とは、企業、生活者、社会の課題を解決する新しい製品やサービスを開発して、それらがあたりまえに身の周りにあるようにしていくことを表している。社会の課題を整理・分析し、「情報流通」、「健康・医療」、「環境・エネルギー」、「快適な暮らし」というテーマを中心に、DNPの強みを活かしたソリューションを提供して、積極的な事業活動を推進していく。また、事業基盤をより強固なものとするため、さらなる生産性の向上に努めていく。
企業の社会的責任(CSR)を果たすため、「DNPグループ行動規範」に基づいて法と社会倫理の遵守を徹底するとともに、内部統制システムを整備して業務の適正性を確保し、株主の皆様や顧客企業、生活者、社員など、さまざまなステークホルダーから高い信頼を得られるよう、常に公正・公平で誠実な企業活動に努めていく。
<各事業部門における取り組み>[印刷事業]
(情報コミュニケーション部門)
当部門では、情報の最適な表現と多様なメディアへの展開に取り組み、顧客の業務プロセスに密着した幅広いソリューションを提供していく。
昨年12月に開設したDNP柏データセンターは、DNPの提携先である日本ユニシス株式会社のクラウド技術やノウハウの導入などによって高い情報セキュリティを備えており、情報通信ビジネスの最新鋭の拠点として活用していく。紙の書籍と電子書籍に対応したハイブリッド型総合書店「honto」のほか、電子チラシサービス「オリコミーオ!」やポイント会員サービス「エルネ」など、DNPが推進する生活者向けサービスも、このデータセンターを活かして拡大させていく。また、企業の業務プロセスを代行するBPO事業については、金融関係の事務センターやカスタマーセンター、キャンペーン事務局の運営など、顧客の課題解決に注力していく。
このほか、家計管理アプリ「レシーピ!」をはじめとした、生活者の“お買いもの”を支援するサービスなど、生活者視点を活かした事業の拡大に努めていく。
(生活・産業部門)
当部門では、地球環境への配慮やユニバーサルデザインへの対応などを進め、企業や生活者の多様なニーズに的確に応えた製品・サービスを提供していく。
包装関連では、1972年からインドネシアで包装材の製造・販売を行っており、日用品や食品などの分野でトップシェアを獲得している。昨年5月には高い経済成長が続くベトナムに包装材の工場を開設した。インドシナ半島の物流拠点として注目されるベトナムに生産拠点を構えることにより、海外進出する日系企業をはじめ、グローバル企業に付加価値の高い製品とサービスを提供していく。
情報記録材関連では、東南アジアにおいて証明写真や観光写真のプリントニーズが高まっており、昨年12月にフォトプリント用昇華型熱転写記録材のマレーシア工場を竣工させ、需要の増加に対応する体制を整備した。バーコード製品については、世界需要の約4割を占める北米・中南米での生産体制を強化するため、昨年5月、米国ピッツバーグ工場のバーコード用溶融型熱転写記録材の製造設備を増設した。
また、住空間マテリアル関連では、住宅設備メーカーや建材メーカーと緊密に連携して、建築計画の段階からサプライチェーン全体に関わっていく。DNP独自のEBコーティング技術などを活用した壁紙や床材などの高付加価値製品のほか、耐候性に優れた外装用部材、照明を効率よく拡散して照度を高める省エネルギー内装用部材など、スマートハウスやスマートシティに対応した製品の開発も進めていく。
(エレクトロニクス部門)
当部門では、今年4月に、ディスプレイ製品や半導体用フォトマスクなどを担当する事業部と、液晶ディスプレイ用表面フィルムなどの光学フィルムを担当する事業部を統合した。この両事業部は、電子機器などの主要マ-ケットが共通しており、両事業部の技術・ノウハウを組み合わせ、タッチパネル関連製品などの新製品開発を加速させていく。パターニングや微細加工などの世界トップクラスの技術力を強化するとともに、高機能製品などの新製品開発、徹底したコストダウンや投資効率の改善などを進め、急激に変化する企業や生活者のニーズに対応していく。
液晶カラーフィルターについては、好調な伸びが見込まれるスマートフォンやタブレット端末向けに、DNPが強みを持つ高精細で高品質な中小型品に注力し、事業の着実な成長を図っていく。
フォトマスクについては、微細化ニーズに的確に対応するとともに、海外の生産拠点を活かして、拡大する海外需要の獲得に努めていく。
光学フィルムについては、クリーンな作業環境で素材を加工するコンバーティング技術を活かして、薄型ディスプレイ向けを中心とした新製品開発に注力していく。
[清涼飲料事業]
(清涼飲料部門)
清涼飲料業界は、シェア争いが激化するなか、販売促進費の増加による企業収益の圧迫に加え、今年4月の消費税率引き上げへの対応など、引き続き厳しい経営環境が予想される。
このような環境のなかで、「コカ・コーラのブランド力と道産子企業の地域密着力で北海道に貢献する」ことをビジョンとする中期経営計画に基づき、「新しい販路の開拓」、「売り場で勝つ」、「新たな価値の提供」、「グループローコスト経営の実現」の4つの戦略を遂行することで、持続的な成長の実現に努めていく。また、「地域に信頼され、認められる企業」を目指して、内部統制システムの構築と運用によるコーポレートガバナンスの充実及びコカ・コーラ独自の統合的なマネジメントシステムである「KORE(コア)」による品質・食品安全・環境・労働安全衛生の維持向上に努めていく。
<生活者との接点の拡大>昨年、DNPは、生活者と直接触れ合うことができる拠点を東京と大阪に開設した。両拠点を連携させた企画なども推進し、生活者とのコミュニケーションを深めていくことによって生活者の課題を捉え、その解決につなげていく。
東京の拠点は、昨年1月に新宿区市谷田町にオープンした「コミュニケーションプラザ ドットDNP」で、DNPの多彩な製品やサービスを生活者に楽しんでいただく体験型ショールームである。タブレット端末で小説やコミック、雑誌などの電子書籍の試し読みができる「hontoカフェ」、特設スタジオでの写真撮影や写真プリントが体験できる「Enjoy!フォトパーク」、国内外のデジタルえほんを親子で楽しめる「デジタルえほんミュージアム」などがあり、さまざまなイベントも開催している。多くの方々にご利用いただき、開設後1年間で来場者は約5万人となった。
大阪には、昨年4月、企業や大学、研究機関などが分野を超えたコラボレーションを進めるグランフロント大阪内の複合施設「ナレッジキャピタル」に、「CAFE Lab.(カフェラボ)」を開設した。ここは、DNPが株式会社プロントコーポレーションなどと共同出店したコミュニケーションカフェで、本棚には厳選された書籍を、テーブルには電子書籍の試し読みができるタブレット端末を用意しているほか、さまざまなワークショップなども実施している。
<事業体制の強化>DNPは、事業部門間の連携を一層強化してグループとしての総合力を高めるとともに、企業や生活者との対話を深めて、的確な課題解決につながる新製品・新サービスの開発を積極的に進め、幅広いソリューションを提供していく。また、事業の拡大のために、DNPの独自技術を活かすことはもとより、さまざまな強みを持った企業との連携も推進する。これまでも情報通信や出版流通、デジタルフォトやエレクトロニクス製品などの事業で、他社との戦略的提携やM&Aを実施してきたが、今後も国内外を問わず積極的に取り組んでいく。
また、事業ビジョン「P&Iソリューション」の一層の推進を目指して、東京・市谷地区の再開発を進めている。東京近郊に分散している各事業部門の企画や営業及び本社の機能をこの地区に集約し、それぞれの強みを活かして、連携を強化していく。これにより、既存事業の拡大や新規事業の開発を進めるとともに、製造・物流体制の見直しによる製造拠点の統合などを積極的に推進していく。平成22年に着手したこの再開発計画は、平成30年の完成を目指している。
<事業継続計画(BCP)の強化>DNPは、「DNPグループ災害対策基本規程」を定め、平時から防災計画に基づく予防対策を推進して“災害に強いDNPグループ”の構築を目指している。東日本大震災後には、事業継続計画を見直し、製品のサプライチェーン全体を対象として、物流や代替生産の体制整備、国内外の製造拠点の再配置などを進め、災害時の事業への影響を最小限に抑えるよう努めていく。また、電力不足や電気料金の値上げなどへの対応として、節電の徹底や自家発電装置の導入なども進めていく。
<持続可能な社会の実現への貢献>環境問題に関しては、気温の上昇や水不足など、世界的な気候変動に対する懸念が拡大している。DNPは、自然と共生する持続可能な社会の実現に向けて、独自の環境マネジメントシステムを構築し、地球温暖化防止、廃棄物のゼロエミッション、生物多様性の保全、揮発性有機溶剤や化学物質の管理の徹底、グリーン購入などに積極的に取り組んでいる。
当期は、自社の製造段階だけでなく、間接的な排出も含めたサプライチェーン全体での温室効果ガス排出量(Scope3)を国内外で算定し、温室効果ガス排出量のグローバルな削減への取り組みを始めた。また、自社製造段階での水使用量に関する目標を策定し、削減に向けた活動をスタートさせている。印刷の主原材料である用紙については、事業活動を行う上で生態系への依存と影響が大きく、気候変動とも関わりが深いと認識している。持続可能な森林資源の維持を目的とした用紙調達のガイドラインを制定しており、今後もサプライヤーと協働で取り組みを進めていく。
株式会社の支配に関する基本方針
(1) 当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針
当社は、株式を上場して市場での自由な取引に委ねているため、会社を支配する者のあり方は、最終的には株主全体の意思に基づいて決定されるべきであり、会社の支配権の移転を伴う買収提案に応じるか否かの判断についても、最終的には、株主全体の意思に基づいて行われるべきものと考えている。
しかし、当社株式の大量買付行為の中には、大量買付者のみが他の株主の犠牲の上に利益を得るような大量買付行為、株主が買付けに応じるか否かの判断をするために合理的に必要な期間・情報を与えない大量買付行為、大量買付け後の経営の提案が不適切である大量買付行為、大量買付者の買付価格が不当に低い大量買付行為等、株主共同の利益を毀損するものもあり得る。
当社は、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者のあり方として、当社の企業理念を理解し、当社の様々なステークホルダーとの信頼関係を築きながら、企業価値ひいては株主共同の利益を中・長期的に確保・向上させることができる者でなければならないと考えている。したがって、企業価値ひいては株主共同の利益を毀損するおそれのある不適切な大量買付行為を行う者は、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者として不適切であると考えている。
(2) 会社の支配に関する基本方針の実現のための取り組み
この基本方針に基づき、当社株式の大量買付けが行われる場合の手続を定め、株主が適切な判断をするために必要かつ十分な情報と時間を確保するとともに、大量買付者との交渉の機会を確保することで、当社の企業価値・株主共同の利益の確保・向上に資するために、当社は、買収防衛策を導入しているが、平成25年6月27日開催の当社第119期定時株主総会において承認を得て、一部変更の上、継続した(以下、継続後のプランを「本プラン」)。本プランの概要は次のとおりである。
① 買付説明書及び必要情報の提出
株券等保有割合が20%以上となる当社株式の買付け等をする者(以下「買付者」)は、買付行為を開始する前に、本プランに従う旨の買付説明書、及び買付内容の検討に必要な、買付者の詳細、買付目的、買付方法その他の情報を、当社に提出するものとする。
② 独立委員会による情報提供の要請
下記(3)に記載された独立委員会(以下「独立委員会」)は、買付者より提出された情報が不十分であると判断した場合は、買付者に対して、回答期限(最長60日)を定めて、追加的に情報を提供するよう求めることがある。また、当社取締役会に対して、回答期限(最長30日)を定めて、買付けに対する意見、代替案等の提示を求めることがある。
③ 独立委員会の検討期間
独立委員会は、買付者及び当社取締役会から情報を受領した後60日間の評価期間をとり、受領した情報の検討を行う。なお、独立委員会は、買付者の買付け等の内容の検討、買付者との協議・交渉、代替案の作成等に必要とされる合理的な範囲内(最長30日)で期間延長の決議を行うことがある。
④ 情報の開示
当社は、買付説明書が提出された事実及び買付者より提供された情報のうち独立委員会が適切と判断する事項等を、独立委員会が適切と判断する時点で株主に開示する。
⑤ 独立委員会による勧告
独立委員会は、買付者が本プランに従うことなく買付け等を開始したと認められる場合、又は独立委員会における検討の結果、買付者の買付け等が当社の企業価値ひいては株主共同の利益を害するおそれがあると判断した場合は、当社取締役会に対して、本プランの発動(新株予約権の無償割当て)を勧告する。なお、独立委員会は当該勧告にあたり、本プランの発動に関して事前に株主総会の承認を得るべき旨の留保を付すことがある。
⑥ 当社取締役会による決議
当社取締役会は、独立委員会からの勧告を最大限尊重して、新株予約権の無償割当ての実施又は不実施に関して決議する。なお、当該決議を行った場合は、速やかに、当該決議の概要の情報開示を行う。
⑦ 大量買付行為の開始
買付者は、当社取締役会が新株予約権の無償割当ての不実施を決議した後に、買付け等を開始するものとする。
(3) 独立委員会の設置
本プランを適正に運用し、取締役の恣意性を排するためのチェック機関として、独立委員会を設置する。独立委員会の委員は3名以上とし、公正で客観的な判断を可能とするため、当社の業務執行を行う経営陣から独立している当社社外取締役、当社社外監査役、又は社外の有識者の中から選任するものとし、当社社外取締役の塚田忠夫氏、当社社外監査役の松浦恂氏及び慶應義塾大学法学部教授の宮島司氏が就任した。
(4) 本プランの合理性
本プランは、買収防衛策に関する指針等の要件を完全に充足していること、株主意思を重視するものとなっていること、経営陣から独立した独立委員会の判断が最大限尊重されること等の点で、合理性のあるプランとなっている。そのため、本プランは、当社の上記基本方針に沿い、当社株主の共同の利益を損なうものではなく、かつ、当社役員の地位の維持を目的とするものではないと判断している。
なお、本プランの詳細については、インターネット上の当社ウェブサイト参照。
(http://www.dnp.co.jp/ir/pdf/info_130627bouei.pdf)