有価証券報告書-第139期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

【提出】
2020/06/23 16:16
【資料】
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【項目】
168項目
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりである。
なお、文中の将来における事項は、当連結会計年度末現在において判断したものである。
(1)重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成している。連結財務諸表の作成において採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項」の(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)に記載している。連結財務諸表の作成にあたっては、資産・負債及び収益・費用の報告額に影響を与える見積りが必要となる。これらの見積りについては、過去の実績等を勘案し合理的に判断しているが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合がある。なお、新型コロナウイルス感染症の影響に係る仮定は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項」の(追加情報)に記載している。
(2) 経営成績の概要及び分析
当社グループは2017年度から、2019年度までの3ヵ年を期間とする中期経営課題“プロジェクト AP-G 2019”に取り組み、「成長分野での事業拡大」、「成長国・地域での事業拡大」、「競争力強化」を要とした成長戦略を実行した。
一方で、米中貿易摩擦による中国経済の低迷や自動車・スマートフォン関連の需要鈍化等により、生産・販売数量が大きく影響を受けた。また、第4四半期には、新型コロナウイルスの感染拡大により生産活動や消費行動が停滞し、世界経済は急減速した。
(業績指標)
(単位:億円)
2017年度実績2018年度実績2019年度実績“プロジェクト
AP-G 2019”
2019年度目標
売上高22,04923,88822,14627,000
営業利益1,5651,4151,3122,500
営業利益率7.1%5.9%5.9%9%
ROA6.3%5.3%4.8%約9%
ROE9.1%7.1%5.0%約12%

当連結会計年度の売上高は、炭素繊維複合材料事業を除くすべてのセグメントで減収となり、前連結会計年度比1,742億円(7.3%)減収の2兆2,146億円となった。営業利益は、繊維事業、機能化成品事業を中心に減益となり、前連結会計年度比103億円(7.3%)減益の1,312億円となった。
営業利益の前連結会計年度比増減要因を分析すると、原料価格下落による増益288億円があった一方で、生産・販売数量の減少や費用の増加などによる減益△390億円があり、差し引き103億円の減益となった。
営業外損益は、持分法による投資損失を計上したことなどにより、前連結会計年度比209億円の減益となり、経常利益は同312億円(23.2%)減益の1,034億円となった。
特別利益は有形固定資産売却益が減少したことを主因に前連結会計年度比147億円減の77億円、特別損失は減損損失が減少したことを主因に同124億円減の170億円となり、税金等調整前当期純利益は同334億円(26.2%)減益の940億円となった。
親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度比236億円(29.8%)減益の557億円となった。自己資本利益率は、5.0%と前連結会計年度比2.1ポイント悪化した。

当連結会計年度のセグメント別の経営成績は、次のとおりである。
(繊維事業)
米中貿易摩擦の長期化と中国経済の減速、及び2年続いた暖冬により各用途で市況低迷の影響を受けた。
国内では、衣料及び産業用途ともに総じて荷動きが低調に推移する中、国内ユニフォーム用途や欧米スポーツ用途等で拡販を進めるとともに、事業体質強化に注力した。
海外では、縫製品やテキスタイルなどの衣料用途のほか、産業用途も主力の自動車関連用途の需要が低調に推移する中、事業構造改革、事業体質強化に注力した。
また、国内外ともに新型コロナウイルスによる生産活動・消費行動停滞の影響を受けた。
以上の結果、繊維事業全体では、売上高は前連結会計年度比9.4%減の8,831億円、営業利益は同16.7%減の607億円となった。
主要な製品の生産規模は、ナイロン糸が前連結会計年度比5.5%減の約442億円(販売価格ベース)、ポリエステル糸が同11.5%減の約529億円(販売価格ベース)、ポリエステルステープルが同17.1%減の約522億円(販売価格ベース)となった。
(機能化成品事業)
樹脂事業は、中国経済の減速及び新型コロナウイルスによる生産活動停滞の影響を主因に自動車・家電用途とも低調に推移した。ケミカル事業は、基礎原料の市況下落の影響を受けた。フィルム事業は、リチウムイオン二次電池向けバッテリーセパレータフィルムが需要の伸長を背景に売上を拡大したが、ポリエステルフィルムでは光学用途や電子部品関連において在庫調整の影響を受けた。電子情報材料事業は、有機EL関連部材や回路材料が好調に推移した。
以上の結果、機能化成品事業全体では、売上高は前連結会計年度比11.3%減の7,708億円、営業利益は同13.2%減の587億円となった。
主要な製品の生産規模は、ABS樹脂が前連結会計年度比18.2%減の約850億円(販売価格ベース)、ナイロン樹脂とPBT樹脂が同5.5%減の約263億円(販売価格ベース)、ポリエステルフィルムが同16.6%減の約1,083億円(販売価格ベース)となった。
(炭素繊維複合材料事業)
航空機向け需要や、圧縮天然ガスタンク・風力発電翼といった環境・エネルギー関連向け一般産業用途が好調に推移したほか、スポーツ用途の需要が回復するなど、総じて堅調に推移した。
以上の結果、炭素繊維複合材料事業全体では、売上高は前連結会計年度比9.7%増の2,369億円、営業利益は同81.6%増の210億円となった。
炭素繊維複合材料の生産規模は前連結会計年度比15.3%増の約2,258億円(販売価格ベース)となった。
(環境・エンジニアリング事業)
水処理事業は、国内外で逆浸透膜などの需要が概ね堅調に推移した。
国内子会社では、建設子会社が高収益案件の受注減少の影響を受けたほか、エンジニアリング子会社でエレクトロニクス関連装置の出荷が減少した。
以上の結果、環境・エンジニアリング事業全体では、売上高は前連結会計年度比2.1%減の2,523億円、営業利益は同8.1%減の112億円となった。
(ライフサイエンス事業)
医薬事業は、経口プロスタサイクリン誘導体製剤ドルナー®が後発医薬品発売の影響を受けた。経口そう痒症改善薬レミッチ®*も後発医薬品発売の影響を受けたが、市場全体の伸びもあり、堅調な出荷となった。
医療機器事業は、ダイアライザーが国内外で堅調な出荷となった。
以上の結果、ライフサイエンス事業全体では、売上高は前連結会計年度比0.8%減の533億円、営業利益は同24.9%増の16億円となった。
医療機器の生産規模は前連結会計年度比7.3%増の約180億円(販売価格ベース)となった。
*レミッチ®は鳥居薬品㈱の登録商標である。
(その他)
売上高は前連結会計年度比1.5%減の182億円、営業利益は同10.1%増の34億円となった。
(生産、受注及び販売の状況)
当社グループ(当社及び連結子会社)の生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その形態、単位等は必ずしも一様ではなく、また受注生産形態をとらない製品も多いため、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示すことはしていない。
このため生産、受注及び販売の状況については、各セグメントの業績に関連付けて示している。
(3) 財政状態の概要及び分析
当連結会計年度末の財政状態は、資産の部は、受取手形及び売掛金が減少した結果、流動資産が前連結会計年度末比629億円減少し、固定資産も投資有価証券の減少を主因に同748億円減少したことから、資産合計では同1,377億円減少の2兆6,507億円となった。
負債の部は、支払手形及び買掛金や有利子負債が減少したことを主因に前連結会計年度末比1,033億円減少の1兆4,711億円となった。
純資産の部は、為替換算調整勘定の変動などにより純資産合計で前連結会計年度末比344億円減少の1兆1,796億円となり、このうち自己資本は1兆937億円となった。当連結会計年度末の自己資本比率は、前連結会計年度末比0.7ポイント上昇し41.3%、D/Eレシオは同横ばいの0.86となった。
(4) 資本の財源及び資金の流動性についての分析
①キャッシュ・フローの概要及び分析
当連結会計年度における連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、営業活動による資金の増加が投資活動による資金の減少を834億円上回った一方、有利子負債の減少を主因に財務活動による資金の減少が676億円となったこと等により、当連結会計年度末には前連結会計年度末比106億円(6.1%)増の1,837億円となった。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
売上債権の減少額が前連結会計年度比708億円増加した一方、税金等調整前当期純利益が334億円減少したこと等により、営業活動による資金の増加は同495億円(28.1%)増の2,258億円となった。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出が前連結会計年度比1,146億円減少したこと等により、投資活動による資金の減少は同1,179億円(45.3%)減の1,424億円となった。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
社債の発行による収入が前連結会計年度比1,000億円減少したことや、短期借入金の純減少額が674億円であったこと等により、財務活動による資金の減少は同1,865億円増の676億円となった。
(キャッシュ・フロー関連指標の推移)
回次第135期第136期第137期第138期第139期
決算年月2016年3月2017年3月2018年3月2019年3月2020年3月
自己資本比率(%)41.542.642.340.641.3
時価ベースの自己資本比率(%)67.365.962.540.628.3
キャッシュ・フロー対有利子負債比率3.64.16.35.54.2
インタレスト・カバレッジ・
レシオ
37.638.025.624.840.7

(注) 時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産額
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業活動によるキャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業活動によるキャッシュ・フロー/利払い
株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式総数(自己株式控除後)により算出している。
また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用している。
②資金需要
当社グループの資金需要の主なものは、設備投資、投融資などの長期資金需要と当社製品製造のための原材料の購入のほか、製造費、販売費及び一般管理費などの運転資金需要である。このうち、設備投資の概要及び重要な設備の新設の計画については、「第3 設備の状況」に記載している。
③財務政策
当社グループは、資金需要の見通しや金融市場の動向などを総合的に勘案した上で、最適なタイミング、規模、手段を判断して資金調達を実施している。また、事業拡大と財務体質強化の両立という基本方針の下、運転資金の圧縮、固定資産の稼働率向上、キャッシュマネジメントシステムによるグループ内余剰資金の有効活用等、資産効率の改善にも取り組んでいる。
財務状況は健全性を保っており、現金及び現金同等物、有価証券などの流動性資産に加え、営業活動によるキャッシュ・フロー、借入金、社債等による資金調達により、事業拡大に必要な資金を十分に賄えると考えている。また、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う業績、キャッシュ・フロー悪化リスク等、緊急に資金が必要となる場合や金融市場の混乱に備え、国内外の金融機関とコミットメントライン契約、当座貸越契約等を締結し、資金流動性を確保している。