有価証券報告書-第146期(2023/01/01-2023/12/31)
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次の通りであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1)経営成績
当連結会計年度の世界経済は、新型コロナウイルス感染症による経済活動の落ち込みから回復が進み、原油をはじめとする資源価格も安定するなど世界的なインフレに鈍化の動きが続きました。一方、ウクライナ問題の長期化や金融引き締めが継続されるなかで欧米では景気後退への懸念が続き、また中国においても個人消費の停滞や不動産市場の悪化などにより景気回復への遅れが懸念される状況で推移しました。
このような状況のなかで、当社グループは2030年を見据えた長期ビジョン『SAKATA INX VISION 2030』を実現させるため、基盤構築フェーズである『中期経営計画2023 (CCC-I)』の最終年度として、環境配慮型製品を中心としたパッケージ用インキと機能性材料の拡販とともに、新規事業の確立に向けた基盤作りを進めました。また、印刷インキの主要原材料につきましては、海外においては前年同期に比べ、価格面で安定した状況にあるものの、国内では依然として高い状態が続いております。このため、製品の安定供給を最優先として、グループ会社間の連携強化やグローバル調達などによるサプライチェーンの安定化に取り組むとともに販売価格の改定に取り組みました。機能性材料事業では、インクジェットインキをはじめとして、カラーフィルター用顔料分散液、トナーなどの従来製品の拡販に加え、社会トレンドを捉えた高付加価値製品の開発に取り組みました。
売上高は、欧米において市況の悪化による需要減の影響を受けたものの、アジアにおいて販売が好調に推移したことに加え、販売価格の改定が進んだことや機能性材料の拡販が進んだこと、また円安による為替換算の影響を受けたことなどから、2,283億1千1百万円(前期比5.9%増加)となりました。
利益面では、海外を中心に原材料価格が落ち着きをみせるなかで、販売価格の改定効果やインキコストの削減により収益性の改善が続いたことなどから、営業利益は113億9千8百万円(前期比176.3%増加)となりました。経常利益は136億3千4百万円(前期比174.8%増加)、親会社株主に帰属する当期純利益は、減損損失を計上したことなどから、74億6千6百万円(前期比63.9%増加)となりました。
(参考)USドルの期中平均為替レート
(注)連結会計年度の期中平均為替レートは、1月~12月の単純平均レートを記載しております。
セグメントの業績を示すと、次の通りであります。
(※)実質増減率:海外連結子会社の為替換算の影響を除いた増減率
印刷インキ・機材(日本)
新型コロナウイルス感染症の5類感染症への移行により社会経済活動の正常化が進んだことに加え、水際対策の終了により外国人観光客の増加が続きました。一方で、内食需要の低下や、日用品、食品、飲料など多くのアイテムで値上げの影響による買い控えの動きが長期化していることもあり、パッケージ関連ではグラビアインキ、フレキソインキともに全体としてやや低調に推移しました。印刷情報関連では、デジタル化の影響など市場の構造的な縮小や、広告需要の低迷が続いていることなどから、新聞インキ、オフセットインキともに低調に推移しました。このような状況ではあるものの、販売価格の改定効果もあり、印刷インキ全体では前期を上回りました。機材につきましては、印刷製版用材料、機械販売ともに前期を上回りました。これらの結果、売上高は521億3百万円(前期比1.3%増加)となりました。
利益面では、印刷インキの販売が低調に推移したものの、販売価格の改定効果が寄与し、営業利益は5億3千3百万円(前期比31.0%増加)となりました。
印刷インキ(アジア)
主力であるパッケージ関連のグラビアインキは、インドネシア、ベトナム、タイといった東南アジアやインドで販売が好調なことに加え、本格稼働したバングラデシュでも順調に拡販が続きました。印刷情報関連では、インド、中国とも堅調に推移しました。売上高は、販売数量が増加したことや円安による為替換算の影響を受けたことなどから524億3千4百万円(前期比9.1%増加)となりました。
利益面では、全般的に経費が増加したものの、販売数量が増加したことに加え、原材料価格も前期を下回る水準で推移したことなどにより、営業利益は43億4千6百万円(前期比149.0%増加)となりました。
印刷インキ(米州)
金融引き締めによる市況の悪化による影響が長期化しております。販売数量に関しては前期末の落ち込みから回復に時間がかかっており、全般に低調に推移しました。主力のパッケージ関連では、顧客での需要の低迷が続いており、フレキソインキ及びグラビアインキとも販売の落ち込みからの回復は緩やかなものとなっております。メタルインキは環境負荷の観点からアルミ缶に対する需要が高まっているという背景はあるものの、販売は伸び悩みました。印刷情報関連であるオフセットインキは、市場の構造的な縮小もあり低調に推移しました。売上高は、販売数量は伸び悩んだものの、販売価格の改定が大きく進んだことに加え、円安による為替換算の影響を受けたことなどから、785億1千万円(前期比6.3%増加)となりました。
利益面では、人件費を中心に経費が増加したものの、販売価格の改定効果が大きく寄与したことに加え、原材料価格も前期を下回る水準で推移するなかでインキコストの削減を推し進めたことなどにより、営業利益は43億3千6百万円(前期は3億6千万円の営業利益)となりました。
印刷インキ(欧州)
パッケージ関連を中心として拡販に取り組んだものの、欧州経済の低迷による顧客での需要減の影響を大きく受けたこともあり販売数量に関しては低調に推移しました。売上高は、販売価格の改定が進んだことに加え、円安による為替換算の影響を受けたことなどから、195億5千5百万円(前期比0.4%増加)となりました。
利益面では、販売価格の改定効果が寄与したものの、販売数量が低調に推移したことの影響が大きく7億8千9百万円の営業損失(前期は5億7千1百万円の営業損失)となりました。
機能性材料
インクジェットインキは全体としては堅調に推移し前期を上回りました。カラーフィルター用顔料分散液はパネルディスプレイ市況の改善などにより前期を上回りました。トナーは市況の低迷による顧客での在庫調整の動きが長引いていることなどから前期を下回りました。これらの結果に加え、円安による為替換算の影響を受けたことなどから、売上高は168億3千6百万円(前期比8.6%増加)となりました。
利益面では、デジタル印刷材料の販売が増加したことなどにより、営業利益は18億8千2百万円(前期比18.8%増加)となりました。
生産、受注及び販売の実績は、次の通りであります。
① 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次の通りであります。
(注)生産金額については期中平均販売価格により表示しており、セグメント間の取引については相殺消去しております。
② 受注実績
印刷用インキの生産は主として見込生産によっております。
小口ロットのものについて受注生産を行っているものもありますが、特に受注高及び受注残高として示すほどのものはありません。
③ 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次の通りであります。
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.総販売実績に対し10%以上に該当する販売先はありません。
(2)財政状態
当連結会計年度末の総資産は、棚卸資産や有形固定資産は減少したものの、現金及び預金が増加したこと、売上高の増加に伴い売上債権が増加したこと、株価の上昇に伴う時価評価や持分法により投資有価証券が増加したこと、基幹システムの更新に関連して無形固定資産が増加したことに加え、円安による為替換算の影響を受けたことなどから、前連結会計年度末比166億8千3百万円(9.4%)増加の1,940億8千7百万円となりました。
負債は、借入金の残高が減少したものの、仕入債務が増加したことに加え、円安による為替換算の影響を受けたことなどから、前連結会計年度末比39億8千4百万円(4.7%)増加の884億3千5百万円となりました。
純資産は、利益剰余金の増加に加え、その他の包括利益累計額が増加したことなどから、前連結会計年度末比126億9千8百万円(13.7%)増加の1,056億5千1百万円となりました。
(3)キャッシュ・フロー
当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況は、次の通りであります。
営業活動によるキャッシュ・フローは、売上債権の増加や法人税等の支払などがあったものの、税金等調整前当期純利益、減価償却費に加え、棚卸資産の減少や仕入債務の増加などにより、153億7千2百万円の資金の増加となりました。前連結会計年度に比べ104億2千7百万円の増加となりましたが、主な要因は、税金等調整前当期純利益が増加したことや運転資本が減少したことであります。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産や無形固定資産に加え、投資有価証券の取得による支出などがあったことにより、75億9千万円の資金の減少となりました。前連結会計年度に比べ59億2千4百万円の減少となりましたが、主な要因は、投資有価証券の売却による収入が減少したことや投資有価証券の取得による支出が増加したことであります。
財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払に加え、借入金の減少などにより、42億9千9百万円の資金の減少となりました。前連結会計年度に比べ4億1百万円の減少となりましたが、主な要因は、自己株式の取得による支出が減少したことや借入金の残高が減少したことであります。
以上に加え、連結の範囲の変更を伴う現金及び現金同等物の増減額として1千2百万円を計上した結果、当連結会計年度における現金及び現金同等物の期末残高は162億1千8百万円となり、前連結会計年度末に比べ44億9千7百万円の増加となりました。
キャッシュ・フロー関連指標の推移は、次の通りであります。
(注)自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い
1.各指標は、いずれも連結ベースの財務数値より算出しております。
2.株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しております。
3.営業キャッシュ・フローは連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。有利子負債は連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としております。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。
資本の財源及び資金の流動性は、次の通りであります。
当社グループでは運転資金や設備投資等のための資金の調達として、内部資金及び外部借入による資金調達を基本方針としております。外部借入のうち、短期借入は主に営業取引に係る資金調達であり、長期借入は主に設備投資に係る資金調達であります。
内部資金に関しては営業活動によるキャッシュ・フローにより継続的に資金を獲得しております。また外部借入に関しては短期・長期借入の他に、当社においては運転資金の効率的な調達を行うため、取引銀行2行と30億円の特定融資枠契約を締結しております。これらに加え、2021年には10億円のESG評価型の無担保私募債(償還期限2026年3月31日)を発行しております。
重要な資本的支出の予定につきましては、「第3 設備の状況 3 設備の新設、除去等の計画(1)重要な設備の新設等」をご参照下さい。
(4)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。連結財務諸表の作成には、資産・負債及び収益・費用の額に影響を与える見積り及び仮定を必要とします。これらの見積り及び仮定は、過去の実績や当連結会計年度末時点で入手可能な情報を総合的に勘案し合理的に判断しておりますが、見積り特有の不確実性が存在するため、実際の結果は異なることがあります。
当社グループが連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 重要な会計上の見積り」に記載の通りであります。
(5)経営成績に重要な影響を与える要因
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」をご参照下さい。
(6)目標とする経営指標との比較
当連結会計年度と「中期経営計画2023 CCC-I」の最終期との比較は、次の通りであります。
「中期経営計画2023 CCC-I(以下「計画」という。)」の最終年度である当連結会計年度につきましては、売上高は販売価格の改定や計画策定時に比べ大幅に円安が進んだことによる為替換算の影響などもあり、計画を上回りました。利益面では販売価格の改定による影響がありましたが、計画策定時に比べて原材料価格が上昇していることに加え、海外を中心にインフレによる影響で人件費を中心に経費が増加したこともあり、営業利益は計画を僅かに下回る水準となりました。経常利益は計画を上回りました。親会社株主に帰属する当期純利益およびRОEにつきましては、減損損失を計上したことなどから計画を下回りました。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1)経営成績
当連結会計年度の世界経済は、新型コロナウイルス感染症による経済活動の落ち込みから回復が進み、原油をはじめとする資源価格も安定するなど世界的なインフレに鈍化の動きが続きました。一方、ウクライナ問題の長期化や金融引き締めが継続されるなかで欧米では景気後退への懸念が続き、また中国においても個人消費の停滞や不動産市場の悪化などにより景気回復への遅れが懸念される状況で推移しました。
このような状況のなかで、当社グループは2030年を見据えた長期ビジョン『SAKATA INX VISION 2030』を実現させるため、基盤構築フェーズである『中期経営計画2023 (CCC-I)』の最終年度として、環境配慮型製品を中心としたパッケージ用インキと機能性材料の拡販とともに、新規事業の確立に向けた基盤作りを進めました。また、印刷インキの主要原材料につきましては、海外においては前年同期に比べ、価格面で安定した状況にあるものの、国内では依然として高い状態が続いております。このため、製品の安定供給を最優先として、グループ会社間の連携強化やグローバル調達などによるサプライチェーンの安定化に取り組むとともに販売価格の改定に取り組みました。機能性材料事業では、インクジェットインキをはじめとして、カラーフィルター用顔料分散液、トナーなどの従来製品の拡販に加え、社会トレンドを捉えた高付加価値製品の開発に取り組みました。
売上高は、欧米において市況の悪化による需要減の影響を受けたものの、アジアにおいて販売が好調に推移したことに加え、販売価格の改定が進んだことや機能性材料の拡販が進んだこと、また円安による為替換算の影響を受けたことなどから、2,283億1千1百万円(前期比5.9%増加)となりました。
利益面では、海外を中心に原材料価格が落ち着きをみせるなかで、販売価格の改定効果やインキコストの削減により収益性の改善が続いたことなどから、営業利益は113億9千8百万円(前期比176.3%増加)となりました。経常利益は136億3千4百万円(前期比174.8%増加)、親会社株主に帰属する当期純利益は、減損損失を計上したことなどから、74億6千6百万円(前期比63.9%増加)となりました。
(参考)USドルの期中平均為替レート
第1四半期 連結会計期間 | 第2四半期 連結会計期間 | 第3四半期 連結会計期間 | 第4四半期 連結会計期間 | 連結会計年度 | |
2023年12月期 | 132.34円 | 137.37円 | 144.62円 | 147.89円 | 140.56円 |
2022年12月期 | 116.20円 | 129.57円 | 138.37円 | 141.59円 | 131.43円 |
(注)連結会計年度の期中平均為替レートは、1月~12月の単純平均レートを記載しております。
セグメントの業績を示すと、次の通りであります。
(単位:百万円) |
売上高 | 営業利益又は営業損失(△) | ||||||||
前期 | 当期 | 増減額 | 増減率 | (※)実質 | 前期 | 当期 | 増減額 | 増減率 | |
印刷インキ・ 機材(日本) | 51,436 | 52,103 | 667 | 1.3% | 1.3% | 407 | 533 | 126 | 31.0% |
印刷インキ (アジア) | 48,050 | 52,434 | 4,383 | 9.1% | 5.0% | 1,745 | 4,346 | 2,600 | 149.0% |
印刷インキ (米州) | 73,889 | 78,510 | 4,620 | 6.3% | △1.0% | 360 | 4,336 | 3,976 | - |
印刷インキ (欧州) | 19,486 | 19,555 | 68 | 0.4% | △8.5% | △571 | △789 | △218 | - |
機能性材料 | 15,508 | 16,836 | 1,328 | 8.6% | 5.0% | 1,584 | 1,882 | 297 | 18.8% |
報告セグメント計 | 208,372 | 219,441 | 11,069 | 5.3% | 0.7% | 3,526 | 10,309 | 6,782 | 192.3% |
その他 | 14,046 | 15,302 | 1,255 | 8.9% | 8.9% | 336 | 464 | 127 | 37.9% |
調整額 | △6,887 | △6,432 | 455 | - | - | 261 | 624 | 362 | - |
合計 | 215,531 | 228,311 | 12,780 | 5.9% | 1.5% | 4,125 | 11,398 | 7,272 | 176.3% |
(※)実質増減率:海外連結子会社の為替換算の影響を除いた増減率
印刷インキ・機材(日本)
新型コロナウイルス感染症の5類感染症への移行により社会経済活動の正常化が進んだことに加え、水際対策の終了により外国人観光客の増加が続きました。一方で、内食需要の低下や、日用品、食品、飲料など多くのアイテムで値上げの影響による買い控えの動きが長期化していることもあり、パッケージ関連ではグラビアインキ、フレキソインキともに全体としてやや低調に推移しました。印刷情報関連では、デジタル化の影響など市場の構造的な縮小や、広告需要の低迷が続いていることなどから、新聞インキ、オフセットインキともに低調に推移しました。このような状況ではあるものの、販売価格の改定効果もあり、印刷インキ全体では前期を上回りました。機材につきましては、印刷製版用材料、機械販売ともに前期を上回りました。これらの結果、売上高は521億3百万円(前期比1.3%増加)となりました。
利益面では、印刷インキの販売が低調に推移したものの、販売価格の改定効果が寄与し、営業利益は5億3千3百万円(前期比31.0%増加)となりました。
印刷インキ(アジア)
主力であるパッケージ関連のグラビアインキは、インドネシア、ベトナム、タイといった東南アジアやインドで販売が好調なことに加え、本格稼働したバングラデシュでも順調に拡販が続きました。印刷情報関連では、インド、中国とも堅調に推移しました。売上高は、販売数量が増加したことや円安による為替換算の影響を受けたことなどから524億3千4百万円(前期比9.1%増加)となりました。
利益面では、全般的に経費が増加したものの、販売数量が増加したことに加え、原材料価格も前期を下回る水準で推移したことなどにより、営業利益は43億4千6百万円(前期比149.0%増加)となりました。
印刷インキ(米州)
金融引き締めによる市況の悪化による影響が長期化しております。販売数量に関しては前期末の落ち込みから回復に時間がかかっており、全般に低調に推移しました。主力のパッケージ関連では、顧客での需要の低迷が続いており、フレキソインキ及びグラビアインキとも販売の落ち込みからの回復は緩やかなものとなっております。メタルインキは環境負荷の観点からアルミ缶に対する需要が高まっているという背景はあるものの、販売は伸び悩みました。印刷情報関連であるオフセットインキは、市場の構造的な縮小もあり低調に推移しました。売上高は、販売数量は伸び悩んだものの、販売価格の改定が大きく進んだことに加え、円安による為替換算の影響を受けたことなどから、785億1千万円(前期比6.3%増加)となりました。
利益面では、人件費を中心に経費が増加したものの、販売価格の改定効果が大きく寄与したことに加え、原材料価格も前期を下回る水準で推移するなかでインキコストの削減を推し進めたことなどにより、営業利益は43億3千6百万円(前期は3億6千万円の営業利益)となりました。
印刷インキ(欧州)
パッケージ関連を中心として拡販に取り組んだものの、欧州経済の低迷による顧客での需要減の影響を大きく受けたこともあり販売数量に関しては低調に推移しました。売上高は、販売価格の改定が進んだことに加え、円安による為替換算の影響を受けたことなどから、195億5千5百万円(前期比0.4%増加)となりました。
利益面では、販売価格の改定効果が寄与したものの、販売数量が低調に推移したことの影響が大きく7億8千9百万円の営業損失(前期は5億7千1百万円の営業損失)となりました。
機能性材料
インクジェットインキは全体としては堅調に推移し前期を上回りました。カラーフィルター用顔料分散液はパネルディスプレイ市況の改善などにより前期を上回りました。トナーは市況の低迷による顧客での在庫調整の動きが長引いていることなどから前期を下回りました。これらの結果に加え、円安による為替換算の影響を受けたことなどから、売上高は168億3千6百万円(前期比8.6%増加)となりました。
利益面では、デジタル印刷材料の販売が増加したことなどにより、営業利益は18億8千2百万円(前期比18.8%増加)となりました。
生産、受注及び販売の実績は、次の通りであります。
① 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次の通りであります。
セグメントの名称 | 金額(百万円) | 前期比(%) |
印刷インキ・機材(日本) | 33,748 | △1.7 |
印刷インキ(アジア) | 50,417 | 8.2 |
印刷インキ(米州) | 78,952 | 6.2 |
印刷インキ(欧州) | 20,555 | 4.1 |
機能性材料 | 14,349 | △0.5 |
その他 | 813 | 16.6 |
合計 | 198,836 | 4.6 |
(注)生産金額については期中平均販売価格により表示しており、セグメント間の取引については相殺消去しております。
② 受注実績
印刷用インキの生産は主として見込生産によっております。
小口ロットのものについて受注生産を行っているものもありますが、特に受注高及び受注残高として示すほどのものはありません。
③ 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次の通りであります。
セグメントの名称 | 金額(百万円) | 前期比(%) |
印刷インキ・機材(日本) | 52,095 | 1.3 |
印刷インキ(アジア) | 52,273 | 9.3 |
印刷インキ(米州) | 77,903 | 7.3 |
印刷インキ(欧州) | 18,857 | 1.7 |
機能性材料 | 16,794 | 8.8 |
その他 | 10,386 | 7.0 |
合計 | 228,311 | 5.9 |
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.総販売実績に対し10%以上に該当する販売先はありません。
(2)財政状態
当連結会計年度末の総資産は、棚卸資産や有形固定資産は減少したものの、現金及び預金が増加したこと、売上高の増加に伴い売上債権が増加したこと、株価の上昇に伴う時価評価や持分法により投資有価証券が増加したこと、基幹システムの更新に関連して無形固定資産が増加したことに加え、円安による為替換算の影響を受けたことなどから、前連結会計年度末比166億8千3百万円(9.4%)増加の1,940億8千7百万円となりました。
負債は、借入金の残高が減少したものの、仕入債務が増加したことに加え、円安による為替換算の影響を受けたことなどから、前連結会計年度末比39億8千4百万円(4.7%)増加の884億3千5百万円となりました。
純資産は、利益剰余金の増加に加え、その他の包括利益累計額が増加したことなどから、前連結会計年度末比126億9千8百万円(13.7%)増加の1,056億5千1百万円となりました。
(3)キャッシュ・フロー
当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況は、次の通りであります。
営業活動によるキャッシュ・フローは、売上債権の増加や法人税等の支払などがあったものの、税金等調整前当期純利益、減価償却費に加え、棚卸資産の減少や仕入債務の増加などにより、153億7千2百万円の資金の増加となりました。前連結会計年度に比べ104億2千7百万円の増加となりましたが、主な要因は、税金等調整前当期純利益が増加したことや運転資本が減少したことであります。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産や無形固定資産に加え、投資有価証券の取得による支出などがあったことにより、75億9千万円の資金の減少となりました。前連結会計年度に比べ59億2千4百万円の減少となりましたが、主な要因は、投資有価証券の売却による収入が減少したことや投資有価証券の取得による支出が増加したことであります。
財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払に加え、借入金の減少などにより、42億9千9百万円の資金の減少となりました。前連結会計年度に比べ4億1百万円の減少となりましたが、主な要因は、自己株式の取得による支出が減少したことや借入金の残高が減少したことであります。
以上に加え、連結の範囲の変更を伴う現金及び現金同等物の増減額として1千2百万円を計上した結果、当連結会計年度における現金及び現金同等物の期末残高は162億1千8百万円となり、前連結会計年度末に比べ44億9千7百万円の増加となりました。
キャッシュ・フロー関連指標の推移は、次の通りであります。
2019年 12月期 | 2020年 12月期 | 2021年 12月期 | 2022年 12月期 | 2023年 12月期 | |
自己資本比率(%) | 51.7 | 52.6 | 51.8 | 48.6 | 50.9 |
時価ベースの 自己資本比率(%) | 46.8 | 46.6 | 34.8 | 29.6 | 35.0 |
キャッシュ・フロー対 有利子負債比率(年) | 1.8 | 1.7 | 2.4 | 5.6 | 1.7 |
インタレスト・カバレッジ・ レシオ(倍) | 32.2 | 40.1 | 32.4 | 9.0 | 20.3 |
(注)自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い
1.各指標は、いずれも連結ベースの財務数値より算出しております。
2.株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しております。
3.営業キャッシュ・フローは連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。有利子負債は連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としております。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。
資本の財源及び資金の流動性は、次の通りであります。
当社グループでは運転資金や設備投資等のための資金の調達として、内部資金及び外部借入による資金調達を基本方針としております。外部借入のうち、短期借入は主に営業取引に係る資金調達であり、長期借入は主に設備投資に係る資金調達であります。
内部資金に関しては営業活動によるキャッシュ・フローにより継続的に資金を獲得しております。また外部借入に関しては短期・長期借入の他に、当社においては運転資金の効率的な調達を行うため、取引銀行2行と30億円の特定融資枠契約を締結しております。これらに加え、2021年には10億円のESG評価型の無担保私募債(償還期限2026年3月31日)を発行しております。
重要な資本的支出の予定につきましては、「第3 設備の状況 3 設備の新設、除去等の計画(1)重要な設備の新設等」をご参照下さい。
(4)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。連結財務諸表の作成には、資産・負債及び収益・費用の額に影響を与える見積り及び仮定を必要とします。これらの見積り及び仮定は、過去の実績や当連結会計年度末時点で入手可能な情報を総合的に勘案し合理的に判断しておりますが、見積り特有の不確実性が存在するため、実際の結果は異なることがあります。
当社グループが連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 重要な会計上の見積り」に記載の通りであります。
(5)経営成績に重要な影響を与える要因
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」をご参照下さい。
(6)目標とする経営指標との比較
当連結会計年度と「中期経営計画2023 CCC-I」の最終期との比較は、次の通りであります。
当連結会計年度 | 2023年計画 | 比較 | |
売上高(億円) | 2,283 | 1,950 | +333 |
営業利益(億円) | 113 | 115 | △1 |
経常利益(億円) | 136 | 130 | +6 |
親会社株主に帰属する 当期純利益(億円) | 74 | 90 | △15 |
ROE | 8.1% | 10%以上 | - |
「中期経営計画2023 CCC-I(以下「計画」という。)」の最終年度である当連結会計年度につきましては、売上高は販売価格の改定や計画策定時に比べ大幅に円安が進んだことによる為替換算の影響などもあり、計画を上回りました。利益面では販売価格の改定による影響がありましたが、計画策定時に比べて原材料価格が上昇していることに加え、海外を中心にインフレによる影響で人件費を中心に経費が増加したこともあり、営業利益は計画を僅かに下回る水準となりました。経常利益は計画を上回りました。親会社株主に帰属する当期純利益およびRОEにつきましては、減損損失を計上したことなどから計画を下回りました。