有価証券報告書-第142期(平成31年1月1日-令和1年12月31日)

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2020/03/26 13:19
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当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要ならびに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次の通りであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営成績
当連結会計年度の世界経済は、米国は景気の回復が続いたものの、欧州は全体として景気の回復が弱まりました。アジアにおいては、通商問題の影響が広がりをみせたことにより、中国で景気が緩やかに減速するなど弱い動きとなりました。日本経済は、雇用・所得環境の改善は続くものの、輸出が弱含む中で、製造業を中心に弱さが一段と増すなど、景気の先行きが懸念される状況で推移しました。
このような状況の中で、当社グループはコア事業である印刷インキ事業において、各拠点での拡販に注力するとともに、環境に配慮した安全・省エネ志向製品や顧客ニーズに応じた地域密着型製品の開発、TPM活動の深化による生産性向上などに取り組みました。また、印刷インキ全般の原材料価格が、中国における環境規制の強化に伴う供給不足などにより、高水準であったことから、更なるコスト削減を推し進めるとともに、販売価格の改定に取り組みました。一方、機能性材料事業では、インクジェットインキをはじめとして、トナー、カラーフィルター用顔料分散液などの開発・拡販に取り組みました。
売上高は、円高による為替換算の影響を受けたものの、米州及びアジアを中心にパッケージ関連の印刷インキの拡販が進んだことに加え、新規連結や販売価格の改定による増収が寄与したことなどから、1,672億3千7百万円(前期比3.2%増加)となりました。
利益面では、印刷インキ事業において、上半期を中心に原材料高が影響したものの、販売数量の増加や販売価格の改定効果が寄与したことなどから、営業利益は62億2千5百万円(前期比21.8%増加)となりました。経常利益は持分法による投資利益が減少したことなどから、73億1千9百万円(前期比5.9%増加)となり、親会社株主に帰属する当期純利益は、従業員向けの福利厚生施設に対する減損損失に加え、欧州における事業再編の一環としてフランスの工場閉鎖計画に関わる組織再編費用を計上したことなどから、41億1千4百万円(前期比12.3%減少)となりました。
(参考) USドルの期中平均為替レート
第1四半期
連結会計期間
第2四半期
連結会計期間
第3四半期
連結会計期間
第4四半期
連結会計期間
連結会計年度
2019年12月期110.20 円109.90 円107.35 円108.76 円109.05 円
2018年12月期108.30 円109.07 円111.46 円112.90 円110.43 円

(注) 連結会計年度の期中平均為替レートは、1月~12月の単純平均レートを記載しております。
セグメントの経営成績は、次の通りであります。
(単位:百万円)
売上高営業利益又は営業損失(△)
前期当期増減額増減率前期当期増減額増減率
印刷インキ・
機材(日本)
54,95051,876△3,074△5.6%1,125822△303△26.9%
印刷インキ
(アジア)
32,15635,2773,1209.7%1,5292,42089058.2%
印刷インキ
(米州)
44,95748,7713,8148.5%9921,94595396.0%
印刷インキ
(欧州)
9,3219,7904695.0%△791△985△193-
機能性材料12,18512,4522672.2%1,222926△296△24.3%
報告セグメント計153,571158,1684,5963.0%4,0785,1291,05025.8%
その他16,33516,8375013.1%390369△20△5.3%
調整額△7,851△7,76783-64372783-
合計162,056167,2375,1813.2%5,1126,2251,11321.8%

印刷インキ・機材(日本)
パッケージ関連では、ボタニカルインキシリーズなど環境配慮型製品の拡販に努めたものの、フレキソインキは天候不順などに伴う需要減の影響により、またグラビアインキは食品廃棄量削減に向けた取組みの影響もあり、やや低調に推移しました。印刷情報関連では、第2四半期まで続いた印刷用紙の供給不足による影響は解消されたものの、デジタル化の進展に伴う需要減の影響などにより、新聞インキ、オフセットインキともに低調に推移しました。以上のことから、印刷インキ全体では前期を下回りました。機材につきましては、印刷製版用材料、印刷製版関連機器ともに低調であったことから、前期を下回りました。これらの結果、売上高は518億7千6百万円(前期比5.6%減少)となりました。
利益面では、パッケージ関連を中心とした販売価格の改定及び全般的な経費削減が寄与したものの、印刷情報関連の印刷インキが低調に推移したことに加え、原材料高の影響や貸倒費用が増加したことなどにより、営業利益は8億2千2百万円(前期比26.9%減少)となりました。
印刷インキ(アジア)
主力であるパッケージ関連のグラビアインキは、競争の激化や需要の伸び悩みに加え、中国における環境規制の強化に伴う一部原材料の供給不足が下半期に影響したものの、全体としては拡販が進みました。印刷情報関連では、競争が激化する中、オフセットインキ及び新聞インキが堅調に推移しました。売上高は、円高による為替換算の影響を受けたものの、販売数量の増加や販売価格の改定効果が寄与したことに加え、タイの子会社を連結の範囲に含めたことなどから、352億7千7百万円(前期比9.7%増加)となりました。
利益面では、貸倒費用が増加したものの、新規連結による増益に加え、販売価格の改定効果や原材料費の削減が寄与したことなどから、営業利益は24億2千万円(前期比58.2%増加)となりました。
印刷インキ(米州)
主力のパッケージ関連では、需要増加を背景として、顧客密着型の技術サービスの充実による高機能インキの拡販が奏功し、フレキソインキ及びグラビアインキが好調を維持し、メタルインキも堅調に推移しました。印刷情報関連であるオフセットインキは、UVインキなど堅調に推移したものの、市場縮小の影響を受けて、全体としては前期を下回りました。売上高は、販売数量が順調に増加したことに加え、ブラジルの子会社を連結の範囲に含めたことなどから、487億7千1百万円(前期比8.5%増加)となりました。
利益面では、販売数量の増加や販売価格の改定効果が寄与したことなどから、営業利益は19億4千5百万円(前期比96.0%増加)となりました。
印刷インキ(欧州)
販売体制の強化により、パッケージ関連の拡販が順調に進み、売上高は円高による為替換算の影響を大きく受けたものの、97億9千万円(前期比5.0%増加)となりました。
利益面では、一部の原材料価格の高騰が影響したことに加え、販売数量の増加に対する生産体制の強化に時間を要しており、人件費及び外注費が嵩み、運賃などの販売コストや買収関連の一時費用も膨らんだことなどから、9億8千5百万円の営業損失(前期は7億9千1百万円の営業損失)となりました。
機能性材料
インクジェットインキは販売が堅調に推移し、前期を上回りましたが、カラーフィルター用顔料分散液は競争激化やパネル市況悪化の影響などにより前期を下回りました。トナーは、販売が比較的好調に推移し、前期を上回りました。これらの結果、売上高は124億5千2百万円(前期比2.2%増加)となりました。
利益面では、原材料高が影響したことや、競争激化により利益率が低下したことなどから、営業利益は9億2千6百万円(前期比24.3%減少)となりました。
生産、受注及び販売の実績は、次の通りであります。
①生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次の通りであります。
セグメントの名称金額(百万円)前期比(%)
印刷インキ・機材(日本)35,072△0.8
印刷インキ(アジア)34,77513.0
印刷インキ(米州)46,8254.4
印刷インキ(欧州)9,5468.4
機能性材料12,0538.3
その他7930.6
合計139,0665.6

(注) 1.生産金額については期中平均販売価格により表示しており、セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.上記の金額に消費税等は含まれておりません。
②受注実績
印刷用インキの生産は主として見込生産によっております。
小口ロットのものについて受注生産を行っているものもありますが、特に受注高及び受注残高として示すほどのものはありません。
③販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次の通りであります。
セグメントの名称金額(百万円)前期比(%)
印刷インキ・機材(日本)51,857△5.6
印刷インキ(アジア)35,20410.0
印刷インキ(米州)47,5959.6
印刷インキ(欧州)9,4812.6
機能性材料12,3592.1
その他10,7404.0
合計167,2373.2

(注) 1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.総販売実績に対し10%以上に該当する販売先はありません。
3.上記の金額に消費税等は含まれておりません。
(2) 財政状態
当連結会計年度末の総資産は、円高による為替換算の影響を受けたものの、主に新規連結による影響により、現金及び預金、たな卸資産、有形固定資産及びのれんが増加し、投資有価証券、長期貸付金が減少したことなどから、前連結会計年度末比27億9千6百万円(1.9%)増加の1,482億9千2百万円となりました。
負債は、主に新規連結による影響により長期未払金が増加したものの、仕入債務や借入金が減少し、円高による為替換算の影響も受けたことなどから、前連結会計年度末比12億4千5百万円(1.8%)減少の668億5千2百万円となりました。
純資産は、利益剰余金の増加に加え、主に新規連結による影響により非支配株主持分が増加したことなどから、前連結会計年度末比40億4千1百万円(5.2%)増加の814億3千9百万円となりました。
なお、「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正」(企業会計基準第28号 2018年2月16日)等を当連結会計年度の期首から適用しており、当該会計基準等を遡って適用した後の数値で前連結会計年度との比較・分析を行っております。
(3) キャッシュ・フロー
当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況は、次の通りであります。
営業活動によるキャッシュ・フローは、たな卸資産の増加や仕入債務の減少、法人税等の支払があったものの、税金等調整前当期純利益、減価償却費、売上債権の減少などにより、98億1千9百万円の資金の増加となり、前連結会計年度に比べ45億7千9百万円の増加となりました。主な要因は、営業利益の増加及び運転資本の減少による資金収支の改善、法人税等の支払額の減少であります。
投資活動によるキャッシュ・フローは、日本、北米などにおける有形固定資産の取得などにより、51億6百万円の資金の減少となり、前連結会計年度に比べ21億7千2百万円の増加となりました。主な要因は、有形固定資産の取得による支出の減少、投資有価証券の売却による収入の増加及び貸付による支出の減少であります。
財務活動によるキャッシュ・フローは、借入金が減少したことや、配当金の支払などにより、38億2千1百万円の資金の減少となり、前連結会計年度に比べ36億9千8百万円の減少となりました。主な要因は、借入金の純増減額の減少であります。
以上の結果、当連結会計年度における現金及び現金同等物の期末残高は93億6千1百万円となり、新規連結による現金及び現金同等物の増加もあったことから、前連結会計年度末に比べ25億7千3百万円の増加となりました。
キャッシュ・フロー関連指標の推移は、次の通りであります。
2015年
12月期
2016年
12月期
2017年
12月期
2018年
12月期
2019年
12月期
自己資本比率(%)49.151.752.051.151.7
時価ベースの
自己資本比率(%)
56.863.472.348.746.8
キャッシュ・フロー対
有利子負債比率(年)
1.81.51.83.61.8
インタレスト・カバレッジ・
レシオ(倍)
34.644.936.919.932.2

(注) 自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い
1. 各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により算出しております。
2. 株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)より算出しております。
3. 営業キャッシュ・フローは連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。有利子負債は連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としております。また、利払いについては連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。
4. 「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正」(企業会計基準第28号 2018年2月16日)等を当連結会計年度の期首から適用しており、前連結会計年度に係るキャッシュ・フロー関連指標については、当該会計基準等を遡って適用した後の指標等となっております。
資本の財源及び資金の流動性は、次の通りであります。
当社グループでは運転資金や設備投資等のための資金の調達として、内部資金及び外部借入による資金調達を基本方針としております。外部借入のうち、短期借入は主に営業取引に係る資金調達であり、長期借入は主に設備投資に係る資金調達であります。
内部資金に関しては営業活動によるキャッシュ・フローにより継続的に資金を獲得しており、また外部借入に関しては短期・長期借入の他に、当社においては運転資金の効率的な調達を行うため、取引銀行2行と30億円の特定融資枠契約を締結しております。
重要な資本的支出の予定につきましては、「第一部[企業情報] 第3[設備の状況] 3[設備の新設、除去等の計画] (1)重要な設備の新設等」をご参照下さい。
(4) 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたり、資産・負債及び収益・費用の報告数値及び開示に影響を与える見積りや判断を行う必要があります。これらの見積り及び判断を過去の実績や状況に応じ合理的に行っておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針につきましては、「第一部[企業情報] 第5[経理の状況] 1[連結財務諸表等] 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」をご参照下さい。
(5) 経営成績に重要な影響を与える要因
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第一部[企業情報] 第2[事業の状況] 2[事業等のリスク]」をご参照下さい。
(6) 目標とする経営指標との比較
当連結会計年度と「中期経営計画2020」の最終期との比較は、次の通りであります。
当連結会計年度2020年計画比較
売上高(億円)1,6721,950△277
営業利益(億円)62130△67
経常利益(億円)73150△76
親会社株主に帰属する
当期純利益(億円)
4198△56
ROE5.5%10%以上-

「中期経営計画2020(以下「計画」という。)」の2年目である当連結会計年度につきましては、売上高は全体として増加したものの、日本の印刷情報関連が低調に推移したことや、アジアにおいて競争の激化や需要の伸び悩みなどの影響を受けたことなどから、計画を下回るペースの水準となりました。各利益及びROEにつきましては、中国における環境規制の強化などに伴い、当社グループの原材料を取り巻く環境が一変したことなどから、計画を大幅に下回るペースの水準となりました。
計画につきましては、外部環境の激変により、利益の達成が困難な状況であるものの、その基本方針と戦略課題は変わらず、それらの着実な実行に加え、グローバル調達などのコスト削減や生産体制の強化、販売価格の改定などにも取り組み、利益目標に可能な限り近づけるべく鋭意努めてまいります。