有価証券報告書-第143期(令和2年1月1日-令和2年12月31日)
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要ならびに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次の通りであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1)経営成績
当連結会計年度の世界経済は、新型コロナウイルス感染症の大流行の影響による社会・経済活動の抑制により厳しい状況が続きました。先行きにつきましては、社会・経済活動の段階的な再開やさらなる経済対策の効果により、一部で持ち直しの動きがみられるものの、新型コロナウイルス感染症の収束にはなお時間がかかることが想定され、予断を許さない状況が続くと見込まれます。
このような状況の中で、当社グループはコア事業である印刷インキ事業において、各拠点での拡販に注力するとともに、環境に配慮した安全・省エネ志向製品や顧客ニーズに応じた地域密着型製品の開発、TPM活動の深化による生産性向上などに取り組みました。また、印刷インキの一部の原材料につきましては、感染症の影響や中国における環境規制の強化により、供給不足や価格の高騰が生じたことから、サプライチェーンの安定化やコスト削減の推進に取り組みました。一方、機能性材料事業では、インクジェットインキをはじめとして、トナー、カラーフィルター用顔料分散液などの開発・拡販に取り組みました。
売上高は、パッケージ関連の印刷インキは欧米で順調に拡販が進んだものの、新型コロナウイルス感染症の影響を受けて、印刷情報関連の印刷インキや機能性材料のデジタル印刷材料が低調であったことなどから、1,615億7百万円(前期比3.4%減少)となりました。
利益面では、印刷インキ事業において、パッケージ関連の販売数量の増加に加え、コスト削減が寄与したことなどから、営業利益は72億1千2百万円(前期比15.9%増加)となりました。経常利益は、持分法による投資利益が減少したことなどから、77億8千9百万円(前期比6.4%増加)となり、親会社株主に帰属する当期純利益は法人税等調整額が減少したため52億7千5百万円(前期比28.2%増加)となりました。
(参考)USドルの期中平均為替レート
(注)連結会計年度の期中平均為替レートは、1月~12月の単純平均レートを記載しております。
セグメントの経営成績は、次の通りであります。
(※)実質増減率:海外連結子会社の為替換算の影響を除いた増減率
印刷インキ・機材(日本)
パッケージ関連では、食品廃棄量削減に向けた取り組みが続く中、上半期は感染症の影響による巣ごもり特需があったものの、下半期は外出自粛によるレジャー消費の停滞等もあり、グラビアインキは前期を僅かに下回り、フレキソインキは紙袋や工業製品用途の需要が減少した影響もあり前期を下回りました。印刷情報関連では、デジタル化の影響に加え、感染症の影響により広告需要が一段と減少したことなどから、新聞インキ、オフセットインキともに落ち込みました。以上のことから、印刷インキ全体では前期を下回りました。機材につきましては、印刷製版用材料が低調であったことから、前期を下回りました。これらの結果、売上高は480億7千1百万円(前期比7.3%減少)となりました。
利益面では、印刷情報関連の印刷インキ及び機材販売が低調であったものの、パッケージ関連の印刷インキは比較的堅調に推移したことに加え、全般的なコスト削減及び貸倒費用の減少が寄与したことなどから、営業利益は9億8千3百万円(前期比19.6%増加)となりました。
印刷インキ(アジア)
主力であるパッケージ関連のグラビアインキは、感染症の影響による需要の増加などにより、インドネシア及びベトナムは比較的堅調に推移し、上半期に事業活動に大きな制約を受けたインド、中国においても、下半期は回復傾向となりました。感染症の影響を強く受けた印刷情報関連では、中国では下半期は需要が回復したものの、インドでは需要の回復が鈍く、通期では新聞インキ、オフセットインキともに、販売が落ち込みました。売上高は、販売数量の減少に加え、円高による為替換算の影響を受けたことなどから、325億9千7百万円(前期比7.6%減少)となりました。
利益面では、販売数量が減少したものの、コスト削減及び貸倒費用の減少が寄与したことなどから、営業利益は24億5千1百万円(前期比1.3%増加)となりました。
印刷インキ(米州)
主力のパッケージ関連では、需要増加を背景として、顧客密着型の技術サービスの充実による高機能インキの拡販が奏功し、フレキソインキ及びグラビアインキが好調に推移しました。メタルインキはアルミ缶に対する需要の高まりもあり堅調に推移しました。印刷情報関連であるオフセットインキは、UVインキなどが堅調に推移したものの、デジタル化の影響に加え、感染症の影響により広告需要が一段と減少したことから、全体としては前期を下回りました。売上高は、円高による為替換算の影響を受けたものの、感染症の影響によるパッケージ需要の増加も影響し、販売数量が増加したことなどから、495億1千万円(前期比1.5%増加)となりました。
利益面では、パッケージ関連での販売数量の大幅な増加に加え、全般的なコスト削減が寄与したことなどから、営業利益は29億5千3百万円(前期比51.8%増加)となりました。
印刷インキ(欧州)
販売体制の強化により拡販が奏功したことに加え、感染症の影響によるパッケージ需要の増加も影響し、全体としては販売数量が増加しました。売上高は、販売数量の増加により101億6千4百万円(前期比3.8%増加)となりました。
利益面では、感染症の影響により一部原材料の高騰があったものの、販売数量の増加に加え、組織再編や生産体制の強化によるコスト削減が寄与したことなどから赤字幅が減少し、4億3千2百万円の営業損失(前期は9億8千5百万円の営業損失)となりました。
機能性材料
インクジェットインキは、第4四半期には販売が回復傾向に転じたものの、通期では感染症の影響により広告需要が大きく減少したことなどから、前期を下回りました。カラーフィルター用顔料分散液は、パネルディスプレイ市場における市況の改善が続いたこともあり、前期を上回りました。トナーは、感染症の影響によりオフィス用途の需要が低迷したことなどから、前期を下回りました。これらの結果、売上高は118億4千4百万円(前期比4.9%減少)となりました。
利益面では、デジタル印刷材料の販売が低調であったことに加え、在庫評価減によるコスト増加や競争の激化により利益率が低下したことなどから、営業利益は4億8千1百万円(前期比48.0%減少)となりました。
生産、受注及び販売の実績は、次の通りであります。
① 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次の通りであります。
(注)1.生産金額については期中平均販売価格により表示しており、セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.上記の金額に消費税等は含まれておりません。
② 受注実績
印刷用インキの生産は主として見込生産によっております。
小口ロットのものについて受注生産を行っているものもありますが、特に受注高及び受注残高として示すほどのものはありません。
③ 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次の通りであります。
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.総販売実績に対し10%以上に該当する販売先はありません。
3.上記の金額に消費税等は含まれておりません。
(2)財政状態
当連結会計年度末の総資産は、現金及び預金、たな卸資産が増加したことに加え、関係会社株式が増加したものの、売上債権が減少したことに加え、時価評価による投資有価証券の減少や円高による為替換算の影響を受けたことなどから、前連結会計年度末比30億1千9百万円(2.0%)減少の1,452億7千2百万円となりました。
負債は、借入金が増加したものの、仕入債務や繰延税金負債の減少に加え、円高による為替換算の影響を受けたことなどにより、前連結会計年度末比30億1百万円(4.5%)減少の638億5千万円となりました。
純資産は、利益剰余金は増加したものの、その他の包括利益累計額が減少したことなどから、前連結会計年度末比1千8百万円(0.0%)減少の814億2千1百万円となりました。
(3)キャッシュ・フロー
当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況は、次の通りであります。
営業活動によるキャッシュ・フローは、仕入債務の減少、法人税等の支払があったものの、税金等調整前当期純利益、減価償却費、売上債権の減少などにより、105億9千9百万円の資金の増加となり、前連結会計年度に比べ7億7千9百万円の増加となりました。主な要因は、税金等調整前当期純利益の増加、法人税等の支払額の増加、人件費等の未払額の増加であります。
投資活動によるキャッシュ・フローは、日本、北米などにおける有形固定資産の取得、欧州における関係会社株式の取得などにより、70億1千万円の資金の減少となり、前連結会計年度に比べ19億3百万円の減少となりました。主な要因は、有形固定資産の取得による支出の減少、投資有価証券の取得による支出の増加であります。
財務活動によるキャッシュ・フローは、借入金が増加したものの、配当金の支払などにより、9億8千万円の資金の減少となり、前連結会計年度に比べ28億4千1百万円の増加となりました。主な要因は、借入金の純増減額の増加であります。
以上の結果、当連結会計年度における現金及び現金同等物の期末残高は116億7千8百万円となり、前連結会計年度末に比べ23億1千7百万円の増加となりました。
キャッシュ・フロー関連指標の推移は、次の通りであります。
(注)自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い
1.各指標は、いずれも連結ベースの財務数値より算出しております。
2.株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しております。
3.営業キャッシュ・フローは連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。有利子負債は連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としております。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。
4.「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正」(企業会計基準第28号 2018年2月16日)等を2019年12月期の期首から適用しており、2018年12月期に係るキャッシュ・フロー関連指標については、当該会計基準等を遡って適用した後の指標等となっております。
資本の財源及び資金の流動性は、次の通りであります。
当社グループでは運転資金や設備投資等のための資金の調達として、内部資金及び外部借入による資金調達を基本方針としております。外部借入のうち、短期借入は主に営業取引に係る資金調達であり、長期借入は主に設備投資に係る資金調達であります。
内部資金に関しては営業活動によるキャッシュ・フローにより継続的に資金を獲得しております。また、外部借入に関しては短期・長期借入の他に、当社においては運転資金の効率的な調達や新型コロナウイルス感染症拡大に伴う資金ショートリスクに備えるため、取引銀行3行と60億円の特定融資枠契約を締結しております。
重要な資本的支出の予定につきましては、「第3[設備の状況] 3[設備の新設、除却等の計画] (1)重要な設備の新設等」をご参照下さい。
(4)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。連結財務諸表の作成にあたり、当社グループが採用している重要な会計方針は、「第5[経理の状況] 1[連結財務諸表等] (1)[連結財務諸表] 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載している通りであります。連結財務諸表の作成には、資産・負債及び収益・費用の額に影響を与える見積り及び仮定を必要とします。これらの見積り及び仮定は、過去の実績や当連結会計年度末時点で入手可能な情報を総合的に勘案し合理的に判断しておりますが、見積り特有の不確実性が存在するため、実際の結果は異なることがあります。
当社が連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、特に重要なものは以下の通りであると考えております。
なお、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う会計上の見積りについては、「第5[経理の状況] 1[連結財務諸表等] (1)[連結財務諸表] 追加情報」に記載しております。
(固定資産(のれんを含む)の減損)
当社グループは、固定資産(のれんを含む)のうち減損の兆候がある資産又は資産グループについて、収益性の低下により投資額の回収が見込めなくなった場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定にあたっては慎重に検討しておりますが、事業計画や市場環境の変化により、その見積り額の前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、減損処理が必要となる可能性があります。
(投資有価証券の減損)
当社グループは、その他有価証券のうち時価のある株式については、期末における時価が取得原価に比べ50%以上下落した場合は減損処理を実施し、30%以上50%程度下落した場合には、時価の回復可能性を考慮して、減損処理を実施しております。また、時価を把握することが極めて困難と認められる株式等の減損処理にあたっては、財政状態の悪化により実質価額が著しく低下した場合は、回復可能性を考慮して減損処理を実施しております。将来の市場悪化又は投資先の業績不振等、現在の見積り及び仮定に反映されていない事象が発生した場合、投資有価証券評価損が発生する可能性があります。
(繰延税金資産の回収可能性)
当社グループは、繰延税金資産について、将来の利益計画に基づき課税所得や将来加算一時差異等が十分に確保できることにより、回収可能性があると判断した将来減算一時差異について繰延税金資産を計上しております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、繰延税金資産及び法人税等調整額の金額に影響を与える可能性があります。
(貸倒引当金)
当社グループは、売掛債権等の貸倒損失に備えて回収不能となる見積り額を貸倒引当金として計上しております。将来、顧客等の財政状態及び経営成績が悪化し、支払能力が低下した場合には、引当金の追加計上又は引当金を上回る貸倒損失が発生する可能性があります。
(5)経営成績に重要な影響を与える要因
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2[事業の状況] 2[事業等のリスク]」をご参照下さい。
(6)目標とする経営指標との比較
当連結会計年度と「中期経営計画2020」の最終期との比較は、次の通りであります。
「中期経営計画2020(以下「計画」という。)」の最終年度である当連結会計年度につきましては、売上高は、デジタル化の進展に伴い印刷情報関連の印刷インキの需要が減少したことや、アジアにおいて競争の激化や需要の伸び悩みなどの影響を受けたことに加え、円高による為替換算の影響を受けました。さらに、新型コロナウイルス感染症の影響により、印刷情報関連の印刷インキや機能性材料のデジタル印刷材料が低調であったことや、パッケージ関連の印刷インキにおいても米州を除いて伸び悩んだこともあり、計画を大幅に下回りました。各利益及びROEにつきましては、売上が計画を下回ったことに加え、中国での環境規制強化による世界的な原材料価格の高騰の影響を受けたことなどから計画を大幅に下回りました。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1)経営成績
当連結会計年度の世界経済は、新型コロナウイルス感染症の大流行の影響による社会・経済活動の抑制により厳しい状況が続きました。先行きにつきましては、社会・経済活動の段階的な再開やさらなる経済対策の効果により、一部で持ち直しの動きがみられるものの、新型コロナウイルス感染症の収束にはなお時間がかかることが想定され、予断を許さない状況が続くと見込まれます。
このような状況の中で、当社グループはコア事業である印刷インキ事業において、各拠点での拡販に注力するとともに、環境に配慮した安全・省エネ志向製品や顧客ニーズに応じた地域密着型製品の開発、TPM活動の深化による生産性向上などに取り組みました。また、印刷インキの一部の原材料につきましては、感染症の影響や中国における環境規制の強化により、供給不足や価格の高騰が生じたことから、サプライチェーンの安定化やコスト削減の推進に取り組みました。一方、機能性材料事業では、インクジェットインキをはじめとして、トナー、カラーフィルター用顔料分散液などの開発・拡販に取り組みました。
売上高は、パッケージ関連の印刷インキは欧米で順調に拡販が進んだものの、新型コロナウイルス感染症の影響を受けて、印刷情報関連の印刷インキや機能性材料のデジタル印刷材料が低調であったことなどから、1,615億7百万円(前期比3.4%減少)となりました。
利益面では、印刷インキ事業において、パッケージ関連の販売数量の増加に加え、コスト削減が寄与したことなどから、営業利益は72億1千2百万円(前期比15.9%増加)となりました。経常利益は、持分法による投資利益が減少したことなどから、77億8千9百万円(前期比6.4%増加)となり、親会社株主に帰属する当期純利益は法人税等調整額が減少したため52億7千5百万円(前期比28.2%増加)となりました。
(参考)USドルの期中平均為替レート
第1四半期 連結会計期間 | 第2四半期 連結会計期間 | 第3四半期 連結会計期間 | 第4四半期 連結会計期間 | 連結会計年度 | |
2020年12月期 | 108.92円 | 107.62円 | 106.22円 | 104.51円 | 106.82円 |
2019年12月期 | 110.20円 | 109.90円 | 107.35円 | 108.76円 | 109.05円 |
(注)連結会計年度の期中平均為替レートは、1月~12月の単純平均レートを記載しております。
セグメントの経営成績は、次の通りであります。
(単位:百万円) |
売上高 | 営業利益又は営業損失(△) | ||||||||
前期 | 当期 | 増減額 | 増減率 | (※)実質 | 前期 | 当期 | 増減額 | 増減率 | |
印刷インキ・ 機材(日本) | 51,876 | 48,071 | △3,805 | △7.3% | △7.3% | 822 | 983 | 161 | 19.6% |
印刷インキ (アジア) | 35,277 | 32,597 | △2,679 | △7.6% | △4.5% | 2,420 | 2,451 | 31 | 1.3% |
印刷インキ (米州) | 48,771 | 49,510 | 739 | 1.5% | 5.6% | 1,945 | 2,953 | 1,007 | 51.8% |
印刷インキ (欧州) | 9,790 | 10,164 | 373 | 3.8% | 4.4% | △985 | △432 | 552 | - |
機能性材料 | 12,452 | 11,844 | △608 | △4.9% | △4.2% | 926 | 481 | △444 | △48.0% |
報告セグメント計 | 158,168 | 152,187 | △5,980 | △3.8% | △1.7% | 5,129 | 6,437 | 1,308 | 25.5% |
その他 | 16,837 | 16,984 | 146 | 0.9% | 0.9% | 369 | 156 | △213 | △57.7% |
調整額 | △7,767 | △7,664 | 103 | - | - | 727 | 618 | △108 | - |
合計 | 167,237 | 161,507 | △5,730 | △3.4% | △1.5% | 6,225 | 7,212 | 987 | 15.9% |
(※)実質増減率:海外連結子会社の為替換算の影響を除いた増減率
印刷インキ・機材(日本)
パッケージ関連では、食品廃棄量削減に向けた取り組みが続く中、上半期は感染症の影響による巣ごもり特需があったものの、下半期は外出自粛によるレジャー消費の停滞等もあり、グラビアインキは前期を僅かに下回り、フレキソインキは紙袋や工業製品用途の需要が減少した影響もあり前期を下回りました。印刷情報関連では、デジタル化の影響に加え、感染症の影響により広告需要が一段と減少したことなどから、新聞インキ、オフセットインキともに落ち込みました。以上のことから、印刷インキ全体では前期を下回りました。機材につきましては、印刷製版用材料が低調であったことから、前期を下回りました。これらの結果、売上高は480億7千1百万円(前期比7.3%減少)となりました。
利益面では、印刷情報関連の印刷インキ及び機材販売が低調であったものの、パッケージ関連の印刷インキは比較的堅調に推移したことに加え、全般的なコスト削減及び貸倒費用の減少が寄与したことなどから、営業利益は9億8千3百万円(前期比19.6%増加)となりました。
印刷インキ(アジア)
主力であるパッケージ関連のグラビアインキは、感染症の影響による需要の増加などにより、インドネシア及びベトナムは比較的堅調に推移し、上半期に事業活動に大きな制約を受けたインド、中国においても、下半期は回復傾向となりました。感染症の影響を強く受けた印刷情報関連では、中国では下半期は需要が回復したものの、インドでは需要の回復が鈍く、通期では新聞インキ、オフセットインキともに、販売が落ち込みました。売上高は、販売数量の減少に加え、円高による為替換算の影響を受けたことなどから、325億9千7百万円(前期比7.6%減少)となりました。
利益面では、販売数量が減少したものの、コスト削減及び貸倒費用の減少が寄与したことなどから、営業利益は24億5千1百万円(前期比1.3%増加)となりました。
印刷インキ(米州)
主力のパッケージ関連では、需要増加を背景として、顧客密着型の技術サービスの充実による高機能インキの拡販が奏功し、フレキソインキ及びグラビアインキが好調に推移しました。メタルインキはアルミ缶に対する需要の高まりもあり堅調に推移しました。印刷情報関連であるオフセットインキは、UVインキなどが堅調に推移したものの、デジタル化の影響に加え、感染症の影響により広告需要が一段と減少したことから、全体としては前期を下回りました。売上高は、円高による為替換算の影響を受けたものの、感染症の影響によるパッケージ需要の増加も影響し、販売数量が増加したことなどから、495億1千万円(前期比1.5%増加)となりました。
利益面では、パッケージ関連での販売数量の大幅な増加に加え、全般的なコスト削減が寄与したことなどから、営業利益は29億5千3百万円(前期比51.8%増加)となりました。
印刷インキ(欧州)
販売体制の強化により拡販が奏功したことに加え、感染症の影響によるパッケージ需要の増加も影響し、全体としては販売数量が増加しました。売上高は、販売数量の増加により101億6千4百万円(前期比3.8%増加)となりました。
利益面では、感染症の影響により一部原材料の高騰があったものの、販売数量の増加に加え、組織再編や生産体制の強化によるコスト削減が寄与したことなどから赤字幅が減少し、4億3千2百万円の営業損失(前期は9億8千5百万円の営業損失)となりました。
機能性材料
インクジェットインキは、第4四半期には販売が回復傾向に転じたものの、通期では感染症の影響により広告需要が大きく減少したことなどから、前期を下回りました。カラーフィルター用顔料分散液は、パネルディスプレイ市場における市況の改善が続いたこともあり、前期を上回りました。トナーは、感染症の影響によりオフィス用途の需要が低迷したことなどから、前期を下回りました。これらの結果、売上高は118億4千4百万円(前期比4.9%減少)となりました。
利益面では、デジタル印刷材料の販売が低調であったことに加え、在庫評価減によるコスト増加や競争の激化により利益率が低下したことなどから、営業利益は4億8千1百万円(前期比48.0%減少)となりました。
生産、受注及び販売の実績は、次の通りであります。
① 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次の通りであります。
セグメントの名称 | 金額(百万円) | 前期比(%) |
印刷インキ・機材(日本) | 31,555 | △10.0 |
印刷インキ(アジア) | 32,786 | △5.7 |
印刷インキ(米州) | 50,689 | 8.3 |
印刷インキ(欧州) | 9,580 | 0.4 |
機能性材料 | 10,391 | △13.8 |
その他 | 540 | △31.9 |
合計 | 135,544 | △2.5 |
(注)1.生産金額については期中平均販売価格により表示しており、セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.上記の金額に消費税等は含まれておりません。
② 受注実績
印刷用インキの生産は主として見込生産によっております。
小口ロットのものについて受注生産を行っているものもありますが、特に受注高及び受注残高として示すほどのものはありません。
③ 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次の通りであります。
セグメントの名称 | 金額(百万円) | 前期比(%) |
印刷インキ・機材(日本) | 48,056 | △7.3 |
印刷インキ(アジア) | 32,489 | △7.7 |
印刷インキ(米州) | 48,770 | 2.5 |
印刷インキ(欧州) | 9,672 | 2.0 |
機能性材料 | 11,784 | △4.6 |
その他 | 10,734 | △0.1 |
合計 | 161,507 | △3.4 |
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.総販売実績に対し10%以上に該当する販売先はありません。
3.上記の金額に消費税等は含まれておりません。
(2)財政状態
当連結会計年度末の総資産は、現金及び預金、たな卸資産が増加したことに加え、関係会社株式が増加したものの、売上債権が減少したことに加え、時価評価による投資有価証券の減少や円高による為替換算の影響を受けたことなどから、前連結会計年度末比30億1千9百万円(2.0%)減少の1,452億7千2百万円となりました。
負債は、借入金が増加したものの、仕入債務や繰延税金負債の減少に加え、円高による為替換算の影響を受けたことなどにより、前連結会計年度末比30億1百万円(4.5%)減少の638億5千万円となりました。
純資産は、利益剰余金は増加したものの、その他の包括利益累計額が減少したことなどから、前連結会計年度末比1千8百万円(0.0%)減少の814億2千1百万円となりました。
(3)キャッシュ・フロー
当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況は、次の通りであります。
営業活動によるキャッシュ・フローは、仕入債務の減少、法人税等の支払があったものの、税金等調整前当期純利益、減価償却費、売上債権の減少などにより、105億9千9百万円の資金の増加となり、前連結会計年度に比べ7億7千9百万円の増加となりました。主な要因は、税金等調整前当期純利益の増加、法人税等の支払額の増加、人件費等の未払額の増加であります。
投資活動によるキャッシュ・フローは、日本、北米などにおける有形固定資産の取得、欧州における関係会社株式の取得などにより、70億1千万円の資金の減少となり、前連結会計年度に比べ19億3百万円の減少となりました。主な要因は、有形固定資産の取得による支出の減少、投資有価証券の取得による支出の増加であります。
財務活動によるキャッシュ・フローは、借入金が増加したものの、配当金の支払などにより、9億8千万円の資金の減少となり、前連結会計年度に比べ28億4千1百万円の増加となりました。主な要因は、借入金の純増減額の増加であります。
以上の結果、当連結会計年度における現金及び現金同等物の期末残高は116億7千8百万円となり、前連結会計年度末に比べ23億1千7百万円の増加となりました。
キャッシュ・フロー関連指標の推移は、次の通りであります。
2016年 12月期 | 2017年 12月期 | 2018年 12月期 | 2019年 12月期 | 2020年 12月期 | |
自己資本比率(%) | 51.7 | 52.0 | 51.1 | 51.7 | 52.6 |
時価ベースの 自己資本比率(%) | 63.4 | 72.3 | 48.7 | 46.8 | 46.6 |
キャッシュ・フロー対 有利子負債比率(年) | 1.5 | 1.8 | 3.6 | 1.8 | 1.7 |
インタレスト・カバレッジ・ レシオ(倍) | 44.9 | 36.9 | 19.9 | 32.2 | 40.1 |
(注)自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い
1.各指標は、いずれも連結ベースの財務数値より算出しております。
2.株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しております。
3.営業キャッシュ・フローは連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。有利子負債は連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としております。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。
4.「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正」(企業会計基準第28号 2018年2月16日)等を2019年12月期の期首から適用しており、2018年12月期に係るキャッシュ・フロー関連指標については、当該会計基準等を遡って適用した後の指標等となっております。
資本の財源及び資金の流動性は、次の通りであります。
当社グループでは運転資金や設備投資等のための資金の調達として、内部資金及び外部借入による資金調達を基本方針としております。外部借入のうち、短期借入は主に営業取引に係る資金調達であり、長期借入は主に設備投資に係る資金調達であります。
内部資金に関しては営業活動によるキャッシュ・フローにより継続的に資金を獲得しております。また、外部借入に関しては短期・長期借入の他に、当社においては運転資金の効率的な調達や新型コロナウイルス感染症拡大に伴う資金ショートリスクに備えるため、取引銀行3行と60億円の特定融資枠契約を締結しております。
重要な資本的支出の予定につきましては、「第3[設備の状況] 3[設備の新設、除却等の計画] (1)重要な設備の新設等」をご参照下さい。
(4)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。連結財務諸表の作成にあたり、当社グループが採用している重要な会計方針は、「第5[経理の状況] 1[連結財務諸表等] (1)[連結財務諸表] 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載している通りであります。連結財務諸表の作成には、資産・負債及び収益・費用の額に影響を与える見積り及び仮定を必要とします。これらの見積り及び仮定は、過去の実績や当連結会計年度末時点で入手可能な情報を総合的に勘案し合理的に判断しておりますが、見積り特有の不確実性が存在するため、実際の結果は異なることがあります。
当社が連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、特に重要なものは以下の通りであると考えております。
なお、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う会計上の見積りについては、「第5[経理の状況] 1[連結財務諸表等] (1)[連結財務諸表] 追加情報」に記載しております。
(固定資産(のれんを含む)の減損)
当社グループは、固定資産(のれんを含む)のうち減損の兆候がある資産又は資産グループについて、収益性の低下により投資額の回収が見込めなくなった場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定にあたっては慎重に検討しておりますが、事業計画や市場環境の変化により、その見積り額の前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、減損処理が必要となる可能性があります。
(投資有価証券の減損)
当社グループは、その他有価証券のうち時価のある株式については、期末における時価が取得原価に比べ50%以上下落した場合は減損処理を実施し、30%以上50%程度下落した場合には、時価の回復可能性を考慮して、減損処理を実施しております。また、時価を把握することが極めて困難と認められる株式等の減損処理にあたっては、財政状態の悪化により実質価額が著しく低下した場合は、回復可能性を考慮して減損処理を実施しております。将来の市場悪化又は投資先の業績不振等、現在の見積り及び仮定に反映されていない事象が発生した場合、投資有価証券評価損が発生する可能性があります。
(繰延税金資産の回収可能性)
当社グループは、繰延税金資産について、将来の利益計画に基づき課税所得や将来加算一時差異等が十分に確保できることにより、回収可能性があると判断した将来減算一時差異について繰延税金資産を計上しております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、繰延税金資産及び法人税等調整額の金額に影響を与える可能性があります。
(貸倒引当金)
当社グループは、売掛債権等の貸倒損失に備えて回収不能となる見積り額を貸倒引当金として計上しております。将来、顧客等の財政状態及び経営成績が悪化し、支払能力が低下した場合には、引当金の追加計上又は引当金を上回る貸倒損失が発生する可能性があります。
(5)経営成績に重要な影響を与える要因
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2[事業の状況] 2[事業等のリスク]」をご参照下さい。
(6)目標とする経営指標との比較
当連結会計年度と「中期経営計画2020」の最終期との比較は、次の通りであります。
当連結会計年度 | 2020年計画 | 比較 | |
売上高(億円) | 1,615 | 1,950 | △334 |
営業利益(億円) | 72 | 130 | △57 |
経常利益(億円) | 77 | 150 | △72 |
親会社株主に帰属する 当期純利益(億円) | 52 | 98 | △45 |
ROE | 6.9% | 10%以上 | - |
「中期経営計画2020(以下「計画」という。)」の最終年度である当連結会計年度につきましては、売上高は、デジタル化の進展に伴い印刷情報関連の印刷インキの需要が減少したことや、アジアにおいて競争の激化や需要の伸び悩みなどの影響を受けたことに加え、円高による為替換算の影響を受けました。さらに、新型コロナウイルス感染症の影響により、印刷情報関連の印刷インキや機能性材料のデジタル印刷材料が低調であったことや、パッケージ関連の印刷インキにおいても米州を除いて伸び悩んだこともあり、計画を大幅に下回りました。各利益及びROEにつきましては、売上が計画を下回ったことに加え、中国での環境規制強化による世界的な原材料価格の高騰の影響を受けたことなどから計画を大幅に下回りました。