有価証券報告書-第147期(2024/01/01-2024/12/31)
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次の通りであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1)経営成績
当連結会計年度の世界経済は、地政学リスクが懸念される状況が続いたものの、各国の金利政策の効果もありインフレは鈍化傾向となり、個人消費の持ち直しの動きもあり全体として底堅い成長が続きました。
米国では個人消費や設備投資が堅調に推移するとともにインフレの動きも鈍化するなか、政策金利の引き下げが行われ、景気は底堅く推移しました。欧州では所得環境の改善による個人消費の回復により景気の持ち直しの動きがみられました。アジアでは景気回復の動きが続き、中国では不動産市場の停滞などにより景気は弱い動きが続いているものの、政府の景気対策の効果により年後半には一部で持ち直しの動きが見られました。日本では物価の上昇は続いているものの、所得環境の改善により個人消費が緩やかに増加するなど景気は緩やかながらも回復基調となりました。
このような状況のなかで、当社グループは2030年を見据えた長期ビジョン『SAKATA INX VISION 2030』を実現させるため、その事業拡大・収益力強化フェーズである『中期経営計画2026 (CCC-Ⅱ)』の初年度として、パッケージ分野を中心にボタニカルインキシリーズなど環境配慮型製品を軸としたサステナブルな製品の積極展開をグループ全体で推進しました。また第4四半期には、米国において連結子会社を新設し、コーティング事業ならびに関連資産の買収を行うことにより事業の拡充を図りました。機能性材料事業では、従来製品の拡販に加え、インクジェットインキにおいては衣食住をターゲットとした新市場への拡大や、画像表示材料においても新分野への展開などに取り組みました。
売上高は、アジアや欧米などで販売が好調に推移したことや機能性材料の販売も好調であったことに加え、円安による為替換算の影響を受けたことなどから、2,455億7千万円(前期比7.5%増加)となりました。
利益面では、第4四半期に米国での買収に関連する一時費用を計上した影響があったものの、海外における販売数量の増加による増収効果に加え、原材料価格が安定的に推移するなかでインキコストの削減により収益性が改善したことなどから、営業利益は131億6千1百万円(前期比15.0%増加)となりました。経常利益はブラジルレアルなどの為替変動の影響を大きく受けたことや持分法による投資利益が減少したことなどから128億9千3百万円(前期比5.4%減少)、親会社株主に帰属する当期純利益は中国における連結子会社の持分譲渡に伴い特別利益を計上したことなどから90億6百万円(前期比20.6%増加)となりました。
なお、2024年12月期より、連結損益計算書の「営業外収益 その他」に計上していた「受取ロイヤリティー」を「売上高」に含めて計上することに変更したため、「売上高」及び「営業利益」の前年同期比(%)は当該会計方針の変更を反映した遡及適用後の数値との比較となっております。(以下、各セグメントにおいても同様。)
(参考)USドルの期中平均為替レート
(注)連結会計年度の期中平均為替レートは、1月~12月の単純平均レートを記載しております。
セグメントの業績を示すと、次の通りであります。
(※)実質増減率:海外連結子会社の為替換算の影響を除いた増減率
印刷インキ・機材(日本)
外国人観光客の増加が続いているものの、コロナ禍以前のようなモノ消費への需要が高まらないことに加え、日用品、食品、飲料など多くのアイテムでの相次ぐ値上げにより家計の節約志向が続き個人消費の回復は緩やかなものとなりました。パッケージ関連ではグラビアインキは堅調であったものの、フレキソインキはやや低調に推移しました。印刷情報関連では、デジタル化の影響により市場の構造的な縮小が続いていることなどから、新聞インキ、オフセットインキともに低調に推移しました。このような状況のなか、販売はやや低調に推移しているものの、販売価格の改定効果が寄与したことにより、印刷インキ全体では前期を上回りました。機材につきましては、販売が低調に推移したことなどにより印刷製版用材料、機械販売ともに前期を大きく下回りました。これらの結果、売上高は528億6百万円(前期比0.3%減少)となりました。
利益面では、販売価格の改定効果が寄与したものの、円安の影響もあり原材料価格が高止まりするなか、人件費や新基幹システムの本格稼働に伴う諸経費が増加した影響などから、営業利益は9億2千7百万円(前期比34.1%減少)となりました。
印刷インキ(アジア)
主力であるパッケージ関連のグラビアインキは、インドネシア、インド、ベトナムなど各地で拡販が続き販売は好調に推移しました。印刷情報関連では、インドで販売が堅調に推移しました。売上高は、販売価格が下落したことや中国における連結子会社の持分譲渡に伴う連結除外の影響があるものの、販売が好調に推移したことに加え、円安による為替換算の影響を受けたことなどから582億8千1百万円(前期比11.2%増加)となりました。
利益面では、販売が好調なことや原材料価格が安定的に推移したことなどから、営業利益は57億4千7百万円(前期比32.2%増加)となりました。
印刷インキ(米州)
主力のパッケージ関連では、北米で需要の持ち直しの動きが続いたことに加え、ブラジルなど南米でも拡販が進んだこともあり、フレキソインキ及びグラビアインキの販売で回復が進みました。メタルインキは環境負荷の観点からアルミ缶に対する需要が高まっているという背景に加え、南米でも順調に拡販が進んでおり、販売は比較的好調に推移しました。印刷情報関連であるオフセットインキは、市場の構造的な縮小はあるもののUVインキなどの販売が堅調であったこともあり前期を上回りました。
売上高は、販売価格が下落した影響があるものの、販売数量が増加したことに加え、円安による為替換算の影響を受けたことなどから、878億6千3百万円(前期比11.4%増加)となりました。
利益面では、販売数量が増加したことや原材料価格も安定的に推移したものの、人件費を中心に経費の高止まりが続いていることに加え、買収に関連する一時的費用を第4四半期で計上したこともあり、営業利益は44億7千4百万円(前期比4.3%減少)となりました。
印刷インキ(欧州)
パッケージ関連を中心として拡販が進み、需要の落ち込みなどから持ち直しが続いたことに加え、メタルインキの販売が回復基調であったことやドイツからの販売も前期を上回るなど、販売は堅調に推移しました。売上高は、販売価格が下落した影響があるものの、販売数量が増加したことに加え、円安による為替換算の影響を受けたことなどから、214億4千7百万円(前期比9.7%増加)となりました。
利益面では、販売数量が増加したことに加え、原材料価格も安定的に推移したことなどから、営業利益は6千6百万円(前期は7億8千9百万円の営業損失)となりました。
機能性材料
インクジェットインキは販売が好調に推移し前期を上回りました。カラーフィルター用顔料分散液は堅調なパネルディスプレイ市況を背景に販売が好調に推移し前期を上回りました。トナーは顧客での在庫調整から回復の動きもあり前期を上回りました。これらの結果に加え、円安による為替換算の影響を受けたことなどから、売上高は194億5百万円(前期比15.3%増加)となりました。
利益面では、デジタル印刷材料の販売が増加したことなどから、営業利益は22億8千8百万円(前期比21.6%増加)となりました。
生産、受注及び販売の実績は、次の通りであります。
① 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次の通りであります。
(注)生産金額については期中平均販売価格により表示しており、セグメント間の取引については相殺消去しております。
② 受注実績
印刷用インキの生産は主として見込生産によっております。
小口ロットのものについて受注生産を行っているものもありますが、特に受注高及び受注残高として示すほどのものはありません。
③ 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次の通りであります。
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.総販売実績に対し10%以上に該当する販売先はありません。
(2)財政状態
当連結会計年度末の総資産は、現金及び預金は減少したものの、売上が増加したことに伴い売上債権や棚卸資産が増加したことや、有形固定資産の取得、買収により無形固定資産を含む各資産が増加した影響に加え、円安による為替換算の影響を受けたことなどから前連結会計年度末比273億8千2百万円(14.1%)増加の2,214億7千万円となりました。
負債は、借入金やリース債務が増加したことなどに加え、円安による為替換算の影響を受けたことなどから前連結会計年度末比138億1千2百万円(15.6%)増加の1,022億4千8百万円となりました。
純資産は、利益剰余金が増加したことに加え、その他の包括利益累計額が増加したことなどから、前連結会計年度末比135億6千9百万円(12.8%)増加の1,192億2千1百万円となりました。
(3)キャッシュ・フロー
当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況は次の通りであります。
営業活動によるキャッシュ・フローは、運転資本の増加や法人税等の支払などがあったものの、税金等調整前当期純利益、減価償却費などにより、89億4百万円の資金の増加となりました。前連結会計年度に比べ64億6千8百万円の減少となりましたが、主な要因は、運転資本が増加したことであります。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得や事業譲受による支出などがあったことにより、148億4千6百万円の資金の減少となりました。前連結会計年度に比べ72億5千5百万円の減少となりましたが、主な要因は、有形固定資産の取得による支出が増加したことや事業譲受による支出が発生したことであります。
財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払や自己株式の取得などがあったものの、借入金の増加などにより、42億1千4百万円の資金の増加となりました。前連結会計年度は42億9千9百万円の資金の減少でしたが、主な要因は、自己株式の取得による支出は増加したものの借入金の残高が増加したことであります。
以上の結果、当連結会計年度における現金及び現金同等物の残高は145億8千3百万円となり、前連結会計年度末に比べ16億3千5百万円の減少となりました。
キャッシュ・フロー関連指標の推移は、次の通りであります。
(注)自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い
1.各指標は、いずれも連結ベースの財務数値より算出しております。
2.株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しております。
3.営業キャッシュ・フローは連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。有利子負債は連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としております。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。
資本の財源及び資金の流動性は、次の通りであります。
当社グループでは運転資金や事業投資、株主還元等のための資金の調達として、内部資金及び外部借入による資金調達を基本方針としております。外部借入のうち、短期借入は主に営業取引に係る資金調達であり、長期借入は主に事業投資に係る資金調達であります。
内部資金に関しては営業活動によるキャッシュ・フローにより継続的に資金を獲得しております。また外部借入に関しては短期・長期借入の他に、当社においては運転資金の効率的な調達を行うため、取引銀行2行と30億円の特定融資枠契約を締結しております。これらに加え、2021年には10億円のESG評価型の無担保私募債(償還期限2026年3月31日)を発行しております。
重要な資本的支出の予定につきましては、「第3 設備の状況 3 設備の新設、除去等の計画(1)重要な設備の新設等」をご参照下さい。
(4)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。連結財務諸表の作成には、資産・負債及び収益・費用の額に影響を与える見積り及び仮定を必要とします。これらの見積り及び仮定は、過去の実績や当連結会計年度末時点で入手可能な情報を総合的に勘案し合理的に判断しておりますが、見積り特有の不確実性が存在するため、実際の結果は異なることがあります。
当社グループが連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 重要な会計上の見積り」に記載の通りであります。
(5)経営成績に重要な影響を与える要因
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」をご参照下さい。
(6)目標とする経営指標との比較
当連結会計年度と「中期経営計画2026 CCC-Ⅱ」の最終期との比較は、次の通りであります。
「中期経営計画2026 CCC-Ⅱ(以下「計画」という。)の初年度である当連結会計年度につきましては、売上高はアジアや欧米などで販売が好調に推移したことや機能性材料の販売も好調であったことに加え、計画算定時に比べ円安で推移したことによる為替換算の影響などもあり、計画の達成に向けて堅調な結果となりました。各段階利益及びROEにつきましては、ブラジルレアルの為替変動により想定にない為替差損が発生した影響などがあったものの、原材料価格が安定的に推移するなかで、海外における増収効果の影響もあり、計画の達成に向けて順調な結果となりました。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1)経営成績
当連結会計年度の世界経済は、地政学リスクが懸念される状況が続いたものの、各国の金利政策の効果もありインフレは鈍化傾向となり、個人消費の持ち直しの動きもあり全体として底堅い成長が続きました。
米国では個人消費や設備投資が堅調に推移するとともにインフレの動きも鈍化するなか、政策金利の引き下げが行われ、景気は底堅く推移しました。欧州では所得環境の改善による個人消費の回復により景気の持ち直しの動きがみられました。アジアでは景気回復の動きが続き、中国では不動産市場の停滞などにより景気は弱い動きが続いているものの、政府の景気対策の効果により年後半には一部で持ち直しの動きが見られました。日本では物価の上昇は続いているものの、所得環境の改善により個人消費が緩やかに増加するなど景気は緩やかながらも回復基調となりました。
このような状況のなかで、当社グループは2030年を見据えた長期ビジョン『SAKATA INX VISION 2030』を実現させるため、その事業拡大・収益力強化フェーズである『中期経営計画2026 (CCC-Ⅱ)』の初年度として、パッケージ分野を中心にボタニカルインキシリーズなど環境配慮型製品を軸としたサステナブルな製品の積極展開をグループ全体で推進しました。また第4四半期には、米国において連結子会社を新設し、コーティング事業ならびに関連資産の買収を行うことにより事業の拡充を図りました。機能性材料事業では、従来製品の拡販に加え、インクジェットインキにおいては衣食住をターゲットとした新市場への拡大や、画像表示材料においても新分野への展開などに取り組みました。
売上高は、アジアや欧米などで販売が好調に推移したことや機能性材料の販売も好調であったことに加え、円安による為替換算の影響を受けたことなどから、2,455億7千万円(前期比7.5%増加)となりました。
利益面では、第4四半期に米国での買収に関連する一時費用を計上した影響があったものの、海外における販売数量の増加による増収効果に加え、原材料価格が安定的に推移するなかでインキコストの削減により収益性が改善したことなどから、営業利益は131億6千1百万円(前期比15.0%増加)となりました。経常利益はブラジルレアルなどの為替変動の影響を大きく受けたことや持分法による投資利益が減少したことなどから128億9千3百万円(前期比5.4%減少)、親会社株主に帰属する当期純利益は中国における連結子会社の持分譲渡に伴い特別利益を計上したことなどから90億6百万円(前期比20.6%増加)となりました。
なお、2024年12月期より、連結損益計算書の「営業外収益 その他」に計上していた「受取ロイヤリティー」を「売上高」に含めて計上することに変更したため、「売上高」及び「営業利益」の前年同期比(%)は当該会計方針の変更を反映した遡及適用後の数値との比較となっております。(以下、各セグメントにおいても同様。)
(参考)USドルの期中平均為替レート
第1四半期 連結会計期間 | 第2四半期 連結会計期間 | 第3四半期 連結会計期間 | 第4四半期 連結会計期間 | 連結会計年度 | |
2024年12月期 | 148.61円 | 155.88円 | 149.38円 | 152.44円 | 151.58円 |
2023年12月期 | 132.34円 | 137.37円 | 144.62円 | 147.89円 | 140.56円 |
(注)連結会計年度の期中平均為替レートは、1月~12月の単純平均レートを記載しております。
セグメントの業績を示すと、次の通りであります。
(単位:百万円) |
売上高 | 営業利益又は営業損失(△) | ||||||||
前期 | 当期 | 増減額 | 増減率 | (※)実質 | 前期 | 当期 | 増減額 | 増減率 | |
印刷インキ・ 機材(日本) | 52,977 | 52,806 | △170 | △0.3% | △0.3% | 1,407 | 927 | △479 | △34.1% |
印刷インキ (アジア) | 52,434 | 58,281 | 5,846 | 11.2% | 4.3% | 4,346 | 5,747 | 1,400 | 32.2% |
印刷インキ (米州) | 78,848 | 87,863 | 9,014 | 11.4% | 4.5% | 4,675 | 4,474 | △200 | △4.3% |
印刷インキ (欧州) | 19,555 | 21,447 | 1,892 | 9.7% | 0.7% | △789 | 66 | 856 | - |
機能性材料 | 16,836 | 19,405 | 2,568 | 15.3% | 11.8% | 1,882 | 2,288 | 406 | 21.6% |
報告セグメント計 | 220,653 | 239,805 | 19,151 | 8.7% | 3.5% | 11,521 | 13,504 | 1,983 | 17.2% |
その他 | 15,302 | 12,731 | △2,571 | △16.8% | △16.8% | 464 | 169 | △295 | △63.6% |
調整額 | △7,593 | △6,965 | 628 | - | - | △537 | △511 | 26 | - |
合計 | 228,362 | 245,570 | 17,208 | 7.5% | 2.6% | 11,448 | 13,161 | 1,713 | 15.0% |
(※)実質増減率:海外連結子会社の為替換算の影響を除いた増減率
印刷インキ・機材(日本)
外国人観光客の増加が続いているものの、コロナ禍以前のようなモノ消費への需要が高まらないことに加え、日用品、食品、飲料など多くのアイテムでの相次ぐ値上げにより家計の節約志向が続き個人消費の回復は緩やかなものとなりました。パッケージ関連ではグラビアインキは堅調であったものの、フレキソインキはやや低調に推移しました。印刷情報関連では、デジタル化の影響により市場の構造的な縮小が続いていることなどから、新聞インキ、オフセットインキともに低調に推移しました。このような状況のなか、販売はやや低調に推移しているものの、販売価格の改定効果が寄与したことにより、印刷インキ全体では前期を上回りました。機材につきましては、販売が低調に推移したことなどにより印刷製版用材料、機械販売ともに前期を大きく下回りました。これらの結果、売上高は528億6百万円(前期比0.3%減少)となりました。
利益面では、販売価格の改定効果が寄与したものの、円安の影響もあり原材料価格が高止まりするなか、人件費や新基幹システムの本格稼働に伴う諸経費が増加した影響などから、営業利益は9億2千7百万円(前期比34.1%減少)となりました。
印刷インキ(アジア)
主力であるパッケージ関連のグラビアインキは、インドネシア、インド、ベトナムなど各地で拡販が続き販売は好調に推移しました。印刷情報関連では、インドで販売が堅調に推移しました。売上高は、販売価格が下落したことや中国における連結子会社の持分譲渡に伴う連結除外の影響があるものの、販売が好調に推移したことに加え、円安による為替換算の影響を受けたことなどから582億8千1百万円(前期比11.2%増加)となりました。
利益面では、販売が好調なことや原材料価格が安定的に推移したことなどから、営業利益は57億4千7百万円(前期比32.2%増加)となりました。
印刷インキ(米州)
主力のパッケージ関連では、北米で需要の持ち直しの動きが続いたことに加え、ブラジルなど南米でも拡販が進んだこともあり、フレキソインキ及びグラビアインキの販売で回復が進みました。メタルインキは環境負荷の観点からアルミ缶に対する需要が高まっているという背景に加え、南米でも順調に拡販が進んでおり、販売は比較的好調に推移しました。印刷情報関連であるオフセットインキは、市場の構造的な縮小はあるもののUVインキなどの販売が堅調であったこともあり前期を上回りました。
売上高は、販売価格が下落した影響があるものの、販売数量が増加したことに加え、円安による為替換算の影響を受けたことなどから、878億6千3百万円(前期比11.4%増加)となりました。
利益面では、販売数量が増加したことや原材料価格も安定的に推移したものの、人件費を中心に経費の高止まりが続いていることに加え、買収に関連する一時的費用を第4四半期で計上したこともあり、営業利益は44億7千4百万円(前期比4.3%減少)となりました。
印刷インキ(欧州)
パッケージ関連を中心として拡販が進み、需要の落ち込みなどから持ち直しが続いたことに加え、メタルインキの販売が回復基調であったことやドイツからの販売も前期を上回るなど、販売は堅調に推移しました。売上高は、販売価格が下落した影響があるものの、販売数量が増加したことに加え、円安による為替換算の影響を受けたことなどから、214億4千7百万円(前期比9.7%増加)となりました。
利益面では、販売数量が増加したことに加え、原材料価格も安定的に推移したことなどから、営業利益は6千6百万円(前期は7億8千9百万円の営業損失)となりました。
機能性材料
インクジェットインキは販売が好調に推移し前期を上回りました。カラーフィルター用顔料分散液は堅調なパネルディスプレイ市況を背景に販売が好調に推移し前期を上回りました。トナーは顧客での在庫調整から回復の動きもあり前期を上回りました。これらの結果に加え、円安による為替換算の影響を受けたことなどから、売上高は194億5百万円(前期比15.3%増加)となりました。
利益面では、デジタル印刷材料の販売が増加したことなどから、営業利益は22億8千8百万円(前期比21.6%増加)となりました。
生産、受注及び販売の実績は、次の通りであります。
① 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次の通りであります。
セグメントの名称 | 金額(百万円) | 前期比(%) |
印刷インキ・機材(日本) | 33,881 | 0.4 |
印刷インキ(アジア) | 57,104 | 13.3 |
印刷インキ(米州) | 86,291 | 9.3 |
印刷インキ(欧州) | 22,149 | 7.8 |
機能性材料 | 16,526 | 15.2 |
その他 | 832 | 2.3 |
合計 | 216,786 | 9.0 |
(注)生産金額については期中平均販売価格により表示しており、セグメント間の取引については相殺消去しております。
② 受注実績
印刷用インキの生産は主として見込生産によっております。
小口ロットのものについて受注生産を行っているものもありますが、特に受注高及び受注残高として示すほどのものはありません。
③ 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次の通りであります。
セグメントの名称 | 金額(百万円) | 前期比(%) |
印刷インキ・機材(日本) | 51,732 | △0.7 |
印刷インキ(アジア) | 58,082 | 11.1 |
印刷インキ(米州) | 86,953 | 11.6 |
印刷インキ(欧州) | 20,386 | 8.1 |
機能性材料 | 19,369 | 15.3 |
その他 | 9,045 | △12.9 |
合計 | 245,570 | 7.5 |
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.総販売実績に対し10%以上に該当する販売先はありません。
(2)財政状態
当連結会計年度末の総資産は、現金及び預金は減少したものの、売上が増加したことに伴い売上債権や棚卸資産が増加したことや、有形固定資産の取得、買収により無形固定資産を含む各資産が増加した影響に加え、円安による為替換算の影響を受けたことなどから前連結会計年度末比273億8千2百万円(14.1%)増加の2,214億7千万円となりました。
負債は、借入金やリース債務が増加したことなどに加え、円安による為替換算の影響を受けたことなどから前連結会計年度末比138億1千2百万円(15.6%)増加の1,022億4千8百万円となりました。
純資産は、利益剰余金が増加したことに加え、その他の包括利益累計額が増加したことなどから、前連結会計年度末比135億6千9百万円(12.8%)増加の1,192億2千1百万円となりました。
(3)キャッシュ・フロー
当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況は次の通りであります。
営業活動によるキャッシュ・フローは、運転資本の増加や法人税等の支払などがあったものの、税金等調整前当期純利益、減価償却費などにより、89億4百万円の資金の増加となりました。前連結会計年度に比べ64億6千8百万円の減少となりましたが、主な要因は、運転資本が増加したことであります。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得や事業譲受による支出などがあったことにより、148億4千6百万円の資金の減少となりました。前連結会計年度に比べ72億5千5百万円の減少となりましたが、主な要因は、有形固定資産の取得による支出が増加したことや事業譲受による支出が発生したことであります。
財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払や自己株式の取得などがあったものの、借入金の増加などにより、42億1千4百万円の資金の増加となりました。前連結会計年度は42億9千9百万円の資金の減少でしたが、主な要因は、自己株式の取得による支出は増加したものの借入金の残高が増加したことであります。
以上の結果、当連結会計年度における現金及び現金同等物の残高は145億8千3百万円となり、前連結会計年度末に比べ16億3千5百万円の減少となりました。
キャッシュ・フロー関連指標の推移は、次の通りであります。
2020年 12月期 | 2021年 12月期 | 2022年 12月期 | 2023年 12月期 | 2024年 12月期 | |
自己資本比率(%) | 52.6 | 51.8 | 48.6 | 50.9 | 50.7 |
時価ベースの 自己資本比率(%) | 46.6 | 34.8 | 29.6 | 35.0 | 39.1 |
キャッシュ・フロー対 有利子負債比率(年) | 1.7 | 2.4 | 5.6 | 1.7 | 4.1 |
インタレスト・カバレッジ・ レシオ(倍) | 40.1 | 32.4 | 9.0 | 20.3 | 10.9 |
(注)自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い
1.各指標は、いずれも連結ベースの財務数値より算出しております。
2.株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しております。
3.営業キャッシュ・フローは連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。有利子負債は連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としております。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。
資本の財源及び資金の流動性は、次の通りであります。
当社グループでは運転資金や事業投資、株主還元等のための資金の調達として、内部資金及び外部借入による資金調達を基本方針としております。外部借入のうち、短期借入は主に営業取引に係る資金調達であり、長期借入は主に事業投資に係る資金調達であります。
内部資金に関しては営業活動によるキャッシュ・フローにより継続的に資金を獲得しております。また外部借入に関しては短期・長期借入の他に、当社においては運転資金の効率的な調達を行うため、取引銀行2行と30億円の特定融資枠契約を締結しております。これらに加え、2021年には10億円のESG評価型の無担保私募債(償還期限2026年3月31日)を発行しております。
重要な資本的支出の予定につきましては、「第3 設備の状況 3 設備の新設、除去等の計画(1)重要な設備の新設等」をご参照下さい。
(4)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。連結財務諸表の作成には、資産・負債及び収益・費用の額に影響を与える見積り及び仮定を必要とします。これらの見積り及び仮定は、過去の実績や当連結会計年度末時点で入手可能な情報を総合的に勘案し合理的に判断しておりますが、見積り特有の不確実性が存在するため、実際の結果は異なることがあります。
当社グループが連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 重要な会計上の見積り」に記載の通りであります。
(5)経営成績に重要な影響を与える要因
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」をご参照下さい。
(6)目標とする経営指標との比較
当連結会計年度と「中期経営計画2026 CCC-Ⅱ」の最終期との比較は、次の通りであります。
中期経営計画CCC-Ⅰ 2023年実績 | 当連結会計年度 | 中期経営計画CCC-Ⅱ 2026年計画 | 比較 | |
売上高(億円) | 2,283 | 2,455 | 2,700 | △244 |
営業利益(億円) | 114 | 131 | 180 | △48 |
経常利益(億円) | 136 | 128 | 190 | △61 |
親会社株主に帰属する 当期純利益(億円) | 74 | 90 | 127 | △36 |
ROE | 8.1% | 8.5% | 10.0%以上 | - |
「中期経営計画2026 CCC-Ⅱ(以下「計画」という。)の初年度である当連結会計年度につきましては、売上高はアジアや欧米などで販売が好調に推移したことや機能性材料の販売も好調であったことに加え、計画算定時に比べ円安で推移したことによる為替換算の影響などもあり、計画の達成に向けて堅調な結果となりました。各段階利益及びROEにつきましては、ブラジルレアルの為替変動により想定にない為替差損が発生した影響などがあったものの、原材料価格が安定的に推移するなかで、海外における増収効果の影響もあり、計画の達成に向けて順調な結果となりました。