有価証券報告書-第141期(平成30年1月1日-平成30年12月31日)
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要ならびに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次の通りであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営成績
当連結会計年度の世界経済は、米国は景気の回復が続き、欧州も緩やかな景気の回復が続いたものの、アジアにおいては、中国の景気が減速するなど、通商問題の影響などにより先行きの不確実性が高まりました。日本経済は、雇用・所得環境の改善が続く中で、緩やかな回復が続いたものの、海外景気の下振れなどが懸念される状況で推移しました。
このような状況の中で、当社グループはコア事業である印刷インキ事業において、アジアを中心とした各拠点での拡販に注力するとともに、環境に配慮した安全・省エネ志向製品や顧客ニーズに応じた地域密着型製品の開発、TPM活動の深化による生産性向上などに取り組みました。また、中国における環境規制の強化や原油価格の高騰などに伴い、印刷インキ全般の主要原材料価格がグループ全体で高騰していることから、更なるコスト削減を推し進めるとともに、販売価格の改定に取り組みました。一方、機能性材料事業では、インクジェットインキをはじめとして、トナー、カラーフィルター用顔料分散液などの開発・拡販に取り組みました。
売上高は、円高による為替換算の影響を受けたものの、アジア及び北米でパッケージ関連の印刷インキの拡販が進み、機能性材料も概ね好調であったことなどから、1,620億5千6百万円(前期比3.0%増加)となりました。
利益面では、印刷インキ事業において、販売数量の増加が寄与したものの、年間を通じて原材料高が進んだ一方で、販売価格の改定効果は一部に留まったことなどから、営業利益は51億1千2百万円(前期比40.4%減少)、経常利益は69億1千万円(前期比38.6%減少)、親会社株主に帰属する当期純利益は46億9千2百万円(前期比44.0%減少)となりました。
(参考) USドルの期中平均為替レート
第1四半期 連結会計期間 | 第2四半期 連結会計期間 | 第3四半期 連結会計期間 | 第4四半期 連結会計期間 | 連結会計年度 | |
2018年12月期 | 108.30 円 | 109.07 円 | 111.46 円 | 112.90 円 | 110.43 円 |
2017年12月期 | 113.64 円 | 111.09 円 | 111.03 円 | 112.98 円 | 112.19 円 |
(注) 連結会計年度の期中平均為替レートは、1月~12月の単純平均レートを記載しております。
セグメントの経営成績は、次の通りであります。
(単位:百万円) | ||||||||
売上高 | 営業利益又は営業損失(△) | |||||||
前期 | 当期 | 増減額 | 増減率 | 前期 | 当期 | 増減額 | 増減率 | |
印刷インキ・ 機材(日本) | 54,985 | 54,950 | △34 | △0.1% | 2,253 | 1,125 | △1,127 | △50.1% |
印刷インキ (アジア) | 30,245 | 32,156 | 1,911 | 6.3% | 2,347 | 1,529 | △817 | △34.8% |
印刷インキ (北米) | 43,560 | 44,957 | 1,397 | 3.2% | 1,830 | 992 | △837 | △45.8% |
印刷インキ (欧州) | 8,777 | 9,321 | 543 | 6.2% | 25 | △791 | △817 | - |
機能性材料 | 11,336 | 12,185 | 849 | 7.5% | 1,140 | 1,222 | 82 | 7.2% |
報告セグメント計 | 148,904 | 153,571 | 4,666 | 3.1% | 7,596 | 4,078 | △3,517 | △46.3% |
その他 | 15,790 | 16,335 | 545 | 3.5% | 350 | 390 | 39 | 11.3% |
調整額 | △7,392 | △7,851 | △458 | - | 626 | 643 | 17 | - |
合計 | 157,302 | 162,056 | 4,753 | 3.0% | 8,573 | 5,112 | △3,460 | △40.4% |
印刷インキ・機材(日本)
印刷情報関連では、需要減の影響を受けて、新聞インキ、オフセットインキともに前期を下回りました。パッケージ関連では、フレキソインキは天候不順や自然災害などの影響を受けて前期を下回ったものの、グラビアインキは拡販が進み前期を上回りました。以上のことから、印刷インキ全体では前期を上回りました。機材につきましては、印刷製版用材料、印刷製版関連機器ともに低調であったことから、前期を下回りました。これらの結果、売上高は549億5千万円(前期比0.1%減少)となりました。
利益面では、印刷情報関連の印刷インキ及び機材販売が低調に推移したことに加え、パッケージ関連をはじめとして、原材料高の影響を大きく受けた一方で、販売価格の改定が遅れたことなどから、営業利益は11億2千5百万円(前期比50.1%減少)となりました。
印刷インキ(アジア)
主力であるパッケージ関連のグラビアインキは、インド、インドネシア、ベトナムを中心として好調に推移しました。印刷情報関連では、オフセットインキ及び新聞インキがインド、中国で好調に推移しました。売上高は、円高による為替換算の影響を受けたものの、販売数量が増加したことなどから、321億5千6百万円(前期比6.3%増加)となりました。
利益面では、販売数量の増加が寄与したものの、一昨年から続く原材料高が年間を通じて想定以上に進んだ一方で、競争の激化により販売価格の改定が遅れたことなどから、営業利益は15億2千9百万円(前期比34.8%減少)となりました。
印刷インキ(北米)
主力のパッケージ関連では、需要増加を背景として、高機能インキの拡販に向けた取組みが奏功し、フレキソインキ、グラビアインキ及びメタルインキが全般的に好調に推移しました。印刷情報関連であるオフセットインキは、UVインキが堅調であったものの、市場縮小の影響を受けて、全体としては低調に推移しました。売上高は、円高による為替換算の影響を受けたものの、販売数量が順調に増加したことなどから、449億5千7百万円(前期比3.2%増加)となりました。
利益面では、販売数量の増加が寄与したものの、中国製品に対する関税引き上げもあり原材料高が年後半に一段と進んだことや、競争激化により利益率が低下したことなどにより、営業利益は9億9千2百万円(前期比45.8%減少)となりました。
印刷インキ(欧州)
パッケージ関連を中心に拡販が進み、売上高は現地通貨高・円安による為替換算の影響を受けたことなどから、93億2千1百万円(前期比6.2%増加)となりました。
利益面では、年後半に一段と進んだ原材料高の影響や競争激化による利益率の低下に加え、生産・販売体制の再編に伴う一時的な費用負担が嵩んだことなどが響き、7億9千1百万円の営業損失(前期は2千5百万円の営業利益)となりました。
機能性材料
インクジェットインキ及びカラーフィルター用顔料分散液は販売が比較的堅調に推移し、前期を上回りました。トナーは、販売が好調に推移し、前期を上回りました。これらの結果、売上高は121億8千5百万円(前期比7.5%増加)となりました。
利益面では、原材料高が影響したものの、全般的な販売数量の増加や合理化によるコスト削減が寄与したことなどから、営業利益は12億2千2百万円(前期比7.2%増加)となりました。
生産、受注及び販売の実績は、次の通りであります。
①生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次の通りであります。
セグメントの名称 | 金額(百万円) | 前期比(%) |
印刷インキ・機材(日本) | 35,351 | △1.1 |
印刷インキ(アジア) | 30,766 | 6.3 |
印刷インキ(北米) | 44,870 | 3.0 |
印刷インキ(欧州) | 8,809 | △3.8 |
機能性材料 | 11,129 | 4.8 |
その他 | 788 | △6.4 |
合計 | 131,716 | 2.2 |
(注) 1.生産金額については期中平均販売価格により表示しており、セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.上記の金額に消費税等は含まれておりません。
②受注実績
印刷用インキの生産は主として見込生産によっております。
小口ロットのものについて受注生産を行っているものもありますが、特に受注高及び受注残高として示すほどのものはありません。
③販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次の通りであります。
セグメントの名称 | 金額(百万円) | 前期比(%) |
印刷インキ・機材(日本) | 54,931 | △0.1 |
印刷インキ(アジア) | 32,012 | 6.0 |
印刷インキ(北米) | 43,439 | 2.9 |
印刷インキ(欧州) | 9,239 | 5.7 |
機能性材料 | 12,101 | 7.7 |
その他 | 10,332 | 3.8 |
合計 | 162,056 | 3.0 |
(注) 1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.総販売実績に対し10%以上に該当する販売先はありません。
3.上記の金額に消費税等は含まれておりません。
(2) 財政状態
当連結会計年度末の総資産は、現金及び預金の減少、主に時価評価による投資有価証券の減少に加え、円高による為替換算の影響を受けたものの、売上高の増加や事業拡大などに伴い、売上債権、たな卸資産及び有形固定資産が増加したことなどから、前連結会計年度末比3億6千7百万円(0.3%)増加の1,458億5千7百万円となりました。
負債は、未払法人税等や流動負債のその他に計上されている設備関係未払金が減少したものの、仕入債務や借入金が増加したことなどから、前連結会計年度末比17億3千6百万円(2.6%)増加の684億5千9百万円となりました。
純資産は、利益剰余金は増加したものの、その他の包括利益累計額が減少したことから、前連結会計年度末比13億6千8百万円(1.7%)減少の773億9千7百万円となりました。
(3) キャッシュ・フロー
当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況は、次の通りであります。
営業活動によるキャッシュ・フローは、法人税等の支払があったものの、税金等調整前当期純利益、減価償却費などにより、52億3千9百万円の資金の増加となり、前連結会計年度に比べ39億6千2百万円の減少となりました。主な要因は、税金等調整前当期純利益の減少であります。
投資活動によるキャッシュ・フローは、日本、北米などにおける有形固定資産の取得などにより、72億7千9百万円の資金の減少となり、前連結会計年度に比べ45億4千1百万円の減少となりました。主な要因は、有形固定資産の取得による支出の増加及び投資有価証券の売却による収入の減少であります。
財務活動によるキャッシュ・フローは、借入金が増加した一方、配当金の支払などにより、1億2千2百万円の資金の減少となり、前連結会計年度に比べ61億3千7百万円の増加となりました。主な要因は、借入金の増加及び自己株式の取得による支出の減少であります。
以上の結果、当連結会計年度における現金及び現金同等物の期末残高は67億8千8百万円となり、前連結会計年度末に比べ25億6千2百万円の減少となりました。
キャッシュ・フロー関連指標の推移は、次の通りであります。
2015年 3月期 | 2015年 12月期 | 2016年 12月期 | 2017年 12月期 | 2018年 12月期 | |
自己資本比率(%) | 48.2 | 49.1 | 51.7 | 52.0 | 50.9 |
時価ベースの 自己資本比率(%) | 52.5 | 56.8 | 63.4 | 72.3 | 48.6 |
キャッシュ・フロー対 有利子負債比率(年) | 3.7 | 1.8 | 1.5 | 1.8 | 3.6 |
インタレスト・カバレッジ・ レシオ(倍) | 17.3 | 34.6 | 44.9 | 36.9 | 19.9 |
(注) 自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い
1. 各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により算出しております。
2. 株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)より算出しております。
3. 営業キャッシュ・フローは連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。有利子負債は連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としております。また、利払いについては連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。
資本の財源及び資金の流動性は、次の通りであります。
当社グループでは運転資金や設備投資等のための資金の調達として、内部資金及び外部借入による資金調達を基本方針としております。外部借入のうち、短期借入は主に営業取引に係る資金調達であり、長期借入は主に設備投資に係る資金調達であります。
内部資金に関しては営業活動によるキャッシュ・フローにより継続的に資金を獲得しており、また外部借入に関しては短期・長期借入の他に、当社においては運転資金の効率的な調達を行うため、取引銀行2行と30億円の特定融資枠契約を締結しております。
重要な資本的支出の予定につきましては、「第一部[企業情報] 第3[設備の状況] 3[設備の新設、除去等の計画] (1)重要な設備の新設等」をご参照下さい。
(4) 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたり、資産・負債及び収益・費用の報告数値及び開示に影響を与える見積りや判断を行う必要があります。これらの見積り及び判断を過去の実績や状況に応じ合理的に行っておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針につきましては、「第一部[企業情報] 第5[経理の状況] 1[連結財務諸表等] 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」をご参照下さい。
(5) 経営成績に重要な影響を与える要因
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第一部[企業情報] 第2[事業の状況] 2[事業等のリスク]」をご参照下さい。
(6) 目標とする経営指標との比較
当連結会計年度と「中期経営計画2020」の最終期との比較は、次の通りであります。
当連結会計年度 | 2020年計画 | 比較 | |
売上高(億円) | 1,620 | 1,950 | △329 |
営業利益(億円) | 51 | 130 | △78 |
経常利益(億円) | 69 | 150 | △80 |
親会社株主に帰属する 当期純利益(億円) | 46 | 98 | △51 |
ROE | 6.3% | 10%以上 | - |
「中期経営計画2020(以下「計画」という。)」の初年度である当連結会計年度につきましては、売上高は全体として着実に増加し、計画をやや下回るペースの水準となりました。各利益及びROEにつきましては、中国における環境規制の強化や原油価格の高騰などに伴い、当社グループの原材料を取り巻く環境が一変したことなどから、計画を大幅に下回るペースの水準となりました。
計画につきましては、外部環境の激変により、利益の達成が困難な状況であるものの、その基本方針と戦略課題は変わらず、それらの着実な実行に加え、原材料費の低減を目指したグローバル調達や販売価格の改定などにも取り組み、利益目標に可能な限り近づけるべく鋭意努めてまいります。