有価証券報告書-第197期(平成30年4月1日-平成31年3月31日)
(業績等の概要)
(1) 業績
当期の世界経済は、底堅く推移する米国経済が着実な成長を牽引しておりましたが、下期以降は、米中貿易摩擦、中国経済の減速等による影響から世界経済の成長は鈍化してまいりました。わが国の経済は、増加基調にある輸出及び高水準で推移する企業収益に基づく設備投資の増加傾向などにより緩やかに拡大しておりましたが、不透明感の高まる世界経済の影響により昨年末頃から景気の停滞感が強まりました。
このような環境の下、当社グループでは、中期経営計画「Furukawa G Plan 2020」に基づき、重点領域であるインフラ(情報通信、エネルギー)/自動車分野の強化に引き続き取り組んでまいりました。インフラ関連では、情報通信分野において、光ファイバ・ケーブルの競争激化に対応するため、当社が優位性をもつ高密度多心光ケーブルの顧客基盤拡大や製造能力の増強・製造コストの低減にも努めてまいりました。エネルギー分野においては、引き続き、国内を含むアジア市場での海底線・地中線の受注活動の積極的な展開とこれに対応する設備投資を行うとともに、中長期的に安定した国内の電力設備の更新需要を取り込む事業体制の整備を進めております。自動車分野では、主にグローバル車種向けのワイヤハーネス受注に対応する製造・供給体制を整えるため、フィリピン及びベトナムにおいて生産能力の増強を進めるなど、グローバルでの事業拡大・競争力強化を図ってまいりました。
当期の業績につきましては、自動車部品事業においてワイヤハーネスの売上が好調に推移するとともに、銅条・高機能材事業や銅箔事業においても品種構成の最適化を進め収益性が大きく改善しました。一方、情報通信ソリューション事業では、当社主要顧客の投資抑制などにより北米における光ファイバ・ケーブルの需要回復が遅れたことから売上が伸び悩み、電力事業では、過年度に受注した低採算案件の売上が計上されたことや、将来に向けて戦略的に受注した新エネルギー関連案件に係る工事損失引当金を計上したことが利益の圧迫要因となりました。
これらの結果、連結売上高は9,916億円(前期比2.5%増)、連結営業利益は408億円(前期比8.8%減)となりました。また、連結経常利益は391億円(前期比16.7%減)となりました。さらに投資有価証券売却益など99億円を特別利益に、製品補償引当金繰入額や減損損失など132億円を特別損失として計上した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は291億円(前期比2.0%増)となりました。なお、海外売上高は4,703億円(前期比3.0%増)で、海外売上高比率は47.4%(前期比0.2ポイント増)となりました。
単独の業績につきましては、売上高は4,736億円(前期比3.5%増)、営業利益は51億円(前期比9.6%減)、経常利益は226億円(前期比6.5%増)、当期純利益は215億円(前期比16.0%増)となりました。
セグメントの業績を示すと、次のとおりであります。
なお、当連結会計年度より、従来「サービス・開発等」に含めていた産業用レーザについて、事業化の見込みが立ったことにより管理所管の見直しを行い、報告セグメントの区分を「インフラ」に変更しております。また、当連結会計年度より、報告セグメントごとの業績をより適切に反映させるため、当社の本部費用等の配賦方法を変更しております。
これに伴い、前年同期比較の数値は、前連結会計年度の数値を変更後の区分方法及び配賦方法で組み替えた数値との比較となっております。
[インフラ]
情報通信ソリューション事業では、国内でのネットワークシステム関連製品がテレビの4K・8K放送開始等に伴う需要拡大を背景に売上・利益ともに好調に推移し、金属の切断・溶接等に使用される産業用レーザの売上も伸長しましたが、北米における光ファイバ・ケーブルは、主に当社主要顧客による投資抑制により需要の回復が遅れ売上が伸び悩みました。エネルギーインフラ事業では、堅調に推移している国内の地中線の需要を着実に取り込んでいるものの、戦略的に受注した新エネルギー関連の海底線での工事損失引当金の計上や過年度に受注した低採算の海外地中線案件の売上計上が利益を圧迫しました。
これらの結果、当セグメントの連結売上高は2,880億円(前期比1.8%減)、連結営業利益は74億円(前期比40.0%減)となりました。また、単独売上高は961億円(前期比9.3%増)となりました。
情報通信ソリューション事業では、北米及び日本における光ファイバの製造能力増強やコスト低減に向けた設備投資を着実に実行し、中長期的に世界的な需要拡大が見込まれる同製品の供給に対応可能な生産体制の強化を進めております。また、市場回復傾向にあるデジタルコヒーレント関連製品に関しても、次世代品の開発を進め販売拡大に努めてまいります。
エネルギーインフラ事業では、人材の確保を含めた製造・工事施工能力の向上や、海底線に用いられる長尺・大容量ケーブルの製造能力の強化等を行うことで、国内及びアジア市場での新エネルギー関連の案件受注を積み重ねるほか、中国拠点を活用したコスト競争力の強化も行ってまいります。
[電装エレクトロニクス]
自動車部品事業においてワイヤハーネスが好調に推移したことに加え、銅条・高機能材事業において品種構成の見直しにより収益性が改善したことや、巻線事業においても自動車関連製品が堅調であったことから、業績は好調に推移しました。
これらの結果、当セグメントの連結売上高は5,627億円(前期比5.4%増)、連結営業利益は197億円(前期比7.3%増)となりました。また、単独売上高は3,120億円(前期比2.2%増)となりました。
自動車部品事業では、主にグローバル車種向けのワイヤハーネス受注に対応するため、従来のメキシコに加えて東南アジア拠点(フィリピン・ベトナム)を活用する二地域での生産体制の整備を進めております。さらに、当社が優位性を持つアルミワイヤハーネスを含むワイヤハーネスのコスト競争力及び品質力を強化し、さらなる事業拡大に取り組んでおります。
また、当期においてインドのMinda Furukawa Electric Private Ltd.に対する当社グループ出資比率を75%まで高め、連結子会社としました。当社は同社を通じて、インド市場でのエアバック装着義務化に伴い当社が競争優位性を持つステアリング・ロール・コネクタの売上拡大を目指します。なお、同社は当社の連結子会社となったことに伴い社名をFurukawa Minda Electric Private Ltd.へ変更しました。
[機能製品]
銅箔事業では、昨年末までの旺盛な需要を取り込んだことに加え、品種構成の見直しにより業績が堅調に推移し、メモリーディスク事業においては、データセンター向けハードディスク用アルミ基板材の販売が昨年末にかけて好調に推移しましたが、第4四半期以降は、当セグメントの事業全体でエレクトロニクス市場での需要減少などにより損益への影響がありました。
これらの結果、当セグメントの連結売上高は1,493億円(前期比2.5%減)、連結営業利益は135億円(前期比3.5%減)となりました。また、単独売上高は647億円(前期比1.7%増)となりました。
AT・機能樹脂事業では、これまで半導体製造用に使用されてきたテープの新たな用途展開など新規市場開拓に積極的に取り組み、収益を確保する施策を実行してまいります。
サーマル・電子部品事業、メモリーディスク事業及び銅箔事業においても、データセンターを含むエレクトロニクス市場での足元の需要減少があるものの、顧客ニーズに沿った新製品の提案・開発を推進し本市場での成長に向けて引き続き取り組んでまいります。
[サービス・開発等]
物流、不動産の賃貸、水力発電、新製品研究開発、各種業務受託等による当社グループ各事業のサポート等を行っております。
当セグメントの連結売上高は476億円(前期比6.7%減)、連結営業利益は1億円(前期比1億円の改善)となりました。また、単独売上高は8億円(前期比2.0%増)となりました。
(2) キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、468億円(前連結会計年度比△29億円)となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、売上の増加や銅価上昇の影響により運転資本が悪化したものの、税金等調整前当期純利益+358億円、減価償却費+263億円等により+465億円(前連結会計年度比+80億円)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、主に中期経営計画の重点領域であるインフラ分野への投資を拡大したことに伴い、有形固定資産の取得による支出が△431億円と増加したことから、△310億円(前連結会計年度比+33億円)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、減価償却費を上回る設備投資等で借入金が増加したものの、配当金の支払い等により△194億円(前連結会計年度比△175億円)となりました。
(生産、受注及び販売の状況)
当社グループの生産・販売品目は、広範かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様ではなく、また受注生産形態をとらない製品も多く、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額または、数量で示すことはしておりません。
(財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析)
(1) 財政状態の分析
当連結会計年度末の資産の部は、合計が前連結会計年度末に比べ94億円増加して8,180億円となりました。流動資産は前連結会計年度末比43億円増加の4,205億円、固定資産は前連結会計年度末比51億円増加の3,975億円でした。投資有価証券が131億円減少しましたが、たな卸資産が91億円、有形固定資産が126億円増加しました。
流動資産から流動負債を差し引いた運転資本は、前連結会計年度末に比べ30億円増加して889億円となりました。
有形・無形固定資産は、資本的支出で500億円の増加、減価償却で263億円の減少のほか、除売却による減少等により変動しております。
負債の部では、合計が前連結会計年度末に比べ15億円増加し5,381億円となりました。長期借入金、短期借入金、社債を含む有利子負債が2,460億円と前連結会計年度末比で125億円の減少となったものの、支払手形及び買掛金で70億円、製品補償引当金で56億円、退職給付に係る負債で46億円増加しました。
純資産の部では、その他の包括利益累計額が128億円減少したものの、親会社株主に帰属する当期純利益の増加等により利益剰余金が236億円増加し、合計が前連結会計年度末比で78億円増加しました。その結果、自己資本比率は、前連結会計年度末比1.1ポイント上昇し30.3%となりました。
なお、「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正」(企業会計基準第28号 平成30年2月16日)等を当連結会計年度の期首から適用しており、財政状態の状況については、当該会計基準等を遡って適用した後の数値で前連結会計年度との比較を行っております。
キャッシュ・フローの概況については、「3[経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析](業績等の概要)(2)キャッシュ・フローの状況」に記載しております。
(2) 経営成績の分析
当連結会計年度の連結売上高は、前連結会計年度比2.5%増の9,916億円、連結営業利益は、前連結会計年度比8.8%減の408億円となりました。自動車部品事業においてワイヤハーネスの売上が好調に推移するとともに、銅条・高機能材事業や銅箔事業においても品種構成の最適化を進め収益性が大きく改善しました。一方、情報通信ソリューション事業では、当社主要顧客の投資抑制などにより北米における光ファイバ・ケーブルの需要回復が遅れたことから売上が伸び悩み、電力事業では、過年度に受注した低採算案件の売上が計上されたことや、将来に向けて戦略的に受注した新エネルギー関連案件に係る工事損失引当金を計上したことが利益の圧迫要因となりました。
営業外損益では、持分法による投資損益が26億円減少しました。この結果、連結経常利益は前連結会計年度比16.7%減の391億円となりました。
特別損益は、33億円の損失(純額)となりました。投資有価証券売却益など99億円を特別利益に、製品補償引当金繰入額や減損損失など132億円を特別損失として計上しました。
以上の結果、親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度比2.0%増の291億円となりました。
なお、セグメント別の概況は、「3[経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析](業績等の概要)(1)業績」に記載しております。
(3) 資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社グループでは、積極的な設備投資、研究開発の実施等により当面の資金需要は増加していく見込みです。
こうした資金需要に対し、営業活動を通じて獲得したキャッシュ・フローの他、金融機関からの借入、社債やコマーシャル・ペーパーの発行、資産の流動化等により資金を調達しております。また、日本、中国、及びタイにおいて、CMS(キャッシュ・マネジメント・システム)を導入し、効率的な資金活用に努めております。
なお、短期的な支払リスクに対するバックアップラインとして、金融機関でコミットメントライン等を設定し、手元流動性の確保にも努めております。
(4) 中期経営計画の進捗について
当社グループは、2016年度から2020年度までの5か年の中期経営計画「Furukawa G Plan 2020」のもと、経営活動を推進しております。
当連結会計年度における経営成績は下記の表のとおりとなり、2018年度のマイルストンとして掲げた連結営業利益目標を上回りました。主にデータセンター需要拡大に伴う機能製品セグメント、ワイヤハーネスの好調などによる自動車部品事業が、2016年度からの営業利益拡大に寄与しました。
2018年5月には、2020年度の経営数値目標を上方修正いたしましたが、足元は市場環境が不透明であり、情報通信ソリューション事業の成長スピードも後退しているなど、やや厳しい経営環境が続いております。引き続き注力事業・製品の強化及び低採算事業・製品の改革などを進めるとともに、生産性向上による原価改善など環境変化に対応できる経営体質強化を進めてまいります。
(1) 業績
当期の世界経済は、底堅く推移する米国経済が着実な成長を牽引しておりましたが、下期以降は、米中貿易摩擦、中国経済の減速等による影響から世界経済の成長は鈍化してまいりました。わが国の経済は、増加基調にある輸出及び高水準で推移する企業収益に基づく設備投資の増加傾向などにより緩やかに拡大しておりましたが、不透明感の高まる世界経済の影響により昨年末頃から景気の停滞感が強まりました。
このような環境の下、当社グループでは、中期経営計画「Furukawa G Plan 2020」に基づき、重点領域であるインフラ(情報通信、エネルギー)/自動車分野の強化に引き続き取り組んでまいりました。インフラ関連では、情報通信分野において、光ファイバ・ケーブルの競争激化に対応するため、当社が優位性をもつ高密度多心光ケーブルの顧客基盤拡大や製造能力の増強・製造コストの低減にも努めてまいりました。エネルギー分野においては、引き続き、国内を含むアジア市場での海底線・地中線の受注活動の積極的な展開とこれに対応する設備投資を行うとともに、中長期的に安定した国内の電力設備の更新需要を取り込む事業体制の整備を進めております。自動車分野では、主にグローバル車種向けのワイヤハーネス受注に対応する製造・供給体制を整えるため、フィリピン及びベトナムにおいて生産能力の増強を進めるなど、グローバルでの事業拡大・競争力強化を図ってまいりました。
当期の業績につきましては、自動車部品事業においてワイヤハーネスの売上が好調に推移するとともに、銅条・高機能材事業や銅箔事業においても品種構成の最適化を進め収益性が大きく改善しました。一方、情報通信ソリューション事業では、当社主要顧客の投資抑制などにより北米における光ファイバ・ケーブルの需要回復が遅れたことから売上が伸び悩み、電力事業では、過年度に受注した低採算案件の売上が計上されたことや、将来に向けて戦略的に受注した新エネルギー関連案件に係る工事損失引当金を計上したことが利益の圧迫要因となりました。
これらの結果、連結売上高は9,916億円(前期比2.5%増)、連結営業利益は408億円(前期比8.8%減)となりました。また、連結経常利益は391億円(前期比16.7%減)となりました。さらに投資有価証券売却益など99億円を特別利益に、製品補償引当金繰入額や減損損失など132億円を特別損失として計上した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は291億円(前期比2.0%増)となりました。なお、海外売上高は4,703億円(前期比3.0%増)で、海外売上高比率は47.4%(前期比0.2ポイント増)となりました。
単独の業績につきましては、売上高は4,736億円(前期比3.5%増)、営業利益は51億円(前期比9.6%減)、経常利益は226億円(前期比6.5%増)、当期純利益は215億円(前期比16.0%増)となりました。
セグメントの業績を示すと、次のとおりであります。
なお、当連結会計年度より、従来「サービス・開発等」に含めていた産業用レーザについて、事業化の見込みが立ったことにより管理所管の見直しを行い、報告セグメントの区分を「インフラ」に変更しております。また、当連結会計年度より、報告セグメントごとの業績をより適切に反映させるため、当社の本部費用等の配賦方法を変更しております。
これに伴い、前年同期比較の数値は、前連結会計年度の数値を変更後の区分方法及び配賦方法で組み替えた数値との比較となっております。
[インフラ]
情報通信ソリューション事業では、国内でのネットワークシステム関連製品がテレビの4K・8K放送開始等に伴う需要拡大を背景に売上・利益ともに好調に推移し、金属の切断・溶接等に使用される産業用レーザの売上も伸長しましたが、北米における光ファイバ・ケーブルは、主に当社主要顧客による投資抑制により需要の回復が遅れ売上が伸び悩みました。エネルギーインフラ事業では、堅調に推移している国内の地中線の需要を着実に取り込んでいるものの、戦略的に受注した新エネルギー関連の海底線での工事損失引当金の計上や過年度に受注した低採算の海外地中線案件の売上計上が利益を圧迫しました。
これらの結果、当セグメントの連結売上高は2,880億円(前期比1.8%減)、連結営業利益は74億円(前期比40.0%減)となりました。また、単独売上高は961億円(前期比9.3%増)となりました。
情報通信ソリューション事業では、北米及び日本における光ファイバの製造能力増強やコスト低減に向けた設備投資を着実に実行し、中長期的に世界的な需要拡大が見込まれる同製品の供給に対応可能な生産体制の強化を進めております。また、市場回復傾向にあるデジタルコヒーレント関連製品に関しても、次世代品の開発を進め販売拡大に努めてまいります。
エネルギーインフラ事業では、人材の確保を含めた製造・工事施工能力の向上や、海底線に用いられる長尺・大容量ケーブルの製造能力の強化等を行うことで、国内及びアジア市場での新エネルギー関連の案件受注を積み重ねるほか、中国拠点を活用したコスト競争力の強化も行ってまいります。
[電装エレクトロニクス]
自動車部品事業においてワイヤハーネスが好調に推移したことに加え、銅条・高機能材事業において品種構成の見直しにより収益性が改善したことや、巻線事業においても自動車関連製品が堅調であったことから、業績は好調に推移しました。
これらの結果、当セグメントの連結売上高は5,627億円(前期比5.4%増)、連結営業利益は197億円(前期比7.3%増)となりました。また、単独売上高は3,120億円(前期比2.2%増)となりました。
自動車部品事業では、主にグローバル車種向けのワイヤハーネス受注に対応するため、従来のメキシコに加えて東南アジア拠点(フィリピン・ベトナム)を活用する二地域での生産体制の整備を進めております。さらに、当社が優位性を持つアルミワイヤハーネスを含むワイヤハーネスのコスト競争力及び品質力を強化し、さらなる事業拡大に取り組んでおります。
また、当期においてインドのMinda Furukawa Electric Private Ltd.に対する当社グループ出資比率を75%まで高め、連結子会社としました。当社は同社を通じて、インド市場でのエアバック装着義務化に伴い当社が競争優位性を持つステアリング・ロール・コネクタの売上拡大を目指します。なお、同社は当社の連結子会社となったことに伴い社名をFurukawa Minda Electric Private Ltd.へ変更しました。
[機能製品]
銅箔事業では、昨年末までの旺盛な需要を取り込んだことに加え、品種構成の見直しにより業績が堅調に推移し、メモリーディスク事業においては、データセンター向けハードディスク用アルミ基板材の販売が昨年末にかけて好調に推移しましたが、第4四半期以降は、当セグメントの事業全体でエレクトロニクス市場での需要減少などにより損益への影響がありました。
これらの結果、当セグメントの連結売上高は1,493億円(前期比2.5%減)、連結営業利益は135億円(前期比3.5%減)となりました。また、単独売上高は647億円(前期比1.7%増)となりました。
AT・機能樹脂事業では、これまで半導体製造用に使用されてきたテープの新たな用途展開など新規市場開拓に積極的に取り組み、収益を確保する施策を実行してまいります。
サーマル・電子部品事業、メモリーディスク事業及び銅箔事業においても、データセンターを含むエレクトロニクス市場での足元の需要減少があるものの、顧客ニーズに沿った新製品の提案・開発を推進し本市場での成長に向けて引き続き取り組んでまいります。
[サービス・開発等]
物流、不動産の賃貸、水力発電、新製品研究開発、各種業務受託等による当社グループ各事業のサポート等を行っております。
当セグメントの連結売上高は476億円(前期比6.7%減)、連結営業利益は1億円(前期比1億円の改善)となりました。また、単独売上高は8億円(前期比2.0%増)となりました。
(2) キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、468億円(前連結会計年度比△29億円)となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、売上の増加や銅価上昇の影響により運転資本が悪化したものの、税金等調整前当期純利益+358億円、減価償却費+263億円等により+465億円(前連結会計年度比+80億円)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、主に中期経営計画の重点領域であるインフラ分野への投資を拡大したことに伴い、有形固定資産の取得による支出が△431億円と増加したことから、△310億円(前連結会計年度比+33億円)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、減価償却費を上回る設備投資等で借入金が増加したものの、配当金の支払い等により△194億円(前連結会計年度比△175億円)となりました。
(生産、受注及び販売の状況)
当社グループの生産・販売品目は、広範かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様ではなく、また受注生産形態をとらない製品も多く、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額または、数量で示すことはしておりません。
(財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析)
(1) 財政状態の分析
当連結会計年度末の資産の部は、合計が前連結会計年度末に比べ94億円増加して8,180億円となりました。流動資産は前連結会計年度末比43億円増加の4,205億円、固定資産は前連結会計年度末比51億円増加の3,975億円でした。投資有価証券が131億円減少しましたが、たな卸資産が91億円、有形固定資産が126億円増加しました。
流動資産から流動負債を差し引いた運転資本は、前連結会計年度末に比べ30億円増加して889億円となりました。
有形・無形固定資産は、資本的支出で500億円の増加、減価償却で263億円の減少のほか、除売却による減少等により変動しております。
負債の部では、合計が前連結会計年度末に比べ15億円増加し5,381億円となりました。長期借入金、短期借入金、社債を含む有利子負債が2,460億円と前連結会計年度末比で125億円の減少となったものの、支払手形及び買掛金で70億円、製品補償引当金で56億円、退職給付に係る負債で46億円増加しました。
純資産の部では、その他の包括利益累計額が128億円減少したものの、親会社株主に帰属する当期純利益の増加等により利益剰余金が236億円増加し、合計が前連結会計年度末比で78億円増加しました。その結果、自己資本比率は、前連結会計年度末比1.1ポイント上昇し30.3%となりました。
なお、「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正」(企業会計基準第28号 平成30年2月16日)等を当連結会計年度の期首から適用しており、財政状態の状況については、当該会計基準等を遡って適用した後の数値で前連結会計年度との比較を行っております。
キャッシュ・フローの概況については、「3[経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析](業績等の概要)(2)キャッシュ・フローの状況」に記載しております。
(2) 経営成績の分析
当連結会計年度の連結売上高は、前連結会計年度比2.5%増の9,916億円、連結営業利益は、前連結会計年度比8.8%減の408億円となりました。自動車部品事業においてワイヤハーネスの売上が好調に推移するとともに、銅条・高機能材事業や銅箔事業においても品種構成の最適化を進め収益性が大きく改善しました。一方、情報通信ソリューション事業では、当社主要顧客の投資抑制などにより北米における光ファイバ・ケーブルの需要回復が遅れたことから売上が伸び悩み、電力事業では、過年度に受注した低採算案件の売上が計上されたことや、将来に向けて戦略的に受注した新エネルギー関連案件に係る工事損失引当金を計上したことが利益の圧迫要因となりました。
営業外損益では、持分法による投資損益が26億円減少しました。この結果、連結経常利益は前連結会計年度比16.7%減の391億円となりました。
特別損益は、33億円の損失(純額)となりました。投資有価証券売却益など99億円を特別利益に、製品補償引当金繰入額や減損損失など132億円を特別損失として計上しました。
以上の結果、親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度比2.0%増の291億円となりました。
なお、セグメント別の概況は、「3[経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析](業績等の概要)(1)業績」に記載しております。
(3) 資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社グループでは、積極的な設備投資、研究開発の実施等により当面の資金需要は増加していく見込みです。
こうした資金需要に対し、営業活動を通じて獲得したキャッシュ・フローの他、金融機関からの借入、社債やコマーシャル・ペーパーの発行、資産の流動化等により資金を調達しております。また、日本、中国、及びタイにおいて、CMS(キャッシュ・マネジメント・システム)を導入し、効率的な資金活用に努めております。
なお、短期的な支払リスクに対するバックアップラインとして、金融機関でコミットメントライン等を設定し、手元流動性の確保にも努めております。
(4) 中期経営計画の進捗について
当社グループは、2016年度から2020年度までの5か年の中期経営計画「Furukawa G Plan 2020」のもと、経営活動を推進しております。
当連結会計年度における経営成績は下記の表のとおりとなり、2018年度のマイルストンとして掲げた連結営業利益目標を上回りました。主にデータセンター需要拡大に伴う機能製品セグメント、ワイヤハーネスの好調などによる自動車部品事業が、2016年度からの営業利益拡大に寄与しました。
2018年5月には、2020年度の経営数値目標を上方修正いたしましたが、足元は市場環境が不透明であり、情報通信ソリューション事業の成長スピードも後退しているなど、やや厳しい経営環境が続いております。引き続き注力事業・製品の強化及び低採算事業・製品の改革などを進めるとともに、生産性向上による原価改善など環境変化に対応できる経営体質強化を進めてまいります。
2020年度 (目標値) | 2018年度 (目標値) | 2018年度 実績 | 2017年度 実績 | 2016年度 実績 | |
連結営業利益 | 550億円以上 | 350億円以上 | 408億円 | 448億円 | 386億円 |
親会社株主に帰属する当期純利益 | 300億円以上 | - | 291億円 | 285億円 | 176億円 |
ROE | 10%以上 | - | 12.0% | 12.9% | 9.3% |