有価証券報告書-第198期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)
(業績等の概要)
(1) 業績
当期の世界経済は、米国においては、雇用環境の改善を背景に個人消費の拡大が堅調に推移したことで、全体として緩やかな経済成長が持続しましたが、長期化し激化する米中間の貿易摩擦並びに欧州や中東における政治的・地政学的な緊張等による影響により、中国及び欧州における経済成長に弱さが見られました。さらに本年1月以降、中国発の新型コロナウイルスの感染拡大が世界規模での経済活動の停滞を招き、世界全体で先行きの見えない不安定な経済環境となりました。
わが国の経済は、上半期は民間設備投資が底堅く推移しておりましたが、昨年9月の台風15号による風水害など大きな自然災害が相次いだことや10月の消費税増税の影響などから個人消費が冷え込んだことに続き、新型コロナウイルスの感染が世界的に拡大したことに伴い、景気は急激に悪化してまいりました。
このような環境の下、当社グループでは、中期経営計画「Furukawa G Plan 2020」に基づき、重点領域であるインフラ(情報通信、エネルギー)/自動車分野の強化に引き続き取り組んでまいりました。インフラ関連では、情報通信分野において、光ファイバ及び光ファイバ・ケーブル(以下あわせて「光ファイバ等」という)の需給バランスの悪化による価格下落が続くなか、高付加価値製品の拡販やグローバル最適地生産によるコスト競争力向上の取組みを進めました。エネルギー分野においては、引き続き国内の超高圧地中線、再生可能エネルギー分野の海底線及び地中線並びにアジアにおける海底線を注力分野としております。当期は、国内の超高圧地中線の需要を着実に取り込んだほか、アジアでの海底線案件等の受注実績を積み重ねました。また、今後さらなる需要拡大が予想される海底線の生産に対応するための設備増強等も計画どおり実行しており、重点領域と位置付けている当分野の強化を引き続き推進してまいります。自動車分野では、下期にかけて世界的な自動車生産台数の減少が影響し、ワイヤハーネスをはじめとする自動車部品の販売は低迷しましたが、中長期的な北米市場向けワイヤハーネスの販売拡大に向けて製造能力増強を目的とする設備投資を決定するなど、引き続きグローバルでの事業展開を進めてまいります。
また、昨年4月にグループ変革本部を設置し、当社グループ全体の収益力向上及び組織実行力強化のための施策に取り組んでおり、これらの成果も徐々に表れ始めております。
当期の業績につきましては、情報通信ソリューション事業では、需給バランスの悪化による光ファイバ等の価格下落に加え、米国子会社の光ファイバ・ケーブルの生産性改善に時間を要したこと、また主にエレクトロニクス関連市場の市況低迷による電装エレクトロニクス材料事業及び機能製品事業での売上の伸び悩み等があったことから、当社グループ全体の売上は減少いたしました。損益面では、エネルギーインフラ事業の損益が改善し黒字転換、また情報通信ソリューション事業を中心にコスト低減の取組みの成果はあったものの、市況低迷の影響が大きく、さらに本年1月以降は新型コロナウイルスの感染拡大による世界経済全体への影響もあり、減益となりました。
これらの結果、連結売上高は9,144億円(前期比7.8%減)、連結営業利益は236億円(前期比42.3%減)となりました。また、連結経常利益は228億円(前期比41.7%減)となりました。さらに投資有価証券売却益など149億円を特別利益に、投資有価証券評価損や火災損失など70億円を特別損失として計上した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は176億円(前期比39.4%減)となりました。なお、海外売上高は4,188億円(前期比11.0%減)で、海外売上高比率は45.8%(前期比1.6ポイント減)となりました。
単独の業績につきましては、売上高は4,407億円(前期比7.0%減)、営業利益は5億円(前期比89.7%減)、経常利益は120億円(前期比47.0%減)、当期純利益は182億円(前期比15.5%減)となりました。
セグメントの業績を示すと、次のとおりであります。
なお、当連結会計年度より、従来「電装エレクトロニクス」に含めていた一部事業について、開発を更に加速すべく管理所管の見直しを行い、報告セグメントの区分を「サービス・開発等」に変更しております。
これに伴い、前年同期比較の数値は、前連結会計年度の数値を変更後の区分方法及び配賦方法で組み替えた数値との比較となっております。
[インフラ]
情報通信ソリューション事業では、中国に端を発する光ファイバ等の世界的な需給バランスの悪化による価格下落及び米国子会社の光ファイバ・ケーブルの生産性改善に時間を要したこと等により、売上は減少いたしました。損益面においても、デジタルコヒーレント関連製品が増収となり利益に寄与し、またコスト低減の取組みの成果はあったものの、光ファイバ・ケーブルの市況悪化の影響が大きく、減益となりました。一方、エネルギーインフラ事業では、台風15号の被害を受けた千葉事業所内の電力ケーブル製造工場で一時操業停止を余儀なくされたものの、国内の超高圧地中線の更新需要の取り込み等により売上は増加し、前期の一過性の損失計上がなくなったことに加え、中国子会社の損益が改善したことにより、黒字転換いたしました。
これらの結果、当セグメントの連結売上高は2,809億円(前期比2.4%減)、連結営業利益は17億円(前期比77.0%減)となりました。また、単独売上高は942億円(前期比1.9%減)となりました。
情報通信ソリューション事業では、米国子会社における光ファイバ等の生産性改善及びコスト低減施策などを継続して実行し、抜本的なコスト競争力の強化に努め、強い事業基盤の構築を実現してまいります。また、光ファイバ等を製造する三重事業所においては、生産性の改善を目的にIoTを活用したスマート工場の実現等に取り組んでまいります。
エネルギーインフラ事業では、本年4月に営業を開始した昭和電線ホールディングス㈱と共同出資の建設・電販市場向け汎用線販売会社において、両グループの特長ある製品群の拡販及び物流の効率化に取り組んでまいります。
[電装エレクトロニクス]
自動車部品事業において、下期にかけて世界的に自動車生産台数が低迷したことによりワイヤハーネスの売上が落ち込んだことに加え、電装エレクトロニクス材料事業では、スマートフォン等の需要低迷及び米中貿易摩擦の長期化に伴う景気減速の影響により、エレクトロニクス関連市場の需要が伸び悩み、コネクタやリードフレーム用の伸銅品等の販売が低調に推移したほか、銅価下落の影響もあり売上は減少いたしました。損益面では、電動車用途の巻線の売上が好調に推移しましたが、自動車部品事業における売上の減少、同事業における将来に向けた研究開発費及び設備投資による償却費の増加が影響し減益となりました。
これらの結果、当セグメントの連結売上高は5,093億円(前期比9.3%減)、連結営業利益は148億円(前期比23.9%減)となりました。また、単独売上高は2,846億円(前期比8.4%減)となりました。
自動車部品事業では、自動車の軽量化に向けたアルミワイヤハーネスの生産拡大や、コスト・品質面の最適化のため、アジア地域での生産体制の整備・強化を引き続き推進してまいります。
また、当セグメントにおいては、中期経営計画の重点領域であるインフラ/自動車分野との事業シナジー等を総合的に勘案して、銅管事業の譲渡と巻線事業の再編を決定いたしました。銅管事業(当社子会社の奥村金属㈱及びFurukawa Metal (Thailand) Public Co., Ltd.の当社保有株式全部を含む)を、日本産業パートナーズ㈱傘下の特別目的会社へ譲渡することを決定しております。また、世界最大の巻線メーカーであるSuperior Essex Inc.と合弁会社を設立し、主に電動車用途の巻線の供給体制を整備し、グローバルでの拡販を進めるために、当社グループの巻線事業の一部を同社の巻線事業と統合することも決定いたしました。
[機能製品]
AT・機能樹脂事業において、地中埋設用のケーブル管路材の一部の売上は好調に推移したものの、サーマル・電子部品事業、メモリーディスク事業及び銅箔事業では、データセンタ及びスマートフォン向け製品をはじめとするエレクトロニクス関連市場の需要が低迷したことや、昨年6月に台湾の銅箔事業子会社において火災が発生し工場の一部が焼失した影響などから、当セグメントの事業全体で売上及び利益が減少いたしました。
これらの結果、当セグメントの連結売上高は1,159億円(前期比22.4%減)、連結営業利益は75億円(前期比44.8%減)となりました。また、単独売上高は596億円(前期比7.9%減)となりました。
上述の台湾子会社における火災では、近隣の皆様、関係当局の皆様、お客様をはじめ多くの方々に多大なご迷惑をおかけしましたが、お客様からの強いご要望に応えるべく工場の復旧を進めております。同社では、今後、需要拡大が想定される高機能回路箔など高付加価値製品の製造・販売の強化に努めてまいります。
[サービス・開発等]
物流、不動産の賃貸、水力発電、新製品研究開発、各種業務受託等による当社グループ各事業のサポート等を行っております。
当セグメントの連結売上高は503億円(前期比3.6%増)、連結営業損失は3億円(前期比6億円の悪化)となりました。また、単独売上高は22億円(前期比12.7%増)となりました。
(2) キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、551億円(前連結会計年度比+82億円)となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、製品補償引当金の増減額△107億円等があったものの、税金等調整前当期純利益+308億円、減価償却費+294億円等により+419億円(前連結会計年度比△45億円)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、主に電装エレクトロニクス分野への投資を拡大したことに伴い、有形固定資産の取得による支出△473億円、投資有価証券の売却及び償還による収入+109億円等により、△331億円(前連結会計年度比△21億円)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、コマーシャル・ペーパーの純増減額+150億円等があったものの、配当金の支払い、有利子負債の返済等により△2億円(前連結会計年度比+192億円)となりました。
(生産、受注及び販売の状況)
当社グループの生産・販売品目は、広範かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様ではなく、また受注生産形態をとらない製品も多く、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額または、数量で示すことはしておりません。
(財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析)
(1) 財政状態の分析
当連結会計年度末の資産の部は、合計が前連結会計年度末に比べ234億円減少して7,946億円となりました。流動資産は前連結会計年度末比343億円減少の3,862億円、固定資産は前連結会計年度末比109億円増加の4,084億円でした。有形固定資産が249億円増加しましたが、受取手形及び売掛金が268億円、投資有価証券が183億円、たな卸資産が70億円減少しました。
流動資産から流動負債を差し引いた運転資本は、前連結会計年度末に比べ224億円減少して665億円となりました。
有形・無形固定資産は、資本的支出で531億円の増加、減価償却で294億円の減少のほか、除売却による減少等により変動しております。
負債の部では、合計が前連結会計年度末に比べ165億円減少し5,216億円となりました。借入金、社債、コマーシャル・ペーパーの残高が2,511億円と前連結会計年度末比で51億円増加し、退職給付に係る負債が57億円増加しましたが、支払手形及び買掛金が198億円、製品補償引当金が107億円減少しました。
純資産の部では、親会社株主に帰属する当期純利益の増加等により利益剰余金が134億円増加したものの、その他の包括利益累計額が210億円減少し、合計が前連結会計年度末比で69億円減少しました。その結果、自己資本比率は、前連結会計年度末比0.1ポイント低下し30.2%となりました。
キャッシュ・フローの概況については、「3[経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析](業績等の概要)(2)キャッシュ・フローの状況」に記載しております。
(2) 経営成績の分析
当連結会計年度の連結売上高は、前連結会計年度比7.8%減の9,144億円、連結営業利益は、前連結会計年度比42.3%減の236億円となりました。エネルギーインフラ事業において国内及び海外での電力事業が黒字化した一方、情報通信ソリューション事業は光ファイバ等の世界的需給バランスの悪化による価格下落や、北米光ファイバ・ケーブルの生産性改善遅れにより減益、また電装エレクトロニクス事業や機能製品事業においても、データセンタ及びスマートフォン向け製品を始めとするエレクトロニクス関連市場の需要低迷の影響を受けて減益となりました。
営業外損益では、受取配当金が7億円減少しました。この結果、連結経常利益は前連結会計年度比41.7%減の228億円となりました。
特別損益は、80億円の利益(純額)となりました。投資有価証券売却益など149億円を特別利益に、投資有価証券評価損や事業構造改革費用など70億円を特別損失として計上いたしました。
以上の結果、親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度比39.4%減の176億円となりました。
なお、セグメント別の概況は、「3[経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析](業績等の概要)(1)業績」に記載しております。
(3) 資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社グループでは、積極的な設備投資、研究開発の実施等により当面の資金需要は増加していく見込みです。
こうした資金需要に対し、営業活動を通じて獲得したキャッシュ・フローの他、金融機関からの借入、社債やコマーシャル・ペーパーの発行、資産の流動化等により資金を調達しております。また、日本、中国、及びタイにおいて、CMS(キャッシュ・マネジメント・システム)を導入し、効率的な資金活用に努めております。
なお、短期的な支払リスクに対するバックアップラインとして、金融機関でコミットメントライン等を設定し、手元流動性の確保にも努めております。
(中期経営計画の進捗について)
当社グループは、2016年度から2020年度までの5か年の中期経営計画「Furukawa G Plan 2020」のもと、経営活動を推進しております。
当連結会計年度における経営成績は下記の表のとおりであり、主に2018年度下期以降の情報通信ソリューション事業の落ち込みにより、2020年度の経営数値目標との差異が拡大する結果となりました。
最終年度となる2020年度は、全社的に新型コロナウイルスの感染拡大による影響を受ける見通しであり、業績予想については現在精査中となりますが、引き続き注力事業・製品の強化及び低採算事業・製品の改革などを進めるとともに、生産性向上による原価改善など環境変化に対応できる経営体質強化を進めてまいります。また、新型コロナウイルス収束後を見据えた事業展開、研究開発を進めるとともに、「古河電工グループ ビジョン2030」の達成に向け、ESG経営を推進してまいります。
(重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定)
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されております。連結財務諸表の作成にあたり、当連結会計年度末時点の状況をもとに行った見積りと当該見積りに用いた仮定のうち、連結財務諸表に与える影響が大きいと考えられる項目は以下のとおりであります。
(1) 製品補償引当金
製品の品質に関する補償費用の支出に備えるため、今後必要と見込まれる金額を計上しております。特に、自動車の市場回収措置(リコール)に関する引当金は、過去に当社連結子会社が製造した部品を組み込んだ自動車の不具合に対して客先が修理対応を行った場合に、当社グループが負担することが合理的に見込まれる金額に基づき計上しております。この金額は、以下の要素をそれぞれ乗じることにより算定されます。
① 対象となる車両台数
② 1台あたりの修理単価
③ 市場回収措置(リコール)の予想措置率
④ 修理費用についての客先の負担率
②及び③については過去の市場回収措置(リコール)実施実績等から、④については客先との交渉状況からそれぞれ見積を行っておりますが、それらの見積りには不確実性が含まれており、状況変化に伴い結果として引当金の追加計上もしくは戻入が必要となる可能性があります。
(2) 固定資産の減損
当社は事業部門制を採用しており、事業部門が投資の意思決定を行う際の単位となることから、固定資産の減損に係る回収可能性の評価にあたり、主に事業部門をもとにグルーピングを決定しております。営業損益が継続してマイナスであるなどの減損の兆候が見られた資産もしくは資産グループについて、割引前の将来キャッシュ・フローの見積り額が帳簿価額を下回っているなどの要因により減損損失を認識すべきと判断された場合、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。回収可能価額は正味売却価額と使用価値のいずれか高い方の金額を採用しており、正味売却価額は主に鑑定評価額により算定し、使用価値は将来キャッシュ・フローの現在価値に基づいて算定しております。なお、連結子会社についても同様の方針で検討しております。
将来キャッシュ・フロー及び回収可能価額の見積りは、将来の事業計画や処分価値算定における前提条件に基づいて行っているため、将来の当該資産もしくは資産グループを取り巻く状況変化に伴い、減損損失の追加計上が必要となる可能性があります。
(3) 繰延税金資産
「第5[経理の状況] 1[連結財務諸表等] (1)連結財務諸表 [注記事項](追加情報)3.会計上の見積り<新型コロナウイルス感染症の影響の考え方>」をご参照ください。
(1) 業績
当期の世界経済は、米国においては、雇用環境の改善を背景に個人消費の拡大が堅調に推移したことで、全体として緩やかな経済成長が持続しましたが、長期化し激化する米中間の貿易摩擦並びに欧州や中東における政治的・地政学的な緊張等による影響により、中国及び欧州における経済成長に弱さが見られました。さらに本年1月以降、中国発の新型コロナウイルスの感染拡大が世界規模での経済活動の停滞を招き、世界全体で先行きの見えない不安定な経済環境となりました。
わが国の経済は、上半期は民間設備投資が底堅く推移しておりましたが、昨年9月の台風15号による風水害など大きな自然災害が相次いだことや10月の消費税増税の影響などから個人消費が冷え込んだことに続き、新型コロナウイルスの感染が世界的に拡大したことに伴い、景気は急激に悪化してまいりました。
このような環境の下、当社グループでは、中期経営計画「Furukawa G Plan 2020」に基づき、重点領域であるインフラ(情報通信、エネルギー)/自動車分野の強化に引き続き取り組んでまいりました。インフラ関連では、情報通信分野において、光ファイバ及び光ファイバ・ケーブル(以下あわせて「光ファイバ等」という)の需給バランスの悪化による価格下落が続くなか、高付加価値製品の拡販やグローバル最適地生産によるコスト競争力向上の取組みを進めました。エネルギー分野においては、引き続き国内の超高圧地中線、再生可能エネルギー分野の海底線及び地中線並びにアジアにおける海底線を注力分野としております。当期は、国内の超高圧地中線の需要を着実に取り込んだほか、アジアでの海底線案件等の受注実績を積み重ねました。また、今後さらなる需要拡大が予想される海底線の生産に対応するための設備増強等も計画どおり実行しており、重点領域と位置付けている当分野の強化を引き続き推進してまいります。自動車分野では、下期にかけて世界的な自動車生産台数の減少が影響し、ワイヤハーネスをはじめとする自動車部品の販売は低迷しましたが、中長期的な北米市場向けワイヤハーネスの販売拡大に向けて製造能力増強を目的とする設備投資を決定するなど、引き続きグローバルでの事業展開を進めてまいります。
また、昨年4月にグループ変革本部を設置し、当社グループ全体の収益力向上及び組織実行力強化のための施策に取り組んでおり、これらの成果も徐々に表れ始めております。
当期の業績につきましては、情報通信ソリューション事業では、需給バランスの悪化による光ファイバ等の価格下落に加え、米国子会社の光ファイバ・ケーブルの生産性改善に時間を要したこと、また主にエレクトロニクス関連市場の市況低迷による電装エレクトロニクス材料事業及び機能製品事業での売上の伸び悩み等があったことから、当社グループ全体の売上は減少いたしました。損益面では、エネルギーインフラ事業の損益が改善し黒字転換、また情報通信ソリューション事業を中心にコスト低減の取組みの成果はあったものの、市況低迷の影響が大きく、さらに本年1月以降は新型コロナウイルスの感染拡大による世界経済全体への影響もあり、減益となりました。
これらの結果、連結売上高は9,144億円(前期比7.8%減)、連結営業利益は236億円(前期比42.3%減)となりました。また、連結経常利益は228億円(前期比41.7%減)となりました。さらに投資有価証券売却益など149億円を特別利益に、投資有価証券評価損や火災損失など70億円を特別損失として計上した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は176億円(前期比39.4%減)となりました。なお、海外売上高は4,188億円(前期比11.0%減)で、海外売上高比率は45.8%(前期比1.6ポイント減)となりました。
単独の業績につきましては、売上高は4,407億円(前期比7.0%減)、営業利益は5億円(前期比89.7%減)、経常利益は120億円(前期比47.0%減)、当期純利益は182億円(前期比15.5%減)となりました。
セグメントの業績を示すと、次のとおりであります。
なお、当連結会計年度より、従来「電装エレクトロニクス」に含めていた一部事業について、開発を更に加速すべく管理所管の見直しを行い、報告セグメントの区分を「サービス・開発等」に変更しております。
これに伴い、前年同期比較の数値は、前連結会計年度の数値を変更後の区分方法及び配賦方法で組み替えた数値との比較となっております。
[インフラ]
情報通信ソリューション事業では、中国に端を発する光ファイバ等の世界的な需給バランスの悪化による価格下落及び米国子会社の光ファイバ・ケーブルの生産性改善に時間を要したこと等により、売上は減少いたしました。損益面においても、デジタルコヒーレント関連製品が増収となり利益に寄与し、またコスト低減の取組みの成果はあったものの、光ファイバ・ケーブルの市況悪化の影響が大きく、減益となりました。一方、エネルギーインフラ事業では、台風15号の被害を受けた千葉事業所内の電力ケーブル製造工場で一時操業停止を余儀なくされたものの、国内の超高圧地中線の更新需要の取り込み等により売上は増加し、前期の一過性の損失計上がなくなったことに加え、中国子会社の損益が改善したことにより、黒字転換いたしました。
これらの結果、当セグメントの連結売上高は2,809億円(前期比2.4%減)、連結営業利益は17億円(前期比77.0%減)となりました。また、単独売上高は942億円(前期比1.9%減)となりました。
情報通信ソリューション事業では、米国子会社における光ファイバ等の生産性改善及びコスト低減施策などを継続して実行し、抜本的なコスト競争力の強化に努め、強い事業基盤の構築を実現してまいります。また、光ファイバ等を製造する三重事業所においては、生産性の改善を目的にIoTを活用したスマート工場の実現等に取り組んでまいります。
エネルギーインフラ事業では、本年4月に営業を開始した昭和電線ホールディングス㈱と共同出資の建設・電販市場向け汎用線販売会社において、両グループの特長ある製品群の拡販及び物流の効率化に取り組んでまいります。
[電装エレクトロニクス]
自動車部品事業において、下期にかけて世界的に自動車生産台数が低迷したことによりワイヤハーネスの売上が落ち込んだことに加え、電装エレクトロニクス材料事業では、スマートフォン等の需要低迷及び米中貿易摩擦の長期化に伴う景気減速の影響により、エレクトロニクス関連市場の需要が伸び悩み、コネクタやリードフレーム用の伸銅品等の販売が低調に推移したほか、銅価下落の影響もあり売上は減少いたしました。損益面では、電動車用途の巻線の売上が好調に推移しましたが、自動車部品事業における売上の減少、同事業における将来に向けた研究開発費及び設備投資による償却費の増加が影響し減益となりました。
これらの結果、当セグメントの連結売上高は5,093億円(前期比9.3%減)、連結営業利益は148億円(前期比23.9%減)となりました。また、単独売上高は2,846億円(前期比8.4%減)となりました。
自動車部品事業では、自動車の軽量化に向けたアルミワイヤハーネスの生産拡大や、コスト・品質面の最適化のため、アジア地域での生産体制の整備・強化を引き続き推進してまいります。
また、当セグメントにおいては、中期経営計画の重点領域であるインフラ/自動車分野との事業シナジー等を総合的に勘案して、銅管事業の譲渡と巻線事業の再編を決定いたしました。銅管事業(当社子会社の奥村金属㈱及びFurukawa Metal (Thailand) Public Co., Ltd.の当社保有株式全部を含む)を、日本産業パートナーズ㈱傘下の特別目的会社へ譲渡することを決定しております。また、世界最大の巻線メーカーであるSuperior Essex Inc.と合弁会社を設立し、主に電動車用途の巻線の供給体制を整備し、グローバルでの拡販を進めるために、当社グループの巻線事業の一部を同社の巻線事業と統合することも決定いたしました。
[機能製品]
AT・機能樹脂事業において、地中埋設用のケーブル管路材の一部の売上は好調に推移したものの、サーマル・電子部品事業、メモリーディスク事業及び銅箔事業では、データセンタ及びスマートフォン向け製品をはじめとするエレクトロニクス関連市場の需要が低迷したことや、昨年6月に台湾の銅箔事業子会社において火災が発生し工場の一部が焼失した影響などから、当セグメントの事業全体で売上及び利益が減少いたしました。
これらの結果、当セグメントの連結売上高は1,159億円(前期比22.4%減)、連結営業利益は75億円(前期比44.8%減)となりました。また、単独売上高は596億円(前期比7.9%減)となりました。
上述の台湾子会社における火災では、近隣の皆様、関係当局の皆様、お客様をはじめ多くの方々に多大なご迷惑をおかけしましたが、お客様からの強いご要望に応えるべく工場の復旧を進めております。同社では、今後、需要拡大が想定される高機能回路箔など高付加価値製品の製造・販売の強化に努めてまいります。
[サービス・開発等]
物流、不動産の賃貸、水力発電、新製品研究開発、各種業務受託等による当社グループ各事業のサポート等を行っております。
当セグメントの連結売上高は503億円(前期比3.6%増)、連結営業損失は3億円(前期比6億円の悪化)となりました。また、単独売上高は22億円(前期比12.7%増)となりました。
(2) キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、551億円(前連結会計年度比+82億円)となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、製品補償引当金の増減額△107億円等があったものの、税金等調整前当期純利益+308億円、減価償却費+294億円等により+419億円(前連結会計年度比△45億円)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、主に電装エレクトロニクス分野への投資を拡大したことに伴い、有形固定資産の取得による支出△473億円、投資有価証券の売却及び償還による収入+109億円等により、△331億円(前連結会計年度比△21億円)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、コマーシャル・ペーパーの純増減額+150億円等があったものの、配当金の支払い、有利子負債の返済等により△2億円(前連結会計年度比+192億円)となりました。
(生産、受注及び販売の状況)
当社グループの生産・販売品目は、広範かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様ではなく、また受注生産形態をとらない製品も多く、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額または、数量で示すことはしておりません。
(財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析)
(1) 財政状態の分析
当連結会計年度末の資産の部は、合計が前連結会計年度末に比べ234億円減少して7,946億円となりました。流動資産は前連結会計年度末比343億円減少の3,862億円、固定資産は前連結会計年度末比109億円増加の4,084億円でした。有形固定資産が249億円増加しましたが、受取手形及び売掛金が268億円、投資有価証券が183億円、たな卸資産が70億円減少しました。
流動資産から流動負債を差し引いた運転資本は、前連結会計年度末に比べ224億円減少して665億円となりました。
有形・無形固定資産は、資本的支出で531億円の増加、減価償却で294億円の減少のほか、除売却による減少等により変動しております。
負債の部では、合計が前連結会計年度末に比べ165億円減少し5,216億円となりました。借入金、社債、コマーシャル・ペーパーの残高が2,511億円と前連結会計年度末比で51億円増加し、退職給付に係る負債が57億円増加しましたが、支払手形及び買掛金が198億円、製品補償引当金が107億円減少しました。
純資産の部では、親会社株主に帰属する当期純利益の増加等により利益剰余金が134億円増加したものの、その他の包括利益累計額が210億円減少し、合計が前連結会計年度末比で69億円減少しました。その結果、自己資本比率は、前連結会計年度末比0.1ポイント低下し30.2%となりました。
キャッシュ・フローの概況については、「3[経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析](業績等の概要)(2)キャッシュ・フローの状況」に記載しております。
(2) 経営成績の分析
当連結会計年度の連結売上高は、前連結会計年度比7.8%減の9,144億円、連結営業利益は、前連結会計年度比42.3%減の236億円となりました。エネルギーインフラ事業において国内及び海外での電力事業が黒字化した一方、情報通信ソリューション事業は光ファイバ等の世界的需給バランスの悪化による価格下落や、北米光ファイバ・ケーブルの生産性改善遅れにより減益、また電装エレクトロニクス事業や機能製品事業においても、データセンタ及びスマートフォン向け製品を始めとするエレクトロニクス関連市場の需要低迷の影響を受けて減益となりました。
営業外損益では、受取配当金が7億円減少しました。この結果、連結経常利益は前連結会計年度比41.7%減の228億円となりました。
特別損益は、80億円の利益(純額)となりました。投資有価証券売却益など149億円を特別利益に、投資有価証券評価損や事業構造改革費用など70億円を特別損失として計上いたしました。
以上の結果、親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度比39.4%減の176億円となりました。
なお、セグメント別の概況は、「3[経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析](業績等の概要)(1)業績」に記載しております。
(3) 資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社グループでは、積極的な設備投資、研究開発の実施等により当面の資金需要は増加していく見込みです。
こうした資金需要に対し、営業活動を通じて獲得したキャッシュ・フローの他、金融機関からの借入、社債やコマーシャル・ペーパーの発行、資産の流動化等により資金を調達しております。また、日本、中国、及びタイにおいて、CMS(キャッシュ・マネジメント・システム)を導入し、効率的な資金活用に努めております。
なお、短期的な支払リスクに対するバックアップラインとして、金融機関でコミットメントライン等を設定し、手元流動性の確保にも努めております。
(中期経営計画の進捗について)
当社グループは、2016年度から2020年度までの5か年の中期経営計画「Furukawa G Plan 2020」のもと、経営活動を推進しております。
当連結会計年度における経営成績は下記の表のとおりであり、主に2018年度下期以降の情報通信ソリューション事業の落ち込みにより、2020年度の経営数値目標との差異が拡大する結果となりました。
最終年度となる2020年度は、全社的に新型コロナウイルスの感染拡大による影響を受ける見通しであり、業績予想については現在精査中となりますが、引き続き注力事業・製品の強化及び低採算事業・製品の改革などを進めるとともに、生産性向上による原価改善など環境変化に対応できる経営体質強化を進めてまいります。また、新型コロナウイルス収束後を見据えた事業展開、研究開発を進めるとともに、「古河電工グループ ビジョン2030」の達成に向け、ESG経営を推進してまいります。
2020年度 (目標値) | 2019年度 実績 | 2018年度 実績 | 2017年度 実績 | 2016年度 実績 | |
連結営業利益 | 550億円以上 | 236億円 | 408億円 | 448億円 | 386億円 |
親会社株主に帰属する当期純利益 | 300億円以上 | 176億円 | 291億円 | 285億円 | 176億円 |
ROE | 10%以上 | 7.3% | 12.0% | 12.9% | 9.3% |
(重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定)
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されております。連結財務諸表の作成にあたり、当連結会計年度末時点の状況をもとに行った見積りと当該見積りに用いた仮定のうち、連結財務諸表に与える影響が大きいと考えられる項目は以下のとおりであります。
(1) 製品補償引当金
製品の品質に関する補償費用の支出に備えるため、今後必要と見込まれる金額を計上しております。特に、自動車の市場回収措置(リコール)に関する引当金は、過去に当社連結子会社が製造した部品を組み込んだ自動車の不具合に対して客先が修理対応を行った場合に、当社グループが負担することが合理的に見込まれる金額に基づき計上しております。この金額は、以下の要素をそれぞれ乗じることにより算定されます。
① 対象となる車両台数
② 1台あたりの修理単価
③ 市場回収措置(リコール)の予想措置率
④ 修理費用についての客先の負担率
②及び③については過去の市場回収措置(リコール)実施実績等から、④については客先との交渉状況からそれぞれ見積を行っておりますが、それらの見積りには不確実性が含まれており、状況変化に伴い結果として引当金の追加計上もしくは戻入が必要となる可能性があります。
(2) 固定資産の減損
当社は事業部門制を採用しており、事業部門が投資の意思決定を行う際の単位となることから、固定資産の減損に係る回収可能性の評価にあたり、主に事業部門をもとにグルーピングを決定しております。営業損益が継続してマイナスであるなどの減損の兆候が見られた資産もしくは資産グループについて、割引前の将来キャッシュ・フローの見積り額が帳簿価額を下回っているなどの要因により減損損失を認識すべきと判断された場合、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。回収可能価額は正味売却価額と使用価値のいずれか高い方の金額を採用しており、正味売却価額は主に鑑定評価額により算定し、使用価値は将来キャッシュ・フローの現在価値に基づいて算定しております。なお、連結子会社についても同様の方針で検討しております。
将来キャッシュ・フロー及び回収可能価額の見積りは、将来の事業計画や処分価値算定における前提条件に基づいて行っているため、将来の当該資産もしくは資産グループを取り巻く状況変化に伴い、減損損失の追加計上が必要となる可能性があります。
(3) 繰延税金資産
「第5[経理の状況] 1[連結財務諸表等] (1)連結財務諸表 [注記事項](追加情報)3.会計上の見積り<新型コロナウイルス感染症の影響の考え方>」をご参照ください。