有価証券報告書-第199期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)

【提出】
2021/06/24 14:07
【資料】
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【項目】
160項目
(業績等の概要)
(1) 業績
当期の世界経済は、新型コロナウイルス感染症(以下、「新型コロナ」という)の世界的流行が各地に大きな影響を与え、経済環境は急速に悪化しました。米国では、政府による新型コロナ感染拡大への大規模な対策が景気を下支えしているものの、景気回復のペースは緩やかなものとなりました。欧州では、英国をはじめ各国で実施した外出規制の措置が個人の消費行動や企業の生産活動を大きく制限し経済活動は大幅に縮小しました。中国では、一旦経済規模が大きく縮小したものの、その後は回復基調で推移しましたが、欧米諸国をはじめとする各国との政治的緊張の高まりもあり不透明な経済環境が続きました。
わが国でも、新型コロナ感染拡大により緊急事態宣言が発出され、経済活動は大きな影響を受けました。下期にかけて、新型コロナの感染拡大傾向は落ち着いたものの、本年1月に新型コロナ感染者数が大幅に増加に転じたことで景気の先行き不透明感が強まりました。
しかし、新型コロナ感染拡大を契機に、社会全体でのデジタル化の加速やESG経営*/SDGs*への関心の高まり、グローバルでのサプライチェーン見直しの進展など新型コロナ収束後の世界を見据えた環境変化がありました。
*ESG経営…Environment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス)に配慮した経営手法
*SDGs…国連で採択されたSustainable Development Goals(持続可能な開発目標)の略称であり、17のゴール・169のターゲットで構成される国際目標
このような環境の下、当社グループでは、中期経営計画「Furukawa G Plan 2020」に基づく施策の推進に加え、新型コロナの影響を最小限に留めるべく緊急経営対策チームを設置し、様々な対策を講じてまいりました。新型コロナの流行が各事業分野に与える影響の調査と複数の回復シナリオの策定を行い、収益悪化予想を踏まえた棚卸資産の管理徹底や原価低減及び経費の抑制、設備投資計画の見直しによる営業キャッシュ・フローの改善等に努めました。また、新型コロナ感染防止と勤務に関するガイドラインを策定し、リモートワークの促進や職場での感染対策を徹底するなど従業員及びその家族の安全を確保する勤務体制を構築したほか、本年予定している新本社への移転に向けて新型コロナ収束後の新たな働き方を見据えた新本社のレイアウト見直し等に取り組んでまいりました。
当期の業績につきましては、情報通信ソリューション事業をはじめ当社事業全般で新型コロナの影響による売上の伸び悩みや、銅管事業の譲渡及び巻線事業の一部の再編を実施し、これらの事業が当社グループの連結対象から外れたことにより、グループ全体の売上は減少しました。損益面では、緊急経営対策チームを中心に対応した原価低減及び経費抑制等の取組みの成果はあったものの、新型コロナの影響によるグローバルでの経済活動の停滞が大きく影響し、減益となりました。
これらの結果、連結売上高は8,116億円(前期比11.2%減)、連結営業利益は84億円(前期比64.2%減)となりました。また、連結経常利益は52億円(前期比77.2%減)となりました。さらに固定資産処分益など334億円を特別利益に、製品補償引当金繰入額など173億円を特別損失として計上した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は100億円(前期比43.3%減)となりました。なお、海外売上高は3,764億円(前期比10.1%減)で、海外売上高比率は46.4%(前期比0.6ポイント増)となりました。
単独の業績につきましては、売上高は3,926億円(前期比10.9%減)、営業損失は69億円(前期比75億円悪化)、経常利益は56億円(前期比53.4%減)、当期純利益は243億円(前期比33.9%増)となりました。
セグメントの業績を示すと、次のとおりであります。
[インフラ]
情報通信ソリューション事業では、北米の光ファイバ等の需要は引き続き堅調であったものの、依然として厳しい競争環境が継続しました。新型コロナの影響による国内工事着工の抑制や顧客の投資抑制によるネットワーク関連製品や産業用レーザ等の売上減少に加え、主に南米での為替の影響もあり、減収減益となりました。エネルギーインフラ事業では、国内の再生可能エネルギー関連並びに国内外の地中線案件の売上及び利益は好調に推移しました。しかし、新型コロナの影響により建設・電販市場向け汎用線は国内の市場環境が厳しく、また中国の子会社では外出規制等による建設工事着工の遅延や物流の停滞が発生したことから、減収減益となりました。
これらの結果、当セグメントの連結売上高は2,592億円(前期比7.7%減)、連結営業損失は21億円(前期比38億円悪化)となりました。また、単独売上高は883億円(前期比6.3%減)となりました。
情報通信ソリューション事業では、北米の堅調な光ファイバ等の需要を着実に取り込めるよう生産性改善に努めていくとともに、北米においてさらに拡大が予想される光ファイバ・ケーブル市場で省スペース・高施工性製品の需要が高まっており、当社に技術的優位性がある多心高密度ローラブルリボンケーブルの拡販を目指してまいります。また、デジタルコヒーレント関連製品に関しても、高出力品の拡販及び次世代製品への転換促進に取り組んでまいります。エネルギーインフラ事業では、利益確保を重視した受注活動の推進や人材確保を含めた製造・工事施工能力の向上等に取り組み、引き続き需要の拡大が予想される国内の再生可能エネルギー分野をはじめとする当社の注力市場での受注拡大に努めてまいります。
[電装エレクトロニクス]
自動車部品事業では、上期において海外子会社の一時操業停止や再開後の稼働率低迷など新型コロナの影響を大きく受けたことで減収減益となりました。しかし、下期以降、自動車市況の回復によりワイヤハーネスをはじめ当事業全般で想定以上の水準で収益が回復しました。
電装エレクトロニクス材料事業では、上期において新型コロナの影響により自動車関連、建設・電販関連向けの製品の売上が落ち込みましたが、下期以降、車載及びエレクトロニクス関連の製品を中心に需要は回復しました。しかし、上期までの売上の落ち込みの影響が大きかったことのほか、銅管事業の譲渡及び巻線事業の一部の再編を実施したことによりこれらの事業が当社グループの連結対象から外れたことも影響し、減収減益となりました。
これらの結果、当セグメントの連結売上高は4,330億円(前期比15.0%減)、連結営業利益は59億円(前期比60.5%減)となりました。また、単独売上高は2,421億円(前期比14.9%減)となりました。
自動車部品事業では、自動車の軽量化に貢献するアルミワイヤハーネス及び防食端子の受注拡大及び生産体制の構築に引き続き取り組み、また、主力製品のステアリング・ロール・コネクタに関して、エアバッグ法規制の強化により市場拡大が見込まれる地域の需要取り込みや次世代自動車を想定した新製品の開発を推進してまいります。電装エレクトロニクス材料事業では、当社の材料開発の強みを生かした市場開拓を行い、高付加価値製品の拡販を強化してまいります。
[機能製品]
サーマル・電子部品事業及びメモリーディスク事業は、データセンター関連製品の需要が好調に推移しました。AT・機能樹脂事業では新型コロナの影響により国内建設工事の着工が抑制されたことで機能樹脂製品の需要が減少し、銅箔事業では2019年に台湾子会社で発生した火災からの復旧途上であることや、上期に車載向け電池用銅箔の需要が低迷したことで、当セグメントの事業全体で減収減益となりました。
これらの結果、当セグメントの連結売上高は1,147億円(前期比1.0%減)、連結営業利益は63億円(前期比15.7%減)となりました。また、単独売上高は601億円(前期比0.8%増)となりました。
AT・機能樹脂事業では、半導体製造用テープの新用途の提案に取り組み、新規市場開拓を推進してまいります。また、銅箔事業では、回路用銅箔と電池用銅箔の最適な製品ミックスにより収益向上に努めてまいります。
[サービス・開発等]
物流、不動産の賃貸、水力発電、新製品の研究開発、各種業務受託等による当社グループ各事業のサポート等を行っております。
当セグメントの連結売上高は387億円(前期比23.1%減)、連結営業損失は17億円(前期比14億円悪化)となりました。また、単独売上高は21億円(前期比5.7%減)となりました。
また、本年4月に、当社子会社である古河物流㈱の株式の一部を、SBSホールディングス㈱へ譲渡することを決定しております。
(2) キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、872億円(前連結会計年度比+321億円)となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益+213億円、固定資産処分損益△208億円等により△5億円(前連結会計年度比△424億円)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出△334億円、投資有価証券の売却及び償還による収入+148億円、固定資産の売却による収入+224億円等により、△19億円(前連結会計年度比+312億円)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金の増加等により+351億円(前連結会計年度比+353億円)となりました。
(生産、受注及び販売の状況)
当社グループの生産・販売品目は、広範かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様ではなく、また受注生産形態をとらない製品も多く、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額または、数量で示すことはしておりません。
(財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析)
(1) 財政状態の分析
当連結会計年度末の資産の部は、合計が前連結会計年度末に比べ374億円増加して8,320億円となりました。流動資産は前連結会計年度末比436億円増加の4,298億円、固定資産は前連結会計年度末比62億円減少の4,022億円でした。現金及び預金が300億円、たな卸資産が50億円、無形固定資産が42億円増加しましたが、繰延税金資産が78億円減少しました。流動資産から流動負債を差し引いた運転資本は、前連結会計年度末に比べ481億円増加して1,146億円となりました。
有形・無形固定資産は、資本的支出で400億円の増加、減価償却で322億円の減少のほか、除売却による減少等により変動しております。
負債の部では、合計が前連結会計年度末に比べ188億円増加して5,404億円となりました。借入金、社債、コマーシャル・ペーパーを含む有利子負債が2,906億円と前連結会計年度末比で395億円増加しましたが、製品補償引当金が137億円減少しました。
純資産の部では、合計が前連結会計年度末に比べ186億円増加して2,916億円となりました。親会社株主に帰属する当期純利益の増加等により利益剰余金が34億円増加し、その他の包括利益累計額が159億円増加しました。その結果、自己資本比率は、前連結会計年度末比1.0ポイント上昇し31.2%となりました。
キャッシュ・フローの概況については、「3[経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析](業績等の概要)(2)キャッシュ・フローの状況」に記載しております。
(2) 経営成績の分析
当連結会計年度の連結売上高は、前連結会計年度比11.2%減の8,116億円、連結営業利益は、前連結会計年度比64.2%減の84億円となりました。情報通信ソリューション事業は、北米での光ファイバ等の需要は堅調であったものの、新型コロナウイルスの影響による顧客の設備投資抑制や南米での為替影響により減益、エネルギーインフラ事業は、国内の再生エネルギー関連や国内外の地中線案件は好調であったものの、新型コロナウイルスの影響による国内建設・電販市場向け等の製品の減収、中国子会社での顧客工事計画延期等に伴う売上繰延べ等により減益、また電装エレクトロニクス事業や機能製品事業は、データセンタ関連製品の需要が好調だったものの、新型コロナウイルスの影響による海外子会社の一時操業停止や稼働率低迷、事業再編の影響を受けて減益となりました。
営業外損益では、持分法による投資損益が34億円減少しました。この結果、連結経常利益は前連結会計年度比77.2%減の52億円となりました。
特別損益は、161億円の利益(純額)となりました。固定資産処分益など334億円を特別利益に、製品補償引当金繰入額や事業譲渡損など173億円を特別損失として計上いたしました。
以上の結果、親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度比43.3%減の100億円となりました。
なお、セグメント別の概況は、「3[経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析](業績等の概要)(1)業績」に記載しております。
(3) 資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社グループでは、事業活動の継続及び発展のための成長投資や運転資金需要に対して、営業活動を通じて獲得したキャッシュ・フローの他、金融機関からの借入、社債やコマーシャル・ペーパーの発行等の負債性調達や、資産の流動化等により、資金調達を実施しております。具体的な調達手段については、市場環境や当社のバランスシート状況を踏まえ、経済合理性や財務構造の安定化の観点から判断しております。
また、日本、中国及びタイにおいては、CMS(キャッシュ・マネジメント・システム)を導入し、効率的な資金活用に努めております。
手元流動性については、手元現預金とコミットメントラインにより、短期的な支払リスクをカバー出来うる水準を確保しております。なお、当連結会計年度においては、新型コロナウイルス影響への備えとして、一時的に手元現預金水準を引き上げております。
(重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定)
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。