四半期報告書-第119期第3四半期(令和3年10月1日-令和3年12月31日)

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2022/02/08 9:51
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(1) 経営成績の状況
当第3四半期連結累計期間(2021年4月1日~12月31日)の世界経済は、新型コロナウイルスの感染状況などから、各地の動向にばらつきが見られました。米国経済は、個人消費が牽引し景気の回復が進みましたが、夏以降は供給制約や急激なインフレが経済を下押ししました。欧州経済は、ワクチン普及に伴い経済活動が回復し、家計需要が持ち直していましたが、秋以降は感染再拡大の影響で景気の減速感が強まりました。アジア・新興国経済は、感染が再拡大し、厳しい活動制限が消費や生産活動を下押ししたことにより、引き続き景気が停滞しました。中国経済は、過剰投資を警戒した政府の不動産投資抑制策などにより、回復のペースが鈍化しました。わが国経済は、感染拡大によるサービス消費の低迷や、供給制約を受けた生産減少により、経済成長が停滞しました。
このような事業環境のもと、コロナ禍においてこれまで進めてきた、販売力・営業力の強化、差別化商品の迅速な開発・販売、需要変動に対応した柔軟な生産・供給体制の構築、徹底したコスト削減など、身軽で強靭な経営体質をベースとして、引き続き「攻め」と「挑戦」の姿勢で業績回復に努めました。具体的には、新たなニーズを捉えた新商品の投入によるさらなる拡販・シェアの向上、原材料市況高騰を踏まえた銅からアルミへの材料置換をはじめとしたトータルコストダウンの推進、市場・顧客にその価値を認めていただける差別化商品の投入による販売価格政策の推進、固定費の削減や物流の効率化などに取り組み、原材料価格や物流費の高騰によるコストアップ要因の吸収と収益力の向上に努めました。
また、2025年度を目標年度とする戦略経営計画「FUSION25」を策定し、成長戦略3テーマ「カーボンニュートラルへの挑戦」「顧客とつながるソリューション事業の推進」「空気価値の創造」をはじめとした重点9テーマの施策展開に取り組んでおります。
当第3四半期連結累計期間の経営成績については、売上高は2兆3,019億39百万円(前年同期比25.0%増)となりました。利益面では、営業利益は2,595億1百万円(前年同期比33.4%増)、経常利益は2,664億35百万円(前年同期比36.1%増)、親会社株主に帰属する四半期純利益は1,787億23百万円(前年同期比38.8%増)となりました。
セグメントごとの経営成績を示すと、次のとおりであります。
①空調・冷凍機事業
空調・冷凍機事業セグメント合計の売上高は、前年同期比24.4%増の2兆1,038億33百万円となりました。営業利益は、前年同期比27.8%増の2,348億62百万円となりました。
国内業務用空調機器の業界需要は、緊急事態宣言による需要鈍化が続くなど、新型コロナウイルスによる影響が出る前の水準までは回復が見られないものの、昨年度の大幅な需要の落ち込みからは徐々に回復しており、前年同期を上回りました。当社グループは、施工技術者不足の課題に応え、工事の簡素化と工事品質の安定化に対応した「VRV」や「スカイエア」、働き方の変化によりニーズの高まる小部屋などの空調に適した『machi(マチ) マルチ』、空気質のニーズに応える全熱交換器『ベンティエール』や『ストリーマ除菌ユニット』など、商品ラインナップの強化と提案の拡大を進めたことにより、業務用空調機器の売上高は前年同期を上回りました。
国内住宅用空調機器の業界需要は、巣ごもり需要が一巡し、8月の長雨や冷夏の影響による落ち込みが見られ、前年同期を下回りました。当社グループは、従来の加湿・除湿や給気換気に加えて、排気換気機能を新たに搭載した『うるさらX(エックス)』、コンパクトで狭いスペースにフィットする壁掛形エアコン「CXシリーズ」、ウイルスや菌の抑制性能を高めた『UVストリーマ空気清浄機』など、商品性能の強化とユーザー訴求の強化を進めたことにより、住宅用空調機器の売上高は前年同期を上回りました。
米州では、昨年度は新型コロナウイルス感染拡大による影響や、工場が一部停止したことで供給力に影響が出た期間がありましたが、当年度は北米全体の労働者不足や部品供給の問題がある中でも供給力の向上に努めた結果、生産・販売ともに着実に伸ばしました。住宅用空調機器については、販売の増加によってシェアが向上し、また、買収による販売網強化や価格政策の着実な実行に努めた結果、売上高は前年同期を大きく上回りました。大型ビル(アプライド)空調分野は、新型コロナウイルスの影響により停滞していた市場の回復を背景に、サービス事業の拡大に取り組むとともに、前期末に買収した北米の会社が販売の増加に寄与し、売上高は前年同期を上回りました。
中国では、個人消費を中心に需要は堅調に推移しましたが、下期に入り景気は減速傾向となりました。当社グループは、住宅システム商品、空気・換気商品、環境訴求商品などのラインナップを強化するとともに、これまでの強みである当社グループ独自の専売店「プロショップ」による販売にオンラインを融合させた販売を強化し、住宅用市場を中心に売上高は前年同期を大きく上回りました。利益面では、原材料価格の高騰や半導体の調達問題などの影響がある中、高収益商品の拡販、コストダウン・固定費削減に取り組み、高水準を維持しました。住宅用市場では、オフラインとオンラインを組み合わせた販売を推進し、新規顧客の探索から更新需要の獲得まで幅広く取り組み、販売を拡大しました。また、カーボンニュートラル政策の推進に伴い、ヒートポンプ式温水暖房機器などの環境訴求商品の販売を伸ばしました。店舗・オフィスなどの業務用小売市場では、換気・洗浄を切り口に顧客との接点を拡大し、更新・追加需要を取り込みました。大型物件市場では、空気・エネルギーなどのソリューション提案を強化しました。工場向け市場では環境対策による省エネ空調の更新に取り組み、販売を伸ばしました。アプライド空調機器市場では、インフラ関連、半導体関連などの成長分野に経営資源をシフトし、さらに保守・メンテナンス事業での販売を強化しました。
アジア・オセアニアでは、5月以降はインド・マレーシア・タイ・ベトナムなどアジア各国で、7月以降はオーストラリアでも新型コロナウイルス感染再拡大に伴うロックダウンや事業活動の制限強化の影響を受け、上期は厳しい市場環境が続きました。特に業務用空調機器については、感染拡大の影響を受け、建設現場での労働者不足や新型コロナウイルス検査義務付けのため、市場全体で着工遅れや工事の中断・延期が発生する状況が続きました。第3四半期(10月~12月)に入ると行動制限の緩和が徐々に進み、インドを中心とした各国での需要回復の取り込み、オセアニアでの堅調な販売、価格政策の着実な実行などに努めました。その結果、地域全体の売上高は業務用・住宅用ともに前年同期を上回りました。
欧州では、地域全体の売上高は前年同期を大きく上回りました。11月から新型コロナウイルスの感染が再拡大し、7月以降の制限緩和から一転して各国でロックダウンなどが再発動され、店舗・ホテル・オフィス用途の需要の回復が鈍化しました。このように業務用空調機器、特にライトコマーシャル(中規模ビル向け)空調機器の販売が厳しい状況の中、住宅向けの空調・暖房機器の拡販が地域全体の販売を牽引しました。住宅用空調機器では、各国政府の経済復興とCO2削減を目標とした補助金を追い風にイタリアなどで拡販し、猛暑で需要が好調であったギリシャなどの欧州南東部でも販売を伸ばしました。住宅用ヒートポンプ式温水暖房機器では、補助金制度によりガスやオイルボイラーの更新需要が急拡大しました。販売店開発、補助金申請支援などの販売力強化により受注も急拡大し、特にフランスやイタリアで大幅に販売を伸ばしました。また、世界的な半導体不足の影響で商品の生産・供給に課題がある中、需要に応えるべく、生産・販売・供給部門の連携を強化し、販売供給量を最大化しました。これらにより、住宅用空調機器の売上高は前年同期を大きく上回りました。業務用空調機器においては、11月以降にロックダウンなどの再発動の影響を受けましたが、病院やITインフラ、工場などの好調な市場での営業力強化で販売を伸ばしました。その結果、業務用空調機器の売上高は前年同期を上回りました。また、低温事業は、新規出店・改築投資が堅調な食品スーパー業界への販売を強化し、売上高は前年同期を大きく上回りました。
中近東・アフリカでは、カタールやエジプトなどでの販売強化により売上高は前年同期を上回りました。トルコは、猛暑や政府の住宅支援策などにより住宅用空調機器・暖房機器の需要が拡大する中、現地での生産や営業力を強化し、大幅に販売を伸ばしました。トルコリラ下落の影響を受けましたが、価格政策により円貨換算後の売上高においても前年同期を大きく上回りました。
フィルタ事業は、欧米諸国を中心にワクチン接種が進み、経済活動の再開が拡大したことで、需要は回復基調になりました。アメリカでは業務用市場を中心に緩やかに需要の回復が進み、欧州での感染症対策商材の需要も堅調に推移しました。また、新型コロナウイルス感染拡大により需要が大幅に落ち込んでいたアジアでも、秋以降に感染が一段落したことで販売が増加しました。ガスタービン・集塵機事業は、底堅い中長期の電力需要や原油価格の上昇トレンドによる石油ガス業界の旺盛な投資意欲が継続し、需要は堅調に回復しました。これらの結果、フィルタ事業全体の売上高は前年同期を上回りました。
舶用事業は、海上コンテナ冷凍装置の販売台数増加により、売上高は前年同期を上回りました。
②化学事業
化学事業セグメント合計の売上高は、前年同期比32.7%増の1,548億42百万円となりました。営業利益は、前年同期比124.2%増の202億58百万円となりました。
フッ素化学製品全体の販売は、新型コロナウイルスの世界的流行の影響で大きく落ち込んだ昨年度に対し、半導体・自動車分野を中心に広範囲での需要回復に加え、積極的な拡販施策の展開により、売上高は前年同期を大きく上回りました。
フッ素樹脂は、世界的な半導体・自動車関連の需要回復を捉えた拡販施策の展開により売上高は前年同期を大きく上回りました。また、フッ素ゴムについても、自動車関連を中心に需要の回復が顕著となり、拡販施策の展開と同時に価格政策を実施したことにより売上高は前年同期を大きく上回りました。
化成品のうち、表面防汚コーティング剤は需要の停滞が見られたものの、撥水撥油剤や半導体向けエッチング剤などの需要が回復したことにより、化成品全体の売上高は前年同期を上回りました。
フルオロカーボンガスについては、価格政策の着実な実行などに努め、売上高は前年同期を大きく上回りました。
③その他事業
その他事業セグメント合計の売上高は、前年同期比27.2%増の432億63百万円となりました。営業利益は、前年同期比152.2%増の43億90百万円となりました。
産業機械用油圧機器は、国内市場では工作機械向けを中心に需要が回復したことに加え、アジア・欧米向けの販売の増加により、売上高は前年同期を上回りました。また、建機・車両用油圧機器は、国内及び米国主要顧客向けの販売が増加したことにより、売上高は前年同期を大きく上回りました。
特機部門では、防衛省向け砲弾の販売が減少した一方で、新型コロナウイルス感染拡大に伴う酸素濃縮装置及びパルスオキシメータ(採血することなく血中酸素飽和度を簡易に測定できる医療機器)の需要の増加を取り込んだことにより、売上高は前年同期を上回りました。
電子システム事業では、品質課題の解決・設計開発期間の短縮・コストダウン支援といった顧客のニーズに合致した設計・開発分野向けデータベースシステム『SpaceFinder(スペースファインダー)』と、業務アプリケーション開発システム『Smart Innovator(スマートイノベーター)』の販売が堅調に推移し、売上高は前年同期を上回りました。
(2) 財政状態の状況
総資産は、3兆5,066億19百万円となり、前連結会計年度末に比べて2,669億56百万円増加しました。流動資産は、商品及び製品の増加等により、前連結会計年度末に比べて1,955億37百万円増加の1兆9,288億98百万円となりました。固定資産は、建設仮勘定の増加等により、前連結会計年度末に比べて714億18百万円増加の1兆5,777億20百万円となりました。
負債は、短期借入金の増加等により、前連結会計年度末に比べて869億61百万円増加の1兆6,281億29百万円となりました。有利子負債比率は、前連結会計年度末の23.2%から21.1%となりました。
純資産は、親会社株主に帰属する四半期純利益の計上による増加等により、前連結会計年度末に比べて1,799億94百万円増加の1兆8,784億90百万円となりました。
(3) キャッシュ・フローの状況
当第3四半期連結累計期間のキャッシュ・フローについては、営業活動では、棚卸資産の増加等により、前年同期に比べて851億82百万円収入が減少し、2,188億14百万円の収入となりました。投資活動では、子会社出資金の取得による支出の増加等により、前年同期に比べて240億8百万円支出が増加し、1,421億59百万円の支出となりました。財務活動では、長期借入れによる収入の減少等により、前年同期に比べて2,417億60百万円収入が減少し、905億55百万円の支出となりました。これらの結果に為替換算差額を加えた当第3四半期連結累計期間の現金及び現金同等物の増減額は、前年同期に比べて3,433億68百万円減少し、41億85百万円のキャッシュの増加となりました。
(4) 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等
当第3四半期連結累計期間において、当連結会社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等に重要な変更はありません。
(5) 研究開発活動
当第3四半期連結累計期間の研究開発費の総額は589億93百万円であります。