四半期報告書-第120期第2四半期(令和4年7月1日-令和4年9月30日)

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2022/11/09 9:50
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(1) 経営成績の状況
当第2四半期連結累計期間(2022年4月1日~9月30日)の世界経済は、社会経済活動の制限の緩和が進み、各国で景気回復の兆しが見られましたが、ロシア・ウクライナ情勢の長期化や世界的なインフレの進行により、先行きの不透明感が強まりました。米国経済は、高いインフレ率が景気の減速感を強めましたが、良好な雇用・所得環境やコロナ禍で積み上がった貯蓄による活発な個人消費が景気を下支えしました。欧州経済は、個人消費が活発化しましたが、ロシア・ウクライナ情勢の長期化に伴うエネルギー価格高騰により経済は低迷しました。アジア・新興国経済は、急速なインフレが経済を下押ししましたが、活動制限の緩和による個人消費やサービス輸出が好調であったことが景気を下支えしました。中国経済は、長引くゼロコロナ政策が消費・投資マインドを冷やし、景気の下振れ圧力が高まりました。わが国経済は、行動制限の緩和による活発な個人消費や、供給制約の緩和による輸出や生産の増加が経済を牽引しました。
当社グループでは、2021年度に策定した戦略経営計画「FUSION25」の完遂に向けて、成長戦略3テーマ「カーボンニュートラルへの挑戦」「顧客とつながるソリューション事業の推進」「空気価値の創造」をはじめとした重点9テーマの施策に取り組んでおります。
上記のような事業環境のもと、それぞれの地域・事業の進捗状況をきめ細かくフォローしながら臨機応変に課題に対応することで、環境変化による当社事業への影響を極小化し、堅調な地域・事業でのさらなる販売の拡大・収益力の向上に努めました。具体的には、次に挙げるテーマへの取り組みを継続・強化しました。
・市場・顧客にその価値を認めていただける、差別化商品の投入による販売価格政策の推進
・業務用空調をはじめとした各事業における、販売力・営業力の強化
・原材料市況の悪化や資源価格の高騰に対応するための、変動費コストダウンの推進
・物流経費のさらなる高騰への対応としての、物流効率化策の推進
・積極的な投資と収益性向上の両面を意識した、固定費の効率化
・次年度以降も見据えた、中期的な調達・供給力の強化
・大型設備投資の成果創出・収益化の加速
また、世の中の変化を機会と捉え、カーボンニュートラル実現の加速やデジタル技術の活用など、当社グループの強みを活かし、次の飛躍につなげる挑戦テーマを設定し、強靭な企業体質の構築と成果創出に取り組みました。
当第2四半期連結累計期間の経営成績については、売上高は2兆197億90百万円(前年同期比29.6%増)となりました。利益面では、営業利益は2,216億54百万円(前年同期比15.0%増)、経常利益は2,226億54百万円(前年同期比13.1%増)、親会社株主に帰属する四半期純利益は1,563億95百万円(前年同期比12.4%増)となりました。
セグメントごとの経営成績を示すと、次のとおりであります。
①空調・冷凍機事業
空調・冷凍機事業セグメント合計の売上高は、前年同期比29.9%増の1兆8,542億44百万円となりました。営業利益は、前年同期比10.8%増の1,928億72百万円となりました。
国内空調機器の業界需要は、事業環境や景気の不透明さ、中国でのロックダウンの影響などにより第1四半期(4月~6月)は落ち込みました。第2四半期(7月~9月)に入り、供給面での改善もあり回復しましたが、上期全体の業界需要は業務用・住宅用ともに前年同期を下回りました。このような状況の中、当社グループは、強靭なサプライチェーンの実現による安定的な生産・供給の維持に努め、影響の極小化に取り組みました。
国内業務用空調機器市場に向けては、高い省エネ性能を持つ「スカイエア」・「VRV」シリーズなどの空調機器と、全熱交換器『ベンティエール』や『UVストリーマ空気清浄機』など換気・除菌機器を組み合わせることで、省エネと空気質改善を両立する提案を拡大しました。このように、商品ラインナップの強化と提案の幅の拡大により、業務用空調機器の売上高は前年同期を上回りました。
国内住宅用空調機器市場に向けては、無給水加湿や給気・排気換気など独自の機能を搭載するルームエアコン『うるさらX(エックス)』、細部までデザインにこだわったルームエアコン『risora(リソラ)』など、当社独自の商品特長を活かしたユーザー訴求を強化しました。これらの取り組みにより、住宅用空調機器の売上高は前年同期を上回りました。
米州では、市場が堅調に推移する中、一部機種で部品不足に起因した供給の逼迫等の問題がある中でも生産性の向上に努め、生産・販売ともに着実に伸ばしました。住宅用空調機器については、業界での流通在庫が高止まりし、需要の伸びが停滞しましたが、在庫水準の回復や顧客開発など営業努力によりシェアは堅調に向上しました。また、買収による販売網強化や価格政策の着実な実行に努め、売上高は前年同期を大きく上回りました。大型ビル(アプライド)空調分野は、市場が堅調に推移する中、空調機器の拡販とサービス事業での拡大に取り組んだことや、前期に買収した販売会社を活用した販路拡大の効果もあり、売上高は前年同期を上回りました。
中国では、当社グループの生産拠点は上海を中心としているため、ロックダウンにより、4月・5月は生産・物流が停止して製品供給が滞り販売が減少しました。しかし、ロックダウン解除後は、いち早く生産・物流をフル稼働させ、6月以降の販売は前年同期を大きく上回りました。その結果、地域全体の売上高は前年同期を上回りました。利益面では、原材料価格の高騰や半導体不足の影響を受けましたが、高付加価値商品の拡販、コストダウン・固定費削減に取り組み、これまでの高水準を維持しました。住宅用市場では、当社グループ独自の専売店「プロショップ」とオンラインを組み合わせた販売活動を推進し、新規顧客の探索や更新需要の獲得に注力しました。ライブコマースやカスタマーセンターを通じた顧客とのコミュニケーションや、空調機器の運転状況の遠隔確認など、オンラインを活用した販売・サービスを展開しました。顧客の空気・環境への関心は高まっており、空気・換気関連商品やエネルギー消費量可視化商品、ヒートポンプ式温水暖房機器などのシステム商品の品揃えを強化しました。業務用市場では、換気・洗浄を切り口に顧客との接点を拡大し、機器の更新や追加購入の需要を取り込みました。カーボンニュートラル政策の推進を機会と捉え、大型物件市場ではエネルギーソリューション・空気質改善などの提案を行い、工場向け市場では省エネ空調による電力削減提案などを強化しました。アプライド空調機器市場では、半導体関連など成長分野に経営資源をシフトしたことに加え、保守・メンテナンス事業を強化しました。
アジア・オセアニアでは、建設現場での資材・労働者不足による工事の遅れや延期が一部見られたものの、コロナ禍での行動制限の緩和による需要回復を受け、住宅用・業務用空調機器ともに販売は堅調に推移しました。特にインドやマレーシアでは、猛暑や行動制限の緩和による需要増加を捉え、販売を大幅に伸ばしました。電子部品等が逼迫する中でも製品供給を継続し、各国で価格政策を着実に実行した結果、地域全体の売上高は住宅用・業務用ともに前年同期を大きく上回りました。
欧州では、ロシア・ウクライナ情勢の悪化によるエネルギー価格高騰とインフレ加速に加え、中国でのロックダウンの影響による供給逼迫など、厳しい事業環境が続きました。しかしながら、生産・販売・供給部門の連携強化、各国での出荷極大化の取り組みにより販売を拡大し、地域全体の売上高は前年同期を大きく上回りました。住宅用空調機器は、期初にドイツやフランス等で需要低迷により販売が減少しましたが、スペイン・イタリア等における6月から7月にかけての熱波到来による需要の伸びを取り込んだことにより販売を拡大し、住宅用空調機器の売上高は前年同期を上回りました。住宅用ヒートポンプ式温水暖房機器は、各国政府のグリーンディール政策を背景とした補助金制度が追い風となり、ガスやオイルボイラーからの更新需要が拡大基調を維持しました。供給逼迫の影響があったものの、販売店開発や補助金申請支援などの販売力強化と商品ラインナップの拡充、最寄り工場での生産・供給力強化で需要を最大限に取り込みました。これらにより、住宅用暖房機器の売上高は前年同期を大きく上回りました。業務用空調機器においては、各国のコロナ禍での行動制限の緩和・撤廃に伴い、需要は堅調に推移しました。また、本格的に国を跨ぐ移動が活発となり、これまでコロナの影響で延期されてきたホテル等の観光用途やオフィスの引合いが増加し、物件及び納期フォローの徹底により、供給遅れの影響を受けたものの、販売を拡大しました。その結果、業務用空調機器の売上高は前年同期を大きく上回りました。低温事業は、部品供給不足により生産が減少したことや需要が減少したこと等により、売上高は前年同期を下回りました。
中近東・アフリカでは、サウジアラビア・エジプト・カタールでの販売強化が牽引し、売上高は前年同期を大きく上回りました。トルコでは、現地で生産を開始した業務用空調機器において短納期対応を強みに販売を拡大したことにより、売上高は前年同期を大きく上回りました。
フィルタ事業は、世界的な経済活動の再開に伴い、需要は緩やかに回復しました。米国では、記録的なインフレが続きながらも、住宅用製品の個人消費だけでなく、自前の販売拠点を活用した業務用製品の拡販により販売を大きく伸ばしました。欧州では、ロシア・ウクライナ情勢の長期化と記録的なインフレによる景気の下振れリスクはあったものの、省エネや空気質ニーズの高まりを背景にハイエンド市場での販売が好調となりました。アジアでは、中国でのロックダウンによる部品不足や原材料高騰が生産に影響を与えましたが、半導体・電子部品市場の活況により高性能フィルタの販売が好調に推移しました。また、国内では、医療向けの需要は感染症対策機器の販売に一服感がみられたものの、好調な半導体市場向けに高性能フィルタの販売が拡大しました。さらに、ガスタービン・集塵機事業は、前期に引き続き欧州での集塵機の販売が好調なこともあり、フィルタ事業全体の売上高は前年同期を大きく上回りました。
舶用事業は、海上コンテナ冷凍装置では中国でのロックダウンの影響を受け、部品不足による生産の減少や物流の混乱により4月・5月の販売が減少しました。6月から生産は正常化し、販売を伸ばしましたが、4月・5月の販売減少の影響が大きく、販売台数は前年同期を下回りました。しかし、舶用エアコン・冷凍機は販売を伸ばしたこと等もあり、舶用事業全体の売上高は前年同期を上回りました。
②化学事業
化学事業セグメント合計の売上高は、前年同期比28.9%増の1,312億93百万円となりました。営業利益は、前年同期比66.8%増の258億26百万円となりました。
フッ素化学製品全体の販売は、半導体・自動車分野を中心に広範囲での堅調な需要に加え、原材料市況高騰を背景とする価格政策を実施したことにより、売上高は前年同期を大きく上回りました。
フッ素樹脂は、世界的な半導体・自動車関連需要の堅調な推移に伴い、売上高は前年同期を上回りました。また、フッ素ゴムについても、自動車関連を中心に需要が堅調であること、原材料市況高騰を背景とした価格政策を実施したことにより、売上高は前年同期を大きく上回りました。
化成品のうち、表面防汚コーティング剤や撥水撥油剤の需要に停滞が見られたものの、半導体向けエッチング剤などの需要が堅調に推移したことにより、化成品全体の売上高は前年同期を上回りました。
フルオロカーボンガスについては、原材料市況高騰に対応した価格政策の着実な実行に努め、売上高は前年同期を大きく上回りました。
③その他事業
その他事業セグメント合計の売上高は、前年同期比17.7%増の342億51百万円となりました。営業利益は、前年同期比5.1%減の29億64百万円となりました。
油機事業では、産業機械用油圧機器は、国内市場で工作機械向けを中心に販売が増加したことに加え、欧米向けの販売も増加したことにより、売上高は前年同期を上回りました。また、建機・車両用油圧機器は、国内市場及び米国市場向けの販売が増加したことにより、売上高は前年同期を上回りました。
特機事業では、防衛省向け砲弾の販売が増加した一方で、新型コロナウイルスに伴う需要が一巡したことによる酸素濃縮装置及びパルスオキシメータ(採血することなく血中酸素飽和度を簡易に測定できる医療機器)の販売が減少し、売上高は前年同期並みとなりました。
電子システム事業では、大手企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進によるIT投資が増加したことにより、品質課題の解決・設計開発期間の短縮・コストダウン支援といった顧客ニーズに合致した設計・開発分野向けデータベースシステム『SpaceFinder(スペースファインダー)』と『Smart Innovator(スマートイノベーター)』の販売が堅調に推移しました。しかし、ゲーム市場向けCG制作ソフトの販売が減少したことにより、売上高は前年同期並となりました。
(2) 財政状態の状況
総資産は、4兆2,520億27百万円となり、前連結会計年度末に比べて4,280億29百万円増加しました。流動資産は、商品及び製品の増加等により、前連結会計年度末に比べて2,387億75百万円増加の2兆4,043億99百万円となりました。固定資産は、のれんの増加や円安による為替換算の影響を受けたこと等により、前連結会計年度末に比べて1,892億53百万円増加の1兆8,476億28百万円となりました。
負債は、未払費用の増加等により、前連結会計年度末に比べて1,517億35百万円増加の1兆9,676億24百万円となりました。有利子負債比率は、前連結会計年度末の21.6%から18.8%となりました。
純資産は、親会社株主に帰属する四半期純利益の計上や為替の変動によるその他の包括利益累計額の増加等により、前連結会計年度末に比べて2,762億94百万円増加の2兆2,844億3百万円となりました。
(3) キャッシュ・フローの状況
当第2四半期連結累計期間のキャッシュ・フローについては、営業活動では、棚卸資産の増加等により、前年同期に比べて729億79百万円収入が減少し、1,140億47百万円の収入となりました。投資活動では、子会社株式の取得による支出の増加等により、前年同期に比べて278億55百万円支出が増加し、979億81百万円の支出となりました。財務活動では、長期借入金の返済による支出の増加等により、前年同期に比べて967億82百万円支出が増加し、1,546億43百万円の支出となりました。これらの結果に為替換算差額を加えた当第2四半期連結累計期間の現金及び現金同等物の増減額は、前年同期に比べて1,647億53百万円減少し、1,035億50百万円のキャッシュの減少となりました。
(4) 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等
当第2四半期連結累計期間において、当連結会社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等に重要な変更はありません。
(5) 研究開発活動
当第2四半期連結累計期間の研究開発費の総額は476億27百万円であります。